JP5742226B2 - ガスバリア性積層体及びその製造方法並びにガスバリア性積層フィルム - Google Patents

ガスバリア性積層体及びその製造方法並びにガスバリア性積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は、ガスバリア性積層体及びその製造方法に関する。また、ガスバリア性積層体を用いたガスバリア性積層フィルムに関する。
エチレン‐ビニルアルコール共重合体をはじめとする分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体は、乾燥条件下での酸素などのガスバリア性が高く、包装材料として使用されている。しかし、その親水性の高さゆえ、高湿度条件下では、ガスバリア性が大きく低下するという問題があった。
高湿度条件下において、高いガスバリア性を有する積層体として、基材上にポリアルコール系ポリマー及びポリカルボン酸系ポリマーを含有するガスバリア層(II)と1価又は2価以上の金属化合物を含有する樹脂層(III)とを順に積層して備えるガスバリア性積層体が開示されている(例えば、特許文献1〜特許文献3を参照。)。特許文献1〜特許文献3に記載のガスバリア性積層体は、熱処理によって、ポリビニルアルコールポリマーとポリカルボン酸系ポリマーとのエステル結合及びポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基と金属化合物の金属イオンとのイオン架橋が起こり、ガスバリア性を発現するものである。
本出願人は、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を有する積層体として、支持体の少なくとも片面にアンカーコート層を介してポリカルボン酸系重合体を含有する層(A)と多価金属化合物を含有する層(B)とイオン化制御樹脂からなる層(C)とを備え、層(A)と層(B)とが層(C)を介して積層されている絞り成形用積層体を開示している(例えば、特許文献4を参照。)。特許文献4に記載の絞り成形用積層体は、ボイル又はレトルト処理などの高温高湿処理を施すことによって、層(B)中の多価金属イオンが層(A)に移動して、多価金属イオンとポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基との間にイオン架橋構造が形成されることで、ガスバリア性を発揮するものである。
特開2007−112114号公報 特開2007−112115号公報 特開2007−112116号公報 特開2008−80533号公報
特許文献1〜3に記載の積層体は、ガスバリア性を発現するために高温(例えば、200℃程度)の加熱処理工程を必須とするため、処理にコストがかかり、また、使用する包材への熱によるダメージが懸念される。また、ガスバリア性の度合いは、加熱処理の温度及び時間に依存するため、十分なガスバリア性を発現することができないおそれがある。特許文献4に記載の積層体は、高温高湿処理を施すことでガスバリア性を発現するため、熱成形後にボイル又はレトルト処理などの殺菌処理を施す用途に好適であるが、高温高湿処理を施すことなくガスバリア性が求められる一般包装材料用途には適さない。そこで、高温高湿処理を施さなくてもガスバリア性を発揮し、高湿条件下でも高いガスバリア性を保持するガスバリア性積層体が望まれていた。
本発明の目的は、高温高湿処理を施さなくても高いガスバリア性を発揮し、高湿度条件下においても高いガスバリア性を有し、一般包材として好適なガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルムを提供することである。また、本発明の第二の目的は、高湿度条件下においても高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、高温高湿処理を施すことなく製造する方法を提供することである。
本発明に係るガスバリア性積層体は、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体であって、前記ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、前記メインコート層(A)と前記多価金属イオン供給層(C)とが前記レジンコート層(B)を介して積層されており、前記メインコート層(A)に含有されているポリカルボン酸系重合体が、前記多価金属イオン供給層(C)に由来する多価金属化合物とイオン架橋反応をしており、かつ、高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする。
本発明に係るガスバリア性積層体では、前記レジンコート層(B)を形成するための塗工液及び前記多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液が、いずれも溶媒又は分散媒として水を含有することが好ましい。これらの塗工液が水を含有することで、水との親和性を有するレジンコート層(B)を介して多価金属イオンとイオン架橋に必要な水分をメインコート層(A)に移動させることが容易になる。
本発明に係るガスバリア性積層体では、前記バインダ樹脂が、前記レジンコート層(B)が含有する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。これによってレジンコート層(B)と多価金属イオン供給層(C)との接着性をより高めることができる。
本発明に係るガスバリア性積層体では、前記多価金属化合物が、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これによってガスバリア性をより高めることができる。
本発明に係るガスバリア性積層体では、前記レジンコート層(B)は、ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の少なくとも1種を含む形態を包含する。
本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体の少なくとも片面にラミネート層を設けたガスバリア性積層フィルムであって、前記ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、前記メインコート層(A)と前記多価金属イオン供給層(C)とが前記レジンコート層(B)を介して積層されており、前記メインコート層(A)に含有されているポリカルボン酸系重合体が、前記多価金属イオン供給層(C)に由来する多価金属化合物とイオン架橋反応をしており、かつ、高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、かつ、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理を施した後の同条件で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする。
本発明に係るガスバリア性積層体の製造方法は、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を形成する工程を有するガスバリア性積層体の製造方法であって、前記ガスバリア層を形成する工程は、ポリカルボン酸系重合体を含有する塗工液を用いてメインコート層(A)を形成する工程1と、樹脂及び水を含有する塗工液を用いてレジンコート層(B)を形成する工程2と、多価金属化合物、分散剤、バインダ樹脂及び水を含有する塗工液を用いて多価金属イオン供給層(C)を形成する工程3とを含み、前記ガスバリア性積層体は、高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm (STP)/(m ・day・MPa)以下であることを特徴とする。
本発明は、高温高湿処理を施さなくても高いガスバリア性を発揮し、高湿度条件下においても高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルムを提供することができる。また、本発明は、高湿度条件下においても高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、高温高湿処理を施すことなく製造する方法を提供することができる。
実施例のガスバリア性積層体及び比較例の積層体の酸素透過度の推移を示すグラフである。 実施例のガスバリア性積層フィルム及び比較例の積層フィルムの酸素透過度の推移を示すグラフである。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体であって、ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、メインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)とがレジンコート層(B)を介して積層されており、メインコート層(A)に含有されているポリカルボン酸系重合体が、多価金属イオン供給層(C)に由来する多価金属化合物とイオン架橋反応をしており、かつ、高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下である。
メインコート層(A)上に直接多価金属イオン供給層(C)を形成する場合、その形成過程において多価金属イオンは多量の水分とともにメインコート層(A)と接する。このため、水によってポリカルボン酸系重合体は膨潤し、分子鎖が拡がった状態になるので緻密なイオン架橋構造は生成されず、高いガスバリア性は得られなかった。そこで、高いガスバリア性を発現させるためには多価金属イオンをメインコート層(A)に供給し、緻密なイオン架橋構造を生成するための後処理として高温高湿処理などを施すことで、水によるポリカルボン酸系重合体の膨潤よりも速くイオン架橋体を形成する必要があった。本実施形態に係るガスバリア性積層体では、多価金属イオンとイオン架橋に必要な水分とだけをメインコート層(A)に移動させることが可能なレジンコート層(B)をメインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)との間に配置した。これによって、高温高湿処理を施さなくてもガスバリア性を発揮することができる。その理由は定かではないが、単位体積当たりのカルボキシル基と多価金属イオンとによるイオン架橋の程度がレジンコート層(B)を介さない場合よりも大きくなるためと思料する。
基材は、後述するアンカーコート層、メインコート層(A)、レジンコート層(B)及び多価金属イオン供給層(C)を積層させるための支持体となる。基材の材料は、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ4‐メチルペンテン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系重合体又はそれらの共重合体及びその酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)などの酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリε‐カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレートなどのポリエステル系重合体又はその共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,66共重合体、ナイロン6,12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体などのポリアミド系重合体又はその共重合体(Ny);ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイドなどのポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル(PVD)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどの塩素系及びフッ素系重合体又はその共重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系重合体又はその共重合体;ポリイミド系重合体又はその共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの塗料用樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチンなどの天然高分子化合物、紙である。これらの中でも、包装材料として使用するという観点から、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体が好ましい。なお、基材は、単層、又は2層以上を積層した多層とすることができる。
基材の形態としては、例えば、延伸若しくは未延伸のフィルム又はシート、ボトル、カップ、トレーである。基材の厚さは、5〜500μmの範囲であることが包装材料として好ましい。より好ましくは、10〜300μmの範囲である。5μm未満では、基材の強度が不足して、塗工適性、ラミネート適性などの加工適性が劣る場合がある。500μmを超えると、基材の剛性が高すぎて、二次加工、内容物の充填におけるハンドリング性が劣る場合がある。なお、本発明は、基材の形態及び厚さに制限されない。
基材は、その表面上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、アルミニウム、窒化珪素などの無機化合物からなる薄膜を形成したものを用いることができる。薄膜の形成方法は、公知の方法であり、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法である。
アンカーコート層は、基材と後述するガスバリア層との層間接着強度を高めることを目的として基材の少なくとも片面に形成する層である。なお、本実施形態において、アンカーコート層の形成は任意である。
アンカーコート層は、アンカーコート剤を含有する。アンカーコート剤は、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂である。この中で、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂がより好ましい。ポリエステル系ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリエステル系ポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られる樹脂である。
アンカーコート層の厚さは、特に限定されないが、0.03〜1μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.5μmの範囲であり、特に好ましくは、0.1〜0.3μmの範囲である。0.03μm未満では、層間接着強度が不足する場合がある。また、1μmを超えると、ガスバリア性が不足する場合がある。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、ガスバリア層として、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有する層を備える。さらに、メインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)とがレジンコート層(B)を介して積層されている。
メインコート層(A)は、ポリカルボン酸系重合体を含有する。メインコート層(A)は、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面に形成される。
ポリカルボン酸系重合体は、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。具体的には、重合性単量体としてα,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸のうちの1種が重合した重合体(以降、単独重合体ということもある。)、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸のうちの少なくとも2種が重合した共重合体、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチンなどの分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合体は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、無水クロトン酸である。また、その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレンである。
ポリカルボン酸系重合体が、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、マレイン酸とエチレンとの共重合体であるエチレン‐マレイン酸共重合体であることがより好ましい。また、これらのポリカルボン酸系重合体が、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体の場合には、更にケン化することにより、飽和カルボン酸ビニルエステル部分をビニルアルコールに変換して使用することができる。
また、ポリカルボン酸系重合体が、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、得られるガスバリア層のガスバリア性及び高温水蒸気や熱水に対する耐性の向上という観点から、その共重合組成はα,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体組成が、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。このように、ポリカルボン酸系重合体としては、α,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体を用いることが好ましい。さらに、これらのポリカルボン酸系重合体がα,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、その好適な具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる重合体、及びそれらの混合物が挙げられる。そして、このようなα,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる重合体又はそれらの混合物を用いることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びそれらの混合物を用いることが特に好ましい。また、これらのポリカルボン酸系重合体がα,β‐モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体の重合体以外の例えば、酸性多糖類の場合には、アルギン酸を好ましく用いることができる。
本実施形態では、ポリカルボン酸系重合体は、1価又は2価の金属化合物で部分的に中和されている形態を包含する。このような金属化合物に含有される金属としては、例えば、ナトリウム、カルシウム、亜鉛が挙げられる。そして、このような金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛が挙げられる。金属化合物の添加量は、特に限定されないが、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の含有量に対して0.3化学当量以下であることが好ましい。
ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、有機薄膜の形成性の観点から、2,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは、5,000〜500,000の範囲である。
メインコート層(A)の厚さは、0.03〜2μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1μmの範囲であり、特に好ましくは、0.1〜0.5μmの範囲である。0.03μm未満では、成膜が困難となる場合がある。2μmを超えると、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と多価金属イオンとのイオン架橋反応が厚さ方向に均一に進行しにくいため、ガスバリア性が不十分となる場合がある。
レジンコート層(B)は、メインコート層(A)と後述する多価金属イオン供給層(C)との間に配置される層であり、多価金属イオンとイオン架橋に必要な水分とだけをメインコート層(A)に移動させることが可能な樹脂を含む。これによって、高温高湿処理を施さなくてもガスバリア性を発揮することができる。その理由は定かではないが、単位体積当たりのカルボキシル基と多価金属イオンとによるイオン架橋の程度がレジンコート層(B)を介さない場合よりも大きくなるためと思料する。レジンコート層(B)は、多価金属イオン及びそのキャリアとして必要な水をメインコート層(A)まで移動させることが可能な樹脂を含有する層である。こうした樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂である。特にポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、前記したアンカーコート層を構成するアンカーコート剤と同一の樹脂であってもよい。
レジンコート層(B)の厚さは、0.03〜0.5μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.3μmである。0.03μm未満では、多価金属イオン供給層(C)に含まれる多価金属化合物の粒径を下回る場合があり、多価金属イオン供給層(C)に含まれる多価金属化合物がレジンコート層(B)内に収まらず、メインコート層(A)に接触してしまう。0.5μmを超えると、多価金属イオンがメインコート層(A)に到達しにくくなり、高温高湿処理を施さなくてはガスバリア性を発現できない場合がある。
多価金属イオン供給層(C)は、レジンコート層(B)のメインコート層(A)を形成する面と反対側に形成され、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する層である。この多価金属イオンの一部又は全部が、メインコート層(A)のポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基とイオン架橋構造を形成することで、高湿度雰囲気下においても優れたガスバリア性を発揮する。
多価金属化合物は、価数が2以上の金属イオンを解離することができる化合物である。2価以上の金属は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウムである。多価金属化合物は、前記した2価以上の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩、アルキルアルコキシド、アンモニウム錯体、2〜4級アミン錯体又はそれら錯体の炭酸塩若しくは有機酸塩である。さらに、金属単体を包含する。有機酸塩は、例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩である。無機酸塩は、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩である。多価金属化合物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
多価金属化合物は、ガスバリア性を高めることができる点で、2価の金属化合物が好ましい。さらには、多価金属化合物が、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
多価金属イオン供給層(C)には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、1価の金属を含有する金属化合物を配合することができる。1価の金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムである。
多価金属化合物は、ガスバリア性積層体の透明性の点で、粒状で、平均粒径が0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3μm以下であり、特に好ましくは、0.1μm以下である。
多価金属化合物の配合量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の化学当量1に対して、0.2化学当量以上であることが好ましい。0.2化学当量未満では、ガスバリア性が劣る場合がある。ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の化学当量1に対する多価金属化合物の配合量の上限値は、30化学当量とすることが好ましい。30化学当量を超えると、積層体の透明性が劣る場合がある。ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の化学当量1に対する多価金属化合物の配合量は、より好ましくは、0.5〜10化学当量の範囲である。特に好ましくは、0.8〜5.0化学当量の範囲である。この範囲とすることで、ガスバリア性に加えて、より透明性に優れた積層体を得ることができる。
分散剤は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリマレイン酸ナトリウム塩、アクリル酸・マレイン酸共重合体ナトリウム塩である。分散剤の配合量は、特に限定されないが、多価金属化合物100質量部に対して、1〜20質量部の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、2〜10質量部の範囲である。
バインダ樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂であり、塗料用に用いられる樹脂が好適である。このような樹脂は、例えば、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、セルロース系樹脂、天然樹脂である。この中で、ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、本実施形態に係るガスバリア性積層体では、バインダ樹脂が、レジンコート層(B)が含有する樹脂と同一の樹脂であることが好ましい。これによって、レジンコート層(B)と多価金属イオン供給層(C)との接着性をより高めることができる。
なお、多価金属イオン供給層(C)には、多価金属化合物、バインダ樹脂及び分散剤の他に必要に応じて硬化剤を含有していてもよい。硬化剤としては、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、ポリアミンなどの公知の樹脂を挙げることができる。
多価金属化合物とバインダ樹脂との質量比(多価金属化合物/バインダ樹脂)が、65/35〜92/8の範囲であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜92/8の範囲である。多価金属化合物とバインダ樹脂との合計質量100質量部に対して、多価金属化合物の質量が65質量部未満では、ガスバリア性が不十分となる場合がある。多価金属化合物とバインダ樹脂との合計質量100質量部に対して、多価金属化合物の質量が92質量部を超えると、多価金属イオン供給層(C)の塗膜強度が乏しくなり、多価金属化合物が剥がれ落ちやすくなる。
多価金属イオン供給層(C)の厚さは、0.05〜5μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3μmの範囲であり、特に好ましくは、0.2〜1μmの範囲である。0.05μm未満では、ガスバリア性が不十分となる場合がある。他方、5μmを超えると多価金属イオン供給層(C)にクラックが生じやすくなる。
メインコート層(A)、レジンコート層(B)及び多価金属イオン供給層(C)には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、可塑剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、フィラー、顔料などの各種助剤を配合することができる。
可塑剤は、例えば、ポリアルコールである。ポリアルコールは、1分子中にアルコール性の官能基(‐OH)を複数有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3‐ブタンジオール、2,3‐ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドなどのグリコール類;ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリトリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸である。これらは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。ポリカルボン酸系重合体と可塑剤との合計質量を100質量部に対して、可塑剤の配合量は、30質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、20質量部以下であり、特に好ましくは、15質量部以下である。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、高温高湿処理を施さなくても、温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下である。他方、特許文献4に記載の積層体は、高温高湿処理前には、イオン架橋反応が抑制されているため、この条件を満たさない。
本実施形態に係るガスバリア性積層体では、レジンコート層(B)を形成するための塗工液及び多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液が、いずれも溶媒又は分散媒として水を含有することが好ましい。これによって、加熱処理、調湿処理などガスバリア性を発現させるための特別な処理を施さなくても、温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下という、優れたガスバリア性を発現する。
この理由は、必ずしも定かではないが、本発明者らは次のように推察する。すなわち、レジンコート層(B)を形成するための塗工液及び多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液がいずれも水を含有することで、多価金属イオン供給層(C)の形成過程において、多価金属イオンがイオン架橋に必要な水分とともに、先に形成された水との親和性を有するレジンコート層(B)中を移動可能となる。これによって、メインコート層(A)の膨潤を引き起こすことなくイオン架橋するため、単位体積当たりのカルボキシル基と多価金属イオンとによるイオン架橋の程度はレジンコート層(B)を介さない場合よりも大きくなり、高温高湿処理を施さなくてもガスバリア性を発揮することができる。なお、このイオン架橋反応は、特に高湿度雰囲気下で助長されるため、高湿度雰囲気下においても、優れたガスバリア性を保持することができる。また、高温高湿度処理を施すことで、未反応のカルボキシル基と多価金属イオンとが多価金属イオン供給層(C)からの多価金属イオンの再供給によりイオン架橋し、更にガスバリア性が高まると考える。
他方、レジンコート層(B)を形成するための塗工液若しくは多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液の少なくとも一方又は両方が水を含有しない場合には、高温高湿処理を施さなくては、ガスバリア性を発揮することができない。この理由は、必ずしも定かではないが、レジンコート層(B)を形成するための塗工液が水を含有しない場合には、形成されたレジンコート層(B)が水との親和性に欠け、多価金属イオンとイオン架橋に必要な水分とがメインコート層(A)まで到達することができないためと考える。また、多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液が水を含有しない場合には、イオン架橋に必要な水分がなく、多価金属イオンがレジンコート層(B)内を移動しないためと考える。いずれの場合でも特許文献4に記載した積層体のように、レジンコート層(B)によって、多価金属イオン供給層(C)からの多価金属イオンの供給が抑制され、多価金属イオンとポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基との間のイオン架橋反応の抑制状態が維持されることとなる。
また、メインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)との間にレジンコート層(B)を形成せず、メインコート層(A)上に直接多価金属イオン供給層(C)を形成する場合、又は多価金属イオン供給層(C)上に直接メインコート層(A)を形成する場合、その形成過程において多価金属イオンは多量の水分とともにメインコート層(A)と接する。このため、水によってポリカルボン酸系重合体が膨潤し、分子鎖が拡がった状態になるので緻密なイオン架橋構造は生成されず、高いガスバリア性は得られなかった。そこで、高いガスバリア性を発現させるためには多価金属イオンをメインコート層(A)に供給し、緻密なイオン架橋構造を生成するための後処理として高温高湿処理などを施すことで、水によるポリカルボン酸系重合体の膨潤よりも速くイオン架橋体を形成する必要があった。ここで後処理とは、具体的には長時間の高湿度処理(例えば、温度20℃及び雰囲気湿度80%RHで、60時間)又は高温高湿処理(例えば、温度90℃の熱水に30分間浸漬若しくは温度120℃の加圧水蒸気下で40分間)などである。
ここで、ガスバリア層の積層態様の例を次に示す。
1.(A)/(B)/(C)
2.(C)/(B)/(A)
3.(A)/(B)/(C)/(B)/(A)
4.(C)/(B)/(A)/(B)/(C)
5.(A)/(B)/(C)/(B)/(A)/(B)/(C)
このように、本実施形態では、ガスバリア層の積層態様は、メインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)との間にレジンコート層(B)を設ければよく、前記した態様例は、あくまでも例示であって、本発明に係るガスバリア性積層体はこれらのみに限定されるものではない。
次に、本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムについて説明する。本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体の少なくとも片面にラミネート層を設けたガスバリア性積層フィルムであって、ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、メインコート層(A)と多価金属イオン供給層(C)とがレジンコート層(B)を介して積層されており、温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、かつ、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理を施した後の同条件で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下である。ここで、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理は、レトルト処理とも呼ばれ、貯湯式のレトルト処理機などの圧力容器で行うことができる。
本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、本実施形態に係るガスバリア性積層体とラミネート層とを有する。ラミネート層は、ガスバリア性積層体の耐磨耗性付与、光沢性付与、ヒートシール性付与、強度付与、防湿性付与など各種目的に合わせて、ガスバリア性積層体の表面に配置される。ガスバリア性積層体とラミネート層との配置態様の例としては、例えば、ガスバリア性積層体のガスバリア層の上にラミネート層を配置する形態、ガスバリア性積層体のガスバリア層を設けた面とは反対側の基材上にラミネート層を配置する形態、ガスバリア性積層体の両面上にラミネート層を配置する形態である。ガスバリア層を保護することができる点で、少なくともガスバリア層上にラミネート層を配置することが好ましい。ラミネート層の材料は、前記した基材の材料と同様である。また、ラミネート層は、1層又は2層以上設けることができる。
ラミネート層の厚さは、1〜1000μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜500μmの範囲であり、特に好ましくは、10〜300μmである。最も好ましくは、15〜200μmである。1μm未満では、ラミネート層を付与する効果が得られない場合がある。1000μmを超えると、剛性が高すぎて、二次加工、内容物の充填におけるハンドリング性が劣る場合がある。なお、本発明は、ラミネート層の材料及び厚さに制限されない。
本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、かつ、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理を施した後の同条件で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下である。ガスバリア性積層体にラミネート層を設けても、前述のイオン架橋反応が起こることによって、高温高湿処理前でも高いガスバリア性を有する。さらに、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理を施した後は、イオン架橋反応が進行してガスバリア性をより高めることができる。他方、特許文献4に記載の積層体にラミネート層を設けた積層フィルムでは、レジンコート層(B)がイオン架橋反応を制御しているため、高温高湿処理前は、ガスバリア性が低いが、高温高湿処理を施すことで、初めてガスバリア性を発揮する。このように、本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、本実施形態に係るガスバリア性積層体を有するため、ガスバリア性積層体の機能によって、加熱処理、調湿処理などガスバリア性を発現させるための特別な処理を施さなくても、高湿度雰囲気下における優れたガスバリア性を有し、更に、高温高湿処理を施してもそのバリア性が低下することがない。
本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、ガスバリア性包装容器の包装材料として用いることができる。充填機械適性及び生産性の点から、ラミネート層のうち、ガスバリア性積層体と反対側の表面が、ヒートシール性を有する材料であることが好ましい。ガスバリア性積層フィルムの具体的な積層態様の例としては、例えば、ガスバリア性積層体(基材/ガスバリア層)/ONy/CPP、ガスバリア性積層体(基材/ガスバリア層)/CPP、ガスバリア性積層体(基材/ガスバリア層)/LLDPE、PE/紙/PE/ガスバリア性積層体(ガスバリア層/基材)/PEである。ここで、ONyは、二軸延伸ナイロンであり、CPPは、無延伸ポリプロピレンである。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明に係るガスバリア性積層体はこれらのみに限定されるものではない。
ガスバリア性包装容器の形態は、例えば、平パウチ、スタンディングパウチ、ノズル付きパウチ、ピロー包装袋、ガゼット包装袋などの包装袋、ボトル、トレー、カップ及びチューブ並びにそれらの蓋体又は口部である。被包装物は、特に限定されないが、酸素などの影響を受けて劣化しやすい物品である場合に有用である。被包装物は、例えば、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品、金属である。また、ボイル又はレトルト殺菌などの高温高湿処理を施す物品の包装材料として用いることができる。このような物品は、例えば、カレー、シチュー、パスタソースなどの調味食品、めんつゆ、各種たれなどの調味料、ベビーフード、米飯、おかゆ、スープ、野菜、穀物、果物などのボイル又は電子レンジ加熱用調理済み又は半調理済み食品、ソーセージ、ハムなどの畜産加工品である。
次に、本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法について説明する。
本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法は、基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を形成する工程を有するガスバリア性積層体の製造方法である。
アンカーコート層は、前述したアンカーコート層を形成する材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散して、適当な固形分濃度に調製したアンカーコート層形成用の塗工液を基材の少なくとも片面上に塗工し、乾燥することで形成することができる。溶媒又は分散媒は、特に限定されないが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、n‐ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルである。溶媒又は分散媒は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。アンカーコート層形成用の塗工液の固形分濃度は、塗工適性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
アンカーコート形成用の塗工液の塗工方法は、特に限定されず、公知の塗工方法が使用できる。公知の塗工方法は、例えば、浸漬法(ディッピング法)、スプレー吹付法、コーター法、刷毛塗り法、ローラー塗り法である。膜厚を制御しやすい点で、コーター法がより好ましい。コーター法は、例えば、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式などのグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーターである。
塗工液の乾燥方法は、特に限定されず、例えば、自然乾燥による方法、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、前記したコーター付属の乾燥機で乾燥させる方法である。コーター付属の乾燥機は、例えば、アーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤーである。乾燥温度は、溶媒の種類、塗工量、乾燥方法などの各種条件に応じて適宜設定するものであり、一概にはいえないが、50〜200℃であることが好ましい。より好ましくは、80〜150℃である。乾燥時間は、特に限定されないが、5分以下とすることが好ましい。より好ましくは、2分以下であり、特に好ましくは、1分以下である。例えば、オーブン中で乾燥させる方法においては、温度60〜120℃にて、1秒間〜5分間程度乾燥することが好ましい。
次に、ガスバリア層を形成する工程について説明する。ガスバリア層を形成する工程は、ポリカルボン酸系重合体を含有する塗工液を用いてメインコート層(A)を形成する工程1と、樹脂及び水を含有する塗工液を用いてレジンコート層(B)を形成する工程2と、多価金属化合物、分散剤、バインダ樹脂及び水を含有する塗工液を用いて多価金属イオン供給層(C)を形成する工程3とを含む。
ここで、本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法は、好ましくは工程1と工程2と工程3とを順次行う工程流れIで行われるが、工程3と工程2と工程1とを順次行う工程流れIIで行うことも可能である。この場合、工程流れIIでもガスバリア性は得られ、その理由は定かではないが、以下のように推測する。すなわち、工程流れIIでは、レジンコート層(B)上にメインコート層(A)を形成することになり、その形成過程において該塗工液に含まれる水がレジンコート層(B)を経てさらにその下に形成されている多価金属イオン供給層(C)に至り、多価金属イオンを溶出させる。こうして溶出された多価金属イオンがレジンコート層(B)を通過してメインコート層(A)に到達することでイオン架橋し、ガスバリアが発現すると考える。ただし、メインコート層(A)の形成過程において、ポリカルボン酸系重合体が水に溶解した状態(分子鎖が拡がった状態)でレジンコート層(B)から多価金属イオンが到達した場合、緻密なイオン架橋構造は生成されず、高いガスバリア性は得られない。そこで、工程流れIIでは、乾燥によってメインコート層(A)を形成するのに要する時間(以降、A層形成時間という。)が、多価金属イオンがメインコート層(A)に到達するのにかかる時間(以降、イオン移動時間という。)よりも短いことが好ましい。例えば、メインコート層(A)形成用塗工液に用いる溶媒又は分散媒として水とアルコールなどの親水性有機溶媒との混合液を用いて、A層形成時間を短縮する、レジンコート層(B)の厚さを多価金属イオンがメインコート層(A)に到達可能な範囲内で厚くして、イオン移動時間を延長するなどの手法で、イオン移動時間とA層形成時間とを調整することができる。なお、本発明は、当該調整手法に制限されない。
工程1は、メインコート層(A)を形成する工程である。メインコート層(A)は、前述したメインコート層(A)を形成する材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散して、適当な固形分濃度に調製したメインコート層(A)形成用の塗工液を基材の表面又はアンカーコート層を形成した基材のアンカーコート層上に塗工し、乾燥することで形成することができる。
メインコート層(A)形成用塗工液に用いる溶媒又は分散媒は、特に限定されず、アンカーコート層形成用の塗工液で例示したものを使用できる。ただし、工程流れIIである場合には、メインコート層(A)形成用塗工液に用いる溶媒又は分散媒は、水を含有することが好ましい。また、塗工方法、乾燥方法及び乾燥条件は、アンカーコート層形成用の塗工液で例示した方法及び条件を使用できる。
メインコート層(A)形成用の塗工液の固形分濃度は、塗工適性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜30質量%の範囲であることがより好ましい。また、メインコート層(A)形成用の塗工液の塗工量は、所望する層の厚さによって異なるが、例えば、塗工液を塗工して乾燥した後の1mあたりの質量が0.03〜2g/mの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1g/mの範囲であることがより好ましい。0.03g/m未満では、成膜が不十分となる場合がある。2g/mを超えると、溶媒又は分散媒が残留しやすくなる傾向がある。また、溶媒又は分散媒を揮発させるのに時間がかかり、不経済である。
工程2は、レジンコート層(B)を形成する工程である。レジンコート層(B)は、前述したレジンコート層(B)を形成する材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散して、適当な固形分濃度に調製したレジンコート層(B)形成用の塗工液をメインコート層(A)上に塗工し、乾燥することで形成することができる。
レジンコート層(B)形成用塗工液に用いる溶媒又は分散媒は、水を含有することが好ましい。また、塗工方法、乾燥方法及び乾燥条件は、アンカーコート層形成用の塗工液で例示した方法及び条件を使用できる。
レジンコート層(B)形成用の塗工液の固形分濃度は、塗工適性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜30質量%の範囲であることがより好ましい。また、レジンコート層(B)形成用の塗工液の塗工量は、所望する層の厚さによって異なるが、例えば、塗工液を塗工して乾燥した後の1mあたりの質量が0.03〜0.5g/mの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.3g/mの範囲であることがより好ましい。0.03g/m未満では、成膜が不十分となる場合がある。0.5g/mを超えると、溶媒又は分散媒が残留しやすくなる傾向がある。また、溶媒又は分散媒を揮発させるのに時間がかかり、不経済である。
工程3は、多価金属イオン供給層(C)を形成する工程である。多価金属イオン供給層(C)は、前述した多価金属イオン供給層(C)を形成する材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散して、適当な固形分濃度に調製した多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液をレジンコート層(B)上に塗工し、乾燥することで形成することができる。
多価金属イオン供給層(C)形成用塗工液に用いる溶媒又は分散媒は、水を含有することが好ましい。また、塗工方法、乾燥方法は、アンカーコート層形成用の塗工液で例示した方法及び条件を使用できる。多価金属イオン供給層(C)の乾燥温度は、80℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、85℃以上である。これによって、レジンコート層(B)の上に多価金属イオン供給層(C)を形成する場合、レジンコート層(B)を介して、多価金属イオンをメインコート層(A)に到達させることが可能になり、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基との間に緻密なイオン架橋構造が生成される。なお、乾燥温度の上限値は、熱による基材及び塗工層へのダメージを防止する点で、200℃とすることが好ましい。より好ましくは、乾燥温度は、160℃以下とする。
多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液の固形分濃度は、塗工適性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜30質量%の範囲であることがより好ましい。また、多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液の塗工量は、所望する層の厚さによって異なるが、例えば、塗工液を塗工して乾燥した後の1mあたりの質量が0.05〜5g/mの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3g/mの範囲であることがより好ましい。0.05g/m未満では、成膜が不十分となる場合がある。5g/mを超えると、溶媒又は分散媒が残留しやすくなる傾向がある。また、溶媒又は分散媒を揮発させるのに時間がかかり、不経済である。
なお、ここまで、工程流れIを中心に説明したが、本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法では、工程3と工程2と工程1とを順次行う工程流れIIとしてもよい。または、工程流れI及び工程流れIIの両方を順次行ってもよい。例えば、前記したガスバリア層の積層態様例2は、工程流れIに続いて、工程流れIIを行うことで形成することができる。前記したガスバリア層の積層態様例4は、工程流れIIに続いて、工程流れIを行うことで形成することができる。
本実施形態に係るガスバリア性積層フィルムは、前述のとおり製造したガスバリア性積層体の少なくとも片面、より好ましくは、ガスバリア層上にラミネート層を積層させることで、製造することができる。ラミネート層を積層させる方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を用いることができる。公知の方法は、例えば、ドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、ホットメルトラミネート法である。
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
<アンカーコート層形成用の塗工液調製>
ポリエステル系ポリオール(三井化学社製「タケラックA‐525」、固形分濃度50質量%)と脂肪族イソシアネート系硬化剤(三井化学社製「タケネートA‐52」、固形分濃度70質量%)とを質量比(主剤/硬化剤)=9/1で混合し、この混合物を酢酸エチルで希釈して固形分濃度5質量%の塗工液(Ac)を得た。
<メインコート層(A)形成用の塗工液調製1>
ポリアクリル酸水溶液(東亞合成社製「アロンA‐10H」、重量平均分子量200000、25質量%)80gを蒸留水117.7gで溶解し、酸化亜鉛(和光純薬社製)2.3gを加えてポリアクリル酸のカルボキシル基の20モル%を中和した後、蒸留水を加えて固形分濃度を5質量%に調製し、塗工液(A‐1)を得た。
<メインコート層(A)形成用の塗工液調製2>
ポリアクリル酸水溶液(東亞合成社製「アロンA‐10H」、重量平均分子量200000、25質量%)80gを蒸留水117.7gで溶解し、酸化亜鉛(和光純薬社製)2.3gを加えてポリアクリル酸のカルボキシル基の20モル%を中和した後、ポリマレイン酸水溶液(日油社製「ノンポールPMA‐50W、重量平均分子量1100〜2000、50質量%)を10g加え、固形分濃度を5質量%に調製し、塗工液(A‐2)を得た。
<レジンコート層(B)形成用の塗工液調製1>
ポリエステル系樹脂の水分散液(ユニチカ社製「エリーテルKT‐9204」、数平均分子量17000、固形分濃度30質量%)に予め水に分散させた脂肪族イソシアネート系硬化剤(Henkel社製「Liofol Hardener UR5889‐21」、固形分濃度100質量%)を固形分比で樹脂/硬化剤=9/1となるように添加し、そこに水及びイソプロピルアルコール(IPA)を加えて固形分濃度5質量%、水とIPAとの溶媒比(水/IPA)=88/12の塗工液(B‐1)を得た。
<レジンコート層(B)形成用の塗工液調製2>
ポリウレタン系樹脂の水分散液(大成ファインケミカル社製「WBR‐2000U」、固形分濃度32.5質量%)に水及びイソプロピルアルコール(IPA)を加えて固形分濃度5質量%、水とIPAとの溶媒比(水/IPA)=88/12の塗工液(B‐2)を得た。
<レジンコート層(B)形成用の塗工液調製3>
ポリエステル系樹脂(ユニチカ社製「エリーテルUE‐3210」、ペレット状)を酢酸エチルに溶解した後、脂肪族イソシアネート系硬化剤(三井化学社製「タケネートA‐52」、固形分濃度70質量%)を固形分比で樹脂/硬化剤=9/1となるように添加し、固形分濃度5質量%の塗工液(B‐3)を得た。
<多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製1>
酸化亜鉛(堺化学工業社製「FINEX‐30」)の水懸濁液(固形分濃度20質量%)と分散剤(アクリル酸‐マレイン酸共重合体ナトリウム、花王社製「ポイズ521」)とを固形分の質量比(酸化亜鉛/分散剤)=100/5となるよう混合した。これを遊星型ボールミル(フリッチュ社製「P‐7」)にて0.3mm径のジルコニアビーズを用いて分散させ、酸化亜鉛の水分散液を得た。得られた分散液にバインダ樹脂としてポリエステル系樹脂の水分散液(ユニチカ社製「エリーテルKT‐9204」、数平均分子量17000、固形分濃度30質量%)及び脂肪族イソシアネート系硬化剤(Henkel社製「Liofol Hardener UR5889‐21」、固形分濃度100質量%)を固形分比で酸化亜鉛/分散剤/バインダ樹脂/硬化剤=79/3.95/12.25/4.8となるように添加し、水及びイソプロピルアルコール(IPA)で希釈して固形分濃度10質量%、水とIPAとの溶媒比(水/IPA)=88/12の塗工液(C‐1)を得た。
<多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製2>
酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ社製「気相法高純度超微粉マグネシア500A」)の水懸濁液(固形分濃度20質量%)と分散剤(アクリル酸‐マレイン酸共重合体ナトリウム、花王社製「ポイズ521」)とを固形分の質量比(酸化マグネシウム/分散剤)=100/5となるよう混合した。これを遊星型ボールミル(フリッチュ社製「P‐7」)にて0.3mm径のジルコニアビーズを用いて分散させ、酸化マグネシウムの水分散液を得た。得られた分散液にバインダ樹脂としてポリエステル系樹脂の水分散液(ユニチカ社製「エリーテルKT‐9204」、数平均分子量17000、固形分濃度30質量%)及び脂肪族イソシアネート系硬化剤(Henkel社製「Liofol Hardener UR5889‐21」、固形分濃度100質量%)を固形分比で酸化マグネシウム/分散剤/バインダ樹脂/硬化剤=79/3.95/12.25/4.8となるように添加し、水及びイソプロピルアルコール(IPA)で希釈して固形分濃度10質量%、水とIPAとの溶媒比(水/IPA)=88/12の塗工液(C‐2)を得た。
<多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製3>
炭酸カルシウム(竹原化学工業社製「カルネクスPN」、炭酸カルシウム/乳化剤=82/17)の水懸濁液(固形分濃度20質量%)を遊星型ボールミル(フリッチュ社製「P−7」)にて0.3mm径のジルコニアビーズを用いて分散させ、炭酸カルシウムの水分散液を得た。得られた分散液にバインダ樹脂としてポリエステル系樹脂の水分散液(ユニチカ社製「エリーテルKT‐9204」、数平均分子量17000、固形分濃度30質量%)及び脂肪族イソシアネート系硬化剤(Henkel社製「Liofol Hardener UR5889‐21」、固形分濃度100質量%)を固形分比でカルネクスPN(炭酸カルシウム+乳化剤)/バインダ樹脂/硬化剤=82.95/12.25/4.8となるように添加し、水及びイソプロピルアルコール(IPA)で希釈して固形分濃度10質量%、水とIPAとの溶媒比(水/IPA)=88/12の塗工液(C‐3)を得た。
<多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製4>
酸化亜鉛(堺化学工業社製「FINEX‐30」)の酢酸エチル懸濁液(固形分濃度20質量%)と分散剤(ソルビタン脂肪酸エステル)とを固形分の質量比(酸化亜鉛/分散剤)=100/5となるよう混合した。これを遊星型ボールミル(フリッチュ社製「P‐7」)にて0.3mm径のジルコニアビーズを用いて分散させ、酸化亜鉛の酢酸エチル分散液を得た。得られた分散液にバインダ樹脂としてポリエステル系樹脂(ユニチカ社製「エリーテルUE‐3210」、ペレット状)を酢酸エチルに溶解させて作製したポリエステル系樹脂の溶液(固形分濃度30質量%)及び脂肪族イソシアネート系硬化剤(三井化学社製「タケネートA‐52」、固形分濃度70質量%)を固形分比で酸化亜鉛/分散剤/バインダ樹脂/硬化剤=79/3.95/12.25/4.8となるように添加し、酢酸エチルで希釈して固形分濃度10質量%の塗工液(C‐4)を得た。
[実施例1]
先ず、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製フィルム(PET)(東レ社製「ルミラーP60」)の一方の面に、バーコーター(K303 PROOFER;RK Print‐Coat Instruments社製)を用いて、アンカーコート層形成用の塗工液調製で得られた塗工液(Ac)を塗工し、70℃で2分間乾燥させてアンカーコート層(Ac)を形成した。得られた層(Ac)の厚さは0.1μmであった。次に、アンカーコート層(Ac)の表面に、前記バーコーターを用いて、メインコート層(A)形成用の塗工液調製で得られた塗工液(A‐1)を塗工し、100℃で2分間乾燥させてメインコート層(A‐1)を形成した(工程1)。得られたメインコート層(A‐1)の厚さは0.3μmであった。その後、メインコート層(A‐1)の表面に、前記バーコーターを用いて、レジンコート層(B)形成用の塗工液調製1で得られた塗工液(B‐1)を塗工し、70℃で2分間乾燥させて層(B‐1)を形成した(工程2)。得られた層(B‐1)の厚さは0.1μmであった。さらに、レジンコート層(B‐1)の表面に、前記バーコーターを用いて、多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製1で得られた塗工液(C‐1)を塗工し、85℃で2分間乾燥させて層(C‐1)を形成した(工程3)。得られた多価金属イオン供給層(C‐1)の厚さは0.3μmであった。こうして、PET/Ac/A‐1/B‐1/C‐1からなるガスバリア性積層体(実施例1a)を得た。
このようにして得られたガスバリア性積層体の多価金属イオン供給層(C‐1)側の表面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の接着剤(三井化学社製、主剤:タケラックA‐620、硬化剤:タケネートA‐65、溶剤:酢酸エチル)を介して、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)(ユニチカ社製 「エンブレムONUM」:厚さ15μm)及び未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)(東レフィルム加工社製「トレファンNO ZK93FM」:厚さ60μm)を順にドライラミネート法によって積層し、ガスバリア性積層体/接着剤/ONy/接着剤/CPPからなるガスバリア性積層フィルム(実施例1b)を得た。
[実施例2]
実施例1において、メインコート層(A‐1)の表面に塗工液(B‐1)の代わりにレジンコート層(B)形成用の塗工液調製2で得られた塗工液(B‐2)を塗工し、70℃で2分間乾燥させてレジンコート層(B‐2)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/B‐2/C‐1からなるガスバリア性積層体(実施例2a)を得た。得られたレジンコート層(B‐2)の厚さは0.1μmであった。さらに、このガスバリア性積層体を用いて、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルム(実施例2b)を作製した。
[実施例3]
実施例1において、レジンコート層(B‐1)の表面に塗工液(C‐1)の代わりに多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製2で得られた塗工液(C‐2)を塗工し、85℃で2分間乾燥させて層(C‐2)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/B‐1/C‐2からなるガスバリア性積層体(実施例3a)を得た。得られた多価金属イオン供給層(C‐2)の厚さは0.3μmであった。さらに、このガスバリア性積層体を用いて、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルム(実施例3b)を作製した。
[実施例4]
実施例1において、レジンコート層(B‐1)の表面に塗工液(C‐1)の代わりに多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製3で得られた塗工液(C‐3)を塗工し、85℃で2分間乾燥させて層(C‐3)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/B‐1/C‐3からなるガスバリア性積層体(実施例4a)を得た。得られた多価金属イオン供給層(C‐3)の厚さは0.3μmであった。さらに、このガスバリア性積層体を用いて、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルム(実施例4b)を作製した。
[実施例5]
実施例1において、アンカーコート層の表面に塗工液(A‐1)の代わりにメインコート層(A)形成用の塗工液調製2で得られた塗工液(A‐2)を塗工し、100℃で2分間乾燥させてメインコート層(A‐2)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐2/B‐1/C‐1からなるガスバリア性積層体(実施例5a)を得た。得られたメインコート層(A‐2)の厚さは0.3μmであった。さらに、このガスバリア性積層体を用いて、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルム(実施例5b)を作製した。
[実施例6]
実施例1と同一の塗工液を用いて、メインコート層(A)を形成する工程1と、レジンコート層(B)を形成する工程2と、多価金属イオン供給層(C)を形成する工程3とについて、工程3と工程2と工程1とを順次行う工程流れIIで行うこと以外は実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/C‐1/B‐1/A‐1からなるガスバリア性積層体(実施例6a)を得た。さらに、このガスバリア性積層体を用いて、実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルム(実施例6b)を作製した。
[比較例1]
実施例1において、メインコート層(A‐1)の表面に塗工液(B‐1)を塗工することなく、多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製1で得られた塗工液(C‐1)を塗工し、85℃で2分間乾燥させて層(C‐1)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/C‐1からなる積層体(比較例1a)を得た。さらに、この積層体を用いて、実施例1と同様にして積層フィルム(比較例1b)を作製した。
[比較例2]
実施例1において、メインコート層(A‐1)の表面に塗工液(B‐1)の代わりにレジンコート層(B)形成用の塗工液調製3で得られた塗工液(B‐3)を塗工し、70℃で2分間乾燥させて層(B‐3)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/B‐3/C‐1からなる積層体(比較例2a)を得た。得られた層(B‐3)の厚さは0.1μmであった。さらに、この積層体を用いて、実施例1と同様にして積層フィルム(比較例2b)を作製した。
[比較例3]
実施例1において、レジンコート層(B‐1)の表面に塗工液(C‐1)の代わりに多価金属イオン供給層(C)形成用の塗工液調製4で得られた塗工液(C‐4)を塗工し、85℃で2分間乾燥させて層(C‐4)を形成した以外は、実施例1と同様にして作製し、PET/Ac/A‐1/B‐1/C‐4からなる積層体(比較例3a)を得た。得られた層(C‐4)の厚さは0.3μmであった。さらに、この積層体を用いて、実施例1と同様にして積層フィルム(比較例3b)を作製した。
得られた実施例のガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルム並びに比較例の積層体及び積層フィルムについて、次の評価を行った。
<酸素透過度の測定1>
得られた実施例のガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルム並びに比較例の積層体及び積層フィルムについて、JIS K‐7126 B法(等圧法)、及びASTM D3985に記載された方法に準拠して、酸素透過率測定装置(Modern Control社製、OX‐TRAN2/20)を用いて、温度20℃、試料面積50cm、両側80%相対湿度(RH)の条件で、積層フィルムの酸素透過度(単位:cm(STP)/(m・day・MPa))を測定した。図1に実施例のガスバリア性積層体及び比較例の積層体の酸素透過度の推移を示し、図2に実施例のガスバリア性積層フィルム及び比較例の積層フィルムの酸素透過度の推移を示す。
図1及び図2からわかるように、実施例の方法によって作製したガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルムは、測定時間の経過にともなう酸素透過度の値の大きな変動がなく、いずれも酸素透過度の値が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下と小さかった。一方、比較例の方法によって作製した積層体及び積層フィルムは、高温高湿処理を施さずに酸素透過度を測定すると、測定環境(湿度)の影響を受け、測定時間の経過にともなって値が変動することが確認できた。
表1に、酸素透過度の値を示した(酸素透過度1)。ここで、表1において実施例及び比較例を比較するにあたり、比較例の積層体及び積層フィルムの酸素透過度の値は、図1及び図2に示した酸素透過度の最大値を採用して記載した。
図1、図2及び表1からわかるように、実施例1a〜6aのガスバリア性積層体は、いずれも高温高湿処理を施すことなく、温度20℃、相対湿度80%(RH)条件下で測定した酸素透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、高湿度条件下において高いガスバリア性を示した。さらに、ガスバリア性積層体にラミネート層を設けたガスバリア性積層フィルム(実施例1b〜6b)も、ガスバリア性積層体と同様に、高湿度条件下において高いガスバリア性を示した。
他方、比較例の積層体及び積層フィルムは、いずれも高温高湿処理なしでは、ガスバリア性を発現することがなく、相対湿度80%(RH)条件下で測定した酸素透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)をはるかに超えていた。比較例1aの積層体は、レジンコート層(B)を形成していないため、メインコート層(A)は緻密なイオン架橋構造を有していない。このため、測定直後の酸素透過度の値は高いが、測定条件下の湿度の影響(水分)によりイオン架橋反応が進行して、経時により酸素透過度の値が小さくなったものと考えられる。比較例2aの積層体は、レジンコート層(B)を形成するための塗工液(B‐3)が溶媒として酢酸エチルを使用しており、水を含まなかった。このため、多価金属イオン供給層(C)の形成過程において多価金属イオンがレジンコート層(B)を経てメインコート層(A)に到達することができなかった。よって、この積層体について前記条件下で測定を行ったところ酸素透過度の値が次第に上昇したが、これは測定条件下の湿度の影響(水分)により緻密なイオン架橋構造を有していないメインコート層(A)が膨潤したためと考えられる。比較例3aの積層体は、多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液(C‐4)が溶媒として酢酸エチルを使用しており、水を含まなかった。このため、多価金属イオン供給層(C)の形成過程においては多価金属イオンがレジンコート層(B)内を移動しない。よって、測定条件下の湿度の影響(水分)により多価金属イオン供給層(C)中の多価金属化合物から多価金属イオンが溶出し、これがレジンコート層(B)を介してメインコート層(A)に到達するには時間を要するため、バリア性が発現しにくいものと考えられる。さらに、積層体にラミネート層を設けた積層フィルム(比較例1b〜3b)の場合、多価金属イオンよりも水分がラミネート層を設けた側から先に到達するために、緻密なイオン架橋構造を有していないメインコート層(A)が膨潤し、その結果、酸素透過度の値が一時的に上昇する。レジンコート層(B)がない比較例1aはその後、測定条件下の湿度の影響(水分)によるイオン架橋によりバリア性が発現するが、レジンコート層(B)がある比較例2b及び3bはラミネート層の存在によりガスバリア層内に供給される水分の量が制限されるため多価金属イオンがメインコート層(A)に到達しにくく、したがって高いバリア性が得られなかったものと考えられる。
<酸素透過度の測定2>
得られた実施例のガスバリア性積層フィルム及び比較例の積層フィルムに、高温高湿処理としてボイル処理又はレトルト処理を施した。ボイル処理は、ボイル槽を用いて温度90℃にて30分間行った。レトルト処理は、レトルト処理機(日阪製作所社製「RCS‐60」:貯湯式)を用いて、温度120℃にて30分間行った。その後、前記<酸素透過度の測定1>と同様の条件にて酸素透過度を測定した。表1に酸素透過度の測定結果を示す(酸素透過度2)。ここで、比較例の積層フィルムの酸素透過度の値は、酸素透過度の測定1と同様に最大値である。なお、高温高湿処理後のサンプルは、実施例及び比較例ともに測定時間の経過にともなう酸素透過度の値の大きな変動はなかった。したがって図示していない。
表1からわかるように、実施例1b〜6bのガスバリア性積層フィルムは、いずれも高温高湿処理後の酸素透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、高湿度条件(相対湿度80%(RH))下において高いガスバリア性を示した。また、いずれも高温高湿処理を施していない状態よりも、酸素透過度の値が更に小さくなる(ガスバリア性が高まる)傾向にあった。これは、高温高湿度処理によって未反応であったポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と多価金属化合物とのイオン架橋反応が進行したためと考えられる。他方、比較例1b〜3bの積層フィルムは、いずれも高温高湿処理によって、ガスバリア性を発現し、相対湿度80%(RH)条件下で測定した酸素透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であった。
Figure 0005742226
次に、本発明に係るガスバリア性積層フィルムについて、熱成形適性の確認を行った。
[参考例1]
実施例1において、基材を厚さ20μmの未延伸ナイロンフィルム(CNy)(東レフィルム加工社製、「レイファン1401」)に変更した以外は、実施例1と同様にガスバリア性積層体(参考例1a)を得た。次いで、このガスバリア性積層体の未延伸ナイロンフィルム側及び多価金属イオン供給層(C‐1)側の両面にポリウレタン系接着剤(三井化学社製、主剤:タケラックA620、硬化剤:タケネート65)を介して、厚さ100μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をそれぞれドライラミネート法によって積層し、CPP/接着剤/熱成形用ガスバリア性積層体/接着剤/CPPという構成の熱成形用ガスバリア性積層フィルム(参考例1b)を得た。
<熱成形容器の作製>
こうして得られた熱成形用ガスバリア性積層フィルムを深絞り型高速自動真空包装機(大森機械工業社製、「FV‐603型」)を用いて、それぞれ直径φ90mm、深さ30mmに成形して熱成形容器を得た。
<酸素透過度の測定3>
得られた熱成形容器及びそれを高温高湿処理として、レトルト処理機(日阪製作所社製、「RCS‐60」:貯湯式)を用いて、温度120℃にて30分間のレトルト処理を施したものについて、酸素透過率測定装置(Modern Control社製、「OX‐TRAN2/20」)を用いて、容器外側の雰囲気を温度20℃、50%相対湿度(RH)、容器内側の雰囲気を温度20℃、80%相対湿度(RH)とした場合の酸素透過度を測定した。そして、得られた測定値を換算して、酸素濃度100%、表面積1mにおける酸素透過度(単位:cm(STP)/(m・day・MPa))の値を算出した。その結果、酸素透過度は、レトルト処理の有無に関わらず、いずれも500cm(STP)/(m・day・MPa)と高かった。
参考例1の試験結果からわかるように、本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、熱成形によってガスバリア性が低下した。これは、熱成形前のガスバリア性積層フィルム(参考例1b)は、ガスバリア層において、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と多価金属化合物の多価金属イオンとの間にイオン架橋反応が起こって高いガスバリア性を有していたが、熱成形で延伸したことによって緻密なイオン架橋構造が破壊されたため、酸素透過度が高い値を示し(ガスバリア性が低下し)、その後に高温高湿処理(レトルト処理)を施しても、酸素透過度が高い値を示したものと考えられる。これに対して、特許文献4に記載の積層体は、高温高湿処理前は、イオン架橋反応が抑制されているため、熱成形で延伸しても前述のような現象が起こらず、その後の高温高湿処理によって、始めてガスバリア性が発揮する熱成形用として適した包材である。以上より、本発明に係るガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルムは、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と多価金属イオンとの間で生成されたイオン架橋構造により高いバリア性を有しており、熱成形用ではなく、一般包材用として適していることが確認できた。
本発明に係るガスバリア性積層体及びガスバリア性積層フィルムは、高温高湿処理を施さなくても高いガスバリア性を発揮し、高湿度条件下においても高いガスバリア性を有するため、酸素などの影響を受けて劣化しやすい食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品などの精密金属部品の包装材料として適している。また、ボイル、レトルト殺菌などの高温高湿処理を必要とする物品の包装材料として適している。

Claims (7)

  1. 基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体であって、
    前記ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、
    前記メインコート層(A)と前記多価金属イオン供給層(C)とが前記レジンコート層(B)を介して積層されており、
    前記メインコート層(A)に含有されているポリカルボン酸系重合体が、前記多価金属イオン供給層(C)に由来する多価金属化合物とイオン架橋反応をしており、かつ、
    高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であることを特徴とするガスバリア性積層体。
  2. 前記レジンコート層(B)を形成するための塗工液及び前記多価金属イオン供給層(C)を形成するための塗工液が、いずれも溶媒又は分散媒として水を含有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体。
  3. 前記バインダ樹脂が、前記レジンコート層(B)が含有する樹脂と同一の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性積層体。
  4. 前記多価金属化合物が、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のガスバリア性積層体。
  5. 前記レジンコート層(B)は、ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のガスバリア性積層体。
  6. 基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を備えるガスバリア性積層体の少なくとも片面にラミネート層を設けたガスバリア性積層フィルムであって、
    前記ガスバリア層は、ポリカルボン酸系重合体を含有するメインコート層(A)と、レジンコート層(B)と、多価金属化合物、分散剤及びバインダ樹脂を含有する多価金属イオン供給層(C)とを有し、
    前記メインコート層(A)と前記多価金属イオン供給層(C)とが前記レジンコート層(B)を介して積層されており、
    前記メインコート層(A)に含有されているポリカルボン酸系重合体が、前記多価金属イオン供給層(C)に由来する多価金属化合物とイオン架橋反応をしており、かつ、
    高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、かつ、温度120℃の高圧水蒸気雰囲気中で30分間処理を施した後の同条件で測定した酸素ガス透過度が、10cm(STP)/(m・day・MPa)以下であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
  7. 基材の少なくとも片面又はアンカーコート層を設けた基材の該アンカーコート層の表面にガスバリア層を形成する工程を有するガスバリア性積層体の製造方法であって、
    前記ガスバリア層を形成する工程は、
    ポリカルボン酸系重合体を含有する塗工液を用いてメインコート層(A)を形成する工程1と、
    樹脂及び水を含有する塗工液を用いてレジンコート層(B)を形成する工程2と、
    多価金属化合物、分散剤、バインダ樹脂及び水を含有する塗工液を用いて多価金属イオン供給層(C)を形成する工程3とを含み、
    前記ガスバリア性積層体は、高温高湿処理としてボイル又はレトルト処理を行う前の状態にて温度20℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素ガス透過度が、10cm (STP)/(m ・day・MPa)以下であることを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法。
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