JP5767044B2 - 液状混合組成物及び熱伝導性成形体 - Google Patents
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Description
こうした液状ポリマーとして液状シリコーンが好適に用いられていたが、低分子シロキサンによる接点不良を誘発するおそれがあることなどから、非シリコーン系の液状ポリマーに代替することへの市場の要求が強くなっている。こうした要求に対して、特開2006−312708号公報(特許文献1)には、非シリコーン系の液状ポリマーとしてポリ−α−オレフィン系樹脂を用いた例が記載されている。
高分子マトリクスと、可塑剤と、熱伝導性充填材と、硬化剤とを含む液状混合組成物について、高分子マトリクスが、アリル基を有するポリイソブチレン液状樹脂でなり、可塑剤が、炭酸ジアルキルと引火点250℃以上の非シリコーン系オイルとを含んでなり、炭酸ジアルキルと非シリコーン系オイルの合計に対する炭酸ジアルキルの重量比率が0.05以上0.85未満であり、且つ炭酸ジアルキルの含有量が前記高分子マトリクス100重量部に対して100重量部未満であることを特徴とする液状混合組成物及びそれを熱硬化してなる熱伝導性成形体である。
そして、こうした組合せを採用することで、熱伝導性をより高めた配合において、作業性の良い液状混合組成物を得ることでき、製造が容易で、可塑剤のオイルブリードを抑制した難燃性の高い熱伝導性成形体を得ることができる。
分子内に反応性の官能基であるアリル基を有する液状樹脂を用いたことで、液状混合組成物を熱硬化して熱伝導性成形体を形成することができる。具体的には、反応性とポットライフのバランスからアリル基をポリイソブチレンの末端に有する液状樹脂とすることが好ましい。
熱伝導性充填材は一の種類を単独で用いてもよいが、複数の種類を混合して用いることで熱伝導性や難燃性をバランスよく高めることができる。また、絶縁性の付与や充填性の向上及び劣化の抑制などのために表面処理を施した熱伝導性充填材を用いてもよい。
形状も特に限定されるものではなく、例えば、片鱗状、針状、粒状等の熱伝導性充填材を用いることができる。これらの形状の中では、高分子マトリクス中に高充填しやすい粒状や、磁場や電場、あるいは流動場や剪断場によって任意の方向に配向させることができる繊維状が好ましい。
引火点が250℃以上の非シリコーン系オイルの動粘度は、好適には70mm2/s〜400mm2/sの範囲であり、液状混合組成物を低粘度にすることができる。また、熱伝導性成形体の難燃性を悪化させ難く、仮に高分子マトリクス100重量部に非シリコーン系オイル300重量部を添加しても高い難燃性(UL94 V−0)を比較的容易に得ることができる。このような非シリコーン系オイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、エチレンとαオレフィンのコオリゴマーやこれらの混合物などが挙げられる。
高分子マトリクスとして、末端にアリル基を有するポリイソブチレン(数平均分子量=5000):67重量部に、可塑剤として炭酸ジアルキル(C14H29OCOOC14H29、40℃における動粘度17.6mm2/s、引火点210℃):33重量部と、熱伝導性充填材として平均粒径10μmの水酸化アルミニウム:240重量部と、平均粒径1μmの水酸化アルミニウム:10重量部、さらに平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維:55重量部と、硬化剤(CR300、株式会社カネカ製):2.5重量部と、白金触媒(PT−CS−3.2cS、Ferro社(米国)製):0.2重量部と、難燃剤として赤燐(ノーバレット120UF、燐化学工業株式会社製):10重量部と、を配合し振動攪拌器により混合して液状混合組成物を調製した。熱伝導性充填材にはチタネート系カップリング剤で表面処理済みのものを用いた。また、熱伝導性充填材やその他の添加剤は、高分子マトリクスと可塑剤の合計量に対して一定の添加量とした。
試料1に対し炭酸ジアルキルの添加量を変えた試料とした。
可塑剤として、前記炭酸ジアルキルに加え、引火点250℃以上の非シリコーン系オイルとしてパラフィンオイル(PW−90、出光興産株式会社製、40℃における動粘度90mm2/s、引火点272℃)を混合した試料とした。
可塑剤として、非シリコーン系オイルのみを用いた試料とした。
上記試料1〜試料11として作製したそれぞれの熱伝導性成形体、およびその作製過程で得られたそれぞれの液状混合組成物に対して各種の試験を行い評価した。その評価方法を以下に説明するが、評価結果は表1に示す。
液状混合組成物の粘度を、回転粘度計(ブルックフィールド社製、商品名:DV−E型、スピンドルNo.14)を用い、25℃雰囲気下で、10rpmの回転数で測定した。
熱伝導性成形体でのオイルブリードの程度を評価した。
熱伝導性成形体を100℃の恒温槽内に24時間置き、その後熱伝導性成形体の表面を目視により観察した。表中の“ブリード”欄において、“あり”は試験片がオイルブリードを起こしたことを示し、“なし”は試験片がオイルブリードを起こさなかったことを示す。
熱伝導性成形体の難燃性について、米国アンダー・ライターズ・ラボラトリーズ・インク(Under Writers Laboratories Inc)によって制定された燃焼試験(UL94)によって評価した。
各試料の試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ1mm又は0.5mm)を、試験片の長手方向が鉛直方向となるように固定用クランプに保持した状態で、バーナー(口径:10mm、長さ:約10cm)の炎に10秒間接炎した後、炎から離して各試験片の燃焼時間を記録した。さらに、二度目の接炎後における火種の保持時間(グローイング時間)と、試験片の下方に配置されている脱脂綿を発火させる滴下物の有無とを記録した。以上の操作を各試験片について、5回1組として行った。そして、表2に示す判定基準に基づいて、「V−0」(表2では「94V−0」)又は「V−1」(表2では「94V−1」)についての合否を判定した。なお、この難燃性の判定基準は、「V−0」の方が「V−1」よりも難燃性が高いことを示し、「V−1」の判定基準が不合格であった試験片については、難燃性がないと判定し、表中の“難燃性”欄において“×”と記載した。
熱伝導性成形体の熱抵抗を測定した。
図7で示すように、基板(24)上の発熱体(25)及び放熱体(26)(ヒートシンク(株式会社アルファ製FH60−30)と、その上部に取り付けられたファン(風量:0.01kg/sec、風圧:49Pa))で試料1〜試料11の試験片(27)(10mm×10mmの寸法にカットしたもの)を挟持し、放熱体(26)上に重り(28)を載置して一定荷重(40N)を試験片(27)に加えた。そして、発熱体(25)が発熱した状態で10分間放置した後、試験片(27)における発熱体(25)側の外面の温度T1と放熱体(26)側の外面の温度T2とを測定機(29)により測定した。そして、下記式(1)により試験片(27)の熱抵抗値を算出した。発熱体(25)は通常、CPUに代表される電子部品であるが、シートの性能評価の簡素化および迅速化のため、本試験では発熱体(25)として発熱量が25Wであるヒータを用いた。
熱抵抗値(℃/W)=(T1(℃)−T2(℃))/発熱量(W)・・・式(1)
[液状混合組成物の粘度]
図2には、液状混合組成物の粘度について、横軸に“可塑剤中の炭酸ジアルキルの割合”をとり、縦軸に“可塑剤配合量”をとってプロットしたグラフを示す。
非シリコーン系オイルと炭酸ジアルキルとからなる可塑剤中の炭酸ジアルキルの重量比率が多くなるほど、可塑剤の合計量が少なくても液状混合組成物の粘度を低粘度にすることができることがわかる。これらの粘度の値とともに、実際の作業性から粘度の評価をした。具体的には、液状混合組成物を調製した後の脱泡性が良く、ブレードコーターを用いてシートを作製した時に、シートの厚みが設定した厚みどおりに作製できたものを、表1の「粘度の評価」において“○”とした。また、特に粘度が比較的低いことから、シート成形時にシーティング速度を速くしても所望の厚みの熱伝導性成形体を作製できたものを“◎”とした。一方、脱泡性が悪く極めて脱泡に時間がかかるもの、あるいはブレードコーターでシートを作製するときに、液状混合組成物の流動性が劣ることに起因してシートの厚みを所望の厚みに調製することが困難であったものを“×”とした。
y=1.78×104x−0.460 式(2)・炭酸ジアルキルの割合が1.0
y=2.72×104x−0.684 式(3)・炭酸ジアルキルの割合が0.5
y=8.63×104x−0.778 式(4)・炭酸ジアルキルの割合が0.33
y=3.64×104x−0.658 式(5)・炭酸ジアルキルの割合が0
※)ただし、xは液状混合組成物の粘度(mPa・s)を表し、yは高分子マトリクス100重量部に対する可塑剤配合量(重量部)を表す。
但し、炭酸ジアルキルの割合が0.1の試料は1点しかないため、近似式を作成することはできなかった。また、本願において近似式は全て最小二乗法によるものである。
図4では、横軸に“可塑剤中の炭酸ジアルキルの割合”、縦軸に“可塑剤配合量(重量部)”としたグラフ中に試料1〜試料11にプロットした際、難燃性の試験結果から、難燃性を有する試料を「○」とし、難燃性のない試料を「●」と表記した。
炭酸ジアルキルの重量比率が多くなると、急激に難燃性が悪くなる傾向があることがわかる。
難燃性の評価結果については、試料2、試料4、試料8の評価結果を基に閾値を推定した。すなわち、高分子マトリクス100重量部に対する可塑剤中の炭酸ジアルキルが100重量部である試料2および試料8は難燃性がなく、前記炭酸ジアルキルが97重量部である試料5は難燃性がV−0であった。また、パラフィンオイルの影響についても試料5に対してパラフィンオイルが少ない試料2と、パラフィンオイルが多い試料8とで、難燃性の評価結果に差があることから、本発明の範囲ではパラフィンオイルの配合量は難燃性にほとんど影響を及ぼさないものと考えられる。以上のことから、炭酸ジアルキルが100重量部未満であれば難燃性を有することができるものと考えられる。こうした分析に基づき図4には、炭酸ジアルキルが100重量部であることを示す曲線3(難燃性限界値曲線)を示す。
図5には、各試料のオイルブリードの評価結果を示す。可塑剤の配合量が300重量部と多量である試料8および試料11でオイルブリードが見られ、他の試料はオイルブリードが起こらなかった。本評価結果内では、可塑剤の配合量が同程度の試料において炭酸ジアルキルの重量比率が増すことで、オイルブリードし易くなった試料はなく、少なくとも試料10の257重量部を上限として、それ以下の可塑剤の配合量では、オイルブリードは起こらないものと考えられる。そのためオイルブリード“あり”の試料とオイルブリード“なし”の試料を区切る補助線として、直線4(y=257の直線)(ブリード限界値直線)を示した。
25 発熱体
26 放熱体
27 試験片
28 重り
29 測定機
Claims (6)
- 高分子マトリクスと、可塑剤と、熱伝導性充填材と、硬化剤とを含む液状混合組成物において、
高分子マトリクスが、アリル基を有するポリイソブチレン液状樹脂でなり、
可塑剤が、炭酸ジアルキルと引火点250℃以上の非シリコーン系オイルとを含んでなり、
炭酸ジアルキルと非シリコーン系オイルの合計に対する炭酸ジアルキルの重量比率が0.05以上0.85未満であり、且つ炭酸ジアルキルの含有量が前記高分子マトリクス100重量部に対して100重量部未満であることを特徴とする液状混合組成物。 - 前記炭酸ジアルキルと非シリコーン系オイルの合計の含有量が前記高分子マトリクス100重量部に対して121重量部〜257重量部である請求項1記載の液状混合組成物。
- 前記熱伝導性充填材が金属水酸化物を含む熱伝導性充填材である請求項1または請求項2記載の液状混合組成物。
- 前記非シリコーン系オイルがパラフィンオイルである請求項1〜請求項3何れか1項記載の液状混合組成物。
- 前記ポリイソブチレン液状樹脂の数平均分子量が1000〜20000の範囲である請求項1〜請求項4何れか1項記載の液状混合組成物。
- 前記請求項1〜請求項5何れか1項記載の液状混合組成物を熱硬化してなる熱伝導性成形体。
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