JP6089709B2 - タッチパネル用前面基板 - Google Patents

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Description

本発明は、易滑性が良好なハードコート層を有するタッチパネル用前面基板に関する。
今日、入力手段として、タッチパネルが広く用いられている。タッチパネルは、多くの場合、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置が組み込まれた種々の装置、例えば、券売機、ATM装置、携帯電話、ゲーム機等に対する入力手段として、表示装置とともに用いられている。このような装置において、タッチパネルは表示装置の表示面に配置され、これにより、タッチパネルは表示装置に対する極めて直接的な入力を可能にする。
一般的に、タッチパネルにおいては、表面保護のために最表面に前面基板が配置されている。従来、前面基板には強化ガラスが使用されてきたが、強化ガラスは重い、割れる等の問題を有する。そのため、強化ガラスから透明樹脂基板への変更が検討されている。一方、透明樹脂基板は軽い、割れにくいという利点を有するが、表面が傷つきやすいという欠点を有する。
また、タッチパネルは、指を前面基板に直接接触させて用いるものが多いため、前面基板は耐擦傷性、防汚性が良好であることが求められている。
ところで、表示装置に用いられる前面基板においては、透明樹脂基板の表面に硬化性樹脂組成物をコーティングし硬化してハードコート層を形成し、耐擦傷性を向上させる技術が提案されている。例えば、特許文献1では、前面基板に用いられる基板の構成を、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも片面に耐熱アクリル樹脂層が形成された構成とすることにより、前面基板の耐擦傷性を向上させることができることが開示されている。また、特許文献2〜4には、反応性異形シリカ微粒子が添加された硬化性組成物が硬化してなるハードコート層を用いることにより、前面基板の耐擦傷性を向上させることができることが開示されている。また、特許文献5では、無機酸化物粒子、特定の化合物および特定の脂肪酸エステル系界面活性剤等を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなるハードコート層を用いることにより、前面基板の指紋視認性、指紋拭き取り性、および耐摩耗性を良好なものとすることができることについて開示されている。
特開2009−279806号公報 特開2010−102123号公報 特開2010−120182号公報 国際公開第2012/018009号パンフレット 特開2012−148484号公報
ところで、タッチパネルのタッチ操作として、操作画面を軽くたたくタップ操作に加えて、最近では、操作画面を指でなぞるドラッグ、操作画面を指で軽くはらうフリック、操作画面に触れた2本の指の間の距離を短くするピンチイン、操作画面に触れた2本の指の間の距離を長くするピンチアウト等の操作画面に指を接触させた状態で動かす操作が多く用いられている。このようなタッチ操作においては、前面基板の表面で指の動きがつまることにより、円滑にタッチ操作を行えない、または誤作動が生じるという問題が懸念される。そのため、タッチパネルの前面基板には、その表面における指等の滑り易さ、すなわち易滑性が良好であることが求められている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、易滑性が良好なハードコート層を有するタッチパネル用前面基板を提供することを主目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ハードコート層にフッ素シリコン系界面活性剤を含有させることにより、良好な易滑性を示すハードコート層が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記課題を解決するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成されたハードコート層と、を有するタッチパネル用前面基板であって、上記ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することを特徴とするタッチパネル用前面基板を提供する。
本発明によれば、上記ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することにより、易滑性が良好なハードコート層を有するタッチパネル用前面基板を提供することができる。
本発明のタッチパネル用前面基板は、ハードコート層の易滑性が良好であるといった作用効果を有する。
本発明のタッチパネル用前面基板の一例を示す概略断面図である。 本発明のタッチパネル用前面基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明のタッチパネル用前面基板の他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明のタッチパネル用前面基板について説明する。
本発明のタッチパネル用前面基板は、基板と、上記基板上に形成されたハードコート層と、を有するものであって、上記ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
図1は、本発明のタッチパネル用前面基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明のタッチパネル用前面基板10は、基板1と、基板1上に形成されたハードコート層2とを有するものである。また、ハードコート層2がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することにより、易滑性が良好なハードコート層を有するタッチパネル用前面基板とすることができる。
また、本発明によれば、ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤を含有することで、ハードコート層に防汚性を付与することができる。
以下、本発明のタッチパネル用前面基板の詳細について説明する。
1.ハードコート層
本発明におけるハードコート層は、フッ素シリコン系界面活性剤を含有するものである。
ハードコート層は、通常、フッ素シリコン系界面活性剤、無機酸化物微粒子、ポリマー、モノマー、および重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されるものである。以下、硬化性樹脂組成物について説明する。
(1)硬化性樹脂組成物
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、フッ素シリコン系界面活性剤、無機酸化物微粒子、ポリマー、モノマー、および重合開始剤を含有するものである。
(a)フッ素シリコン系界面活性剤
硬化性樹脂組成物に含有されるフッ素シリコン系界面活性剤は、ハードコート層に易滑性を付与する成分である。
また、フッ素シリコン系界面活性剤としては、例えばパーフルオロアルキル基およびシロキサン結合を有する化合物を挙げることができ、具体的にはパーフルオロアルキル基を有し、シロキサンとポリエーテルとが共重合した化合物が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は例えば4〜10である。パーフルオロアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、それらの共重合体等が挙げられる。
このようなフッ素シリコン系界面活性剤としては、具体的には下記化学式(1)で表わされる化合物を挙げることができる。
Figure 0006089709
上記式(1)中、Rは炭素数4〜10のパーフルオロアルキル基、Qはポリエチレンオキシド鎖またはポリプロピレンオキシド鎖であり、kおよびmはそれぞれ0または1であり、nは1、2または3である。
また、フッ素シリコン系界面活性剤は反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、例えば重合性不飽和基が用いられ、具体的には光硬化性不飽和基を用いてもよく、より具体的には電離放射線硬化性不飽和基を用いてもよい。反応性官能基は、具体的には、(メタ)アクリロイル基を用いてもよい。
フッ素シリコン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業社製のX−71−1203M、X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、DIC社製のメガファックR−08、XRB−4等を挙げることができる。
フッ素シリコン系界面活性剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%〜0.1質量%の範囲内であることが特に好ましい。フッ素シリコン系界面活性剤の含有量が上記範囲であれば、ハードコート層に所望の易滑性を付与することができる。
(b)無機酸化物微粒子
本発明において、無機酸化物微粒子は、ハードコート層の硬度向上に寄与する成分である。
無機酸化物微粒子に用いられる無機酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化セリウム等を挙げることができ、中でも、シリカであることが好ましい。
また、シリカ微粒子としては、反応性官能基を有する反応性シリカ微粒子を用いることが好ましい。
反応性シリカ微粒子は、通常、反応性官能基を有する。上記反応性官能基としては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合およびエポキシ基等が挙げられる。
なお、本願明細書において、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルの少なくともいずれかを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートの少なくともいずれかを意味し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルの少なくともいずれかを意味する。
また、反応性シリカ微粒子は、球状の反応性シリカ微粒子であっても良く、異形の反応性シリカ微粒子(以下、反応性異形シリカ微粒子と称して説明する場合がある。)であっても良いが、後者が好ましい。ハードコート層の硬度向上を図りやすいからである。
反応性異形シリカ微粒子としては、複数のシリカ微粒子が無機の化学結合により結合した反応性異形シリカ微粒子が挙げられる。中でも、反応性異形シリカ微粒子は、平均1次粒径1nm〜100nmのシリカ微粒子3個〜20個が無機の化学結合により結合し、表面に反応性官能基を有する反応性異形シリカ微粒子であることが好ましい。反応性異形シリカ微粒子は、反応性官能基を有することにより、反応性異形シリカ微粒子同士、およびモノマーと架橋する硬化反応が可能であり、ハードコート層に耐擦傷性および硬度を付与することができる。
反応性異形シリカ微粒子を構成するシリカ微粒子の平均1次粒径は、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜80nmの範囲内であることがより好ましい。シリカ微粒子の平均1次粒径が小さいと、平均2次粒径が小さい反応性異形シリカ微粒子しか得られず、ハードコート層に十分な硬度を付与できない場合がある。また、シリカ微粒子の平均1次粒径が大きいと反応性異形シリカ微粒子の平均2次粒径が大きくなりやすく、平均2次粒径が大きいとハードコート層の透明性が低下し、透過率の悪化、ヘイズの上昇を招く場合がある。
反応性異形シリカ微粒子の平均2次粒径は、5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜200nmの範囲内であることがより好ましい。反応性異形シリカ微粒子の平均2次粒径が上記範囲内であれば、ハードコート層に硬度を付与しやすく、かつハードコート層の透明性を維持しやすい。
ここで、シリカ微粒子の平均1次粒径は、硬化性樹脂組成物中のシリカ微粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。平均1次粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計またはNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。また、反応性異形シリカ微粒子の平均2次粒径は、硬化性樹脂組成物においては、平均1次粒径と同様の方法により求めることができる。一方、反応性異形シリカ微粒子の平均2次粒径は、ハードコート層においては、ハードコート層の断面をSEM写真またはTEM写真を用いて観察し、観察された硬化した反応性異形シリカ微粒子を100個選び、その平均値として求めることができる。
シリカ微粒子は、中空粒子のような粒子内部に空孔や多孔質組織を有する粒子の使用を排除するものではないが、粒子内部に空孔や多孔質組織を有しない中実粒子を用いることが硬度向上の点からより好ましい。
反応性異形シリカ微粒子は、上記シリカ微粒子が、好ましくは3個〜20個、より好ましくは3個〜10個、無機の化学結合によって結合してなる。無機の化学結合によって結合したシリカ微粒子数が少ないと、実質的に単分散粒子と変わらず、基板との密着性、耐擦傷性、鉛筆硬度に優れたハードコート層を得ることが困難である。また、無機の化学結合によって結合したシリカ微粒子数が多いと、ハードコート層の透明性が低下し、透過率の悪化、ヘイズの上昇を招く場合がある。
無機の化学結合としては、例えば、イオン結合、金属結合、配位結合、および共有結合が挙げられる。中でも、反応性異形シリカ微粒子を極性溶媒中に添加しても、結合したシリカ微粒子が分散しない結合、具体的には、金属結合、配位結合、および共有結合が好ましく、特に共有結合が好ましい。なお、極性溶媒としては、例えば、水、およびメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール等が挙げられる。
反応性異形シリカ微粒子の粒子状態としては、3個〜20個のシリカ微粒子が無機の化学結合により結合し、凝集した状態の粒子(凝集粒子)、および3個〜20個のシリカ微粒子が無機の化学結合により結合し、鎖状に結合した鎖状粒子が挙げられる。中でも、ハードコート層の硬度を高める観点から、反応性異形シリカ微粒子の粒子状態としては、鎖状粒子が好ましい。また、反応性異形シリカ微粒子の少なくとも一部に、上記鎖状粒子が含まれていることが好ましい。
ここで、反応性異形シリカ微粒子が鎖状粒子の場合、シリカ微粒子の平均結合数は、ハードコート層の断面をSEM写真またはTEM写真を用いて観察し、観察された硬化した反応性異形シリカ微粒子を100個選び、各反応性異形シリカ微粒子中に含まれるシリカ微粒子を数え、その平均値として求めることができる。
反応性異形シリカ微粒子の製造方法は、上記シリカ微粒子が無機の結合により結合したものが得られれば特に限定されず、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、単分散のシリカ微粒子分散液の濃度、あるいはpHを調節し、100℃以上の高温で水熱処理することによって得ることができる。このとき、必要に応じてバインダー成分を添加してシリカ微粒子の結合を促進することもできる。また、使用されるシリカ微粒子分散液をイオン交換樹脂に通液することで、イオンを除去してもよい。このようなイオン交換処理によってシリカ微粒子の結合を促進することができる。水熱処理後、再度イオン交換処理を行ってもよい。
反応性異形シリカ微粒子は、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、この有機成分により導入された反応性官能基を表面に有する。ここで、有機成分とは、炭素を含有する成分である。また、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆されている態様としては、例えば、シリカ微粒子の表面に存在する水酸基にシランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様、または、シリカ微粒子の表面に存在する水酸基にイソシアネート基を有する有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様の他、例えば、シリカ微粒子の表面に存在する水酸基に水素結合等の相互作用により有機成分を付着させた態様や、ポリマー粒子中にシリカ微粒子を含有する態様等が含まれる。
少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、有機成分により導入された反応性官能基を表面に有する反応性異形シリカ微粒子を調製する方法としては、反応性異形シリカ微粒子に導入したい反応性官能基により、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。中でも、反応性異形シリカ微粒子同士の凝集を抑制し、ハードコート層の硬度を向上させる点から、以下の(i)(ii)の反応性異形シリカ微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和または不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステルおよび酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、および官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水および有機溶媒の少なくともいずれかの中に異形シリカ微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する反応性異形シリカ微粒子。
(ii)被覆前の異形シリカ微粒子に導入する反応性官能基、下記化学式(2)に示す基、およびシラノール基または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する反応性異形シリカ微粒子。
−Q−C(=Q)−Q− (2)
(式(2)中、QはNH、OまたはSを示し、QはOまたはSを示し、QはNHまたは2価以上の有機基を示す。)
以下、好適に用いられる反応性異形シリカ微粒子について説明する。
(i)飽和または不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、および官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水および有機溶媒の少なくともいずれかの中に異形シリカ微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する反応性異形シリカ微粒子。
上記(i)の反応性異形シリカ微粒子を用いる場合には、有機成分含量が少なくてもハードコート層の強度を向上できるという利点がある。
上記(i)の反応性異形シリカ微粒子に用いられる表面修飾化合物は、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、酸アミド基、エステル基、イミノ基、ニトリル基、イソニトリル基、水酸基、チオール基、エポキシ基、第一級、第二級及び第三級アミノ基、Si−OH基、シランの加水分解性残基、またはβ−ジカルボニル化合物のようなC−H酸基等の、分散条件下において異形シリカ微粒子の表面に存在する基と化学結合可能な官能基を有する。ここでの化学結合は、好ましくは、共有結合、イオン結合または配位結合が含まれるが、水素結合も含まれる。配位結合は錯体形成であると考えられる。例えば、ブレンステッドまたはルイスに従う酸塩基反応、錯体形成またはエステル化が、上記表面修飾化合物の官能基と異形シリカ微粒子表面の基の間で生じる。上記(i)の反応性異形シリカ微粒子に用いられる表面修飾化合物は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
上記表面修飾化合物は通常、異形シリカ微粒子の表面の基との化学結合に関与できる少なくとも1つの官能基に加えて、この官能基を介して上記表面修飾化合物に結びついた後に、異形シリカ微粒子に新たな特性を付与する分子残基を有する。なお、以下、異形シリカ微粒子の表面の基との化学結合に関与できる少なくとも1つの官能基を第1の官能基という。分子残基またはその一部は疎水性または親水性であり、例えば、異形シリカ微粒子を安定化、融和化、または活性化させる。例えば、疎水性分子残基としては、不活性化または反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキルまたはフッ素含有アルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基またはポリエステル基等が挙げられる。
反応性異形シリカ微粒子が後述するモノマーと反応できるように表面に導入される反応性官能基は、モノマーに応じて適宜選択される。反応性官能基としては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合およびエポキシ基等が挙げられる。
上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、後述するモノマーと反応できる反応性官能基が含まれる場合には、上記表面修飾化合物中に含まれる第1の官能基を異形シリカ微粒子表面に反応させることによって、上記(i)の反応性異形シリカ微粒子の表面にモノマーと反応できる反応性官能基を導入することが可能である。例えば、第1の官能基の他に、さらに重合性不飽和基を有する表面修飾化合物が、好適なものとして挙げられる。
一方で、上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、第2の反応性官能基を含有させ、当該第2の反応性官能基を足掛かりにして、上記(i)の反応性異形シリカ微粒子の表面にモノマーと反応できる反応性官能基が導入されてもよい。例えば、第2の反応性官能基として水酸基およびオキシ基のような水素結合が可能な水素結合形成基を導入し、この微粒子表面に導入された水素結合形成基に、さらに別の表面修飾化合物の水素結合形成基が反応することにより、モノマーと反応できる反応性官能基を導入することが好ましい。すなわち、表面修飾化合物として、水素結合形成基を有する化合物と、重合性不飽和基等のモノマーと反応できる反応性官能基と水素結合形成基を有する化合物とを併用して用いることが好適な例として挙げられる。水素結合形成基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミド基といった官能基、もしくはアミド結合を示すものである。ここで、アミド結合とは、−NHC(O)や>NC(O)−を結合単位に含むものを示す旨である。表面修飾化合物に用いられる水素結合形成基としては、中でもカルボキシル基、水酸基、アミド基が好ましい。
上記(i)の反応性異形シリカ微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は500以下、より好ましくは400、特に200を超えない分子量を有する。このような低分子量を有するため、シリカ微粒子表面を急速に占有し、反応性異形シリカ微粒子同士の凝集を妨げることが可能であると推定される。
上記(i)の反応性異形シリカ微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は、表面修飾のための反応条件下で好ましくは液体であり、分散媒中で溶解性または少なくとも乳化可能であるのが好ましい。中でも分散媒中で溶解し、分散媒中で離散した分子または分子イオンとして一様に分布して存在することが好ましい。
飽和または不飽和カルボン酸としては、1〜24の炭素原子を有しており、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、琥珀酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびステアリン酸、ならびに対応する酸無水物、塩化物、エステルおよびアミド、例えば、カプロラクタム等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸を用いると、重合性不飽和基を導入することができる。
好ましいアミンの例は、下記化学式を有するものである。
3−nNH
上記式において、nは0,1または2である。残基Qは独立して、1〜12、中でも1〜6、特に好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルおよびブチル、ならびに6〜24の炭素原子を有するアリール、アルカリルまたはアラルキル、例えば、フェニル、ナフチル、トリルおよびベンジルを表す。また、好ましいアミンの例としては、ポリアルキレンアミンが挙げられ、具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トルイジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンである。
好ましいβ−ジカルボニル化合物は4〜12、特に5〜8の炭素原子を有するものであり、例えば、アセチルアセトン等のジケトン、2,3−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸エチルエステル等のアセト酢酸−C−C−アルキルエステル、ジアセチルおよびアセトニルアセトンが挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
好ましいシランは、少なくとも1つの加水分解性基またはヒドロキシ基と、少なくとも1つの非加水分解性残基を有する加水分解性オルガノシランである。ここで加水分解性基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基およびアシルオキシ基が挙げられる。非加水分解性残基としては、反応性官能基を有するまたは反応性官能基を有しない非加水分解性残基が用いられる。また、フッ素で置換されている有機残基を少なくとも部分的に有するシランを使用してもよい。
用いられるシランとしては特に限定されないが、例えば、CH=CHSi(OOCCH、CH=CHSiCl、CH=CHSi(OC、CH=CH−Si(OCOCH、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OOCCH、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N’−(2’−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス−(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシランおよび3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを挙げることができ、例えば、信越化学工業(株)製のKBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503等を挙げることができる。
官能基を有する金属化合物としては、元素周期表の第1群III〜Vおよび第2群II〜IVの少なくともいずれかからの金属Mの金属化合物が挙げられる。具体的には、下記化学式で表されるジルコニウムおよびチタニウムのアルコキシドが挙げられる。
M(OR)
上記式において、MはTi、Zrである。OR基の一部はβ−ジカルボニル化合物またはモノカルボン酸等の錯生成剤により置換される。メタクリル酸等の重合性不飽和基を有する化合物が錯生成剤として使用される場合には、重合性不飽和基を導入することができる。
分散媒として、水および有機溶媒の少なくともいずれかが好適に使用される。特に好ましい分散媒は、蒸留された純粋な水である。有機溶媒として、極性、非極性および非プロトン性溶媒が好ましい。それらの例として、メタノール、エタノール、n−およびi−プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜6の脂肪族アルコール等のアルコール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンおよびブタノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類;スルホランおよびジメチルスルホキシド等のスルホキシド類およびスルホン類;およびペンタン、ヘキサンおよびシクロヘキサン等の任意にハロゲン化されていてもよい脂肪族炭化水素類が挙げられる。これらの分散媒は混合物として使用することができる。
分散媒は、蒸留、任意には減圧下により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
(i)の反応性異形シリカ微粒子の調製に際し、分散媒の濃度は、通常40質量%〜90質量%の範囲内、好ましくは50質量%〜80質量%の範囲内、特に55質量%〜75質量%の範囲内である。分散液の残りは、未処理のシリカ微粒子および上記表面修飾化合物から構成される。ここで、シリカ微粒子:表面修飾化合物の重量比は、100:1〜4:1とすることが好ましく、中でも50:1〜8:1、特に25:1〜10:1とすることが好ましい。
(i)の反応性異形シリカ微粒子の調製は、好ましくは20℃程度の室温から分散媒の沸点までの温度範囲で行われる。特に好ましくは、分散温度は50℃〜100℃である。分散時間は、特に使用される材料のタイプに依存するが、一般に数分から数時間、例えば、1時間〜24時間である。
(ii)被覆前の異形シリカ微粒子に導入する反応性官能基、下記化学式(2)に示す基、およびシラノール基または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、コアとなるシリカ微粒子としての金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する反応性異形シリカ微粒子。
−Q−C(=Q)−Q− (2)
(式(2)中、QはNH、OまたはSを示し、QはOまたはSを示し、QはNHまたは2価以上の有機基を示す。)
上記(ii)の反応性異形シリカ微粒子を用いる場合には、有機成分量が高まり、分散性、およびハードコート層の強度がより高まるという利点がある。
まず、被覆前のシリカ微粒子に導入したい反応性官能基、上記化学式(2)に示す基、およびシラノール基または加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物について説明する。なお、以下、上記化合物を反応性官能基修飾加水分解性シランという場合がある。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、シリカ微粒子に導入したい反応性官能基は、後述するモノマーと反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような重合性不飽和基を導入するのに適している。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、上記化学式(2)に示す基の[−Q−C(=Q)−]部分は、具体的には、[−O−C(=O)−]、[−O−C(=S)−]、[−S−C(=O)−]、[−NH−C(=O)−]、[−NH−C(=S)−]、および[−S−C(=S)−]の6種である。これらの基は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−]基と、[−O−C(=S)−]基および[−S−C(=O)−]基の少なくとも1種を併用することが好ましい。上記式(2)に示す基[−Q−C(=Q)−Q−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基板との密着性および耐熱性等の特性を付与することが可能になると考えられる。
また、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する基を挙げることができ、アルコキシシリル基またはアリールオキシシリル基が好ましい。シラノール基または、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基は、縮合反応または加水分解に続いて生じる縮合反応によって、金属酸化物微粒子と結合することができる。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランの好ましい具体例としては、例えば、下記化学式(3)および(4)に示す化合物を挙げることができ、下記化学式(4)に示す化合物が硬度の点からより好ましく用いられる。
Figure 0006089709
上記式(3)および(4)中、R、Rは同一でも異なっていてもよいが、水素原子またはCからCのアルキル基もしくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここでmは1、2または3である。
[(RO) 3−mSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基等が好ましい。
式(3)および(4)中、RはCからC12の脂肪族または芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状または環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
式(3)中、Rは2価の有機基であり、通常、分子量14〜10,000、好ましくは、分子量76〜500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式または多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;およびこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素および水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには上記式(2)に示す基を含むこともできる。
式(3)および(4)中、Rは(n+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状または環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
式(3)および(4)中、Y’は反応性官能基を有する1価の有機基を示す。上述のような反応性官能基そのものであってもよい。例えば、反応性官能基を重合性不飽和基から選択する場合、(メタ)アクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、(メタ)アクリルアミド基等を挙げることができる。また、nは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
反応性官能基修飾加水分解性シランの合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。すなわち、例えば、重合性不飽和基を導入したい場合、(A)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(B)分子中にアルコキシシリル基およびイソシアネート基を有する化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(C)分子中に重合性不飽和基およびイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシランまたはアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
(ii)の反応性異形シリカ微粒子の製造においては、反応性官能基修飾加水分解性シランを別途加水分解操作を行った後、これと異形シリカ微粒子を混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、もしくは反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を異形シリカ微粒子の存在下に行う方法、また、他の成分、例えば、多価不飽和有機化合物、単価不飽和有機化合物、放射線重合開始剤等の存在下、異形シリカ微粒子の表面処理を行う方法を選ぶことができるが、反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を異形シリカ微粒子の存在下行う方法が好ましい。(ii)の反応性異形シリカ微粒子を製造する際、その温度は、通常20℃以上150℃以下であり、また処理時間は5分〜24時間の範囲である。
加水分解反応を促進するため、触媒として酸、塩もしくは塩基を添加してもよい。酸としては有機酸および不飽和有機酸;塩基としては3級アミンまたは4級アンモニウムヒドロキシドが好適な物として挙げられる。これら酸もしくは塩基触媒の添加量は反応性官能基修飾加水分解性シランに対して0.001質量%〜1.0質量%の範囲内、好ましくは0.01質量%〜0.1質量%の範囲内である。
反応性異形シリカ微粒子としては、分散媒を含有しない粉末状の微粒子を用いてもよいが、分散工程を省略でき、生産性が高い点から微粒子を溶剤分散ゾルとしたものを用いることが好ましい。
一方、反応性シリカ微粒子が、球状の反応性シリカ微粒子である場合は、平均一次粒径が1nm〜100nmの範囲内、より好ましくは5nm〜80nmの範囲内のシリカ微粒子表面に反応性官能基を有するものが好ましい。球状の反応性シリカ微粒子に用いられるシリカ微粒子、および反応性官能基の導入方法については、反応性異形シリカ微粒子と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
無機酸化物微粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して40質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、50質量%〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が少ないとハードコート層に十分な硬度を付与できないおそれがある。含有量が多いと、充填率が上がり過ぎ、無機酸化物微粒子とモノマーとの密着性が悪化し、かえってハードコート層の硬度を低下させてしまうおそれがある。
ここで、固形分とは、硬化性樹脂組成物中に含まれる成分のうち溶剤以外のものを意味する。
(c)ポリマー
本発明において、ポリマーは、ハードコート層に柔軟性を付与する成分である。
ポリマーとしては、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー等を挙げることができる。
中でも、アクリル系ポリマーを用いることが好ましい。ハードコート層の硬度を維持しつつ、加工性を改善することができるからである。
ウレタン系ポリマーとしては、一般的なハードコート層の成分として公知のものが用いられ、例えば、特開2010−120182号公報、特開2012−148484号広報に記載のものを挙げることができる。
アクリル系ポリマーとしては、ハードコート層に柔軟性を与え、加工時にクラックを防止する点から、その重量平均分子量が、30,000〜80,000の範囲内であり、60,000〜80,000の範囲内であることが好ましい。
ここで、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量をいう。
また、アクリル系ポリマーは、アクリル当量が200〜1,000の範囲内であり、200〜400の範囲内であることが好ましい。
ここで、アクリル当量とは、アクリル系ポリマーの重量平均分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除した値を示す。
アクリル系ポリマーとしては、上記重量平均分子量およびアクリル当量を満たすものであれば特に限定されないが、グリセロール(メタ)アクリレートの重合体、またはメタクリル酸グリシジルに(メタ)アクリル酸を付加重合した化合物の重合体であることが好ましい。
具体的には、下記化学式(5)または(6)で表されるアクリルモノマーの重合体が好ましく用いられる。
Figure 0006089709
上記式(5)において、R〜Rはそれぞれ独立してアクリレート基、メタクリレート基または水素原子であり、R〜Rのうち1つ以上はアクリレート基またはメタクリレート基である。すなわち、上記式(5)で表されるグリセロール(メタ)アクリレートは、単官能、2官能および3官能のいずれであってもよい。
また、上記式(6)において、Rはアクリル酸基またはメタクリル酸基である。
このようなアクリル系ポリマーとしては、例えば、星光PMC(株)製のBL−2002が挙げられる。
また、アクリル系ポリマーとしては、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して用いてもよい。
ポリマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して3質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜10質量%であることがより好ましく、6質量%〜8質量%の範囲内であることがさらに好ましい。ポリマーの含有量が上記範囲内であれば、タッチパネル用前面基板の加工性を向上させることができる。
また、ポリマーの含有量は、後述のモノマー100重量部に対して5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、20重量部〜40重量部の範囲内であることがより好ましく、10重量部〜30重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
(d)モノマー
本発明において、モノマーは、ハードコート層のマトリクスとなる成分である。
モノマーは、通常、反応性官能基を有する。モノマーは、硬化した際にモノマー同士で架橋する。また、反応性異形シリカ微粒子を含有する場合、モノマーの反応性官能基は、反応性異形シリカ微粒子の反応性官能基と架橋反応性を有するため、モノマーは反応性異形シリカ微粒子と架橋し、網目構造が形成され、ハードコート層の硬度および耐擦傷性をさらに高める。反応性官能基としては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合およびエポキシ基等が挙げられる。モノマーの反応性官能基は、反応性異形シリカ微粒子の反応性官能基と同じであっても異なっていてもよい。
モノマーとしては、硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましく、紫外線または電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能等に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。モノマーとして、1種または2種以上のモノマーを用いることができる。
モノマーは、反応性官能基を3つ以上有することが、架橋密度を高められる点から好ましい。反応性官能基を3つ以上有する多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらの変性体が挙げられる。なお、変性体としては、エチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体、およびイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
中でも、多官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートが好ましく用いられ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートが特に好ましく用いられる。
モノマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して25質量%〜44質量%の範囲内であることが好ましく、30質量%〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が少ないとハードコート層に十分な硬度を付与できないおそれがある。また、含有量が多いと、ハードコート層の硬度が上がり過ぎ、またポリマーの含有量が相対的に少なくなり、タッチパネル用前面基板の加工性を低下させてしまうおそれがある。
(e)重合開始剤
重合開始剤は、光および熱の少なくともいずれかにより分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカルおよびカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、光および熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられる。具体例としては、特開2010−102123号公報および特開2010−120182号公報に記載のものを挙げることができる。
また、カチオン重合開始剤は、光および熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示される。具体例としては、特開2010−102123号公報および特開2010−120182号公報に記載のものを挙げることができる。
ラジカル重合開始剤としてもカチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示される。具体例としては、特開2010−102123号公報および特開2010−120182号公報に記載のものを挙げることができる。
中でも、重合開始剤は、可視光領域における吸収率が比較的低いことが好ましい。可視光領域における吸収率が高いと、タッチパネル用前面基板の光透過性が低下するおそれがあるからである。
重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して2質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、2質量%〜2.5質量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が少ないとモノマー等の重合反応が十分に進行せず、ハードコート層に十分な硬度を付与できないおそれがある。また、含有量が多いとモノマー等の重合反応が速く進行し、作業性が低下したり不均一な硬化物となったりするおそれがある。
(f)溶剤
硬化性樹脂組成物は、通常、溶剤を含有する。溶剤の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。
(g)その他の成分
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、各種増感剤等を含有していてもよい。
(h)硬化性樹脂組成物
硬化性樹脂組成物は、溶剤に反応性異形シリカ微粒子、アクリル系ポリマー、モノマー、重合開始剤等を一般的な調製方法に従って混合し分散処理することにより調製することができる。混合分散には、ペイントシェーカーまたはビーズミル等を用いることができる。
(2)ハードコート層
本発明に用いられるハードコート層の表面の動摩擦係数としては、所望の易滑性を示すことができれば特に限定されない。上記動摩擦係数は、その値が小さいほど良好な易滑性を示すことができる。ハードコート層の表面の動摩擦係数としては、例えば、0.200以下であることが好ましく、0.100以下であることがより好ましい。動摩擦係数が大きすぎると、ハードコート層の表面でのタッチ操作を良好に行うことが困難となる可能性があるからである。
なお、動摩擦係数は、JIS K7125に準拠した方法により測定することができ、例えば、新東科学(株)社製の動摩擦試験機HEIDON Type HHS2000で、直径10mmのステンレス剛球を用い、荷重200g、速度5mm/secにて動摩擦係数を測定することができる。
ハードコート層の濡れ性としては、硬化性樹脂組成物に用いられる成分に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されないが、ハードコート層の水滴の接触角が90°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましく、110°以上であることがさらに好ましい。ハードコート層が良好な防汚性を発揮できるからである。一方、上記水滴の接触角は、通常120°以下である。
なお、水滴の接触角は、接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)することで求めることができる。
ハードコート層は光透過性を有するものである。ハードコート層の可視光領域における透過率としては、具体的には、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。上記透過率が上記範囲であることにより、光透過性に優れたハードコート層とすることができるからである。
ここで、ハードコート層の透過率は、JIS K 7105で規定する方法により測定した全光線透過率とする。
ハードコート層のヘイズ値としては、無機酸化物微粒子の種類等に応じて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、1.0以下、中でも0.8以下、特に0.5以下であることが好ましい。ヘイズ値が上記範囲であることにより、光透過性の良好なハードコート層とすることができるからである。
なお、ヘイズ値は、JIS−K−7136に準拠した方法で測定することができ、例えば準積分球を用いて、東洋精機製作所(株)製の直読ヘイズメーターにより測定することができる。
ハードコート層の硬度は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で評価できる。ハードコート層の鉛筆硬度は6H以上であることが好ましく、中でも7H以上、特に9H以上であることが好ましい。
ハードコート層の厚みとしては、所望の易滑性、硬度、耐擦傷性等を有することができれば特に限定されるものではなく、例えば、5μm〜40μm程度にすることができ、中でも10μm〜30μmの範囲内、特に18μm〜22μmの範囲内であることが好ましい。ハードコート層が薄いと十分な硬度を発揮できず、厚いとクラックや反りが発生するおそれがあるからである。
ハードコート層の形成方法は、上記硬化性樹脂組成物を用いてハードコート層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を硬化させる方法を用いることができる。
硬化性樹脂組成物の塗布方法は、基板上に硬化性樹脂組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法を用いることができる。また、基板上への硬化性樹脂組成物の塗工量としては、所望の膜厚のハードコート層が得られるように調節することが好ましい。
塗膜の乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。常圧で乾燥させる場合、基板が劣化しない温度範囲で乾燥させることが好ましく、例えば30℃〜110℃の範囲内で乾燥させることが好ましい。
塗膜の硬化方法としては、光照射および加熱の少なくともいずれかを用いることができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用され、中でも紫外線が好ましく用いられる。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば50mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
また、加熱する場合、基板が劣化しない温度範囲で加熱することが好ましく、例えば40℃〜120℃の範囲内で加熱することが好ましい。また、25℃程度の室温で24時間以上放置することにより反応を行ってもよい。
2.基板
本発明に用いられる基板は、光透過性を有するものであり、タッチパネル用前面基板の基板として用い得る物性を満たすものであれば特に限定されない。通常、タッチパネル用前面基板に用いられる基板には、透明、半透明、無色または有色を問わないが、光透過性が要求される。
基板の材料としては、例えばアクリレート系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ポリカーボネートの具体例としては、ビスフェノールA等のビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの具体例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられる。
基板は、単層であってもよく、複数層が積層されたものであってもよい。単層の場合、基板の材料はアクリレート系ポリマーであることが好ましく、ポリメタクリル酸メチルがより好ましい。透明性が高いからである。一方、複数層の場合、基板は複数の樹脂層を有することになる。樹脂層の積層数は、2層以上であればよく、3層〜5層の範囲内であることが好ましく、3層であることがより好ましい。
基板が3層以上の樹脂層を有する場合、最も外に位置する2つの層を最外樹脂層とし、2つの最外樹脂層の内側に位置する層を内側樹脂層とする。図2に示すように、例えば基板1が3層の樹脂層1a〜1cを有する場合、最も外に位置する2つの樹脂層を最外樹脂層1b、1cとし、2つの最外樹脂層1b、1cの内側に位置する層を内側樹脂層1aとする。なお、内側樹脂層1aは単層であってもよく複数層であってもよい。
基板が3層以上の樹脂層を有する場合、基板の両面にそれぞれ位置する2つの最外樹脂層の鉛筆硬度は、内側樹脂層の鉛筆硬度よりも高いことが好ましい。最外樹脂層の硬度を高くすることで、硬度の高いタッチパネル用前面基板を形成しやすくなり、内側樹脂層の硬度を低くすることで、熱膨張率等の違いにより生じる応力を緩和でき、すなわち内側樹脂層がクッション層となり、例えば耐落球試験性のような耐衝撃性が向上するからである。最外樹脂層と内側樹脂層との硬度の差は、鉛筆硬度の基準において、2段階以上離れていることが好ましく、3段階以上離れていることがより好ましい。最外樹脂層の鉛筆硬度は、例えばHB以上であることが好ましく、H以上5H以下であることがより好ましい。内側樹脂層の鉛筆硬度は、例えばH以下であることが好ましく、3B以上HB以下であることがより好ましい。
また、基板が複数層の樹脂層を有する場合、基板の鉛筆硬度は2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。タッチパネル用前面基板の硬度をさらに向上させることができるからである。なお、基板の鉛筆硬度は高いことが好ましいが、通常は4H以下である。
一方、基板が単層の場合でも、基板の鉛筆硬度は2H以上であることが好ましい。
また、図2に例示するように、基板1が3層の樹脂層1a〜1cを有する場合、内側樹脂層1aがポリカーボネートであり、2つの最外樹脂層1b、1cがアクリレート系ポリマーであることが好ましい。耐衝撃性が向上するからである。この場合、1つの最外樹脂層の厚さは、60μm〜110μmの範囲内であることが好ましい。
基板は、より多くの光を透過することが好ましい。可視光領域における全光線透過率としては、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、全光線透過率は、JIS K 7105で規定する方法により測定した値とする。
基板の厚さは、特に限定されるものではないが、0.3mm以上であることが好ましく、0.3mm〜5mmの範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であれば、十分な耐衝撃性を維持できるからである。
また、基板には、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
3.その他の構成
本発明のタッチパネル用前面基板は、基板およびハードコート層を有していればよいが、タッチパネル用前面基板の用途等に応じて他の層をさらに有していてもよい。他の層としては、例えばプライマー層、帯電防止層、防眩層、低屈折率層等が挙げられる。
また本発明においては、図3に例示するように、基板1のハードコート層2の形成面とは反対側の面に第2のハードコート層3が形成されていてもよい。第2のハードコート層が形成されていることにより、タッチパネル用前面基板の硬度をさらに向上させることができる。
第2のハードコート層に用いられる硬化性樹脂組成物は、上記ハードコート層に用いられる硬化性樹脂組成物と同じであってもよく異なっていてもよい。
4.タッチパネル用前面基板
本発明のタッチパネル用前面基板は、タッチパネルの最表面に配置されるものである。また、本発明のタッチパネル用前面基板は、指を直接接触させて操作させるタッチパネルに好適に用いることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(準備)
基板として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)をこの順に積層した積層体を用意した。積層体は全体の厚さ1.0mm、PMMAの厚さ100μm、鉛筆硬度3Hであった。
反応性異形シリカ微粒子として、平均1次粒径55nmのシリカ微粒子3〜10個が無機の化学結合により結合した平均2次粒径100nm〜300nm、反応性官能基として光硬化性不飽和基を有する反応性異形シリカ微粒子を用い、固形分濃度40.0質量%、プロピレングリコール-1-メチルエーテルアセテート(PGMEA)溶剤の分散液を用意した。
モノマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を用意した。重合開始剤として、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア184を用意した。
フッ素シリコン系界面活性剤として、信越化学工業社製のフッ素シリコン系界面活性剤X−71−1203Mを用意した。溶剤として、プロピレングリコール-1-メチルエーテルアセテート(PGMEA)を用意した。
ポリマーとして、重量平均分子量7万、アクリル当量265のアクリル系ポリマーである星光PMC(株)製のBL−2002を用いた。なお、星光PMC(株)製のBL−2002の組成は、アクリル樹脂30〜40重量部、メチルエチルケトン60〜70重量部、酢酸1重量部未満、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾール1重量部未満である。
(硬化性樹脂組成物の調製)
下記組成で、硬化性樹脂組成物を調製した。
反応性シリカ微粒子分散液:52.5重量部(固形分濃度40質量%)
モノマー:15.0重量部
ポリマー:8.60重量部
重合開始剤:0.905重量部
フッ素シリコン系界面活性剤:0.190重量部
溶剤:22.8重量部
(ハードコート層の形成)
基板の片面に、硬化性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布し、温度80℃のホットプレートで180秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が3000mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚20μmのハードコート層を形成した。なお、積算露光量は365nmの波長を用いて計算した。
[比較例1]
下記の物性評価の比較例として、名阪真空工業社製のRGW310を用意した。RGW310は、基材としてPMMA、PC、およびPMMAがこの順に積層した3層品(住友化学製 C101)を用いており、ハードコート層に用いられた硬化性樹脂組成物は、界面活性剤としてシリコン系界面活性剤、無機酸化物微粒子として平均一次粒子径15nmの球形シリカ(65質量%程度)、モノマーとしてペンタエリスリトール多官能アクリレート、ポリマーとしてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)、光重合開始剤としてイルガキュア184、その他の成分としてε-カプロラクトンを含有するものであった。
[比較例2]
下記の物性評価の比較例として、名阪真空工業社製のRGW200を用意した。RGW200は、基材としてPMMA単層板を用いており、ハードコート層に用いられた硬化性樹脂組成物は、界面活性剤としてシリコン系界面活性剤、無機酸化物微粒子として平均一次粒径15nmの球形シリカ(65質量%程度)、モノマーとしてペンタエリスリトール多官能アクリレート、ポリマーとしてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)、光重合開始剤としてイルガキュア184、その他の成分としてε-カプロラクトンを含有するものであった。
[比較例3]
下記の物性評価の比較例として、厚さ1.0mmのPMMA基板(旭化成テクノプラス社製のデラグラスA999)を用意した。
[評価1]
(動摩擦係数)
タッチパネル用前面基板のハードコート層について、新東科学(株)社製の動摩擦試験機HEIDON Type HHS2000で、直径10mmのステンレス剛球を用い、荷重200g、速度5mm/secにて動摩擦係数を測定した。
(フッ素含有率およびシリコン含有率)
X線光電子分析法(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)を用いて、ハードコート層の最表面から厚み方向に5nmまでの範囲に存在するフッ素(F)含有率(%)およびシリコン(Si)含有率(%)を以下のように測定した。
測定装置として、ESCALAB 220i−XL(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製XPS装置)を使用した。入射X線としてMonochromated Al K α(単色化X線、hν=1486.6eV)を使用した。X線出力を10kV・18mA(180W)とした。レンズとしてLarge Area XL(磁場レンズ)を使用した。アパーチャ開度をF.O.V.=open、A.A.=openとし、測定領域を700μmφとし、光電子取込角度を90度(試料法線上にインプットレンズが存在)とした。また、中和補助マスクを使用して、電子中和銃で+4(V)・0.08(mA)で帯電中和を行った。
なお、フッ素含有率は、ハードコート層中に含まれる酸素、炭素、フッ素、およびシリコンの数(単位;atomic%)の総和に対するフッ素の数の割合である。また、シリコン含有率は、ハードコート層中に含まれる酸素、炭素、フッ素、およびシリコンの数(単位;atomic%)の総和に対するシリコンの数の割合である。
(鉛筆硬度試験)
得られたタッチパネル用前面基板を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)を行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価した。
(マンドレル試験)
JIS−K5600−5−1に記載されているマンドレル試験(金属製円柱にサンプルを巻きつける試験)に準じ、円柱にハードコート層を外側にしてタッチパネル用前面基板の長さ方向で巻きつけ、クラックが発生しなかった棒の最小直径を評価した。例えば、直径150mmの円柱でクラックが発生し、直径160mmの円柱でクラックが発生しなかった場合は、160mmとした。
ここで、本発明者らがタッチパネル用前面基板の加工性について検討した結果、マンドレル試験と加工性には相関があり、マンドレル試験による屈曲性が良好である場合には打ち抜き加工、ルーター加工、切断加工等での加工性が良好であった。
Figure 0006089709
[比較例4]
硬化性樹脂組成物に用いられる界面活性剤として、信越化学工業社製のフッ素シリコン系界面活性剤X−71−1203Mの代わりに、DIC(株)製のフッ素系界面活性剤メガファックMCF350−5を用いたこと以外は、実施例1と同様して、タッチパネル用全面基板を作成した。
[比較例5]
硬化性樹脂組成物に用いられる界面活性剤として、信越化学工業社製のフッ素シリコン系界面活性剤X−71−1203Mの代わりに、信越化学工業社製のシリコン系界面活性剤X22−163Aを用いたこと以外は、実施例1と同様して、タッチパネル用全面基板を作成した。
[評価2]
実施例1と同様にして、比較例4および比較例5のタッチパネル用全面基板のハードコート層表面の動摩擦係数を測定した。
Figure 0006089709
表1および表2に示すように、フッ素シリコン系界面活性剤を添加することで、ハードコート層の易滑性が向上することが確認された。
1 … 基板
2 … ハードコート層
10 … タッチパネル用前面基板

Claims (1)

  1. 基板と、前記基板上に形成されたハードコート層と、を有するタッチパネル用前面基板であって、
    前記ハードコート層がフッ素シリコン系界面活性剤および反応性異形シリカ微粒子を含有することを特徴とするタッチパネル用前面基板。
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