JP5751249B2 - ハードコートフィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

ハードコートフィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハードコートフィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置(LCD)の液晶表示パネルを構成する液晶セルには、2枚の偏光板が貼り合わされている。この偏光板は、ヨウ素または二色性染料を吸着させ染着させたポリビニルアルコール(以下PVAと略す)系フィルムを一定方向に延伸配向させた偏光素子(偏光膜)を、2枚のセルロースエステル系保護フィルムの間に挟んだ3層構造である。
一般に、液晶セルに使用される偏光板の最表面の保護フィルムは、特に物理的な損傷を受け易く、損傷を受けると表示画像品質を損なうので、保護フィルム上にハードコート層が設けられたハードコートフィルムが用いられている。
他方、セルロースエステル系保護フィルムは、セルロースエステル樹脂の特性上、使用環境の違い(湿度の影響)で、寸法が変化しやすいため、耐透湿性を向上するため添加剤が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
これら添加剤の添加により、セルロースエステル系保護フィルムの耐透湿性は向上するものの、セルロースエステル系保護フィルムとハードコート層との層間密着が取りにくくなる問題があった。特に、大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ用液晶表示装置など、屋外用途での使用を想定した耐候性試験後では、セルロースエステル系保護フィルムとハードコート層との層間密着が取りにくい問題があった。
層間密着を阻害する要因としてハードコート層の硬化収縮も一因である。画像表示装置の表面保護フィルムとして十分な表面硬度を有し、かつ硬化収縮の小さいハードコート層を有するハードコートフィルムとして、イソシアヌレート誘導体とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型化合物をハードコート層に含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら上記セルロースエステル系保護フィルムとハードコート層との耐候性試験後の層間密着を向上するには不十分であった。
更に、セルロースエステル系保護フィルムとハードコート層との層間密着を向上する技術については、例えば特許文献5に開示されている。特許文献5は、多官能(メタ)アクリルモノマーと、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと、光ラジカル重合開始剤と、重合性基を有する含フッ素化合物とを含む成分で硬化したハードコート層の表面自由エネルギーを20mN/m以下とし、更にハードコート層の膜厚を5〜25μmに制御したハードコートフィルムである。
特許文献5の技術では、耐候性試験前の保護フィルムとハードコート層との層間密着はある程度改善するものの、耐候性試験後の層間密着については、改善効果が無く、また本発明に関する内容については何ら記載及び言及もされていない。
特開2008−69225号公報 特開2008−88292号公報 特開2008−115221号公報 特開2008−173856号公報 特開2009−263600号公報
従って本発明の目的は、耐候性試験後の保護フィルムとハードコート層との層間密着の改良を図ったハードコートフィルム、その製造方法、及びそれを用い偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
本発明者は前記課題に対して、セルロースエステル系保護フィルムの貯蔵弾性率と損失弾性率のバランスを特定範囲に制御し、かつハードコート層に活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を含有させることで、解決できることを見出し本発明に至った。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.保護フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムにおいて、ハードコート層が、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有し、かつ該保護フィルムのフィルム幅手方向のtanδが、下記の関係を有することを特徴とするハードコートフィルム。
0.5≧tanδ−40/tanδpeak≧0.24
(ここでtanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。)
2.前記保護フィルムがセルロースエステル系樹脂からなることを特徴とする前記1に記載のハードコートフィルム。
3.前記保護フィルムが、アセチル基置換度が2.80〜2.95であって数平均分子量125000以上155000未満のセルローストリアセテートAを含有することを特徴とする前記1または2に記載のハードコートフィルム。
4.前記保護フィルムが、アセチル基置換度が2.80〜2.95であって数平均分子量125000以上155000未満のセルローストリアセテートAおよびアセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量155000以上180000未満のセルローストリアセテートBを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
5.前記保護フィルムが、エステル化合物を含有し、当該エステル化合物の酸価が0.08〜0.50mgKOH/gであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
6.前記ハードコート層の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)が2〜20nmであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
7.前記ハードコート層が活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体(A)とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(B)を含有し、該活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体(A)と該イソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(B)との含有質量比が、10:90〜50:50であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
8.前記1〜7のいずれか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、前記ハードコート層の形成において、該ハードコート層塗布後の乾燥における減率乾燥区間の温度を95℃以上、130℃以下とすることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
9.前記1〜7のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
10.前記9に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方に有することを特徴とする液晶表示装置。
11.タッチパネル付き液晶表示装置であって、かつ当該タッチパネルの構成部材として、前記1〜7のいずれか1項に記載のハードコートフィルムが具備されていることを特徴とするタッチパネル付き液晶表示装置。
本発明によれば、耐候性試験後の保護フィルムとハードコート層との層間密着の改良を図ったハードコートフィルム、その製造方法、及びそれを用い偏光板、液晶表示装置を提供することができる。
タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルムの模式図である。 抵抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置の概略図である。 偏光板の模式図である。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者は上記課題に対して鋭意検討した結果、保護フィルムの貯蔵弾性率と損失弾性率のバランスを特定範囲に制御し、かつハードコート層に活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を含有させることで、ハードコート層と保護フィルムとの層間密着が向上することを見出し、本発明を成すに至った次第である。
以下、詳細について説明する。
<ハードコートフィルム>
本発明のハードコートフィルムは、少なくとも保護フィルムとハードコート層によって構成されている。
最初に該ハードコート層に含有される本発明の特徴である活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体について説明する。
なお、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂とを合わせて記載する場合は、単に活性エネルギー線硬化型樹脂と記載する。
<活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体>
活性エネルギー線硬化型とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいい、具体的にはエチレン性不飽和基を有する樹脂である。
活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、下記一般式(1)で示される同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が本発明の目的効果の点から好ましい。エチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、より好ましくはメタクリロイル基又はアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。
式中Lは、2価の連結基であり、好ましくは、イソシアヌレート環に炭素原子が結合している置換又は無置換の炭素原子数4以下のアルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基であり、特に好ましくはアルキレンオキシ基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。Rは、水素原子またはメチル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。一般式(1)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
その他の化合物としては、イソシアヌル酸ジアクリレート化合物が挙がられ、下記一般式(2)で表されるイソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレートが好ましい。
またその他として、ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を挙げることもでき、具体的には下記一般式(3)で表される化合物である。
上記化学構造式のR〜Rの一には、下記a,b,cで示される官能基が付くが、R〜Rの少なくとも一つはbの官能基である。
a:−H、もしくは−(CH)n−OH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
b:−(CH)n−O−(COC10)m−COCH=CH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6、m=2〜8)
c:−(CH)n−O−R(Rは(メタ)アクリロイル基、n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
一般式(3)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
イソシアヌル酸トリアクリレート化合物の市販品としては、例えば新中村化学工業株式会社製A−9300などが挙げられる。イソシアヌル酸ジアクリレート化合物の市販品としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−215などが挙がられる。イソシアヌル酸トリアクリレート化合物及びイソシアヌル酸ジアクリレート化合物の混合物としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−315、アロニックスM−313などが挙げられる。
ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、ε−カプロラクトン変性トリス−(アクリロキシエチル)イソシアヌレートである新中村化学工業株式会社製A−9300−1CL、東亞合成株式会社製アロニックスM−327などを挙げることが出来るが、これらに限定されない。
<イソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂>
イソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、およびジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が好ましく挙げられる。
イソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂としては単官能アクリレートを用いても良い。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。単官能アクリレートとしては、新中村化学工業株式会社や大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
多官能アクリレートの粘度は、25℃における粘度が3000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましい。
また、前記粘度はB型粘度計を用いて25℃の条件にて測定した値である。
また、ハードコート層に活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂を併用して用いる場合には、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体(A)とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(B)との含有質量比を、(A):(B)=10:90〜50:50の範囲で用いることで、より過酷な耐候性試験後も本発明の目的効果をより発揮し、更に膜強度(耐擦傷性)に優れる点からも好ましい。
ハードコート層には活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性エネルギー線硬化型樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等および、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
これら無機微粒子は、ハードコートフィルムの透明性を維持しつつ耐擦傷性が向上することから、表面の一部に反応性官能基を有する有機成分が被覆されたものが好ましい。表面の一部に反応性官能基を有する有機成分を被覆する方法としては、例えば、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基にシランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基に水素結合等の相互作用により有機成分を付着させた態様や、ポリマー粒子中に1個又は2個以上の無機微粒子を含有する態様などが挙げられる。
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を添加することができる。
好ましい有機微粒子は、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げられる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000、アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒子径は特に制限されないが、0.01〜5μmが好ましく、更には、0.01〜1.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有しても良い。微粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、10〜400質量部となるように配合することが望ましく、更に望ましくは、50〜200質量部である。
また本発明に係るハードコート層は、溶剤で希釈したハードコート層塗布組成物を、以下の方法でフィルム基材上に塗布、乾燥、硬化して設けることが、ハードコート層と保護フィルムとの層間密着が得られやすい点から好ましい。溶剤としては、ケトン類またはエステル類が好ましい。ケトン類としては、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどを挙げる事が出来る、またエステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなどを挙げる事が出来るが、これ等には限定されない。その他の溶剤としては、アルコール類(エタノール、メタノール、ブタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール)、炭化水素類(トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン)、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなど)などを好ましく用いることができる。
これら溶剤は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して、20〜200質量部の範囲で用いることで、塗布組成物としての安定性に優れる。
また、塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは4〜15μmである。
ハードコート層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイ(押し出し)コーター、インクジェット法等公知の塗布方法を用いて、ハードコート層を形成するハードコート塗布組成物を塗布し、塗布後、乾燥し、UV硬化処理し、更に必要に応じて、UV硬化に加熱処理することで形成できる。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、ハードコート層の機械的膜強度(耐擦性、鉛筆硬度)に優れる。
乾燥は、減率乾燥区間の温度を90℃以上の高温処理で行うことが好ましく、減率乾燥区間の温度を前記範囲に制御することで、より過酷な耐候性試験後において、本発明の目的効果が得られやすい点から、減率乾燥区間の温度は95℃以上、130℃以下が好ましい。減率乾燥区間の温度を高温処理とすることで、ハードコート層の形成時に塗膜樹脂中で対流が生じるため、その結果ハードコート層表面に微細な表面粗れが発現しやすく、後述する算術平均粗さRaも得られやすい。
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量はすべて塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、ハードコート層塗布組成物の温度が上昇し、ハードコート層塗布組成物中の活性エネルギー線硬化型樹脂の粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm、好ましくは50〜300mJ/cmである。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤を含んでも良く、好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子またはπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。またハードコート層には、塗布性の観点、及び微粒子の均一な分散性の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤或いはポリオキシエーテル等の非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有しても良い。フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/またはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/またはオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体のポリマーをいう。市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
ハードコート層は1層でも複数の層でもよい。ハードコート層のハードコート性、ヘーズ、算術表面粗さRaを制御し易くする為に、2層以上に分割して設けても良い。また、ハードコート層は保護フィルムの両面に設けても良い。
2層以上設ける場合の最上層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上のハードコート層をwet on wetで塗布して、ハードコート層を形成することである。第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
本発明でのハードコートフィルムは、硬度の指標で有る鉛筆硬度が、H以上であり、より好ましくは4H以上である。4H以上であれば、液晶表示装置の偏光板化工程で、傷が付きにくいばかりではなく、屋外用途で用いられることが多い、大型の液晶表示装置や、デジタルサイネージ用液晶表示装置の表面保護フィルムとして用いた際も優れた膜強度を示す。鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
<表面形状>
本発明に係るハードコート層は、算術平均粗さRaが2〜20nmであることが、より過酷な耐候性試験後において、本発明の目的効果が得られやすい点から好ましい。
算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001の規定に基づいて、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)で測定した値である。
また、輪郭曲線要素の平均長さRSmは3〜80μmが好ましい。RSmは算術平均粗さRaと同様に、JIS B0601:2001の規定に基づいて、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)で測定できる。
算術平均粗さRaは、鋳型を押し当てて表面に突起を形成させる方法や、SP値(溶解度パラメーター)が異なる樹脂を混ぜて、表面凹凸を形成させる方法(例えば、特開2007−182519号、特開2009−13384号に記載された方法)などで形成させても良い。
突起形成に用いられる鋳型ロールとしては、凹凸が細かいもの、粗いものまで、適宜選択して適用でき、模様、マット状、レンチキュラーレンズ状、球状の凹凸が規則正しく、もしくはランダムに配列されたものが使用できる。
<ヘーズ>
本発明のハードコートフィルムのヘーズ値は、クリアハードコートフィルムでは、1%以下が好ましい。
ヘーズ値を1%以下とすることで、大型化された液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外で用いられる際の、十分な輝度や高いコントラストが得られる。
ヘーズ値は、JIS K7105及びJIS K7136に準じて測定することができる。
また、本発明のハードコートフィルムは、防眩性を有しても良い。防眩性とは、ハードコートフィルムのハードコート層に反射した像や外光の輪郭をぼかす機能であり、反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ等にハードコートフィルムを使用時に、反射像の映り込みが気にならないようにすることである。防眩性を有したハードコートフィルムでは、全ヘーズ値は、3%〜40%である事が好ましい。また、表面ヘーズ値(フィルムの表面散乱に起因するヘーズ)は、3〜40%であることが好ましく、内部ヘーズ値(内部散乱に起因するヘーズ)は35%以下が好ましい。
<保護フィルム>
本発明のもう一つの特徴である保護フィルムについて説明する。保護フィルムは、フィルム幅手方向の、湿度55%RHで25℃から210℃まで温度変化させて測定したtanδが下記の関係を有することを特徴とする。
0.5≧tanδ−40/tanδpeak≧0.24
ここでtanδpeakとは、25℃から210℃まで温度変化させてtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。
保護フィルムのフィルム幅手方向のtanδ、即ち貯蔵弾性率と損失弾性率との比の温度変化を上記範囲に制御することで、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有したハードコート層と保護フィルムとの相溶性が向上し(親和性が高くなり)、更に活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体が保護フィルムに浸透して硬化しやすく、アンカー効果が働くことで密着性が向上し、本発明の目的効果が得られると推察している。
tanδの測定は、例えば試料をあらかじめ23℃55%RHの雰囲気下24時間調湿したものを使用し、湿度55%RH、下記条件で昇温させながら、または温度設定して測定できる。
測定装置:ティーエイインスツルメント社製 RSAIII
試料:幅5mm、長さ50mm(ギャップ20mmに設定)
測定条件:引張モード
測定温度:25〜210
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
上記tanδ−40/tanδpeakの制御は、後述するセルロースエステルの種類(置換度、分子量、組み合わせ等)、エステル化合物の種類(酸価違い)、製膜条件(膜厚と延伸条件)によって行うことができる。エステル化合物の酸価が高いとtanδ−40/tanδpeakが小さくなる。エステル化合物の酸価が低いとtanδ−40/tanδpeakが大きくなる。特にセルロースエステルの種類やエステル化合物の種類(酸価違い)で制御することが、tanδ−40/tanδpeakの制御がしやすく、生産性の観点からも好ましい。
保護フィルムは、tanδ−40/tanδpeakの制御がしやすいこと、製造が容易であることから、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルムが好ましい。その他フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を保護フィルムに用いる挙げることができる。前記したフィルムを構成する樹脂は併用して用いても良い。
保護フィルムの屈折率は、1.30〜1.70であることが好ましく、1.40〜1.65であることがより好ましい。屈折率は、アタゴ社製 アッペ屈折率計2Tを用いてJIS K7142の方法で測定する。
<セルロースエステル系フィルム>
セルロースエステル系フィルムは、セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましくは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートフィルムが好ましい。
平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。保護フィルムの幅手方向のtanδ−40/tanδpeakを前記関係に制御しやすい点から、セルローストリアセテートのアセチル基置換度が、2.80〜2.95であって数平均分子量(Mn)が125000以上、155000未満であるセルローストリアセテートAを含有することが好ましい。また、セルローストリアセテートAの重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるものが好ましい。本発明の目的効果に加え、鉛筆硬度が向上する点から、アセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量(Mn)が155000以上、180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBをセルローストリアセテートAに併用することが好ましい。
セルローストリアセテートAとセルローストリアセテートBを併用する場合には、質量比でセルローストリアセテートA:セルローストリアセテートB=100:0〜20:80の範囲であることが好ましい。
セルローストリアセテート以外では、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)および(II)を同時に満たすセルロースエステルを用いることができ、
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
その中ではセルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基置換度の測定は、ASTMのD817−96に準じて実施することができる。また、セルロースジアセテートも好ましく用いることができる。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
<エステル化合物>
セルロースエステル系フィルムは、耐透湿性に優れる点や、保護フィルムのフィルム幅手方向のtanδ−40/tanδpeakを前記範囲に制御しやすい点から、エステル化合物を含有することが好ましい。エステル化合物としては、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールとを反応させた構造を有するエステル化合物が好ましい。ベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、p−トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。安息香酸であることが最も好ましい。炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。前記したエステル化合物は、最終的な化合物の構造としてアジピン酸残基およびフタル酸残基を有していればよい。
前記エステル化合物は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間混合させ、エステル化反応させることによって製造することができる。
更に、エステル化合物としては、芳香族末端エステル化合物も用いることができる。芳香族末端エステル化合物の例示化合物を以下に示すが、これらに限定されない。
また、糖エステル系化合物も挙げることができる。糖エステル系化合物としては、下記単糖、二糖、三糖またはオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物であり、より具体的な例示としては、一般式(4)で表わされる化合物などをあげることができる。
(式中、R〜Rは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
以下に一般式(4)で示される化合物をより具体的(化合物4−1〜化合物4−23)に示すが、これらに限定はされない。
前記エステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは400〜1500である。また酸価は、0.08〜0.50mgKOH/gが好ましい。水酸基価は、25mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
前記エステル化合物は、保護フィルム中に1〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、ブリードアウトなどもなく、透明性に優れる。
セルロースエステル系フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を含有しても良い。
アクリル樹脂は、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは、110000〜500000の範囲内である。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、測定条件含めて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。また、市販品としてはデルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
<添加剤>
保護フィルムの脆性を改善する目的で、アクリル粒子を含有しても良い。アクリル粒子の市販品の例としては、例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)を、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
アクリル微粒子は、保護フィルムを形成する樹脂の総質量に対して、0.5%〜30%の範囲で含有させることが好ましい。
(微粒子)
アクリル微粒子以外の微粒子を含有しても良い。アクリル微粒子以外の微粒子としては、滑り性、保管安定性の観点から二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の無機粒子が好ましい。これら無機微粒子の中では、濁度が低い点で、二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素は疎水化処理をされたものが滑り性とヘーズを両立する上で好ましい。4個のシラノール基のうち、2個以上が疎水性の置換基で置き換わったものが好ましく、3個以上が置き換わったものがより好ましい。疎水性の置換基はメチル基であることが好ましい。二酸化珪素の一次粒径は20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが保護フィルムのヘーズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく、アエロジルR812が最も好ましく用いられる。保護フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
〈その他の添加剤〉
保護フィルムには、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を添加することもできる。可塑剤としては、フタル酸化合物、脂肪酸化合物、トリメリット酸化合物、リン酸化合物、アクリル系ポリマー、あるいはエポキシ系化合物等が挙げられる。
アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。アクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。アクリル系ポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、またメタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用して用いることができる。
可塑剤は保護フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。
保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
さらに、保護フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、保護フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
保護フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
デジタルサイネージ等の屋外用途への利用により、より高い輝度が求められていることから、保護フィルムは、より高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、保護フィルムは張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断でき好ましく、特に110℃〜130℃に制御することが好ましい。
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、光学フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
また、耐熱性の観点で、保護フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
また、保護フィルムを、特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる場合、保護フィルムの寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。
また、保護フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層を形成したときに、ハードコート層塗布組成物が均一に塗布できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
また、保護フィルムは、JIS K7127(1999)に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
保護フィルムの厚みは、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。
厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
従って本発明に係る保護フィルムの厚みは、20〜250μmであることが前記tanδを制御する上でも好ましく、30〜100μmであることがより好ましく、光学部材の薄膜化の観点からは、30〜70μmであることが特に好ましい。
保護フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
また、保護フィルムのリターデーションは、波長590nmにおける面内リターデーションRoが0〜50nm、厚み方向のリターデーションRthが−10〜50nm範囲が好ましい。当該範囲のリターデーションを有する保護フィルムから構成される本発明のハードコートフィルムを用いることで、後述するタッチパネル用構成部材に用いた場合、複屈折による干渉縞を良好に抑性できる。
Ro及びRthは下記式(I)及び(II)で定義された値である。
式(I) Ro=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxは基材フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは基材フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzは基材フィルムの厚み方向の屈折率、dは基材フィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。)
上記リターデーションは、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
リターデーションは、前述したエステル化合物や可塑剤の種類、添加量、及び基材フィルムの膜厚や延伸条件などで調整できる。
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
〈保護フィルムの製膜〉
保護フィルムの製膜方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
保護フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
セルロースエステル系樹脂を溶解に用いた溶媒の残留抑制の点から、溶融流延製膜法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出成形法が好ましい。また、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは流延法による溶液製膜が好ましい。
フィルム形成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラム上またはエンドレスベルト上に押出し製膜する方法も溶融流延製膜法として含まれる。
(有機溶媒)
保護フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル系樹脂や、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
(溶液流延法)
保護フィルムは、溶液流延法によって製造することが出来る。溶液流延法では、樹脂および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープ中のセルロースエステル系樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステル系樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステル系フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルム或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
(延伸工程)
延伸工程では、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
延伸する際は、保護フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
保護フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。保護フィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗面化するため好ましい。フィルム表面を適度に粗面化することは、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特にハードコート層の密着性が向上するため好ましい。算術平均粗さRaは、好ましくは2.0nm〜4.0nm、より好ましくは2.5nm〜3.5nmである。
(溶融製膜法)
保護フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、特許3194904号、特許3422798号、特開2002−36332号、特開2002−36333号などで開示されているタッチロールを好ましく用いることができる。これらは市販されているものを用いることもできる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
<機能性層>
本発明のハードコートフィルムには、帯電防止層、バックコート層、反射防止層、易滑性層、接着層、バリアー層等の機能性層を設けることができる。
〈バックコート層〉
本発明に係るハードコートフィルムは、保護フィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面に、カールやくっつき防止の為にバックコート層を設けてもよい。
バックコート層に添加される粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。
バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘーズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。
バインダーとしては、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂が好ましい。
〈反射防止層〉
本発明に係るハードコートフィルムは、ハードコート層の上層に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
反射防止フィルムの層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
保護フィルム/ハードコート層/低屈折率層
保護フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/ハードコート層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
保護フィルム/ハードコート層/防眩性層/低屈折率層
<低屈折率層>
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
一般式(OSi−1):Si(OR)
前記一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。またフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる熱硬化性および/または光硬化性を有する化合物を含有しても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。その他、溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
<高屈折率層>
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。金属酸化また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘーズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でもシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。また高屈折率層は、π共役系導電性ポリマーを含有しても良い。π共役系導電性ポリマーとは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。
また、イオン性化合物を含有しても良い。イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF 、PF 等の無機イオン系、CFSO 、(CFSO、CFCO 等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。該ポリマーとバインダーの比率はポリマー100質量部に対して、バインダーが10〜400質量部が好ましく、特に好ましくは、ポリマー100質量部に対して、バインダーが100〜200質量部である。
<偏光板>
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面に該ハードコートフィルムを用いても、前記した保護フィルムを用いてもよい。
また、他に面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いて、視野角拡大可能な偏光板とすることもできる。これらは例えば、特開2002−71957号の方法で作製することができる。または、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。
また、好ましく用いられる市販の偏光板保護フィルムとしては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が挙げられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。
該偏光膜の面上に、本発明に係るハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
<粘着層>
液晶セルの基板と貼り合わせるために保護フィルムの片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化せしめることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
<液晶表示装置>
本発明のハードコートフィルムを用いて作製した本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。
本発明のハードコートフィルムは偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。
また、タッチパネル付き液晶表示装置のタッチパネル用部材に本発明のハードコートフィルムを用いた場合、視認性やペン入力に対する耐久性(摺動による傷等)に優れる点で好ましい。
<タッチパネル>
次に、本発明のハードコートフィルムをタッチパネル付き液晶表示装置に用いた場合の一例を示す。
先ず、図1にタッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム10の概略図を示す。タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルムは、保護フィルム1の両面にハードコート層2、4が設けられたハードコートフィルム3の少なくとも一方のハードコート層に透明導電性薄膜5が形成されている。
次に、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置20の概略図を図2に示す。タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム10を透明導電性薄膜14が形成されたガラス基板13と、透明導電性薄膜同士が向き合うように一定の間隔をあけて対向させることにより、抵抗膜方式のタッチパネル11を構成することができる。タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム10、及びガラス基板13の端部には不図示の電極が配置されている。抵抗膜方式のタッチパネルは、ユーザがタッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム10を指やペン等で押下することにより、タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム10の透明導電性薄膜が、ガラス基板13上の透明導電性薄膜14と接触する。この接触を端部の電極を介して電気的に検出することにより、押下された位置が検出される仕組みである。ガラス基板13の透明導電性薄膜14上には、必要に応じてドット状のスペーサ15が配置される。また、タッチパネル11をLCD(液晶表示パネル)12上に搭載することにより、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置20を構成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<エステル化合物1の調製>
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価0.10mgKOH/g、数平均分子量450であった。
(保護フィルム1の作製)
(二酸化珪素分散液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
(ドープ組成物1)
セルローストリアセテートA1 90質量部
(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000)
エステル化合物1 10質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液(ドープ組成物1)を調製した。
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.3倍に延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、2.2m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、保護フィルム1を得た。
保護フィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は6000mであった。尚、30℃における貯蔵弾性率はMD方向に4.1GPa、TD方向に5.5GPaステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
(保護フィルム2〜9の作製)
保護フィルム1のセルローストリアセテートA1、エステル化合物1を表2に記載したように変更した以外は同様にして、保護フィルム2〜9を作製した。
なお、表2に記載したセルローストリアセテートとエステル化合物は以下の通り。
尚、セルローストリアセテートの数平均分子量は前述の方法にて測定した。
<エステル化合物2>
エステル化合物1の合成において、無水フタル酸182gとアジピン酸の量273gとして同様の反応を行い、エステル化合物2を得た。酸価0.15mgKOH/g、数平均分子量600であった。
<エステル化合物3>
1,2−プロピレングリコール251g、アジピン酸370g、安息香酸122g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.09gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物3を得た。酸価0.55mgKOH/g、数平均分子量500であった。
<エステル化合物4>
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸370g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物5を得た。酸価0.90mgKOH/g、数平均分子量500であった。
<エステル化合物5>
1,2−プロピレングリコールを386g、テレフタル酸ジメチルを437g、p−トルイル酸を680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.090gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温し、その後220℃で反応させ、合計15時間脱水縮合反応させた。反応後、200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することによって、エステル化合物5を得た。酸価0.09mgKOH/g、数平均分子量870であった。
<エステル化合物6>
1,2−プロピレングリコールを125g、テレフタル酸ジメチルを97g、安息香酸を244g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.028gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積1リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温し、その後220℃で反応させ、合計11時間脱水縮合反応させた。反応後、190℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することによって、エステル化合物6を得た。酸価0.07mgKOH/g、数平均分子量700であった。
[ハードコートフィルム1の作製]
上記作製した保護フィルム1上に、下記のハードコート層塗布組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度70℃、減率乾燥区間温度70℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を0.23J/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚8μmのハードコート層1を形成して巻き取り、ロール状のハードコートフィルム1を作製した。
《ハードコート層塗布組成物1》
〈フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製〉
フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製に用いた素材の市販品名を示す。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(水酸基価60、数平均分子量15,000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000;チッソ(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
(ラジカル重合性フッ素樹脂の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂を得た。
(フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171,000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマーの溶液を得た。重量平均分子量はGPCにより求めた。また、フッ素−シロキサングラフトポリマーの質量%はHPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 65質量部
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
35質量部
(NKエステルA−9300、新中村化学工業(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[ハードコートフィルム2の作製]
上記作製した保護フィルム1上に、下記のハードコート層塗布組成物2に変更した以外は同様にしてハードコートフィルム2を作製した。
《ハードコート層塗布組成物2》
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 100質量部
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[ハードコートフィルム3の作製]
上記作製した保護フィルム1上に、下記のハードコート層塗布組成物3に変更した以外は同様にしてハードコートフィルム3を作製した。
《ハードコート層塗布組成物3》
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 65質量部
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
35質量部
(アロニックスM−315、東亞合成(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[ハードコートフィルム4の作製]
上記作製した保護フィルム1上に、下記のハードコート層塗布組成物4に変更した以外は同様にしてハードコートフィルム4を作製した。
《ハードコート層塗布組成物4》
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 65質量部
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
イソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレート 35質量部
(アロニックスM−215、東亞合成(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部
[ハードコートフィルム5〜12の作製]
ハードコートフィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物と保護フィルムを表2に記載したように変更した以外は同様にして、ハードコートフィルム5〜12を作製した。
[ハードコートフィルム13の作製]
ハードコート層のドライ膜厚を8μmとなるように調整した以外は、特開2008−173856号公報の実施例1の調製例1を参考にしてハードコートフィルム13を作製した。
なお、表2に記載したT40UZとは40μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製)である。
[ハードコートフィルム14〜16の作製]
ハードコートフィルム1の作製において、保護フィルム1を表2に記載したように変更した以外は同様にして、ハードコートフィルム14〜16を作製した。
《評価》
上記作製した保護フィルム及びハードコートフィルムについて以下の内容について評価した。得られた結果を表2に示した。
1.保護フィルムの評価
a.フィルム幅手方向のtanδの測定
下記条件で保護フィルム1〜9の動的粘弾性を測定し、tanδ−40/tanδpeakを求めた。試料はあらかじめ23℃55%RHの雰囲気下24時間調湿したものを使用し、湿度55%RH、下記条件で昇温させながら、または温度設定して測定した。
測定装置:ティーエイインスツルメント社製 RSAIII
試料:幅5mm、長さ50mm(ギャップ20mmに設定)
測定条件:引張モード
測定温度:25〜210
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
2.ハードコートフィルムの評価
a.算術平均粗さRaの測定
上記作製したハードコートフィルム1〜16のハードコート層を、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)を用いて10回測定し、その測定結果の平均から、各ハードコートフィルムの算術平均粗さRaを求めた。
<耐候性試験>
上記作製したロール状ハードコートフィルム1〜16を、各10cm×10cmサイズで切り出し、屋外での使用を想定してサイクルサーモ(−40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置、を交互に500サイクルに投入後、耐光試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、150時間光照射した。
b.耐擦傷性
耐候性試験後の各ハードコートフィルム1〜16を23℃55%RHの雰囲気下で12時間調湿後、各ハードコートフィルムのハードコート層を、#0000のスチールウール(SW)にて、1000g/cmの荷重をかけ、10往復したときの1cm幅当たりの傷の本数を測定した。なお、傷の本数は荷重をかけた部分の中で最も傷の本数の多い所で測定し、以下の基準で評価した。
なお、スチールウールを往復させた装置は、新東科学株式会社摩擦摩耗試験機(トライボステーションTYPE:32、移動速度4000mm/min)を使用した。
耐擦傷性評価基準
◎:1本/cm以下
○:10本/cm以下
△:20本/cm以下
×:20本/cm以上
c.密着評価
耐候性試験後の各ハードコートフィルム1〜16を23℃55%RHの雰囲気下で12時間調湿後、JIS K5400に準拠する方法で、各ハードコートフィルムのハードコート層に1mmの間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm角、100個の碁盤目を作製し、セロハンテープを貼り付けて90度の角度ですばやくはがし、剥れずに残っている碁盤目の数を数えた。以下の基準で評価した。
◎:全く剥離されなかった
○:剥離された面積割合が5%未満であった
△:剥離された面積割合が10%未満であった
×:剥離された面積割合が10%以上であった
得られた結果を表2に示した。
表2の結果から、幅手方向のtanδが、0.5≧tanδ−40/tanδpeak≧0.24である保護フィルム上に、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有したハードコート層を設けた本発明のハードコートフィルムは、保護フィルムとハードコート層との層間密着に優れ、膜強度(耐擦傷性)も良好である。
また、本発明のハードコートフィルムについて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、ハードコート層を500gのおもりを用いて鉛筆硬度を評価した結果、全て3H以上の硬度を有していた。特にセルローストリアセテートA及びBを2種併用した本発明のハードコートフィルムNo.5は鉛筆硬度が4H以上であり特に優れていた。
実施例2
実施例1のハードコートフィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物1の活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体であるとトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(A)とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)(B)との含有質量比を表3に記載したように変化させたハードコート層塗布組成物5〜8に変更した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム17〜20を作製した。
次に、得られたハードコートフィルム17〜20及び実施例1で作製したハードコートフィルム1について、耐候性試験のサイクルサーモ条件を下記に変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表3に示した。
<耐候性試験>
実施例1で作製したロール状ハードコートフィルム1及び実施例2で作製したロール状ハードコートフィルム17〜20を、各10cm×10cmサイズで切り出し、サイクルサーモ(−40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置、を交互に1000サイクルに投入後、耐光試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、150時間光照射した。
表3の結果から判るように耐候性試験が過酷な条件では、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体であるトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(A)とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)(B)との含有質量比を、(A):(B)=10:90〜50:50とすることで、本発明の目的効果をより良く発揮し、更に膜強度に優れる点で、特に好ましい。
実施例3
実施例1のハードコートフィルム1の作製において、減率乾燥区間の温度を表4に記載した条件に変化させた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム21〜26を作製した。次に得られたハードコートフィルム21〜26及び実施例1で作製したハードコートフィルム1について、耐候性試験の条件をより過酷に変更し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表4に示した。
<耐候性試験>
実施例1で作製したロール状ハードコートフィルム1及び実施例3で作製したロール状ハードコートフィルム21〜26を、各10cm×10cmサイズで切り出し、サイクルサーモ(−40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置、を交互に1000サイクルに投入後、耐光試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気株式会社製)にて、250時間光照射した。
表4の結果から判るように、本発明のハードコート層形成時の乾燥工程における減率乾燥区間の温度を95℃以上、130℃以下に制御し、本発明のハードコート層の算術平均粗さRaを2〜20nmの範囲に制御することで、より過酷な耐候性試験後も本発明の目的効果をより良く発揮するため、特に好ましい。
実施例4
<偏光板101の作製>
(アルカリ鹸化処理)
ハードコートフィルム1と保護フィルム1の各々1枚を偏光板の保護フィルムとして用いて、偏光板101を作製した。
(a)偏光膜の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムは、平均厚みが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光膜と、保護フィルム1とハードコートフィルム1を貼り合わせて偏光板101を作製した。
工程1:前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:保護フィルムとハードコート層に剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けたハードコートフィルム1を下記条件で、アルカリ鹸化処理を実施した。アルカリ鹸化処理後、ハードコート層の保護フィルムを剥した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に偏光膜を浸漬した。浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を保護フィルム1とハードコートフィルム1とで、図3に示した通りに挟み込んで積層配置した。
(アルカリ鹸化処理)
ケン化工程 2.5M−KOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥。
工程3:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
工程5:工程4で作製した偏光板の保護フィルム1に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性保護フィルムを張り付けた。この偏光板を裁断(打ち抜き)し、偏光板101を作製した。
<偏光板102〜116の作製>
偏光板101の作製において、ハードコートフィルム1をハードコートフィルム2〜16に、それぞれ変更した以外は同様にして偏光板102〜116を作製した。
<液晶表示装置401の作製>
NEC製ノートPC LaVie Gタイプの液晶パネルの偏光板を剥がし、視認側の偏光板として上記作製した偏光板101をハードコート層が視認側となるようにして、粘着剤層と液晶セルガラスとを貼合した。また、バックライト側には、上記手順と同様にアルカリ鹸化処理した保護フィルム1で偏光膜を挟持するように積層配置して貼合した偏光板201を厚さ25μmのアクリル系粘着剤を用いて液晶セルガラスに貼合して、液晶パネル301を作製した。次に液晶パネル301を液晶テレビにセットし、液晶表示装置401を作製した。
<液晶表示装置402〜416の作製>
液晶表示装置401の作製において、偏光板101を偏光板102〜116に、それぞれ変更した以外は同様にして液晶表示装置402〜416を作製した。
《評価》
d.視認性(クリア性)評価
上記作製した液晶表示装置401〜416について、床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に、昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X パナソニック(株)製)40W×2本を1セットとして、1.5m間隔で10セット配置した。この場合、評価者が液晶表示パネルの表示面の正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に蛍光灯がくるように配置した。次に、液晶表示装置401〜416の視認性を以下の基準で評価した。
○:蛍光灯が真っ直ぐに見える
△:蛍光灯が曲がって見える
×:蛍光灯が大きく畝って見える
評価の結果、比較例のハードコートフィルムを使用したものは視認性が×〜△であったが、本発明のハードコートフィルムを使用した液晶表示装置は視認性が○であり、良好であった。
実施例5
<導電性膜付きハードコートフィルム1の作製>
ハードコートフィルム1の作製において、両面にハードコート層塗布組成物1を塗設した以外は同様にして、両面ハードコートフィルム1を作製した。次いで、ハードコート層の片面に表面抵抗率が約200Ωである酸化インジウム錫(ITO)の透明導電性薄膜を、スパッタリング法を用いて設け、図1に示したタッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム1を作製した。
<導電性膜付きハードコートフィルム2〜16の作製>
ハードコートフィルム2〜16の作製において、両面ハードコートフィルム1と同じように、両面に各ハードコート層を塗設した以外は同様にして、両面ハードコートフィルム2〜16を作製した。
次いで、両面ハードコートフィルム2〜16のハードコート層の片面に、表面抵抗率が約200ΩであるITOの透明導電性薄膜を、スパッタリング法を用いて設け、タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム2〜16を作製した。
<抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置201の作製>
市販の抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置(型名:LCD−USB10XB−T、I−O DATA社製)の導電性膜付きハードコートフィルムを剥がし、上記作製した導電性膜付きハードコートフィルム1を図2のように貼合して、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置501を作製した。
<抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置502〜516の作製>
抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置1の作製において、導電性膜付きハードコートフィルム1を導電性膜付きハードコートフィルム2〜16に変更した以外は同様にして抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置502〜516を作製した。
《フィルム評価》
(耐ペン摺動性)
導電性膜付きハードコートフィルム1〜16については、以下の条件で耐ペン摺動性について評価した。得られた結果を表5に示した。
各導電性膜付きハードコートフィルムのハードコート層を先端部が0.08mmφのポリアセタール製のペンを使用し、荷重500g、ペン摺動速度100mm/秒で直線40mmを15万回往復し、往復後のハードコート層の傷つき及び剥れを目視により評価した。
評価の結果、本発明の導電性膜付きハードコートフィルムは、耐ペン摺動性に優れていた。また、抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置501〜516について、実施例4と同様にして視認性を評価した結果、比較例の導電性膜付きハードコートフィルムを使用したものは視認性が×〜△であったが、本発明の導電性膜付きハードコートフィルを使用したものは、視認性が○であり、良好であった。
1 保護フィルム
2 ハードコート層1
3 ハードコートフィルム
4 ハードコート層2
5 透明導電性薄膜(ITO層)
10 タッチパネル用導電性膜付きハードコートフィルム
11 低硬膜方式タッチパネル
12 LCD(液晶表示パネル)
13 ガラス基板
14 透明導電性薄膜
15 スペーサ
20 抵抗膜方式タッチパネル液晶表示装置
30 偏光板
31 ハードコートフィルム
32 ハードコート層
33 保護フィルム
54 偏光膜
35 保護フィルム
36 粘着層

Claims (10)

  1. 保護フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムにおいて、ハードコート層が、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有し、該保護フィルムのフィルム幅手方向のtanδが、下記の関係を有し、かつ前記保護フィルムがセルロースエステル系樹脂からなることを特徴とするハードコートフィルム。
    0.5≧tanδ−40/tanδpeak≧0.24
    (ここでtanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。)
  2. 前記保護フィルムが、アセチル基置換度が2.80〜2.95であって数平均分子量125000以上155000未満のセルローストリアセテートAを含有することを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. 前記保護フィルムが、アセチル基置換度が2.80〜2.95であって数平均分子量125000以上155000未満のセルローストリアセテートAおよびアセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量155000以上180000未満のセルローストリアセテートBを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
  4. 前記保護フィルムが、エステル化合物を含有し、当該エステル化合物の酸価が0.08〜0.50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
  5. 前記ハードコート層の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)が2〜20nmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
  6. 前記ハードコート層が活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体(A)とイソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(B)を含有し、該活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体(A)と該イソシアヌレート誘導体以外の活性エネルギー線硬化型樹脂(B)との含有質量比が、10:90〜50:50であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルムの製造方法であって、前記ハードコート層の形成において、該ハードコート層塗布後の乾燥における減率乾燥区間の温度を95℃以上、130℃以下とすることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルムを一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
  9. 請求項に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方に有することを特徴とする液晶表示装置。
  10. タッチパネル付き液晶表示装置であって、かつ当該タッチパネルの構成部材として、前記請求項1〜のいずれか1項に記載のハードコートフィルムが具備されていることを特徴とするタッチパネル付き液晶表示装置。
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