JP7485919B2 - チタン合金棒材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン合金棒材及びその製造方法に関する。
チタン合金は、軽量高強度の材料として、航空機、自動車、ゴルフクラブ等の民生品などの分野で使用されている。チタン合金の中で汎用的に使われる合金は、主としてα相とβ相から構成される、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-5Al-1Fe合金などが知られている。
特に航空機エンジン分野では、最近になって、台形波型の負荷サイクルに代表される、降伏応力に近い応力が作用する高負荷状態が一定時間継続する疲労(Dwell疲労)が必要とされ、疲労特性の向上が課題が問題となっている。
Dwell疲労では、高負荷状態が継続することがない三角波あるいは正弦波の負荷サイクルの場合と比較して、少ないサイクル数で破断に至るため、特に、飛行毎の点検を行い、高い信頼性が必要とされる航空機のジェットエンジン部品で使用される場合に課題になる。また、一般的な自動車などにおいても、最近の環境問題にも対応するエンジンの燃焼効率向上を主たる一因として、燃焼圧は高まる傾向にある。
非特許文献1~3のように、Dwell疲労では、三角波あるいは正弦波の負荷サイクルの場合と異なる破壊機構が知られている。これらの文献によると、c軸の傾きが45°付近のα粒(S)と、c軸が応力方向に対し垂直に近い方位のα粒(H)が隣接する場合、H粒に応力が集中して応力軸に垂直なファセット状破面が生じ、早期に疲労破壊の起点が形成される。また、このファセットは稠密六方晶の底面とほぼ平行である。
特許文献1(特開2016-199796号公報)では、優れた疲労特性を有するチタン合金棒材およびその製造方法が開示されている。特許文献1では、初析α粒のうち、稠密六方構造のc軸方向とチタン合金棒材の長さ方向とのなす角度(c軸の傾き)が25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上である初析α粒の金属組織中の面積率が2.0%以下であることが述べられている。これは特許文献1の段落0020に記載の、「稠密六方晶の底面すべりは、結晶方位(図2においては符号「θ」で示す。)が45°に近いほど生じやすく、結晶方位が25°以上55°以下であると活発になる。また、金属組織に含まれる等軸状の初析α粒の大きさが大きいほど、試験片に付与される応力が集中しやすく、円相当直径が20μm以上であると応力の集中が顕著となる。したがって、c軸の傾きが25°以上55°以下で、かつ円相当直径が20μm以上の初析α粒は、稠密六方晶の底面すべりが生じやすく、しかも応力が集中しやすいため、疲労寿命が短くなったと考えられる。」との技術思想に基づくものであり、通常の疲労破壊の機構として妥当なものである。
一方、非特許文献1~3に説明されているように、Dwell疲労では、異なる破壊機構が知られている。これらの文献によると、応力方向に対するc軸の傾きが45°付近のα粒(S)と、傾きが0°付近のα粒(H)が隣接する場合、H粒に応力が集中して応力軸に垂直なファセット状破面が生じるとされる。また、このファセットは稠密六方晶の底面とほぼ平行であることが、別の研究により知られている。
特許文献1には、Dwell疲労について何の言及もされていない。
特許文献2(特表2009-531546号公報)には、Dwell疲労に対する抵抗力を改善する技術が開示されている。ここでは、TA6Zr4DE(Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo)合金において、β変態点-20~-15℃の温度で4~8時間の熱処理を施すことで、破断寿命が5500回から10000回に向上した。しかし、熱処理以前の工程はβ域におけるスタンピングのみであり、それ以前の加工熱処理工程は不明確であり、充分に微細なミクロ組織を形成することができず、Dwell疲労寿命の異方性に関する効果は不確実である。
特許文献3(特開2012-224935号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、疲労破壊の起点となるα相の粒径については言及されておらず、単に集積度を高めただけで疲労特性が改善されるものではない。
特許文献4(特開2014-65967号公報)には、α相のc軸の特定方向に対する集積度が規定されたチタン合金ビレットが開示されている。しかし、同特許文献は、疲労強度の向上を意図したものではないためその効果は得られず、また、c軸の集積方向は、本発明の形態とは異なっている。
また、Dwell疲労は、航空機エンジンの圧縮機の部品としてのコンプレッサーディスクとして用いられる際に、特に問題になるとされている。コンプレッサーディスクは基本的に円盤状であり、円柱状の素材を円柱軸方向に圧縮することで製造される。円柱状の素材を円柱軸方向に圧縮する過程で生じるα相のc軸の集積方向の変化に関する詳細な知見は少ない。更に、従来知見において、円柱軸方向に対して垂直な面内におけるDwell疲労特性の異方性に関して検討した公開技術は知られていない。
特開2016-199796号公報 特表2009-531546号公報 特開2012-224935号公報 特開2014-65967号公報
M.R.Bache,"A review of dwell sensitive fatigue in titanium alloys:the role of microstructure,texture and operating conditions",International Journal of Fatigue 25 (2003) 1079-1087 V.Sinha,M.J.Mills,J.C.Williams,"Determination of crystallographic orientation of dwell-fatigue fracture facets in Ti-6242 alloy",J Mater Sci (2007) 42:8334-8341 Adam L.Pilchak,"Progress in Understanding the Fatigue Behavior of Ti Alloys",Materials Science Forum Vol.710,pp85-92
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Dwell疲労特性が良好であり、かつ、Dwell疲労特性の異方性が小さいチタン合金棒材及びその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。なお、本発明において良好なDwell疲労特性とは、通常の正弦波あるいは三角波の疲労寿命に対するDwell疲労寿命の低下代が小さいことを意味する。また、本発明においてDwell疲労特性の異方性が小さいとは、棒材の長手方向と、長手方向に垂直な面内で直径方向に垂直な方向すなわち周方向、の2方向に応力を負荷した際のDwell疲労寿命の差が小さいことを意味する。更に、ここで言うDwell疲労の対象となる降伏応力に近い応力が作用する高負荷とは、(使用温度での)降伏応力の50%以上を意味する。また、その状態の継続とは、前記の高負荷が3s以上継続して作用するものを意味するものとする。
[1] α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
化学成分が、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、前記マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm超1000μm以下である、チタン合金棒材。
[2] α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
化学成分が、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Z r:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、
マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm超1000μm以下である、チタン合金棒材。
] 前記マイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0未満である、[1]または[2]に記載のチタン合金棒材。
] 前記マイクロテクスチャの、チタン合金棒材の長手方向に平行な断面における面積率が20%以下である、[1]乃至[3]の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
] チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、前記α粒の面積率が30%以上であり、かつ前記α粒の平均円相当直径が20μm以上100μm以下である、[1]乃至[]の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
]更に、直径が100mm以上である[1]乃至[5]の何れか一項に記載のチタン合金棒材
] チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛造を行った後に冷却する第1の工程と、
α+β二相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第2の工程と、
α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向から1×10-1-1以下のひずみ速度にて1回で鍛造する第3の工程と、
α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向から圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第4の工程と、
をこの順で行い、
前記第1の工程及び前記第2の工程における鍛造による総断面減少率を50%以上とし、前記第3の工程における鍛造による圧下率を30%以上とし、前記第4の工程における鍛造による断面減少率を50%以上とし、
前記第2の工程における断面減少率をX2、前記第3の工程における圧下率をX3とした場合に、前記第3の工程における圧下率X3が(1)式を満足する、[1]乃至[]のいずれか一項に記載のチタン合金棒材の製造方法。
(1)式:0.6X2≦X3≦0.8X2
] 前記第1の工程と前記第2の工程の間に、前記チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を有する、[]に記載のチタン合金棒材の製造方法。
本発明によれば、Dwell疲労特性が良好であり、かつ、Dwell疲労特性の異方性が小さいチタン合金棒材及びその製造方法を提供できる。更に言えば、等方的に加工され、同一面内に強い応力が付与され、高負荷状態が継続する部品、一例として、航空機ジェットエンジン部品であるコンプレッサーディスクに最適なチタン合金棒材得ることができ、また、そのようなチタン合金棒材を工業的に安定生産することができる。
Dwell疲労特性が良好であり、かつ、Dwell疲労特性の異方性が小さいα+β型チタン合金棒材を得るため、発明者らは多数の実験に基づき鋭意検討を行った。
Dwell疲労における寿命低下機構を調査したところ、同一の結晶方位を有する“複数の”α粒で構成される局所的な集合組織(マイクロテクスチャ)のサイズの増加に伴いファセット領域の寸法が大きくなり、き裂進展が促進され、Dwell疲労寿命が“大幅”に低下することを見出した。このようなマイクロテクスチャは、隣接するα粒のc軸間の方位差が20°以内である複数のα粒により形成される。アスペクト比が大きいマイクロテクスチャが存在すると、応力やひずみが短辺方向に作用する場合に実質的に粗大なα粒として作用し、き裂発生が著しく早期化されるために、Dwell疲労寿命は著しく低下する。Dwell疲労寿命の異方性を小さくするためには、マイクロテクスチャの最大円相当径を所定の範囲とすることが有効である。
そこで、Dwell疲労特性に優れるα+β型チタン合金棒材と、そのための手段となるマイクロテクスチャの最大円相当径を調整する製造方法について、詳細に鋭意検討した。
α+β型チタン合金は、低温ではhcp構造のα相、高温ではbcc構造のβ相を主体とする。α相からβ相へ相変態する温度をβ変態点(Tβ)という。α相は高温でも高い強度を維持し、β相は加工性に優れる。
α+β型チタン合金の鍛造には、Tβ未満の温度域(α+β域)に加熱して、この温度域で鍛造を行うα+β鍛造と、Tβ以上の温度域(β単相域)に加熱して鍛造を行うβ鍛造とがある。それぞれの鍛造で形成されるミクロ組織は全く異なり、ミクロ組織の違いにより、機械特性が異なることが知られている。α+β鍛造では、等軸状または粒状のα相組織となる。一方で、β鍛造では、板状または針状のα相組織となり、加工終了温度に依存してβ粒の結晶粒界に沿って析出した針状α相の形態や厚さ、また粒内に析出した針状α相の長さや厚さが変化する。一般的に、疲労特性はα+β鍛造された鍛造材の方が、β鍛造された鍛造材よりも優れることが知られている。
マイクロテクスチャの最大円相当径、アスペクト比および存在割合や、α結晶粒の結晶方位を制御するには、チタン合金の熱間加工中の金属組織変化挙動を把握することが重要である。一般に、チタン合金の鍛造工程において、β単相域に加熱することで、それ以前に存在するα相の結晶方位の偏りを軽減してランダム化する工程が組み込まれる。しかし、その後にα+β鍛造を行うことにより、新たにα相のマイクロテクスチャが形成される。このようなマイクロテクスチャは、同一方向に変形を受けたコロニー組織で形成され、長手方向に伸長した形状となる。このようなマイクロテクスチャを分断し、細粒化するためには、棒材の長手方向と長手方向に対して垂直方向への加工方法をそれぞれ制御することが重要であることを見出した。
なお、チタン合金の分野では、隣り合うα相との結晶方位差が15°未満である、粒状α相の集合体をコロニーと称する場合がある。コロニーと本実施形態に係るマイクロテクスチャとは、次の点で異なる。すなわち、α相は六方最密充填構造をなしており、六方最密充填構造の結晶軸は3つ存在する。隣り合うα相同士の間で、六方最密充填構造の3つの結晶軸の方位差が全て15°未満である場合にはそのような粒状α相の集合体をコロニーと表現し、c軸のみ結晶方位差が20°未満である場合にはマイクロテクスチャと表現する。本実施形態に係るマイクロテクスチャの方位やサイズは、Dwell疲労特性に密接に関係する。
以下、本発明の実施形態であるチタン合金棒材について説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、25℃においてα相を主相としβ相を第2相とする金属組織を有するものがよい。すなわち、AMS4928で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有してもよい。
また、本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、AMS4975で規定される成分で形成されていてもよい。つまり、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Zr:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物であってもよい。不純物としては、例えば、Si:0.10質量%以下、N:0.08質量%以下、C:0.08質量%以下、H:0.015質量%以下を含有していてもよい。
本実施形態のチタン合金棒材の形状は、円柱状の棒材でもよく、多角形状の棒材でもよい。チタン合金棒材の長手方向に直交する断面は円の場合、真円であってもよいが、真円である必要はなく、おおよそ円形状であれば良い。多角形状の場合もおおよそ多角形であればよい。
一方で、鋳塊から棒材に製造されるまでの中間形態の形状については、長手方向に直交する断面形状は円形状に限定されず、四角形や八角形の多角形や、角が丸い多角形であってもよい。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織について説明する。本発明者らは、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体であるマイクロテクスチャが金属組織中に存在した場合、マイクロテクスチャが粗大な結晶粒と同様に振る舞い、その結果、負荷が加わった場合にき裂発生の起点になるおそれがあることを見出した。本発明の最大の成果は、疲労破壊の起点として振舞うα粒のc軸の方位差のしきい値が20°であることを明らかにした点にある。当然ながら、方位差は、好ましくは、19°、より好ましくは18°とも考えられる。しかし、20°がしきい値と推定され、20°までの変化率に比べた場合、実績値に大きな違いは認められない。
そして、本実施形態のチタン合金棒材では、マイクロテクスチャを微細化し、最大円相当径を所定の範囲とすることが、Dwell疲労の改善およびDwell疲労の異方性の改善に有効であることを見出した。更に加えて、本実施形態のチタン合金棒材では、マイクロテクスチャの最大アスペクト比を小さくすることが、Dwell疲労の改善およびDwell疲労の異方性の改善に有効であることも見出した。
本実施形態のチタン合金棒材では、隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、マイクロテクスチャの最大円相当径を1000μm以下とする。また、チタン合金棒材の長手方向に平行な断面におけるマイクロテクスチャの面積率を20%以下とし、マイクロテクスチャの最大アスペクト比を3.0未満とすることが好ましい。
Dwell疲労では、マイクロテクスチャの大きさに相当するファセット破面が同時多発的に形成され、き裂発生および進展が促進され、寿命低下に至る。このため、マイクロテクスチャの面積率は小さいことが好ましい。本実施形態では、隣接するα粒のc軸間の方位差が20°以下のα粒の集合体であるマイクロテクスチャの面積率を20%以下とすることで、疲労起点となる特定方位のマイクロテクスチャの存在割合が小さくなり、つまりは、ファセット破面が形成される頻度が減少し、Dwell疲労を改善することができる。また、マイクロテクスチャの面積率が小さくなることで、通常の疲労特性も向上できるようになる。より好ましくは、15%以下、更に好ましくは、10%以下である。
さらに、隣接するα粒のc軸間の方位差が20°以下のα粒の集合体であるマイクロテクスチャの最大円相当径が1000μm以下であれば、ファセット破面が形成されるサイズが減少し、Dwell疲労を改善することができる。マイクロテクスチャの最大円相当径はより好ましくは900μm以下、更に好ましくは860μm以下がよい。これにより、Dwell疲労による寿命低下を軽微とすることができる。マイクロテクスチャの最大円相当径の下限は、例えば100μm超としてもよい。
また、Dwell疲労寿命は、応力方向に対するマイクロテクスチャの大きさに応じて変化する。本実施形態では、隣接するα粒のc軸間の方位差が20°以下のα粒の集合体であるマイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0未満であれば、Dwell疲労特性の異方性を小さくすることができる。言い換えると、応力の作用する方向によらず、優れた疲労特性を示す。より好ましくは、2.9以下、更に好ましく、2.8以下である。
更に、本実施形態のチタン合金棒材は、その長手方向に平行な断面において、α粒の面積率が30%以上であり、かつα粒の平均円相当直径が20μm以上100μm以下であることが好ましい。通常の疲労においてき裂発生の起点となりやすい比較的大きなα粒は、Dwell疲労においてもき裂発生の起点になりやすい。そのため、α粒の平均円相当直径は100μm以下であることが好ましい。より好ましくは、95μm以下、更に好ましくは、90μm以下である。なお、円相当径が小さいα粒は、Dwell疲労への影響が少ないため、本実施形態では考慮しなくてよい。そのため、α粒の平均円相当直径の下限を20μm以上とする。また、α粒の面積率を30%以上とすることで、本実施形態のチタン合金棒材を航空機のエンジン部品に適用した場合に、必要とされる強度を確保することが可能になる。より好ましくは、40%以上、さら好ましくは、50%以上であると考える。
更に、本実施形態のチタン合金棒材は、直径が100mm以上であることが好ましい。直径を100mm以上にすることで、断面減少率を好ましい範囲に調整でき、マイクロテクスチャの最大アスペクト比を3.0以下にすることができるようになる。また、航空機ジェットエンジン部品のような大型部品に加工するためには、100mm超の素材が必要であるためである。より好ましくは、120mm以上、更に好ましくは、150mm以上である。
本実施形態のチタン合金棒材の結晶組織は、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属するEBSD装置(電子線後方散乱回折;Electron Backscatter Diffraction)を用いて測定することができる。
まず、チタン合金棒材の長手方向中心部より、長手方向断面を観察面とする試験片を採取する。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料について、表面からr/2の深さの位置とし、断面の辺長がdの矩形の試料についてはその辺長がなす表面からd/4の深さの位置とする。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定する。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析する。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とする。
次に、隣り合うEBSD測定点の結晶方位の角度差(ミスオリエンテーション角)を15°以下としてα結晶粒を決定し、そのα結晶粒の測定点数から各α結晶粒の面積を求め、各α結晶粒の円相当直径を算出し、平均円相当径を求める。平均円相当径は測定視野内のα結晶粒の円相当径から求める。
また、得られた測定結果(オイラー角ph1,PH,ph2)から、隣り合うEBSD測定点のc軸方位差を求め、c軸方位差が20°以下としてマイクロテクスチャを決定し、マイクロテクスチャの面積率(Total Fraction)、最大アスペクト比および最大円相当径を求める。なお、マイクロテクスチャは長手方向に最大長さとなるため、アスペクト比は長手方向の長さをその垂直方向の長さで除して求める。
次に、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法について説明する。
本実施形態のチタン合金棒材は、所定の化学成分を有する上記チタン合金鋳塊を、β単相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛造を行った後に冷却する第1の工程と、α+β二相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第2の工程と、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向から1×10-1-1以下のひずみ速度にて1回で鍛造する第3の工程と、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向から圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第4の工程と、をこの順で行う。その際、第1の工程及び第2の工程における鍛造による総断面減少率を50%以上とし、第3の工程における鍛造による圧下率を30%以上とし、前記第4の工程における鍛造による断面減少率を50%以上とする。更に、第2の工程における断面減少率をX2、第3の工程における圧下率をX3とした場合に、第3の工程における圧下率X3が(1)式を満足させる。
(1)式:0.6X2≦X3≦0.8X2
また、第1の工程と第2の工程の間に、チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を行ってもよい。
第1の工程では、マイクロテクスチャを細粒化させる目的で、β粒を細粒化させるために、β単相域において所定の条件で鍛造する。また、第2の工程では、α+β二相域の温度において所定の条件で鍛造することにより、長手方向に伸長したマイクロテクスチャを形成するとともに、起点方位を低減する。第3の工程では、長手方向から1回で鍛造することで、マイクロテクスチャにせん断帯を導入し、一部のマイクロテクスチャを分断させる。そして、第4の工程では、マイクロテクスチャの分断、細粒化を進める。
以下、各工程について詳細に説明する。
(第1の工程)
第1の工程では、鍛造素材としてα+β型の化学成分を有するチタン合金鋳塊を用いる。チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、鍛造した後に冷却することで、鋳造組織を細粒化し、さらに結晶粒の粗大化を抑制する。β単相域の加熱は、加熱炉内の温度をβ変態点温度(Tβ)℃に対して、(Tβ)℃以上とすることが好ましく、(Tβ+50)℃以上、(Tβ+200)℃以下とすることがより好ましい。加熱炉内の温度が(Tβ+50)℃以上であると、加熱炉内に温度が不均一な部分があったり、チタン合金鋳塊が大きいものであったりしても、鋳塊全体が(Tβ)℃以上に加熱されるため好ましい。また、加熱炉内の温度が(Tβ+200)℃以下であると、チタン合金鋳塊の表層の酸化が抑制されるとともに、チタン合金鋳塊中の金属組織の粗大化が抑制されるため、高品質のチタン合金棒材が得られる。鋳造組織を細粒化し、さらに結晶粒の粗大化を抑制するため、第1の工程における総断面減少率を25%以上(鍛錬比1.5)とすることが好ましい。
また、第1の工程では、加工を終えた後に急冷することが好ましい。急冷は充分な冷却速度を得るために、十分な量の水に鍛造素材を浸漬することで行う水冷が一般的であるが、水冷相当以上の冷却速度が得られる他の手段を用いてもよい。急冷は鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けることが好ましい。第1の工程によって、β粒が細粒化される。
(第2の工程)
次に、第2の工程では、第1の工程を終えたチタン合金鋳塊をα+β二相域の温度に加熱し、鍛造した後に300℃以下まで冷却する。加熱は、加熱炉内の温度をβ変態点温度(Tβ)℃に対して、(Tβ-70)℃以上、(Tβ)℃未満とすることが好ましい。加熱温度が(Tβ-70)℃以上であると、熱間加工を施す際の鍛造素材の変形抵抗が大きくなりすぎることを防止でき、容易に効率よく熱間加工を行うことができる。また、加熱炉内の温度が(Tβ)℃未満であると、鍛造素材の金属組織中にα結晶粒が十分に析出するため、粒成長が抑制されるとともに、α+β二相温度域で熱間加工を施すことによる効果が十分に得られる。
鍛造素材であるチタン合金鋳塊の表面温度は鍛造中に徐々に低下する。表面温度の低下により表面性状が悪化したり表面割れが生じやすくなったりする場合には、第2の工程の終了前に、鍛造を一旦中断し、再度、鍛造素材を加熱してから鍛造を行うことが好ましい。
第2の工程では、鍛造素材の長手方向とほぼ直交する方向から一対の金敷による圧下を加えて、鍛造素材を長手方向に伸ばす鍛造、すなわち、鍛伸加工を行う。鍛造加工時にチタン合金素材を長手方向に変形させることで、チタン合金鋳塊を長手方向に大きく伸長させ、長手方向に対して垂直方向に等方なマイクロテクスチャを形成させる。
具体的には、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行う。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行う。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしない。これにより、鍛造素材の外周面の一部に対して圧下が行われる。この操作を、1回の鍛造という。
1回目の鍛造が終了したら、鍛造素材をその長手を中心にして回転させる。これにより、鍛造素材の外周面のうち、1回目の被加工部位とは別の被加工部位を金敷に向けさせる。次いで、2回目の鍛造を行う。たとえば、矩形断面の場合には90°の異なる方向から圧下し、八角形断面の場合には45°毎の方向から圧下を加えるとよい。
2回目の鍛伸加工が終了したら、3回目、4回目の鍛造を順次行う。鍛造の回数の上限は第2の工程前後での総断面減少率(鍛錬比)で制限する。チタン合金鋳塊に対する第2の工程前後での断面減少率が25%以上になるまで鍛造を繰り返す。総断面減少率を25%以上とすることで、長手方向に対して垂直方向に等方なマイクロテクスチャを形成できる。第2の工程における総断面減少率は、80%未満とすることが好ましい。第2の工程における総断面減少率が80%未満にすることで、長手方向に対して垂直方向に等方なマイクロテクスチャを形成できる。
第2の工程において、α+β二相域の温度において所定の条件で鍛造することにより、一部の旧β粒内においてα粒が析出し、更に複数の旧β粒に含まれるα粒の集合体であるマイクロテクスチャが形成される。形成されたマイクロテクスチャは、長手方向に対して垂直方向に等方なものとなる。
第1の工程及び第2の工程における鍛造による総断面減少率は、50%以上とすることが好ましい。第1の工程及び第2の工程における鍛造による総断面減少率が50%以上であれば、第1の工程または第2の工程における断面減少率のいずれか一方を25%以下にしてもよい。
(第3の工程)
次に、第3の工程では、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、鍛造を行う。第3の工程において、チタン合金鋳塊を加熱する加熱炉内の温度は、(Tβ-100)℃以上、第2の工程の加熱温度以下とすることが好ましい。加工発熱による温度上昇を加味すると、加熱温度の上限はβ変態点温度より20℃低い温度未満(Tβ-20)℃未満であることが好ましい。
第3の工程における鍛造は、長手方向から1×10-1-1以下のひずみ速度にて1回で鍛造する。第3の工程では、チタン合金鋳塊の長手方向に鍛造する、いわゆる据え込み鍛造を行う。また、第3の工程における鍛造は、圧下率を30%以上とし、かつ、第2の工程における断面減少率をX2、第3の工程における圧下率をX3とした場合に、第3の工程における圧下率X3が(1)式を満足させるようにする。
(1)式:0.6X2≦X3≦0.8X2
鍛造時のひずみ速度を1×10-1-1以下とし、かつ圧下率X3を第2工程の減面減少率X2に対して、0.6X2≦X3≦0.8X2とすることで、マイクロテクスチャにおける底面すべりを促進させ、その結果、c軸の方位回転を生じさせてマイクロテクスチャを分断することに加えて、マイクロテクスチャに効率的にせん断ひずみを加え、次工程(第4の工程)で鍛造した場合に、マイクロテクスチャが分断され易く、さらに細粒化されるようになる。第3の工程の圧下率は、このような効果を得るために30%以上(鍛錬比1.8以上)とすることが好ましい。
なお、第3の工程では、ひずみを効率よく与えるために据え込み鍛造機を用いるのが好ましい。据え込み鍛造機は、素材径よりも大きなアンビル(金型)を用いるとよい。
(第4の工程)
次に、第4の工程では、α+β二相域の温度であって第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向から圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する。第4の工程において、チタン合金鋳塊を加熱する加熱炉内の温度は、(Tβ-100)℃以上、第2の工程の加熱温度以下とすることが好ましい。加工発熱による温度上昇を加味すると、加熱温度の上限はβ変態点温度より20℃低い温度未満(Tβ-20)℃未満であることが好ましい。また、第4の工程の断面減少率を50%以上(鍛錬比2以上)とすることで、α粒ないしはマイクロテクスチャを微細化し、かつ、マイクロテクスチャの最大アスペクト比を3以下とすることができる。
第4の工程における鍛造は、第2の工程の場合と同様に、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、新たな被加工部位に対して圧下を行うとよい。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行う。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみとする。これにより、鍛造素材の外周面の一部に対して圧下が行われる。この操作を、1回の鍛造とする。
1回目の鍛造が終了したら、鍛造素材をその長手を中心にして回転させる。これにより、鍛造素材の外周面のうち、1回目の被加工部位とは別の被加工部位を金敷に向けさせる。次いで、2回目の鍛造を行う。たとえば、矩形断面の場合には90°の異なる方向から圧下し、八角形断面の場合には45°毎の方向から圧下を加えるとよい。2回目の鍛伸加工が終了したら、3回目、4回目の鍛造を順次行う。鍛造の回数の上限は第2の工程前後での総断面減少率(鍛錬比)で制限する。第4の工程における鍛造による断面減少率は50%以上とする。
また、第1の工程と第2の工程との間において、チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を行ってもよい。熱処理を行うことによって再結晶を生じさせることで、鋳造組織の細粒化し、さらに結晶粒の粗大化抑制にさらに効果が期待できる。急冷は充分な冷却速度を得るために、十分な量の水に鍛造素材を浸漬することで行う水冷が一般的であるが、水冷相当以上の冷却速度が得られる他の手段を用いてもよい。急冷は鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けることが好ましい。さらに、平均冷却速度は、1℃/s以上であることが好ましい。なお、水冷は、第1の工程の直後に迅速に実施することが望ましいが、工業的には圧延終了後5分以内に実施すればよい。
以上の製造方法により、各鍛造加工時の断面減少率を制御することで、効率的に素材にひずみを与え、所望の組織を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態のチタン合金棒材によれば、Dwell疲労特性を向上させ、かつ、Dwell疲労特性の異方性を小さくすることができる。
また、本実施形態のチタン合金棒材の製造方法によれば、第1の工程、第2の工程、第3の工程及び第4の工程を順次行うことで、Dwell疲労特性に優れ、かつ、Dwell疲労特性の異方性が小さなチタン合金棒材を工業的に安定製造できる。
本実施形態のチタン合金棒材は、例えば、航空機エンジンのブレードやディスクの素材として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のチタン合金棒材に対して更に加工を施してブレードあるいはディスクとすることで、Dwell疲労特性に優れたブレードあるいはディスクとすることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
以下に示す方法によりチタン合金棒材を製造し、評価した。
(第1の工程)
溶解して得られた、表1に示す組成および形状を有するチタン合金鋳塊を、β変態温度以上に加熱した加熱炉内でβ単相温度域に加熱した後、加熱炉から取り出し、表2Aに示す断面減少率になるまで鍛造した。表1に示すチタン合金鋳塊のβ変態点温度は995℃~1000℃の範囲であった。なお、表1のチタン合金鋳塊の形状の欄において、「ψ750」は、断面形状が直径750mmの円形状であることを意味する。
鍛造は、鍛造素材であるチタン合金鋳塊の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回で変更させた。このようにして、第1工程において表2Aに示す断面減少率になるまで、1回以上の鍛造を行った。
第1の工程での加熱温度は、950℃~1150℃の温度範囲であった。また、第1工程の後は、鍛造素材の表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
また、No.7では、第1の工程後に熱処理工程を実施した。熱処理工程では、鍛造素材をβ単相域の温度に加熱後に急冷した。急冷は、鍛造素材の表面温度が300℃以下になるまで続けた。平均冷却速度は、1℃/s以上とした。また、急冷は、鍛造後5分以内に実施した。
(第2の工程)
第1の工程を終えたチタン合金鋳塊(鍛造素材)を、表2Aに示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、表2Aに示す断面減少率になるまで鍛造した。
鍛造は、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回で変更させた。このようにして、第2工程において表2Aに示す断面減少率になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返し行った。
第2の工程での加熱温度は、900℃~970℃の温度範囲であった。また、第2工程の後は、インゴット表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(第3の工程)
第2の工程を終えたチタン合金鋳塊(鍛造素材)を、表2Bに示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、加熱炉から取り出して鍛造した。
鍛造は据え込み鍛造機を用い、表2Bに示す圧下率ならびにひずみ速度にて鍛造素材の長手方向に対して1回で圧下を行った。第3の工程での加熱温度は、930℃~970℃の温度範囲であった。第3工程の後は、鍛造素材の表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(第4の工程)
第3の工程を終えたチタン合金鋳塊(鍛造素材)を、表2Bに示す加熱温度の加熱炉内で加熱した後、表2Bに示す断面減少率になるまで鍛造した。
鍛造は、鍛造素材の外周面の一部である被加工部位を金敷によって圧下した後、鍛造素材を長手方向に所定の送り量だけ相対移動させ、金敷に新たな被加工部位を対向させ、この新たな被加工部位に対して圧下を行った。この動作を、鍛造素材の長手方向一端から他端に向けて順次行い、必要に応じて掴み替えを行い、鍛造素材全体に対して鍛造を行った。この間、鍛造素材は長手方向に沿って金敷に対して相対的に送り出すのみであり、長手中心に回転させることはしなかった。以上の操作を1回の鍛造とし、鍛造を1回行う毎に鍛造素材を長手回りに回転させることで鍛造時の圧下方向を各回で変更させた。このようにして、第4工程において表2Bに示す断面減少率になるまで、加熱炉での加熱と鍛造とを複数回繰り返し行った。
第4の工程での加熱温度は、930℃~970℃の温度範囲であった。第4工程の後は、鍛造素材の表面温度が少なくとも300℃を下回る温度になるまで空冷(放冷)した。
(結晶組織の測定)
得られたチタン合金棒材の結晶組織の測定を、SEMに付属するEBSD装置を用いて測定した。
まず、チタン合金棒材の長手方向中心部より、長手方向に平行な断面を観察面とする試験片を採取した。観察面における測定箇所は、断面が半径rの円形の試料について、表面からr/2の深さの位置とした。次に、試験片の観察面の測定箇所における、縦3mm横3mmの矩形の領域を視野とし、測定間隔は2.0μm、加速電圧15kVで、EBSDを用いて測定した。
得られた測定結果を、OIM(株式会社 TSLソリューションズ製の結晶方位解析ソフト)を用いて解析した。まず、α相のみを対象とするPartitonを作成し、解析の対象とした。
次に、隣り合うEBSD測定点の結晶方位の角度差(ミスオリエンテーション角)を15°以下としてα結晶粒を決定し、面積率(Total Fraction)および平均粒径を求めた。なお、平均粒径は測定視野内のα結晶粒の円相当径から求めた。
また、得られた測定結果(オイラー角ph1,PH,ph2)から、隣り合うEBSD測定点のc軸方位差を求め、c軸方位差が20°以下としてマイクロテクスチャを決定し、マイクロテクスチャの面積率(Total Fraction)、最大アスペクト比および最大円相当径を求めた。なお、マイクロテクスチャは長手方向に最大長さとなるため、アスペクト比は長手方向の長さをその垂直方向の長さで除して求めた。
(疲労特性)
また、得られたチタン合金棒材のDwell疲労特性を測定した。
試験片として、チタン合金棒材の長手方向が長手方向(L方向)ならびに長手方向に垂直な方向(T方向)となるように引張試験片と疲労試験片を採取した。
引張試験の測定条件は以下の通りとした。
試験片形状:平行部φ5×30mm、ゲージ長さ25mm。
ひずみ速度:8.3×10-5-1
疲労試験の測定条件は以下の通りとした。
疲労試験片形状:平行部φ5.08mm×15.24mm、ゲージ長さ12mm。
疲労試験方法:軸力、片振り、応力比0.05。最大応力=同材料(同方向)の0.2%耐力の95%。
Dwell疲労:台形波、負荷1s、保持120s、除荷1s。
L方向のDwell疲労寿命を、T方向のDwell疲労寿命で除した値をDwell疲労寿命比として、Dwell疲労寿命比が2.0以下の場合を、Dwell疲労特性が良好であり、かつ、Dwell疲労特性の異方性が小さいと評価した。
表3に、α結晶粒の面積率および平均粒径、マイクロテクスチャの面積率、最大アスペクト比および最大円相当径、Dwell疲労寿命比=(L方向のDwell疲労寿命)/(T方向のDwell疲労寿命)を示す。本発明の範囲にある本発明例では、L方向のDwell疲労寿命は5000回以上であり、T方向のDwell疲労寿命は2500回以上であった。
表3に示すように、本発明の範囲にある本発明例は、Dwell疲労寿命比の値が2.0以下と小さく、Dwell疲労特性の異方性が小さくなっていることが分かる。一方、本発明の範囲外である比較例では、Dwell疲労特性の異方性が大きくなっていることが分かる。
Figure 0007485919000001
Figure 0007485919000002
Figure 0007485919000003
Figure 0007485919000004

Claims (8)

  1. α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
    化学成分が、Al:5.50~6.75質量%、V:3.5~4.5質量%、Fe:0.05~0.40質量%、O:0.05~0.25質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
    隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、
    マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm超1000μm以下である、チタン合金棒材。
  2. α+β型チタン合金からなるチタン合金棒材であり、
    化学成分が、Al:5.50~6.50質量%、Sn:1.75~2.25質量%、Z r:3.5~4.5質量%、Mo:1.8~2.2質量%、Fe:0.02~0.25質量%、O:0.02~0.15質量%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
    隣接するα粒のc軸間の方位差が20゜以下であるα粒の集合体をマイクロテクスチャとした場合、
    マイクロテクスチャの最大円相当径が100μm超1000μm以下である、チタン合金棒材。
  3. 前記マイクロテクスチャの最大アスペクト比が3.0未満である、請求項1または請求項2に記載のチタン合金棒材。
  4. 前記マイクロテクスチャの、チタン合金棒材の長手方向に平行な断面における面積率が20%以下である、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
  5. チタン合金棒材の長手方向に平行な断面において、前記α粒の面積率が30%以上であり、かつ前記α粒の平均円相当直径が20μm以上100μm以下である、請求項1乃至請求項の何れか一項に記載のチタン合金棒材。
  6. 更に、直径が100mm以上である請求項1乃至請求項の何れか一項に記載のチタン合金棒材
  7. チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛 造を行った後に冷却する第1の工程と、
    α+β二相域の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向に圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第2の工程と、
    α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向から1×10-1-1以下のひずみ速度にて1回で鍛造する第3の工程と、
    α+β二相域の温度であって前記第2の工程の加熱温度以下の温度に加熱し、長手方向に対して垂直方向から圧下する鍛造を1回以上行った後に300℃以下まで冷却する第4の工程と、
    をこの順で行い、
    前記第1の工程及び前記第2の工程における鍛造による総断面減少率を50%以上とし、前記第3の工程における鍛造による圧下率を30%以上とし、前記第4の工程における鍛造による断面減少率を50%以上とし、
    前記第2の工程における断面減少率をX2、前記第3の工程における圧下率をX3とした場合に、前記第3の工程における圧下率X3が(1)式を満足する、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のチタン合金棒材の製造方法。
    (1)式:0.6X2≦X3≦0.8X2
  8. 前記第1の工程と前記第2の工程の間に、前記チタン合金鋳塊をβ単相域の温度に加熱した後に急冷する熱処理工程を有する、請求項に記載のチタン合金棒材の製造方法。
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