JP7307314B2 - α+β型チタン合金棒材及びその製造方法 - Google Patents
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α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、前記α+β型チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θ1が0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であるとともに、
前記(0001)面の法線方向と、前記長軸方向とのなす角度θ1が25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であり、かつ、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(10-10)面の法線方向のうちのひとつの方向と、前記長軸方向とのなす角度θ2が0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率が40%以上であることを特徴とする、α+β型チタン合金棒材。
[2] 鋳塊を熱間加工して得られたチタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に急冷する第1の工程と、
前記チタン合金ビレットをα+β二相域の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造した後に冷却する第2の工程と、
前記チタン合金ビレットを、α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造する処理を1回以上行い、少なくとも最後に300℃以下まで冷却する処理を行う第3の工程と、をこの順で行う際に、
前記第2の工程における前記鍛造は、前記チタン合金ビレットを送り量Liniで長軸方向に送りつつ金敷で圧下する加工であって、鍛造前の前記チタン合金ビレットの幅をWiniとしたときにLini/Winiが0.80以下を満たし、鍛造後の前記チタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、前記Winiと前記Wafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下する鍛造であり、この鍛造を少なくとも2回以上行い、また、前記チタン合金ビレットを長軸周りに回転させて前記チタン合金ビレットに対する圧下方向を各回毎に変更させることとし、
前記第2の工程における鍛錬比を1.5以上とし、前記第3の工程の鍛錬比を3.0以上とする、
ことを特徴とする[1]に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
[3] 前記第1の工程が、前記チタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に、加工してから急冷する工程である、[2]に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
なお、本明細書において、「(10-10)面」と表記する場合の「-1」は、「1」の上に線を引いたことを意味する。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、25℃においてα相を主相としβ相を第2相とする金属組織を有するものがよい。すなわち、AMS4928で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有してもよい。
本実施形態のチタン合金棒材は、長軸方向の断面において、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、長軸方向とのなす角度θ1が0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であることが好ましい。すなわち、チタン合金棒材の長軸方向に対して稠密六方結晶のc軸が0~25°の範囲で傾斜し、かつ、円相当直径が20μm超であるα結晶粒が、長軸方向の断面において5.0面積%の割合であることが好ましい。
α相とβ相の2相域で加工を行うと、α相およびβ相それぞれの集合組織が形成される。その後の冷過程でβ相の一部がα相に変態するが、そのα相はβ相の結晶方位に依存した方位関係(Burgersの関係)を有する。特にβ相の面積率が50%程度を占める温度域においては、β相の集合組織の影響が冷却後も強く残存する。また、加工を加えた後のβ相からα相への変態では、生じうるα相の結晶方位のなかで特定の方位が高頻度で出現するバリアント選択を生じる。
以下、各工程について説明する。
以下に示す方法によりチタン合金棒材を製造し、評価した。
溶解して得られた、表1に示す組成を有する直径約750mmの円柱状の鋳塊を、β変態温度以上の1020℃以上1200℃以下に加熱した加熱炉内でβ単相温度域に加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造するβ鍛造と、β変態温度以下の900℃以上980℃以下のα+βの二相域に加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造するα+β鍛造を、それぞれ1回または複数回繰り返して、長手方向に直交する断面形状が表1に示す断面形状の棒状のビレットを得た。前記棒状のビレットを中間ビレット(チタン合金ビレット)とした。表1に示すチタン合金ビレットのβ変態点温度は990℃~1010℃の範囲であった。
事前工程で得た中間ビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して、表2に示す条件のように、鍛造(加工)後に水冷、あるいは、鍛造(加工)を行わないで水冷した。水冷は、十分な量の水を入れた水槽に浸漬することで行った。また、水冷は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで行った。第1の工程の加熱温度は、β変態点+30℃~β変態点+100℃の範囲とした。
第1の工程で得たチタン合金ビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、表2に示す鍛錬比になるまで鍛造した。第2の工程での加熱温度は、いずれの試料においても、β変態点温度-60℃~β変態点未満の範囲(α+β二相域の温度)だった。鍛造は、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、ビレット全体に対して鍛造を行った。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎にビレットを長軸回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回毎に変更させた。このようにして、第2工程において表2に示す鍛錬比になるまで、2回以上の鍛造を行った。
第2の工程後のビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造した。鍛造は、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、ビレット全体に対して鍛造を行った。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしなかった。その後、表2に示す鍛錬比になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返して、断面形状が円形または多角形であるビレットを得た。また、鍛造を1回行う毎にビレットを長軸回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回毎に変更させた。実施例のチタン合金ビレットの第3の工程での加熱温度は、いずれの試料においても、α+β二相域の温度だった。
まず、チタン合金棒材の長さ方向中心部より、長さ方向断面を観察面とする試験片を採取した。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料については表面からr/2の深さの位置とし、断面の辺長がdの矩形の試料についてはその辺長がなす表面からd/4の深さの位置とした。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定した。
試験片として、チタン合金棒材の長軸方向が長手方向となるように引張試験片と疲労試験片を採取した。
試験片形状:平行部φ5×30mm、ゲージ長さ25mm、ひずみ速度:8.3×10-5s-1。
疲労試験片形状:平行部φ5.08mm×15.24mm、ゲージ長さ12mm。
疲労試験方法:軸力、片振り、応力比0.05。最大応力=同材料(同方向)の0.2%耐力の95%。
通常疲労:三角波、負荷1s、除荷1s
Dwell疲労:台形波、負荷1s、保持120s、除荷1s
Claims (3)
- 化学成分が、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材、または、化学成分が、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Zr:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材であって、
α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、前記α+β型チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θ1が0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であるとともに、
前記(0001)面の法線方向と、前記長軸方向とのなす角度θ1が25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であり、かつ、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(10-10)面の法線方向のうちのひとつの方向と、前記長軸方向とのなす角度θ2が0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率が40%以上であることを特徴とする、α+β型チタン合金棒材。 - 鋳塊を熱間加工して得られたチタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に急冷する第1の工程と、
前記チタン合金ビレットをα+β二相域の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造した後に冷却する第2の工程と、
前記チタン合金ビレットを、α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造する処理を1回以上行い、少なくとも最後に300℃以下まで冷却する処理を行う第3の工程と、をこの順で行う際に、
前記第2の工程における前記鍛造は、前記チタン合金ビレットを送り量Liniで長軸方向に送りつつ金敷で圧下する加工であって、鍛造前の前記チタン合金ビレットの幅をWiniとしたときにLini/Winiが0.80以下を満たし、鍛造後の前記チタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、前記Winiと前記Wafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下する鍛造であり、この鍛造を少なくとも2回以上行い、また、前記チタン合金ビレットを長軸周りに回転させて前記チタン合金ビレットに対する圧下方向を各回毎に変更させることとし、
前記第2の工程における鍛錬比を1.5以上とし、前記第3の工程の鍛錬比を3.0以上とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。 - 前記第1の工程が、前記チタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に、加工してから急冷する工程である、請求項2に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
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