JP5768933B2 - 電力貯蔵電池 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばレドックスフロー型電池等の電力貯蔵電池に関するものである。
現在、電力貯蔵は、主として揚水発電によって行われている。ところが、揚水発電所の建設は立地条件に制約があることから、新しい電力貯蔵技術、特に、技術的および経済的に実現の可能性が高い二次電池が盛んに検討されている。そして、二次電池として、近年、レドックスフロー型電池に注目がなされている。
従来、レドックスフロー型電池に用いる電解液は種々提案されている。例えば、特許文献1には、負極電解液を、鉄レドックス系物質を負極側の活物質として含むと共に、電位を負側にシフトさせるためのキレート剤や錯化剤を含む水溶液とした構成が提案されている。また、近年、例えば、正極電解液を、マンガンレドックス系物質を正極側の活物質として含む水溶液とした構成が提案されている。
ところが、マンガンの酸化物は強力な酸化力を有し、水中の有機物を幅広く分解(酸化)することが知られている。そのため、マンガンの酸化物の一種である過マンガン酸カリウムは、水中の有機物の量、つまりCOD値を測定するための酸化剤として使用されている(非特許文献1を参照)。また、マンガンイオンも強力な酸化力を有している。例えば、キレート剤や錯化剤に錯化された状態である例えばMn(III) −EDTA(エチレンジアミン四酢酸)錯体等であっても、配位子を酸化して炭酸ガスを発生させ、自己分解してしまうことが知られている(非特許文献2を参照)。
そこで、特許文献2には、マンガン化合物の沈澱を防止するために、キレート剤や錯化剤を使用することが提案されている。また、特許文献3には、微生物電池の正極電解液におけるマンガンイオンの反応性を向上させるために、キレート剤や錯化剤を使用することが提案されている。
特開昭56−42970号公報(1981年4月21日公開) 特開昭57−9073号公報(1982年1月18日公開) 特開2009−231230(2009年10月8日公開)
岩波理化学辞典 第5版(1998年2月20日 第1刷発行)223頁 発行所:岩波書店 東北大学大学院理学研究科(博士課程) 学位論文要旨「エチレンジアミンテトラアセタトマンガン酸(III) 錯体の平衡論的および速度論的研究」(1969年3月25日 学位授与) 白樫高史 和光純薬工業株式会社「MSDS/試薬ホームページ(http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/msds.htm)」 ポリエチレンイミン(整理番号:JW161783) 製品安全データシート(MSDS)(作成日:2004年7月28日、改訂日:2009年5月20日) 和光純薬工業株式会社「MSDS/試薬ホームページ(http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/msds.htm)」 エチレンジアミン(整理番号:JW050093) 製品安全データシート(MSDS)(作成日:2001年9月1日、改訂日:2010年10月14日)
しかしながら、上記特許文献2,3に記載されている構成では、マンガンイオンの酸化力によって多くの種類のキレート剤や錯化剤が分解されてしまうという不都合を有している。正極電解液に含まれるマンガンイオンの酸化力によってキレート剤や錯化剤が分解されると、レドックスフロー型電池が自己放電することになるため、当該レドックスフロー型電池のエネルギー効率が低下するという問題を有している。また、キレート剤や錯化剤が減少するのでマンガン化合物が沈澱し易くなると共に、マンガンイオンの反応性が低下する。このため、レドックスフロー型電池の性能が低下するという問題も有している。それゆえ、マンガンレドックス系物質を用いたレドックスフロー型電池は、広く一般に実用化されるまでには至っていない。
従って、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えたレドックスフロー型電池等の電力貯蔵電池が求められている。
即ち、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えたレドックスフロー型電池等の電力貯蔵電池を提供することにある。
本願発明者は、マンガンイオンの酸化力に耐えることができる(分解(酸化)されない)キレート剤や錯化剤について鋭意検討した。その結果、ポリエチレンイミンだけがマンガンイオンの酸化力に耐えることができ(分解(酸化)されず)、しかもマンガン化合物の沈澱を防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電を防止することができることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る電力貯蔵電池は、上記の課題を解決するために、レドックス型の電力貯蔵電池において、正極電解液が、正極側の活物質としてマンガンレドックス系物質を含むと共に、ポリエチレンイミンを含む水溶液であることを特徴としている。
上記の構成によれば、正極電解液がポリエチレンイミンを含む水溶液であるので、マンガン化合物の沈澱を防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電を防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性を向上させることができる。それゆえ、上記の構成によれば、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えた電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、マンガンイオンと、ポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が、1:1〜1:5の範囲内であることがより好ましい。
ここで、ポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とは、基本単位であるエチレンイミン(−CHCHNH−)に含まれる窒素原子を指す。本願発明者の検討によれば、電力貯蔵電池を、20℃付近で使用した場合には上記モル比が1:1であるとマンガンイオンの反応性が最も向上し、60℃付近で使用した場合には上記モル比が1:5であるとマンガンイオンの反応性が最も向上することが判明した。それゆえ、上記の構成によれば、マンガンイオンの反応性がより一層向上した電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、上記正極電解液に含まれるマンガン−ポリエチレンイミン錯体の濃度が、0.2モル/L以上、2.5モル/L以下であることがより好ましい。また、本発明に係る電力貯蔵電池は、上記正極電解液のpHが2〜7の範囲内であることがより好ましい。
上記の構成によれば、性能がより一層優れた電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、上記マンガンレドックス系物質が硫酸マンガンであることがより好ましい。
正極電解液に塩素イオンが含まれていると、電力貯蔵電池の充電によってマンガンイオンが酸化されるときに、塩素ガスが発生する。また、正極電解液に有機物が含まれていると、マンガンイオンの酸化力によって有機物が分解され、電力貯蔵電池が自己放電する。しかしながら、硫酸マンガンには塩素イオンや有機物は含まれていない。それゆえ、上記の構成によれば、塩素ガスが発生せず、しかも自己放電をより一層防止することができる電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、上記正極電解液が電解酸化されていることがより好ましい。
例えばマンガンレドックス系物質が硫酸マンガン(II)である場合に、硫酸マンガン(II)を含む水溶液にポリエチレンイミンを溶解させたときに生じるマンガンイオンは、二価であると考えられる。一般に、マンガンイオンは、レドックス反応時に二価と三価との間で価数が変化する。ここで、二価のマンガンイオンを含む水溶液を電解酸化すると、大部分のマンガンイオンは三価になると考えられる(但し、正確な価数(価数の分布)は不明である)。従って、マンガンイオンを含む水溶液を電解酸化してなる正極電解液に含まれる当該マンガンイオンは、レドックス反応時に三価と四価との間で価数が変化することになる。それゆえ、上記の構成によれば、マンガン化合物の沈澱をより一層防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電をより一層防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性がより一層向上した電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、上記正極電解液が大気中の酸素と遮断されていることがより好ましい。
詳細なメカニズムは不明であるものの、正極電解液が大気中の酸素に晒されると、電力貯蔵電池が自己放電してしまい、その後は良好な充放電を行うことができなくなる。それゆえ、上記の構成によれば、マンガン化合物の沈澱をより一層防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電をより一層防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性がより一層向上した電力貯蔵電池を提供することができる。
本発明に係る電力貯蔵電池は、負極電解液が、負極側の活物質として鉄レドックス系物質を含む水溶液であることがより好ましい。また、本発明に係る電力貯蔵電池は、上記負極電解液が、鉄−ジエチレントリアミン五酢酸錯体を含む水溶液であることがより好ましい。さらに、本発明に係る電力貯蔵電池は、上記負極電解液が電解酸化されていることがより好ましい。
上記の構成によれば、性能がより一層優れた電力貯蔵電池を提供することができる。
また、本発明に係る電力貯蔵電池は、レドックスフロー型電池であることがより好ましい。
本発明に係る電力貯蔵電池によれば、マンガン化合物の沈澱を防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電を防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性が向上した電力貯蔵電池を提供することができる。従って、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えた電力貯蔵電池を提供することができるという効果を奏する。
本実施の形態に係るレドックスフロー型電池の一例を示すものであり、概略の構成を示す正面図である。 本実施の形態に係るレドックスフロー型電池を用いた実施例1における充放電試験の結果を示すグラフである。 本実施の形態に係るレドックスフロー型電池を用いた実施例2における充放電試験の結果を示すグラフである。 実施例3で得られた正極電解液aに浸漬した電極の20℃での電極特性を示すグラフである。 実施例3で得られた正極電解液aに浸漬した電極の60℃での電極特性を示すグラフである。 実施例3で得られた正極電解液bに浸漬した電極の20℃での電極特性を示すグラフである。 実施例3で得られた正極電解液bに浸漬した電極の60℃での電極特性を示すグラフである。 実施例4で得られた正極電解液c−1に浸漬した電極の電極特性を示すグラフである。 実施例4で得られた正極電解液c−2に浸漬した電極の電極特性を示すグラフである。 実施例4で得られた正極電解液c−3に浸漬した電極の電極特性を示すグラフである。 実施例4で得られた正極電解液c−4に浸漬した電極の電極特性を示すグラフである。 本実施の形態に係るレドックスフロー型電池の電解液に浸漬した電極の電極特性を測定する測定装置であるサイクリックボルタンメトリーの、概略の構成を示す断面図である。 実施例2のレドックスフロー型電池の「電解液の利用率」と、比較例10のレドックスフロー型電池の「電解液の利用率」とを示すグラフである。
本発明に係る電力貯蔵電池は、レドックス型の電力貯蔵電池において、正極電解液が、正極側の活物質としてマンガンレドックス系物質を含むと共に、ポリエチレンイミンを含む水溶液である構成である。
本発明において「マンガンレドックス系物質」とは、水溶液となったときに、レドックス反応時にイオンの状態で価数が変化する(レドックス反応に関与する)マンガンイオンを生じる化合物を指す。鉄についても同様である。また、本発明において数値範囲を示す「A〜B」との記載は、特に断りが無い限り、「A以上、B以下」であることを表している。従って、本発明において例えば「pH2〜7」とは、pHが2以上、7以下であることを指す。また、本発明において「ポリエチレンイミンのモル数」とは、基本単位であるエチレンイミン(−CHCHNH−)に含まれる窒素原子のモル数を指す。従って、「ポリエチレンイミン1モル」とは、基本単位であるエチレンイミン(分子量43)に含まれる窒素原子のモル数が1モルであることを表し、即ちエチレンイミンのモル数が1モルであることを表す(それゆえ、「ポリエチレンイミン1モル」は43gである)。
本発明に係る実施の一形態について、図1に基づいて説明すれば、以下の通りである。以下の説明においては、電力貯蔵電池として、レドックスフロー型電池を一例として挙げることとする。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
〔レドックスフロー型電池〕
図1に示すように、本実施の形態に係るレドックスフロー型電池1は、充放電セル(電池容器)2、正極電解液タンク3および負極電解液タンク4を主として備えている。充放電セル2は、その内部が、例えばイオン交換膜からなる隔膜11によって正極側セル2aと負極側セル2bとに仕切られている。尚、充放電セル2には、レドックスフロー型電池1の能力(各種性能)を安定させるために、温度を一定に保つ温度調節装置が設けられていてもよい。
正極側セル2aには、例えばガラス状カーボン板等の集電板12と、例えばカーボンフェルトからなる正極13とが収容されている。負極側セル2bには、例えばガラス状カーボン板等の集電板14と、例えばカーボンフェルトからなる負極15とが収容されている。そして、正極13には正極電解液が含浸されており、負極15には負極電解液が含浸されている。上記正極電解液および負極電解液は、pHが2〜7の範囲内であり、強酸性ではなく、腐食性に乏しいので、取り扱い性に優れている。
上記集電板12・14は、充放電装置10に電気的に接続されている。そして、放電時には、正極13では還元反応が行われ、電子を受け取ると共に、負極15では酸化反応が行われ、電子を放出する。このとき、集電板12は、充放電装置10から電子を受け取って正極13に供給するようになっており、集電板14は、負極15で放出された電子を集めて充放電装置10に供給するようになっている。一方、充電時には、正極13では酸化反応が行われ、電子を放出すると共に、負極15では還元反応が行われ、電子を受け取る。このとき、集電板12は、正極13で放出された電子を集めて充放電装置10に供給するようになっており、集電板14は、充放電装置10から電子を受け取って負極15に供給するようになっている。
正極電解液タンク3は、正極電解液を貯蔵するタンクであり、正極側セル2aに接続されている。即ち、上記正極電解液タンク3は、供給管3aを介して正極側セル2a内の正極13に正極電解液を供給すると共に、正極13内を通過した正極電解液を、回収管3bを介して回収するようになっている。そして、供給管3aに設けられたポンプ5によって、正極電解液の循環が行われるようになっている。尚、充放電時における正極側セル2aに対する単位時間当たりの正極電解液の供給量や、正極電解液タンク3の容量は、充放電セル2の大きさやレドックスフロー型電池1に求める能力等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
負極電解液タンク4は、負極電解液を貯蔵するタンクであり、負極側セル2bに接続されている。即ち、上記負極電解液タンク4は、供給管4aを介して負極側セル2b内の負極15に負極電解液を供給すると共に、負極15内を通過した負極電解液を、回収管4bを介して回収するようになっている。そして、供給管4aに設けられたポンプ6によって、負極電解液の循環が行われるようになっている。尚、充放電時における負極側セル2bに対する単位時間当たりの負極電解液の供給量や、負極電解液タンク4の容量は、充放電セル2の大きさやレドックスフロー型電池1に求める能力等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
正極電解液および負極電解液を循環させることにより、充放電セル2内の電解液を入れ換えることができるので、本実施の形態に係るレドックスフロー型電池1においては、長時間の(いわゆる大容量の)充電および放電が可能となっている。
上記充放電セル2並びに正極電解液タンク3および負極電解液タンク4には、不活性ガス供給管7によって窒素ガス等の不活性ガスが、ガス供給装置(図示しない)から供給されている。これにより、上記正極電解液および負極電解液は、大気中の酸素と遮断されるようになっている。不活性ガス供給管7から供給された不活性ガスは、排気管8を通じて外部に排気される。排気管8の先端部は水封管9によって水封されており、大気の逆流を防止すると共に、充放電セル2並びに正極電解液タンク3内および負極電解液タンク4内の気圧を一定に保っている。尚、不活性ガス供給管7は、不活性ガスを、充放電セル2並びに正極電解液タンク3および負極電解液タンク4の気相部分に供給するようになっていてもよく、正極電解液中および負極電解液中にバブリングすることによって供給するようになっていてもよい。
そして、本実施の形態に係るレドックスフロー型電池1においては、上記正極電解液および負極電解液は、pHが2〜7の範囲内であり、強酸性ではなく、腐食性に乏しいので、当該レドックスフロー型電池1を構成する各構成部材の材質選択の自由度が大きい。即ち、正極電解液および負極電解液が強酸性であれば電池容器として使用することができる材質の選択に制約がある(例えば、加水分解されるプラスチックは使用することができない)のに対して、正極電解液および負極電解液が強酸性ではないので、上記充放電セル2の材質として、具体的には、例えば、汎用のプラスチックや、Sn、Al、Ti、Cu、Fe、Ni等の比較的安価な金属を用いることができる。また、正極電解液タンク3やポンプ5、供給管3a、回収管3b、負極電解液タンク4、ポンプ6、供給管4a、回収管4bの材質としても上記例示の材質を用いることができる。それゆえ、レドックスフロー型電池1を比較的安価に製造することができる。また、腐食性に乏しいので、レドックスフロー型電池1の使用寿命は、従来の(強酸性の電解液を用いた)レドックスフロー型電池と比較して長くなる。従って、レドックスフロー型電池1は、従来の(強酸性の電解液を用いた)レドックスフロー型電池と比較して、比較的安価に大量生産(工業化)することが容易である。但し、レドックスフロー型電池1を構成する各構成部材は、装置を維持するのに足りる適度な機械的強度があり、正極電解液および負極電解液によって腐蝕しない材質で構成されていればよく、従って、上記例示の材質に限定されるものではない。
〔負極電解液〕
上記負極電解液は、pHが好ましくは2〜7の範囲内であり、より好ましくは4〜6の範囲内であり、pH2〜7の条件下において良好な酸化還元反応を行うことができる(イオンの状態で価数が変化する)負極側の活物質を含む水溶液であればよい。
負極電解液としては、具体的には、例えば、Fe−DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)錯体を含む水溶液、Fe−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)錯体を含む水溶液、Fe−EGTA(O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸)錯体を含む水溶液、Fe−EDTA−OH(N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸)錯体を含む水溶液、Fe−NTA(ニトリロ三酢酸)錯体を含む水溶液、Cr−DTPA錯体を含む水溶液、Cr−EDTA錯体を含む水溶液、Cr−EGTA錯体を含む水溶液、Cr−EDTA−OH錯体を含む水溶液、Cr−NTA錯体を含む水溶液、Ti−EDTA錯体を含む水溶液、V−EDTA錯体を含む水溶液、Fe−クエン酸錯体を含む水溶液、Cu−ポリエチレンイミン錯体を含む水溶液、Cu−エチレンジアミン錯体を含む水溶液、等が挙げられ、このうち、負極側の活物質として鉄レドックス系物質を含む水溶液、即ち、Fe錯体を含む水溶液がより好ましく、Fe−DTPA錯体を含む水溶液が最も好ましい。Fe錯体を含む水溶液を負極電解液として用いたレドックスフロー型電池は、充放電反応速度に優れている。
また、負極電解液がFe錯体を含む水溶液である場合には、上記水溶液におけるFe錯体の濃度は、0.2モル/L以上、2.5モル/L以下であることがより好ましく、0.3モル/L以上、2.0モル/L以下であることがさらに好ましく、0.5モル/L以上、1.0モル/L以下であることが最も好ましい。
さらに、負極電解液は、電解酸化されていることがより好ましい。負極電解液が例えばFe−DTPA錯体を含む水溶液であり、電解酸化されている場合には、当該錯体は充電状態ではFe(II)−DTPA錯体となり、放電状態では電子を放出したFe(III) −DTPA錯体となる。上記の構成によれば、性能がより一層優れたレドックスフロー型電池を提供することができる。
また、負極電解液は、上記錯体の他に、硫酸ナトリウム(NaSO)や、酢酸ナトリウム、EDTAのナトリウム塩、NaCl等の、公知の電解質(導電塩)をさらに含んでいてもよい。尚、負極電解液の調製方法は、pHの調節方法も含めて公知の手法を採用することができ、特に限定されるものではない。また、負極電解液に用いる水は、蒸留水と同等以上の純度があれば充分である。
但し、Fe,Crのアミノポリカルボン酸キレート物を含む水溶液、特に、Crのアミノポリカルボン酸キレート物を含む水溶液は、当該キレート物、即ち錯体の形成をより完全に行わせるために、当該水溶液を加熱して4時間〜18時間程度、還流させることがより好ましい。還流操作を行わない場合には、Cr等が析出したり、当該水溶液を用いた電力貯蔵電池の充電が不可能になったりするおそれがある。尚、還流時間は、配位子の種類に応じて適宜設定すればよい。また、還流操作は、数回に分けて実施してもよい。
FeやCr等のアミノポリカルボン酸キレート物を構成するアミノポリカルボン酸としては、具体的には、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸{DTPA(Diethylene Triamine Pentaacetic acid)(「DTPA(5H)」と記載する場合もある);(CHCOOH)NCHCHN(CHCOOH)CHCHN(CHCOOH)}およびその塩、エチレンジアミン四酢酸{EDTA(Ethylene Diamine Tetraacetic acid);(CHCOOH)NCHCHN(CHCOOH)}およびその塩、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸{EGTA(O,O'-bis(2-aminoethyl)ethyleneglycol -N,N,N',N'- tetraacetic acid);(CHCOOH)NCHCHOCHCHOCHCHN(CHCOOH)}およびその塩、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸{EDTA−OH(N-(2-hydroxyethyl)ethylene diamine -N,N',N'- triacetic acid);(CHCOOH)NCHCHNCHCHOH(CHCOOH)}およびその塩、ニトリロ三酢酸{NTA(Nitrilotriacetic acid);N(CHCOOH)}およびその塩、等が挙げられる。上記アミノポリカルボン酸の塩としては、アルカリ金属塩が挙げられる。
例えばFeの無機化合物とアミノポリカルボン酸とを出発物質としてFeのアミノポリカルボン酸キレート物を調製する方法は、特に限定されるものではなく、公知のキレート化の手法を採用することができる。具体的には、Fe錯体は、FeSOを出発物質(原料)として用い、アミノポリカルボン酸を配位子として配位させることにより、製造することができる。即ち、Feのアミノポリカルボン酸キレート物の調製方法は、特に限定されるものではない。
尚、上記Feの無機化合物は、キレート化を行うのに好適な水溶性(溶解度が0.2モル/L以上)の化合物であればよい。
〔正極電解液〕
上記正極電解液は、pHが好ましくは2〜7の範囲内であり、より好ましくは3〜6の範囲内であり、pH2〜7の条件下において良好な酸化還元反応を行うことができる(イオンの状態で価数が変化する)正極側の活物質を含む水溶液、つまり、正極側の活物質としてマンガンレドックス系物質を含むと共に、ポリエチレンイミンを含む水溶液であればよい。
上記マンガンレドックス系物質は、水溶液となったときに、レドックス反応時にイオンの状態で価数が変化する(レドックス反応に関与する)マンガンイオンを生じる化合物であればよく、特に限定されないものの、塩素イオンや有機物が含まれていないことが望ましい。当該マンガンレドックス系物質としては、具体的には、例えば、硫酸マンガン、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、このうち、硫酸マンガンが最も好ましい。
正極電解液に塩素イオンが含まれていると、レドックスフロー型電池の充電によってマンガンイオンが酸化されるときに、塩素ガスが発生する。また、正極電解液に有機物が含まれていると、マンガンイオンの酸化力によって有機物が分解され、レドックスフロー型電池が自己放電する。しかしながら、上記例示の化合物には塩素イオンや有機物は含まれていないので、塩素ガスが発生せず、しかも自己放電をより一層防止することができる。
上記ポリエチレンイミンは、マンガンイオンの酸化力に耐えることができる(分解(酸化)されない)ので、マンガンイオンに対してキレート剤や錯化剤として作用して、Mn−ポリエチレンイミン錯体を形成する。ポリエチレンイミンは、通常、重合度の異なる化合物の混合物として市販されており、本発明においては市販品を好適に用いることができる。従って、ポリエチレンイミンは、Mn−ポリエチレンイミン錯体を形成するのに支障が無い範囲内で、一級、二級、三級アミン構造(分枝構造)を有する混合物であってもよい。
上記ポリエチレンイミンの平均分子量は、特に限定されないものの、キレート化を行うのに好適な水溶性(溶解度が0.2モル/L以上)を備えていることが好ましく、具体的には、300以上、10000以下であることがより好ましく、600以上、1800以下であることがさらに好ましい。ポリエチレンイミンの分子量分布は、特に限定されないものの、性能が安定するように、より狭い方が望ましい。
正極電解液がポリエチレンイミンを含むことにより、マンガン化合物の沈澱を防止することができ、レドックスフロー型電池の自己放電を防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性を向上させることができる。それゆえ、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えたレドックスフロー型電池を提供することができる。
そして、マンガンレドックス系物質に対するポリエチレンイミンの量、即ち、マンガンイオンと、ポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比は、1:1〜1:5の範囲内であることがより好ましい。ここで、ポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とは、基本単位であるエチレンイミン(−CHCHNH−)に含まれる窒素原子を指す。本願発明者の検討によれば、レドックスフロー型電池を、20℃付近で使用した場合には上記モル比が1:1であるとマンガンイオンの反応性が最も向上し、60℃付近で使用した場合には上記モル比が1:5であるとマンガンイオンの反応性が最も向上することが判明した。それゆえ、上記の構成によれば、マンガンイオンの反応性をより一層向上させることができる。
従って、正極電解液は、Mn−ポリエチレンイミン錯体を含む水溶液である。上記正極電解液に含まれるMn−ポリエチレンイミン錯体の濃度は、0.2モル/L以上、2.5モル/L以下であることがより好ましく、0.2モル/L以上、1.5モル/L以下であることがさらに好ましく、0.5モル/L以上、1.5モル/L以下であることが最も好ましい。
さらに、正極電解液は、電解酸化されていることがより好ましい。正極電解液が電解酸化されている場合には、Mn−ポリエチレンイミン錯体は充電状態では電子を放出したMn(IV)−ポリエチレンイミン錯体となり、放電状態ではMn(III) −ポリエチレンイミン錯体となる。具体的には、例えばマンガンレドックス系物質が硫酸マンガン(II)である場合に、硫酸マンガン(II)を含む水溶液にポリエチレンイミンを溶解させたときに生じるマンガンイオンは、二価であると考えられる。一般に、マンガンイオンは、レドックス反応時に二価と三価との間で価数が変化する。ここで、二価のマンガンイオンを含む水溶液を電解酸化すると、大部分のマンガンイオンは三価になると考えられる(但し、正確な価数(価数の分布)は不明である)。従って、マンガンイオンを含む水溶液を電解酸化してなる正極電解液に含まれる当該マンガンイオンは、レドックス反応時に三価と四価との間で価数が変化することになる。それゆえ、上記の構成によれば、充電状態では電子を放出したMn(IV) −ポリエチレンイミン錯体とすることができ、放電状態ではMn(III) −ポリエチレンイミン錯体とすることができるので、マンガン化合物の沈澱をより一層防止することができ、レドックスフロー型電池の自己放電をより一層防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性をより一層向上させることができる。
また、正極電解液は、上記Mn−ポリエチレンイミン錯体の他に、硫酸ナトリウム(NaSO)や、酢酸ナトリウム、EDTAのナトリウム塩、NaCl等の、公知の電解質(導電塩)をさらに含んでいてもよい。尚、正極電解液の調製方法は、pHの調節方法も含めて公知の手法を採用することができ、特に限定されるものではない。また、正極電解液に用いる水は、蒸留水と同等以上の純度があれば充分である。
さらに、上記正極電解液は、上述した通り、レドックスフロー型電池内では不活性ガスによって大気中の酸素と遮断されていることがより好ましい。詳細なメカニズムは不明であるものの、正極電解液が大気中の酸素に晒されると、レドックスフロー型電池が自己放電してしまい、その後は良好な充放電を行うことができなくなる。それゆえ、正極電解液を大気中の酸素と遮断することにより、マンガン化合物の沈澱をより一層防止することができ、レドックスフロー型電池の自己放電をより一層防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性をより一層向上させることができる。
〔レドックスフロー型電池の性能〕
レドックスフロー型電池の起電力は、高い方がより好ましい。本実施の形態に係るレドックスフロー型電池は、正極電解液がMn−ポリエチレンイミン錯体を含む水溶液であり、Mnは起電力が比較的高いため、1.0V以上の高出力のレドックスフロー型電池とすることができる。
また、一般に、レドックスフロー型電池は、クーロン効率が高い方が、エネルギー効率が高くなり、充放電サイクル特性(可逆性)も良好となる。そして、クーロン効率は、実用的には65%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。エネルギー効率は、実用的には40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。充放電サイクル特性(可逆性)は、実用的には90%以上であることが好ましい。また、電圧効率は、実用的には60%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。電解液の利用率は、実用的には28%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。
本実施の形態に係るレドックスフロー型電池は、正極電解液がMn−ポリエチレンイミン錯体を含む水溶液であるので、クーロン効率を65%以上、より好ましくは80%以上にすることができる。また、エネルギー効率を40%以上、より好ましくは60%以上にすることができる。さらに、充放電サイクル特性(可逆性)を90%以上にすることができる。また、電圧効率を60%以上、より好ましくは75%以上にすることができる。さらに、電解液の利用率を28%以上、より好ましくは75%以上にすることができる。
そして、本実施の形態に係るレドックスフロー型電池は、数千サイクルの使用に耐えることができるため、電力貯蔵電池として好適に用いることができる。尚、各種性能(充放電サイクル特性(可逆性)、クーロン効率、電圧効率、エネルギー効率および電解液の利用率)の具体的な算出方法については、後段の実施例にて説明する。
また、本実施の形態に係るレドックスフロー型電池においては、上述した通り、正極電解液および負極電解液が、互いに異なる組成の水溶液(いわゆる二液式)からなっていてもよく、或いは、正極側に存在する正極側の活物質の量(濃度)、並びに、負極側に存在する負極側の活物質の量(濃度)を維持するために、両電解液を混合してなる互いに同一組成の水溶液(いわゆるプレミックス方式)からなっていてもよい。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。尚、各実施例にて示された技術内容は、別の実施例にて示された技術内容と適宜組み合わせて用いることができる。
〔実施例1〕
レドックスフロー型電池の性能評価を下記方法にて行った。
負極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(7.87g)のDTPA(5H)と0.1モル(4.0g)のNaOHとを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、0.02モル(5.56g)のFeSO・7HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Fe(II)−DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
続いて、下記方法によって上記水溶液の電解酸化を行った。即ち、図1に示す構成を有するレドックスフロー型電池を用いて水溶液の電解酸化を行った。但し、電解酸化(および後述する充放電試験)に用いたレドックスフロー型電池は、試験用の小規模の電池である。正極および負極として、カーボンフェルトの一種であるSGL社製のGFA5を用い、電極面積を10cmとした。隔膜として、イオン交換膜の一種であるアストム社製のCMSを用いた。集電板として、ガラス状カーボン板の一種である昭和電工株式会社製のSGカーボン(厚さ0.6mm)を用いた。充放電セルとして、プラスチック容器を用い、上記正極、負極、隔膜、集電板を装填した状態で、正極側および負極側の容量(電解液の容量)がそれぞれ3mlとなるように調節した。
正極電解液タンクおよび負極電解液タンクとして、容量30mlのガラス容器を用いた。供給管、回収管、不活性ガス供給管、排気管等の各種配管として、シリコーン製のチューブを用いた。ポンプとして、東京理科器械株式会社製のマイクロチューブポンプMP−1000を用いた。そして、充放電装置として、菊水電子工業株式会社製の充放電バッテリテストシステムPFX200を用いた。
上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにFe(II)−DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液20mlを入れ、負極電解液タンクにNaSOの濃度が0.5モル/Lである水溶液20mlを入れた。そして、200mAの定電流で32分間、充電(計384クーロン)を行った。充電の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、水溶液中の溶存酸素も追い出した。これにより、正極電解液タンクに入れた水溶液に含まれるFe(II)−DTPA錯体を電解酸化して、Fe(III) −DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製し、負極電解液とした。尚、充電中、負極側では水素ガスが発生した。
一方、正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約2mlを滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを6に調節した後、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
続いて、負極電解液の電解酸化の方法と同様の方法によって上記水溶液の電解酸化を行った。即ち、上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにMn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液20mlを入れ、負極電解液タンクにFe(III) −DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである前記水溶液20mlを入れた。そして、200mAの定電流で32分間、充電(計384クーロン)を行った。充電の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、水溶液中の溶存酸素も追い出した。これにより、正極電解液タンクに入れた水溶液に含まれるMn(II)−ポリエチレンイミン錯体を電解酸化して、Mn(III) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製し、正極電解液とした。但し、電解酸化したMn−ポリエチレンイミン錯体の正確な価数(価数の分布)は不明である。
上記正極電解液および負極電解液を用いて、上記構成のレドックスフロー型電池の充放電試験を下記条件で行った。
即ち、上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにMn(III) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液20mlを入れ、負極電解液タンクにFe(III) −DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである前記水溶液20mlを入れた。充放電試験は、100mAの定電流で40分間、充電(計240クーロン)を行い、放電を100mAの定電流で行った。放電終止電圧は0.0Vに設定した。そして、充電から始めて、充放電を五回(5サイクル)繰り返した。尚、充放電試験の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、電解液中の溶存酸素を追い出した。
正極側のレドックス反応は「Mn(III) −ポリエチレンイミン錯体 ⇔ Mn(IV)−ポリエチレンイミン錯体 + e」であり、負極側のレドックス反応は「Fe(III) −DTPA錯体 + e ⇔ Fe(II)−DTPA錯体」であると考えられる。
充放電試験の結果(電池電圧の推移)を図2にグラフとして示す。当該グラフから、上記レドックスフロー型電池の各種性能、即ち、「充放電サイクル特性(可逆性)」、「クーロン効率」、「電圧効率」、「エネルギー効率」および「電解液の利用率」を算出した。また、1サイクル目の充放電において、充電から放電に切り替わるとき(電流が0mAのとき)の端子電圧を読み取って「起電力」とした。
上記「充放電サイクル特性(可逆性)」は、2サイクル目の充放電における放電時のクーロン量bと、3サイクル目の充放電における放電時のクーロン量eとを求め、式「(e/b)×100」(%)を用いて算出した。そして、算出した数値が80%以上である場合を「○」(繰り返しの充放電可能)、80%未満である場合を「×」(繰り返しの充放電不可能)と評価した。
上記「クーロン効率」は、2サイクル目の充放電における充電時のクーロン量aおよび放電時のクーロン量bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「電圧効率」は、2サイクル目の充放電における充電時の平均の端子電圧aおよび放電時の平均の端子電圧bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「エネルギー効率」は、2サイクル目の充放電における充電時の電力量aおよび放電時の電力量bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「電解液の利用率」は、正極側または負極側に供給される電解液の活物質の量(モル数)にファラデー定数(96500クーロン/モル)を乗じてクーロン量cを求めると共に、1サイクル目の充放電における放電時のクーロン量dを求め、式「(d/c)×100」(%)を用いて算出した。尚、いわゆる二液式で、正極側に供給される電解液の活物質の量と、負極側に供給される電解液の活物質の量とに差がある場合には、少ない量の方を採用して算出することとした。
その結果、「起電力」は1.2V、「充放電サイクル特性(可逆性)」は「○」(103%)、「クーロン効率」は85%、「電圧効率」は85%、「エネルギー効率」は72%、「電解液の利用率」は53%であった。従って、上記構成のレドックスフロー型電池は、電力貯蔵電池として好適に使用することができることが判った。
また、「電解液の電位」を下記方法で評価した。即ち、レドックスフロー型電池の正極電解液タンクおよび負極電解液タンクに予め黒鉛電極と銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極とを各々挿入し、充放電時の銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極に対する黒鉛電極の電位を測定することによって評価した。その結果、正極電解液の電位は、放電終止時が0.94V、充電終止時が1.06Vであった。また、負極電解液の電位は、放電終止時が0.00V、充電終止時が−0.13Vであった。
尚、上記各種性能(充放電サイクル特性(可逆性)、クーロン効率、電圧効率、エネルギー効率、電解液の利用率、および電解液の電位)の具体的な算出方法については、公知の方法を採用することもできる。
次に、上記正極電解液および負極電解液を用いて、上記構成のレドックスフロー型電池の自己放電試験を下記条件で行った。
即ち、上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにMn(III) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液20mlを入れ、負極電解液タンクにFe(III) −DTPA錯体の濃度が0.2モル/Lである前記水溶液20mlを入れた。また、上記正極電解液タンクおよび負極電解液タンクに予め黒鉛電極と銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極とを各々挿入した。自己放電試験は、100mAの定電流で30分間、充電(計180クーロン)を行って、充電後の銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極に対する黒鉛電極の電圧を測定した後、レドックスフロー型電池を室温(約25℃)で一晩(約18時間)静置して、そのときの銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極に対する黒鉛電極の電圧を測定し、両電圧を比較することによって行った。上記条件で充電したときの充電後の正極電解液には、Mn(III) −ポリエチレンイミン錯体が約0.1モル/Lの濃度、および、Mn(IV)−ポリエチレンイミン錯体が約0.1モル/Lの濃度で(凡そ50%:50%で)含まれており、充電後の負極電解液には、Fe(III) −DTPA錯体が約0.1モル/Lの濃度、および、Fe(II)−DTPA錯体が約0.1モル/Lの濃度で(凡そ50%:50%で)含まれていると考えた。尚、自己放電試験の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、電解液中の溶存酸素を追い出した。
その結果、正極電解液の充電後の電圧は1.00Vであり、一晩静置後の電圧は1.00Vであった。また、負極電解液の充電後の電圧は−0.07Vであり、一晩静置後の電圧は−0.07であった。従って、上記構成のレドックスフロー型電池は、実質的に自己放電しない(自己放電が充分に遅い)ことが判った。
〔実施例2〕
負極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約3mlを滴下してpHを6に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.19g)のCuSOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Cu(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。当該水溶液のpHは3であった。
一方、正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約3mlを滴下してpHを6に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを5に調節した後、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
続いて、実施例1の電解酸化の方法と同様の方法によって上記水溶液の電解酸化と電解還元とを行った。即ち、上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにMn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液15mlを入れ、負極電解液タンクにCu(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである前記水溶液15mlを入れた。但し、集電板として、正極側の集電板には純チタン(厚さ0.6mm)を用い、負極側の集電板にはガラス状カーボン板の一種である昭和電工株式会社製のSGカーボン(厚さ0.6mm)を用いた。
そして、100mAの定電流で50分間、充電(計300クーロン)を行った。充電の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、水溶液中の溶存酸素も追い出した。これにより、正極電解液タンクに入れた水溶液に含まれるMn(II)−ポリエチレンイミン錯体を電解酸化して、Mn(III) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製し、正極電解液とした。但し、電解酸化したMn−ポリエチレンイミン錯体の正確な価数(価数の分布)は不明である。
一方、充電中、負極電解液タンクのCu(II)−ポリエチレンイミン錯体は還元されて、Cu(I) −ポリエチレンイミン錯体となり、従って水溶液はCu(I) −ポリエチレンイミン錯体の水溶液となった。但し、電解還元したCu−ポリエチレンイミン錯体の正確な価数(価数の分布)は不明である。
上記正極電解液および負極電解液を用いて、実施例1に記載したレドックスフロー型電池と同様の構成を備えたレドックスフロー型電池の充放電試験を下記条件で行った。
即ち、上記構成のレドックスフロー型電池の、正極電解液タンクにMn(III) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液15mlを入れ、負極電解液タンクにCu(I) −ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである前記水溶液15mlを入れた。充放電試験は、100mAの定電流で40分間、充電(計240クーロン)を行い、放電を100mAの定電流で行った。放電終止電圧は0.0Vに設定した。そして、充電から始めて、充放電を三十回(30サイクル)繰り返す前試験を行った後、本試験として充放電を二十回(20サイクル、計50サイクル)繰り返した。尚、充放電試験の開始前および期間中、不活性ガス供給管から窒素ガスを供給して、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクの気相部分から酸素を追い出すと共に、電解液中の溶存酸素を追い出した。
正極側のレドックス反応は「Mn(III) −ポリエチレンイミン錯体 ⇔ Mn(IV)−ポリエチレンイミン錯体 + e」であり、負極側のレドックス反応は「Cu(II)−ポリエチレンイミン錯体 + e ⇔ Cu(I) −ポリエチレンイミン錯体」であると考えられる。尚、前試験においては、濃度が0.2モル/LであるCu(II)−ポリエチレンイミン錯体が形成(再生)されていると考えられる。
充放電試験の本試験(31サイクル目〜50サイクル目)の結果(電池電圧の推移)を図3にグラフとして示す。当該グラフから、実施例1と同様にして、上記レドックスフロー型電池の各種性能、即ち、「充放電サイクル特性(可逆性)」、「クーロン効率」、「電圧効率」、「エネルギー効率」および「電解液の利用率」を算出した。但し、各算出方法は下記方法とした。また、31サイクル目の充放電において、充電から放電に切り替わるとき(電流が0mAのとき)の端子電圧を読み取って「起電力」とした。
上記「充放電サイクル特性(可逆性)」は、31サイクル目の充放電における放電時のクーロン量bと、50サイクル目の充放電における放電時のクーロン量eとを求め、式「(e/b)×100」(%)を用いて算出した。
上記「クーロン効率」は、50サイクル目の充放電における充電時のクーロン量aおよび放電時のクーロン量bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「電圧効率」は、32サイクル目の充放電における充電時の平均の端子電圧aおよび放電時の平均の端子電圧bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「エネルギー効率」は、32サイクル目の充放電における充電時の電力量aおよび放電時の電力量bを求め、式「(b/a)×100」(%)を用いて算出した。
上記「電解液の利用率」は、正極側または負極側に供給される電解液の活物質の量(モル数)にファラデー定数を乗じてクーロン量cを求めると共に、31サイクル目の充放電における放電時のクーロン量dを求め、式「(d/c)×100」(%)を用いて算出した。尚、いわゆる二液式で、正極側に供給される電解液の活物質の量と、負極側に供給される電解液の活物質の量とに差がある場合には、少ない量の方を採用して算出することとした。
その結果、「起電力」は1.08V、「充放電サイクル特性(可逆性)」は「○」(101%)、「クーロン効率」は94%、「電圧効率」は55%、「エネルギー効率」は51%、「電解液の利用率」は78%であった。従って、上記構成のレドックスフロー型電池は、電力貯蔵電池として好適に使用することができることが判った。
また、「電解液の電位」を実施例1と同様にして評価した。その結果、正極電解液の電位は、放電終止時が0.94V、充電終止時が1.06Vであった。また、負極電解液の電位は、放電終止時が0.14V、充電終止時が0.06Vであった。
〔実施例3〕
マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比を変更したときの正極電解液の性能評価を、サイクリックボルタンメトリーを用いて下記方法にて行った。即ち、正極電解液の性能を評価するために、測定装置として下記構成のサイクリックボルタンメトリーを用いて、正極電解液に浸漬した電極の電極特性を測定(電気化学測定)した。サイクリックボルタンメトリー(CV)の概略の構成を、図12に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図12に示すように、サイクリックボルタンメトリー20は、フッ素樹脂からなる環状の上ブロック27aおよび板状の下ブロック27bを備えており、これら上ブロック27aおよび下ブロック27b間にO−リング25を介して、グラッシーカーボン(東海カーボン株式会社製)からなる電極23を作用電極として挟み込み、ボルト26a・26bで固定することによって、セル29を構成するようになっている。セル29には正極電解液が被測定電解液24として満たされている。サイクリックボルタンメトリー20は、当該セル29内に、銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極からなる参照電極21、および白金線からなる対極22を被測定電解液24に浸漬するように備えると共に、セル29を覆う蓋30を有している。対極22は参照電極21に巻回するように一定の間隔を空けて配置されている。蓋30には参照電極21、対極22、およびチューブ28を通す孔が形成されている。チューブ28は、図示しない供給装置からセル29内における被測定電解液24の上方に窒素ガスを供給するようになっており、供給した窒素ガスで被測定電解液24を大気中の酸素と遮断し、酸素の影響を排除するようになっている。
上記構成のサイクリックボルタンメトリー20を用いて、正極電解液に浸漬した電極の電極特性を測定(電気化学測定)して、正極電解液の性能を評価した。具体的には、サイクリックボルタンメトリー20を電気化学測定システム(HZ−5000;北斗電工株式会社製)に電気的に接続し、測定温度を20℃または60℃、被測定電解液24に接触する電極23の表面積を0.44cm、掃引速度(走査速度)を100mV/s、掃引範囲(走査範囲)を−1.0V〜1.5V(対銀/塩化銀(飽和塩化カリウム水溶液)電極)、掃引回数(充放電の繰り返しサイクル数)を50回にして、電極23の電極特性を測定した。
上記被測定電解液として、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:1の正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約2mlを滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:1の、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製し、正極電解液aとした。
そして、上記構成のサイクリックボルタンメトリーを用いて、上記正極電解液aに浸漬した電極の電極特性を、上記条件にて測定(電気化学測定)した。得られた電極特性をグラフにして図4,5に示す。図4は測定温度が20℃の場合のグラフであり、図5は測定温度が60℃の場合のグラフである。当該グラフにおいては、横軸を電極電位(V VS Ag/AgCl)、縦軸を応答電流値(mA)とした。グラフに描かれている曲線(サイクリックボルタモグラム)の形状から、正極電解液aの充放電サイクル特性(可逆性)を評価することができる。
当該グラフに描かれている特有の形状を有する曲線(サイクリックボルタモグラム)において、下側の曲線が還元波、上側の曲線が酸化波を示す。電極電位を1.5Vから−1.0Vへ掃引することにより、下側の曲線である還元波が右側から左側に向かって描かれる。このとき、被測定電解液24において電極23近傍に存在する酸化体であるMn(IV)−ポリエチレンイミン錯体は、還元体であるMn(III) −ポリエチレンイミン錯体へと還元される。逆に、電極電位を−1.0Vから1.5Vへ掃引することにより、上側の曲線である酸化波が左側から右側に向かって描かれる。このとき、被測定電解液24において電極23近傍に存在する還元体であるMn(III) −ポリエチレンイミン錯体は、酸化体であるMn(IV)−ポリエチレンイミン錯体へと酸化される。そして、還元波および酸化波における応答電流値は、ぞれぞれ、被測定電解液24において電極23近傍にて生じた酸化還元反応でよって発生した微弱電流を示す。また、還元波および酸化波両方におけるピーク電位(Ep)の平均値から、Mn−ポリエチレンイミン錯体の酸化還元反応系の酸化還元電位が判る。
グラフに描かれている曲線の形状から、Mn−ポリエチレンイミン錯体の三価−四価間の酸化還元反応が安定して繰り返され、再現性に優れていることが判った。
次に、上記被測定電解液として、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:5の正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.10モル(4.30g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約10mlを滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:5の、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製し、正極電解液bとした。
そして、正極電解液aと同様にして、上記正極電解液bに浸漬した電極の電極特性を、上記条件にて測定(電気化学測定)した。得られた電極特性をグラフにして図6,7に示す。図6は測定温度が20℃の場合のグラフであり、図7は測定温度が60℃の場合のグラフである。
グラフに描かれている曲線の形状から、Mn−ポリエチレンイミン錯体の三価−四価間の酸化還元反応が安定して繰り返され、再現性に優れていることが判った。
そして、図4のグラフと図6のグラフとの比較から、20℃においては、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:1の正極電解液aの方が、充放電サイクル特性(可逆性)に優れ、マンガンイオンの反応性が向上することが判った。また、図5のグラフと図7のグラフとの比較から、60℃においては、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:5の正極電解液bの方が、充放電サイクル特性(可逆性)に優れ、マンガンイオンの反応性が向上することが判った。
上記性能評価の結果から、レドックスフロー型電池の使用温度(運転温度)に応じて、正極電解液におけるマンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比を変更することにより、充放電サイクル特性(可逆性)に優れ、マンガンイオンの反応性がより一層向上したレドックスフロー型電池を提供することができることが判った。
〔実施例4〕
pHを変更したときの正極電解液の性能評価を、実施例3で用いたサイクリックボルタンメトリーと同様のサイクリックボルタンメトリーを用いて、同様の方法にて行った。
被測定電解液として、pHが1.28〜6.80の範囲の正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約2mlを滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
その後、当該水溶液を四等分し、それぞれの水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを1.28,3.01,5.80,6.80に調節し、正極電解液c−1〜c−4とした。
そして、上記サイクリックボルタンメトリーを用いて、上記正極電解液c−1〜c−4に浸漬した電極の電極特性を、実施例3と同様の条件にて測定(電気化学測定)した。但し、測定温度は20℃とした。得られた電極特性をグラフにして図8〜11に示す。図8はpHが1.28の場合(正極電解液c−1)のグラフであり、図9はpHが3.01の場合(正極電解液c−2)のグラフであり、図10はpHが5.80の場合(正極電解液c−3)のグラフであり、図11はpHが6.80の場合(正極電解液c−4)のグラフである。
グラフに描かれている曲線の形状から、正極電解液のpHが2〜7の範囲内である正極電解液c−2〜c−4では、Mn−ポリエチレンイミン錯体の三価−四価間の酸化還元反応が安定して繰り返され、再現性に優れていることが判った。一方、正極電解液のpHが2〜7の範囲外である正極電解液c−1では、正極電解液c−2〜c−4と比較して、上記三価−四価間の酸化還元反応の反応性に劣ることが判った。
上記性能評価の結果から、正極電解液のpHが2〜7の範囲内である正極電解液を用いることにより、性能がより一層優れたレドックスフロー型電池を提供することができることが判った。
〔実施例5〕
正極電解液に含まれるMn(II)−ポリエチレンイミン錯体の溶解度を、下記方法にて確認した。
即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(0.86g)のポリエチレンイミンを加えて溶解させた。当該ポリエチレンイミンとして、平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸約2mlを滴下してpHを7に調節した。次いで、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、マンガンイオンとポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が1:1の、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
そして、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、全量が8mlになるまで当該水溶液の水分を蒸発させた後、室温(約25℃)まで冷却した。上記水溶液を全量が8mlになるまで濃縮したことにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度は2.5モル/Lになったものの、マンガン化合物の析出は室温(約25℃)でも認められなかった。つまり、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の溶解度は2.5モル/L以上であることが判り、正極電解液に含まれるマンガン−ポリエチレンイミン錯体の濃度を、0.2モル/L以上、2.5モル/L以下に調節することができることが判った。これにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体を含む正極電解液は、レドックスフロー型電池に好適に使用することができることが判った。
さらに、上記濃縮後の水溶液(全量8ml)に、0.02モル(2.84g)のNaSOを加え、全量が15mlになるように蒸留水を加えた後、マグネティックスターラーを用いて攪拌したところ、NaSOは溶解した。従って、全量が15mlの水溶液に0.02モルのMn(II)−ポリエチレンイミン錯体と0.02モルのNaSOとが溶解したことになるので、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体と導電塩であるNaSOとをモル比1:1で溶解させた水溶液におけるMn(II)−ポリエチレンイミン錯体の溶解度は1.33モル/L以上であることが判った。これにより、導電塩を用いた場合においても、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体を含む正極電解液は、レドックスフロー型電池に好適に使用することができることが判った。
〔比較例1〕
導電塩としてNaSOの替わりに0.10モル(5.85g)のNaClを加えた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、Mn(II)−ポリエチレンイミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
続いて、この水溶液を電解酸化して正極電解液を調製しようとしたところ、水溶液から塩素ガスが発生した。従って、正極電解液に塩素イオンが多く含まれている(この場合は1モル/L)と、マンガンイオンが酸化されるときに、マンガンの酸化反応が妨げられて塩素ガスが発生することが判った。
〔比較例2〕
自己放電試験において充電後に、充放電セル並びに正極電解液タンクおよび負極電解液タンクを大気中に暴露した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。その結果、レドックスフロー型電池は、正極電解液の液面に接するガスに酸素が多く含まれている(大気では約20%)と、自己放電する(自己放電が非常に速い)ことが判った。
〔比較例3〕
正極電解液として下記水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
即ち、先ず、蒸留水50mlに、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、0.02モル(8.32g)のEDTA(4Na)・2HO(EDTAの四ナトリウム塩)を加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−EDTA錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。そして、上記水溶液を正極電解液として用いて、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
その結果、正極電解液の充電後の電圧は0.55Vであり、一晩静置後の電圧は0.30Vであった。従って、ポリエチレンイミンの替わりにポリアミノカルボン酸であるEDTA(4Na)・2HOを含む正極電解液を用いたレドックスフロー型電池は、自己放電する(自己放電が非常に速い)ことが判った。
また、一晩静置している間に、正極電解液では炭酸ガスの発生(気泡の発生)が認められた。当該現象は非特許文献2に記載されている現象と一致しているので、配位子であるEDTAが酸化され、自己分解したと考えられる。
〔比較例4〕
正極電解液として下記水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
即ち、先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、0.02モル(5.56g)のEDTA−OHと、0.06モル(2.4g)のNaOHとを少量ずつ添加して溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−EDTA−OH錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。そして、上記水溶液を正極電解液として用いて、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
その結果、正極電解液の充電後の電圧は0.48Vであり、一晩静置後の電圧は0.40Vであった。従って、ポリエチレンイミンの替わりにポリアミノカルボン酸であるEDTA−OHを含む正極電解液を用いたレドックスフロー型電池は、自己放電する(自己放電が速い)ことが判った。
〔比較例5〕
先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(2.96g)のマロン酸二ナトリウムを加えて溶解させた後、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。続いて、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−マロン酸錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製しようとしたが、マンガン化合物が直ちに析出することが判った。従って、ポリエチレンイミンの替わりにポリカルボン酸であるマロン酸を用いて、Mn(II)−マロン酸錯体を充分な濃度で含む正極電解液を調製することができないことが判った。
〔比較例6〕
先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(3.24g)のコハク酸二ナトリウムを加えて溶解させた後、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。続いて、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−コハク酸錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製しようとしたが、マンガン化合物が直ちに析出することが判った。従って、ポリエチレンイミンの替わりにポリカルボン酸であるコハク酸を用いて、Mn(II)−コハク酸錯体を充分な濃度で含む正極電解液を調製することができないことが判った。
〔比較例7〕
正極電解液として下記水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
即ち、先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(2.68g)のDL−リンゴ酸を加えて溶解させた後、0.04モル(1.6g)のNaOHを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−DL−リンゴ酸錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。そして、上記水溶液を正極電解液として用いて、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
その結果、正極電解液の充電後の電圧は0.54Vであり、一晩静置後の電圧は0.27Vであった。従って、ポリエチレンイミンの替わりにオキシ酸であるDL−リンゴ酸を含む正極電解液を用いたレドックスフロー型電池は、自己放電する(自己放電が非常に速い)ことが判った。
〔比較例8〕
正極電解液として下記水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
即ち、先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(4.20g)のクエン酸を加えて溶解させた後、0.06モル(2.4g)のNaOHを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、Mn(II)−クエン酸錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。そして、上記水溶液を正極電解液として用いて、実施例1と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
その結果、正極電解液の充電後の電圧は0.51Vであり、一晩静置後の電圧は0.20Vであった。従って、ポリエチレンイミンの替わりにオキシ酸であるクエン酸を含む正極電解液を用いたレドックスフロー型電池は、自己放電する(自己放電が非常に速い)ことが判った。
〔比較例9〕
先ず、蒸留水70mlに、0.02モル(1.2g)のエチレンジアミンを加えて溶解させた後、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。続いて、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSOを加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、マンガンとエチレンジアミンとのモル比が1:1の、Mn(II)−エチレンジアミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製しようとしたが、マンガン化合物が直ちに析出することが判った。従って、ポリエチレンイミンの替わりにエチレンジアミンを用いて、Mn(II)−エチレンジアミン錯体を充分な濃度で含む正極電解液を調製することができないことが判った。
〔比較例10〕
負極電解液および正極電解液として下記水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、自己放電試験を行った。
負極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水70mlに、0.1モル(6.0g)のエチレンジアミンを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.19g)のCuSOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、銅とエチレンジアミンとのモル比が1:5の、Cu(II)−エチレンジアミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。
一方、正極電解液を、下記方法によって調製した。即ち、先ず、蒸留水70mlに、0.1モル(6.0g)のエチレンジアミンを加えて溶解させた。続いて、この水溶液に、濃度が2.5モル/Lの希硫酸を滴下してpHを7に調節した。その後、上記水溶液に、0.02モル(3.38g)のMnSO・HOを加えて溶解させた後、0.05モル(7.1g)のNaSO(導電塩)を加えて溶解させた。次いで、全量が100mlになるように蒸留水を加えた。これにより、マンガンとエチレンジアミンとのモル比が1:5の、Mn(II)−エチレンジアミン錯体の濃度が0.2モル/Lである水溶液を調製した。尚、マンガン化合物は析出しなかった。
上記正極電解液および負極電解液を用いて、実施例2の充放電試験の条件と同様の条件で、レドックスフロー型電池の充放電試験を行った。但し、充放電試験は、充電を100mAの定電流で行った。充電終止電圧は2.0Vに設定した。また、放電を100mAの定電流で行った。放電終止電圧は0.3Vに設定した。
正極側のレドックス反応は「Mn(II)−エチレンジアミン錯体 ⇔ Mn(III) −エチレンジアミン錯体 + e」であり、負極側のレドックス反応は「Cu(II)−エチレンジアミン錯体 + e ⇔ Cu(I) −エチレンジアミン錯体」であると考えられる。
その結果、「起電力」、「クーロン効率」、「電圧効率」および「エネルギー効率」の各数値は、何れも実施例2における各数値と大差が無かった。しかしながら、実施例2のレドックスフロー型電池は、充放電を五十回(50サイクル)繰り返した後においても、電池の容量が実質的に減少しなかったのに対して、比較例10のレドックスフロー型電池は、充放電を五十回(50サイクル)繰り返すと、電池の容量が減少した。即ち、図13に示すように、実施例2のレドックスフロー型電池の「電解液の利用率」は、充放電を五十回(50サイクル)繰り返した後においても実質的に変化しなかったのに対して、比較例10のレドックスフロー型電池の「電解液の利用率」は、充放電を繰り返すに従って著しく低下した。つまり、比較例10のレドックスフロー型電池は、実施例2のレドックスフロー型電池と比較して、「充放電サイクル特性(可逆性)」および「電解液の利用率」に劣っていた。従って、比較例10のレドックスフロー型電池は、電力貯蔵電池として広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えていないことが判った。
また、充放電試験の終了後、レドックスフロー型電池の充放電セルを分解して、正極および負極であるカーボンフェルト(SGL社製のGFA5)と、集電板とを観察した。その結果、正極側ではマンガン化合物の析出が多く認められ、負極側では銅化合物の析出が多く認められた。このことからも、比較例10のレドックスフロー型電池は、電力貯蔵電池として広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えていないことが判った。尚、実施例2のレドックスフロー型電池では、上記析出は殆ど認められなかった。
さらに、ポリエチレンイミン(平均分子量が600のポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製))およびエチレンジアミンの安全性を比較すると、非特許文献3,4に記載されているように、ポリエチレンイミンは危険物第4類第4石油類に属し、引火点が248℃(クリーブランド開放式)、急性毒性(経口 ラット LD50)が1350mg/kgであるのに対して、エチレンジアミンは危険物第4類第2石油類に属し、引火点が34℃(密閉式)、急性毒性(経口 ラット LD50)が500mg/kgである。従って、危険物としての取り扱い性の面や急性毒性の面で、比較例10のレドックスフロー型電池は、実施例2のレドックスフロー型電池よりも劣っていることは明らかである。
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明に係る電力貯蔵電池によれば、マンガン化合物の沈澱を防止することができ、電力貯蔵電池の自己放電を防止することができ、しかもマンガンイオンの反応性が向上した電力貯蔵電池を提供することができる。従って、マンガンレドックス系物質を用いて、広く一般に実用化されるために充分な耐久性を備えた電力貯蔵電池を提供することができるという効果を奏する。
それゆえ、本発明に係る電力貯蔵電池は、電力会社のみならず、電力貯蔵が必要な各種産業において広範に利用され得る。
1 レドックスフロー型電池(電力貯蔵電池)
2 充放電セル(電池容器)
2a 正極側セル
2b 負極側セル
3 正極電解液タンク
4 負極電解液タンク
10 充放電装置
11 隔膜
12 集電板
13 正極
14 集電板
15 負極
20 サイクリックボルタンメトリー
21 参照電極
22 対極
23 電極(作用電極)
24 被測定電解液

Claims (10)

  1. レドックス型の電力貯蔵電池において、
    正極電解液が、正極側の活物質としてマンガンレドックス系物質を含むと共に、ポリエチレンイミンを含む水溶液であり、
    上記正極電解液に含まれるマンガン−ポリエチレンイミン錯体の濃度が、0.2モル/L以上、2.5モル/L以下であることを特徴とする電力貯蔵電池。
  2. マンガンイオンと、ポリエチレンイミンに含まれる窒素原子とのモル比が、1:1〜1:5の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  3. 上記正極電解液のpHが2〜7の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  4. 上記マンガンレドックス系物質が硫酸マンガンであることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  5. 上記正極電解液が電解酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  6. 上記正極電解液が大気中の酸素と遮断されていることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  7. 負極電解液が、負極側の活物質として鉄レドックス系物質を含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
  8. 上記負極電解液が、鉄−ジエチレントリアミン五酢酸錯体を含む水溶液であることを特徴とする請求項に記載の電力貯蔵電池。
  9. 上記負極電解液が電解酸化されていることを特徴とする請求項に記載の電力貯蔵電池。
  10. レドックスフロー型電池であることを特徴とする請求項1に記載の電力貯蔵電池。
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