JP7307314B2 - α+β型チタン合金棒材及びその製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金棒材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、α+β型チタン合金棒材及びその製造方法に関する。
チタン合金は軽量高強度の材料として、航空機、自動車、ゴルフクラブ等の民生品などの分野で使用されている。チタン合金の中で汎用的に使われる合金は、主としてα相とβ相から構成され、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-5Al-1Fe合金などが知られている。
稠密六方晶構造からなるチタンのα相は、高い応力が加わると室温などの低温においてもクリープ変形しやすく、α相を含むチタン合金においても室温でクリープ変形を生じることが知られている。さらに、α相を含むチタン合金におけるクリープ変形しやすい特性は、台形波型の負荷サイクルに代表される高負荷状態が一定時間継続する疲労(Dwell疲労)において、寿命低下を招くことが知られている。(非特許文献1~3)
Dwell疲労では、高負荷状態が継続することがない三角波あるいは正弦波の負荷サイクルの場合と比較して、少ないサイクル数で破断に至るため、特に、航空機のジェットエンジン部品として使用される場合に問題になることがある。
特許文献1(特開2016-199796号公報)では、優れた疲労特性を有するチタン合金棒材およびその製造方法が開示されている。特許文献1では、初析α粒のうち、稠密六方構造のc軸方向とチタン合金棒材の長さ方向とのなす角度(c軸の傾き)が25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上である初析α粒の金属組織中の面積率が2.0%以下であることが述べられている。これは特許文献1の段落0020に記載の、「稠密六方晶の底面すべりは、結晶方位(図2においては符号「θ」で示す。)が45°に近いほど生じやすく、結晶方位が25°以上55°以下であると活発になる。また、金属組織に含まれる等軸状の初析α粒の大きさが大きいほど、試験片に付与される応力が集中しやすく、円相当直径が20μm以上であると応力の集中が顕著となる。したがって、c軸の傾きが25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上の初析α粒は、稠密六方晶の底面すべりが生じやすく、しかも応力が集中しやすいため、疲労寿命が短くなったと考えられる。」との技術思想に基づくものであり、通常の疲労破壊の機構として妥当なものである。
一方、非特許文献1~3に説明されているように、Dwell疲労では、異なる破壊機構が知られている。これらの文献によると、c軸の傾きが45°付近のα粒(S)と、c軸が応力方向に対し垂直に近い方位のα粒(H)が隣接する場合、H粒に応力が集中して応力軸に垂直なファセット状破面が生じるとされる。また、このファセットは稠密六方晶の底面とほぼ平行であることが、別の研究により知られている。
特許文献1には、Dwell疲労について何の言及もされていない。
特許文献2(特表2009-531546号公報)には、Dwell疲労に対する抵抗力を改善する技術が開示されている。ここでは、TA6Zr4DE(Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo)合金において、β変態点-20~-15℃の温度で4~8時間の熱処理を施すことで、破断寿命が5500回から10000回に向上した。しかし、熱処理以前の工程はβ域におけるスタンピングのみであり、それ以前の加工熱処理工程は不明確であり、充分に微細なミクロ組織を形成することができず、通常の疲労寿命に対するDwell疲労寿命の低下代を縮小する効果は不確実である。
特許文献3(特開2012-224935号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、疲労破壊の起点となるα相の粒径については言及されておらず、単に集積度を高めただけで疲労特性が改善されるものではない。
特許文献4(特開2014-65967号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、同特許文献は、疲労強度の向上を意図したものではなく、また、c軸の集積方法は、本発明の方向とは異なっている。
特開2016-199796号公報 特表2009-531546号公報 特開2012-224935号公報 特開2014-65967号公報
M.R.Bache, "A review of dwell sensitive fatigue in titanium alloys:the role of microstructure,texture and operating conditions",International Journal of Fatigue 25 (2003) 1079-1087 V.Sinha,M.J.Mills,J.C.Williams, "Determination of crystallographic orientation of dwell-fatigue fracture facets in Ti-6242 alloy",J Mater Sci (2007) 42:8334-8341 Adam L.Pilchak,"Progress in Understanding the Fatigue Behavior of Ti Alloys",Materials Science Forum Vol.710,pp85-92
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Dwell疲労特性の良好なα+β型チタン合金棒材及びその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決する手段は下記の通りである。なお、本発明において良好なDwell疲労特性とは、通常の正弦波あるいは三角波の疲労寿命に対するDwell疲労寿命の低下代が小さいことを意味する。
[1] 化学成分が、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材、または、化学成分が、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Zr:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材であって、
α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、前記α+β型チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であるとともに、
前記(0001)面の法線方向と、前記長軸方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であり、かつ、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(10-10)面の法線方向のうちのひとつの方向と、前記長軸方向とのなす角度θが0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率が40%以上であることを特徴とする、α+β型チタン合金棒材
鋳塊を熱間加工して得られたチタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に急冷する第1の工程と、
前記チタン合金ビレットをα+β二相域の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造した後に冷却する第2の工程と、
前記チタン合金ビレットを、α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造する処理を1回以上行い、少なくとも最後に300℃以下まで冷却する処理を行う第3の工程と、をこの順で行う際に、
前記第2の工程における前記鍛造は、前記チタン合金ビレットを送り量Liniで長軸方向に送りつつ金敷で圧下する加工であって、鍛造前の前記チタン合金ビレットの幅をWiniとしたときにLini/Winiが0.80以下を満たし、鍛造後の前記チタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、前記Winiと前記Wafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下する鍛造であり、この鍛造を少なくとも2回以上行い、また、前記チタン合金ビレットを長軸周りに回転させて前記チタン合金ビレットに対する圧下方向を各回毎に変更させることとし、
前記第2の工程における鍛錬比を1.5以上とし、前記第3の工程の鍛錬比を3.0以上とする、
ことを特徴とする[1]に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
] 前記第1の工程が、前記チタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に、加工してから急冷する工程である、[]に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
本発明によれば、Dwell疲労特性の良好なα+β型チタン合金棒材及びその製造方法を提供できる。
本実施形態のチタン合金棒材における結晶構造を説明する図であって、チタン合金棒材の長軸方向と、α結晶粒を構成する稠密六方晶の(0001)面の法線方向との方位差を説明する図。 本実施形態のチタン合金棒材の製造方法を説明する模式図であって、チタン合金ビレットと金敷との位置関係図を説明する図。
チタン合金の引張特性には、集合組織によって異方性があることが知られている。応力方向に(0001)面に垂直な方位が集積した場合は0.2%耐力や引張強度が高くなるが、応力方向に(10-10)面に垂直な方位が集積した場合は0.2%耐力や引張強度が低くなる。通常の三角波あるいは正弦波による疲労特性も同様である。例えば、疲労寿命を横軸に、最大応力(σMAX)を0.2%耐力(σ0.2)で規格化した”σMAX/σ0.2”を縦軸にとってグラフ化(規格化されたS-N線図)した場合、集合組織によらずほぼ同一の線上に表される。
なお、本明細書において、「(10-10)面」と表記する場合の「-1」は、「1」の上に線を引いたことを意味する。
しかし、Dwell疲労特性は、規格化されたS-N線図で表される挙動が異なっていることがわかった。すなわち、稠密六方晶の底面(以下、(0001)面という場合がある)の法線方向が応力軸に平行に集積した集合組織の場合、異なる方位に集積した集合組織と比較して寿命が大幅に低下する。
航空機エンジン部品の素材として使用されるチタン合金棒材の長軸方向においては、通常の疲労寿命に対するDwell疲労寿命の低下代が小さいことが好ましい。
Dwell疲労における通常疲労に対する寿命低下は以下の機構によるものと考えられる。Dwell疲労では、ひずみ蓄積によりき裂発生が促進され、また、稠密六方晶の底面((0001)面)にほぼ平行なファセット破面の形成によりき裂進展が促進されることから、寿命低下に至る。Dwell疲労寿命は、応力軸方向に対する特定の結晶方位を有する粗大なα相の面積率が大きいほどき裂発生が促進され、低下する。
そこで、特定の結晶方位を有する粗大なα粒が少なく、かつ、稠密六方晶の底面が負荷方向に対して垂直になる比率(面積率)が少ないことが、Dwell疲労寿命向上に有利である。
また、通常の疲労においてき裂発生の起点となりやすい特定方位を有する粗大なα結晶粒は、Dwell疲労においてもき裂発生の起点になりやすい。そのため、α結晶粒の(0001)面の法線方向と、応力軸方向とのなす角度が25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が小さいことが好ましい。
上記のようにα結晶粒の大きさや結晶方位を制御するには、チタン合金の熱間加工中の金属組織変化挙動を把握することが重要である。一般に、チタン合金の鍛造工程において、β単相域に加熱することで、それ以前に存在するα相の結晶方位の偏りを軽減してランダム化する工程が組み込まれる。しかし、その後にα+β域で加工することにより、新たにα相の集合組織が形成される。特に、β単相域から冷却した後の最初のα+β域での加工によって形成されるα相の集合組織を、その後のα+β域での加工によって消滅させることは困難である。そのため、β単相域から冷却した後の最初のα+β域での加工方法を制御することが必要である。
本発明では、α結晶粒の(0001)面の法線方向がチタン合金棒材の長軸方向に集積することを低減することを狙いとした。すなわち、α結晶粒の集合組織が形成されるβ水冷後のα+β鍛造で、ビレット軸方向への延伸を促進させる加工を行い、チタン合金棒材の長軸方向に(10-10)面法線方向が集積することを促進させた。これにより、航空機エンジン部品に使用される素材に適したチタン合金棒材になる。
以下、本実施形態のチタン合金棒材について説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、25℃においてα相を主相としβ相を第2相とする金属組織を有するものがよい。すなわち、AMS4928で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有してもよい。
また、本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、AMS4975で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Zr:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、Si:0.10質量%以下、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有していてもよい。
本実施形態のチタン合金棒材の形状は、円柱状の棒材でもよく、多角形状の棒材でもよい。チタン合金棒材の長軸方向に直交する断面は円の場合、真円であってもよいが、真円である必要はなく、おおよそ円形状であれば良い。多角形状の場合もおおよそ多角形であればよい。
一方で、鋳塊から棒材に製造されるまでの中間形態の形状については、長軸方向に直交する断面形状は円形状に限定されず、四角形や八角形の多角形や、角が丸い多角形であってもよい。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織について図1を参照しながら説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、長軸方向の断面において、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であることが好ましい。すなわち、チタン合金棒材の長軸方向に対して稠密六方結晶のc軸が0~25°の範囲で傾斜し、かつ、円相当直径が20μm超であるα結晶粒が、長軸方向の断面において5.0面積%の割合であることが好ましい。
Dwell疲労では、稠密六方晶の底面((0001)面)にほぼ平行なファセット破面が形成され、き裂発生および進展が促進され、寿命低下に至る。このため、稠密六方結晶のc軸の方向((0001)面の法線方向)が棒材の長軸方向に対して大きく傾斜していることが好ましい。本実施形態では、c軸の傾斜角度θが0~25°の範囲にあり、かつ円相当直径が20μm超のα結晶粒が5.0%以下であれば、ファセット破面が形成される確率やファセット破面のサイズが減少し、Dwell疲労を改善することができる。c軸の傾斜角度θが0~25°の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒が5.0%を超えると、Dwell疲労が大幅に悪化するので好ましくない。
また、通常の疲労破壊の起点になりうる粗大なα結晶粒が多く存在するとDwell疲労も悪化するので、本実施形態のチタン合金棒材では、稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、長軸方向とのなす角度θ1が25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であることが好ましい。これにより、Dwell疲労をより改善できる。
更に、本実施形態のチタン合金棒材は、長軸方向の断面において、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(10-10)面の法線方向と、長軸方向とのなす角度θが0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率が40%以上であることが好ましい。稠密六方結晶の(10-10)面は、図1に示すように、六角柱形状の単位結晶格子の側面に当たる面であり、この面の面方向と棒材の長軸とのなす角度θが0~30°の範囲にあるα結晶粒が、長軸方向の直交断面において40面積%以上あるとよい。40面積%未満になると、Dwell疲労が大幅に悪化するので好ましくない。
本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織は、EBSD(電子線後方散乱回折;Electron Backscatter Diffraction)を用いて測定することができる。
まず、チタン合金棒材の長さ方向中心部より、長さ方向断面を観察面とする試験片を採取する。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料については表面からr/2の深さの位置とし、断面の辺長がdの矩形の試料についてはその辺長がなす表面からd/4の深さの位置とする。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定する。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析する。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とする。
次に、隣り合うEBSD測定点の結晶方位の角度差(ミスオリエンテーション角)を5°以下としてα結晶粒を決定し、そのα結晶粒の測定点数から各α結晶粒の面積を求め、各α結晶粒の円相当直径を算出する。
また、各α結晶粒内のEBSD測定点におけるc軸方向の平均値を算出し、それを用いて各α結晶粒について、α結晶粒の(0001)面の法線方向及び(10-10)面の法線方向と、チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θ、θを算出する。
そして、α結晶粒のうち、角度θが0°~25°のα結晶粒の面積率と、角度θが0~30°のα結晶粒の面積率とをそれぞれ求める。また、円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率を求める。
あるいは、PartationでCrystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(10-10)面の法線方向と、チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θ2が0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求める。
また、Partation PropertiesでGrain Sizeを20μm超とした後、Crystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(0001)面の法線方向と、チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求める。
また、Partation PropertiesでGrain Sizeを20μm超とした後、Crystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(0001)面の法線方向と、チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求める。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法について説明する。
α相とβ相の2相域で加工を行うと、α相およびβ相それぞれの集合組織が形成される。その後の冷過程でβ相の一部がα相に変態するが、そのα相はβ相の結晶方位に依存した方位関係(Burgersの関係)を有する。特にβ相の面積率が50%程度を占める温度域においては、β相の集合組織の影響が冷却後も強く残存する。また、加工を加えた後のβ相からα相への変態では、生じうるα相の結晶方位のなかで特定の方位が高頻度で出現するバリアント選択を生じる。
本実施形態で狙いとする棒材の長軸方向への(0001)面方位の集積を抑制するためには、長軸方向への延伸を促進するように、加工することが望ましい。
本実施形態のチタン合金棒材は、所定の化学成分に調整された原料を溶解して鋳塊を得た後、得られた鋳塊をβ単相域に加熱し加工するβ鍛造と、α+β二相域に加熱して加工するα+β鍛造とを経て得られたチタン合金ビレットを、以下の工程に供することで得られる。
本実施形態のチタン合金棒材は、所定の化学成分を有する上記チタン合金ビレットを、β単相域の温度に加熱した後に急冷する第1の工程と、チタン合金ビレットをα+β二相域の温度に加熱し、鍛造した後に冷却する第2の工程と、チタン合金ビレットを、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、鍛造する第3の工程と、をこの順で行うことにより製造される。
以下、各工程について説明する。
第1の工程では、チタン合金ビレットを加熱炉内でβ単相温度域に加熱し、その後、急冷することで、金属組織の均質化させ、結晶粒の粗大化を抑制する。β単相温度領域の加熱は、加熱炉内の温度をβ変態点温度より30℃高い温度以上、β変態点温度より100℃高い温度以下(β変態点温度+30℃~β変態点温度+100℃の温度範囲)とすることが好ましい。加熱炉内の温度が、β変態点温度より30℃高い温度であると、加熱炉内に温度が不均一な部分があったり、チタン合金ビレットの大きさが大きいものであったりしても、鋳塊全体がβ変態点温度以上に加熱されるため好ましい。また、加熱炉内の温度が、β変態点温度より100℃高い温度以下であると、チタン合金ビレットの表層の酸化が抑制されるとともに、チタン合金ビレット中の金属組織の粗大化が抑制されるため、高品質のチタン合金棒材が得られる。
第1の工程では、β単相温度域に加熱後、チタン合金ビレットを加熱炉から取り出して速やかに冷却するか、加工を終えた後に急冷することが好ましい。急冷は充分な冷却速度を得るために、十分な量の水にチタン合金ビレットを浸漬することで行う水冷が一般的であるが、水冷相当以上の冷却速度が得られる他の手段を用いても良い。急冷はチタン合金ビレットの表面温度が300℃以下になるまで続けることが好ましい。
第1の工程では、β単相温度域に加熱して加熱炉から取り出した後に加工を行うことで、チタン合金ビレットに歪みを与えてもよい。歪みを与えることで再結晶を生じ、金属組織の結晶粒の粗大化が抑制される。
次に、第の2工程では、第1の工程後のチタン合金ビレットを、α+β二相域の温度に加熱し、鍛造した後に冷却する。第2の工程では、被加工材料であるチタン合金ビレットがα相およびβ相の状態で加工される。特に、β相が組織中に50%程度の割合で存在する温度域で加工することが好ましい。
第2の工程において、チタン合金ビレットを加熱する加熱炉内の温度は、β変態点温度より60℃低い温度以上、β変態点温度未満(β変態点温度-60℃~β変態点温度未満の温度範囲)とすることが好ましい。加工発熱による温度上昇を加味すると、加熱温度の上限はβ変態点温度より20℃低い温度未満(β変態点温度-20℃未満)であることが好ましい。
加熱炉内の温度が、β変態点温度より60℃低い温度以上であると、熱間加工を施す際のチタン合金ビレットの変形抵抗が大きくなりすぎることを防止でき、容易に効率よく熱間加工を行うことができる。また、加熱炉内の温度が、β変態点温度未満であると、チタン合金ビレットの金属組織中にα結晶粒が十分に析出するため、粒成長が抑制されるとともに、α+β二相温度域で熱間加工を施すことによる効果が十分に得られる。
チタン合金ビレットの表面温度は鍛造中に徐々に低下するため、表面性状が悪化したり表面割れが生じやすくなったりする場合には、第2の工程の終了前に、鍛造を一旦中断し、再度、チタン合金ビレットを加熱してから鍛造を行うことが好ましい。
第2の工程について、図2を参照して説明する。図2は、チタン合金ビレットと金敷とを示す図であり、図2(a)は圧下前の側面図であり、図2(b)は圧下前の平面図であり、図2(c)は圧下後の側面図であり、図2(d)は圧下後の平面図である。図2において、符号1が金敷であり、符号2がビレットである。
第2の工程では、ビレットの長軸方向とほぼ直交する方向から一対の金敷による圧下を加えて、ビレットを長軸方向に伸ばす鍛造、すなわち、鍛伸加工を行う。第2の工程によって、チタン合金中のα結晶粒の(0001)面方位が、棒材の長軸方向に集積することを抑制する。
具体的には、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行う。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、ビレット全体に対して鍛造を行う。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしない。これにより、ビレットの外周面の一部に対して圧下が行われる。この操作を、1回の鍛造という。
1回目の鍛造が終了したら、ビレットをその長軸を中心にして回転させる。これにより、ビレットの外周面のうち、1回目の被加工部位とは別の被加工部位を金敷に向けさせる。次いで、2回目の鍛造を行う。たとえば、矩形断面の場合には90°の異なる方向から圧下し、八角形断面の場合には45°毎の方向から圧下を加えるとよい。
2回目の鍛伸加工が終了したら、3回目、4回目の鍛造を順次行う。鍛造の回数の上限は第2の工程前後での鍛錬比で制限する。第2の工程前後での鍛錬比が1.5以上になるまで鍛造を繰り返す。
鍛造において、金敷で被加工部位を順次加工する際のチタン合金ビレットの送り量Liniは、鍛伸加工前のチタン合金ビレットの幅Winiとの関係で、Lini/Winiが0.80以下になるように制限する。ここで、鍛伸加工前のチタン合金ビレットの幅Winiとは、図2(b)に示すように、金敷の圧下方向からチタン合金ビレットを見た場合のチタン合金ビレットの最大投影幅である。チタン合金ビレットの送り量Liniは、金敷によって圧下を受ける被加工部位の長さに相当する。チタン合金ビレットの送り量Liniが大きくなると、金敷によって圧下を受ける被加工部位の長さが増し、これにより、金敷によって拘束を受ける領域が増大する。金敷による拘束領域が増大すると、ビレットの長軸方向への延びが抑制され、α結晶粒の方位を適切な方向に向けさせることができなくなる。このため、チタン合金ビレットの送り量Liniを、幅Winiとの関係でLini/Winiが0.80以下になるように制限する必要がある。
更に、鍛造では、1回毎に、鍛造後のチタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、WiniとWafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下することが好ましい。なお、鍛伸加工後のチタン合金ビレットの幅Wafterは、圧下終了時に一方の金敷と接触しているビレットの周長である。これらの条件はいずれも、ビレットを長軸方向に伸ばすための条件である。Hafter/Wafterは小さい方が好ましく、1.5以下の範囲がよいが、Hafter/Wafterを小さくし過ぎると、次回の鍛伸加工において加工前のHini/Winiが過大になってしまい、Hafter/Wafterを小さくすることができないので、Hafter/Wafterは0.67以上とする。また、ΔWが1.05以上1.15以下の範囲から外れると、ビレットを長軸方向ではなく幅方向に拡げるように加工してしまうので好ましくない。
圧縮方向に加工する鍛造では、ビレットと金敷との接触によってビレットの変形が拘束され、変形の仕方が影響を受ける。拘束が強い方向には伸びにくく、拘束が弱い方向には伸びやすい。そこで、Lini/Winiを0.80以下とすることで、長軸方向の延伸を促進し、ビレットを圧下方向から見た場合の幅方向への(0001)面方位の集積度を上昇させ、長軸方向への(0001)面方位の集積度を低下させる。同時に、(10-10)面方位の長軸方向への集積度を上昇させる。また、この集積度の向上に伴い、ビレットの長軸方向に平行な(0001)面方位を有するα結晶粒の面積率が低下し、長軸方向に平行な(10-10)面方位を有するα結晶粒の面積率が上昇する。
このような集積度あるいは面積率の変化を効率的に行うためには、第1の工程においてβ熱処理後に冷却することで結晶方位がランダム化されたチタン合金ビレットに対して、最初に行う加工を制御することが重要である。
つまり、β相の面積率が50%程度となる温度域において、Lini/Winiが0.80以下になるようにチタン合金ビレットの送り量を制限しつつ、鍛伸加工後のチタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、WiniとWafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下する鍛造を2回以上繰り返し、鍛錬比1.5以上となるまで行う。鍛錬比が1.5未満では、α結晶粒の集積度を向上させることができなくなる。
次に、第3の工程では、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、鍛錬比が3.0以上になるまで鍛造を行う。第3の工程では、第2の工程の加熱温度以下の温度で鍛造を行うことで、ビレットを圧下方向から見た場合の幅方向への(0001)面方位の集積度をより高めさせ、長軸方向への(0001)面方位の集積度を低下させ、同時に、(10-10)面方位の長軸方向への集積度を上昇させる。
第3の工程において、チタン合金ビレットを加熱する加熱炉内の温度は、β変態点温度より80℃低い温度以上、第2の工程の加熱温度以下とすることが好ましい。加工発熱による温度上昇を加味すると、加熱温度の上限はβ変態点温度より20℃低い温度未満(β変態点温度-20℃未満)であることが好ましい。
加熱炉内の温度が、β変態点温度より80℃低い温度以上であると、熱間加工を施す際のチタン合金ビレットの変形抵抗が大きくなりすぎることを防止でき、容易に効率よく熱間加工を行うことができる。また、加熱炉内の温度が、第2の工程の温度以上の温度になると、(0001)面方位及び(10-10)面方位の集積度が低下してしまうので好ましくない。
第3の工程においても、チタン合金ビレットの温度が鍛造中に徐々に低下するため、表面性状が悪化したり表面割れが生じやすくなったりする場合には、第3の工程の終了前に、鍛造を一旦中断し、再度、チタン合金ビレットを加熱してから鍛造することが好ましい。
第3の工程では、第2の工程の鍛造の場合と同様に、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行う。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、ビレット全体に対して鍛造を行う。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしない。これにより、ビレットの外周面の一部に対して圧下が行われる。この操作を、1回の鍛造という。
1回目の鍛造が終了したら、ビレットをその長軸を中心にして回転させる。これにより、ビレットの外周面のうち、1回目の被加工部位とは別の被加工部位を金敷に向けさせる。次いで、2回目の鍛伸加工を行う。たとえば、矩形断面の場合には90°の異なる方向から圧下し、八角形断面の場合には45°毎の方向から圧下を加えるとよい。
第3の工程では、第2の工程前後での鍛錬比が3.0以上になるまで鍛造を繰り返す。鍛錬比が3.0未満では、α結晶粒の大きさを微細化することができなくなり、疲労寿命が悪化する。
鍛造が終了したら、第3の工程の最後に、チタン合金ビレットを300℃以下まで冷却する。300℃以下まで冷却することにより、切断加工、品質検査、疵の手入れ等の精整作業を行うことができる。
以上説明したように、本実施形態のチタン合金棒材によれば、(0001)面の法線方向と長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲の円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であり、(0001)面の法線方向と長軸方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であり、(10-10)面の法線方向と長軸方向とのなす角度θが0°以上30°以下の範囲のα結晶粒の面積率が40%以上であるので、Dwell疲労特性を向上させることができる。
また、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法によれば、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を順次行うことで、Dwell疲労特性に優れたチタン合金棒材を製造できる。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、航空機エンジンのタービンブレードの素材として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のチタン合金棒材に対して更に加工を施してタービンブレードとすることで、Dwell疲労特性に優れたタービンブレードとすることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
以下に示す方法によりチタン合金棒材を製造し、評価した。
(事前工程)
溶解して得られた、表1に示す組成を有する直径約750mmの円柱状の鋳塊を、β変態温度以上の1020℃以上1200℃以下に加熱した加熱炉内でβ単相温度域に加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造するβ鍛造と、β変態温度以下の900℃以上980℃以下のα+βの二相域に加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造するα+β鍛造を、それぞれ1回または複数回繰り返して、長手方向に直交する断面形状が表1に示す断面形状の棒状のビレットを得た。前記棒状のビレットを中間ビレット(チタン合金ビレット)とした。表1に示すチタン合金ビレットのβ変態点温度は990℃~1010℃の範囲であった。
なお、表1の中間ビレットの形状の欄において、例えば「ψ360」は、断面形状が直径360mmの円形状であることを意味し、「400*400」は断面形状が一辺長さ400mmの四角形であることを意味し、「600*300」は断面形状が縦600mm、横300mmの四角形であることを意味する。
(第1の工程)
事前工程で得た中間ビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して、表2に示す条件のように、鍛造(加工)後に水冷、あるいは、鍛造(加工)を行わないで水冷した。水冷は、十分な量の水を入れた水槽に浸漬することで行った。また、水冷は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで行った。第1の工程の加熱温度は、β変態点+30℃~β変態点+100℃の範囲とした。
(第2の工程)
第1の工程で得たチタン合金ビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、表2に示す鍛錬比になるまで鍛造した。第2の工程での加熱温度は、いずれの試料においても、β変態点温度-60℃~β変態点未満の範囲(α+β二相域の温度)だった。鍛造は、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、ビレット全体に対して鍛造を行った。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎にビレットを長軸回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回毎に変更させた。このようにして、第2工程において表2に示す鍛錬比になるまで、2回以上の鍛造を行った。
第2工程の後は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(第3の工程)
第2の工程後のビレットを、表2に示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造した。鍛造は、ビレットの外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、ビレットを長軸方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、ビレットの長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、ビレット全体に対して鍛造を行った。この間、ビレットは長軸方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長軸中心に回転させることはしなかった。その後、表2に示す鍛錬比になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返して、断面形状が円形または多角形であるビレットを得た。また、鍛造を1回行う毎にビレットを長軸回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回毎に変更させた。実施例のチタン合金ビレットの第3の工程での加熱温度は、いずれの試料においても、α+β二相域の温度だった。
第3工程の後は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
得られたチタン合金棒材について、結晶組織の測定を行った。
まず、チタン合金棒材の長さ方向中心部より、長さ方向断面を観察面とする試験片を採取した。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料については表面からr/2の深さの位置とし、断面の辺長がdの矩形の試料についてはその辺長がなす表面からd/4の深さの位置とした。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定した。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析した。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とした。隣り合うEBSD測定点の方位(c軸方向)の角度差(ミスオリエンテーション角)を5°以下としてα結晶粒を決定した。
次に、PartationのGrain PropertiesでGrain Sizeを20μm超とした後、Crystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(0001)面の法線方向と、チタン合金棒材の径方向および周方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求めた。
また、PartationのGrain PropertiesでGrain Sizeを20μm超とした後、Crystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(0001)面の法線方向と、チタン合金棒材の径方向および周方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求めた。
また、PartationのGrain PropertiesでGrain Sizeを20μm超とした後、Crystal Direction Mapを作成し、α結晶粒の(10-10)面の法線方向と、チタン合金棒材の径方向および周方向とのなす角θ度が0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率(Total Fraction)を求めた。
また、得られたチタン合金棒材のDwell疲労特性を測定した。
試験片として、チタン合金棒材の長軸方向が長手方向となるように引張試験片と疲労試験片を採取した。
引張試験の測定条件は以下の通りとした。
試験片形状:平行部φ5×30mm、ゲージ長さ25mm、ひずみ速度:8.3×10-5-1
疲労試験の測定条件は以下の通りとした。
疲労試験片形状:平行部φ5.08mm×15.24mm、ゲージ長さ12mm。
疲労試験方法:軸力、片振り、応力比0.05。最大応力=同材料(同方向)の0.2%耐力の95%。
通常疲労:三角波、負荷1s、除荷1s
Dwell疲労:台形波、負荷1s、保持120s、除荷1s
表3に、α結晶粒の(0001)面の法線方向と棒材の長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率、α結晶粒の(0001)面の法線方向と棒材の長軸方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率、α結晶粒の(10-10)面の法線方向と棒材の長軸方向とのなす角度θが0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率、チタン合金棒材のDwell疲労寿命比=(通常疲労の破断寿命)/(Dwell疲労の破断寿命)を示す。本発明の範囲にある実施例では、通常疲労の破断寿命は16000回以上であり、Dwell疲労の破断寿命は8000回以上であった。
表3に示すように、本発明の範囲にある実施例は、(通常疲労の破断寿命)/(Dwell疲労の破断寿命)の値が2以下と小さく、通常の疲労特性に対するDwell疲労特性の低下代が小さくなっていることが分かる。一方、本発明の範囲外である比較例では、通常の疲労特性に対するDwell疲労特性の低下代が大きくなっていることが分かる。
Figure 0007307314000001
Figure 0007307314000002
Figure 0007307314000003
1…金敷、2…ビレット。

Claims (3)

  1. 化学成分が、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材、または、化学成分が、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Zr:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなるα+β型チタン合金棒材であって、
    α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(0001)面の法線方向と、前記α+β型チタン合金棒材の長軸方向とのなす角度θが0°以上25°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が5.0%以下であるとともに、
    前記(0001)面の法線方向と、前記長軸方向とのなす角度θが25°以上55°以下の範囲にある円相当直径が20μm超のα結晶粒の面積率が2.0%以下であり、かつ、α結晶粒を構成する稠密六方結晶の(10-10)面の法線方向のうちのひとつの方向と、前記長軸方向とのなす角度θが0°以上30°以下の範囲にあるα結晶粒の面積率が40%以上であることを特徴とする、α+β型チタン合金棒材。
  2. 鋳塊を熱間加工して得られたチタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に急冷する第1の工程と、
    前記チタン合金ビレットをα+β二相域の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造した後に冷却する第2の工程と、
    前記チタン合金ビレットを、α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、前記チタン合金ビレットを鍛造する処理を1回以上行い、少なくとも最後に300℃以下まで冷却する処理を行う第3の工程と、をこの順で行う際に、
    前記第2の工程における前記鍛造は、前記チタン合金ビレットを送り量Liniで長軸方向に送りつつ金敷で圧下する加工であって、鍛造前の前記チタン合金ビレットの幅をWiniとしたときにLini/Winiが0.80以下を満たし、鍛造後の前記チタン合金ビレットの高さHafterと幅Wafterとの比Hafter/Wafterが0.67以上1.5以下となるように、かつ、前記Winiと前記Wafterとの比ΔW(ΔW=Wafter/Wini)が1.05以上1.15以下になるように圧下する鍛造であり、この鍛造を少なくとも2回以上行い、また、前記チタン合金ビレットを長軸周りに回転させて前記チタン合金ビレットに対する圧下方向を各回毎に変更させることとし、
    前記第2の工程における鍛錬比を1.5以上とし、前記第3の工程の鍛錬比を3.0以上とする、
    ことを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
  3. 前記第1の工程が、前記チタン合金ビレットをβ単相域の温度に加熱した後に、加工してから急冷する工程である、請求項に記載のα+β型チタン合金棒材の製造方法。
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