JP5371477B2 - 酸化皮膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイキャスト等を含む鋳造により得られたアルミニウム又はアルミニウム合金を被処理部材とした表面酸化皮膜の形成方法に関する。
アルミニウムやアルミニウム合金で作られる部品は多種多様であるが、複雑な形状のものを低コストで製作するために、ダイキャスト又は鋳造方法で製作することがある。
このような部材を、冷却ブロックなど水に接触させたり、腐食を誘発する部位で使う場合には、耐食処理が必要となる。
この耐食処理の方法として、ポーラス型のアノード酸化処理が一般的に使われている。
しかしながら、ポーラス型アノード酸化皮膜を、上記方法により得られた複雑な形状を有する母材に形成しようとすると、同母材中には、展伸材に比べて、シリコンやその他の含有元素が多量に含まれており、これが酸化皮膜の欠陥となり、耐食性を悪化させてしまう。また、同酸化皮膜は、母材の表面に対して垂直に成長するために、母材の入隅部等の2つの平面が交わる線状部分において、酸化皮膜がうまく成長せず耐食性を悪化させる。更に、通常、ポーラス型アノード酸化処理により形成された皮膜は、100℃以上でひび割れが生じ、そのひび割れは母材まで達し、実質的に母材の表面がそのままが露出する部分が存在するようになり、耐食性が悪くなる。
また、ポーラス型アノード酸化処理は、原理的に電極を母材表面に接触させる必要があるため、母材が貫通孔を有する場合には、電極を孔の内表面に接触させることができないと耐食処理を行うことができない。
一方、耐食処理として、バリア型アノード酸化処理を使用することができるが、耐食性の高い酸化皮膜を成長させるにはアノード酸化処理の前に膜厚5〜20nmの緻密な酸化皮膜を形成させる前処理が必要であった(特許文献1)。
上記問題に対して、特許文献2には、アルミニウム等の母材をアルカリ溶液中に浸漬してマイクロアークを印加してアノード酸化処理を行うことが開示されている。
しかしながら、同文献において開示された処理では、上記ポーラス型のアノード酸化処理と同様に、複雑な形状の母材に対して、十分な酸化皮膜を形成することができないという問題があった。
特開2006-322040号公報 特許第3881461号公報
そこで、本発明は、複雑な形状に形成されたダイキャスト等の鋳造により製造されたアルミニウム又はアルミニウム合金の母材の表面に、欠陥のない、耐食性に優れた酸化皮膜を形成することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、下記の通り解決手段を見いだした。
即ち、本発明の酸化皮膜の形成方法は、請求項1に記載の通り、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成された母材を、アルカリ溶液中に浸漬して、火花放電を伴うアノード酸化処理を行うことにより、前記母材表面に酸化皮膜を形成する方法であって、前記アノード酸化処理は、200V以上の第1の電圧で所定の時間処理する工程と、第1の電圧による処理開始時の電流密度よりも低い所定の電流密度まで低下した際に第1の電圧よりも低い他の電圧で所定の時間処理する工程とを含むことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の酸化皮膜の形成方法において、前記他の電圧は、200V〜400Vの間の電圧であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の酸化皮膜の形成方法において、第1の電圧まで、所定の電流密度で電圧を上昇させることを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法において、前記母材は、鋳造により得られたアルミニウム又はアルミニウム合金とし、前記被処理部材は、貫通孔を備えたことを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の酸化皮膜の形成方法において、前記貫通孔内に電極を配置せずに、前記酸化皮膜を形成することを特徴とする。
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法において、前記酸化皮膜が形成された母材を150℃〜500℃で加熱することを特徴とする。
本発明によれば、複雑な形状に形成されたダイキャスト等の鋳造により製造されたアルミニウム又はアルミニウム合金の母材の表面に、欠陥のない、耐食性に優れた酸化皮膜を形成することができる。また、母材表面のシリコン等の展伸材は、火花放電を伴うアノード酸化処理に用いられる電圧により、アノード酸化されて酸化シリコンとなるため耐食性を悪化させることがない。また、皮膜の厚さは、数μmであるため、入隅部等の線上部分への皮膜のつき周りが良好となる。更に、本発明により皮膜形成された部材は、400℃程度に加熱しても皮膜にひび割れが発生しないという効果を有する。また、更に、本発明によれば、塩素ガス、フッ素系ガス、アンモニア等、或いは、アルミニウム合金が変質するGaに対しても耐食性を有するものとなる。
また、本発明によれば、凹部や貫通孔を備えた母材の凹んだ部分や貫通孔の内壁面に電極を設けることなく酸化皮膜を形成することができる。
また、酸化皮膜を形成後に加熱をすることにより、より緻密で硬質な酸化皮膜とすることができる。
本発明の実施例で使用する冷却ブロックの概略図 実施例2の断面の皮膜構造を示す顕微鏡写真 実施例3の断面の皮膜構造を示す顕微鏡写真 比較例4の断面の皮膜構造を示す顕微鏡写真 本発明の実施例で使用する1/4インチガス配管用T型継ぎ手の概略図 本発明の実施例で使用する1/4インチベローズバルブの概略図 本発明の実施例で使用するフランジサイズ25の真空クランプフランジ付き配管の概略図 本発明の実施例で使用するフランジサイズ25の真空クランプフランジ付き配管の概略図 図8の配管を使用した真空装置の説明図 実施例8並びに比較例11及び12の配管の単位面積当たりのガス放出速度 本実施の形態における電圧及び電流密度の変化を示すグラフ
本発明において使用するアルカリ溶液の電解液の例としては、りん酸水素二ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム、ウルトラポリりん酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、二リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム等の中の1種類又はこれらの中の混合物を、水に溶解させたものを用いることができる。
また、母材としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用する。アルミニウム合金の鋳物材料、ダイキャスト材料はシリコンを代表として、一般的に含有されている元素が多く、ポーラス型アノード酸化皮膜が形成し難いといわれている。
本発明によれば、このようなシリコンが多い鋳物、ダイキャストでも耐食性良好な皮膜を形成することができる。また、展伸材の中でもAl−Si合金の4000番系の処理も同様な理由でポーラス型アノード酸化処理の耐食性は悪いが、本発明によれば、良好な酸化皮膜が形成できる。シリコンが析出していないような展伸材、1000番〜3000番、5000番から7000番台のアルミニウム合金についても複雑形状の場合や100℃以上の高温になる場合には効果がある。
本発明では、上記した母材を、アルカリ溶液中に浸漬して、火花放電を伴うアノード酸化処理を行うが、その際、図11に示すように、200V以上の第1の電圧(a(V))で所定の時間処理を行う工程と、電流密度に応じて、第1の電圧よりも低い他の電圧(b(V))で所定の時間処理を行う工程を含むようにする。具体的には、電流密度(iA/cm)を監視しながら、第1の電圧の処理開始時の電流密度に対して、100%以下の所望の値(例えば、80%等)で他の電圧に切り換えるための目標となる電流密度を設定しておき、その電流密度になった際に、即ち、所定の電流密度に低下した際に、第1の電圧(a(V))よりも低い電圧(b(V))まで降下させ、その電圧で処理を継続する。第1の電圧の処理開始時の電流密度としては、0.02A/cm〜0.1A/cmの範囲とすることが好ましい。0.02A/cm未満であると、電圧が上がらず放電しないことがあり、0.1A/cmを超えると電圧が高くなり形成された膜が放電により破壊され皮膜構造が粗くなり耐食性が悪化するからである。尚、他の電圧による処理は、1回以上であればよく、他の電圧まで降下させる方法は、段階的であってもリニアであってもよい。また、第1の電圧による処理時間は、上記の通り、所定の電流密度となるまで継続され、他の電圧による処理時間は、当初の電流密度(iA/cm)に対して、例えば、100%以下の所望の値(例えば、30〜40%等)の電流密度となるまで継続される。尚、第1の電圧による処理時間は、通常は、10分以上となる。
また、印加する電圧及び電流の波形に関しては、交流、直流や交流と直流の重畳のいずれでもよく、交流の場合には、電流又は電圧は、正弦波でも、正弦波でなくてもよい。
上記のように、電圧を一定で処理することにより、電流の流れやすいところ、即ち、酸化皮膜が形成されていないところに順次酸化皮膜を形成させることができ、母材中の凹んだ部分や貫通孔内に電極を配置することなく孔の内部表面までも酸化皮膜を形成させることができる。
また、他の電圧は、200V〜400Vとすることが好ましい。400Vを超えると、皮膜厚さは厚くできるものの、形成された膜が放電で破壊され、被処理対象となる部材に設けられた貫通孔や複雑に入り組んだ電極を装着することが困難な形状において、皮膜を成長させることができず、また、皮膜構造が粗くなり耐食性が悪化するからである。また、200V未満であると、放電が起こらず皮膜が200nm程度の薄い皮膜しか形成できず、耐食性が劣ることになるからである。
また、上記電圧までは、一定の電流密度で上昇させることが好ましい。
また、更に、上記酸化皮膜が形成された母材は、大気下において、150℃〜500℃で加熱することが好ましい。形成された酸化皮膜をより緻密なものとして、耐食性を向上させることができるからである。尚、上記範囲とした理由は、150℃未満であると酸化が促進されず、500℃を超えるとエネルギーを消費するだけで大きな効果は望めないためである。
(実施例1)
以下に、本発明の実施例に関し、比較例とともに説明する。
図1に示す40mm×80mm×30mmのAC4A材の長手方向内部に、端面1,1間を接続するようにして直径6mm貫通孔2を設けた水冷ブロック3を2個用意した。尚、符号4で示されるものは、水冷ブロック3の取付用孔である。
室温下で、前記水冷ブロック3を、界面活性剤を用いて室温で脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に入れ、それぞれの前記水冷ブロックに電極に接続し電圧を印加できるようにした。尚、実施例1を含む本実施例において電極は、処理対象物が貫通孔を備えている場合に、貫通孔の内壁には電極を装着しないこととした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.05A/cmになるように調整しながら火花放電を伴うアノード酸化処理を行い、最高電圧350V(実効値)まで電圧を上昇させた。そして、第1の電圧である最高電圧350V(実効値)になった時点で、電圧の上昇を停止し、該電圧による一定電圧で処理を行った。電流値が設定した電流密度(電圧上昇時の電流密度)の80%になった時点で、電圧を300V(実効値)まで降下させて該電圧で処理を継続し、電流密度が電圧上昇時の電流密度の1/3になった時点で処理を終えた。その後、水冷ブロックは80℃の温純水と常温の純水により洗浄した。尚、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は約15分、電流密度が当初の80%になるまでにかかった時間は約10分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでの時間は30分であった。
(実施例2)
実施例1の表面処理を、30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して行った。尚、本実施例では、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでの時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(実施例3)
実施例1の表面処理を、30mm×30mm×3mmのADC12材のテストピースに対して行った。尚、本実施例では、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(比較例1)
実施例1で使用した水冷ブロックと同じものを用意し、これに、ポーラス型アノード酸化処理として、膜厚20μmの硫酸アルマイトを行い、蒸気封孔処理を行った。尚、本比較例においては、電極は、貫通孔2内に入れず処理を行った。
(比較例2)
実施例1で使用した水冷ブロックと同じものを2個用意し、同ブロックに、室温下で界面活性剤により脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に入れ、それぞれの前記水冷ブロックに電極に接続し電圧を印加できるようにした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.07A/cmになるように電圧を調整しながらアノード酸化処理を30分間行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)であった。
(比較例3)
比較例1の表面処理を、30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して行った。
(比較例4)
比較例2の表面処理を、30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)であった。膜厚は、約12μmであった。
[比較試験1]
次に、実施例1並びに比較例1及び2の水冷ブロック3の冷却水の流路(貫通孔2)の内表面に形成された膜厚を、図1に示すように、冷却水の入口(端面1)からの距離(D)毎に分けて測定した結果を、表1に示す。
比較例1は、貫通孔2に電極を入れずに成膜をしたために貫通孔2の入口から20mmの箇所では酸化皮膜が成長していなかった。また、比較例2においても貫通孔2の入口付近は、約15μmの膜厚であったが、20mmの箇所では5μmとなり、40mmの箇所では膜厚が0であった。
一方、実施例1では貫通孔2の中央付近の膜厚は、入口に比べて70%程度であったが、皮膜は貫通孔2入口と同様な構造をしており、十分な耐食性を得ることが確認できた。
[比較試験2]
実施例1並びに比較例1及び2の水冷ブロックの貫通孔2を恒温循環水槽に接続して、連続100時間純水を循環させた後、冷却水中において、水冷ブロックが腐食して生成された白っぽい水酸化アルミニウムを目視で観察した。
比較例1及び比較例2では多くの水酸化アルミニウムを確認できたが、実施例1では冷却水中に水酸化アルミニウムは見つけることができなかった。
以上より、実施例1ではアルミ合金がほとんど腐食していないことがわかった。
また、水を流す前の実施例1と比較例1の水冷ブロックを貫通孔2の内壁が観察できるように切断したところ、実施例1は内壁全体に酸化皮膜が成長し、全体的に白っぽくなっていた。一方、比較例1及び2は貫通孔2の入口付近には酸化皮膜が成長していて白っぽい色をしていたが貫通孔2内部は金属色であった。このことからも、比較例1及び2の貫通孔2内壁には、全体として皮膜が形成されていないことがわかった。
[比較試験3]
室温下において、実施例1並びに比較例1及び2の水冷ブロックを20wt%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を表2に示す。
表2に示した通り、実施例1は表面の耐食性の高い酸化皮膜が存在しているために240分経過するまでは、塩酸が母材のアルミニウムと接触しなかったため激しい発泡はなかったが、240分経過後はアルミ母材と塩酸が接触するに至り、激しく発泡した。一方、比較例1及び2は、冷却貫通孔2の中央付近には、そもそも耐食性の酸化皮膜が形成されていなかったために試験開始とともにアルミ母材と塩酸が接触し激しく発泡した。
[比較試験4]
皮膜自身の耐食性を調べるために、実施例2並びに比較例3及び4のテストピースを、室温下で20wt%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を表3に示す。
表3に示した通り、激しく発泡するまでに実施例2は約300分かかったの対し、比較例3は120分であった。比較例3は全面にポーラス型アノード酸化皮膜が成長しているために上述の比較例1のように当初から激しく発泡することはなかったが、皮膜の耐食性は実施例2の方が良好であった。また、比較例4は約350分と最も耐食性が高かった。この結果から一定電流で処理を行った場合、複雑な形状をしていなければ皮膜10μm程度成長し皮膜自身の耐食性はある程度良好なものになるが、貫通孔2の内壁のような部位では、十分に皮膜成長できないために部品全体としては耐食性が悪化することがわかった。これは、一定電流処理で電圧を上昇させた場合、成長させた酸化皮膜が絶縁破壊され、その部分の膜厚だけが厚くなり、孔の中まで酸化処理が進んでいかないためである。
[比較試験5]
実施例2及び3の断面の皮膜構造を図2及び図3に示す。また、図4に比較例4の断面の皮膜構造を示す。
図2〜図4は機械加工の角部にあたる部分であるが、一様に皮膜が形成されていた。ADC12材でもAC4A材と同様な皮膜構造であるため同様の耐食性を有するものとなる。図2及び図3から、実施例2及び3は皮膜が密に形成されていることがわかり、図4から、比較例4は、膜厚は厚いもののボイドが多い構造になっていることがわかる。従って、比較例4は、皮膜構造が粗であり、膜厚当たりの耐食性は、皮膜構造が密な構造の実施例2の方が良好であることがわかる。
(実施例4)
次に、図5に示すように、ADC12材により、内部に流路(図示せず)が形成された1/4インチガス配管用T型継ぎ手5を作製し、これを2個用意した。
各継ぎ手を、界面活性剤を用い室温下で脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に、室温下で2個のT型継ぎ手を浸漬し、それぞれのT型継ぎ手に電極に接続し電圧を印加できるようにした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.05A/cmになるように調整しながら火花放電を伴うアノード酸化処理を行い、最高電圧350V(実効値)まで電圧を上昇させた。そして、第1の電圧である最高電圧350V(実効値)になった時点で、電圧の上昇を停止し、該電圧による一定電圧で処理を行った。電流値が設定した電流密度(電圧上昇時の電流密度)の80%になった時点で、電圧を300V(実効値)まで降下させて該電圧で処理を継続し、電流密度が電圧上昇時の電流密度の1/3になった時点で処理を終えた。その後、1/4インチガス配管用T型継ぎ手は80℃の温純水と常温の純水により洗浄した。尚、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は15分であった。
(実施例5)
図6に示すように、アルミニウム鋳物合金AC4A材のボディ6内部にガス流路(図示せず)が形成された1/4インチベローズバルブ7のボディ6の全面(内面に形成されるガス流路を含む)に実施例4と同様な条件で火花放電を伴うアノード酸化処理を行った。このベローズバルブの処理においては、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約6分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は15分であった。
(実施例6)
実施例4の表面処理を30mm×30mm×3mmのADC12材のテストピースに対して行った。このテストピースの処理においては、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(実施例7)
実施例4の表面処理を、30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して行った。このテストピースの処理においては、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(比較例5)
図5に示すように、ADC12材で製作した1/4インチガス配管用T型継ぎ手5を用意し、これに、ポーラス型アノード酸化処理として、膜厚20μmの硫酸アルマイトを行い、蒸気封孔処理を行った。
(比較例6)
図5に示すように、ADC12材で製作した1/4インチガス配管用T型継ぎ手5を2個用意した。
各継ぎ手を、界面活性剤を用い室温下で脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に、室温下で2個のT型継ぎ手を入れそれぞれの前記水冷ブロックに電極に接続し電圧を印加できるようにした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.07A/cmになるように電圧を調整しながらアノード酸化処理を30分間行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)であった。
(比較例7)
図6に示すように、アルミニウム鋳物合金AC4A材のボディ6内部にガス流路が形成された1/4インチベローズバルブ7のボディ部分に比較例5と同様に、ポーラス型アノード酸化処理として、硫酸アルマイトを行い、蒸気封孔処理を行った。
(比較例8)
30mm×30mm×3mmのADC12材に比較例5のポーラス型アノード酸化処理を行った。
(比較例9)
30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して、比較例5のポーラス型アノード酸化処理を行った。
(比較例10)
30mm×30mm×3mmのAC4A材のテストピースに対して、比較例6の表面処理を行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)であった。膜厚は、約12μmであった。
[比較試験6]
10wt%塩酸水溶液を20cc入れた200ccビーカーを3個用意した。それぞれに、実施例4並びに比較例5及び6の1/4インチガス配管用T型継ぎ手5を塩酸に浸らない様にプラスティック紐で吊り下げてから、ビーカーを密閉した。そのまま、5日間(120h)放置した後、実施例4並びに比較例5及び6のT型継ぎ手を取り出し、半割りにして内面を観察した。
実施例4のT型継ぎ手のボディ6の内壁はほとんど変化がなかったが、比較例5は、ボディ6の端面は大きな損傷はないものの、端面から2mm程度中に入った流路内壁には一面に孔食が発生していた。また、比較例6もボディ6の端面は大きな損傷はないものの、端面から5mm程度中に入った流路内壁には一面に孔食が発生していた。
この結果から、実施例4は、耐食性皮膜がT型継ぎ手5のボディ6の流路内壁の全面に形成されていたため塩酸雰囲気に曝されていても母材のアルミニウム合金ダイキャストが腐食されていないことがわかった。一方、比較例5及び6は、ボディ6の内壁にまで耐食皮膜が成長していなかったので下地のアルミニウム合金ダイキャストが塩酸で腐食したことがわかった。
[比較試験7]
次に、実施例4並びに比較例5及び6のT型継ぎ手の内部に形成された流路の各場所(図5のa〜e)における膜厚を測定した結果を表4に示す。
比較例5は、内部の流路内に電極を入れずに成膜をしたために配管の入り口から20mm入った継ぎ手中央付近では酸化皮膜が成長していなかった。また、比較例6においても継ぎ手入り口付近は、約10μmの膜厚であったが10mm入った箇所では7μm、中心付近では膜厚が0であった。一方、実施例7では継ぎ手の中央付近の膜厚はT型継ぎ手の入り口に比べ70%程度であったが、皮膜はT型継ぎ手入り口と同様な構造をしており、十分な耐食性を得ることができることがわかった。
[比較試験8]
次に、室温下で実施例4並びに比較例5及び6のT型継ぎ手を20%の塩酸に浸漬して、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を表5に示す。
表5に示した通り、実施例4は、表面の耐食性の高い酸化皮膜が存在しているため240分を経過するまでは母材のアルミニウムに塩酸が接触しなかったため激しい発泡はなかったが、240分経過後は、アルミ母材と塩酸が接触するに至り、激しく発泡した。一方、比較例5及び比較例6は、T型継ぎ手中央付近にはそもそも耐食性の酸化皮膜が形成されていないために試験開始とともにアルミ母材と塩酸が接触し、激しく発泡した。
[比較試験9]
室温下で、実施例5及び比較例7のボディ6をそれぞれ室温で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した。実施例5は、200分を経過するまでは激しく発泡することはなかったが、比較例7は、試験開始とともに発泡を開始した。AC4Aのバルブボディにおいても、実施例5の表面には全面に耐食性の高い酸化皮膜が存在していたために200分までアルミ母材と塩酸が接触せず発泡しなかったが、200分経過後は、アルミニウム母材と塩酸が接触するに至り激しく発泡した。一方、比較例7のボディ内部の流路の内壁には、耐食性の酸化皮膜が存在していないため、試験開始とともにアルミニウム母材と塩酸が接触し、激しく発泡した。
[比較試験10]
皮膜自身の耐食性を調べるために、実施例6及び7並びに比較例8〜10を、室温下で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を表6に示す。
激しく発泡するまでに実施例6及び7は約300分かかったの対し、比較例8及び9は約100分であった。比較例8及び9は、試料全面にポーラス型アノード酸化皮膜が成長しているために比較例5のように試験当初から激しく発泡することはなかったが、皮膜の耐食性は実施例6及び7の方が良好であった。また、比較例10は約350分と最も耐食性が高かった。この結果から一定電流で処理を行った場合、複雑な形状をしていなければ皮膜10μm程度成長し皮膜自身の耐食性はある程度良好なものになる。しかし、孔の入口や出口付近では、電位勾配が集中して入口や出口付近に偏って酸化皮膜が成長してしまい、孔の中には皮膜が成長せず、部品全体として耐食性が悪化する。一定電流処理で電圧が上がっていくと、成長させた酸化皮膜が絶縁破壊で壊され、その部分の膜厚だけが厚くなり、孔の中まで酸化処理が進んでいかないためである。また、皮膜構造が、上述の図4と同様に粗であることが推定されるため、膜厚当たりの耐食性は、密な構造の実施例6及び7の方が、良好であることが推定される。
[比較試験11]
上述したガス配管は、150℃程度に加熱されることも予測されるため、実施例6及び比較例8を予め大気炉中150℃で10時間加熱し、室温まで冷却後、室温で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した。その結果を表7に示す。
実施例6は、大気中において、加熱の有無に関係なく、激しく発泡するまでの時間は大きな変化はなく、330分であった。一方、比較例8は、3分で激しい発泡が認められた。大気中における加熱なしに比べ、大幅に時間が短縮され耐食性が悪化したことがわかる。これは、150℃の大気中加熱により、ポーラス型アノード酸化皮膜に母材まで達したひび割れが生じたためで、耐食性皮膜に覆われていない部分ができたからに他ならない。また、実施例6が大気中加熱後の方が大気中加熱前よりも耐食性が高くなったのは、大気中加熱により、表面の酸化皮膜が更に強固になった可能性がある。このように本実施例によれば温度が上昇する部分においても高い耐食性を維持できることがわかった。
(実施例8)
次に、図7に示すように、ADC12材で製作した外径30mm、内径26mm、長さ200mmのフランジサイズ25の真空クランプフランジ付き配管8を2個用意した。
各真空クランプフランジ付き配管を、界面活性剤を用い室温下で脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に、室温下で2個の真空クランプフランジ付き配管を浸漬し、それぞれに電極に接続し電圧を印加できるようにした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.05A/cmになるように調整しながら火花放電を伴うアノード酸化処理を行い、最高電圧350V(実効値)まで電圧を上昇させた。そして、第1の電圧である最高電圧350V(実効値)になった時点で、電圧の上昇を停止し、該電圧による一定電圧で処理を行った。電流値が設定した電流密度(電圧上昇時の電流密度)の80%になった時点で、電圧を300V(実効値)まで降下させて該電圧で処理を継続し、電流密度が電圧上昇時の電流密度の1/3になった時点で処理を終えた。その後、同配管は、80℃の温純水と常温の純水で洗浄した。この配管の処理においては、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は10分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約10分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は20分であった。
(実施例9)
図8に示すように、アルミニウム鋳物合金AC4A材のボディ9内部にガス流路が形成され、2つのフランジ10を備えたフランジサイズ25の真空クランプフランジ付きL型バルブ11のボディ部分全面に実施例8と同様な条件で火花放電を伴うアノード酸化処理を行った。
このL型バルブの処理においては、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は11分、電流密度が当初の80%になるまでに要した時間は約12分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでに要した時間は24分であった。
(実施例10)
実施例8の表面処理を、30mm×30mm×3mmのADC12材からなるテストピースに対して行った。本実施例において、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでにかかった時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでの時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(実施例11)
実施例8の表面処理を、30mm×30mm×3mmのAC4A材からなるテストピースに対して行った。本実施例において、350Vに電圧が上昇するまでに要した時間は5分、電流密度が当初の80%になるまでにかかった時間は約5分、300Vに電圧を下げ、当初の1/3の電流密度になるまでの時間は15分であった。膜厚は約2μmであった。
(比較例11)
図7に示すように、ADC12材で製作した外径30mm、内径26mm、長さ200mmのフランジサイズ25の真空クランプフランジ付き配管8を用意し、これに、ポーラス型アノード酸化処理として、膜厚20μmの硫酸アルマイトを行い、蒸気封孔処理を行った。
(比較例12)
図7に示すように、ADC12材で製作した外径30mm、内径26mm、長さ200mmのフランジサイズ25の真空クランプフランジ付き配管8を2個用意した。各配管に対して、界面活性剤を用い室温下で脱脂洗浄を行い、水酸化カリウム1g/L、メタケイ酸ナトリウム2g/L及びリン酸三ナトリウム3g/Lの電解液に、室温下で2個のT型継ぎ手を浸漬し、それぞれ電極に接続して、各配管に電圧を印加できるようにした。
次に、200Vの交流をトランスで昇圧し、スライダックで電流密度0.07A/cmになるように電圧を調整しながらアノード酸化処理を30分間行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)であった。
(比較例13)
図8に示すように、アルミニウム鋳物合金AC4A材のボディを持つフランジサイズ25の真空クランプ付きL型ベローズバルブ11のボディ9部分全面に比較例11と同様の処理を行った。
(比較例14)
30mm×30mm×3mmのADC12材をテストピースとして、比較例11のポーラス型アノード酸化処理を行った。
(比較例15)
30mm×30mm×3mmのAC4A材に比較例11のポーラス型アノード酸化処理を行った。
(比較例16)
30mm×30mm×3mmのAC4A材からなるテストピースに比較例12と同様の表面処理を行った。処理終了時の電圧は、470V(実効値)で、膜厚は約12μmであった。
[比較試験12]
10wt%塩酸水溶液を100cc入れた約3Lの容器を3個用意した。それぞれに、実施例8並びに比較例11及び12の真空クランプフランジ付き配管を塩酸に浸らない様にプラスティック紐で吊り下げてから、容器を密閉した。この状態で、5日間(120h)放置した後、実施例8並びに比較例11及び12の配管を取り出し、配管の軸に沿って半割りにして内面を観察した。
実施例8の配管内壁はほとんど変化がなかったが、比較例11の配管は配管の端の部分は大きな損傷はないものの、配管端から10mm程度中に入った内壁では一面に孔食が発生していた。また、比較例12の配管は配管の端の部分は大きな損傷はないものの、配管端から20mm程度中に入った内壁では一面に孔食が発生していた。実施例8は、耐食性皮膜が配管全面に形成されていたため塩酸雰囲気に曝されていても母材のアルミニウム合金ダイキャストが腐食されることはなかった。一方、比較例11及び比較例2は配管内部にまで耐食皮膜が成長していなかったので下地のアルミニウム合金ダイキャストが塩酸で腐食したことがわかった。
[比較試験12]
次に、実施例8並びに比較例11及び12の配管の内壁の各場所(図7のa〜e、図中の「場所」の単位はmm)における膜厚を示した。
比較例11は配管内に電極を入れずに成膜をしたために配管の入り口から200mm入った配管中央付近では酸化皮膜が成長していなかった。また、比較例12においても配管入り口付近は、約20μmの膜厚であったが200mm入った中心付近では0μmであった。一方、実施例8では、配管の中央付近の膜厚は配管の入り口に比べ70%程度であったが、皮膜は配管入り口と同様な構造をしており、十分な耐食性を得ることができた。
[比較試験13]
室温下で実施例8並びに比較例11及び12の配管を20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を表9に示す。
表9に示した通り、実施例8は表面の耐食性の高い酸化皮膜が存在していて180分までは母材のアルミニウムと接触しなかったため激しい発泡はなかったが、180分でアルミ母材と塩酸が接触するに至り、激しく発泡した。一方、比較例11及び比較例12のは配管手中央付近にはそもそも耐食性の酸化皮膜が形成されていないために試験開始とともにアルミ母材と塩酸が接触し、激しく発泡した。
[比較試験14]
実施例8並びに比較例11及び12の配管を、図9に示す真空装置に取り付け、ブランクのサイズ25の真空フランジを取り付けて、大気圧から排気を開始した。尚、図中符号12は、油回転ポンプ、13はターボ分子ポンプ、14はピラニー真空計、15は電離真空計、16はオリフィスである。
各例の単位面積当たりのガス放出速度を図10に示す。ガス放出速度が最も小さかったのは実施例8であり、比較例12は実施例8の1〜3倍であった。比較例12のガス放出速度は、実施例の約1000倍であった。
この結果より、実施例8のガス放出速度はその他の耐食処理に比べ小さく、真空装置に適していることがわかった。
[比較試験15]
室温下で実施例9と比較例13のL型バルブ筐体をそれぞれ室温で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を調べた。
実施例9のL型バルブ筐体は150分まで激しく発泡することはなかったが、比較例13のL型バルブ筐体は試験開始とともに発泡を開始した。AC4AのL型バルブ筐体においても、実施例9の表面には全面に耐食性の高い酸化皮膜が存在していたために150分までアルミ母材と塩酸が接触せず発泡しなかったが150分でアルミ母材と塩酸が接触するに至り激しく発泡した。一方、比較例13のL型バルブ筐体内部には耐食性の酸化皮膜が存在していないため試験開始とともにアルミニウム母材と塩酸が接触し、激しく発泡した。
[比較試験16]
皮膜自身の耐食性を調べるために、実施例10及び11並びに比較例14〜16のテストピースを室温下で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した結果を、表10に示す。
激しく発泡するまでに実施例10及び11は約300分かかったの対し、比較例14及び15は約100分であった。比較例14及び15は試料全面にポーラス型アノード酸化皮膜が成長しているために比較例11のように試験当初から激しく発泡することはないが、皮膜の耐食性は実施例10及び11の方が良好であった。また、比較例16は約350分と最も耐食性が高かった。この結果から一定電流で処理を行った場合、複雑な形状をしていなければ皮膜10μm程度成長し皮膜自身の耐食性はある程度良好なものになる。しかし、孔の入口や出口付近では、電位勾配が集中して入口や出口付近に偏って酸化皮膜が成長してしまい、孔の中には皮膜が成長せず、部品全体として耐食性が悪化する。一定電流処理で電圧が上がっていくと、成長させた酸化皮膜が絶縁破壊で壊され、その部分の膜厚だけが厚くなり、孔の中まで酸化処理が進んでいかないためである。また、比較例16の皮膜構造は、図4と同様に粗な構造と推定されるため、膜厚当たりの耐食性は、密な構造である実施例10及び11の方が良好であると推定される。
[比較試験17]
上述したガス配管は、150℃程度に加熱されることも予測されるため、実施例10及び比較例14を予め大気炉中150℃で10時間加熱し室温まで冷却後、室温で20%の塩酸に浸漬し、激しく発泡するまでの時間を測定した。その結果を表11に結果を示す。
実施例10は、大気中において、加熱の有無に関係なく、330分であった。一方、比較例14は3分で激しい発泡が認められた。大気中加熱なしに比べ、大幅に時間が短縮され耐食性が悪化したことがわかる。これは、150℃の大気中加熱により、ポーラス型アノード酸化皮膜に母材まで達したひび割れが生じたためで、耐食性皮膜に覆われていない部分ができたからに他ならない。また、実施例10が大気中加熱後の方が大気中加熱前よりも耐食性が高くなったのは、大気中加熱により、表面の酸化皮膜が更に強固になった可能性がある。このように本実施例によれば温度が上昇する部分においても高い耐食性を維持できることがわかった。
本発明は、特に、貫通孔等の電極を装着することが困難な複雑な形状を備えたアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とする部材に対して耐食性を付与する上で産業上の利用可能性を有する。
1 端面
2 貫通孔
3 水冷ブロック
4 取付用孔
5 ガス配管用T型継ぎ手
6 ボディ
7 ベローズバルブ
8 真空クランプフランジ付き配管
9 ボディ
10 フランジ
11 真空クランプフランジ付きL型バルブ
12 油回転ポンプ
13 ターボ分子ポンプ
14 ピラニー真空計
15 電離真空計
16 オリフィス

Claims (6)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金から構成された母材を、アルカリ溶液中に浸漬して、火花放電を伴うアノード酸化処理を行うことにより、前記母材表面に酸化皮膜を形成する方法であって、前記アノード酸化処理は、200V以上の第1の電圧で所定の時間処理する工程と、第1の電圧による処理開始時の電流密度よりも低い所定の電流密度まで低下した際に第1の電圧よりも低い他の電圧で所定の時間処理する工程とを含むことを特徴とする酸化皮膜の形成方法。
  2. 前記他の電圧は、200V〜400Vの間の電圧であることを特徴とする請求項1に記載の酸化皮膜の形成方法。
  3. 第1の電圧まで、所定の電流密度で電圧を上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化皮膜の形成方法。
  4. 前記母材は、鋳造により得られたアルミニウム又はアルミニウム合金とし、前記被処理部材は、貫通孔を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法。
  5. 前記貫通孔内に電極を配置せずに、前記酸化皮膜を形成することを特徴とする請求項4に記載の酸化皮膜の形成方法。
  6. 前記酸化皮膜が形成された母材を150℃〜500℃で加熱することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の酸化皮膜の形成方法。
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