JP5770575B2 - 酸化皮膜の形成方法 - Google Patents
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Description
同文献に開示した方法は、被処理物の先に処理する部位と後で処理する部位とをマスク材により仕切り、先に処理する部位をマスク材の位置まで電解液に浸漬して酸化皮膜を形成し、被処理物を電解液から引き上げてマスク材を除去し、後で処理する部位を再度電解液に浸漬して酸化するという工程を繰り返すことにより、1m2以上の大きさの被処理物表面全体に酸化皮膜を形成するものである。
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、電解液から被処理物を引き上げてマスク材の除去を行う工程があるため効率が悪いという問題があった。また、マスク材が被処理物表面に均一に付着せずに、電解液がマスク材の下に入り込み、先に処理された部位と後に処理された部位との境界が均一にならないという問題があった。また、マスク材の除去を徹底しないと、不純物が境界付近に残るという問題があった。更に、これらの問題が生じる可能性は、被処理物が大面積になればなる程大きくなるという問題があった。
このため、例えば、特許文献2には、巻物から引き出された可撓性基材を搬送しつつ、液面を揺らさないようにして定電流電解処理等を行うことが提案されている。しかしながら、同文献において、電解処理を行った部位と、未処理部位との間の境界における酸化被膜の膜質について特に言及されておらず、また、厚さ1mm以上の曲がり難いアルミニウム又はアルミニウム合金で、しかも、処理対象となる面積が大型化した場合についての上記の引用文献1の問題点についても何等解決策を提案していない。
また、引用文献3にも、マイクロアーク法であっても電流を同一レベルに維持しつつ、可撓性基板に成膜する方法が提案されているが、引用文献2と同様の問題がある。
即ち、本願発明は、請求項1に記載の通り、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さ1mm以上の被処理物の一部を電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を行うことにより酸化皮膜を形成した後、前記酸化皮膜が形成された部位と、他の部位との境界にマスク材を設けることなく、前記酸化皮膜が形成された部位と他の部位とを前記電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を行うことにより、前記他の部位に酸化皮膜を形成する酸化皮膜の形成方法であって、前記被処理物の先端側から順に前記酸化皮膜を形成することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の酸化皮膜の形成方法において、前記マイクロアーク酸化処理時の電流密度を1〜6A/dm2とすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2に記載の酸化皮膜の形成方法において、前記マイクロアーク酸化処理時の電流密度を1〜4A/dm2とすることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法において、全ての前記酸化皮膜の形成過程において、前記電解液の温度を−10℃〜65℃の範囲とすることを特徴とする。
本発明によれば、特許文献1に開示されるような、第1及び第2の酸化皮膜3,4間の境界となる部位にマスク材を設けることがないので効率的に被処理物1に酸化皮膜3,4を形成することが可能となる。また、境界にマスク材を設けることがないため、マスク材の下側に電解液2が入り込んで不均一な酸化皮膜が形成されたり、白い粒子状物質などの不純物が生じることがない。
尚、本明細書におけるマスク材とは、特許文献1に開示されるようなシリコンシーラーやシリコンコーキング材等のマスク材を含み、酸化皮膜が形成された部位と、これから酸化皮膜を形成する部位とを分けるための部材をいうものとする。
また、酸化皮膜の形成工程についても、被処理物1の形状や大きさに応じて選択すればよいが、被処理物1に酸化皮膜を3回以上に分けるような場合にはマスク材の数が2つ以上となるので有効である。
尚、第1の酸化皮膜3が形成された部位を電解液2から引き上げることなく第2の酸化皮膜4を形成するようにすれば、より効率的に被処理物1の全体に酸化皮膜を形成することができる。
マイクロアーク酸化処理の際の電流密度については、好ましくは1〜6.0A/dm2、より好ましくは1〜4A/dm2とする。1A/dm2未満であると放電が不十分となり、6.0A/dm2を超えると、第1及び第2の酸化皮膜3,4間の境界において膜質が不均一となるからである。
また、全ての酸化皮膜3,4の形成過程において、電解液2の温度は−10〜65℃とすることが好ましい。大きな冷却設備ではなく、冷却チラー等の小規模な冷却設備を用いて安定した酸化皮膜を形成することができるからである。
また、本明細書における「平板状の部材」とは、貫通孔や表面に凹凸を形成した部材を含むものとする。
形成される酸化被膜は、例えば、酸化アルミニウムを主成分とし、これ以外に、例えば水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物を含む材料を含んでいてもよい。この酸化被膜の厚みは、例えば、5μm以上30μm以下、好ましくは5μm以上かつ20μm以下の範囲であればよい。
実施例1及び比較例1では、被処理物として、アルミニウム合金(A5052)を切削して40×80×2mmの寸法とした試験片を使用した。
また、マイクロアーク酸化処理の電解液として、水酸化カリウム、メタけい酸ナトリウム及びりん酸三ナトリウムのそれぞれを3g/Lとなるように純水に溶かしたアルカリ性電解液を使用した。
上記電解液を、カーボン製の対向電極が設けられた電解槽に入れ、直流の定電流でマイクロアーク酸化処理を行うようにした。
試験片の長手方向の先端部の40mmを電解液に浸漬し、電流密度6.0A/dm2で450Vに達するまで第1の酸化皮膜を形成した後、電流密度0.28A/dm2となるまで450Vで定電圧処理を行い、その後、試験片の全体を電解液に浸漬して先端部と同様に第2の酸化皮膜を形成した。酸化皮膜形成の全工程において電解液の温度は65℃以下であった。また、第1の酸化皮膜の形成開始から第2の酸化皮膜の形成終了までにかかる時間は、第1の酸化皮膜の形成時間の1.5時間と第2の酸化皮膜の形成時間の1.5時間との合計3時間であった。
実施例1の方法に対して、電流密度を3.6A/dm2とした以外は、実施例1と同条件で行った。尚、第1の酸化皮膜形成後の定電圧処理終了時の電流密度は、0.25A/dm2であった。酸化皮膜形成の全工程において電解液の温度は45℃以下であった。また、第1の酸化皮膜の形成開始から第2の酸化皮膜の形成終了までにかかる時間は、実施例1と同様に合計3時間であった。
試験片の長手方向の先端部から40mmのところに、第1の酸化皮膜と第2の酸化皮膜とを分けるためにシリコンシーラーでマスキングを行った。第1の酸化皮膜形成後に、電解液から被処理物を引き上げてマスキングを剥がしてから、第2の酸化皮膜を形成した。電流密度は6.0A/dm2で450V到達まで、電解液温度は65℃以下で処理を行った。また、第1の酸化皮膜の形成開始から第2の酸化皮膜の形成終了までにかかる時間は、酸化皮膜の形成時間の1.5時間、マスキング材の乾燥時間の24時間、マスキングの剥離作業の時間の1時間の合計26.5時間が、第1及び第2の酸化皮膜に必要となり、合計53時間であった。
図2に、実施例1及び2の処理後の試験片の写真を示すように、実施例1は、実施例2に比べて境界の幅が広く、第1及び第2の酸化皮膜の色の相違が大きく縞状の模様となることが分かった。
また、図3に実施例1、図4に実施例2の光学顕微鏡写真を示すように、実施例1は、実施例2に比べて、第1及び第2の酸化皮膜の境界に黒い斑点が多く、表面形態が荒れていることが分かった。
また、比較例1でマスキングを剥がす際、簡単には剥がれないため、シーラーを剥がすためのプラスチック製ヘラを使用した。プラスチック製ではあるが、綺麗に剥がすためにヘラで剥がしていると、剥がす際に試料に傷が付いてしまった。
また、比較例1の酸化皮膜の形成に必要な時間は、実施例1や実施例2と比べて20倍近くかかるために効率が悪いことがわかった。
2 電解液
3 第1の酸化皮膜
4 第2の酸化皮膜
Claims (4)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さ1mm以上の被処理物の一部を電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を行うことにより酸化皮膜を形成した後、前記酸化皮膜が形成された部位と、他の部位との境界にマスク材を設けることなく、前記酸化皮膜が形成された部位と他の部位とを前記電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を行うことにより、前記他の部位に酸化皮膜を形成する酸化皮膜の形成方法であって、前記被処理物の先端側から順に前記酸化皮膜を形成することを特徴とする酸化皮膜の形成方法。
- 前記マイクロアーク酸化処理時の電流密度を1〜6A/dm2とすることを特徴とする請求項1に記載の酸化皮膜の形成方法。
- 前記マイクロアーク酸化処理時の電流密度を1〜4A/dm2とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化皮膜の形成方法。
- 全ての前記酸化皮膜の形成過程において、前記電解液の温度を−10℃〜65℃の範囲とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法。
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