JP5736193B2 - 固体電解コンデンサ素子の製造方法 - Google Patents
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Description
それらの結果、高い漏れ電流や規定サイズ外などの不良な固体電解コンデンサ素子の製造数が増え、製造ロットにおける歩留まりが低下することがあった。
〔1〕表面に誘電体層を有する陽極体を電解重合液に浸けて電解重合することによって前記誘電体層の上に半導体層を形成する工程、および前記電解重合後に陽極体または半導体層から放電させて陽極体と半導体層との間の電位差をゼロにする工程を有する、固体電解コンデンサ素子の製造方法。
〔2〕電解重合終了時から前記電位差がゼロになるまでの時間が10秒間以内である〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕放電開始時から前記電位差がゼロになるまでの時間が1ミリ秒間以上である〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕電解重合時および/または電解重合後に、電解重合液中で陽極体を振動させ、半導体層表面に付着する気泡を除去することをさらに有する、〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
〔5〕半導体層表面に形成される膜状突起物の高さを30μm以下にする〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
〔6〕半導体層表面に形成される膜状突起物の高さよりも厚い導電体層を半導体層の上に形成する工程をさらに有する〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
〔7〕電解重合液に同時に浸ける陽極体が複数である〔1〕〜〔6〕のいずれかひとつに記載の複数の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
〔8〕電解重合液に同時に浸ける陽極体が300個以上である〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕短絡がコンデンサ素子ごとに行われる〔7〕または〔8〕に記載の製造方法。
陽極体は、通常、弁作用を有する金属材料からなる。弁作用を有する金属材料としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウムおよびそれらのいずれかを含む合金などを挙げることができる。陽極体は、箔、棒、多孔体などの形態の中から適宜選択される。陽極体には、後述する陽極体接続端子やリードフレームとの接続を容易にするために、リード線を陽極体から引き出しておいてもよい。
前記陽極体表面に誘電体層が形成されている。該誘電体層は、陽極体の表面を酸化することによって形成できる。該表面酸化は公知の電解化成処理によって行うことが好ましい。
次に、電解重合を行うことによって半導体層を誘電体層の上に形成する。
半導体層を得るために用いられる導電性ポリマー前駆体としては、ピロール類、チオフェン類、アルキルチオフェン類、アルキレンジオキシチオフェン類、アニリン類、フェニレン類、アセチレン類、フラン類、フェニレンビニレン類、アセン類、アズレン類などを挙げることができる。これらは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、防食性および電気伝導度に優れるという観点から、ピロール類、アルキルチオフェン類、アルキレンジオキシチオフェン類、およびアニリン類が好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。
電解重合終了時から前記電位差がゼロになるまでの時間は、好ましくは10秒間以内、より好ましくは1秒間以内、さらに好ましくは0.1秒間以内である。この時間内であれば、気泡の表面で生成するポリマー量を少なくすることができる。
上記時間内において、電荷の放出はゆっくり行うことが好ましい。具体的には、放電開始時から前記電位差がゼロになるまでの時間を、好ましくは1ミリ秒間以上、より好ましくは10ミリ秒間以上にする。このようにすることにより過度な電流がコンデンサ素子に流れることを防ぐことができる。
半導体層に生成する膜状突起物は無い方が好ましいが、膜状突起物が生成した場合には、その高さを、30μm以下、好ましくは10μm以下にすることが好ましい。なお、膜状突起物の高さは、膜状突起物周辺の突起物を除いた半導体層表面の平均的平面から鉛直に最も離れた膜状突起物の部分までの距離である。本発明では、半導体層表面に生じた膜状突起物の高さを、好ましくは導電体層の厚さ以下にしておくことが好ましい。導電体層の厚さを超えると、外装時の樹脂成型圧や樹脂の硬化収縮応力で膜状突起物が破壊されやすくなり、作製したコンデンサの漏れ電流特性が劣化する場合がある。
本発明においては、該半導体層の上に1層以上の導電体層を積層させることができる。
導電体層としては、導電性カーボン層、導電性金属層などがある。導電体層は1層以上が積層されたものである。導電体層としては、導電性カーボン層と導電性金属層とが積層されたものが好ましい。また、半導体層の外表面に接する導電体層が導電性カーボン層であることが好ましい。
バインダーは、多量の固体粒子等を強く接着・固定し成形強化するための成分であり、樹脂成分が主に使用される。樹脂成分としては、EPM、EPDM、フッ素系ポリマーが好適である。
導電性カーボン層は、その厚さが、好ましくは10〜40μmである。
バインダーは、導電性金属粉末を結着させることができるものであれば、特に制限されない。
導電性金属層は、その厚さが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜35μmである。本発明に用いられる導電性金属層はこのような薄い層においても導電性金属粉末が均一良好に堆積し良好な導電性を維持することができESR値が低く保たれる。
得られた固体電解コンデンサ素子はリードフレームに接続して、外装で封止することができる。一つの外装に封止される固体電解コンデンサ素子は1つであってもよいし、複数であってもよい。封止方法は特に制限されない。例えば、樹脂モールド外装、樹脂ケース外装、金属製ケース外装、樹脂のディッピングによる外装、ラミネートフイルムによる外装などがある。これらの中でも、小型化と低コスト化が簡単に行えることから、樹脂モールド外装が好ましい。
樹脂モールド外装に使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂など固体電解コンデンサ素子の封止に使用される公知の樹脂が採用できる。封止用樹脂としては低応力樹脂を使用することが、封止時におきる固体電解コンデンサ素子への封止応力の発生を緩和することができるために好ましい。また、樹脂封止するための製造機としてトランスファーマシンが好ましく使用される。封止に使用される樹脂にはシリカ粒子などが配合されていてもよい。
のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものではない。
当該製造用冶具は、長さ194.0mm×最大幅33.0mm×厚さ1.6mmの銅張ガラスエポキシ基板からなるものであり、左右両端下側に8mm×10mmの切り欠き部がある。図2(A)の左端(図2(B)では右端)切り欠き上側8mm×23mmに電流制限端子4、図2(A)の右端(図2(B)では左端)切り欠き部上側8mm×23mmに電圧制限端子5が設けられている。電流制限端子4または電圧制限端子5はスルーホール6を経て表面から裏面に電気的に接続されている。
基板の表面に32組、裏面に32組、合計64組の抵抗器3とトランジスタ2とが実装されている。基板の下端には64個の陽極体接続端子7が取り付けられている。なお、陽極体接続端子7として、プレジデップ社製PCDレセプタクル399シリーズ丸ピンDIPソケット2.54mmピッチ64ピン連結ソケットを用いた。トランジスタ2として、2SA2154GRを用いた。抵抗器3として、誤差1%、20kΩのものを用いた。
トランジスタ2のコレクタは陽極体接続端子7に接続されている。トランジスタ2のベースは電圧制限端子5に接続されている。トランジスタ2のエミッタは抵抗器3を介して電流制限端子4に接続されている(図3参照)。陽極体接続端子7には素子基材(作用電極)を繋ぐことができるようになっている。
CV20万/gのニオブ粉を0.5mmφニオブリード線と共に成形した。その後、1280℃で20分間焼結することによって、大きさ1.0mm×3.0mm×4.5mmで、1.0mm×3.0mm面にリード線が植立された焼結体640個を得た。
これら焼結体を陽極体として用いた。
640個の陽極体のリード線を、10個の電解コンデンサ素子製造用冶具(最大電流及び最大電圧を制限して、陽極体毎に電力を供給できる。)の64ピン陽極体接続端子7に、1本ずつ取り付けた。
ステンレス製重合容器(陰極となる。)に3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマー1質量%、アントラキノンスルホン酸2質量%、エチレングリコール27質量%および水70質量%を含む電解重合液を入れた。これに前記処理を施した素子基材を浸漬した。前記重合容器に対して最大電圧9V、1個あたりの最大電流130μAに設定した前記治具を通して陽極体のリード線に電気を流し、室温下で60分間電解重合させた。通電を止めて電解重合を終了させた。重合終了後、直ちに、陽極体と半導体層との間に溜まった電荷の放電を開始させた。
なお、電解重合の終了は、コンデンサ製造用冶具の電流制限端子4の電位を電圧制限端子5と同電位にすることにより、すなわち、陽極体に供給する電流量を0にする(通電を中止する)ことにより行った。
また、放電は、電流制限端子4と電圧制限端子5とを同電位にしたまま、0.1秒かけて、前記端子4および5の電位を陰極の電位に対して−0.5Vになるまで下げることによって行った。このようにして徐々に陽極体と半導体層との間の電位差を下げた(前記−0.5Vに下げた状態でリード線と陰極との間の電位は0Vとなった)。放電開始時から前記電位差がゼロになるまでの時間は、100ミリ秒間であった。
次に陽極体を電解重合液から引き上げ、エタノール洗浄し、乾燥させた。前記モノマーエタノール溶液浸漬、電解重合、放電、洗浄および乾燥という一連の操作をさらに6回(合計7回)繰り返した。
残りの540個の半導体層が表面に積層された陽極体にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層して導電体層を形成して固体電解コンデンサ素子を作製した。
最後に、銅合金製リードフレームに固体電解コンデンサ素子を接続し、10kgf/cm2の圧力でエポキシ樹脂(パナソニック電工製CV3400SE)によるトランスファー成型を行って封止した。ついで、リードフレームの切断及び曲げ加工を行い、定格電圧2.5V、定格容量680μF、大きさ7.3mm×4.3mm×1.8mmのチップ状固体電解コンデンサ540個を得た。
CV15万/gのタンタル粉を0.29mmφタンタルリード線と共に成形した。その後、1360℃で30分間焼結することによって、大きさ1.0mm×2.3mm×1.7mmで、1.0mm×2.3mm面にリード線が植立した焼結体640個を得た。
640個の陽極体のリード線を、10個の電解コンデンサ素子製造用冶具(最大電流及び最大電圧を制限して、陽極体毎に電力を供給できる。)の64ピン陽極体接続端子に、一本ずつ取り付けた。
該陽極体を2%燐酸水溶液に浸け、実施例1と同様に、最大電圧9V、1個あたり最大電流2mAに設定した前記治具を通して陽極体に電圧を印加して化成させ誘電体層を形成した。
ステンレス製重合容器(陰極となる。)に3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマー1質量%、ナフタレンスルホン酸1.5質量%、エチレングリコール27.5質量%および水70質量%を含む電解重合液を入れた。これに前記処理を施した素子基材を浸漬した。前記重合容器に対して最大電圧9V、1個あたりの最大電流60μAに設定した前記治具を通して陽極体のリード線に電気を流し、室温下で60分間電解重合させた。
次いで、1個あたりの最大電流85μAに変更し、室温下で60分間、上記と同じ手法で、モノマーエタノール溶液浸漬および電解重合を行った(2回目電解重合)。
1個あたりの最大電流120μAに変更し、室温下で70分間、上記と同じ手法で、モノマーエタノール溶液浸漬および電解重合を行った(3回目電解重合)。
1個あたりの最大電流100μAに変更し、室温下で60分間、上記と同じ手法で、モノマーエタノール溶液浸漬および電解重合を行った(4回目電解重合)。
また、4回目の電解重合を終了させた直後から、陽極体を上下方向に最大振幅1mm、1/3Hzで2分間振動させた。本実施例に用いた重合容器では、最大振幅1mm以下、1/3Hz以下であれば電解重合液の液面に生じる波は許容できる高さであった。また、陽極体に付着していた気泡は1/3Hzで1分間以上振動させることでほぼ完全に除去された。
次に陽極体を電解重合液から引き上げ、エタノール洗浄し、乾燥させた。
得られたコンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。半導体層の平均厚さは約10μmであった。
電流制限端子4と電圧制限端子5とを、陰極に対して逆電位にすることによって放電する代わりに、コンデンサ製造用冶具の陽極体接続端子7の先端(金メッキされた端子が露出している)を電解重合液に10秒間漬けて、陽極体と半導体層との間を電解重合液を介して短絡させることによって徐々に放電させた以外は実施例1と同じ手法でコンデンサ素子640個を作製した。当該コンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。その後、実施例1と同じ手法でチップ状固体電解コンデンサ540個を作製した。放電開始時から10秒後には前記電位差がゼロになった。
重合液槽に接続されるコンデンサ製造用冶具にスイッチ回路を取り付けた。該スイッチ回路は、一方が各素子基材の陽極リードに電気的に接続され、他方が重合容器に電気的に接続されている。スイッチオフ時には陽極リードと重合容器とが電気的に絶縁されている。スイッチオン時には陽極リード同士が電気的に接続され且つ陽極リードと重合容器とが電気的に接続される。放電はスイッチをオンにすることによって開始させることができる。
上記のコンデンサ製造用冶具を用い、スイッチをオンにすることによって放電した以外は実施例1と同じ手法にてコンデンサ素子640個を作製した。当該コンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。その後、実施例1と同じ手法でチップ状固体電解コンデンサ540個を作製した。放電開始時から1ミリ秒以内に前記電位差がゼロになった。
放電を行わなかった以外は実施例1と同じ手法にてコンデンサ素子640個を作製した。当該コンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。その後、実施例1と同じ手法でチップ状固体電解コンデンサ540個を作製した。
放電を行わなかった以外は実施例2と同じ手法にてコンデンサ素子640個を作製した。当該コンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。その後、実施例1と同じ手法でチップ状固体電解コンデンサを540個作製した。
振動をさせなかった以外は比較例2と同じ手法にてコンデンサ素子640個を作製した。当該コンデンサ素子100個を無作為に抜き取りSEMで観察した。その後、実施例1と同じ手法でチップ状固体電解コンデンサ540個を作製した。
上記の実施例および比較例で抜き取ったコンデンサ素子各100個のSEM観察によって、高さ30μm以上の膜状突起物の個数(但し、実施例2は高さ10μm以上の膜状突起物の個数)を求めた。
チップ状固体電解コンデンサ各540個の漏れ電流を測定した。漏れ電流が0.2CVμA以下となったコンデンサの個数を求めた。なお、下記の式に示すように、0.2CVは、定数0.2と定格容量Cと定格電圧Vとの積のことである。
0.2CV(μA)=0.2(μA/μFV)×定格容量(μF)×定格電圧(V)
それらの結果を表1に示す。
Claims (9)
- 表面に誘電体層を有する陽極体を電解重合液に浸けて電解重合することによって前記誘電体層の上に半導体層を形成する工程、および前記電解重合後に陽極体または半導体層から放電させて陽極体と半導体層との間の電位差をゼロにする工程を有する、固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 電解重合終了時から前記電位差がゼロになるまでの時間が10秒間以内である請求項1に記載の製造方法。
- 放電開始時から前記電位差がゼロになるまでの時間が1ミリ秒間以上である請求項2に記載の製造方法。
- 電解重合時および/または電解重合後に、電解重合液中で陽極体を振動させ、半導体層表面に付着する気泡を除去することをさらに有する、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の製造方法。
- 半導体層表面に形成される膜状突起物の高さを30μm以下にする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の製造方法。
- 半導体層表面に形成される膜状突起物の高さよりも厚い導電体層を半導体層の上に形成する工程をさらに有する請求項1〜5のいずれかひとつに記載の製造方法。
- 電解重合液に同時に浸ける陽極体が複数である請求項1〜6のいずれかひとつに記載の複数の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 電解重合液に同時に浸ける陽極体が300個以上である請求項7に記載の製造方法。
- 前記放電がコンデンサ素子ごとに行われる請求項7または8に記載の製造方法。
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