JP5732740B2 - フレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板およびフレキシブルデバイス - Google Patents
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そこで、表面平滑性の良好なポリイミド層が望まれている。
まず、本発明のフレキシブルデバイス用基板について説明する。
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、金属箔と、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層と、上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層とを有することを特徴とするものである。
図1は、本発明のフレキシブルデバイス用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するフレキシブルデバイス用基板1は、金属箔2と、金属箔2上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層3と、平坦化層3上に形成され、無機化合物を含む密着層4とを有している。
図2(a)に例示するTFT基板10Aは、トップゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11と、ソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。
図2(b)に例示するTFT基板10Aは、トップゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成された半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12D上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。
図3(a)に例示するTFT基板10Aは、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13Gを覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11と、ソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに半導体層11上に形成された保護膜15とを有している。
図3(b)に例示するTFT基板10Aは、ボトムゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13Gを覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成された半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12D上に形成された保護膜15とを有している。
図4(a)に例示するTFT基板10Aは、コプレーナ型構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成された半導体層11と、半導体層11上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、半導体層11上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。
図4(b)に例示するTFT基板10Aも、コプレーナ型構造を有するTFTを備えており、フレキシブルデバイス用基板1の密着層4上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13G上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成された半導体層11と、半導体層11上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、半導体層11上に形成された保護膜15とを有している。
本発明における密着層は、平坦化層上に形成され、無機化合物を含むものであり、ポリイミドを含む平坦化層と本発明のフレキシブルデバイス用基板上に作製されるTFTとの間で十分な密着力を得るために設けられる層である。
なお、5%重量減少温度の測定については、熱分析装置(DTG−60((株)島津製作所製))を用いて、雰囲気:窒素雰囲気、温度範囲:30℃〜600℃、昇温速度:10℃/minにて、熱重量・示差熱(TG−DTA)測定を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度(℃)とした。
密着層が多層膜である場合、上述の無機化合物からなる層が複数層積層されていてもよく、上述の無機化合物からなる層と金属からなる層とが積層されていてもよい。この場合に用いられる金属としては、上述の特性を満たす密着層を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素を挙げることができる。
また、密着層が多層膜である場合、密着層の最表層は酸化ケイ素膜であることが好ましい。すなわち、本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する際、酸化ケイ素膜上にTFTが作製されることが好ましい。酸化ケイ素膜は上述の特性を十分に満たすからである。この場合の酸化ケイ素はSiOx(Xは1.5〜2.0の範囲内)であることが好ましい。
本発明における平坦化層は、金属箔上に形成され、ポリイミドを含むものであり、金属箔表面の凹凸を平坦化するために設けられる層である。
なお、フレキシブルデバイス用基板に反りが発生していないとは、フレキシブルデバイス用基板を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
式(1)において、一般に、R1はテトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、R2はジアミン由来の構造である。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
中でも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。中でも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のR1のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(1)中のR1のうち33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のR1のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、およびイソプロペニル基のいずれか1種または2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部もしくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(2)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、金属箔上に平坦化層を部分的に形成する場合には、平坦化層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
上記のような構造を有する場合、ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式で表される構造の含有量は上記式(1)中のR2のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(1)中のR2のうち少なくとも33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のR2のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
また、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いてTFT基板を作製する場合には、TFTの線熱膨張係数に応じて金属箔の線熱膨張係数を決定し、その金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
さらに、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いて有機EL表示装置や電子ペーパーを作製する場合には、有機EL表示装置や電子ペーパーの線熱膨張係数に応じて金属箔の線熱膨張係数を決定し、その金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
なお、平坦化層がポリイミドを主成分とするとは、上述の特性を満たす程度に、平坦化層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、平坦化層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に平坦化層がポリイミドのみからなることが好ましい。平坦化層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
平坦化層は、金属箔の外縁部を除いて金属箔上に一面に形成されていてもよく、金属箔の外縁部を除いて金属箔上にさらにパターン状に形成されていてもよい。
ポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する場合、塗布後にポリイミドまたはポリイミド前駆体のガラス転移温度以上に加熱することで、膜の流動性を高め、平滑性を良くすることもできる。
本発明における金属箔は、上記の平坦化層および密着層を支持するものである。
凹凸の形成方法としては、例えば金属箔の表面に直接、エンボス加工、エッチング加工、サンドブラスト加工、フロスト加工、スタンプ加工などの加工を施す方法、フォトレジスト等を用いて凹凸パターンを形成する方法、めっき方法、箔状の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法が挙げられる。エンボス加工の場合、例えば表面に凹凸を有する圧延ロールを用いてもよい。エッチング加工の場合、金属箔の種類に応じて薬剤が選択される。箔状の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法の場合、例えば、ロウ付け、溶接、半田等により金属層同士を接合する、あるいは、エポキシ樹脂等の接着剤を介して金属層同士を貼り合わせることができる。この場合、箔状の金属層と表面に凹凸を有する金属層とは、同じ金属材料で構成されていてもよく、異なる金属材料で構成されていてもよい。
中でも、コスト面から、エンボス加工、エッチング加工が好ましく用いられる。
本発明においては、金属箔と平坦化層との間に中間層が形成されていてもよい。例えば、金属箔および平坦化層の間に、金属箔を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属箔と平坦化層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属箔表面が酸化されることで形成される。
また、金属箔の平坦化層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、図2(a)〜図4(b)に例示されるようなTFT基板に好適に用いられる。
なお、TFT基板については、後述の「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
さらに、本発明のフレキシブルデバイス用基板は、パッシブマトリクス型の電子ペーパーにも適用することができる。
次に、本発明のフレキシブルデバイス用TFT基板(以下、単にTFT基板と称する場合がある。)について説明する。
本発明のTFT基板は、上述のフレキシブルデバイス用基板と、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されたTFTとを有することを特徴とするものである。
図2(a)〜図4(b)は、本発明のTFT基板の例を示す概略断面図である。図2(a)に例示するTFT基板10Aは、トップゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備え、図2(b)に例示するTFT基板10Aは、トップゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えている。図3(a)に例示するTFT基板10Aは、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備え、図3(b)に例示するTFT基板10Aは、ボトムゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えている。図4(a)、(b)に例示するTFT基板10Aは、コプレーナ型構造を有するTFTを備えている。なお、図2(a)〜図4(b)に示すTFT基板の各構成については、上記「A.フレキシブルデバイス用基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、本発明のTFT基板は金属箔で支持されているので、耐久性に優れるTFT基板とすることができる。
酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgxZn1−xO)、酸化カドミウム亜鉛(CdxZn1−xO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZnO系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。
有機半導体としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン、テトラセン、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレン誘導体、フタロシアニン化合物、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シアニン色素等が挙げられる。
半導体層の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
ゲート絶縁膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
保護膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
半導体層が酸化物半導体層である場合、酸化物半導体層上に保護膜をスパッタリング法等により形成すると、酸化物半導体では酸素が欠損するおそれがあるが、保護膜の形成後に酸素の存在下でアニール処理を行なうことで、酸素欠陥を補うことができる。このアニール処理は数百度と高温で行なわれるため、ポリイミドを含む平坦化層の寸法変化が懸念されるが、本発明においては密着層が形成されているので、アニール処理によって平坦化層の寸法が変化した場合であっても、平坦化層とTFTとの密着性を維持することができ、TFTの剥離やクラックを抑制することが可能である。
次に、本発明のフレキシブルデバイスについて説明する。
本発明のフレキシブルデバイスは、上述のTFT基板を備えることを特徴とするものである。
また本発明によれば、フレキシブルデバイスが金属箔で支持されているので、耐久性に優れるフレキシブルデバイスとすることができる。
本発明の有機EL表示装置は、上述のTFT基板を備える、すなわち上述のフレキシブルデバイス用基板を備えることを特徴とするものである。具体的に、本発明の有機EL表示装置は、金属箔、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、上記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層およびTFTと、上記背面電極層上に形成され、少なくとも有機発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された透明電極層とを有することを特徴とするものである。
本発明におけるTFTは、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されるものである。一般に有機EL表示装置においては、画素毎に駆動用TFTとスイッチング用TFTの2つのTFTが設けられる。
なお、TFTについては、上記「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明における背面電極層は、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されるものであり、TFTのドレイン電極と電気的に接続される画素電極である。
本発明におけるEL層は、背面電極層上に形成され、有機発光層を含むものであり、少なくとも有機発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、EL層とは、少なくとも有機発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布法でEL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、EL層は1層もしくは2層の有機層を有する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
このようにEL層は種々の層を積層した積層構造を有することが多く、積層構造としては多くの種類がある。
本発明における透明電極層は、EL層上に形成されるものである。本発明の有機EL表示装置においては透明電極層側から光を取り出すため、透明電極層は透明性を有している。
本発明の有機EL表示装置は、上述の構成の他に、必要に応じて、絶縁層、隔壁、封止部材などを有していてもよい。
本発明の電子ペーパーは、上述のTFT基板を備える、すなわち上述のフレキシブルデバイス用基板を備えることを特徴とするものである。具体的に、本発明の電子ペーパーは、金属箔、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、上記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層およびTFTと、上記背面電極層上に形成された表示層と、上記表示層上に形成された透明電極層とを有することを特徴とするものである。
電子ペーパーを構成する表示層としては、電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択される。
なお、フレキシブルデバイス用基板については上記「A.フレキシブルデバイス用基板」の項に詳しく記載し、TFTについては上記「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
[製造例]
(1)ポリイミド前駆体溶液の調製
(製造例1)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で、下記表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜12、15〜17およびポリイミド前駆体溶液Z(比較例)を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2′-Dimethyl-4,4′-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2′-Bis(trifluoromethyl)-4,4′-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に{[(4,5-dimethoxy-2-nitrobenzyl) oxy]carbonyl} 2,6-dimethyl piperidine (DNCDP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液1とした。
(製造例14)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液2とした。
上記ポリイミド前駆体溶液1〜12、15〜17およびポリイミド前駆体溶液Zを、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド1〜12、15〜17およびポリイミドZのフィルムを得た。
また、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、100℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm2露光後、ホットプレート上で170℃10分加熱した後、耐熱フィルムより剥離し、膜厚10μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のフィルムを得た。
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を湿度膨張係数(C.H.E.)とした。この際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1〜12、15〜17およびZ、ならびに感光性ポリイミド前駆体溶液1,2を用い、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド1〜12、15〜17およびZのポリイミド膜、ならびに感光性ポリイミド1,2のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
これらの評価結果を以下に示す。
また、表2より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
(平坦化層の形成1)
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1〜10をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μm〜12μmのポリイミド1〜10のポリイミド膜を形成し、積層体1〜10を得た。
積層体1〜10のうち、積層体1,2,3,5,6,8,9,10は、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。一方、積層体4,7は、反りが目立った。
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、ポリイミド前駆体膜上に、正方形のSUS箔の三辺について外縁部より15mm幅でレジストが除去されるように、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、レジストパターンを剥離したのち、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、外縁部の平坦化層が除去された積層体1Pを得た。
積層体1Pは、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。
上記積層体10のポリイミド膜上に、正方形のSUS箔の三辺について外縁部より15mm幅でレジストが除去されるように、レジストパターンを形成した。ポリイミド膜が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて、除去後、レジストパターンを剥離し、外縁部の平坦化層が除去された積層体10Pを得た。
積層体10Pは、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。次いで、正方形のSUS箔の三辺について外縁部より15mm幅で(紫外線が照射されないように)マスクし、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm2露光後、ホットプレート上で170℃10分加熱した後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚3μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のポリイミド膜を形成し、積層体11および12を得た。
積層体11,12は、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。
まず、上記積層体1の両面にドライフィルムレジストをラミネートした。次いで、積層体1のSUS箔側から200μm幅のラインアンドスペース(L/S)で筋状にレジストが除去されるように露光し、積層体1の平坦化層側から全面露光した後、レジスト製版を行った。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、レジストの開口部にてSUS箔の厚みが9μm残存するようにSUS箔をハーフエッチングした後、レジストパターンを剥離することにより、SUS箔が200μm幅でハーフエッチングされた積層体1Hを得た。
積層体1Hは、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。
まず、上記積層体1の両面にドライフィルムレジストをラミネートした。次いで、積層体1のSUS箔側から50μm角のラインアンドスペース(L/S)で等間隔にレジストが除去されるように露光し、積層体1の平坦化層側から全面露光した後、レジスト製版を行った。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、レジストの開口部にてSUS箔の厚みが9μm残存するようにSUS箔をハーフエッチングした後、レジストパターンを剥離することにより、SUS箔が50μm角でハーフエッチングされた積層体1H′を得た。
積層体1H′は、温度や湿度環境の変化に対しても反りが発生しなかった。
積層体1およびSUS箔の表面粗さRaを測定した。
まず、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて、タッピングモードで、カンチレバー:MPP11100、走査範囲:50μm×50μm、走査速度:0.5Hzにて、表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することより、積層体1の表面粗さRaを求めた。積層体1の50μm×50μmにおける表面粗さRaは6.2nmであった。
次いで、New View 5000(Zygo社製)を用いて、対物レンズ:100倍、ズームレンズ:2倍、Scan Length:15μmにて、50μm×50μmの範囲の表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することより、積層体1の表面粗さRaを求めた。積層体1の50μm×50μmにおける表面粗さRaは9.3nmであった。
厚さ100μmのSUS304−HTA板(小山鋼材社製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を用いて、イミド化後の膜厚が7μm±1μmになるようにスピンコーターでコーティングし、100℃のホットプレートオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃1時間、熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、平坦化層を形成した。
次に、平坦化層上に、第1密着層としてのアルミニウム膜をDCスパッタリング法(成膜圧力0.2Pa(アルゴン)、投入電力1kW、成膜時間10秒)により厚さ5nmで形成した。次いで、第2密着層としての酸化シリコン膜をRFマグネトロンスパッタリング法(成膜圧力0.3Pa(アルゴン:酸素=3:1)、投入電力2kW、成膜時間30分)により厚さ100nmで形成した。これにより、フレキシブルデバイス用基板を得た。
密着層について、New View 5000(Zygo社製)を用いて測定した50μm×50μmにおける表面粗さRaは23.5nmであった。また、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて測定した50μm×50μmにおける表面粗さRaは15.9nmであった。
2 … 金属箔
3 … 平坦化層
4 … 密着層
4a … 第1密着層
4b … 第2密着層
10A … TFT基板
10B … 電極基板
30 … 有機EL表示装置
40 … 電子ペーパー
Claims (17)
- 金属箔と、前記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層と、前記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層とを有し、
前記金属箔上に前記平坦化層および前記密着層が部分的に形成され、前記平坦化層および前記密着層が前記金属箔の外縁部を除いて形成されているフレキシブルデバイス用基板と、
前記フレキシブルデバイス用基板の前記密着層上に形成された薄膜トランジスタと、
を有することを特徴とするフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。 - 前記平坦化層がポリイミドを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記密着層の表面粗さRaが25nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記密着層を構成する前記無機化合物が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記密着層が多層膜であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記密着層が、前記平坦化層上に形成され、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種からなる第1密着層と、前記第1密着層上に形成され、酸化ケイ素からなる第2密着層とを有することを特徴とする請求項5に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記密着層の厚みが、1nm〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記平坦化層の表面粗さRaが25nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記平坦化層の吸湿膨張係数が0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記平坦化層の厚みが1μm〜1000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記平坦化層の線熱膨張係数が0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記平坦化層の線熱膨張係数と前記金属箔の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記金属箔の厚みが1μm〜1000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれかに記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 前記薄膜トランジスタが、酸化物半導体層を有することを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
- 請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板を備えることを特徴とするフレキシブルデバイス。
- 金属箔、前記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および前記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有し、前記金属箔上に前記平坦化層および前記密着層が部分的に形成され、前記平坦化層および前記密着層が前記金属箔の外縁部を除いて形成されているフレキシブルデバイス用基板と、
前記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層および薄膜トランジスタと、
前記背面電極層上に形成され、少なくとも有機発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、
前記エレクトロルミネッセンス層上に形成された透明電極層と
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。 - 金属箔、前記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および前記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有し、前記金属箔上に前記平坦化層および前記密着層が部分的に形成され、前記平坦化層および前記密着層が前記金属箔の外縁部を除いて形成されているフレキシブルデバイス用基板と、
前記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層および薄膜トランジスタと、
前記背面電極層上に形成された表示層と、
前記表示層上に形成された透明電極層と
を有することを特徴とする電子ペーパー。
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