JP6257944B2 - アルミニウム合金部材およびアルミニウム合金の表面保護膜形成方法 - Google Patents

アルミニウム合金部材およびアルミニウム合金の表面保護膜形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム合金部材およびアルミニウム合金の表面保護膜形成方法に関し、特に、薄膜形成装置の反応室内に露出される部材として好適に使用できるアルミニウム合金部材に関する。
従来、半導体素子や液晶素子を製造する際には、所定形状の薄膜を形成するためにプラズマ化学気相成長(CVD)装置やプラズマエッチング装置などの薄膜形成装置を使用している。薄膜形成装置の反応室(チャンバー)内に、代表的な金属材料であるステンレスからなる部材が露出していると、ステンレスに含まれる鉄やニッケルと言った元素が、製品の特性に影響を及ぼすことがある。このため、薄膜形成装置の反応室内に露出する内壁や治具などの部材には、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、総称して「アルミニウム合金」という。)が使用されている。
しかし、アルミニウム合金は、腐食されやすい材料である。このため、薄膜形成装置の反応室内に露出されたアルミニウム合金からなる部材は、反応室内で薄膜の形成やエッチングを行うことにより、容易に腐食されてしまうという問題があった。
アルミニウム合金の耐食性を向上させる技術としては、例えば、アルミニウム合金の表面を陽極酸化して、10〜50μmの厚みの酸化アルミニウム(アルマイト)層からなる保護膜を形成する方法がある。
アルマイト層を形成するための陽極酸化では、通常、電解液として、硫酸、シュウ酸、硝酸などを用いている。電解液として、硫酸やシュウ酸を用いることで、安価にアルマイト層を形成できる。
このようにして得られるアルマイト層は、非晶質であり、陽極酸化の際に形成された細かい空孔を有している。アルマイト層の空孔は、通常、アルミニウム合金の陽極酸化を行った後に、沸騰水や水蒸気などを用いる封孔処理を行うことにより封孔している。
表面にアルマイト層からなる保護膜を有するアルミニウム合金は、薄膜形成装置の反応室内に露出する部材の材料として用いた場合、200℃以下の低温条件下では十分な耐食性が得られる。しかし、200℃を超える高温条件下では、表面にアルマイト層が形成されているアルミニウム合金であっても、十分な耐食性が得られない。この理由として、高温条件下では、アルマイト層自身がフッ素イオンと反応して、フッ化アルミニウムを形成するため、アルマイト層が短期間で磨り減ってしまうことが挙げられる。
また、アルマイト層の熱膨張率(6×10−6)は、アルミニウムの熱膨張率(27×10−6)と大きく異なっている。このため、表面にアルマイト層が形成されているアルミニウム合金を高温条件下で使用すると、アルマイト層にクラックが発生しやすい。アルマイト層にクラックが発生すると、アルマイト層の下層に配置されているアルミニウム合金が露出する。その結果、アルミニウム合金がフッ化されてフッ化アルミニウムが生成されてしまう。このようにして生成したフッ化アルミニウムは、反応室内に設置された基板上に付着してパーティクルの原因となる。
なお、アルミニウム合金の表面に形成するアルマイト層の厚みを薄くすることで、アルマイト層にクラックが発生することを防止できる。しかし、アルマイト層を薄くすると、アルマイト層を設けることによる耐食性向上効果が十分に得られない。
薄膜形成装置の反応室内が高温となる場合として、例えば、以下に示すように、反応室内のクリーニングを行う場合が挙げられる。
プラズマCVD装置を用いて液晶ディスプレーなどを製造する際など、反応室内を真空にして、基板上にa−Si,SiO,SiNxと言ったSi系薄膜を形成する場合が多くある。この場合、Si系薄膜を形成した後に、定期的にNFガスを用いてプラズマでクリーニングを行っている。このことにより、基板上以外の不要な部分(反応室の内壁や反応室内に設置された治具など)に付着したSi系薄膜を、真空を破ることなく除去(クリーニング)できる。したがって、このようなクリーニングを行うことにより、プラズマCVD装置のメンテナンスに必要な時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。
反応室内のクリーニングを行う際にプラズマに曝される部分は、300℃以上の高温になり、450℃程度になる場合もある。したがって、表面にアルマイト層の形成されたアルミニウム合金からなる部材が反応室内に露出されていると、NFガスによってアルマイト層がフッ化されて、フッ化アルミニウムが生成される。また、クリーニングを行う際の加熱によりアルマイト層にクラックが発生し、クラックを介して露出したアルミニウム合金がフッ化されてしまう。
また、反応室内に露出されたアルミニウム合金からなる部材の表面に、アルマイト層が形成されていると、反応室内を真空にする際にアルマイト層から反応室内に放出されるガスが多くなり、問題となる場合がある。特に、アンモニアガス(NH)やフッ素ラジカル(F*)がアルマイト層に吸着されて、反応室内で半導体素子や液晶素子を製造している際にじわじわと放出されると、製品の特性に影響を及ぼす恐れがある。アンモニアガス(NH)およびフッ素ラジカル(F*)は、プラズマCVD装置を用いてディスプレーを製造する際に、多く使用されている。
アルミニウム合金の表面に放出ガスの少ない保護膜を形成する技術として、火花放電を用いる陽極酸化により、結晶化アルマイト層を形成する方法がある。結晶化アルマイト層からなる保護膜は、非晶質のアルマイト層からなる保護膜と比較して、ガスの放出量が1桁程度小さく、好ましい。しかし、結晶化アルマイト層を形成するために火花放電を用いる陽極酸化を行う場合、工程管理が複雑になるため、従来実用化されていなかった。
また、従来のアルミニウム合金の表面に酸化皮膜を形成する技術としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の技術が挙げられる。
特許文献1には、アルミナを主成分とする第1層と、ポリテトラフルオロエチレン及び下地用の化学物質を含有する下地層となる第2層と、1又は2層以上のポリテトラフルオロエチレンを主成分とする仕上層と、を有し、第1層はアルミニウム又はアルミニウム合金材を陽極酸化させて形成されたものであるアルミニウム又はアルミニウム合金材の多層コーティングを有する台所用器具が記載されている。特許文献1には、アルミニウム又はアルミニウム合金材を陽極酸化する方法として、アルミニウム又はアルミニウム合金材をアルカリ溶液中に浸漬し高電流及び高電位差によるマイクロアークを印加する方法が記載されている。
また、特許文献2には、真空下で加熱された試料を冷却するための真空用冷却部材の製造方法が記載されている。特許文献2には、表面の放熱性が高く、かつ表面からガスの放出が少ない真空用冷却部材の製造方法として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基体の少なくとも前記材料を載置または対向する一主面に対してマイクロアーク酸化処理を行い、該一主面に厚みが5μm以上20μm以下の酸化被膜を形成する真空用冷却部材の製造方法が提案されている。
特開平11−137440号公報 特開2008−266701号公報
アルミニウム合金の表面に形成されている結晶化アルマイト層には、多数の空孔が存在している。これらの空孔は、アルミニウム合金を陽極酸化する際に、アルミニウム合金表面の結晶化アルマイト層となる領域で発生した水蒸気が放出されることにより形成されたものである。結晶化アルマイト層に存在する一部の空孔は、結晶化アルマイト層を貫通する貫通孔を形成している。この貫通孔や粒介の影響でアルミニウム合金の表面に形成されている結晶化アルマイト層は、熱膨張に起因する応力が集中しにくく、非晶質のアルマイト層と比較して、クラックが発生しにくい。
また、結晶化アルマイト層は、非晶質のアルマイト層と比較して、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する耐食性に優れている。
しかし、表面に結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金を、薄膜形成装置の反応室内に露出される部材の材料として使用した場合、以下に示すように、結晶化アルマイト層がアルミニウム合金から剥離しやすいため、十分な耐食性が得られなかった。
すなわち、結晶化アルマイト層に貫通孔が存在しているため、NFガスを用いて反応室内のクリーニングを行うと、貫通孔を通してフッ素ラジカルがアルミニウム合金に到達する。その結果、アルミニウム合金がフッ化されて、フッ化アルミニウムが生成される。フッ化アルミニウムが生成されると、結晶化アルマイト層がアルミニウム合金から剥離しやすくなる。
本発明は、アルミニウム合金の表面に、高温条件下であってもフッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する優れた耐食性が得られ、放出ガスの少ない保護膜の形成されたアルミニウム合金部材を提供することを課題とする。
また、本発明は、アルミニウム合金の表面に、高温条件下でのフッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する耐食性に優れ、放出ガスの少ない保護膜を形成する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜を形成すればよいことを見出した。
さらに、本発明者は、このような保護層を形成するには、火花放電を用いてアルミニウム合金の表面を陽極酸化して結晶化アルマイト層を形成した後、火花放電を発生させずに陽極酸化すればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わるものである。
(1)アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜を有することを特徴とするアルミニウム合金部材。
(2)薄膜形成装置の反応室内に露出される部材であることを特徴とする(1)に記載のアルミニウム合金部材。
(3)火花放電を用いてアルミニウム合金の表面を陽極酸化することにより、結晶化アルマイト層を形成する結晶化アルマイト処理工程と、前記結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金の表面を、火花放電を発生させずに陽極酸化することにより、非晶質アルマイト層を形成する非晶質アルマイト処理工程とを備えることを特徴とするアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
(4)前記結晶化アルマイト処理工程と前記非晶質アルマイト処理工程とにおいて、同じ電解液を用いることを特徴とする(3)に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
(5)前記結晶化アルマイト処理工程と前記非晶質アルマイト処理工程とにおいて、異なる電解液を用いることを特徴とする(3)に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
(6)前記非晶質アルマイト処理工程において、前記結晶化アルマイト処理工程以下の電圧で陽極酸化を行うことを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
(7)前記非晶質アルマイト処理工程後に、前記非晶質アルマイト層と前記結晶化アルマイト層とを含む保護膜を300℃〜500℃の温度で焼結する焼結工程を備えることを特徴とする(3)〜(6)のいずれかに記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
本発明のアルミニウム合金部材は、アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜を有している。このため、例えば、300℃〜500℃の高温条件下においても、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する優れた耐食性が得られるとともに、放出ガスの少ないアルミニウム合金部材となる。したがって、本発明のアルミニウム合金部材は、薄膜形成装置の反応室内に露出される部材として好適である。
また、本発明のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法は、火花放電を用いてアルミニウム合金の表面を陽極酸化することにより、結晶化アルマイト層を形成する結晶化アルマイト処理工程と、結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金の表面を、火花放電を発生させずに陽極酸化することにより、非晶質アルマイト層を形成する非晶質アルマイト処理工程とを備えている。本発明の表面保護膜形成方法を用いることで、耐食性に優れ、放出ガスの少ない保護膜を有する本発明のアルミニウム合金部材が得られる。
図1は、本発明のアルミニウム合金部材の一例を説明するための拡大断面模式図である。 図2は、図1に示すアルミニウム合金部材の製造方法の一例を説明するための工程図である。 図3は、耐食性試験に用いたプラズマCVD装置を説明するための図である。 図4は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の放出ガス量を示したグラフである。 図5は、実施例3〜実施例6、比較例2の放出ガス量を示したグラフである。
以下、本発明のアルミニウム合金およびアルミニウム合金の表面保護膜形成方法について、例を挙げて詳細に説明する。
「アルミニウム合金部材」
図1は、本発明のアルミニウム合金部材の一例を説明するための拡大断面模式図である。図1に示すアルミニウム合金部材10は、プラズマCVD装置やプラズマエッチング装置などの薄膜形成装置の反応室内に露出される内壁や治具などの部材として、好適に用いられるものである。なお、アルミニウム合金部材10は、上記の反応室内に露出される部材に限定されるものではない。また、アルミニウム合金部材10の形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じた任意形状とすることができる。
図1に示すアルミニウム合金部材10は、アルミニウム合金1の表面に、非晶質アルマイト層2と結晶化アルマイト層3とがこの順で設けられた保護膜4を有している。
アルミニウム合金1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。具体的には、アルミニウム合金1として、JIS A6061、A5052、A1050などを用いることができる。
非晶質アルマイト層2は、陽極酸化の際に形成された細かい空孔を有しているものである。しかし、非晶質アルマイト層2には、非晶質アルマイト層2を貫通する貫通孔は存在していない。
非晶質アルマイト層2の厚みは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。非晶質アルマイト層2の厚みが、0.5μm以上であると、より一層耐食性に優れた保護膜4となる。また、非晶質アルマイト層2の厚みは、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。非晶質アルマイト層2の厚みが、5μm以下であると、非晶質アルマイト層2にクラックが発生しにくくなるため、一層耐食性に優れた保護膜4となる。
結晶化アルマイト層3は、陽極酸化の際に形成された多数の空孔を有している。結晶化アルマイト層3に存在する一部の空孔は、結晶化アルマイト層を貫通する貫通孔を形成している。結晶化アルマイト層3は、クラックが発生しにくく、耐食性に優れ、ガスの放出量の少ないものである。
結晶化アルマイト層3の厚みは、5μm以上であることが好ましく、9μm以上であることがより好ましい。結晶化アルマイト層3の厚みが、5μm以上であると、より一層耐食性に優れた保護膜4となる。また、結晶化アルマイト層3の厚みは、45μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。結晶化アルマイト層3の厚みが、45μm以下であると、容易に効率よく保護膜4を形成できる。また、結晶化アルマイト層3は、厚みが薄いほどクラックが発生しにくい。結晶化アルマイト層3のクラックをより効果的に防止するには、結晶化アルマイト層3の厚みを20μm以下とすることが、好ましい。
図1に示すアルミニウム合金部材10は、非晶質アルマイト層2のアルミニウム合金1と反対側に結晶化アルマイト層3が形成されている保護膜4を有している。このため、図1に示すアルミニウム合金部材10は、表面に非晶質アルマイト層のみが形成されているアルミニウム合金と比較して、クラックが発生しにくく、耐食性に優れ、ガスの放出量の少ないものとなる。
しかも、図1に示す保護層4では、結晶化アルマイト層3とアルミニウム合金1との間に、非晶質アルマイト層2が存在している。このため、アルミニウム合金部材10を、例えば、薄膜形成装置の反応室内に露出される部材として用いた場合に、以下に示す効果が得られる。
すなわち、NFガスを用いる反応室内のクリーニングの際などには、結晶化アルマイト層3に存在する貫通孔を通して、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンが非晶質アルマイト層2に到達する。アルミニウム合金部材10では、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンが非晶質アルマイト層2に到達しても、貫通孔の存在しない非晶質アルマイト層2によって、アルミニウム合金1に到達することを防止できる。したがって、アルミニウム合金1のフッ化を防止でき、フッ化アルミニウムが生成されることによる保護膜4の剥離を防止できる。
このように、図1に示す保護膜4は、貫通孔の存在しない非晶質アルマイト層2の利点と、クラックが発生しにくく、耐食性に優れ、ガスの放出量の少ない結晶化アルマイト層3の利点とを合わせ持つものとなっている。その結果、図1に示すアルミニウム合金部材10は、例えば、300℃〜500℃の高温条件下においても、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する優れた耐食性が得られる。
したがって、図1に示すアルミニウム合金部材10を、例えば、プラズマCVD装置の反応室内に露出される部材として用いた場合、定期的にNFガスを用いてプラズマでクリーニングを行うことができる。このため、プラズマCVD装置を用いて液晶ディスプレーを製造する場合などに、メンテナンスに必要な時間を短縮できるとともに、生産性を向上させることができる。
「表面保護膜形成方法」
次に、図1に示すアルミニウム合金部材10の製造方法を用いて、本発明のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法の一例を説明する。
図2は、図1に示すアルミニウム合金部材の製造方法の一例を説明するための工程図である。図1に示すアルミニウム合金部材10を製造するには、まず、図2(a)に示すアルミニウム合金1を用意する。アルミニウム合金1の形状は、アルミニウム合金部材10の用途に応じて適宜決定される。すなわち、アルミニウム合金1は、板材であってもよいし、管材や棒材であってもよいし、所定の形状に成形されたものであってもよい。
次に、火花放電を用いてアルミニウム合金1の表面1aを陽極酸化する(結晶化アルマイト処理工程)。
結晶化アルマイト処理工程において用いる電解液としては、火花放電を用いる陽極酸化により、結晶化アルマイト層3が得られるものであれば、公知のものを用いることができる。具体的には、結晶化アルマイト処理工程において用いる電解液として、りん酸水素二ナトリウム、トリポリりん酸トリウム、りん酸二水素ナトリウム、ウルトラポリりん酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、二リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種類又は2種類以上の電解質を水に溶解させたアルカリ水溶液を用いることができる。これらの電解液の中でも特に、電解質としてメタケイ酸ナトリウムとリン酸三ナトリウムとを含む電解液を用いることが好ましい。このような電解液を用いて結晶化アルマイト処理工程を行うことにより、緻密な結晶化アルマイト層3が得られる。
結晶化アルマイト処理工程においては、陽極としてアルミニウム合金1を用い、陰極としてカーボンなどの導電材料を用いる。そして、電解液中で、陽極であるアルミニウム合金1に所定の電圧を印加し、火花放電を発生させて陽極酸化を行う。このことにより、アルミニウム合金1の表面1aが酸化して、図2(b)に示すように、所定の厚みを有する結晶化アルマイト層3が形成される。なお、図2(b)に示すように、結晶化アルマイト層3を形成することによって、アルミニウム合金1の表面部分が消費されて後退する。
結晶化アルマイト処理工程における電流密度、電圧、電解液温度、成膜時間などの条件は、火花放電を用いる陽極酸化を行うことにより、所定の厚みを有する結晶化アルマイト層3を形成できればよく、特に限定されるものではない。また、結晶化アルマイト処理工程における上記の条件は、成膜開始から終了まで全て一定であってもよいし、一部または全部の条件を成膜途中で変化させてもよい。
具体的には、結晶化アルマイト処理工程における電圧は、300〜500Vであることが好ましい。電圧を300V以上とすることで、火花放電を用いる陽極酸化により、効率よく結晶化アルマイト層3を形成できる。また、結晶化アルマイト処理工程における電圧を、500V以下にすることで、緻密な結晶化アルマイト層3が得られ、好ましい。
結晶化アルマイト処理工程における電流密度は、0.02〜0.1A/cmであることが好ましい。電流密度を上記範囲内とすることで、緻密な結晶化アルマイト層3が得られる。
また、結晶化アルマイト処理工程において電圧高くし、成膜時間を長くするほど、結晶化アルマイト層3の厚みは厚くなる。したがって、電圧および成膜時間は、必要とされる結晶化アルマイト層3の厚みに応じて適宜決定できる。
次に、火花放電を発生させずにアルミニウム合金1の表面31を陽極酸化する(非晶質アルマイト処理工程)。
非晶質アルマイト処理工程において用いる電解液としては、陽極酸化により、非晶質アルマイト層2が得られるものであればよく、公知のものを用いることができる。
非晶質アルマイト処理工程において用いる電解液は、結晶化アルマイト処理工程と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
非晶質アルマイト処理工程において用いる電解液として、結晶化アルマイト処理工程と異なるものを用いる場合、例えば、硫酸、シュウ酸、クロム酸などを用いることができる。
非晶質アルマイト処理工程においては、陽極として結晶化アルマイト層3の形成されたアルミニウム合金1を用い、陰極としてカーボンなどの導電材料を用いる。そして、電解液中で、陽極であるアルミニウム合金1に所定の電圧を印加し、火花放電を発生させずに陽極酸化を行う。このことにより、アルミニウム合金1の表面31が酸化して、結晶化アルマイト層3とアルミニウム合金1との間に、図2(c)に示すように、非晶質アルマイト層2が形成される。なお、図2(c)に示すように、非晶質アルマイト層2を形成することによって、非晶質アルマイト層2を形成する前のアルミニウム合金1の表面部分が消費されて、図2(c)における符号21の位置まで後退する。
非晶質アルマイト処理工程における電流密度、電圧、電解液温度、成膜時間などの条件は、火花放電を発生させずに陽極酸化を行うことにより、所定の厚みを有する非晶質アルマイト層2を形成できればよく、特に限定されるものではない。また、非晶質アルマイト処理工程における上記の条件は、成膜開始から終了まで全て一定であってもよいし、一部または全部の条件を成膜途中で変化させてもよい。
非晶質アルマイト処理工程における電圧は、結晶化アルマイト処理工程における電圧以下であることが好ましい。非晶質アルマイト処理工程における電圧は、具体的には、20V以上であることが好ましく、100V以上であることがより好ましい。非晶質アルマイト処理工程における電圧を20V以上とすることで、容易に効率よく非晶質アルマイト層2を形成できる。また、非晶質アルマイト処理工程における電圧は、220V以下であることが好ましく、200V以下であることがより好ましい。非晶質アルマイト処理工程における電圧を、220V以下にすることで、緻密な非晶質アルマイト層2が得られる。
非晶質アルマイト処理工程における電流密度は、0.01〜0.02A/cmであることが好ましい。電流密度を上記範囲内とすることで、緻密な非晶質アルマイト層2が得られる。
また、非晶質アルマイト処理工程において電圧を高くし、成膜時間を長くするほど、非晶質アルマイト層2の厚みは厚くなる。したがって、電圧および成膜時間は、必要とされる非晶質アルマイト層2の厚みに応じて適宜決定できる。
以上の工程により、アルミニウム合金1の表面に、非晶質アルマイト層2と結晶化アルマイト層3とがこの順で設けられた保護膜4が得られる。
本実施形態の結晶化アルマイト処理工程と非晶質アルマイト処理工程とにおいて、同じ電解液を用いた場合、それぞれ別の電解液を用いる場合と比較して、製造工程を簡略化することができ、効率よく保護膜4を形成できる。
また、本実施形態の結晶化アルマイト処理工程と非晶質アルマイト処理工程とにおいて、異なる電解液を用いた場合、結晶化アルマイト層3と非晶質アルマイト層2のそれぞれに、より適した条件で各処理工程を行うことができる。
本実施形態においては、非晶質アルマイト処理工程後に、300℃〜500℃の温度で、非晶質アルマイト層2と結晶化アルマイト層3とを含む保護膜4を焼結する焼結工程を行うことが好ましい。
非晶質アルマイト処理工程後の保護膜4には、結晶化アルマイト処理工程と非晶質アルマイト処理工程とにおいて使用した電解液が含まれている。焼結工程を行うことにより、保護膜4に含まれている電解液を除去することができる。その結果、アルミニウム合金部材10を薄膜形成装置の反応室内に露出される部材として用いた場合に、保護膜4から反応室内に電解液成分が放出されることを防止できる。
「実施例1、実施例2」
アルミニウム合金(母材)として、JIS A6061からなる縦150mm、横150mm、厚さ5mmの板材を用意し、以下に示す結晶化アルマイト処理工程、非晶質アルマイト処理工程、焼結工程を行って、アルミニウム合金の表面に実施例1および実施例2の保護膜を形成した。なお、アルミニウム合金(母材)は、結晶化アルマイト処理工程を行う前に、界面活性剤を用いて洗浄してから使用した。
(結晶化アルマイト処理工程)
陰極としてカーボン板を用い、陽極であるアルミニウム合金と対向配置した。そして、以下に示す電解液中で、火花放電を用いてアルミニウム合金の表面を陽極酸化して、結晶化アルマイト層を形成した。結晶化アルマイト処理工程は、0.08A/cmの電流密度で380Vの電圧で10分間、その後300Vの電圧で30分間行った。得られた結晶化アルマイト層の厚さは9.8μmであった。結晶化アルマイト層の厚さは、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定した。
(非晶質アルマイト処理工程)
結晶化アルマイト処理工程後、0.02A/cmの電流密度で、電圧を100V(実施例1)または200V(実施例2)に低下させて10分間、火花放電を発生させずにアルミニウム合金の表面を陽極酸化して、非晶質アルマイト層を形成した。得られた非晶質アルマイト層の厚さは、実施例1が120nm、実施例2が220nmであった。各非晶質アルマイト層の厚さは、断面をSEMで観察することにより測定した。
なお、結晶化アルマイト処理工程および非晶質アルマイト処理工程では、いずれも電解質としてメタケイ酸ナトリウム2.5g/Lとリン酸三ナトリウム3g/Lとを含む電解液を用いた。また、電解液の液温は、5℃に制御した。
(焼結工程)
非晶質アルマイト処理工程後、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜が表面に形成されているアルミニウム合金を、純水で十分洗浄し、真空中で400℃で10時間焼成した。
「比較例1」
非晶質アルマイト処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1および実施例2と同様にして、結晶化アルマイト層のみからなる保護膜を形成した。
このようにして得られた実施例1、実施例2、比較例1の保護膜の形成されたアルミニウム合金について、それぞれ腐食性試験を行った。腐食性試験では、図3に示すプラズマ処理装置を用いて、以下に示すプラズマ処理を行ない、プラズマ処理後の保護膜の剥離率を調べた。
図3は、耐食性試験に用いたプラズマCVD装置を説明するための図である。図3において符号11は反応室、符号12はカソード、符号13はアノード、符号14は試験体(保護膜の形成されたアルミニウム合金)、符号15は高周波供給手段、符号16はガス導入口、符号17はプラズマ、符号18はヒーターを示している。
「プラズマ処理」
まず、図3に示すプラズマ処理装置のカソード12上に、試験体14として、保護膜の形成されたアルミニウム合金を、保護膜を上に向けて設置した。次に、反応室11内の圧力が0.01Torrになるまで、ガス排出口を介して排気した。その後、カソード12に内蔵されているヒーター8に通電して、試験体14の温度が400℃になるように加熱した。試験体14の温度が400℃に到達した後、ガス導入口16からNFを100sccm、Arを100sccmの流量で供給し、排気側に設けられたコンダクタンス調整バルブ(不図示)により、反応室11内の圧力が1Torrになるようにした。この状態でカソード12に高周波(RF)供給手段15によりRF(13.56MHz)電力を供給し、試験体14とアノード13との間にプラズマ17を発生させてプラズマ処理を行った。
プラズマ処理としては、350Wで10分間の放電と、10分間の停止とを繰り返し行った。このように放電と停止を繰り返す(連続放電しない)ことで、プラズマ処理による試験体14の温度上昇を回避した。
プラズマ処理(放電時間)は、各試験体14について、それぞれ10時間、50時間、100時間行った。
「剥離率」
剥離率は、縦150mm、横150mmの試験体(保護膜の形成されたアルミニウム合金)の表面を、1区画の大きさを縦15mm、横15mmとして100区画に分け、剥離が生じている区画の数(%)を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0006257944
表1に示すように、比較例1の保護膜(非晶質アルマイト処理工程における電圧0V)の形成されたアルミニウム合金では、100時間のプラズマ処理を行った場合、剥離率が100%であった。
これに対し、実施例1(非晶質アルマイト処理工程における電圧100V)および実施例2(非晶質アルマイト処理工程における電圧200V)の保護膜の形成されたアルミニウム合金では、プラズマ処理の時間が10時間、50時間、100時間のいずれであっても比較例1と比較して剥離率が低くなった。
また、実施例1よりも非晶質アルマイト層の厚い実施例2の方が、プラズマ処理の時間が10時間、50時間、100時間のいずれであって剥離率が低くなった。
「比較例2」
電解液として硫酸を用いて、火花放電を発生させずに実施例1および実施例2と同様のアルミニウム合金の表面を陽極酸化して、厚み10μmの非晶質アルマイト層からなる保護膜を形成した。
このようにして得られた実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の保護膜の形成されたアルミニウム合金のそれぞれについて、温度を室温〜400℃まで上昇させることにより放出したガスの積算量を調べた。そして、比較例2のガスの積算量を100としたときの、実施例1、実施例2、比較例1のガスの積算量(放出ガス量)を算出した。その結果を図4に示す。
図4は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の放出ガス量を示したグラフである。図4に示すように、実施例1および実施例2の放出ガス量は、非晶質アルマイト層のみからなる保護膜の形成された比較例2と比較して、非常に少ないことが確認できた。
「実施例3〜6」
実施例1および実施例2と同様にして結晶化アルマイト処理工程を行った後、結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金を電解液から取り出し、電解液として10℃の15%硫酸を用い、0.015A/cmの電流密度で電圧を20Vとし、火花放電を発生させずにアルミニウム合金の表面を陽極酸化して、非晶質アルマイト層を形成した(非晶質アルマイト処理工程)。
なお、非晶質アルマイト処理工程における成膜時間は、5min(実施例3)、10min(実施例4)、20min(実施例5)、30min(実施例6)のいずれかとした。得られた非晶質アルマイト層の厚さは、実施例3が600nm、実施例4が1200nm、実施例5が2300nm、実施例6が3200nmであった。各非晶質アルマイト層の厚さは、断面をSEMで観察することにより測定した。
非晶質アルマイト処理工程後、実施例1および実施例2と同様にして、焼成工程を行った。
このようにして得られた実施例3〜6の保護膜の形成されたアルミニウム合金について、実施例1および実施例2と同様にして剥離率をそれぞれ調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0006257944
表2に示すように、実施例3〜6(非晶質アルマイト処理工程における処理時間5〜30min)の保護膜の形成されたアルミニウム合金では、いずれにおいても結晶化アルマイト層のみからなる保護膜の形成された表1に示す比較例1と比較して、剥離率が低かった。
また、実施例3〜6の保護膜の形成されたアルミニウム合金のそれぞれについて、実施例1および実施例2と同様にして、放出したガスの積算量を調べた。そして、比較例2のガスの積算量を100としたときの、実施例3〜6のガスの積算量(放出ガス量)を算出した。その結果を図5に示す。
図5は、実施例3〜6、比較例2の放出ガス量を示したグラフである。図5に示すように、実施例3〜6の放出ガス量は、非晶質アルマイト層のみからなる保護膜の形成された比較例2と比較して、非常に少ないことが確認できた。特に、実施例3、4(非晶質アルマイト処理工程における処理時間5min、10min)の保護膜では、比較例2の1/10以下の放出ガス量であった。
実施例1〜6、比較例1、比較例2の結果から、アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜は、400℃の高温条件下であっても、放出ガスの少ないものであることが分かった。
「実施例7〜9」
結晶化アルマイト層の厚みが5μm(実施例7)、20μm(実施例8),40μm(実施例9)となるように、実施例1の結果に基づいて電圧印加時間(成膜時間)を比例配分で変化させたこと以外は、実施例1および実施例2と同様にして結晶化アルマイト処理工程を行った。
その後、実施例3と同様にして非晶質アルマイト処理工程を行った。
得られた結晶化アルマイト層の厚さは、実施例7が5μm、実施例8が19μm、実施例9が42μmであった。また、実施例7〜実施例9の非晶質アルマイト層の厚さは、600nmであった。各結晶化アルマイト層および非晶質アルマイト層の厚さは、断面をSEMで観察することにより測定した。
非晶質アルマイト処理工程後、実施例1および実施例2と同様にして、焼成工程を行った。
このようにして得られた実施例7〜実施例9の保護膜の形成されたアルミニウム合金について、実施例1および実施例2と同様にして剥離率をそれぞれ調べた。その結果を表3に示す。なお、表3には、非晶質アルマイト層の厚さが同じである実施例3の結果も合わせて示す。
Figure 0006257944
表3に示すように、結晶化アルマイト層の厚さが厚い程、剥離率が低かった。また、実施例7〜実施例9の保護膜の形成されたアルミニウム合金では、いずれにおいても結晶化アルマイト層のみからなる保護膜の形成された表1に示す比較例1と比較して、剥離率が低かった。
また、以下に示すクラック発生試験の試験体として、実施例7〜実施例9の保護膜の形成されたアルミニウム合金を作成し、クラック発生試験を行った。
「クラック発生試験」
保護膜の形成されたアルミニウム合金に対し、400℃、10時間の熱処理を行い、SEMを用いて1000倍で観察した。
その結果、結晶化アルマイト層の厚みが5μmである実施例7と、結晶化アルマイト層の厚みが19μmである実施例8においては、クラックは観察されなかった。しかし、結晶化アルマイト層の厚さが42μmである実施例9では、結晶化アルマイト層にクラックが発生していた。
なお、クラックと剥離との関係は認められなかった。
「実施例10〜12」
結晶化アルマイト層の厚みが5μm(実施例10)、20μm(実施例11),40μm(実施例12)となるように、実施例1の結果に基づいて電圧印加時間(成膜時間)を比例配分で変化させたこと以外は、実施例1および実施例2と同様にして結晶化アルマイト処理工程を行った。
その後、実施例4と同様にして非晶質アルマイト処理工程を行った。
得られた結晶化アルマイト層の厚さは、実施例10が5μm、実施例11が19μm、実施例12が42μmであった。また、実施例10〜実施例12の非晶質アルマイト層の厚さは、1200nmであった。各結晶化アルマイト層および非晶質アルマイト層の厚さは、断面をSEMで観察することにより測定した。
非晶質アルマイト処理工程後、実施例1および実施例2と同様にして、焼成工程を行った。
このようにして得られた実施例10〜実施例12の保護膜の形成されたアルミニウム合金について、実施例1および実施例2と同様にして剥離率をそれぞれ調べた。その結果を表4に示す。なお、表4には、非晶質アルマイト層の厚さが同じである実施例4の結果も合わせて示す。
Figure 0006257944
表4に示すように、結晶化アルマイト層の厚さが5μmである実施例10と比較して、結晶化アルマイト層の厚さが9.8μmである実施例4は、剥離率が低かった。結晶化アルマイト層の厚さが19μmである実施例11、結晶化アルマイト層の厚さが42μmである実施例12は、剥離が見られなかった。
また、実施例10〜実施例12の保護膜の形成されたアルミニウム合金では、いずれにおいても結晶化アルマイト層のみからなる保護膜の形成された表1に示す比較例1と比較して、剥離率が低かった。
また、上記のクラック発生試験の試験体として、実施例10〜実施例12の保護膜の形成されたアルミニウム合金を作成し、実施例7〜実施例9と同様に、クラック発生試験を行った。
その結果、結晶化アルマイト層の厚みが5μmである実施例10と、結晶化アルマイト層の厚みが19μmである実施例11においては、クラックは観察されなかった。しかし、結晶化アルマイト層の厚さが42μmである実施例12では、結晶化アルマイト層にクラックが発生していた。
なお、クラックと剥離との関係は認められなかった。
「実施例13〜16」
電解質として、1mol/Lのケイ酸ナトリウム(NaSiO)と、1mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)とを含む電解液を用い、420Vの電圧で10分間、その後330Vの電圧で35分間行ったこと以外は、実施例1および実施例2と同様にして結晶化アルマイト処理工程を行った。
得られた結晶化アルマイト層の厚さは8.7μmであった。結晶化アルマイト層の厚さは、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定した。
その後、結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金を電解液から取り出し、実施例3〜実施例6と同様にして、非晶質アルマイト層を形成した(非晶質アルマイト処理工程)。
なお、非晶質アルマイト処理工程における成膜時間は、5min(実施例13)、10min(実施例14)、20min(実施例15)、30min(実施例16)のいずれかとした。得られた非晶質アルマイト層の厚さは、実施例13が600nm、実施例14が1200nm、実施例15が2300nm、実施例16が3200nmであった。各非晶質アルマイト層の厚さは、断面をSEMで観察することにより測定した。
非晶質アルマイト処理工程後、実施例1および実施例2と同様にして、焼成工程を行った。
このようにして得られた実施例13〜実施例16の保護膜の形成されたアルミニウム合金について、実施例1および実施例2と同様にして剥離率をそれぞれ調べた。その結果を表5に示す。
Figure 0006257944
表5に示すように、実施例13〜実施例16(非晶質アルマイト処理工程における処理時間5〜30min)の保護膜の形成されたアルミニウム合金では、いずれにおいても結晶化アルマイト層のみからなる保護膜の形成された表1に示す比較例1と比較して、剥離率が低かった。
また、表2および表5より、結晶化アルマイト処理工程において使用する電解質としてメタケイ酸ナトリウムとリン酸三ナトリウムとを用いた実施例3〜6においても、ケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとを用いた実施例13〜16においても、同等の効果が得られることが確認できた。
実施例1〜16、比較例1の結果から、アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜は、剥離しにくく、400℃の高温条件下であっても、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンに対する優れた耐食性が得られるものであることが分かった。
また、電解液として硫酸を用いて非晶質アルマイト層を形成した実施例3〜16の結果から、電解液としてシュウ酸やクロム酸を用いて非晶質アルマイト層を形成した場合にも、実施例3〜16と同様の効果が得られることは容易に推測できる。
1:アルミニウム合金、2:非晶質アルマイト層、3:結晶化アルマイト層、4:保護膜。

Claims (7)

  1. アルミニウム合金の表面に、非晶質アルマイト層と結晶化アルマイト層とがこの順で設けられた保護膜を有し、
    前記非晶質アルマイト層の厚みが、0.5μm以上、5μm以下であり、
    前記結晶化アルマイト層の厚みが、5μm以上、45μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金部材。
  2. 薄膜形成装置の反応室内に露出される部材であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金部材。
  3. 火花放電を用いてアルミニウム合金の表面を陽極酸化することにより、結晶化アルマイト層を形成する結晶化アルマイト処理工程と、
    前記結晶化アルマイト層の形成されたアルミニウム合金の表面を、火花放電を発生させずに陽極酸化することにより、非晶質アルマイト層を形成する非晶質アルマイト処理工程とを備えることを特徴とするアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
  4. 前記結晶化アルマイト処理工程と前記非晶質アルマイト処理工程とにおいて、同じ電解液を用いることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
  5. 前記結晶化アルマイト処理工程と前記非晶質アルマイト処理工程とにおいて、異なる電解液を用いることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
  6. 前記非晶質アルマイト処理工程において、前記結晶化アルマイト処理工程以下の電圧で陽極酸化を行うことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
  7. 前記非晶質アルマイト処理工程後に、前記非晶質アルマイト層と前記結晶化アルマイト層とを含む保護膜を300℃〜500℃の温度で焼結する焼結工程を備えることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載のアルミニウム合金の表面保護膜形成方法。
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