JP5740151B2 - 非水系顔料インク - Google Patents

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Description

本発明は、非水系顔料インクに関する。
インクジェット記録システムに用いられるインクの色材としては、顔料を利用したものと染料を利用したものに大別されるが、高画質印刷に必要な耐光性、耐候性および耐水性に優れていることから、顔料を色材とするインクが増加する傾向にある。
溶剤からみると、インクは大きく、水系タイプインクと非水系タイプインクに分けられる。揮発性溶剤を主体とする溶剤系インクや不揮発性溶剤を主体とするオイル系インクのように、インク用溶媒として水を使用しない非水系インクは、水系インクに比べ乾燥性が良く、印刷適性にも優れている。
非水系タイプインクでは、一般に、溶剤に溶解する顔料分散剤を用いるところ、この顔料分散剤が溶剤と顔料との親和性を高めるため、溶剤が紙などの記録媒体に浸透する際に顔料も記録媒体内部に引き込まれやすい傾向がある。その結果、印刷濃度が低くなり、裏抜けが発生しやすいことがある。
また、ポリ(メタ)アクリル酸エステルと、グリシジル基等の所定の基を有するアクリルモノマーとの共重合体樹脂粒子で、顔料分散能を備えるものが提案されている(特許文献1)。
特開2010−1452号公報
本発明の目的としては、印刷濃度を高くし裏抜けを低減する非水系顔料インクを提供することである。
本発明の一側面によれば、(A)アルコキシシラン、(B)顔料、及び(C)非水系溶剤を含む、非水系顔料インクを提供する。
本発明によれば、印刷濃度を高くし裏抜けを低減する非水系顔料インクを提供することができる。
本発明の一実施形態による非水系顔料インク(以下、単に「インク」という場合がある)は、(A)アルコキシシラン、(B)顔料、及び(C)非水系溶剤を含むことを特徴とする。この非水系顔料インクによれば、アルコキシシランを含むことで、より印刷濃度を高くし、裏抜けを低減することができる。
本実施形態によるインクにおいて、(A)アルコキシシランは、特に限定されず、一般式:R Si(OR 4−x)で表される化合物を用いることができる。ここで、一般式中、
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基であり、xは0〜3の整数である。
上記アルコキシシランの例としては、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン;
トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン;
などを挙げることができ、これらは単独で、または複数を組み合わせて使用してもよい。
上記アルコキシシランは、好ましくは下記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシランが使用される。これによって、より印刷濃度を高くし、裏抜けを低減することができる。
Figure 0005740151
一般式(1)中、R1からR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基である。
一般式(1)中、RからRのうち少なくとも1個は炭素数3以上のアルキル基であることが好ましい。例えば、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどである。これによって、より印刷濃度を高くし裏抜けを低減することができる。さらに、炭素数が3以上であることで、加水分解の速度が抑制されインクの安定性をより良好に維持することができ、また、沸点も十分に高いため開放放置性能をより良好に維持することができる。
また、一般式(1)中、RからRは同じであることが好ましい。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどである。これによって、より印刷濃度を高くし裏抜けを低減することができる。
上記アルコキシシランは、インク全体に対し、好ましくは0.05質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜3質量%、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%で配合される。アルコキシシランの含有量が上記下限値未満では、十分な効果が得られず、上記上限値を超えると、インクの貯蔵安定性、吐出安定性が低下することがある。
本実施形態によるインクは何色であってもよく、したがって顔料としては、たとえば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。これらの顔料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。
顔料の平均粒径は、分散性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500により測定された値である。
インク中の顔料の含有量は、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から3〜15質量%であることが好ましい。
本実施形態によるインクは、顔料分散剤をさらに含んでもよい。顔料分散剤としては、特に限定されず、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであればよい。たとえば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤の使用が好ましい。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
市販されている顔料分散剤の具体例としては、
日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名);
エフカケミカルズ(Efka CHEMICALS)社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46,47,48,49,4010,4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);
花王株式会社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名);
楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);
第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);
等が挙げられる。
インク中の顔料分散剤の配合量は、適宜設定できるが、顔料分散性の観点から、質量比で、顔料1部に対し0.05〜1.5部程度であることが好ましく、0.1〜1.2部であることがより好ましい。インク全体に対しては、顔料分散剤は、0.5〜15質量%程度含まれていることが好ましく、1〜12質量%であることが一層好ましい。
本実施形態によるインクにおいて、非水系溶剤とは、非極性有機溶剤および極性有機溶剤であって、50%留出点が150℃以上の溶剤をいう。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、質量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。安全性の観点からは、50%留出点が160℃以上、好ましくは230℃以上のものを用いることが好ましい。
たとえば、非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、たとえば、日本石油(株)製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」、Exxon社製「Isopar(アイソパー)G、IsoparH、IsoparL、IsoparM、ExxsolD40、ExxsolD80、ExxsolD100、ExxsolD130、ExxsolD140」等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、日本石油(株)製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン)、Exxon社製「ソルベッソ200」等を好ましく挙げることができる。
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤を用いることができる。より具体的には、
ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどの、1分子中の炭素数が14以上のエステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの、1分子中の炭素数が12以上であるアルコール系溶剤;
イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸系溶剤;
ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、が好ましく挙げられる。
これらの非水系溶剤は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本実施形態によるインクには、(D)アルキル(メタ)アクリレート共重合体であって、アルキル基の炭素数が12〜25であり、共重合体の1〜40質量%のウレタン結合部を備える、アルキル(メタ)アクリレート共重合体をさらに含むことができる。なお、アルキル(メタ)アクリレート共重合体を含む場合では、別途上記した顔料分散剤を使用しないでもよいし、顔料分散剤を併用してもよい。
上記アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、炭素数12〜25の長鎖アルキル基を備えることより、非水系溶剤との親和性に優れる。アルキル基としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコサニル基、ヘンイコサニル基、ドコサニル基、イソドデシル基、及びイソオクタデシル基等が挙げられ、これらは分岐を有していてよい。また、これらの複数種が含まれていてもよい。
上記アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、共重合体の1〜40質量%のウレタン結合[−O(C=O)NH−]を含むウレタン結合部を備えることより、ウレタン結合部は極性が高いので顔料との親和性に優れると考えられる。
上記ウレタン結合部は、アルキル(メタ)アクリレート共重合体の調製における第一段目の反応において、アルキル(メタ)アクリル酸エステルと共重合させるコモノマーの一つとして、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いてラジカル重合を行い、第二段目の反応で、グリシジル基と反応性の基及びアルコール性水酸基とを有する化合物を、第一段目で得られた共重合体と反応させ、第三段目の反応で、アルコール性水酸基と多価イソシアネート化合物とを重付加反応させることにより得ることができる。
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのうち、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体総量の1〜30質量%で含まれることが好ましく、より好ましくは3〜25質量%、一層好ましくは10〜20質量%である。
さらに、コモノマーとして、β−ジケトン基(−C(=O)−C−C(=O)―)またはβ−ケト酸エステル基(−C(=O)−C−C(=O)OR、Rは炭化水素基)を有する(メタ)アクリル系単量体を用いると、より粘度が低いインク組成物を調製することが可能となる。これにより、インク組成物の溶剤を選択する際に、溶剤自身の粘度値に基づく制約が少なくなり、非水系溶剤の選択の幅を拡げることができる。また、必要に応じて定着用樹脂または添加剤などを配合する際の、配合成分によるインク粘度増加の許容範囲が広がり、インク処方の自由度を広げることも可能となる。さらに、β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基が顔料の凝集を抑制し、裏抜けを抑制すると同時に印刷濃度の向上を実現できる。
β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ヘキサジオン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を併用することができる。
β−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体の配合量は、モノマー混合物中に3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルと共重合させるコモノマーとしては、上記した以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、共重合しうるモノマーを含むことができる。
このコモノマーとしては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系ポリマー;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−オレフィン等が挙げられる。また、アルキル鎖長の炭素数が12未満のアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
第一段目のラジカル重合は、インクに使用される非水系溶剤中で行うことが好ましい。また、分子量を調整するために、重合時に連鎖移動剤を併用することが有効である。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ブチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタンなどのチオール類が用いられる。
重合開始剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂(株)製)等の過酸化物など、公知の熱重合開始剤を使用することができる。その他にも、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合型開始剤を用いることができる。溶液重合に用いる重合溶媒には、たとえば石油系溶剤(アロマフリー(AF)系)などを使用できる。この重合溶媒は、そのままインクの非水系溶剤として使用できる溶媒(後述)のなかから1種以上を選択することが好ましい。重合反応に際し、その他、通常使用される重合禁止剤、重合促進剤、分散剤等を反応系に添加することもできる。
第二段目の反応において使用される、グリシジル基と反応性の基及びアルコール性水酸基とを有する化合物としては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基を有するアルコールが挙げられ、好ましくはアミノアルコール及び/又は多価アルコールが使用される。アミノアルコールとしては、炭素数が2〜10のモノオールアミン、例えばモノメチルエタノールアミン、炭素数が4〜20のジオールアミン、例えばジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられ、なかでも、炭素数が4〜20のジアルカノールアミンが好ましい。アミノアルコールは、上記グリシジル基1モルに対して、0.05〜1モル当量で反応させることが好ましく、0.1〜1モル当量で反応させることがより好ましい。
多価アルコールとしては、炭素数2〜20のアルキレン基又はオキシアルキレン基を有する多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、多価アルコールはアミノアルコールと組み合わせて使用される。その場合、多価アルコールは、アミノアルコールのアミノ基中の活性水素1モルに対して、好ましくは水酸基が10モル以下になる量、より好ましくは1〜5モルになる量で用いる。
第二段目の反応は、第一段目で得られる共重合体溶液にアミノアルコール及び/又は多価アルコールを添加して、不活性ガスを通気して攪拌しながら、加熱することによって行うことができる。
第三段目の反応で使用される多価イソシアネート化合物としては、炭素数6〜16のアルキレン基等の脂肪族基、シクロアルキレン基等の脂環式基又はアリレーン基等の芳香族基を有する多価イソシアネート、例えば、1,6−ジイソシアナートへキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。このイソシアネート化合物は、未反応アルコール性水酸基が残らないようにするために、アルコール性水酸基に対してほぼ当量(0.98〜1.02モル当量)で反応させることが好ましい。
第三段目の反応は、第二段目で得られる共重合体溶液に多価イソシアネート化合物を添加し、定法に従い錫触媒等の存在下で加熱して行うことができる。
得られる共重合体のウレタン結合部は、例えばジイソシアネート化合物を用いた場合、下記一般式(2)、(3)、(4)又はこれらの組み合わせで表される構造を有する。このウレタン結合部は、ウレタン結合を2つ備え、アミノアルコール又は多価アルコール残基を介して両端が式(5)で表されるポリ(メタ)アクリレート鎖に結合された架橋部を構成する。
Figure 0005740151
(一般式(2)においてRは、炭素数2〜10のアルキレン基であり、Rは炭素数6〜16の2価の炭化水素基であり、kは0又は1、mは1又は2、nは0又は1である。)
Figure 0005740151
(一般式(3)においてRは上記のとおりであり、Rは炭素数2〜20のアルキレン基又はオキシアルキレン基である。)
Figure 0005740151
(一般式(4)においてR〜Rは上記のとおりである。)
Figure 0005740151
ウレタン結合部は、上記アルキル(メタ)アクリレート共重合体中に、1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%で、より好ましくは5〜20質量%で含まれる。このウレタン結合部の質量は、反応に使用したアミノアルコール、多価アルコールとイソシアネート化合物の合計質量である。
上記アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、GPCで測定される質量平均分子量が5000〜50,000、好ましくは8000〜30,000であることが好ましい。この分子量が前記下限値未満のものを使用すると、インク組成物の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、前記上限値を超えるものを使用すると、インク組成物の粘度が高く、インクジェット吐出安定性が悪くなる傾向がある。また、動的光散乱法で測定される平均粒径(D50)が50〜300nm、好ましくは70〜200nm、であることが好ましい。
インク組成物中におけるアルキル(メタ)アクリレート共重合体の含有量は、顔料分散性を確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。一方、アルキル(メタ)アクリレート共重合体の含有量が高すぎると、インクの粘度が高くなるばかりでなく、高温環境下での保存安定性が悪くなる恐れがあるため、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。より一層好ましくは、3〜15質量%である。
本実施形態によるインクには、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意の成分を含むことができる。たとえば、上記(D)成分以外の樹脂として、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等を含むことができる。
ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを適宜添加することもできる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
本実施形態によるインクは、ビーズミル等の分散機に、(A)アルコキシシラン、(B)顔料と(C)非水系溶剤、及び任意に(D)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、インク組成物の粘度を調整するための追加の(C)非水系溶剤、所望により任意成分、を一括又は分割して加えて攪拌・混合し、所望により、メンブレンフィルター等によりろ過することによって得られる。
インクの粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、最も好ましい。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
本実施形態によるインクを用いた印刷方法は、特に限定されないが、インクジェット記録装置を用いて行われることが好ましい。インクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本発明に係るインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、「質量%」を単に「%」と記す。
<アルキル(メタ)アクリレート共重合体の調製>
300mlの四つ口フラスコに、AF−4(ナフテン系溶剤;新日本石油株式会社製)75gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。次いで、温度を110℃に保ちながら表1に示す組成の単量体混合物にAF−4 16.7g、パーブチル O(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;日本油脂株式会社製)2gの混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間および2時間後に、パーブチル Oを0.2g添加した。さらに110℃で1時間熟成を行い、AF−4 10.6gで希釈して、不揮発分50%の無色透明のポリマーa溶液を得た。
得られたポリマーaの重量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、12400であった。
Figure 0005740151
使用した単量体の詳細は、次のとおりである。
VMA:ベヘニルメタクリレート:MW;339、アルキル基の炭素数22、日本油脂株式会社製
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート:MW;198、アルキル基の炭素数8、和光純薬工業株式会社製
GMA:グリシジルメタクリレート:MW;142、和光純薬工業株式会社製
次に、500mLの四つ口フラスコに、パルミチン酸イソオクチル(IOP、日光ケミカルズ株式会社製)81g、上記(1)で得られたポリマーa溶液(AF−4溶剤中固形分50%)200g、プロピレングリコール 4.0g、ジエタノールアミン 2.8gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。110℃に1時間保ち、ポリマーaのグリシジル基とジエタノールアミンとの反応を完結させた。その後、ジブチル錫ジラウレートを0.2g添加し、タケネート 600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、三井化学ポリウレタン株式会社製)10.2gとIOP 91.8gとの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、温度を120℃に昇温して6時間反応させ、冷却して、固形分30%の非水系分散液D1を得た。
得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、22000であった。
Figure 0005740151
非水系分散液D1の固形分と溶剤組成は次のとおりである。
D1:固形分30%、AF−4 25.7%、IOP 44.3%
<インクの調製>
(実施例1)
得られた非水系分散液D1 20.0gと顔料10.0g、アルコキシシラン0.2g、AF−7 29.6g、IOP 13.3g、イソミリスチルアルコール5.4gを混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を入れて、ロッキングミル((株)セイワ技研製)により120分間分散した。分散後ジルコニアビーズを除去し、3.0μmおよび0.8μmのメンブランフィルターで順に濾過してゴミおよび粗大粒子を取り除き、AF−7 7.5g、IOP 14.0gを加えて希釈して、インク(顔料分10%)を得た。
<実施例2〜8、比較例1〜4>
表3に示す配合で、上記実施例1と同様にして各実施例および比較例のインクを得た。実施例8及び比較例2では、非水系分散液D1に代わり、ソルスパース11200を使用した。
Figure 0005740151
使用した成分の詳細は、次のとおりである。
カーボンブラック:MA100(三菱化学)
ソルスパース−11200:日本ルーブリゾール社製、固形分50%
テトラプロポキシシラン:N−POS(扶桑化学工業株式会社製)
テトラブトキシシラン:TBOS(コルコート株式会社製)
テトラメトキシシラン:TMOS(扶桑化学工業株式会社製)
テトラエトキシシラン:TEOS(多摩化学工業株式会社製)
ジメチルジメトキシシラン:KBM−22(信越化学工業株式会社製)
ジメチルジエトキシシラン:KBE−22(信越化学工業株式会社製)
AF−7:ナフテン系溶剤(新日本石油株式会社製)
IOP:パルミチン酸イソオクチル(日光ケミカルズ株式会社製)
イソミリスチルアルコール:FOC−140N(日産化学工業株式会社製)
<評価>
上記した各インクを用いて、表面OD値、裏面OD値、及び貯蔵安定性について評価を行った。結果を表3に併せて示す。
(印刷物の濃度)
上記した各インクをHC5500(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙(理想用紙薄口、理想科学工業株式会社製)に印字することにより、印刷濃度を評価した。なお、HC5500は、300dpiのライン型インクジェットヘッド(各ノズルが約85μm間隔で並ぶ)を使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印字を行うシステムである。
主走査方向約51mm(ノズル600本分)×副走査方向260mmのベタ画像を印字した。得られたベタ画像の表面と裏面のOD値を、光学濃度計(RD920、マクベス社製)を用いて測定した。また、実施例1から7については比較例1の値を基準にし、実施例8については比較例2の値を基準にし、以下の基準で相対評価した。表面OD値が高ければ印刷濃度が高く、裏面OD値が低ければ裏抜けが少ないために、それぞれ好ましい。
「表面OD値の相対評価」
AA:基準値に対し表面OD値の差が0.07以上である
A:基準値に対しOD値の差が0.05以上0.07未満である
B:基準値に対しOD値の差が0.03以上0.05未満である
「裏面OD値の相対評価」
AA:基準値に対し表面OD値の差が0.04以上である
A:基準値に対しOD値の差が0.01以上0.04未満である
B:基準値と同等である
(インクの貯蔵安定性(70℃、4週間))
上記した各インクについて初期粘度を測定した後に、各インクをそれぞれ密閉容器に入れて、70℃の環境下で4週間放置し、その後インクの粘度を測定し、粘度変化率((放置後の粘度)/(初期粘度)×100(%))を求め、以下の基準で評価した。インクの粒度は、(株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布装置LB−500により測定した。インクの粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける粘度であり、ハーケ社製応力制御式レオメータRS75(コーン角度1°、直径60mm)で測定した。なお、上記した各インクの初期粘度は、全て、インクジェットインクとしての適正範囲であった。
A:粘度変化率が±5%以内
B:粘度変化率が±5%超過±10%以内
C:粘度変化率が±10%超過
表3に示す通り、各実施例のインクは、アルコキシシランを含有し、表面OD値及び裏面OD値に優れ、印刷濃度を高くし裏抜けを低減することができた。また、貯蔵安定性も良好であった。
また、実施例1から7のインクは、非水系分散剤D1を含有し、より印刷濃度を高くし裏抜けを低減することができた。また、実施例1から5のインクは、アルコキシシランの4つのアルコキシ基が同じであり、より効果を得ることができた。さらに、実施例1から3のインクは、アルコキシシランのアルコキシ基の炭素数が3以上であり、より効果を得ることができた。

Claims (6)

  1. (A)アルコキシシラン、(B)顔料、及び(C)非水系溶剤を含み、
    前記非水系溶剤が浸透する記録媒体への印刷用である、非水系顔料インク。
  2. 前記(A)アルコキシシランが、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランである、請求項1に記載の非水系顔料インク。
    Figure 0005740151

    (一般式(1)中、RからRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基である。)
  3. 前記一般式(1)中、RからRのうち少なくとも1個は炭素数3以上のアルキル基である、請求項2に記載の非水系顔料インク。
  4. 前記一般式(1)中、RからRは同じである、請求項2または3に記載の非水系顔料インク。
  5. 前記(A)アルコキシシランを、インク全体に対し、0.05質量%〜10質量%含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の非水系顔料インク。
  6. 普通紙への印刷用である、請求項1から5のいずれか1項に記載の非水系顔料インク。
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