JP2023068474A - ガスバリア性積層体、包装体及び包装物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 レトルト処理及びボイル処理等の湿熱処理後において高い酸素バリア性を維持することができ、更には、内容物が硫黄を含有する場合においても、湿熱処理による硫黄の浸透に起因する酸素バリア性の低下が抑制されたガスバリア性積層体、及び、これを含む包装体並びに包装物品を提供する。【解決手段】 本発明のガスバリア性積層体10は、基材層1と、単層又は複数層からなる被覆層4とを備える。上記被覆層4はカルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とを含有し、上記多価金属含有粒子に含まれる多価金属元素の単位面積当たりの蛍光X線強度をI(kcps)とし、上記被覆層の全膜厚をT(μm)としたとき、I/T(kcps/μm)で表される単位厚さ当たりの蛍光X線強度が9kcps/μm以上である。【選択図】 図1
Description
本発明は、ガスバリア性積層体、包装体及び包装物品に関する。
食品、医薬品、化粧品、農薬、及び工業製品等の包装に用いられる包装材料に対しては、内容物の変質を防止することが求められる。例えば、食品包装材料に対しては、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、さらに、風味や鮮度を保持できる変質防止機能が求められる。このような内容物の変質は、包装材料を透過する酸素や水蒸気、あるいは、内容物と反応するような他のガスにより引き起こされる。そのため、酸素及び水蒸気等のガスを透過させない性質(ガスバリア性)を付与した包装材料が開発されている。
例えば、特許文献1には、カルボキシル基含有重合体と多価金属化合物粒子を含有するフィルムを備え、カルボキシル基含有重合体に含まれる-COO-基の少なくとも一部を多価金属イオンによって架橋することにより、ガスバリア性が付与されたガスバリア性多層フィルムが開示されている。このようなガスバリア性多層フィルムは、高湿度雰囲気下でもガスバリア性に優れているため、ボイルやレトルト等の湿熱処理を行う包装用途にも使用することができる。
食品等の内容物を包装体に充填してレトルト処理及びボイル処理等の湿熱処理を施す場合、内容物から発生する物質が包装材料に浸透し、ガスバリア性に悪影響を及ぼすことがある。一例を挙げると、包装体に充填された内容物が硫黄を含有する場合、湿熱処理により内容物から硫黄成分が発生する。この硫黄が包装材料に浸透し、特に酸素バリア性を低下させる問題がある。
本発明は、レトルト処理及びボイル処理等の湿熱処理後において高い酸素バリア性を維持することができ、更には、内容物が硫黄を含有する場合においても、湿熱処理による硫黄の浸透に起因する酸素バリア性の低下が抑制されたガスバリア性積層体、及び、これを含む包装体並びに包装物品を提供することを目的とする。
上述した酸素バリア性低下の問題は、レトルト処理等の湿熱処理時に内容物から発生する硫黄が、カルボキシ基含有重合体に結合している多価金属化合物の多価金属イオンと反応し、結合することにより、架橋構造が崩壊することが要因となっていることがわかっている。本発明の実施形態は、湿熱処理により内容物から発生した硫黄がカルボキシ基含有重合体に結合している多価金属化合物の多価金属イオンと結合することを阻止し、硫黄により架橋構造が破壊されることを抑制して高い酸素バリア性を維持するものである。
すなわち、本発明の第1側面によると、基材層と、単層又は複数層からなる被覆層とを備え、上記被覆層はカルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とを含有し、上記多価金属含有粒子に含まれる多価金属元素の単位面積当たりの蛍光X線強度をI(kcps)とし、上記被覆層の全膜厚をT(μm)としたとき、I/T(kcps/μm)で表される単位厚さ当たりの蛍光X線強度が9kcps/μm以上であるガスバリア性積層体が提供される。
本発明の第2側面によると、第1側面に係る積層体を含んだ包装体が提供される。
本発明の第3側面によると、第2側面に係る包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品が提供される。
本発明によれば、レトルト処理及びボイル処理等の湿熱処理後において高い酸素バリア性を維持することができ、更には、内容物が硫黄を含有する場合においても、湿熱処理による硫黄の浸透に起因する酸素バリア性の低下が抑制されたガスバリア性積層体、及び、これを含む包装体並びに包装物品が提供される。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。
なお、本開示において、「AAをBBの上に」という記載は、重力方向とは無関係に使用している。「AAをBBの上に」という記載によって特定される状態は、AAがBBと接触した状態を包含する。「AAをBBの上に」という記載は、AAとBBとの間に他の1以上の構成要素を介在させることを除外するものではない。
なお、本開示において、「AAをBBの上に」という記載は、重力方向とは無関係に使用している。「AAをBBの上に」という記載によって特定される状態は、AAがBBと接触した状態を包含する。「AAをBBの上に」という記載は、AAとBBとの間に他の1以上の構成要素を介在させることを除外するものではない。
<ガスバリア性積層体>
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示すガスバリア性積層体10は、基材層1と、被覆層4とを備えている。被覆層4は、単層であるか、又は図示しない複数層からなる積層単位であり、カルボキシ基含有重合体(a)と多価金属含有粒子(b)とを含有する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示すガスバリア性積層体10は、基材層1と、被覆層4とを備えている。被覆層4は、単層であるか、又は図示しない複数層からなる積層単位であり、カルボキシ基含有重合体(a)と多価金属含有粒子(b)とを含有する。
ガスバリア性積層体10において、被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)に含まれる多価金属元素の単位面積当たりの蛍光X線強度をI(kcps)とし、被覆層4の全膜厚をT(μm)としたとき、I/T(kcps/μm)で表される単位厚さ当たりの蛍光X線強度が9kcps/μm以上である。
被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)から生じる多価金属イオンは、カルボキシ基含有重合体(a)と反応する。この場合、多価金属イオンを介してカルボキシ基含有重合体(a)同士がイオン架橋した架橋構造が形成される。これにより、被覆層4の酸素バリア性が向上するため、ガスバリア性積層体10は優れた酸素バリア性を発揮できる。ここで、レトルト処理又はボイル処理等の湿熱処理により内容物から発生した硫黄が包装材料に浸透した場合、被覆層4の上記架橋構造を構成する多価金属イオンが硫黄イオンと反応する。この場合、従来のガスバリア性積層体においては、上記架橋構造が破壊されるので、酸素バリア性が低下してしまう問題があった。
これに対して、本実施形態に係るガスバリア性積層体10は、上記の通り、被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)に含まれる多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/Tが9kcps/μm以上である。この条件を満たす場合、被覆層4には、湿熱処理の際に多価金属イオンを介してカルボキシ基含有重合体(a)の架橋構造が形成され、且つ、この架橋構造に関与していない余剰量の多価金属イオンが存在する。
ここで余剰量の多価金属イオンとは、カルボキシ基含有重合体(a)と架橋構造を形成するために必要な量の多価金属イオンに対する余剰量の多価金属イオンを意味する。このため湿熱処理の際に包装材料であるガスバリア性積層体に内容物から発生した硫黄が浸透してきた場合、被覆層4中に存在する余剰の多価金属イオンが硫黄と化学反応する。その結果、硫黄が架橋構造を破壊することを抑制することができる。
多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)と余剰量の多価金属イオンの関係について説明する。被覆層4の全膜厚T(μm)が高くなるにつれ、被覆層4中に含有される多価金属含有粒子(b)の量が多くなり、多価金属元素由来の蛍光X線強度I(kcps)も高くなる。しかしながら、被覆層4の全膜厚T(μm)が高くなるとカルボキシ基含有重合体(a)の量も多くなる。このため硫黄と化学反応する余剰量の多価金属イオンが不足する場合がある。これに対し、被覆層4に含有される多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/Tが9kcps/μm以上である場合、硫黄と化学反応するのに十分な余剰量の多価金属イオンが存在し、これら余剰量の多価金属イオンが硫黄と化学反応することにより、硫黄が架橋構造を破壊することを抑制することができる。
このように本実施形態に係るガスバリア性積層体10は、内容物が硫黄を含有する場合においても、湿熱処理の際に積層体に浸透する硫黄が架橋構造を破壊することによる悪影響を抑制できる。したがって、本実施形態に係るガスバリア性積層体10を包装材料として用いることにより、包装体に収容される内容物が含硫アミノ酸などの硫黄を含む場合であっても、レトルト処理及びボイル処理等の湿熱処理後において高い酸素バリア性を維持することができる。
また、レトルト処理等の湿熱処理により内容物から発生する硫黄は、レトルト臭と言われる不快な臭いを伴うが、硫黄が被覆層4に存在する余剰の多価金属イオンと化学反応し、ガスバリア性積層体内に留められるため、レトルト臭が包装体内に充満することも抑制される。
本実施形態に係るガスバリア性積層体10が含んでいる各層について、以下に説明する。
<被覆層>
被覆層4は、以下に詳述するカルボキシ基含有重合体(a)及び多価金属含有粒子(b)を含有する。被覆層4は、更に、界面活性剤、ケイ素含有化合物等を含有していてよい。
<被覆層>
被覆層4は、以下に詳述するカルボキシ基含有重合体(a)及び多価金属含有粒子(b)を含有する。被覆層4は、更に、界面活性剤、ケイ素含有化合物等を含有していてよい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体10は、上述した通り、被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)由来の多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)が9kcps/μm以上である。この条件を満たす場合、被覆層4には、湿熱処理の際に多価金属イオンを介してカルボキシ基含有重合体(a)の架橋構造が形成され、且つ、この架橋構造に関与していない余剰量の多価金属イオンが存在する。そして、この余剰量の多価金属イオンが硫黄と化学反応することにより、硫黄が架橋構造を破壊することを抑制することができる。多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)は、より好ましくは11kcps/μm以上である。
一方、多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)が高くなるにつれ、膜強度が低下しレトルト処理等の湿熱処理に適さなくなる傾向がある。このため多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)は、22kcps/μm以下であることが好ましい。
なお、被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)が2種以上の場合、多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)は合計値を意味する。
なお、被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)が2種以上の場合、多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/T(kcps/μm)は合計値を意味する。
被覆層4は、単層であってもよいし、複数層からなる積層単位であってもよい。被覆層4の全膜厚T(μm)は、被覆層4が単層の場合は単層の膜厚を意味し、被覆層4が複数層からなる場合は全部の層の合計膜厚を意味する。
被覆層4が複数層からなる場合、カルボキシ基含有重合体(a)及び多価金属含有粒子(b)は同じ層に含有されていてもよいし、異なる層に含有されていてもよい。
被覆層4が複数層からなる場合の例として、被覆層4が、カルボキシ基含有重合体(a)を含有する第1被覆層と、多価金属含有粒子(b)を含有する第2被覆層とが隣接した積層単位を含んでいる形態が挙げられる。一例によると、基材層1側から第1被覆層、第2被覆層の順序で積層されることが好ましい。
この場合、第2被覆層に含まれる多価金属含有粒子(b)から生じる多価金属イオンの少なくとも一部は、湿熱処理中に第1被覆層へ拡散する。内容物が硫黄を含有する場合、湿熱処理の際に内容物から発生した硫黄の一部は、第2被覆層の多価金属含有粒子(b)と化学反応するが、残りの硫黄は第1被覆層まで到達することがある。本実施形態に係るガスバリア性積層体10は、多価金属元素の単位厚さ当たりの蛍光X線強度I/Tが9kcps/μm以上であるため、湿熱処理中に第1被覆層へ拡散した多価金属イオンのうち、必要量の多価金属イオンが架橋構造を形成し、余剰に存在する多価金属イオンが第1被覆層に到達した硫黄と化学反応し、硫黄が架橋構造を破壊することを抑制する。
第1被覆層は、多価金属含有粒子(b)を更に含有していてもよい。この場合、第1被覆層が含有する多価金属含有粒子(b)は、第2被覆層に含有される多価金属含有粒子(b)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
〔カルボキシ基含有重合体(a)〕
被覆層4に含有されるカルボキシ基含有重合体(a)は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体であり、以下において「ポリカルボン酸系重合体」と呼ぶことがある。カルボキシ基含有重合体(a)は、上述したように、被覆層4において後述する多価金属含有粒子(b)に由来する金属イオンとイオン架橋を形成しており、優れた酸素バリア性を発揮する。カルボキシ基含有重合体(a)としては、カルボキシ基含有不飽和単量体の単独重合体、2種以上のカルボキシ基含有不飽和単量体の共重合体、カルボキシ基含有不飽和単量体と他の重合性単量体との共重合体、及び分子内にカルボキシ基を含有する多糖類(「カルボキシ基含有多糖類」又は「酸性多糖類」ともいう)が代表的なものである。
被覆層4に含有されるカルボキシ基含有重合体(a)は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体であり、以下において「ポリカルボン酸系重合体」と呼ぶことがある。カルボキシ基含有重合体(a)は、上述したように、被覆層4において後述する多価金属含有粒子(b)に由来する金属イオンとイオン架橋を形成しており、優れた酸素バリア性を発揮する。カルボキシ基含有重合体(a)としては、カルボキシ基含有不飽和単量体の単独重合体、2種以上のカルボキシ基含有不飽和単量体の共重合体、カルボキシ基含有不飽和単量体と他の重合性単量体との共重合体、及び分子内にカルボキシ基を含有する多糖類(「カルボキシ基含有多糖類」又は「酸性多糖類」ともいう)が代表的なものである。
カルボキシ基には、遊離のカルボキシ基のみならず、酸無水物基(具体的には、ジカルボン酸無水物基)も含まれる。酸無水物基は、部分的に開環してカルボキシ基となっていてもよい。カルボキシ基の一部は、アルカリで中和されていてもよい。この場合、中和度は、20%以下であることが好ましい。
ここで、「中和度」は、以下の方法によって得られる値である。即ち、カルボキシ基含有重合体(a)に対してアルカリ(ft)を添加することでカルボキシ基を部分中和できる。この時、カルボキシ基含有重合体(a)が含んでいるカルボキシ基のモル数(at)に対するアルカリ(f)のモル数(ft)の比が中和度である。
また、ポリオレフィンなどのカルボキシ基を含有していない重合体にカルボキシ基含有不飽和単量体をグラフト重合してなるグラフト重合体も、カルボキシ基含有重合体(a)として使用することができる。アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基)のような加水分解性のエステル基を有する重合体を加水分解して、カルボキシ基に変換した重合体を使用することもできる。
カルボキシ基含有不飽和単量体としては、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸が好ましい。従って、カルボキシ基含有重合体(a)には、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種以上のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、及びα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他の重合性単量体との共重合体が含まれる。他の重合性単量体としては、エチレン性不飽和単量体が代表的なものである。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸及び無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物;並びに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸がより好ましい。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他の重合性単量体、特にエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどのα-オレフィン;酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類;アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルなどのアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどの塩素含有ビニル単量体;フッ化ビニル及びフッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニル単量体;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;スチレン及びα-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;並びに、イタコン酸アルキルエステル類を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、カルボキシ基含有重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体である場合は、この共重合体をケン化して飽和カルボン酸ビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換してなる共重合体も使用することができる。
カルボキシ基含有多糖類としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、及びペクチンなどの分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類を挙げることができる。これらの酸性多糖類は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、酸性多糖類を、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体と組み合わせて使用することもできる。
カルボキシ基含有重合体(a)が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、得られるフィルムのガスバリア性、耐熱水性、及び耐水蒸気性の観点から、その共重合体において、それら単量体の合計モル数に占めるα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体のモル数の割合は、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
カルボキシ基含有重合体(a)は、ガスバリア性、耐湿性、耐水性、耐熱水性、及び耐水蒸気性に優れ、高湿条件下でのガスバリア性にも優れたフィルムが得られやすい点で、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみの重合によって得られる単独重合体又は共重合体であることが好ましい。カルボキシ基含有重合体(a)がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる(共)重合体の場合、その好ましい具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合によって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物である。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体及び共重合体がより好ましい。
カルボキシ基含有重合体(a)としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びこれらの2種以上の混合物が特に好ましい。酸性多糖類としては、アルギン酸が好ましい。これらの中でも、入手が比較的容易で、諸物性に優れたフィルムが得られやすい点で、ポリアクリル酸が特に好ましい。
カルボキシ基含有重合体(a)の数平均分子量は、特に制限されないが、フィルム形成性及びフィルム物性の観点から、数平均分子量が2,000乃至10,000,000の範囲内にあることが好ましく、5,000乃至1,000,000の範囲内にあることがより好ましく、10,000~500,000の範囲内にあることが更に好ましい。
ここで、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(Gel permeation chromatography;GPC)による測定によって得られる値である。GPC測定では、一般に、標準ポリスチレン換算で重合体の数平均分子量を測定する。
〔多価金属含有粒子(b)〕
被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)は、金属イオンの価数が2以上の多価金属を1種以上含んだ粒子であることが好ましい。多価金属含有粒子(b)は、金属イオンの価数が2以上の多価金属からなる粒子であってもよく、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物からなる粒子であってもよく、それらの混合物であってもよい。
被覆層4に含有される多価金属含有粒子(b)は、金属イオンの価数が2以上の多価金属を1種以上含んだ粒子であることが好ましい。多価金属含有粒子(b)は、金属イオンの価数が2以上の多価金属からなる粒子であってもよく、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物からなる粒子であってもよく、それらの混合物であってもよい。
多価金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、及びカルシウムなどの短周期型周期表2A族の金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛などの遷移金属;並びにアルミニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。
多価金属は、2価の金属であることが好ましい。また、多価金属は、化合物を形成していることが好ましい。
多価金属の化合物の具体例としては、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、及び無機酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。無機酸塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩を挙げることができるが、これらに限定されない。多価金属のアルキルアルコキシドも多価金属化合物として使用することができる。これらの多価金属化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
多価金属化合物の中でも、ガスバリア性積層体10のガスバリア性の観点から、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの化合物が好ましく、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、コバルト、及びニッケルなどの2価金属の化合物がより好ましい。
好ましい2価金属化合物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化ニッケル、及び酸化コバルトなどの酸化物;炭酸カルシウムなどの炭酸塩;乳酸カルシウム、乳酸亜鉛、及びアクリル酸カルシウムなどの有機酸塩;並びにマグネシウムメトキシドなどのアルコキシドを挙げることができるが、これらに限定されない。一例によると、被覆層4は、亜鉛化合物及びカルシウム化合物の少なくとも一方を含有することが好ましい。
多価金属又は多価金属化合物は、粒子として用いられる。多価金属含有粒子(b)としては、被覆層4の形成に用いられる後述するコーティング液(以下において、「被覆層形成用コーティング液」又は単に「コーティング液」という。)の分散安定性、及び、ガスバリア性積層体10のガスバリア性の観点から、コーティング液中の平均粒子径として、10nm乃至10μm(又は10,000nm)の範囲内にあるものが好適に用いられる。多価金属含有粒子(b)は、コーティング液中の平均粒子径として、12nm乃至1μm(又は1,000nm)の範囲内にあることがより好ましく、15nm乃至500nmの範囲内にあることが更に好ましく、15nm乃至50nmの範囲内にあることが特に好ましい。
多価金属含有粒子(b)の平均粒子径が大きすぎると、被覆層4の膜厚の均一性、表面の平坦性、カルボキシ基含有重合体(a)とのイオン架橋反応性などが不十分となり易い。多価金属含有粒子(b)の平均粒子径が小さすぎると、カルボキシ基含有重合体(a)とのイオン架橋反応が早期に進行するおそれがある。また、多価金属含有粒子(b)の平均粒子径が小さすぎると、コーティング液中に均一分散させることが困難となる場合がある。
多価金属含有粒子(b)の平均粒子径は、試料が乾燥した固体である場合には、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて計測と計数とを行うことにより測定することができる。コーティング液中の多価金属含有粒子(b)の平均粒子径は、光散乱法により測定することができる〔参考文献:「微粒子工学体系」第I巻、第362~365頁、フジテクノシステム(2001)〕。
コーティング液中における多価金属含有粒子は、一次粒子、二次粒子、又はこれらの混合物として存在するが、多くの場合、平均粒子径からみて二次粒子として存在するものと推定される。
〔界面活性剤(c)〕
被覆層4は、多価金属含有粒子(b)の分散性を高めるため、界面活性剤(c)を含有することが好ましい。界面活性剤とは、分子内に親水性基と親油性基の両方を持つ化合物である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、及び両性のイオン性界面活性剤並びに非イオン性界面活性剤がある。被覆層4では、何れの界面活性剤を使用してもよい。
被覆層4は、多価金属含有粒子(b)の分散性を高めるため、界面活性剤(c)を含有することが好ましい。界面活性剤とは、分子内に親水性基と親油性基の両方を持つ化合物である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、及び両性のイオン性界面活性剤並びに非イオン性界面活性剤がある。被覆層4では、何れの界面活性剤を使用してもよい。
アニオン系界面活性剤には、例えば、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、及びリン酸エステル型がある。カルボン酸型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、及びN-アシルグルタミン酸塩がある。スルホン酸型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びN-メチル-N-アシルタウリン酸塩が挙げられる。硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び油脂硫酸エステル塩が挙げられる。リン酸エステル型のアニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルリン酸塩型、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩型及び第4級アンモニウム塩型がある。アルキルアミン塩型のカチオン系界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、及びトリアルキルアミン塩が挙げられる。第四級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤としては、例えば、ハロゲン化(塩化、臭化又はヨウ化)アルキルトリメチルアンモニウム塩及び塩化アルキルベンザルコニウムが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、2-アルキルイミダゾリンの誘導体型、グリシン型、及びアミンオキシド型がある。カルボキシベタイン型の両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン及び脂肪酸アミドプロピルベタインが挙げられる。2-アルキルイミダゾリンの誘導体型の両性界面活性剤としては、例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。グリシン型の両性界面活性剤としては、例えば、アルキル又はジアルキルジエチレントリアミノ酢酸が挙げられる。アミノオキシド型の両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミンオキシドが挙げられる。
非イオン性の界面活性剤としては、例えば、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、及びアルカノールアミド型がある。エステル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びしょ糖脂肪酸エステルが挙げられる。エーテル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。エステルエーテル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ポリエチレングリコール及び脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられる。アルカノールアミド型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。
スチレン-アクリル酸共重合体などのポリマー骨格を有する界面活性剤も使用することができる。
これらの界面活性剤の中でも、リン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤、及びスチレン-アクリル酸共重合体などのポリマー骨格を有する界面活性剤などが好ましい。
〔ケイ素含有化合物(d)〕
被覆層4は、剥離強度を高めるため、ケイ素含有化合物(d)を含有することが好ましい。ケイ素含有化合物(d)は、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤、これらの加水分解物、及びこれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
Si(OR1)3Z1 …(1)
Si(R2)(OR3)2Z2 …(2)
一般式(1)において、R1は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数が1乃至6のアルキル基であり、Z1はエポキシ基又はアミノ基を含有する有機基である。そして、一般式(2)において、R2はメチル基であり、R3は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数が1乃至6のアルキル基であり、Z2はエポキシ基又はアミノ基を含有する有機基である。
被覆層4は、剥離強度を高めるため、ケイ素含有化合物(d)を含有することが好ましい。ケイ素含有化合物(d)は、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤、これらの加水分解物、及びこれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
Si(OR1)3Z1 …(1)
Si(R2)(OR3)2Z2 …(2)
一般式(1)において、R1は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数が1乃至6のアルキル基であり、Z1はエポキシ基又はアミノ基を含有する有機基である。そして、一般式(2)において、R2はメチル基であり、R3は、同一であっても異なっていてもよい、炭素数が1乃至6のアルキル基であり、Z2はエポキシ基又はアミノ基を含有する有機基である。
シランカップリング剤は、加水分解を容易に生じ、また、酸又はアルカリ存在下では縮合反応を容易に生じる。そのため、被覆層4において、ケイ素含有化合物(d)は、一般式(1)又は(2)で表されるシランカップリング剤の形態でのみ、その加水分解物の形態でのみ、又はその縮合物の形態でのみで存在することは稀である。即ち、被覆層4において、ケイ素含有化合物(d)は、通常、一般式(1)で表されるシランカップリング剤及び一般式(2)で表されるシランカップリング剤の少なくとも一方と、その加水分解物と、その縮合物との混合物として混在している。
一般式(1)及び(2)中のR1及びR3の各々は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基であればよく、メチル基又はエチル基であることが好ましい。Z1及びZ2は、例えば、グリシジルオキシ基を有する有機基、アミノアルキル基であってよい。
一般式(1)又は(2)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン及びアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。シランカップリング剤としては、一種を用いても、二種以上を用いてもよい。
一般式(1)又は(2)で表されるシランカップリング剤の加水分解物は、部分加水分解物であってもよく、完全加水分解物であってもよく、それらの混合物であってもよい。
被覆層4がケイ素含有化合物(d)の少なくとも一部として含み得る縮合物は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の加水分解縮合物、一般式(2)で表されるシランカップリング剤の加水分解縮合物、及び、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の加水分解物と一般式(2)で表されるシランカップリング剤の加水分解物との縮合物の2以上である。これら加水分解縮合物は、以下の反応によって生じる。即ち、先ず、シランカップリング剤を加水分解させる。これにより、シランカップリング剤は、その分子が含んでいるアルコキシ基の1以上が水酸基によって置換されて、加水分解物となる。続いて、これら加水分解物を縮合させることによって、ケイ素原子(Si)が酸素を介して結合した化合物が形成される。この縮合が繰り返されることにより、加水分解縮合物が得られる。
〔組成〕
被覆層4の組成について以下に説明する。なお、被覆層4が複数層からなる積層単位である場合、ここでいう被覆層4の組成は、積層単位としての組成を意味する。
被覆層4の組成について以下に説明する。なお、被覆層4が複数層からなる積層単位である場合、ここでいう被覆層4の組成は、積層単位としての組成を意味する。
被覆層4は、カルボキシ基含有重合体(a)と多価金属含有粒子(b)を、以下の配合比で含有することが好ましい。
本発明の実施形態において、カルボキシ基含有重合体(a)が含んでいるカルボキシ基のモル数(at)に対する、多価金属含有粒子(b)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(bt)の比(bt/at)(以下、当量比ともいう)は、0.4以上であることが好ましい。この比は、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上である。この比の上限は、通常は10.0以下であり、より好ましくは2.0以下である。この比を小さくしすぎると、ガスバリア性積層体10のガスバリア性、耐熱水性、及び耐水蒸気性などの諸特性が低下する傾向がみられる。
本発明の実施形態において、カルボキシ基含有重合体(a)が含んでいるカルボキシ基のモル数(at)に対する、多価金属含有粒子(b)が含んでいる多価金属のモル数と価数との積(bt)の比(bt/at)(以下、当量比ともいう)は、0.4以上であることが好ましい。この比は、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上である。この比の上限は、通常は10.0以下であり、より好ましくは2.0以下である。この比を小さくしすぎると、ガスバリア性積層体10のガスバリア性、耐熱水性、及び耐水蒸気性などの諸特性が低下する傾向がみられる。
上記の当量比は、例えば、以下のようにして求めることができる。カルボキシ基含有重合体(a)がポリアクリル酸であり、多価金属化合物粒子(b)が酸化マグネシウムである場合を例に挙げて説明する。
ポリアクリル酸は、単量体単位の分子量が72であり、単量体1分子当たり1個のカルボキシ基を有する。それ故、ポリアクリル酸100g中のカルボキシ基の量は、1.39モルである。ポリアクリル酸100gを含んだコーティング液における上記の当量比が1.0であるということは、この被覆層4には、1.39モルのカルボキシ基を中和する量の酸化マグネシウムが含まれていることを意味する。従って、ポリアクリル酸100gを含んだ被覆層4における上記の当量比を0.6とするには、この被覆層4に、0.834モルのカルボキシ基を中和する量の酸化マグネシウムを配合すればよい。ここで、マグネシウムの価数は2価であり、酸化マグネシウムの分子量は40である。従って、ポリアクリル酸100gを含んだ被覆層4における上記の当量比を0.6とするには、この被覆層4に、16.68g(0.417モル)の酸化マグネシウムを配合すればよい。
界面活性剤(c)は、コーティング液中に多価金属含有粒子が安定して分散するに足る量で用いられる。したがって、その配合量を、被覆層形成用コーティング液中の濃度として説明すると、コーティング液中、通常は0.0001乃至70質量%、好ましくは0.001乃至60質量%、より好ましくは0.1乃至50質量%の範囲内とする。
界面活性剤(c)を添加しないと、コーティング液中で多価金属含有粒子(b)をそれらの平均粒子径が十分に小さくなるように分散させることが困難になる。その結果、多価金属含有粒子(b)が均一に分散したコーティング液を得ることが難しくなる。その場合、無機蒸着層3上にコーティング液を塗布、乾燥して得られる被覆層4において、均一な膜厚を有する被覆層4を得ることが難しくなる。
被覆層4は、ガスバリア性積層体10における高度のガスバリア性と透明性を両立させる観点から、ケイ素含有化合物(d)を、カルボキシ基含有重合体(a)に含まれるカルボキシ基のモル数(at)に対するケイ素含有化合物(d)のモル数(dt)のモル比(dt)/(at)が0.15%以上6.10%以下となる量において含有することが好ましい。ここで、モル比(dt)/(at)における(dt)は、ケイ素含有化合物(d)をシランカップリング剤に換算したモル数である。
ケイ素含有化合物(d)の添加量が少なすぎ、上記モル比(dt)/(at)が0.15%より低くなると、ガスバリア性積層体10の剥離強度が低くなる傾向がみられる。そのため、層間剥離を防止するための慎重な取り扱いが必要となり、生産性の低下にもつながる。
カルボキシ基含有重合体(a)に含まれるカルボキシ基のモル数(at)に対するケイ素含有化合物(d)のモル数(dt)のモル比(dt)/(at)は、上記観点から、0.3%以上であることが好ましく、0.46%以上であることがより好ましく、0.61%以上であることが特に好ましい。
一方、ケイ素含有化合物(d)の添加量が多すぎ、上記モル比(dt)/(at)が6.10%より高くなると、ガスバリア性積層体10における透明性が低下する傾向がみられる。また、ケイ素含有化合物(d)はガスバリア性を持たない。そのため、上記モル比(dt)/(at)が6.10%より高くなると、積層体の透明性が低下するだけでなく、ガスバリア性も低下する傾向がみられる。
カルボキシ基含有重合体(a)に含まれるカルボキシ基のモル数(at)に対するケイ素含有化合物(d)のモル数(dt)のモル比(dt)/(at)は、上記観点から、4.57%以下であることが好ましく、3.66%以下であることがより好ましく、2.13%以下であることが特に好ましい。
被覆層4の膜厚は、透明性とガスバリア性の両立の観点から、0.23μm以上0.6μm以下であることが好ましい。ここで被覆層4の膜厚は、具体的には、後述する被覆層の膜厚の測定方法により測定される膜厚である。また、被覆層4が複数層からなる場合、ここでいう被覆層4の全膜厚T(μm)は、合計膜厚を意味する。被覆層4の膜厚は、0.25μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上0.45μm以下であることが更に好ましい。
<基材>
本実施形態に係るガスバリア性積層体10が備える基材層1に特に制限はなく、様々な種類のものが使用できる。基材層1を構成する材質は、特に限定されず、様々な種類のものが使用でき、例えばプラスチック又は紙が挙げられる。
本実施形態に係るガスバリア性積層体10が備える基材層1に特に制限はなく、様々な種類のものが使用できる。基材層1を構成する材質は、特に限定されず、様々な種類のものが使用でき、例えばプラスチック又は紙が挙げられる。
基材層1は、単一の材料からなる単層であってもよく、複数の材料からなる多層であってもよい。多層の基材の例としては、プラスチックから構成されるフィルムが紙にラミネートされたものが挙げられる。
基材層1を構成する材質としては、上記の中でも、様々な形状に成形でき、ガスバリア性を付与することで更に用途が広がることから、プラスチックが好ましい。
プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12、メタキシリレンアジパミド、及びこれらの共重合体等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、及びスチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリカーボネート;ポリアリレート;再生セルロース;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルケトン;並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。
ガスバリア性積層体が食品用包装材料に用いられる場合、基材層1としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン-6又はナイロン-66からなるものが好ましい。
基材層1を構成するプラスチックとして、1種を単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。
プラスチックには、添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、用途に応じて、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、及び滑剤等の公知の添加剤から適宜選択できる。添加剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
基材層1の形態は、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、カップ、トレー、チューブ、及びボトルが挙げられる。これらの中でも、フィルムが好ましい。
基材層1がフィルムである場合、このフィルムは、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。
フィルムの厚さに特に制限はないが、得られるガスバリア性積層体の機械的強度や加工適性の観点で、1乃至200μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至100μmの範囲内にあることがより好ましい。
基材層1の表面には、コーティング液を、基材によって弾かれることなく塗布できるようにするために、プラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理、火炎処理、又は紫外線(UV)若しくは電子線によるラジカル活性化処理等が施されていてもよい。処理方法は、基材の種類によって適宜選択される。
〔他の層〕
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、必要に応じて、基材層1及び被覆層4以外の他の1以上の層を更に備えていてもよい。
<無機蒸着層>
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、無機酸化物を含む蒸着層(以下、「無機蒸着層」という。)を更に備えていてよい。
図2は、本発明の他の実施形態に係るガスバリア性積層体を概略的に示す断面図である。図2に示すガスバリア性積層体20は、基材層1と無機蒸着層3と被覆層4とをこの順序で備える。ガスバリア性積層体20が無機蒸着層3を備えることにより、ガスバリア性を更に高めることができ、透明性と高度のガスバリア性の両立が可能となる。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、必要に応じて、基材層1及び被覆層4以外の他の1以上の層を更に備えていてもよい。
<無機蒸着層>
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、無機酸化物を含む蒸着層(以下、「無機蒸着層」という。)を更に備えていてよい。
図2は、本発明の他の実施形態に係るガスバリア性積層体を概略的に示す断面図である。図2に示すガスバリア性積層体20は、基材層1と無機蒸着層3と被覆層4とをこの順序で備える。ガスバリア性積層体20が無機蒸着層3を備えることにより、ガスバリア性を更に高めることができ、透明性と高度のガスバリア性の両立が可能となる。
無機蒸着層3は、無機酸化物を含む。無機酸化物としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。これらの中でも、透明性とガスバリア性の両立の観点から、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム又はそれらのいずれか2種以上の混合物が好ましい。
無機蒸着層3の厚さは、例えば、0.005μm乃至0.1μmの範囲であってよく、0.01μm乃至0.05μmの範囲であってよい。無機蒸着層3の厚さが0.005μm以上であることは、均一な薄膜形成の観点から好ましい。ガスバリア材としての薄膜が均一であると、ガスバリア材に求められる機能を充分に果たすことができる。無機蒸着層3の厚さが0.1μm以下であることは、薄膜のフレキシビリティの観点から好ましい。ガスバリア材においてフレキシビリティが悪いと、折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により亀裂を生じる恐れがある。
<アンカーコート層>
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、層間の密着性を高めること、あるいは、被覆層形成用コーティング液を無機蒸着層3に弾かれずに塗れるようにすることを目的として、基材層1と無機蒸着層3との間、あるいは、無機蒸着層3と被覆層4との間に、アンカーコート層を更に備えていてもよい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、層間の密着性を高めること、あるいは、被覆層形成用コーティング液を無機蒸着層3に弾かれずに塗れるようにすることを目的として、基材層1と無機蒸着層3との間、あるいは、無機蒸着層3と被覆層4との間に、アンカーコート層を更に備えていてもよい。
図3は、本発明の他の実施形態に係るガスバリア性積層体を概略的に示す断面図である。図3に示すガスバリア性積層体30は、基材層1とアンカーコート層2と無機蒸着層3と被覆層4とをこの順序で備える。
アンカーコート層2は、公知のアンカーコート液を用いて常法により形成することができる。アンカーコート液としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、及びフッ素樹脂等の樹脂を含むものが挙げられる。
アンカーコート液は、樹脂に加えて、密着性や耐熱水性を高める目的で、イソシアネート化合物を更に含んでもよい。イソシアネート化合物は、分子中に1以上のイソシアネート基を有するものであればよく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びトリレンジイソシアネートが挙げられる。
アンカーコート液は、樹脂やイソシアネート化合物を溶解又は分散させるための液体媒体を更に含有してもよい。
アンカーコート液は、樹脂やイソシアネート化合物を溶解又は分散させるための液体媒体を更に含有してもよい。
アンカーコート層2の厚さは特に限定されない。アンカーコート層2の厚さは、例えば、0.01~2μmの範囲内であってよく、0.05~1μmの範囲内であってよい。膜厚が0.01μm未満になると非常に薄いため、アンカーコート層としての性能が充分に発揮されないおそれがある。一方、膜厚が2μm以下であることは、フレキシビリティの観点から好ましい。フレキシビリティが低下すると、外的要因によりアンカーコート層に亀裂を生じるおそれがある。
また、本実施形態に係るガスバリア性積層体は、ガスバリア性コート層として、上述した被覆層4のみを具備するものであってもよいが、被覆層4に加えて他の1以上の層を更に含んでいてもよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及びアルミニウム等の無機化合物からなる層が、基材の表面に、スパッタリング法又はイオンプレーディング法等により形成されていてもよい。
また、本実施形態に係るガスバリア性積層体は、必要に応じて、接着剤を介してラミネートされた他の層を更に備えていてもよく、接着性樹脂を押し出しラミネートしてなる他の層を更に備えていてもよい。
ラミネートされる他の層は、強度付与、シール性付与、シール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与、及び防湿性付与等の目的に合わせて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、基材について上述したプラスチックと同様の材質のものを挙げることができる。それ以外にも、紙やアルミ箔等を用いてもよい。
ラミネートされる他の層の厚みは、1乃至1000μmの範囲内にあることが好ましく、5乃至500μmの範囲内にあることがより好ましく、5乃至200μmの範囲内にあることが更に好ましく、5乃至150μmの範囲内にあることが特に好ましい。
ラミネートされる他の層は1種でも2種以上でもよい。
ラミネートされる他の層は1種でも2種以上でもよい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体は、必要に応じて、印刷層を更に備えていてもよい。印刷層は、基材上に設けられたコート層上に形成されてもよく、コート層が設けられていない基材の表面上に形成されてもよい。また、他の層がラミネートされる場合は、ラミネートされる他の層の上に形成されてもよい。
〔ガスバリア性積層体の製造方法〕
本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法の一例として、図3に示すガスバリア性積層体30の製造方法を以下に説明する。ここに説明する製造方法において、被覆層4は単層からなる。
本実施形態に係るガスバリア性積層体の製造方法の一例として、図3に示すガスバリア性積層体30の製造方法を以下に説明する。ここに説明する製造方法において、被覆層4は単層からなる。
ガスバリア性積層体30の製造方法において、アンカーコート層2は、基材層1上に形成される。アンカーコート層2は、上述したアンカーコート液を基材層1上に塗工し、形成された塗膜を乾燥することにより形成することができる。アンカーコート液の塗工方法は特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて実施できる。形成された塗膜を乾燥することで、溶媒の除去と硬化が進み、アンカーコート層2が形成される。
ガスバリア性積層体30の製造方法において、無機蒸着層3は、アンカーコート層2上に形成される。無機蒸着層3の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(Chemical vapor deposition;CVD)など種々の方法が知られており、いずれの方法を用いてもよいが、真空蒸着法により形成することが一般的である。
真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が挙げられ、いずれを用いてもよい。
真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が挙げられ、いずれを用いてもよい。
また、無機蒸着層3のアンカーコート層2への密着性及び無機蒸着層3の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。
また、無機蒸着層3の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行ってもよい。
また、無機蒸着層3の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行ってもよい。
ガスバリア性積層体30の製造方法において、被覆層4は、無機蒸着層3上に形成される。被覆層4は、以下に説明する方法により調製される被覆層形成用コーティング液を無機蒸着層3上に塗工し、形成された塗膜を乾燥することにより形成することができる。
・被覆層形成用コーティング液の調製方法
被覆層形成用コーティング液では、溶媒又は分散媒として有機溶媒(e)を使用する。すなわち、このコーティング液は、カルボキシ基含有重合体(a)、多価金属含有粒子(b)、及び有機溶媒(e)を含有し、多価金属含有粒子(b)が分散している分散液である。被覆層形成用コーティング液は、一形態において、更に界面活性剤(c)及び/又はケイ素含有化合物(d)を含有していることが好ましい。以下、被覆層形成用コーティングが任意成分である界面活性剤(c)及びケイ素含有化合物(d)を含有する場合の調製方法について説明する。
被覆層形成用コーティング液では、溶媒又は分散媒として有機溶媒(e)を使用する。すなわち、このコーティング液は、カルボキシ基含有重合体(a)、多価金属含有粒子(b)、及び有機溶媒(e)を含有し、多価金属含有粒子(b)が分散している分散液である。被覆層形成用コーティング液は、一形態において、更に界面活性剤(c)及び/又はケイ素含有化合物(d)を含有していることが好ましい。以下、被覆層形成用コーティングが任意成分である界面活性剤(c)及びケイ素含有化合物(d)を含有する場合の調製方法について説明する。
有機溶媒(e)は、カルボキシ基含有重合体(a)が均一に溶解し且つ多価金属含有粒子が均一に分散するに足る量で用いられる。従って、有機溶媒としては、カルボキシ基含有重合体は溶解するが、多価金属化合物を実質的に溶解せず、それを粒子の形状で分散させることができるものが用いられる。
また、有機溶媒(e)としては、一般に、カルボキシ基含有重合体(a)を溶解する極性有機溶媒が用いられるが、極性有機溶媒とともに、極性基(ヘテロ原子又はヘテロ原子を有する原子団)をもたない有機溶媒を併用してもよい。
好ましく使用できる有機溶媒(e)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、及びn-ブタノールなどのアルコール類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、並びにγ-ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を挙げることができる。
有機溶媒(e)として、上記の極性有機溶媒の他に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタンなどの炭化水素類;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類;ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸メチルなどのエステル類;並びにジエチルエーテルなどのエーテル類を適宜用いることができる。極性基を持たないベンゼンなどの炭化水素類は、一般に、極性有機溶媒と併用する。
上記のコーティング液は、溶媒又は分散媒として、有機溶媒(e)のみを含んでいてもよいが、水を更に含んでもよい。水を含有させることにより、カルボキシ基含有重合体(a)の溶解性を向上させ、コーティング液の塗工性や作業性を改善することができる。このコーティング液の含水率は、質量分率で、100ppm以上であってもよく、1,000ppm以上であってもよく、1,500ppm以上であってもよく、2,000ppm以上であってもよい。
このコーティング液の含水率は、質量分率で、好ましくは50,000ppm以下、より好ましくは10,000ppm以下、更に好ましくは5,000ppm以下である。
被覆層形成用コーティング液を調製するには、一方で、カルボキシ基含有重合体(a)を有機溶媒(e)に均一に溶解させた後に、これにケイ素含有化合物(d)を添加し、カルボキシ基含有重合体溶液を調製する。
そして、他方で、多価金属含有粒子(b)、界面活性剤(c)、有機溶媒(e)を混合し、必要に応じて分散処理を施すことで分散液を調製する。分散処理は、多価金属含有粒子(b)の平均粒子径が所定の値となるように行われる。分散処理前の混合液中の多価金属含有粒子(b)の平均粒子径が10μm以下である場合は、分散処理は行わなくてもよいが、その場合でも、分散処理を行うことが好ましい。分散処理を行うことで多価金属含有粒子(b)の凝集が解け、コーティング液が安定化すると共に、コーティング液を塗工して得られるガスバリア性積層体の透明性が高まる。更には、コーティング液を塗工し、塗膜を乾燥させたときに、カルボキシ基含有重合体(a)と多価金属含有粒子(b)に由来する多価金属イオンとの架橋形成が進み易くなり、良好なガスバリア性を有するガスバリア性積層体が得られ易い。
分散処理の方法としては、高速撹拌機、ホモジナイザー、ボールミル、又はビーズミルを用いる方法が挙げられる。特に、ボールミル又はビーズミルを用いて分散を行うと、高い効率で分散させることができ、それ故、分散状態が安定なコーティング液を比較的短時間で得ることができる。この場合、ボール又はビーズの径は小さいものがよく、0.1乃至1mmであることが好ましい。
以上のようにして調製したカルボキシ基含有重合体溶液と多価金属含有粒子(b)の分散液とを混合することにより、コーティング液を作製することができる。なお、上述した調製方法では、ケイ素含有化合物(d)を予めカルボキシル基含有重合体溶液に添加したが、カルボキシル基含有重合体用得液にケイ素含有化合物(d)を添加せず、例えば、カルボキシ基含有重合体溶液と多価金属含有粒子(b)の分散液とを混合する際にケイ素含有化合物(d)を混合してもよい。
上記のコーティング液は、上記有機溶媒(e)以外の成分の合計濃度が、好ましくは0.1乃至60質量%、より好ましくは0.5乃至25質量%、特に好ましくは1乃至20質量%の範囲内にあることが、所望の膜厚の塗膜及び被覆層を高い作業性で得る上で好ましい。
上記のコーティング液には、必要に応じて、他の重合体、増粘剤、安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、柔軟剤、無機層状化合物(例えば、モンモリロナイト)、及び着色剤(染料、顔料)などの各種添加剤を含有させることができる。
コーティング液の塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターを用いて塗工する方法が挙げられる。
塗膜の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、及び、コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、又は赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。
乾燥条件は、乾燥方法等により適宜選択することできる。例えば、オーブン中で乾燥させる方法においては、乾燥温度は、40乃至150℃の範囲内にあることが好ましく、45乃至150℃の範囲内にあることがより好ましく、50乃至140℃の範囲内にあることが特に好ましい。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、0.5秒乃至~10分の範囲内にあることが好ましく、1秒乃至5分の範囲内にあることがより好ましく、1秒乃至1分の範囲内にあることが特に好ましい。
乾燥中又は乾燥後に、塗膜中に含まれるカルボキシ基含有重合体(a)と多価金属含有粒子(b)とが反応して、イオン架橋構造が導入されると推定される。イオン架橋反応を十分に進行させるには、乾燥後のフィルムを、好ましくは20%以上、より好ましくは40乃至100%の範囲内の相対湿度の雰囲気中、好ましくは5乃至200℃、より好ましくは20乃至150℃の範囲内の温度条件下で、1秒乃至10日程度熟成させることが好ましい。
このようにして得られるガスバリア性積層体は、イオン架橋しているため、耐湿性、耐水性、耐熱水性、及び耐水蒸気性に優れている。そして、このガスバリア性積層体は、低湿条件下はもとより、高湿条件下でのガスバリア性にも優れている。このガスバリア性積層体は、JIS K-7126 B法(等圧法)及びASTM D3985に記載された方法に準拠して、温度30℃及び相対湿度70%の条件下で測定した酸素透過度が、好ましくは10cm3/(m2・day・MPa)以下である。
<包装体及び包装物品>
本実施形態に係る包装材料は、上記のガスバリア性積層体を含むものである。この包装材料は、例えば、物品を包装する包装体の製造に使用する。
本実施形態に係る包装材料は、上記のガスバリア性積層体を含むものである。この包装材料は、例えば、物品を包装する包装体の製造に使用する。
本実施形態に係る包装体は、上記の包装材料を含むものである。
この包装体は、上記の包装材料からなるものであってもよく、上記の包装材料と他の部材とを含むものであってもよい。前者の場合、包装体は、例えば、上記の包装材料を袋状に成形したものである。後者の場合、包装体は、例えば、蓋体としての上記包装材料と、有底筒状の容器本体とを含んだ容器である。
この包装体は、上記の包装材料からなるものであってもよく、上記の包装材料と他の部材とを含むものであってもよい。前者の場合、包装体は、例えば、上記の包装材料を袋状に成形したものである。後者の場合、包装体は、例えば、蓋体としての上記包装材料と、有底筒状の容器本体とを含んだ容器である。
この包装体において、上記の包装材料は、成形品であってもよい。この成形品は、上記の通り、袋などの容器であってもよく、蓋体などの容器の一部であってもよい。包装体又はその一部の具体例としては、製袋品、スパウト付きパウチ、ラミネートチューブ、輸液バッグ、容器用蓋材、及び紙容器が挙げられる。
この包装体には、適用される用途に特に制限はない。この包装体は、様々な物品の包装に使用することができる。
本実施形態に係る包装物品は、上記の包装体と、これに収容された内容物とを含むものである。
本実施形態に係る包装物品は、上記の包装体と、これに収容された内容物とを含むものである。
上述した通り、上記のガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性と透明性を有する。そのため、このガスバリア性積層体を含んだ包装材料及び包装体は、それぞれ、酸素及び水蒸気等の影響により劣化し易い物品のための包装材料及び包装体として、特には硫黄を含有する食品用包装材料及び食品用包装体として好ましく用いられる。これら包装材料及び包装体は、それぞれ、農薬や医薬などの薬品、医療用具、機械部品、及び精密材料などの産業資材を包装するための包装材料及び包装体としても好ましく用いることができる。
上記のガスバリア性積層体は、ボイル処理及びレトルト処理等の加熱殺菌処理を施したときに、ガスバリア性や層間密着性が劣化せず、逆に高まる傾向にある。そのため、これら包装材料及び包装体は、それぞれ、加熱殺菌用包装材料及び加熱殺菌用包装体であってもよい。
加熱殺菌用包装材料及び加熱殺菌用包装体は、包装後に加熱殺菌処理が行われる物品の包装に用いられる。
包装後に加熱殺菌処理が行われる物品としては、例えば、カレー、シチュー、スープ、ソース、及び畜肉加工品等の食品が挙げられる。
包装後に加熱殺菌処理が行われる物品としては、例えば、カレー、シチュー、スープ、ソース、及び畜肉加工品等の食品が挙げられる。
加熱殺菌処理としては、例えば、ボイル処理及びレトルト処理が挙げられる。ボイル処理及びレトルト処理については上掲で説明した通りである。
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
<被覆層形成用コーティング液の調製>
被覆層形成用コーティング液を以下の方法で調製した。
(コーティング液A1)
ポリアクリル酸(PAA)(東亜合成社製、ジュリマーAC-10LP、数平均分子量5,000)20質量部を、2-プロパノール(東洋インキ S503)80質量部に加熱溶解させ、濃度20質量%のPAA溶液a1を調製した。
<被覆層形成用コーティング液の調製>
被覆層形成用コーティング液を以下の方法で調製した。
(コーティング液A1)
ポリアクリル酸(PAA)(東亜合成社製、ジュリマーAC-10LP、数平均分子量5,000)20質量部を、2-プロパノール(東洋インキ S503)80質量部に加熱溶解させ、濃度20質量%のPAA溶液a1を調製した。
高分子分散剤としてポリエーテル燐酸エステルアミン(楠本化成(株)製ディスパロン(登録商標)DA-325、固形分100質量%)15質量部を、2-プロパノール(東洋インキ S503)220質量部に溶解させた。次いで、これに一次粒子の平均粒径が35nmの酸化亜鉛(堺化学工業(株)製FINEX(登録商標)-30)100質量部を加えて攪拌した。得られた液を、遊星ボールミル(フリッチュ社製P-7)で1時間分散処理することにより、酸化亜鉛を30質量%の濃度で含んだZnO分散液b1を得た。
次に、PAA溶液a1を50質量部と、ZnO分散液b1を35質量部と、2-プロパノール(東洋インキ S503)120質量部とを混合してコーティング液A1を調製した(当量比bt/at=1.86)。
(コーティング液A2)
上掲のコーティング液A1の調製方法に対し、PAA溶液a1とZnO分散液b1と2-プロパノールの混合比を、PAA溶液a1を50質量部、ZnO分散液b1を50質量部、2-プロパノールを150質量部に変更した以外はコーティング液A1と同様の方法により、コーティング液A2を調製した(当量比bt/at=2.65)。
上掲のコーティング液A1の調製方法に対し、PAA溶液a1とZnO分散液b1と2-プロパノールの混合比を、PAA溶液a1を50質量部、ZnO分散液b1を50質量部、2-プロパノールを150質量部に変更した以外はコーティング液A1と同様の方法により、コーティング液A2を調製した(当量比bt/at=2.65)。
(コーティング液A3)
上掲のコーティング液A1の調製方法に対し、PAA溶液a1とZnO分散液b1と2-プロパノールの混合比を、PAA溶液a1を50質量部、ZnO分散液b1を15質量部、2-プロパノールを90質量部に変更した以外はコーティング液A1と同様の方法により、コーティング液A3を調製した(当量比bt/at=0.80)。
上掲のコーティング液A1の調製方法に対し、PAA溶液a1とZnO分散液b1と2-プロパノールの混合比を、PAA溶液a1を50質量部、ZnO分散液b1を15質量部、2-プロパノールを90質量部に変更した以外はコーティング液A1と同様の方法により、コーティング液A3を調製した(当量比bt/at=0.80)。
(コーティング液B)
ポリアクリル酸(PAA)の25質量%水溶液(東亜合成(株)製、アロン(登録商標)A-10H、数平均分子量200,000)40質量部を、水60質量部に溶解させ、濃度10質量%のPAA溶液a2を調製した。このPAA溶液a2を撹拌しながら、酸化亜鉛(富士フイルム和光純薬 1級)1.2質量部を添加した後、更に室温で2日間撹拌することにより、コーティング液Bを調製した。
ポリアクリル酸(PAA)の25質量%水溶液(東亜合成(株)製、アロン(登録商標)A-10H、数平均分子量200,000)40質量部を、水60質量部に溶解させ、濃度10質量%のPAA溶液a2を調製した。このPAA溶液a2を撹拌しながら、酸化亜鉛(富士フイルム和光純薬 1級)1.2質量部を添加した後、更に室温で2日間撹拌することにより、コーティング液Bを調製した。
(コーティング液C)
酸化亜鉛微粒子の30質量%水分散液(住友大阪セメント K-172)40質量部と、硬化剤(BASF HW1000)2質量部とを混合し、更に2-プロパノール(東洋インキ S503)10質量部と、純水40質量部とを添加し、コーティング液Cを調製した。
酸化亜鉛微粒子の30質量%水分散液(住友大阪セメント K-172)40質量部と、硬化剤(BASF HW1000)2質量部とを混合し、更に2-プロパノール(東洋インキ S503)10質量部と、純水40質量部とを添加し、コーティング液Cを調製した。
[例1]
基材として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:ME-1、厚さ20μm)を準備した。この基材の一方の面に、コーティング液A1をバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.45μmの被覆層を形成することにより、基材/被覆層からなるガスバリア性積層体1を得た。
基材として、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:ME-1、厚さ20μm)を準備した。この基材の一方の面に、コーティング液A1をバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.45μmの被覆層を形成することにより、基材/被覆層からなるガスバリア性積層体1を得た。
[例2]
基材として、例1と同じ2軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。この基材の一方の面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入することにより、厚さ20nmのアルミナ蒸着層を形成した。次いで、このアルミナ蒸着層上に例1と同様の方法により被覆層を形成することにより、基材/アルミナ蒸着層/被覆層からなるガスバリア性積層体2を得た。
基材として、例1と同じ2軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。この基材の一方の面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入することにより、厚さ20nmのアルミナ蒸着層を形成した。次いで、このアルミナ蒸着層上に例1と同様の方法により被覆層を形成することにより、基材/アルミナ蒸着層/被覆層からなるガスバリア性積層体2を得た。
[例3]
コーティング液A1に替えてコーティング液A2を用いたこと以外は、例2と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着層/被覆層からなるガスバリア性積層体3を得た。
コーティング液A1に替えてコーティング液A2を用いたこと以外は、例2と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着層/被覆層からなるガスバリア性積層体3を得た。
[例4]
基材として、例1と同じ2軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。この基材の一方の面にコーティング液Bを、乾燥後の膜厚が0.2μmとなるようバーコーターを用いて塗布し、第1被覆層を形成した。次いで、50℃で48時間エージングした後、第1被覆層上にコーティング液Cをバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.25μmの第2被覆層を形成した。以上のようにして基材/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体4を得た。
基材として、例1と同じ2軸延伸ポリプロピレンフィルムを準備した。この基材の一方の面にコーティング液Bを、乾燥後の膜厚が0.2μmとなるようバーコーターを用いて塗布し、第1被覆層を形成した。次いで、50℃で48時間エージングした後、第1被覆層上にコーティング液Cをバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.25μmの第2被覆層を形成した。以上のようにして基材/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体4を得た。
[例5]
アルミナ蒸着層の形成までは例2と同様の方法を使用し、基材層/アルミナ蒸着層からなる積層体を得た。次いで、アルミナ蒸着層上にコーティング液Bを、乾燥後の膜厚が0.2μmとなるようバーコーターを用いて塗布し、第1被覆層を形成した。次いで、50℃で48時間エージングした後、第1被覆層上にコーティング液Cをバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.25μmの第2被覆層を形成した。以上のようにして基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体5を得た。
アルミナ蒸着層の形成までは例2と同様の方法を使用し、基材層/アルミナ蒸着層からなる積層体を得た。次いで、アルミナ蒸着層上にコーティング液Bを、乾燥後の膜厚が0.2μmとなるようバーコーターを用いて塗布し、第1被覆層を形成した。次いで、50℃で48時間エージングした後、第1被覆層上にコーティング液Cをバーコーターを用いて塗布し、50℃のオーブンで1分間乾燥させて、膜厚0.25μmの第2被覆層を形成した。以上のようにして基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体5を得た。
[例6]
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.1μmとなる量に変更した以外は、例5と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体6を得た。
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.1μmとなる量に変更した以外は、例5と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体6を得た。
[例7]
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.15μmとなる量に変更し、更に、第1被覆層上に塗布するコーティング液Cの量を、乾燥後の膜厚が0.4μmとなる量に変更した以外は、例5と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体7を得た。
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.15μmとなる量に変更し、更に、第1被覆層上に塗布するコーティング液Cの量を、乾燥後の膜厚が0.4μmとなる量に変更した以外は、例5と同様の方法により、基材/アルミナ蒸着膜/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体7を得た。
[比較例1]
コーティング液A1に替えてコーティング液A3を用いたこと以外は、例1と同様の方法により、基材/被覆層からなるガスバリア性積層体101を得た。
コーティング液A1に替えてコーティング液A3を用いたこと以外は、例1と同様の方法により、基材/被覆層からなるガスバリア性積層体101を得た。
[比較例2]
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.25μmとなる量に変更し、更に、第1被覆層上に塗布するコーティング液Cの量を、乾燥後の膜厚が0.15μmとなる量に変更した以外は、例4と同様の方法により、基材/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体102を得た。
アルミナ蒸着層上に塗布するコーティング液Bの量を、乾燥後の膜厚が0.25μmとなる量に変更し、更に、第1被覆層上に塗布するコーティング液Cの量を、乾燥後の膜厚が0.15μmとなる量に変更した以外は、例4と同様の方法により、基材/第1被覆層/第2被覆層からなるガスバリア性積層体102を得た。
<膜厚の測定>
各ガスバリア性積層体の断面を透過電子顕微鏡にて観察し、被覆層の膜厚を測定した。
各ガスバリア性積層体の断面を透過電子顕微鏡にて観察し、被覆層の膜厚を測定した。
<蛍光X線強度(XRF)の測定>
蛍光X線分析装置((株)リガク製、波長分散小型蛍光X線分析装置「Supermini」)を用いて、各積層体の表面層である被覆層中のZnOの蛍光X線強度(kcps)を測定した。
標準サンプル(PETにZnOを蒸着したもの)として、膜厚が0.25nm、0.18nm、0.15nmのZnO蒸着フィルムを用意した。これら標準サンプルについてZnの蛍光X線(Kα線)強度を測定し、順に4.8kcps、2.1kcps、1.2kcpsとして検量線を引いた。得られた検量線に基づいて被覆層の単位面積当たりの蛍光X線(Kα線)強度を求めた。
蛍光X線分析装置((株)リガク製、波長分散小型蛍光X線分析装置「Supermini」)を用いて、各積層体の表面層である被覆層中のZnOの蛍光X線強度(kcps)を測定した。
標準サンプル(PETにZnOを蒸着したもの)として、膜厚が0.25nm、0.18nm、0.15nmのZnO蒸着フィルムを用意した。これら標準サンプルについてZnの蛍光X線(Kα線)強度を測定し、順に4.8kcps、2.1kcps、1.2kcpsとして検量線を引いた。得られた検量線に基づいて被覆層の単位面積当たりの蛍光X線(Kα線)強度を求めた。
検出スペクトル:Zn-Kα
X線間励起条件:ターゲットPb、菅電圧50kV、菅電流4.00mA
分光結晶:LiF
検出器:SC(シンチレーションカウンター)
X線間励起条件:ターゲットPb、菅電圧50kV、菅電流4.00mA
分光結晶:LiF
検出器:SC(シンチレーションカウンター)
<酸素透過度(Oxygen Transmission Rate:OTR)>
各積層体の被覆層上に、2液型のウレタン系接着剤(三井化学SKCポリウレタン株式会社製、A525/A52)を用いて無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レ株式会社製、トレファン(登録商標)ZK207、厚さ60μm)をドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
各積層体の被覆層上に、2液型のウレタン系接着剤(三井化学SKCポリウレタン株式会社製、A525/A52)を用いて無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レ株式会社製、トレファン(登録商標)ZK207、厚さ60μm)をドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
得られたラミネートフィルムをA4サイズの大きさに切り出し、CPPフィルムが内側となるように2つ折りにし、三辺をヒートシールすることにより開口を有するパウチを作製した。得られた各パウチ内に、内容物として0.6質量%のL-システイン(L-cys)水溶液150mlを充填し、残る一辺をヒートシールにより封止することにより、内容物が充填された密封パウチを作製した。
得られた各密封パウチについて貯湯式レトルト釜を用いて130℃で30分間レトルト処理を施した。
得られた各密封パウチについて貯湯式レトルト釜を用いて130℃で30分間レトルト処理を施した。
このレトルト処理後の各サンプルの酸素透過度(OTR)を、酸素透過率測定装置(Modern Control社製 OXTRAN2/20)を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定した。測定方法は、JIS K-7126 B法(等圧法)、及びASTM D3985に準拠し、測定値は、単位cc/m2/day/atmで表記した。結果を表1に示す。
表1から、例1乃至例7のガスバリア性積層体は、内容物が硫黄を含有する場合においても、湿熱処理による硫黄の浸透に起因する酸素バリア性の低下が抑制され、酸素バリア性に優れることがわかる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…基材層、2…アンカーコート層、3…無機蒸着層、4…被覆層、10、20、30…ガスバリア性積層体
Claims (9)
- 基材層と、単層又は複数層からなる被覆層とを備え、前記被覆層はカルボキシ基含有重合体と多価金属含有粒子とを含有し、前記多価金属含有粒子に含まれる多価金属元素の単位面積当たりの蛍光X線強度をI(kcps)とし、前記被覆層の全膜厚をT(μm)としたとき、I/T(kcps/μm)で表される単位厚さ当たりの蛍光X線強度が9kcps/μm以上であるガスバリア性積層体。
- 前記被覆層は単層である請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記被覆層は複数層からなり、前記カルボキシ基含有重合体を含有する第1被覆層と、前記多価金属含有粒子を含有する第2被覆層とが隣接した積層単位を含む請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記基材層と前記被覆層との間に無機酸化物を含む蒸着層を更に備える請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記多価金属含有粒子に含まれる多価金属が2価の金属である請求項1乃至4の何れか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記被覆層は、前記多価金属含有粒子として亜鉛化合物を少なくとも含有する請求項1乃至5の何れか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記被覆層の全膜厚Tが0.23μm以上0.6μm以下である請求項1乃至6の何れか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 請求項1乃至7の何れか1項に記載のガスバリア性積層体を含んだ包装体。
- 請求項8に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。
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JP2021179620A Pending JP2023068474A (ja) | 2021-11-02 | 2021-11-02 | ガスバリア性積層体、包装体及び包装物品 |
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JP (1) | JP2023068474A (ja) |
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2021
- 2021-11-02 JP JP2021179620A patent/JP2023068474A/ja active Pending
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