以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.自動取引システムの概要>
まず、図1を参照し、本発明の実施形態による自動取引システムの概要を説明する。
図1は、本発明の実施形態である自動取引システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、自動取引システムは、複数の自動取引装置10と、専用網12と、金融機関ホスト20と、を含む。
自動取引装置(紙幣処理装置)10は、金融機関の顧客による操作に基づいて金銭の取引を実行する顧客操作型端末である。この自動取引装置10は、金融機関の営業店、コンビニエンスストア、駅構内、ホテル、病院、アミューズメントパーク、飲食店、オフィスビルディングなどの多様な施設に設置される。
また、自動取引装置10は、顧客操作表示部14と、通帳挿入口16と、カード挿入口18と、を備える。顧客操作表示部14は、顧客による操作の誘導画面を表示する表示部および顧客操作を検出する顧客操作部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、顧客操作部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。なお、図1においては表示部および顧客操作部の機能が自動取引装置10において一体的に構成される例を示しているが、表示部および顧客操作部の機能は分離して構成されてもよい。
通帳挿入口16は顧客の通帳の挿入および排出を行い、カード挿入口18は顧客のキャッシュカードの挿入および排出を行う。また、接客口19は、顧客による紙幣の入金口、および顧客への紙幣の出金口としての機能を有する。
専用網12は、金融機関のネットワークであり、例えばIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。金融機関ホスト20は、この専用網12を介して自動取引装置10と通信することができる。
金融機関ホスト20は、専用網12を介して自動取引装置10と通信することにより、各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト20は、自動取引装置10を操作する顧客の認証を行ったり、自動取引装置10において顧客により指示された入金や振込などの金銭取引(勘定の取引処理)を実行したりする。また、金融機関ホスト20は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、預金残高などの顧客情報(口座の元帳)を管理する。
本発明の実施形態は、上述した自動取引システムに含まれる自動取引装置10に関し、特に、自動取引装置10においてリジェクトされた紙幣が集積されるリジェクトカセットの空き容量判断に関する。本明細書において、空き容量とは、カセット内においてまだ紙幣集積が可能な空間である。以下、自動取引装置10の構成および基本動作を説明した後に、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
<2.自動取引装置10の構成および基本動作>
図2は、自動取引装置10の内部構成を示した説明図である。図2に示したように、自動取引装置10は、紙幣処理機構13、制御部15および記憶部17を備える。さらに、紙幣処理機構13は、接客口19を含む接客部1、鑑別装置2、一時保留部3、紙幣カセット4a〜4d、リジェクトカセット5、および搬送路6a〜6mを備える。
接客部1は、入金取引時に顧客により入金された紙幣を分離したり、出金取引時に顧客に出金する紙幣を集積したりするための構成である。
鑑別装置2は、顧客の入金した紙幣、または顧客に出金する紙幣の鑑別を行う。具体的には、鑑別装置2は、搬送路6を通って搬送された紙幣の金種、真偽、正損および走行状態などを鑑別する。
一時保留部3は、入金取引時に接客部1で分離されて鑑別装置2により正常と鑑別された紙幣を一時的に集積する。一時保留部3に集積された紙幣は、入金した紙幣の口座計上などが確定したなど、取引が成立した場合に鑑別装置2を経て紙幣カセット4a〜4dなどに搬送される。
紙幣カセット4a〜4dは、顧客の入金した紙幣、出金するための紙幣、および他の紙幣カセット4から分離された紙幣などを集積する紙幣集積部である。紙幣カセット4a〜4dは、同一金種のための複数の紙幣カセットを含んでもよい。例えば、紙幣カセット4aおよび4cが一万円札用の紙幣カセットであり、紙幣カセット4bおよび4dが千円札用の紙幣カセットであってもよい。なお、紙幣カセット4a〜4dは、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造になっており、個別に交換することで紙幣カセット4a〜4dに紙幣を装填することも可能である。
リジェクトカセット5は、集積処理時または出金取引時に鑑別装置2によって異常と鑑別された紙幣(リジェクト紙幣)を集積するための紙幣集積部である。ここで、リジェクトカセット5に集積される紙幣は、出金紙幣として取り扱えない二千円札、五千円札、一万円札および千円札の汚損券、折れ紙幣、スキュー紙幣などの走行異常紙幣である。なお、リジェクトカセット5は、紙幣処理機構13に対して着脱可能な構造になっており、個別に交換することでリジェクトカセット5の紙幣を回収することも可能である。このようなリジェクトカセット5の詳細については、後述する「リジェクトカセット5」において図5を参照して説明する。
搬送路6a〜6mは、紙幣を搬送するための構成である。各搬送路6a〜6mは、制御部15による制御に従ってDCサーボモータまたはパルスモータなどが回転することにより、紙幣を目的の搬送先に搬送することが可能である。また、搬送路6a〜6eは入金経路を構成し、搬送路6b〜6dおよび6f〜6lは集積経路を構成し、搬送路6b、6c、6e〜6gおよび6h〜6kは出金経路を構成する。
制御部15は、上記の搬送路6a〜6mを制御することにより、入金、集積、出金および紙幣移動などの基本動作を制御する。各基本動作の詳細については、次の「基本動作」において説明する。
また、本実施形態による制御部15は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報に基づいて、接客部1、一時保留部3、紙幣カセット4a〜4d、リジェクトカセット5等の紙幣集積部における紙幣の分離/集積枚数をカウントするカウント部の機能を有する。制御部15は、紙幣の分離/集積枚数をカウントすることで自動取引装置10内に存在する紙幣の有高を管理することができる。
また、本実施形態による制御部15は、紙幣カセット4a〜4d、リジェクトカセット5等の着脱可能な紙幣集積部おける空き容量を判断する判断部の機能を有する。制御部15は、空き容量の判断結果をオペレータに通知することで、オペレータが紙幣集積部の交換等の対応を行うことが可能になる。
ここで、本実施形態における紙幣集積部には、集積する紙幣を圧迫する集積機構、および紙幣集積部の所定位置における紙幣の有無を検知するセンサ(一例として、満杯/ニア満杯センサ)が設けられている。制御部15は、集積機構により紙幣が圧迫されている間に満杯/ニア満杯センサから得られた検知結果に基づいて、紙幣集積部の空き容量を判断する。また、制御部15は、満杯/ニア満杯センサから得られる検知結果と、紙幣集積部に集積される紙幣の枚数に基づいて、紙幣集積部の空き容量を判断してもよい。このような制御部15による紙幣集積部の空き容量の判断処理については、後述する各実施形態において詳細に説明する。
記憶部17は、入金/出金取引などで出入りした紙幣の金種や金額の計数結果、自動取引装置10内の紙幣の有高を保存する。このような記憶部17は、不揮発性メモリまたは揮発性メモリにより実現される。
また、本実施形態による記憶部17は、紙幣処理機構13内の各センサから出力された紙幣の個別情報を保存する。個別情報には、紙幣集積部を出入りした紙幣の情報、紙幣の分離元情報、金種、枚数、紙幣の表裏上下等の向き、走行状態等の情報が含まれる。このような紙幣の個別情報を取得する各センサは、例えば鑑別装置2、および搬送路6a〜6mに設けられる。
(基本動作)
以上、自動取引装置10の構成を説明した。続いて、上述した自動取引装置10による入金取引、集積処理、出金取引および紙幣補充などの基本動作を説明する。
入金取引においては、まず、接客部1から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路6aおよび6bを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路6cおよび6dを経て一時保留部3に集積される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路6cおよび6eを経て接客部1に集積される。その後、顧客により入金金額の確認操作が行われると、集積処理に移行する。
集積処理においては、まず、一時保留部3から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路6dおよび6cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路6b、6f〜6kを経て金種に対応する紙幣カセット4a〜4dに集積される。一方、一万円札および千円札の汚損券、折れ紙幣、二千円札、五千円札、スキュー紙幣などの走行異常紙幣のように、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路6gおよび6lを経てリジェクトカセット5に集積される。
紙幣移動においては、まず、紙幣カセット4a〜4dのうちの移動元の紙幣カセットから紙幣が分離され、分離された紙幣は搬送路6g〜6k、6bを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は搬送路6および6dを経て一時保留部3に搬送される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路6cおよび6mを経てリジェクトカセット5に集積される。
その後、一時保留部3から紙幣カセット4a〜4dのうちの移動先の紙幣カセットに紙幣が搬送される。具体的には、一時保留部3から紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路6dおよび6cを経て鑑別装置2に搬送される。そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、搬送路6b、6f〜6kを経て移動先の紙幣カセットに集積される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣は、搬送路6gおよび6lを経てリジェクトカセット5に集積される。
続いて、図3および図4を参照し、出金取引の流れを説明する。図3および図4は、出金取引の流れを示した説明図である。図3および図4に示したように、出金取引においては、まず、顧客により指定された金額に応じて紙幣カセット4a〜4dから紙幣が1枚ずつ分離され、分離された紙幣は搬送路6g〜6kおよび6bを経て鑑別装置2に搬送される。
そして、鑑別装置2による鑑別結果が正常であった紙幣は、図3に示したように搬送路6cよび6eを経て接客部1に集積される。一方、鑑別装置2による鑑別結果が異常であった紙幣、すなわち、顧客に支払いできない紙幣は、図4に示したように、搬送路6cおよび6mを経てリジェクトカセット5に集積される。
(リジェクトカセット5)
以上、自動取引装置10による基本動作について説明した。続いて、自動取引装置10のリジェクトカセット5について説明する。
リジェクトカセット5は、リジェクトカセット5内に集積された紙幣を圧迫する集積機構、およびリジェクトカセット5内の空き容量を検知するためのセンサを有する。本実施形態では、集積機構の一例として、回転する舌片により集積する紙幣を圧迫する集積機構を用いる。また、本実施形態では、空き容量を検知するためのセンサの一例として、ニア満杯位置における紙幣の有無を検知するセンサ(ニア満杯センサ)を用いる。以下、リジェクトカセット5の詳細な構成について、図5を参照して説明する。
図5は、リジェクトカセット5の概略断面図である。図5に示すように、リジェクトカセット5は、紙幣を集積する集積機構51、ビルストッパー52、ステージ53、ニア満杯センサ57およびセンサ59を備える。
集積機構51は、図5に示すように、リジェクトカセット5の集積方向上流であって、搬送路から紙幣が搬送される搬送口に設けられ、回転部材55および回転部材55の外周面に設けられた複数の舌片54を有する。回転部材55は、リジェクトカセット5に紙幣を搬送する搬送路6mまたは6I(図2参照)の搬送モータが回転している場合に回転する。舌片54は、回転部材55と同軸上であって、すなわち回転部材55の外周面から半径方向に突出するよう設けられる。また、舌片54は、天然ゴムや合成ゴム等の弾性材料または羽部材などによって形成される。
このような集積機構51は、搬送路6mまたは6Iの搬送モータが回転する際に回転し、搬送された紙幣の後端を舌片54で叩いて集積する。
ビルストッパー52は、図5に示すように、リジェクトカセット5の集積方向上流であって、搬送路から紙幣が搬送される搬送口と対向する側に設けられ、搬送される紙幣の前端が当たる。
ステージ53は、紙幣が集積される台であって、集積する紙幣の重さで下がる。
ニア満杯センサ57は、リジェクトカセット5内の所定位置における紙幣の有無を検知する。本実施形態によるニア満杯センサ57は、図5に示すように、リジェクトカセットの集積方向上流のニア満杯の位置に紙幣があるか否かを検知する光学式センサである。なお、ニア満杯センサ57が出力するセンサ情報は、リジェクトカセット5の空き容量を判断するために用いられる。リジェクトカセット5の空き容量判断の詳細については後述する。
センサ59は、搬送路に設けられ、リジェクトカセット5に搬送される紙幣の個別情報を取得し、制御部15に出力する。センサ59が取得した個別情報に基づいて、制御部15はリジェクトカセット5の有高を確定する。
このような構成を有するリジェクトカセット5において、搬送口から搬送された紙幣の前端がビルストッパーに当たり、該紙幣の後端が舌片54により上から叩かれることで、紙幣がステージ53上に集積される。そして、ステージ53に紙幣が集積され続けると、ステージ53は集積される紙幣の重さに応じて下がる。また、ステージ53集積された紙幣がニア満杯センサ57の光軸を遮ることにより(遮光状態)、ニア満杯が検知される。
このようなリジェクトカセット5には、上述したように、出金に利用できない金種の紙幣の他、折れ紙幣、スキュー紙幣などが集積されるので、折れや曲がりが大きい紙幣が重なることによりニア満杯が誤検知される(空き容量の判断が誤る)場合がある。
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の各実施形態による自動取引装置10を創作するに至った。本発明の各実施形態による自動取引装置10は、リジェクトカセット5の空き容量の判断をより正確に行うことが可能である。これにより、空き容量の誤判断を防ぎ、オペレータによるリジェクトカセット交換の頻度を下げることができる。以下、このような本発明の各実施形態について詳細に説明する。
なお、下記の各実施形態においては、紙幣集積部の所定位置における紙幣の有無を検知するセンサの一例として、光学式のニア満杯センサを用いて説明するが、本実施形態によるリジェクトカセット5の構成はこれに限られない。例えば、光学式の満杯センサを用いてもよいし、光学式のニア満杯センサおよび満杯センサを用いてもよいし、光学式以外の満杯/ニア満杯センサであってもよい。
<3.第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では、ニア満杯センサ57による検知結果と、舌片51が回転しているか否かを考慮することで、より正確に空き容量を判断する自動取引装置10を提案する。以下、図6および図7を参照して本実施形態について説明する。
図6は、ニア満杯の誤検知について説明するための図である。図6の左側に示すように、折れや曲がりが大きい紙幣が重なることにより、実際はまだ紙幣を集積できる空間(空き容量)があるにも関わらず、ニア満杯センサ57が遮光される。しかし、図6の右側に示すように、舌片51が回転して紙幣を押さえると、ニア満杯センサ57が通光する。このように、舌片51が停止中に紙幣の曲がり等によりニア満杯センサ57が一時的に遮光状態になっても、舌片51が回転することによりニア満杯センサ57が通光状態になる。
また、折れや曲がりの少ない紙幣でも、停止した舌片51に引っかかり、ニア満杯センサ57が一時的に遮光状態になる場合がある。このような場合も、舌片51が回転することにより、引っかかっていた紙幣が押さえられ、ニア満杯センサ57が通光状態になる。
本実施形態による自動取引装置10は、このような状態を考慮してより正確にリジェクトカセット5の空き容量を判断する。以下、本実施形態によるニア満杯判断の動作処理について説明する。
(第1の実施形態の動作フロー)
図7は、本発明の第1の実施形態による自動取引装置10のニア満杯判断処理を示すフローチャートである。図7に示したように、まず、制御部15は、舌片51が回転中に(S102)、ニア満杯センサ57が遮光状態になった場合(S104)、ニア満杯センサ遮光時間を更新する(S108)。
制御部15は、ニア満杯センサの遮光状態が一定時間経つまで(S110)、S104〜S110を繰り返する。ここで、制御部15は、ニア満杯センサ57が通光状態になった場合(S104)、ニア満杯センサ遮光時間を0クリアする(S106)。例えば、舌片51が回転して折れや曲がりの大きい紙幣を押さえ、ニア満杯センサ57が通光状態なった場合、ニア満杯センサ遮光時間が0クリアされるので、ニア満杯の誤判断を防ぐことができる。
そして、制御部15は、ニア満杯センサの遮光状態が一定時間経った場合(S110)、リジェクトカセット5の状態がニア満杯であると判断する。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態により自動取引装置10は、舌片51が回転して紙幣を押さえている状態で、一定時間にわたってニア満杯センサ57により遮光状態が検知された場合、ニア満杯と判断する。このように、ニア満杯センサ57からの検知結果に加えて、紙幣を押さえる機能を有する舌片51が回転中か否かを考慮することで、より正確にリジェクトカセット5の空き容量を判断することが可能になる。
<4.第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。上記本発明の第1の実施形態では、舌片54が回転中にニア満杯センサ57から得られる検知結果に基づいてリジェクトカセット5の空き容量の判断を行っていた。ここで、リジェクトカセット5に搬送されるリジェクト紙幣に折れや曲がりの強い紙幣が含まれていた場合、図8に示すように、舌片54の回転が停止すると、押さえられていたこれらの紙幣が舌片54を押し上げてニア満杯センサ57を遮光してしまうことがあった。
図8は、舌片54の回転が停止することによる集積紙幣14の高さの変化を説明するための図である。図8の左側に示すように、舌片54回転中は、集積紙幣14が舌片54により圧迫されニア満杯センサ57が通光する。しかし、舌片54が停止した場合に、集積紙幣14の折れや曲がりの状態によっては、図8の右側に示すように集積紙幣14がふくらみ、舌片54を押し上げてニア満杯センサ57を一時的に遮光する場合がある。
このような場合に、通常の空き容量判断では、実際は空き容量があるにもかかわらず、ニア満杯が検知されたことのみをもって、ニア満杯と判断していた。そこで、本発明の第2の実施形態では、ニア満杯センサ57がニア満杯位置において紙幣を検知している間にリジェクトカセット5に搬送される紙幣の枚数に基づいて、空き容量を判断する自動取引装置10を提案する。
(第2の実施形態の動作フロー)
図9は、上述した第2の実施形態による自動取引装置10の空き容量判断処理を示すフローチャートである。制御部15は、一定時間毎に図9に示す空き容量判断処理を行う。
図9に示したように、まず、ニア満杯センサ57が遮光状態の場合に(S122)、制御部15は、リジェクトカセット5に搬送され集積される紙幣の枚数をカウントし、紙幣の枚数が第1の規定枚数を上回るか否か判断する(S126)。制御部15は、カウントする紙幣の計数を記憶部17に保存する。
ここで、リジェクトカセット5に紙幣が搬送されるときに実行されるカウント処理のフローを図10に示す。図10に示すように、制御部15は、リジェクトカセット5に搬送される紙幣の個別情報に基づいて、リジェクトカセット5の有高を更新する(S132)。かかる個別情報は、リジェクトカセット5へ紙幣を搬送する搬送路に設けられたセンサ59により取得され、制御部15は、新たに紙幣が搬送された場合に新たに取得される個別情報に基づいて記憶部17に保存したリジェクトカセット5の有高を更新する。
続いて、ニア満杯センサ54が遮光状態の場合にリジェクトカセット5に紙幣が搬送された場合も、制御部15は、センサ59により取得された個別情報に基づいてリジェクトカセット5に集積される紙幣をカウントし、有高に加算する(S134)。
次に、図10のフローに示すS126に戻る。制御部15は、ニア満杯センサ57が遮光状態中に集積された紙幣の枚数が第1の規定枚数を上回る場合(S126/Yes)、リジェクトカセット5がニア満杯であると判断する。
ここで、ニア満杯センサ57が遮光状態中にリジェクトカセット5に集積される紙幣によって集積紙幣14の高さが変化することについて図11を参照して説明する。図11の左側に示すように、集積紙幣14の折れや曲がりが大きい場合、集積紙幣14がふくらみ、舌片54を押し上げてニア満杯センサ57を遮光する。しかし、ふくらんだ集積紙幣14の上から新たに紙幣が集積されると、紙幣の重みで集積紙幣14の折れや曲がりが圧迫され、図11の右側に示すようにニア満杯センサ57が通光状態になる場合がある。
よって、制御部15は、ニア満杯センサ57が遮光状態中にリジェクトカセット5に集積された紙幣の枚数が規定枚数(第1の規定枚数)を上回ってからニア満杯と判断することで、空き容量の判断をより正確に行うことが可能になる。
一方、制御部15は、ニア満杯センサ57が遮光状態中に集積される紙幣の枚数が第1の規定枚数を上回らなかった場合は(S126/No)、処理を終了する。
また、S122において、ニア満杯センサ57が通光状態の場合は、ニア満杯センサ57が遮光状態中にカウントした枚数を0クリアする。
以上説明したように、第2の実施形態による自動取引装置10は、ニア満杯センサ57が紙幣を検知している間に搬送された紙幣の枚数に基づいて空き容量を判断することで、空き容量の判断をより正確に行うことが可能になる。
<5.第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態および第2の実施形態によれば、折れや曲がりの大きい紙幣により膨らんだ集積紙幣14を舌片54の回転や新たな紙幣の集積によって圧迫した上で、ニア満杯センサ57による検知結果に応じて空き容量を判断していた。ここで、リジェクトカセット5に少数枚しか集積されていない状態でも、紙幣の折れや曲がりの状態によっては、ニア満杯センサを遮光する場合がある。そこで、本発明の第3の実施形態では、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が規定枚数(第2の規定枚数)を上回った場合に、制御部15により空き容量の判断処理を開始する。これにより、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が明らかに少ない場合にニア満杯を誤検知することを防ぐことが可能になる。
規定枚数(第2の規定枚数)は、集積される紙幣に若干の厚みや折れ等があっても集積紙幣の高さがニア満杯の位置よりは低くなると予想される枚数が予め設定される。例えば、リジェクトカセット5に集積可能な枚数の8割に設定される。このように設定された規定枚数(第2の規定枚数)の数値は、記憶部17に保存される。
(第3の実施形態の動作フロー)
図12は、上述した第3の実施形態による自動取引装置10の空き容量判断処理を示すフローチャートである。図12に示したように、まず、制御部15は、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が、第2の規定枚数を上回ったか否かを判断する(S142)。
総枚数が第2の規定枚数を上回った場合(S142/Yes)、制御部15は、空き容量判断処理を開始する。図12に示す例では、第1の実施形態による空き容量判断処理(S102〜S112)と同様の処理(S144〜S154)を行うので、ここでの説明は省略する。
なお、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が規定枚数を上回った場合におけるニア満杯の誤検知について図13を参照して説明する。図13の左側に示すように、集積紙幣14の総枚数が第2の規定枚数を上回った場合に、折れや曲がりが大きい紙幣が重なることにより、集積紙幣14が膨らみ、ニア満杯センサ57が遮光される。しかし、図6の右側に示すように、舌片54が回転して紙幣を押さえることで、ニア満杯センサ57が通光し、制御部15は空き容量があると判断できる。
よって、制御部15は、舌片54が回転中に、ニア満杯センサ57が一定時間にわたって遮光状態である場合にニア満杯と判断することで、空き容量の判断をより正確に行うことが可能になる。
このように、第3の実施形態では、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が規定枚数を上回ってから空き容量の判断を開始することで、ニア満杯の誤検知を防ぐことが可能になる。
<6.第4の実施形態>
上記第3の実施形態では、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が第2の規定枚数を上回った場合に、第1の実施形態で説明した空き容量判断処理を開始する自動取引装置10を提案した。本発明の第4の実施形態では、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が第2の規定枚数を上回った場合に、第2の実施形態で説明した空き容量判断処理を開始する自動取引装置10を提案する。
(第4の実施形態の動作フロー)
図14は、上述した第4の実施形態による自動取引装置10の空き容量判断処理を示すフローチャートである。図14に示したように、まず、制御部15は、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が、第2の規定枚数を上回ったか否かを判断する(S162)。
総枚数が第2の規定枚数を上回った場合(S162/Yes)、制御部15は、空き容量判断処理を開始する。図14に示す例では、第2の実施形態による空き容量判断処理(S122〜S128)と同様の処理(S164〜S170)を行うので、ここでの説明は省略する。
また、リジェクトカセット5に紙幣が搬送されるときに制御部15によりカウント処理が実行される。かかるカウント処理のフローを図15に示すが、図15に示すS182およびS184は、第2の実施形態によるカウント処理(S132およびS134)と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、リジェクトカセット5に集積された紙幣の総枚数が第2の規定枚数を上回った場合におけるニア満杯の誤検知について図16を参照して説明する。図16の左側に示すように、集積紙幣14の折れや曲がりが大きい場合、集積紙幣14がふくらみ、舌片54を押し上げてニア満杯センサ57を遮光する。しかし、ふくらんだ集積紙幣14の上から新たに紙幣が集積されると、紙幣の重みで集積紙幣14の折れや曲がりが圧迫され、図16の右側に示すようにニア満杯センサ57が通光し、制御部15は空き容量があると判断できる。
よって、制御部15は、ニア満杯センサ57が遮光状態中にリジェクトカセット5に集積された紙幣の枚数が第1の規定枚数を上回ってからニア満杯と判断することで、空き容量の判断をより正確に行うことが可能になる。
このように、第4の実施形態では、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が規定枚数を上回ってから空き容量の判断を開始することで、ニア満杯の誤検知を防ぐことが可能になる。
<7.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、舌片51が回転して紙幣を押さえている状態で、一定時間にわたってニア満杯センサ57により遮光状態が検知された場合、ニア満杯と判断する。このように、ニア満杯センサ57からの検知結果に加えて、紙幣を押さえる機能を有する舌片51が回転中か否かを考慮することで、より正確にリジェクトカセット5の空き容量を判断することが可能になる。
また、本発明の第2の実施形態によれば、ニア満杯センサ57が紙幣を検知している間に搬送された紙幣の枚数に基づいて空き容量を判断することで、空き容量の判断をより正確に行うことが可能になる。
また、本発明の第3の実施形態によれば、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が規定枚数を上回ってから第1の実施形態に示す空き容量判断処理を開始することで、ニア満杯の誤検知を防ぐことが可能になる。
また、本発明の第4の実施形態によれば、リジェクトカセット5に集積されている紙幣の総枚数が規定枚数を上回ってから第2の実施形態に示す空き容量判断処理を開始することで、ニア満杯の誤検知を防ぐことが可能になる。
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した各実施形態では、特に、自動取引装置10における出金取引においてリジェクトされた紙幣が集積されるリジェクトカセット5の空き容量の判断について説明したが、本発明による空き容量の判断はこれに限られない。例えば、本発明は、自動取引装置10における入金取引において顧客により入金された紙幣が集積される紙幣カセット4a〜4dの空き容量の判断に適用してもよい。
また、本明細書の自動取引装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、自動取引装置10の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
また、自動取引装置10に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した自動取引装置10の制御部15と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。