JP5748267B2 - チタン合金ビレットおよびチタン合金ビレットの製造方法並びにチタン合金鍛造材の製造方法 - Google Patents

チタン合金ビレットおよびチタン合金ビレットの製造方法並びにチタン合金鍛造材の製造方法 Download PDF

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本発明は、チタン合金製品の製造工程の途中に得られるチタン合金ビレット、およびそのチタン合金ビレットの製造方法、並びにそのチタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材を製造するチタン合金鍛造材の製造方法に関するものである。
Ti−6Al−4V合金に代表されるα+β型チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性に加え、溶接性、超塑性、拡散接合性などの利用加工諸特性を有することから、航空機産業を中心に多用されてきた。これらの特性を更に活用すべく、近年では、ゴルフ用品をはじめとしたスポーツ用品にも使用されるようになってきており、自動車部品、土木建築用素材、各種工具類などの民生品分野や、深海やエネルギー開発用途などへの適用拡大も進んでいる。
α+β型のチタン合金製品は、まず、原材料を溶解後、例えば、特許文献1に記載されているように、β域鍛造→α+β域鍛造→β熱処理→α+β域鍛造という鍛造工程を経てまずチタン合金ビレットを製造し、そのチタン合金ビレットに対し、複数の荒地鍛造工程と仕上げ鍛造工程で成る型鍛造、熱処理、機械加工を施すことによって製造される。
このα+β型チタン合金の金属組織はα相とβ相で構成されている。これら金属組織のうち、β相は体心立方晶であり等方的な特性を有しているが、α相は稠密六方晶であり、結晶セルの方向、特にc軸方向(図1に示す)とc軸と垂直な方向で特性が大きく異なっている。そのため、α+β型のチタン合金製品は、α相の結晶セルの配向状態(集合組織)によって、機械的特性を始め種々の特性に異方性を生じることがある。
α+β型チタン合金でなる最終製品には、特定の目的で意図的に異方性を持たせる場合もあるが、多くの場合は等方的な特性を有することが望まれる。従って、従来から等方的な特性を有する最終製品を製造するために様々な工夫が凝らされていた。
従来の製造方法では、まず、半径方向に異方性のないチタン合金ビレットを製造したうえで、そのチタン合金ビレットに対し、複数の荒地鍛造工程と仕上げ鍛造工程で成る型鍛造、熱処理、そして機械加工を施すことによって最終製品を製造することが一般的であった。しかしながら、このような製造工程で等方的な特性を有する最終製品を製造する場合、型鍛造により導入される歪みが一方向に偏らないように、荒地鍛造工程や仕上げ鍛造工程に細かな工夫を凝らす必要がある。そのためには、金型の形状の工夫を始めとして、最適な鍛造工程を見つけ出すための試行錯誤を行うこととなり、α+β型チタン合金でなる最終製品の製造には大変な手間を要していた。
米国特許第5277718号明細書
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、比較的簡便な鍛造工程で異方性の小さいα+β型のチタン合金製品を製造することができるチタン合金ビレット、およびそのチタン合金ビレットの製造方法、並びにそのチタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材を製造するチタン合金鍛造材の製造方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、α相とβ相でなる金属組織を有するチタン合金ビレットであって、ビレットの長手方向からY方向(強圧下方向)に向かって±30°以内で、且つ、ビレットの長手方向からX方向(Y方向および長手方向に垂直な方向)に向かって±40°〜90°の範囲に、α相のc軸方向が集積しており、その集積度が3以上であることを特徴とするチタン合金ビレットである。
請求項2記載の発明は、質量%で、Al:5.50〜6.75%、V:3.50〜4.50%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であるチタン合金で形成されていることを特徴とする請求項1記載のチタン合金ビレットである。
請求項3記載の発明は、チタン合金素材を用いてチタン合金ビレットを製造するにあたり、チタン合金素材を用いて鍛造された中間素材をβ変態温度未満の温度で加熱した後に、下記式(1)〜式(3)を満足する条件で鍛造を行い、チタン合金ビレットを製造することを特徴とするチタン合金ビレットの製造方法である。
(a1×b2)/(a2×b1)≧1.5・・・式(1)
(a1−a2)/a1≧0.4・・・式(2)
A2/A1≧0.6・・・式(3)
但し、a1,b1,A1は強圧下鍛造前の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a1は強圧下方向の中間素材の長さを、b1はa1に直交する方向の中間素材の長さを、A1は断面積を、夫々示し、また、a2,b2,A2は鍛造後の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a2は強圧下方向の中間素材の長さを、b2はa2に直交する方向の中間素材の長さを、A2は断面積を、夫々示す。
請求項4記載の発明は、前記チタン合金素材が、質量%で、Al:5.50〜6.75%、V:3.50〜4.50%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であるチタン合金であることを特徴とする請求項3記載のチタン合金ビレットの製造方法である。
請求項5記載の発明は、請求項1または請求項2記載のチタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材を製造するにあたり、チタン合金ビレットをβ変態点未満の温度で加熱した後に、前記強圧下方向と直交し、且つ長手方向と直交する方向から±10°の範囲内に位置する方向より下記式(4)および式(5)を満足する条件で、前記チタン合金ビレットに変形を加え、チタン合金鍛造材を製造することを特徴とするチタン合金鍛造材の製造方法である。
(b2−b3)/b2≧0.2・・・式(4)
(b2−b4)/b2≦0.6・・・式(5)
但し、b3,b4はチタン合金鍛造材を製造する鍛造工程後のb2(請求項3で定義)と平行する方向のチタン合金鍛造材の長さを示し、b3は最長部の長さを、b4は最短部の長さを、夫々示す。
本発明のチタン合金ビレットおよびチタン合金ビレットの製造方法並びにチタン合金鍛造材の製造方法によると、チタン合金鍛造材を製造するために金型の形状に工夫を凝らす等、鍛造工程に細かな工夫を凝らすことなくても、比較的簡便な鍛造工程で異方性の小さいα+β型のチタン合金製品を製造することができる。
α+β型チタン合金のα相を示す斜視図である。 α相のc軸の、ビレットの長手方向からY方向に向かう傾きを例示するチタン合金ビレットの横断面図である。 α相のc軸の、ビレットの長手方向からX方向に向かう傾きを例示するチタン合金ビレットの縦断面図である。 α相のc軸方向の集積位置と集積度を示す説明図である。
α相とβ相でなる金属組織を有するα+β型チタン合金素材を用いて異方性の小さいチタン合金製品を鍛造により得ようとすると、従来は金型形状等に非常に複雑且つ細かな工夫を凝らす等の鍛造工程を経なければ製造することができず、それが大きな要因となりα+β型チタン合金製品のコストアップを招いていた。
本発明者らは、金型形状等に工夫を凝らさなくても比較的簡便な鍛造工程で異方性の小さいα+β型のチタン合金製品(チタン合金鍛造材)を製造することができる発明を見出すために鋭意研究を進めた。その結果、α+β型チタン合金製品の製造工程の途中で得られるチタン合金ビレットのα相のc軸方向(図1に示す)をある特定の範囲に集積させてチタン合金ビレットの段階で異方性を付与しておいて、そのチタン合金ビレットをチタン合金製品の製造に用いれば、比較的簡便な鍛造工程により異方性の小さいα+β型チタン合金製品を製造することができることを知見し、本発明の完成に至った。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づき詳細に説明する。まず、チタン合金製品の製造工程の途中に得られるチタン合金ビレットについて詳細に説明する。
α+β型チタン合金は、その金属組織が稠密六方晶のα相と体心立方晶のβ相で構成されている。これら金属組織のうち、β相は体心立方晶であるので等方的な特性を有しているが、図1に示すような結晶構造(稠密六方晶)のα相は、結晶セルの方向、特にc軸方向とc軸と垂直な方向で特性が大きく異なっている。従って、α+β型のチタン合金製品は、α相の結晶セルの配向方向によっては、機械的特性を始め種々の特性に異方性を生じることがある。
異方性の小さいα+β型チタン合金製品を得るための条件として最も好ましいのは、結晶方位(集合組織)がランダムに配向している場合である。また、たとえ結晶方位の集積が存在していたとしても、集積箇所が複数存在し、且つ、それら集積位置が空間的に分散しておれば(それらの向きが様々であれば)、チタン合金製品の異方性は小さくなる。すなわち、最終製品の段階で上記したどちらかの条件を満たしていることが、異方性の小さいα+β型チタン合金製品を得るための条件である。
チタン合金ビレットを用いて型鍛造によりチタン合金製品を製造する際に、チタン合金ビレットのビレット径よりチタン合金製品の長さが大きい場合、チタン合金ビレットの長手方向とチタン合金製品の最大長さ方向が一致するようにしてチタン合金製品を製造することになる。
この場合、チタン合金ビレットに対し、ビレットの長手方向と直交する垂直方向から主に変形を加えることとなる。主な変形を一方向に限定できれば生産性は向上するが、加工前の素材(チタン合金ビレット)の結晶方位(集合組織)がランダムに配向している場合には、加工後のチタン合金製品に特定の集合組織が形成され、結果として強い異方性が生じる可能性が高くなる。その理由は、α相のc軸は加工方向に直交する方向(垂直方向)に集積する傾向があるためである。
チタン合金製品に生じる異方性を低減するためには、最終製品の段階で前記した2つの条件のうちどちらかの条件を満たしておく必要があるが、本発明者らはこれらの条件を満たすことができる方法を見出すために、鋭意検討を行った。
前記したように、α相のc軸は加工方向に直交する方向(垂直方向)に集積する傾向がある。また、鍛伸方向にも集積する傾向がある。これらの傾向を踏まえ検討を行った結果、チタン合金ビレットの段階でα相のc軸方向をある特定の範囲に集積させて、敢えてチタン合金ビレットの段階では異方性を付与させておくことが、異方性の小さいα+β型チタン合金製品(チタン合金鍛造材)を得るために有効であることが分かった。
前記したように、チタン合金製品はチタン合金ビレットから型鍛造により製造されるが、その型鍛造工程で、α相のc軸と平行、もしくはそれに近い方向に変形を加えると、α相は変形方向に対して垂直方向に配向しようとするが、全ての結晶粒が同時には配向せずに、一部の結晶粒は加工方向と平行な概ね初期状態を保ったままの状態となり、また、一部は配向途中の段階となる。また、鍛伸が加わる場合には鍛伸方向に配向する結晶粒も存在する。その結果、型鍛造段階での加工方向が一定方向であるにも係わらず、α相が極端に集積することが避けられ、異方性の小さいチタン合金製品を得ることが可能となる。
例えば、図2〜4に示すように、ビレットの長手方向からY方向(ビレット鍛造時の強圧下方向)に向かって±30°以内で(図2は0°の例を示す。)、且つ、ビレットの長手方向からX方向(Y方向および長手方向に垂直な方向)に向かって±40°〜90°の範囲に、α相のc軸方向を集積させれば良い。もしこの範囲を外れてα相のc軸方向が集積しておれば、仮に集積度が3以上であっても、型鍛造工程にて一方向から主に変形を加えた際に、型鍛造後に集合組織が形成され、その結果、機械的特性に異方性を生じる。
尚、α相のc軸方向を、ビレットの長手方向からY方向に向かって±10°以内の範囲に集積させることがより好ましく、また、ビレットの長手方向からX方向に向かって±60°〜70°の範囲に集積させることがより好ましい。
また、先に説明したように集積度は3以上とする必要がある。集積度が3未満の場合、その後の型鍛造工程で一方向に大きな歪みを加えると、その加工により別の方向にα相のc軸が集積し、機械的特性に異方性が生じる虞がある。
本発明は、α+β型チタン合金であれば適用することができるが、特に、AMS4928で規定される成分で形成されていることが好ましい。つまり、Al:5.50〜6.75質量%、V:3.50〜4.50質量%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であるチタン合金で形成されていることが好ましい。不可避的不純物としては、おおよそN:0.05質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、Fe:0.30質量%、O:0.20質量%を含有する。
また、チタン合金ビレットは、AMS4981で規定されるチタン合金で形成されていても良い。AMS4981で規定されるチタン合金は、主添加元素として、Al、Sn、ZrおよびMoを含有し、その含有量は、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.50〜4.50質量%、Mo:5.50〜6.50質量%であって、残部はTiおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、おおよそN:0.04質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、Fe:0.15質量%、O:0.15質量%を含有する。
次に、本発明のチタン合金ビレットの製造方法について説明する。
通常、チタン合金ビレットは、(a)β域鍛造→(b)α+β域鍛造→(c)β熱処理→(d)α+β域鍛造という各工程を経て製造されるが、原材料の化学組成や工程の順序並びに工程毎の諸条件という複数の条件によって、製造されるチタン合金ビレットの物性や組織状態は変化するので、一連の製造工程として総合的に条件を選択して決定すべきであって、必ずしも工程の順序や工程毎の条件を厳密に規定することは適切ではない。
しかしながら、本発明のチタン合金ビレットを製造するための製造条件を、本発明者らが鋭意検討したところ、以下に示す製造条件を採用することで、本発明で意図する異方性を付与したチタン合金ビレットを確実に製造することができることを確認した。
その製造条件は、前記した(d)α+β鍛造工程において、チタン合金素材を用いて事前に鍛造された中間素材を、β変態温度未満(α+β温度域)の温度で加熱した後に、下記した式(1)〜式(3)を満足する条件で鍛造を行うことである。
各条件式は以下に示すとおりである。
(a1×b2)/(a2×b1)≧1.5・・・式(1)
(a1−a2)/a1≧0.4・・・式(2)
A2/A1≧0.6・・・式(3)
但し、a1,b1,A1は強圧下鍛造前の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a1は強圧下方向の中間素材の長さを、b1はa1に直交する方向の中間素材の長さを、A1は断面積を、夫々示し、また、a2,b2,A2は鍛造後の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a2は強圧下方向の中間素材の長さを、b2はa2に直交する方向の中間素材の長さを、A2は断面積を、夫々示す。
中間素材の鍛造を開始する前にβ変態温度以上の温度で加熱した場合、鍛造で導入される歪みが効果的に蓄積されず、チタン合金ビレットに所望の異方性を付与することができない。従って、中間素材の鍛造を開始する前の加熱温度は、β変態温度未満(α+β温度域)の温度とする。
式(1)では、チタン合金ビレットが異方性を得るために必要な、強圧下方向とその方向に直交する方向の変形量の比を規定する。(a1×b2)/(a2×b1)から求められる値が1.5より小さい値であると、チタン合金ビレットに十分な異方性を付与することができない。従って、(a1×b2)/(a2×b1)≧1.5とする。
式(2)では、中間素材の鍛造による強圧下方向の変形量を規定する。(a1−a2)/a1から求められる値が0.4より小さい値であると、式(1)による条件を満たしても、変形量そのものが小さいため、チタン合金ビレットに十分な異方性を付与することができない。従って、(a1−a2)/a1≧0.4とする。
式(3)では、中間素材を鍛造した時の長手方向への素材流出量を規定する。A2/A1から求められる値が0.6より小さい値であると、式(1)および式に(2)よる条件を満たしても、強圧下鍛造により素材が長手方向に流出してしまっているため、チタン合金ビレットに所望の異方性を付与することができない。従って、A2/A1≧0.6とする。
尚、式(1)〜式(3)を満足する条件で中間素材に鍛造を施した後、α+β温度域で中間素材を長手方向に垂直な断面の形状が等方的に変化する鍛伸を行っても構わない。尚、この鍛伸による(強圧下方向の変形量)/(強圧下方向に直交する方向の変形量)は、1.1以内に収めなければならない。
前記鍛造工程の途中及び前記鍛造工程の後に、中間素材及びチタン合金ビレットをβ変態点以上の温度で加熱してはならない。中間素材及びチタン合金ビレットをβ変態点以上に加熱すると、式(1)から式(3)を満足する条件で鍛造を施すことで付与された異方性が消失してしまう。
次に、このチタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材(チタン合金製品)を製造する方法について説明する。
チタン合金鍛造材はチタン合金ビレットから型鍛造により製造されるが、型鍛造工程で、前記した強圧下鍛造による強圧下方向と平行な方向に歪みを加えると、チタン合金ビレットが既に有する集合組織(強圧下方向に直交する垂直方向にα相のc軸が配向している。)が更に助長されてしまう。つまり、機械的特性の異方性が助長されてしまい、異方性が更に大きくなる。
これに対し、強圧下方向と直交する方向から歪みを加える場合、変形方向はα相のc軸の配向方向と略一致する。α相は変形方向に対して垂直方向に配向しようとするが、全ての結晶粒が同時には配向せずに、一部の結晶粒は加工方向と平行な概ね初期状態を保っており、また、一部は配向途中の段階となる。その結果、型鍛造段階での加工方向が一定方向であるに係わらず、α相が極端に集積することが避けられ、異方性の小さいチタン合金製品を得ることが可能となる。
具体的には、この型鍛造工程では、チタン合金ビレットをβ変態点未満(α+β温度域)の温度で加熱した後に、前記強圧下方向と長手方向に直交する方向の±10°の範囲内に位置する方向から下記式(4)および式(5)を満足する条件で、前記チタン合金ビレットに変形を加え、チタン合金鍛造材を製造すれば良い。
各条件式は以下に示すとおりである。
(b2−b3)/b2≧0.2・・・式(4)
(b2−b4)/b2≦0.6・・・式(5)
但し、b3,b4はチタン合金鍛造材を製造する鍛造工程後のb2(請求項3で定義)と平行する方向のチタン合金鍛造材の長さを示し、b3は最長部の長さを、b4は最短部の長さを、夫々示す。
チタン合金鍛造材の鍛造を開始する前にβ変態温度以上の温度で加熱した場合、式(1)から式(3)を満足する条件で鍛造を施すことで付与した異方性が消失してしまう。従って、チタン合金鍛造材の鍛造中間素材の鍛造を開始する前の加熱温度は、β変態温度未満(α+β温度域)の温度とする。
式(4)では、チタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材(チタン合金製品)が製造される過程での、結晶の分散度合い(チタン合金ビレットの段階での強い異方性が低減される度合い)を規定する。(b2−b3)/b2から求められる値が0.2より小さい値であると、チタン合金ビレットを製造する工程で強圧下方向と直交する方向に付与された強い異方性が殆ど残存することとなり、チタン合金鍛造材の異方性を軽減することができなくなる。従って、(b2−b3)/b2≧0.2とする。
式(5)では、チタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材(チタン合金製品)が製造される過程での、結晶の分散度合いを規定する。(b2−b4)/b2から求められる値が0.6より大きな値であると、チタン合金鍛造材を製造する型鍛造工程で、変形方向と垂直方向にc軸が配向するα相の割合が必要以上に増加し、チタン合金ビレットの状態とは異なる方向に異方性が形成されるため、チタン合金鍛造材の異方性を軽減することができなくなる。従って、(b2−b4)/b2≦0.6とする。
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例の試験では、まず、φ840mmのTi−6Al−4V鋳塊を用いて、(a)β域鍛造→(b)α+β域鍛造→(c)β熱処理→(d)α+β域鍛造という各工程を経てチタン合金ビレットを得た。
具体的には、(a)β域鍛造の後、(b)α+β域鍛造工程で、表1に示す種々の鍛造前の断面形状に仕上げて中間素材とし、続いて(c)β熱処理を、1050℃に1.5時間保持後、水冷却を行うという条件で施し、700℃で2.5時間の条件で応力ひずみ除去を行った。その後、β熱処理後の中間素材を加熱炉でβ変態温度未満の950℃に加熱(用いたチタン合金のβ変態温度は995℃)し、3時間保持した後に加熱炉から取り出し、表1に記載の鍛造後の形状となるようにして(d)α+β域鍛造を施した。その後、再度、950℃に加熱して3時間保持した後、断面形状がφ270mmになるように鍛造加工してチタン合金ビレットを得た。尚、表2に式(1)〜式(3)により求められた値を示す。
(集合組織評価)
円柱形状の各チタン合金ビレットの円周方向の中心から、図2に示すような長手方向と直交する断面を評価面とする試料を夫々切り出した。それら評価面をエメリー紙(♯2400)で研磨した後、鏡面研磨を実施し、測定に供した。
集合組織評価は、X線正極点図測定により実施した。具体的には、リガク製X線回析装置(RINT−5000)を用い、Cuターゲットで、ターゲット出力40kV−200mAの条件で反射法により、α相の{0002}集合組織測定を行い、標準化処理した後、測定結果を出力した。集積度を0.5ピッチで出力し、集積位置並びにその集積度を評価した。結果を表2に示す。尚、{0002}はα相のc軸方向に直交する面である。
図4は測定結果を出力した事例である。縦軸(Y方向:強圧下方向)および横軸(X方向:強圧下方向に垂直方向)の目盛りは10°ごとに付した目盛りであり、縦軸(Y方向)は、α相のc軸の、ビレットの長手方向からY方向に向かう傾き角を、横軸(X方向)は、α相のc軸の、ビレットの長手方向からX方向に向かう傾き角を、夫々示している。また、等高線から引き出した数字は集積度であり、0.5ピッチで表示している。図4によると、ビレットの長手方向からY方向(強圧下方向)に向かって±30°以内で、且つ、ビレットの長手方向からX方向(Y方向および長手方向に垂直な方向)に向かって±40°〜90°の範囲に、α相のc軸方向が集積していることが分かり、また、その集積度は3以上であることが分かる。
Figure 0005748267
Figure 0005748267
次に、前記チタン合金ビレットを950℃に加熱保持し、長手方向および強圧下方向と直交する方向に、(b2−b3)=0.4を満足する条件で鍛造を行い、室温まで冷却してチタン合金鍛造材とした。その後、上記した方法と同じ要領で集合組織評価を行い、前記チタン合金ビレットと同様に集積度を求めた。ここで求めた集積度が1.5以上の領域が5箇所以上存在し、且つ夫々のピーク位置が十分離れている(50°以上を合格とした)場合に、マクロ的に異方性が小さく等方的なチタン合金鍛造材(α+β型のチタン合金製品)が得られたと判断した。結果を鍛造材として表2に示す。
No.1およびNo.2は、式(1)〜式(3)を満足する製造要件で製造したチタン合金ビレットである。その結果、チタン合金ビレットの集合組織(集積位置と集積度)は本発明の要件を満足し、そのチタン合金ビレットから製造したチタン合金鍛造材は、異方性が小さく等方的なチタン合金鍛造材となった。
これに対し、No.3およびNo.4は、製造要件のうち式(1)および式(2)が本発明の要件を満足せず、No.5は、式(1)〜式(3)の全てが本発明の要件を満足しない。その結果、チタン合金ビレットの集合組織(集積位置と集積度)が本発明の要件を満足せず、そのチタン合金ビレットから製造したチタン合金鍛造材は、異方性が大きなチタン合金鍛造材となった。

Claims (5)

  1. α相とβ相でなる金属組織を有するチタン合金ビレットであって、
    ビレットの長手方向からY方向(強圧下方向)に向かって±30°以内で、且つ、ビレットの長手方向からX方向(Y方向および長手方向に垂直な方向)に向かって±40°〜90°の範囲に、α相のc軸方向が集積しており、
    その集積度が3以上であることを特徴とするチタン合金ビレット。
  2. 質量%で、Al:5.50〜6.75%、V:3.50〜4.50%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であるチタン合金で形成されていることを特徴とする請求項1記載のチタン合金ビレット。
  3. チタン合金素材を用いてチタン合金ビレットを製造するにあたり、
    チタン合金素材を用いて鍛造された中間素材をβ変態温度未満の温度で加熱した後に、 下記式(1)〜式(3)を満足する条件で鍛造を行い、
    チタン合金ビレットを製造することを特徴とするチタン合金ビレットの製造方法。
    (a1×b2)/(a2×b1)≧1.5・・・式(1)
    (a1−a2)/a1≧0.4・・・式(2)
    A2/A1≧0.6・・・式(3)
    但し、a1,b1,A1は強圧下鍛造前の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a1は強圧下方向の中間素材の長さを、b1はa1に直交する方向の中間素材の長さを、A1は断面積を、夫々示し、また、a2,b2,A2は鍛造後の中間素材の長手方向に直交する断面形状を計測したもので、a2は強圧下方向の中間素材の長さを、 b2はa2に直交する方向の中間素材の長さを、A2は断面積を、夫々示す。
  4. 前記チタン合金素材が、質量%で、Al:5.50〜6.75%、V:3.50〜4.50%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であるチタン合金であることを特徴とする請求項3記載のチタン合金ビレットの製造方法。
  5. 請求項1または請求項2記載のチタン合金ビレットを用いてチタン合金鍛造材を製造するにあたり、
    チタン合金ビレットをβ変態点未満の温度で加熱した後に、前記強圧下方向と直交し、 且つ長手方向と直交する方向から±10°の範囲内に位置する方向より下記式(4)および式(5)を満足する条件で、前記チタン合金ビレットに変形を加え、チタン合金鍛造材を製造することを特徴とするチタン合金鍛造材の製造方法。
    (b2−b3)/b2≧0.2・・・式(4)
    (b2−b4)/b2≦0.6・・・式(5)
    但し、b3,b4はチタン合金鍛造材を製造する鍛造工程後のb2(請求項3で定義)と平行する方向のチタン合金鍛造材の長さを示し、b3は最長部の長さを、b4は最短部の長さを、夫々示す。
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