JP5961970B2 - 積層体およびそれを用いた素子 - Google Patents

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Description

本発明は、電子素子を安定、かつ、低コストで形成可能な積層体に関するものである。
近年、電子素子として、発光ダイオード(以下、LEDと略す場合がある。)や、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す場合がある。)素子、パワー半導体等の使用時に多量の熱を発する素子が多く用いられるようになっている。このような電子素子が配置される基板としては、金属基材と、上記金属基材上に貼り合わせられた絶縁性樹脂を含む絶縁層と、上記絶縁層上に形成され、上記電子素子が配置され、電気的に接続される配線層とを有する積層体が知られている。
ここで、このような積層体に用いられる金属基材としては、 銅、鉄、ステンレス(SUS)、アルミニウム等が用いられるが、上記絶縁層のパターニングする際に用いられるアルカリ性の現像液に対する耐薬液性(耐アルカリ性)の観点から、銅やステンレス(SUS)が一般的に用いられる(例えば、特許文献1)。
しかしながら、このような銅やSUSといった材料は、比重が大きいとともにコストが高いため、軽量かつ低コストな電子素子の形成が困難になるといった問題があった。また、アルミニウムを用いた場合には、絶縁層のアルカリ現像時に侵され、電子素子を安定に形成することができないといった問題があった。
特開2003−71982号公報
本発明は、電子素子を安定、かつ、低コストで形成可能な積層体を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、耐アルカリ基材および上記耐アルカリ基材表面に形成された耐アルカリ保護層を有する耐アルカリ基材と、上記耐アルカリ基材上にパターン状に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層と、を有し、上記耐アルカリ基材が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなるものであり、上記耐アルカリ保護層が、無機材料を主成分とする耐アルカリ材料からなるものであり、上記耐アルカリ基材の厚みが70μm以上であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、上記耐アルカリ基材が、金属基材および耐アルカリ保護層を有するものであることにより、アルカリ現像液等のアルカリ性の溶液による浸食の少ないものとすることができ、電子素子を安定に形成可能なものとすることができる。
また、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなる金属基材を芯層として有することにより、軽量化および高コスト化の抑制を図ることができる。
本発明においては、上記耐アルカリ保護層が、陽極酸化処理で形成された酸化物層、化成処理で形成された酸化物層または硫化物層、または、メッキ層であることが好ましい。上記耐アルカリ保護層を有する耐アルカリ基材を容易に形成することができるからである。
本発明においては、上記絶縁層が、アルカリ性の溶液により現像またはエッチングによりパターニングされたものであることが好ましい。上記耐アルカリ保護層を含むことによる効果をより効果的に発揮することが可能となるからである。
本発明は、上述の積層体と、上記積層体上に配置された電子素子と、を有することを特徴とする素子を提供する。
本発明によれば、上記積層体を用いるものであるため性能が安定なものとすることができ、例えば、剥離や短絡のないものとすることができる。また、低コストなものとすることができる。
本発明は、電子素子を安定、かつ、低コストで形成可能な積層体を提供できるといった効果を奏する。
本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。 本発明の積層体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の積層体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の積層体の他の例を示す概略断面図である。 本発明の素子の一例を示す概略断面図である。
本発明は、積層体およびそれを用いた素子に関するものである。
以下、本発明の積層体および素子について詳細に説明する。
A.積層体
まず、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、金属基材および上記金属基材表面に形成された耐アルカリ保護層を有する耐アルカリ基材と、上記耐アルカリ基材上にパターン状に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層と、を有し、上記金属基材が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなるものであり、上記耐アルカリ保護層が、無機材料を主成分とする耐アルカリ材料からなるものであり、上記耐アルカリ基材の厚みが70μm以上であることを特徴とするものである。
このような本発明の積層体について図を参照して説明する。図1は、本発明の積層体の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の積層体10は、耐アルカリ基材1と、上記耐アルカリ基材1上にパターン状に直に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層2と、上記絶縁層2上に直に形成された導体層3と、を有し、上記耐アルカリ基材1が、アルミニウムからなる金属基材4、および、上記金属基材4上に形成され、無機材料を主成分とする耐アルカリ材料からなる耐アルカリ保護層5を有するものであり、上記耐アルカリ基材1の厚みが70μm以上のものである。
本発明によれば、上記耐アルカリ基材が、金属基材を覆うように形成された耐アルカリ保護層を有するものであることにより、上記絶縁層をパターン状に形成する際に用いられるアルカリ性の溶液により、上記金属基材が浸食されるのを防ぐことができる。
また、導体層の形成や、レジストの剥離時に用いられるアルカリ性の溶液による金属基材の浸食も防ぐことができる。すなわち、耐アルカリ基材が安定的な積層体とすることができ、電子素子を安定に形成可能なものとすることができる。また、プロセスの自由度を広いものとすることができる。
また、上記耐アルカリ基材の厚みが70μm以上であることにより、放熱性に優れたものとすることができる。
さらに、金属基材を芯層として有することにより、耐アルカリ基材の厚みを厚くした際の重量を軽くすることができるとともに、コスト高の影響を抑えることができる。
本発明の積層体は、上記耐アルカリ基材、絶縁層および導体層を少なくとも有するものである。
以下、本発明の積層体の各構成について説明する。
1.耐アルカリ基材
本発明に用いられる耐アルカリ基材は、金属基材および耐アルカリ保護層を有するものである。
(1)金属基材
本発明における金属基材は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなるものである。
また、アルミニウムを主成分とするとは、金属基材中のアルミニウムの含有量が75質量%以上のことをいい、好ましくは90質量%以上であることが好ましい。軽量化および低コスト化を図ることができるからである。
本発明におけるアルミニウムを主成分とする合金に含まれるものとしては、Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Cr,Zn,Ti,V,Bi、Pb、Zr等の金属等が挙げられる。これら金属の含有量は、各々の金属については、0〜8質量%であることが好ましく、合計の含有量については、0〜10質量%であることが好ましい。
本発明における金属基材の厚みとしては、所望の支持性を有するものとすることができるのであれば特に限定されるものではなく、70μm以上であることが好ましく、なかでも100μm〜100mmの範囲内であることが好ましく、特に、200μm〜50mmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、放熱性に優れたものとすることができるからである。
(2)耐アルカリ保護層
本発明における耐アルカリ保護層は、上記金属基材表面に形成され、無機材料を主成分とする耐アルカリ材料からなるものである。
このような耐アルカリ材料が有するアルカリ耐性としては、上記金属基材を絶縁層のパターニングの際に用いられるアルカリ性の溶液から保護することができ、電子素子を安定に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、23℃の水酸化テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38wt%水溶液に浸漬した際に、気泡の発生までに30秒以上要するものであることが好ましく、なかでも、60秒以上要するものであることが好ましく、特に、180秒以上要するものであることが好ましい。上記金属基材をより安定に保護することができるからである。
本発明のける耐アルカリ保護層の耐酸性としては、上記金属基材を保護することができ、本発明の積層体を安定的に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、23℃の硫酸10%水溶液(体積分率)に浸漬した際に、気泡の発生までに30秒以上要するものであることが好ましく、なかでも、300秒以上要するものであることが好ましく、特に、600秒以上要するものであることが好ましい。上記金属基材をより安定に保護することができるからである。
本発明における耐アルカリ保護層の耐熱性としては、本発明の積層体の形成時の加熱に耐えることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、耐アルカリ保護層の1%重量減少温度が、200℃以上であることが好ましく、なかでも、300℃以上であることが好ましい。
ここで、1%重量減少温度が200℃以上であるとは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定する際に、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/minで100℃まで上昇させた後、100℃で60分加熱した後、15分以上窒素雰囲気下で放冷した後、昇温速度10℃/minで測定した際の放冷後の重量を基準として測定した1%重量減少温度が200℃以上のものをいう。
本発明における耐アルカリ材料としては、無機材料を主成分とし、所望の耐アルカリ性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、金、ガリウム、ルテニウム、ロジウム、インジウム、オスミウム、タンタル、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、白金、金、チタン、タングステン、モリブデン、インジウム等の金属、ならびに、これらの金属およびアルミニウム、ストロンチウム、テルルの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物や、珪素、ゲルマニウムおよびホウ素の酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物等などを挙げることができる。これら材料は単独で用いてもよいし、複数の材料の積層物であってもよいし、混合物(多元素からなるセラミックの様に原子レベルで混合されているものも含む)として用いてもよい。上記材料からなるものであることにより、上記耐アルカリ保護層を、耐アルカリ性に特に優れたものとすることができるからである。
なお、上記耐アルカリ材料として用いられる金属としては、耐アルカリ保護層形成後に、空気中の酸素等により酸化されたものも含むものである。
本発明における耐アルカリ材料は、プロセスに必要な耐アルカリ性やコスト面を鑑みた上で選択される。
また、発光素子の放熱基板などに用いられ、光反射性が必要となる際には、表面反射率の高い金属等を用いることが好ましい。
本発明における耐アルカリ保護層の形成箇所としては、上記金属基材表面に形成され、上記金属基材の表面の一部を少なくとも覆うように形成されるものであれば特に限定されるものではないが、平面視上、上記耐アルカリ基材の絶縁層が形成される側の表面のうち、絶縁層のパターニング時に耐アルカリ基材が露出する領域の全てを含むものであることが好ましい。上記形成個所は、絶縁層のパターニング時において、絶縁層が既に形成されていることから、新たに金属基材表面を保護することが困難であり、絶縁層を除去した際に、金属基材表面の露出を防ぐことが困難であるからである。
また、本発明においては、なかでも、平面視上、上記耐アルカリ基材の絶縁層が形成される側の表面のうち、絶縁層のパターニング時に耐アルカリ基材が露出する領域を含むものであることが好ましく、特に、平面視上、上記耐アルカリ基材の絶縁層が形成される側の表面全てを含むものであることが好ましく、なかでも特に、端面を除く金属基材の全表面であることが好ましく、さらに特に、金属基材の全表面であることが好ましい。上記形成個所が上述の領域であることにより、絶縁層のパターニング時に用いられるアルカリ現像液による浸食を効果的に抑制することができるからである。
本発明における耐アルカリ保護層は、上記金属基材表面に形成され、上記金属基材の表面の一部を少なくとも覆うように形成されるものであれば特に限定されるものではないが、上記金属基材全表面の面積の40%以上を覆うように形成されていることが好ましく、なかでも、上記金属基材全表面の面積の80%以上を覆うように形成されていることが好ましく、特に、上記金属基材全表面の面積の90%以上を覆うように形成されていることが好ましく、なかでも特に、上記金属基材全表面の面積の100%覆うように形成されていることが最も好ましい。上記形成個所であることにより、絶縁層のパターニング時に用いられるアルカリ現像液等のアルカリ性の溶液による浸食を効果的に抑制することができるからである。
本発明に用いられる耐アルカリ保護層の厚みとしては、上記金属基材を安定的に保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、耐アルカリ保護層を構成する耐アルカリ材料の種類や、絶縁層のパターニング条件等に応じて適宜設定されるものであるが、通常、0.5μm以上であることが好ましい。ピンホール等の欠陥なく、金属基材を安定的に被覆することができるからである。
本発明においては、上記耐アルカリ保護層がメッキ層である場合には、1μm以上であることが好ましい。また、上記耐アルカリ保護層が陽極酸化処理で形成された酸化物層または化成処理により形成された酸化物層や硫化物層である場合には、1μm以上であることが好ましく、なかでも5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、上記絶縁層のパターニング方法が、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド膜上にレジストをパターン状に形成すると同時または形成後に、上記ポリイミド膜をエッチングによりパターニングし、次いで、レジストを剥離する方法である場合に用いられるエッチング液やレジスト剥離液のような極めて強いアルカリ性を有する溶液であっても、金属基材を安定的に保護できるからである。
なお、上限については、厚ければ厚い程、耐アルカリ性を向上させることができることから好ましいため、特に限定を設けないが、厚くなる程コストが高くなることから、通常、100μm以下とされる。
本発明に用いられる耐アルカリ保護層の形成方法としては、上記金属基材表面に安定的に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、メッキ処理、陽極酸化(アルマイト)処理、または化成処理を用いる方法、すなわち、上記耐アルカリ保護層が、陽極酸化処理で形成された酸化物層、化成処理で形成された酸化物層または硫化物層、または、メッキ層であることが好ましい。耐アルカリ保護層がこのような方法で形成されたものであることにより、上記耐アルカリ保護層を有する耐アルカリ基材を容易に形成することができるからである。
また、本発明においては、なかでも、メッキ層または陽極酸化処理で形成された酸化物層であることが好ましく、特に、メッキ層であることが好ましい。メッキ処理を用いる方法であることにより、薄い膜厚で所望の耐アルカリ性を有するものとすることができるからである。
なお、本発明においては、上記各形成方法を組み合わせても良い。具体的には、まず、無電解メッキを行い、その後、電解メッキを行うことにより形成するものであっても良い。
本発明におけるメッキ方法については、一般的に用いられるメッキ法を用いることができ、具体的には、湿式メッキ法(電解メッキ法や無電解メッキ法)、乾式メッキ法(真空蒸着法、スパッタリング法、メタリコン法)等を用いることができる。
本発明においては、なかでも、湿式メッキ法であることが好ましく、特に、電解メッキ法であることが好ましい。より緻密なメッキ層を形成できるからである。また、その結果、厚みが薄い場合であっても十分に耐アルカリ性の向上を図ることができるからである。また、湿式メッキの中では、メッキ速度が速いので、メッキ時間の短縮化を図ることができるからである。
本発明における湿式メッキ法として用いられる電解メッキは、メッキしたい物質を含む電解溶液に、電導性のある物体を陰極として、直流電流を流すことにより、電導性のある物体表面で、電気的にその物質(金属など)を還元、析出させて層を形成させるものである。
本発明における電解メッキを施す場合の金属については、保護対象となる金属基材より薬液耐性が高い金属であれば特に限定されるものではなく、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、金、ガリウム、ルテニウム、ロジウム、インジウム、オスミウムなどが挙げられる。
本発明における無電解メッキ法は、メッキしたい物質を含む溶液中で、通電による電子ではなく、溶液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子により、被メッキ物の表面上で、電気的にその物質(金属など)を還元、析出させて層を形成させるものである。
無電解メッキ法は、膜厚ムラの少ないものとすることができるといった利点や、メッキ時に導電性が被メッキ物に導電性が不要であるので、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなる金属基材であってもメッキムラの少ないものとすることができるといった利点を有する。また、金属基材表面に凹凸がある場合であっても、均一な厚みで形成することができるといった利点を有する。
本発明における無電解メッキを施す場合の金属については、保護対象となるアルミニウムより薬液耐性が高い金属であれば特に限定されるものではなく、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、白金、金、ルテニウム、ロジウム、インジウムなどが挙げられる。
本発明における乾式メッキは、金属や酸化物、窒化物などをガス化あるいはイオン化もしくは液化した後、素材の表面に付着させることにより積層させる方法である。
本発明における乾式メッキを施す場合の金属については、保護対象となるアルミニウムより薬液耐性が高い金属であれば特に限定されるものではなく、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、金、ガリウム、ルテニウム、ロジウム、インジウム、オスミウム、タンタル、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス、銅、銀、パラジウム、白金、金、チタン、タングステン、モリブデン、インジウムなどが挙げられる。
乾式メッキ法の利点としては、金属のみではなく、金属ならびに非金属の酸化物や窒化物なども積層可能なことが挙げられる。
具体的には、Cr,Zn、In、Ga、Cd、Ti、Sn、Te、Mg、W、Mo、Cu、Al、Fe、Sr、Ni、Ir、Mgなどの金属の酸化物や、Si、Ge、Bなどの非金属の酸化物、また上記元素の窒化物、硫化物、セレン化物、およびこれらの混合物からなる皮膜を形成することができる。
本発明における陽極酸化処理法は、電解溶液中で、電導性のある物体を陽極として、直流電流を流すことにより、電導性のある物体を電気的に酸化させて表面に酸化物層(酸化皮膜層)を形成させるものである。
本発明における陽極酸化処理を施す場合の電解溶液については、保護対象となるアルミニウムに十分な厚みの酸化皮膜を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、硫酸浴、しゅう酸浴、クロム酸浴、りん酸浴などの酸性浴、水酸化ナトリウム浴、アンモニア浴などのアルカリ性浴などを用いることができる。
本発明における化成処理は、溶液中で酸化や硫化などの化学反応を利用して化学的に金属基材の表面と反応させ酸化物層(酸化被膜)や硫化物層(硫化被膜)などの耐食性被膜を形成する方法である。
このような化成処理では、電極を接続せずに形成できるので、容易に耐食性被膜を全面(端面も含め)に形成できるといった利点がある。
本発明における化成処理を施す場合の溶液については、保護対象となるアルミニウムに十分な厚みの耐食性皮膜を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、リン酸.クロム酸塩系、クロム酸塩系、アルカリ・クロム酸塩系、べ―マイト系、ジルコニウム系、リン酸亜鉛系などが挙げられる。
本発明においては、上記金属基材表面に耐アルカリ保護層を形成する際には、金属基材表面に形成された酸化被膜を除去することが好ましい。このような除去方法としては、例えば、亜鉛置換メッキ処理等を前処理として行う方法を挙げることができる。
(3)耐アルカリ基材
本発明に用いられる耐アルカリ基材の線熱膨張係数としては、所望の寸法安定性を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルミニウムを主成分とする材料からなる金属基材を用いることから、20ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましい。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、上記耐アルカリ基材を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとし、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
本発明に用いられる耐アルカリ基材の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状や板状であってもよく、図2に例示するように耐アルカリ基材1の断面形状が空気との接触面に凹凸を有する形状であってもよい。
上記耐アルカリ基材が空気との接触面に凹凸を有する場合には、熱拡散が良好となり、放熱性を高めることができる。凹凸の形成方法としては、例えば耐アルカリ基材の表面に直接、エンボス加工、エッチング加工、サンドブラスト加工、フロスト加工、スタンプ加工などの加工を施す方法、フォトレジスト等を用いて凹凸パターンを形成する方法、めっき方法、箔状の耐アルカリ基材と表面に凹凸を有する耐アルカリ基材とを貼り合わせる方法が挙げられる。エンボス加工の場合、例えば表面に凹凸を有する圧延ロールを用いてもよい。エッチング加工の場合、耐アルカリ基材の種類に応じて薬剤が選択される。箔状の耐アルカリ基材と表面に凹凸を有する耐アルカリ基材とを貼り合わせる方法の場合、例えば、ロウ付け、溶接、はんだ等により耐アルカリ基材同士を接合する、あるいは、エポキシ樹脂等の接着剤を介して耐アルカリ基材同士を貼り合わせることができる。この場合、箔状の耐アルカリ基材と表面に凹凸を有する耐アルカリ基材とは、同じ金属材料で構成されていてもよく、異なる金属材料で構成されていてもよい。
中でも、コスト面から、エンボス加工、エッチング加工が好ましく用いられる。
なお、図2中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
また、耐アルカリ基材の断面の凹凸の寸法や形状としては、耐アルカリ基材の空気との接触面が荒れており、表面積を増やすことができれば特に限定されるものではない。凹凸の幅、高さ、ピッチ等としては、耐アルカリ基材の種類や本発明の用途等に応じて適宜選択され、例えばシミュレーションにより熱伝導に好適な範囲を求めることができる。
また、本発明に用いられる耐アルカリ基材の平面視形状としては、絶縁層および導体層を安定的に支持することができるものであれば特に限定されるものではなく、通常、上記絶縁層が形成される領域を全て含む形状であるが、必要に応じて上記絶縁層が形成された領域内に開口部を有する形状とすることができる。
本発明においては、上記絶縁層および導体層とは独立してパターニングされたものであることが好ましい。不必要な部分を除去することにより、軽量化を図ることができるからである。
なお、上記耐アルカリ基材が上記絶縁層の全面に形成されている場合には、酸素や水蒸気に対するガスバリア性を付与することができ、また放熱性を高めることができるといった利点を有する。
本発明に用いられる耐アルカリ基材の厚みとしては、70μm以上であれば特に限定されるものではなく、本発明の積層体の用途に応じて適宜選択される。上記耐アルカリ基材の厚みが厚いほど、面方向への熱拡散に優れたものとなる。すなわち、耐アルカリ基材の熱容量を大きいものとすることで、電子素子と接する部位の局所的な熱を容易に拡散することが可能となり、その部位の最高温度を下げ、電子素子の損傷を防ぐことにより、基板として放熱性を向上させることができるのである。
一方、耐アルカリ基材の厚みが薄いほど、可撓性に富んだものとなる。
例えば本発明の積層体が可撓性を有する場合には、熱伝導性および可撓性を兼ね備えることができればよく、具体的には、70μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは70μm〜500μmの範囲内、さらに好ましくは70μm〜300μmの範囲内である。耐アルカリ基材の厚みが薄すぎると、放熱機能を十分に発揮できなかったり、水蒸気に対するガスバリア性が低下したりする。また、耐アルカリ基材の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりするからである。
本発明における耐アルカリ基材の光の表面反射率としては、本発明の積層体の用途等に応じて適宜設定することができるものであるが、波長400nm〜780nmの範囲内の光の表面反射率の最低値が、40%以上であることが好ましい。上記波長の表面反射率が上述の範囲内であることにより、本発明の積層体を用いて例えば、EL素子やLED素子等を形成した場合に、所望の発色を有するものとすることが容易だからである。
本発明に用いられる耐アルカリ基材は、必要に応じて表面処理等を施したものとすることができる。
このような表面処理としては、例えば、薬液処理、プラズマ処理等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる耐アルカリ基材が、上記絶縁層側表面に上記絶縁層との密着性を向上させる密着性層を有するものであっても良い。
このような密着性層としては、上記絶縁層との密着性を向上させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、ニッケル、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化クロムおよび酸化チタン等からなるものであることが好ましい。絶縁層との密着性を効果的に向上させることができるからである。また、厚みとしては、例えば1nm〜1000nmの範囲内とすることができる。また、本発明においては、密着性層の熱伝導率の値が、支持基材を主に構成する材料に比べて、相対的に、小さい場合は、1nm〜500nmであることが好ましく、1nm〜100nmであることがさらに好ましい。
なお、上記密着性層としては、上記耐アルカリ保護層およびその表面が空気中の酸素等により酸化したものであっても良い。
本発明に用いられる耐アルカリ基材がパターニングされたものである場合の耐アルカリ基材のパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法、レーザーや打ち抜き等で直接加工する方法を用いることができる。フォトリソグラフィー法としては、例えば、上記耐アルカリ基材および絶縁層の積層体の状態で、耐アルカリ基材上にドライフィルムレジストをラミネートし、ドライフィルムレジストをパターニングし、そのパターンに沿って耐アルカリ基材をエッチングした後、ドライフィルムレジストを除去する方法が挙げられる。
2.絶縁層
本発明に用いられる絶縁層は、上記耐アルカリ基材上にパターン状に形成され、ポリイミド樹脂を含有するものである。
(1)ポリイミド樹脂
本発明に用いられるポリイミド樹脂としては、上記絶縁層をパターン状に形成できるものであれば特に限定されるものではなく、このようなポリイミドのガラス転移温度(Tg)については、本発明の積層体の形成方法に応じて適宜決定されるものである。
本発明においては、上記絶縁層としてガラス転移温度の異なる複数の層を含むものである場合、ガラス転移温度の高い層(以下、非熱可塑性層とする場合がある。)に含有されるものとしては、本発明の積層体の耐熱性の観点からは、250℃以上であることが好ましく、なかでも、270℃以上であることが望しい。上記Tgが上述の範囲内であることにより、本発明の積層体の耐熱性を十分に高いものとすることができるからである。
なお、Tgは高い程耐熱性が高くなり好ましいが、通常、ポリイミドの物性を引きだすためにTgより高い温度でキュア(加熱処理)をすることが好ましく、Tgが高すぎる場合、キュア時に上記絶縁層や上記耐アルカリ基材等が劣化する可能性がある。このような観点から、Tgの上限としては、500℃以下であることが好ましい。Tgが上記範囲よりも低い場合、絶縁層が軟化し始める温度が250℃前後もしくはそれ以下になり、はんだリフローなどの高温プロセス時に絶縁層が軟化し始める場合があるため、加熱時寸法変化が悪化する可能性があるからである。逆にTgが上記範囲よりも高い場合、軟化が始まる温度が高いため、熱応力を十分に緩和できない、もしくは、上記絶縁層や上記耐アルカリ基材等が、劣化する可能性があるからである。
また、非熱可塑性層に含まれるポリイミド樹脂は、250℃以下に融点を有さないことが好ましく、なかでも、270℃以下に融点を有さないことが好ましく、300℃以下に融点を有さないことがさらに好ましい。本発明の積層体の耐熱性を十分に高いものとすることができるからである。
また、上記ガラス転移温度の高い層と比較してガラス転移温度の低い層(以下、熱可塑性層とする場合がある。)に含有されるもののガラス転移温度または融点としては、120℃〜350℃であることが好ましく、150℃〜300℃であることがさらに好ましい。
また、熱可塑性のポリイミド樹脂とは、具体的には、室温(25℃程度)から350℃もしくはガラス転移点温度+20℃のどちらか低い温度までの温度領域において貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミド樹脂の熱伝導率としては、所望の熱伝導性を付与できるもののであれば特に限定されるものではなく、一般的なポリイミド樹脂のものと同程度とすることができる。
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、絶縁層に主成分として含有されるものである。
ここで、主成分として含有されるとは、所望の絶縁性等を満たす程度に、ポリイミド樹脂が含有されることをいう。具体的には、上記ポリイミド樹脂の絶縁層中の含有量が75質量%以上であることをいい、好ましくは90質量%以上であり、特に100%であり、上記絶縁層が上記ポリイミド樹脂のみからなることが好ましい。上記ポリイミド樹脂本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となるからである。
上記ポリイミド樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂の構造を適宜選択することで、絶縁性および熱伝導性を制御したり、ガラス転移温度、吸湿膨張係数や線熱膨張係数、貯蔵弾性率を制御したりすることが可能である。
本発明に用いられるポリイミド樹脂としては、上記絶縁層の線熱膨張係数、吸湿膨張係数、熱伝導率、貯蔵弾性率を本発明の積層体に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂のなかでも芳香族骨格を含有するポリイミド樹脂は、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、熱伝導率が高く、線熱膨張係数も低いことから、本発明の積層体の絶縁層に好ましく用いられるからである。
具体的には、下記式(I)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005961970
(式(I)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(I)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造であり、一般的に、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体を合成した後、熱的もしくは化学的にイミド化させることにより得られる。
上記ポリイミド樹脂に適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
上記ポリイミド樹脂の耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。
なかでも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
併用するテトラカルボン酸二無水物としてフッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミド樹脂の吸湿膨張係数が低下する。しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミド樹脂の前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミド樹脂の線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度の感光性ポリイミド樹脂とすることができる。一方で、ポリイミド樹脂の耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミド樹脂と比較して劣る傾向にある。
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミド樹脂となるというメリットがある。したがって、ポリイミド樹脂において、上記式(I)中のRのうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 0005961970
上記ポリイミド樹脂が上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有するポリイミド樹脂は、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミド樹脂である。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(I)中のRのうち33%以上含有すればよい。なかでも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
一方、ポリイミド樹脂に適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミン等も使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種または2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部もしくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、ポリイミド樹脂は低膨張係数となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(II)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
Figure 0005961970
(式(II)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位またはパラ位に結合する。)
さらに、上記式(II)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド樹脂前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、耐アルカリ基材上に絶縁層を部分的に形成する場合には、絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、耐アルカリ基材との密着性を改善したり、ポリイミド樹脂の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
また、上記ポリイミド樹脂においては、上記式(I)中のRのうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 0005961970
は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、RおよびRは1価の有機基、またはハロゲン原子である。
ポリイミド樹脂が上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、ポリイミド樹脂の耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(I)中のRのうち少なくとも33%以上含有すればよい。なかでも上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
また、本発明においては、ポリイミド樹脂に所望の熱可塑性を有するものとするために、主成分として含まれるポリイミド樹脂を構成する原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンについて、屈曲性を有する原料の割合が多い方が好ましい。すなわち、ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸二無水物およびジアミン中の屈曲性を有する構造のテトラカルボン酸二無水物および屈曲性を有する構造のジアミンの含有率が多いことが好ましい。
ここで、屈曲性を有する構造のテトラカルボン酸二無水物としては、柔軟な骨格を有し、貯蔵弾性率やTgを低いものとするものであれば特に限定されるものではなく、最新ポリイミド・基礎と応用, 今井淑夫, 横田力男, エヌ・ティー・エス, p.241〜252 (2002)、躍進するポリイミドの最新動向IV 住ベリサーチ株式会社p3〜12、WO2007/015396号公報等に記載されるものを挙げることができるが、より具体的には、アルキル基、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基など柔構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、下記の一般式(III)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005961970
式(III)中のX,Xcはそれぞれ、下記一般式で表される2価の有機基からなる群から選択される基である。Xcは、1分子内で全て同じでも、異なっていてもよく、左右の向きが異なっていてもよい。また、pは、0以上の整数である。
Figure 0005961970
pの値が大きくなるにつれて、ポリイミドを屈曲性の高いものとすることができ、Tgおよび貯蔵弾性率を低いものとすることができる。
本発明における屈曲性を有する構造のテトラカルボン酸二無水物の、ポリイミド樹脂を構成する全テトラカルボン酸二無水物中の含有量としては、所望の貯蔵弾性率のポリイミドとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、屈曲性を有する構造のテトラカルボン酸二無水物の種類や、その他のテトラカルボン酸二無水物成分およびジアミン成分の種類等に応じて所望の熱可塑性にあわせて適宜設定することができる。
また、屈曲性を有する構造のジアミンとしては、柔軟な骨格を有し、貯蔵弾性率やTgを低いものとするものであれば特に限定されるものではなく、上述の「最新ポリイミド・基礎と応用」等に記載されたものを挙げることができるが、より具体的には、アルキル基、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基など柔構造を有するジアミンであり、下記の一般式(IV)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005961970
式(IV)中、Xdは、上記Xcと同様の2価の有機基である。また、Xdは、1分子内で全て同じでも、異なっていてもよく、左右の向きが異なっていてもよい。また、qは、1以上の整数である。
さらに、上記式(IV)中において、芳香環上の水素原子の一部若しくは全てをハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。また、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有していてもよい。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。また、芳香環はベンゼン環で表記しているが、ピリジンなどの複素芳香環であっても、ナフタレン環などの多環芳香環であっても、ビフェニルなどの芳香環同士が、単結合で結合した化合物を用いても良い。
qの値が大きくなるにつれて、、ポリイミドを屈曲性の高いものとすることができ、Tgおよび貯蔵弾性率を低いものとすることができる。
本発明における屈曲性を有する構造のジアミンの、ポリイミド樹脂を構成する全ジアミン中の含有量としては、所望の貯蔵弾性率のポリイミドとすることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、qが1の場合の、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミンは、エーテル結合などの屈曲部位を一つしか有さないため、屈曲性が比較的低く、熱可塑性とする効果が、他に比べて小さい。このように、含有量は、屈曲性を有する構造のジアミンの種類や、その他のテトラカルボン酸二無水物成分およびジアミン成分の種類等に応じて所望の熱可塑性にあわせて適宜設定することができる。
(2)絶縁層
本発明に用いられる絶縁層は、上記耐アルカリ基材上にパターン状に形成されるものであり、上記ポリイミド樹脂を含有するものである。
本発明に用いられる絶縁層の形成個所としては、上記耐アルカリ基材上にパターン状に形成されているものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、絶縁層は耐アルカリ基材に比べて熱伝導性が低いため、絶縁層の不要部を除去して金属などで熱伝導部を設けることで放熱性の改善を図ることや、絶縁層より耐アルカリ基材の方がバリア性が高いことから、電子素子として水分に弱い素子が本発明の積層体上に配置される際に、上記耐アルカリ基材が露出した領域を設けることにより、封止部材と上記耐アルカリ基材とを直に密着させることが可能となり、水分の浸入をより強固に防ぐことが可能となるからである。
また、封止部を上記耐アルカリ基材が露出した領域に選択的に形成することで、面内で区分けしたり、多面付けした状態で封止したりすることが可能となり、高い生産性で素子を製造できるからである。
本発明に用いられる絶縁層としては、ポリイミド樹脂を含有するものであれば特に限定されるものではないが、アルカリ性の溶液により現像もしくはエッチングによりパターニングされたものであることが好ましい。本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
ここで、アルカリ性の溶液により現像もしくはエッチングによりパターニングする手法の例としては、絶縁層が、感光性ポリイミドを含む絶縁層形成用塗工液の塗膜を露光・現像したもの(方法1)、ポリイミド前駆体を含む絶縁層形成用塗工液の塗膜上にレジストをパターン状に形成すると同時または形成後に、上記塗膜を現像によりパターニングし、次いでイミド化したもの(方法2)、または、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド膜上にレジストをパターン状に形成すると同時または形成後に、上記ポリイミド膜をエッチングによりパターニングしたもの(方法3)の、3種類を挙げることができる。
なお、方法2および方法3ではパターニング後にレジストを剥離する処理が行われる。
また、一般的に、アルカリによる現像に比較して、アルカリによるエッチングは、使用する薬液の濃度が高かったり、薬液の塩基性が高かったり、処理温度が高温であったりと、高い耐アルカリ薬液耐性が求められることが多い。また、アルカリ薬液によりレジストを剥離する場合は、一般的に剥離時には、現像もしくはエッチング時よりも使用する薬液の濃度が高かったり、薬液の塩基性が高かったり、処理温度が高温であったりと、高い耐アルカリ薬液耐性が求められることが多い。
本発明においては、いずれの方法を用いてなるものであっても良いが、なかでも、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドフィルム上にレジストを形成した後、エッチングによりパターニングしたもの(方法3)であることが好ましい。方法3では、方法1〜2と異なり、パターニング前のポリイミド膜の物理的、化学的安定性が高いため、ポリイミド膜形成後、パターニング実施前にそのほかのプロセスを適用させることが可能となる。例えば、絶縁層上に導体層を形成し、さらに導体層を所望の形状にパターニングした後に、絶縁層をパターニングすることができるからである。
本発明における感光性ポリイミドとしては、公知の手法を用いて得ることができる。具体的には、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加し、アルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体としたものを用いることができる。
本発明における光塩基発生剤を用いた感光性ポリイミドは、感光剤である光塩基発生剤の添加量を15%以下にしてもパターン形成可能であり、他の感光性ポリイミドに比べて、ポリイミド成分の重量に対する感光剤成分の割合が小さい傾向にある。
感光剤由来の残渣は、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、ポリイミド樹脂中に残存し、これらの残存物が線熱膨張係数や吸湿膨張係数を大きくする原因となることから、感光性ポリイミド樹脂を用いると、非感光性ポリイミド樹脂を用いた場合に比べて、膜物性が低下したり、剥離や反り等が発生しやすくなる傾向にある。
光塩基発生剤を用いた感光性ポリイミドは、絶縁層とした後も感光剤由来の分解残渣が少なく、線熱膨張係数や吸湿膨張係数などの特性の劣化が少なく、さらにアウトガスも少ないため、本発明に適用可能な感光性ポリイミド樹脂としては最も好ましい。
本発明における光塩基発生剤の含有量としては、ポリアミック酸等のポリイミド成分100重量部に対して0.01〜50重量部の範囲内、好ましくは0.1〜30重量部の範囲内、さらに好ましくは1〜20重量部の範囲内であることが好ましい。添加量が少なすぎると、パターニング性を低下させることがあるとともに、添加量が多いと、上記膜物性の低下やアウトガスの原因となるからである。
本発明におけるポリイミド前駆体としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させてなるポリアミック酸を挙げることができる。
本発明におけるポリイミド前駆体をイミド化する方法としては、一般的な方法を用いることができ、例えば、加熱する方法を挙げることができる。
本発明における絶縁層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
本発明におけるレジストをパターン状に形成する方法としては、一般的な方法を用いることができる。具体的には、レジスト形成用塗工液の塗布またはドライレジストフィルムを張り合わせることにより、上記絶縁層形成用塗工液の塗膜等の上にレジスト層を形成し、フォトリソグラフィー法によりパターン状とする方法を挙げることができる。
本発明に用いられる絶縁層の体積抵抗率としては、上記耐アルカリ基材と導体層との短絡を防止することができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、上記絶縁層の体積抵抗率としては、1.0×1012Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1013Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1014Ω・m以上であることがさらに好ましい。体積抵抗が高いと絶縁層を薄くすることが可能であり、本発明の積層体の放熱性を向上させることが可能であるからである。
なお、体積抵抗率は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
本発明に用いられる絶縁層の層構成としては、上記ポリイミド樹脂を含有するものであれば、単層であっても、複数層からなるものであっても良い。複数層からなるものであることが好ましい。上記絶縁層の性質をコントロールすることが容易だからである。
本発明においては、なかでも、非熱可塑性層、および、前記非熱可塑性層の導体層側表面上に形成され、前記非熱可塑性層よりもガラス転移温度の低い熱可塑性層(導体層側熱可塑性層)を含むものであることが好ましい。上記絶縁層であることにより、上記絶縁層上に形成する導体層を、金属箔をラミネートすることにより形成可能とすることができるからである。また、その結果、配線の厚膜化が容易だからである。また、非熱可塑性層を含むことにより、耐熱性や絶縁性に優れたものとすることができるからである。
また、本発明においては、特に、前記非熱可塑性層の耐アルカリ基材側表面上に形成され、前記非熱可塑性層よりもガラス転移温度の低い熱可塑性層(耐アルカリ基材側熱可塑性層)を含むものであることが好ましい。上記絶縁層であることにより、上記耐アルカリ基材をラミネートすることにより容易に接着させることができるからである。
図3および図4は、絶縁層が複数層である場合を示す概略断面図である。図3〜4は、それぞれ、絶縁層2が、熱可塑性層2a(導体層側)/非熱可塑性層2bの2層構造である場合を示すものと、絶縁層2が、熱可塑性層2a(導体層側)/非熱可塑性層2b/熱可塑性層2a(耐アルカリ基材側)の3層構造である場合を示すものである。
なお、図3〜4中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明における熱可塑性層は、非熱可塑性層よりもガラス転移温度の低いものであるが、このような非熱可塑性層と熱可塑性層とのガラス転移温度の差としては、熱可塑性層をガラス転移温度以上の温度条件として、熱可塑性層と他の部材とを加熱圧着によりラミネートした際に、非熱可塑性層が安定的にガラス転移温度以上を保つことができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、10℃以上であることが好ましく、なかでも、20℃以上であることが好ましく、特に、30℃以上であることが好ましい。上記温度差であることにより、熱可塑性層を用いて他の部材をラミネートした際に、非熱可塑性層がガラス転移温度となることを防ぐことができるからである。
本発明における熱可塑性層のガラス転移温度としては、所望の熱可塑性を有し、他の部材と安定的にラミネートすることができるものであれば特に限定されるものではなく、放熱基板に要求される耐熱性やラミネートの温度条件等に応じて適宜設定されるものである。
本発明に用いられる絶縁層の厚さとしては、所望の絶縁性を示し上記耐アルカリ基材と導体層との短絡を防ぐことができるものであれば特に限定されるものではなく、必要な耐電圧に応じて設定されるものである。
具体的には、本発明においては、50μm以下であることが好ましく20μm以下であることがさらに好ましい。上記積層体を放熱性に優れたものとすることができるからである。
また、本発明においては、使用される電圧が、1kV以上の、必要な耐電圧が高い用途に用いる場合は10μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
さらに、使用される電圧が、0.5kV〜1kV程度の場合は、1μm〜15μm、好ましくは5μm〜10μmであることが好ましい。
また、家庭用での使用など、高い耐電圧が必要でない場合、具体的には、0.5kV未満、特に0.3kV以下の場合は、放熱性の観点から1μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることが好ましい。
なお、絶縁層が熱可塑性層を含むものである場合には、その熱可塑性を用いて他の部材を安定的にラミネートできるものであれば特に限定されるものではないが、1μm〜30μmであることが好ましく、3μm〜20μmであることが好ましい。安定的に他の部材とラミネート可能なものとすることができるからである。また、上記厚みより薄いと接着力が低くなり、厚すぎると放熱性が低下する恐れがあるからである。
具体的に、上記絶縁層の線熱膨張係数としては、本発明の積層体の使用時に剥離や反り等の発生を抑制できるものであれば特に限定されるものではないが、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜40ppm/℃の範囲内であることが好ましい。温度変化時に生じる伸び縮みを抑制することができ、寸法安定性に優れたものとすることができるからである。
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、上記絶縁層のみのフィルムを作製する。上記耐アルカリ基材上に上記絶縁層を作製した後、上記絶縁層を剥離する方法や、上記耐アルカリ基材上に上記絶縁層を作製した後、上記耐アルカリ基材をエッチングで除去し、上記絶縁層を得る方法がある。次いで、得られた絶縁層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
本発明に用いられる絶縁層の線熱膨張係数と上記耐アルカリ基材の線熱膨張係数との差としては、寸法安定性の観点から、15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。上記耐アルカリ基材との線熱膨張係数が近いほど、本発明の積層体の反りが抑制されるとともに、上記積層体の熱環境が変化した際に、上記耐アルカリ基材との界面の応力が小さくなり密着性が向上するからである。これに対して、本発明の積層体は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では反らないことが好ましいのであるが、絶縁層の線熱膨張係数が大きいために絶縁層と耐アルカリ基材との線熱膨張係数の差が大きく異なると、積層体が熱環境の変化により反ってしまう。
なお、積層体に反りが発生していないとは、積層体を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
また、本発明において、絶縁層上に上記導体層とともに形成される密着層などの機能層や電子素子、電極などの部材が、形成される場合は、上記絶縁層の線熱膨張係数は、導体層や密着層などの機能層や電子素子、電極などの部材などの絶縁層上に形成される層もしくは部材の線熱膨張係数と近いことが望ましい。絶縁層の線熱膨張係数が絶縁層上に形成される層の線熱膨張係数と異なると、寸法安定性が低下するとともに剥離や反りやクラックの原因となるからである。
例えば、上記絶縁層上に形成される層が、Zn、In、Ga、Cd、Ti、St、Sn、Te、Mg、W、Mo、Cu、Al、Fe、Sr、Ni、Ir、Mgなどの金属の酸化物や、Si、Ge、Bなどの非金属の酸化物、また上記元素の窒化物、硫化物、セレン化物、およびこれらの混合物(多元素からなるセラミックの様に原子レベルで混合されているものも含む)などの無機系材料を主成分とする場合は、これらの無機系材料には、線熱膨張係数が10ppm/℃以下といった線熱膨張係数が小さいものも含まれることから、絶縁層の線熱膨張係数もより小さいことが望ましい。
本発明における絶縁層の線熱膨張係数と絶縁層上に形成される層の線熱膨張係数との差としては、具体的には、10ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは5ppm/℃以下、さらに好ましくは2ppm/℃以下である。
本発明に用いられる絶縁層の吸水性としては、上記電子素子の中には、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子など水分に弱いものが多いことから、素子内部の水分を低減するために、比較的小さいことが好ましい。吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数がある。したがって、上記絶縁層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には、0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。上記絶縁層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、上記絶縁層の吸水性を十分小さくすることができ、本発明の積層体の保管が容易であり、上記積層体を用いて素子を製造する場合にはその工程が簡便になるからである。また、上記絶縁層の吸湿膨張係数が小さいほど、上記絶縁層の寸法安定性が向上する。上記絶縁層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い耐アルカリ基材との膨張率の差によって、湿度の上昇とともに上記積層体が反ったり、上記耐アルカリ基材との密着性が低下したりする場合があるからである。
なお、吸湿膨張係数の測定方法としては、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定することができる。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
本発明に用いられる絶縁層は、上記ポリイミド樹脂を含有するものであるが、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。また、絶縁性を損なわない範囲内で、上記光塩基発生剤等を含むものであっても良い。
3.導体層
本発明に用いられる導体層は、上記絶縁層上に形成されるものであり、本発明の積層体上に配置される電子素子と電気的に接続できるものであり、通常、導電性材料からなる導電層を含むものである。
本発明における導体層に用いられる導電層を構成する材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、透明性の有無などにより適宜選択されるものであり、例えば、Al,Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属単体、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。また、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることもできる。
本発明においては、なかでも、電気抵抗率が1.0×10−6Ω・m以下であることが好ましく、なかでも、1.0×10−7Ω・m以下であることが好ましく、特に、3.0×10−8Ω・mであることがさらに好ましい。大電流を流す場合においては、損失を抑える効果が顕著となり、あわせて、発熱を少ないものとすることができるからである。
本発明に用いられる導体層の厚さとしては、本発明の積層体の用途等に応じて適宜設定されるものである。
また、本発明に用いられる導体層の形成箇所についても、本発明の積層体の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、なかでも、上記耐アルカリ基材および絶縁層とは独立してパターニングされたものであることが好ましい。所望のパターンの配線を有するものとすることができるからである。
本発明に用いられる導体層は、上記導電性材料からなる導電層を含むものであるが、必要に応じて、上記絶縁層側表面に上記絶縁層との密着性を向上させる密着層や、電子素子が配置される表面に上記導体層の酸化劣化等を防ぐめっき層などの保護層を有するものであっても良い。
本発明に用いられる密着層としては、上記絶縁層と上記導体層との密着性を向上させることができるものであれば特に限定されるものではないが、上記耐アルカリ基材に用いられる密着性層と同様のものとすることができる。
また、めっき層としては、スズ、ニッケル、銀、金めっき層を挙げることができる。また、金めっき層の下地としてニッケルめっき層が形成されていても良い。めっき層の厚さは、例えば0.01μm〜4.0μmの範囲内とすることができる。
本発明に用いられる導体層の形成方法としては、上記導体層が上記絶縁層上に形成されたものとする方法であれば特に限定されるものではない。上記絶縁層上にメタライズ法で金属層を設ける場合の方法、条件については特に限定されず、蒸着、スパッタ、メッキのいずれの方法を用いても良い。また、これらの方法を複数組み合わせる方法であっても良い。具体的には、また、上記密着層を含む場合には、まず、上記絶縁層上にスパッタ法等により、無機系材料からなる密着層を形成した後、蒸着法等により上記導電層を形成する方法を用いることができる。
また、導体層として、銅箔等を用いる場合には、絶縁層を熱可塑性ポリイミドにより形成するもしくは、絶縁層上に熱可塑性ポリイミド層を形成した後ラミネート法により導体層を形成する方法を用いても良い。
また、上記導体層をパターン状に形成する方法としては、一般的な方法を用いることができ、例えば、上記導電性材料をマスクを介して蒸着する方法や、上記導体層を形成した後、レジストを用いてエッチングする方法等を用いることができる。
4.積層体
本発明に用いられる積層体は、上記耐アルカリ基材、絶縁層および導体層を少なくとも有するものである。
本発明においては、必要に応じて熱伝導部、封止部材、冷却部等を含むものとすることができる。熱伝導部は、熱伝導性の観点から、金属からなることが好ましく、金、銀、銅、アルミからなることがさらに好ましい。熱伝導部の形成方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、導体層を形成する方法を用いることができる。また、導体層と熱伝導部が同一の材料からなる場合、同時に形成しても良い。
本発明の用途としては、電子素子を搭載可能な積層体を挙げることができ、なかでも、安定、かつ、低コスト化が要求される電子素子が搭載される配線基板に用いられることが好ましい。
B.素子
次に本発明の素子について説明する。
本発明の素子は、上述の積層体と、上記積層体上に配置された電子素子と、を有することを特徴とするものである。
このような本発明の素子について図を参照して説明する。図5は、本発明の素子の一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、本発明の素子20は、上記積層体10の導体層3上に電子素子21が配置されたものである。
なお、この例においては、上記導体層3を背面電極層22として用い、その上に、発光層を含むEL層23、透明電極層24、透明基板25がこの順で積層された有機EL素子を電子素子21として有するものである。
なお、図5中の符合については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する
本発明によれば、上記積層体を用いるものであるため放熱性に優れたものとすることができる。したがって、電子素子や周囲の部材の劣化の少ないものとすることができる。また、剥離や短絡のないものとすることができる。
本発明の素子は、上記積層体および電子素子を少なくとも有するものである。
以下、このような本発明の素子の各構成について詳細に説明する。
なお、上記積層体については、上記「A.積層体」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.電子素子
本発明に用いられる電子素子としては、電気信号により機能を発現するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、LED素子、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子、パワー半導体などの半導体素子が挙げられる。
なお、このような電子素子については、一般的に用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
例えば、EL素子としては、透明基板、透明電極層、少なくとも発光層を含むEL層、および背面電極層を少なくとも有するものを用いることができる。
2.素子
本発明の素子は上記積層体と、上記積層体上に配置された電子素子とを有するものである。
また、上記積層体の導体層は、上記電子素子に含まれる電極層の一部として用いられるものとすることができる。例えば、上記電子素子がEL素子である場合には、上記積層体の導体層が、上記EL素子の背面電極層として用いられるものとすることができる。
本発明の素子の製造方法としては、上記素子の各構成を精度よく密着したものとすることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記積層体上に、上記電子素子の各構成を積層するものであっても良く、上記積層体と、上記電子素子とを別個に形成し、両者を接着剤やラミネートなどによって貼り合わせる方法であっても良い。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
1.絶縁層形成用樹脂溶液の調製
(1)製造例1
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
(2)製造例2
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で、下記表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜18を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)またはピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4−Bis(4−aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2‘−Dimethyl−4,4’−diaminobiphenyl(TBHG)、2,2‘−Bis(trifluoromethyl)−4,4’−diaminobiphenyl(TFMB)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)の1種または2種を用いた。
(3)製造例3
上記ポリイミド前駆体溶液1および11に、添加剤としてDNCDP({[(4,5-ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジン)または下記式で表される光塩基発生剤4MeOC−Piを下記表2に示す配合比で添加し、感光性ポリイミド1〜4を調製した。
なお、表2中の添加剤の配合量は、各ポリイミド前駆体溶液100重量部に対する添加剤の重量部を示すものである。
Figure 0005961970
(4)その他
その他のポリイミド前駆体溶液19〜21として、新日本理化製のEN−20(ポリイミド前駆体溶液19)、SN−20(ポリイミド前駆体溶液20)およびPN−20(ポリイミド前駆体溶液21)を準備した。
また、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂 EPICLON 850S(エポキシ当量183〜193:DIC株式会社製)19gとヘキサンジアミン2.9gを混合した溶液(比較エポキシ樹脂溶液)を準備した。
Figure 0005961970
Figure 0005961970
2.線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価
上記ポリイミド前駆体溶液1〜21および感光性ポリイミド1〜4を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド樹脂1〜25のフィルムを得た。
また、比較エポキシ樹脂溶液を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、80℃のオーブンで60分加熱した後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚55μmのフィルム(エポキシフィルム1)を得た。
(a)線熱膨張係数
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。評価結果を表3に示す。
(b)湿度膨張係数
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を湿度膨張係数(C.H.E.)とした。この際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。評価結果を表3に示す。
(c)基板反り評価
厚さ18μmの電解銅箔(日鉱マテリアルズ製)(支持基板)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1〜21および感光性ポリイミド1〜4を用いて、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミドフィルム1〜25を形成した。その後、銅箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
このサンプルを、測定用治具であるSUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%RHの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。評価結果を表3に示す。
(d)貯蔵弾性率
上記の手法により作製したポリイミドフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。貯蔵弾性率は、RSA3(TAインスツルメント社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を5℃/分、測定周波数を1Hzとして0℃〜400℃の範囲で測定した。室温(25℃)から250℃ならびに、室温から300℃における、貯蔵弾性率の最小値を表3に示す。また、ガラス転移温度(Tg)が280℃未満のサンプルについては、室温からガラス転移点温度+20℃までの温度領域における貯蔵弾性率の最小値についてもあわせて示す。
(e)ガラス転移点温度(Tg)
上記の貯蔵弾性率測定において、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った値であるtanδのピークトップをガラス転移点温度とした。評価結果を表3に示す。
(f)絶縁破壊電圧測定
上記の手法により作製したポリイミドフィルム1(20ミクロン厚)を用いて、耐電圧試験機PM55ADZ(高砂製作所製) デジタルマイクロスコープKH−7700(HIROX社製)を用いて絶縁破壊電圧を測定したところ、6.0kVであった。
また、上記の手法により作製したエポキシフィルム1(100ミクロン厚)を用いて、絶縁破壊電圧を測定したところ、7.0kVであった。
(g)体積抵抗率測定
10cm角に切り出した厚さ150μmの銅基材(古河電工社製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をスピンコーターで硬化後膜厚6μmとなるようコーティングし、100℃のホットプレートで10分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理(昇温速度 10℃/分、自然放冷)することにより、絶縁層を形成した体積抵抗率測定サンプル1を作製した。
体積抵抗率測定サンプル1を用いて、ハイレスタUP MCP−HT450型およびMCP−JB03(三菱化学製)を用いて、JIS−K6911準拠の方法で印加電圧DC250Vにて体積抵抗率を測定したところ、3.4×1014Ω・mであった。
10cm角に切り出した厚さ150μmの銅基材(古河電工社製)上に、上記比較エポキシ樹脂溶液をスピンコーターで硬化後膜厚100μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分加熱することにより、絶縁層を形成した体積抵抗率測定比較サンプル1を作製した。
また、上記の手法により作製した体積抵抗率測定比較サンプル1を用いて、ハイレスタUP MCP−HT450型およびMCP−JB03(三菱化学製)を用いて、JIS−K6911準拠の方法で印加電圧DC250Vにて体積抵抗率を測定したところ、3.6×1012Ω・mであった。
Figure 0005961970
銅箔の線熱膨張係数は16.2ppm/℃であることから、ポリイミドフィルムと金属箔(支持基板)との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表3より、ポリイミドフィルムの吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
(h)放熱性評価
50mm角の無アルカリガラスNA35(厚さ0.7mm、アヴァンストレート社製)を100度のホットプレート上で表面温度が安定するまで加熱した(加熱時表面温度90度)。
縦150mm、横100mmの無アルカリガラスNA35上に、上記体積抵抗率測定サンプル1を絶縁層が上側になるように置き、上記の加熱した50mm角のガラスをサンプルの絶縁層上にのせ、5秒後のガラスの表面温度を測定したところ、48度であった。
同様に体積抵抗率測定比較サンプル1を用いて5秒後の温度を測定したところ、62度であった。
以上より、絶縁層を薄膜化することにより、放熱性が高まることが明らかとなった。
また、上記ポリイミド前駆体溶液1を、5cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)上にスピンコートのより塗布し、100℃のホットプレート上で15分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理することにより、アルミ基材上に膜厚1μm〜85μmのポリイミド層が形成された放熱性評価基材を作成した。また、同じアルミ基材に対しプリプレグ(R-1551XE 60μm(パナソニック電工社製))をプレスすることにより、比較放熱性評価基材を作成した。
作成した基材の絶縁層面側の中心に、5mm角に切り出したシリコーンゴム TC−50HSV−1.4(信越化学工業株式会社製)を用いて、5mm角のマイクロセラミックヒーターMS−M5(坂口電熱株式会社製)を固定した。PMC35−2A(菊水電子工業株式会社製)を用いて、マイクロセラミックヒーターに1Wの電力を印加し、30分程度経過した後、定常状態となった際のマイクロセラミックヒーターの表面の中心の温度を、シリコーンゴム TC−100HSV−1.4(信越化学工業株式会社製)を用いてマイクロセラミックヒーター上に固定した熱電対により測定した。また、同時に支持基材であるアルミ基材の温度を接触式温度計HA−302K(安立計器株式会社製)を用いて測定した。
なお、支持基板上の温度計は、平面視上、ヒーターの中心(支持基材の中心)およびヒーターの中心から最も近い支持基材(絶縁層)の端(辺)の中間地点と、温度計の中心とが重なるように接触させて測定した。
結果を、下記表4に示す。
Figure 0005961970
表4より、ポリイミド膜厚が20μmを超える領域では、膜厚が厚くなっても、さほど基板温度やヒーター表面温度に差がでないが、ポリイミド膜厚が20μm以下の領域では薄いほど、基板温度が高く、ヒーター表面温度が低いことから、放熱性に優れることが明らかとなった。特に、ポリイミド膜厚10μm以下の領域でその効果が顕著であった。また、同程度の厚みでは、絶縁層の材質の違いによって、顕著な差は見られなかった。
(i)絶縁破壊電圧測定
上記ポリイミド前駆体溶液1を、ガラス上に貼り付けた厚さ18μmのSUS304箔(東洋製箔(株)製)上に塗布し、100℃のホットプレート上で15分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理することにより、SUS箔上に下記表5に示す膜厚1μm〜20μmのポリイミド層(絶縁層)を形成した。
次いで、膜厚5μm以上のものは、SUS箔をエッチングすることにより得たポリイミドフィルムを、耐電圧試験機PM55ADZ(高砂製作所製) デジタルマイクロスコープKH−7700(HIROX社製)を用いて、直流もしくは交流に対する絶縁破壊電圧を測定した。また、膜厚5μm以下のものは、ポリイミド層を形成したSUS箔の形態で同様に測定を行った。結果を、下記表5に示す。
Figure 0005961970
(j)耐プロセス耐性試験
(測定サンプル作製)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、厚み1μmの無電解Niメッキを施し、無電解Niメッキアルミ基材を作製した。
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施し、電解Niメッキアルミ基材を作製した。
また、硫酸中での陽極酸化処理(厚み5〜25μm)ならびに、アクリルクリア塗装を施したアルミ基材を作製した。
(耐プロセス試験)
メッキ、陽極酸化処理、アクリルクリア塗装を施したアルミ基材に対して、下記のプロセス試験を実施した。比較として、厚さ150μmの銅基材(古河電工社製)、無処理の厚さ1000μmのアルミ基材(A1050 H24,A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)についても同様の評価を実施した。結果を下記表6に示す。
・耐熱性:窒素雰囲気下 350℃ 1時間(評価、○:変化なし、×:変化あり)
・アルカリ性薬液:TMAH2.38wt%(東京応化製)、NaOH水溶液0.1mol/L(評価、処理後の基材表面から気泡(水素)が発生するまでに要する時間(秒))
・酸性薬液:硫酸(10%:体積分率)、塩酸(1mol/L)(評価、処理後の基材表面から気泡(水素)が発生するまでに要する時間(秒))
Figure 0005961970
表6より、Niメッキならびに硫酸中での陽極酸化処理を施すことにより、耐アルカリ性を向上させることができることが明らかとなった。Niメッキ、特に電解メッキがプロセス耐性向上に有効であることが明らかとなった。
また、有機被膜は耐アルカリ性は有するが、耐熱性は有さないことが明らかとなった。
[積層体製作例1−1]
(前駆体パターニング+電解メッキ)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、ポリイミド前駆体膜上にレジスト製版し、TMAH水溶液を用いて、現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、レジストパターンをアルカステップHTOを用いて、剥離したのち、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板1−1を得た。
[積層体製作例1−2]
(前駆体パターニング+無電解メッキ)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、厚み1μmの無電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、ポリイミド前駆体膜上にレジスト製版し、TMAH水溶液を用いて、現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、レジストパターンをアルカステップHTOを用いて、剥離する際に、アルミ表面から気泡が生じ、アルミ表面が白化した。窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A1−2を得た。
[積層体製作例1−3]
(前駆体パターニング+陽極酸化)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、厚み50μmの陽極酸化硫酸アルマイト被膜を形成した。アルマイト被膜を形成したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、ポリイミド前駆体膜上にレジスト製版し、TMAH水溶液を用いて、現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、レジストパターンをアルカステップHTOを用いて、剥離したのち、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A1−3を得た。
[比較積層体製作例1]
(前駆体パターニング+無処理)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、上記ポリイミド前駆体溶液1を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、ポリイミド前駆体膜上にレジスト製版し、TMAH水溶液を用いて、現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像した際に、アルミ表面から気泡が生じ、アルミ表面が白化した。
その後、レジストパターンをアルカステップHTO(ニチゴーモートン社製)を用いて、剥離を試みたが、アルミ表面から激しく気泡が生じたため、レジストパターンを剥離することが不可能であった。
[積層体製作例2−1]
(感光性PI+電解メッキ)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれ塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアにコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。フォトマスクを介して、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、TMAH水溶液を用いて現像後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚3μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のポリイミド膜を形成し、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A2−1、積層体用基板A2−2を得た。
[積層体製作例2−2]
(感光性PI+無電解メッキ)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、厚み1μmの無電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれ塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアにコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。フォトマスクを介して、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、TMAH水溶液を用いて現像後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚3μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のポリイミド膜を形成し、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A2−3、積層体用基板A2−4を得た。
[積層体製作例2−3]
(感光性PI+陽極酸化)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、厚み10μmの陽極酸化硫酸アルマイト被膜を形成した。アルマイト被膜を形成したアルミ上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれ塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアにコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。フォトマスクを介して、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、TMAH水溶液を用いて現像後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚3μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のポリイミド膜を形成し、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A2−5、積層体用基板A2−6を得た。
[比較積層体製作例2]
(感光性PI+無処理)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれ塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアにコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。フォトマスクを介して、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、TMAH水溶液を用いて現像した際に、アルミ表面から気泡が生じ、アルミ表面が白化した。
[積層体製作例3]
(イミド化後パターニング 電解メッキ)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液12を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
その後、上記積層体のポリイミドからなる絶縁層上に、レジストパターンを形成した。絶縁層が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて除去することにより、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A3を得た。
[比較積層体製作例3]
(イミド化後パターニング+無処理)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、上記ポリイミド前駆体溶液12をダイコーターで塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
その後、上記積層体のポリイミドからなる絶縁層上に、レジストパターンを形成した。絶縁層が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて除去する際に、アルミ表面から激しく発泡したため、絶縁層除去部を形成することが不可能であった。
[積層体製作例4]
(イミド化後パターニング+電解メッキ+熱可塑層形成)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液12を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚10μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
形成したポリイミド層上に、上記ポリイミド前駆体溶液19を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚10μmとなるようコーティングし、100℃のオーブン中、大気下で15分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、250℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
その後、上記積層体のポリイミドからなる絶縁層上に、レジストパターンを形成した。絶縁層が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて除去することにより、ポリイミドからなる絶縁層の外周部から、10mm内側の位置から中央部に向かって5mm幅で除去された絶縁層除去部を有する積層体用基板A4を得た。
[実施例1]
以下のようにして、積層体用基板A1−1の絶縁層上に導体層を形成した。
先ず、積層体の、絶縁層形成側全体に、以下のように、粗面化処理を行い、水洗後、更に、以下のようにして、触媒付与を行い、無電解めっきを行い、無電解めっき層を0.3μm厚に形成した。
<粗面化処理条件>
マコー(株)製、ウェットブラスト装置
アルミナ砥石、0.7kg/mの水圧
10m/minの処理速度
<無電解めっき条件>
センシタイジング:S‐10X(上村工業製) 3分
アクチベーテイング:A‐10X(上村工業製) 3分
無電解めっき:NPR‐4(上村工業製) l分
次いで、ドライフィルムレジスト(旭化成製、AQ5038)を用い、50μmの厚みにコーティング、露光現像により、導体層の形状に合せた開口部を有する、レジスト層を形成した。
<処理条件>
プリベーク:120℃、5分
露光:60mJ/cm
現像:1%炭酸ソーダ(30℃)、1分
次いで、以下のようにして、レジスト層の開口から露出した無電解めっき層上に、順に、電解光沢ニッケルめっき、電解銅めっき、電解無光沢メッキ、電解金めっきを行い、電解光沢ニッケルめっき層、電解銅めっき層、電解無光沢メッキ層、電解金めっき層を、それぞれ、0.2μm、10μm、0.2μm、0.1μmの厚さに形成した電解めっき層からなる導体層を配設した。
<電解光沢Niめっきの液組成及び条件>
硫酸ニッケル(6水塩) 300g/l
塩化ニッケル(6水塩) 45g/l
ホウ酸 40g/l
PCニッケル A−1 10ml/l(上村工業株式会社製)
PCニッケル A−2 1ml/l(上村工業株式会社製)
温度 50℃
電流密度 1A/dm
時間 1分
硫酸銅めっき10μmを形成
<電解銅めっきの液組成及び条件>
硫酸銅(5水塩) 70g/l
硫酸 200g/l
塩酸 0.5ml/l
スーパースロー2000 光沢剤 10ml/l
スーパースロー2000 補正剤 5ml/l
温度 30℃
電流密度 4A/dm
時間 12分
<電解無光沢Niめっき>
WHNめっき液(日本高純度化学社製)
温度 50℃
電流密度 1A/dm
時間 1分
<電解金めっき>
テンペレジストK−91S(目本高純度化学))
温度 60℃
電流密度 0.4A/dm
時間 1.25分
次に、レジスト層を水酸化ナトリウム3%溶液、50℃、1分にて剥離除去し、洗浄した後、露出した無電解めっき層140をニムデンリップC‐11にてソフトエッチングして剥離した。
更に、触媒を除去するために、マコー(株)製、ウェットブラスト装置にて、アルミナ砥石、0.5kg/mの水圧、10m/minの処理速度で処理を行い、触媒を除去した。次いで、180℃、lhr、窒素雰囲気下で熱処理を行い導体層を形成し、積層体1−1とした。
[実施例2]
積層体用基板A1−1の代わりに、積層体用基板A1−2,A1−3、A2−1,A2−2、A2−3,A2−4、A2−5,A2−6、A3を用いた以外は同様の方法により、積層体1−2,1−3、2−1,2−2、2−3,2−4、2−5,2−6、3を作製した。
[実施例3]
以下のようにして、積層体用基板A1−1の絶縁層上に導体層を形成した。
先ず、積層体用基板A1−1の、絶縁層形成側全体に、クロムスパッタ、次いで銅スパッタを施し、メッキの下地層を0.3μm厚に形成した。
次いで、ドライフィルムレジストを用いて、導体層の形状に合せた開口部を有する、レジスト層を形成した後、上記電解銅めっき液を用いて、電解銅めっきを行い、10μm厚の電解銅めっき層からなる導体層を配設した。
次に、レジスト層をレジストパターンをアルカステップHTO(ニチゴーモートン社製)を用いて、剥離した後、CA5330H/株式会社メック製を用いて銅層のフラッシュエッチをした後、強アルカリ性(pH>13)のWCR−4015(ADEKA社製)を用いてCr層のフラッシュエッチを実施することにより導体層を形成し、積層体C1−1とした。
[実施例4]
積層体用基板A1−1の代わりに、積層体A1−2,A2−1,A2−2、A2−3,A2−4、A3を用いた以外は同様の方法により、積層体C1−2,C2−1,C2−2、C2−3,C2−4、C3を作製した。
[比較例]
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚5μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理(昇温速度 10℃/分、自然放冷)することにより、絶縁層を形成した比較積層体を作製した。
次いで、以下のようにして、比較積層体の絶縁層上に導体層を形成した。
先ず、積層体の、絶縁層形成側全体に、クロムスパッタ、次いで銅スパッタを施し、メッキの下地層を0.3μm厚に形成した。
次いで、ドライフィルムレジストを用いて、導体層の形状に合せた開口部を有する、レジスト層を形成した後、上記電解銅めっき液を用いて、電解銅めっきを行い、10μm厚の電解銅めっき層からなる導体層を配設した。
次に、レジスト層をレジストパターンをアルカステップHTO(ニチゴーモートン社製)を用いて、剥離する際にアルミ表面から気泡が生じ、アルミ表面が白化した。
CA5330H/株式会社メック製を用いて銅層のフラッシュエッチをした後、強アルカリ性(pH>13)のWCR−4015(ADEKA社製)を用いてCr層のフラッシュエッチを実施する際に、アルミ表面から激しく気泡が生じたため、Cr層を完全に除去することが不可能であった。
[実施例5]
(熱可塑層PI銅箔ラミネート)
16cm角に切り出した厚さ1000μmのアルミ基材(A5052 H34 萬世興業株式会社より購入)に、給電層作製のため、無電解Niメッキを施した後、厚み1μmの電解Niメッキを施した。Niメッキを施したアルミ上に、上記ポリイミド前駆体溶液12を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚20μmとなるようコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
形成したポリイミド層上に、上記ポリイミド前駆体溶液19を塗工幅150mmのダイコーターで150mm角のエリアに硬化後膜厚10μmとなるようコーティングし、100℃のオーブン中、大気下で15分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、250℃、1時間熱処理した(昇温速度 10℃/分、自然放冷)。
形成したポリイミド層上に銅箔(BHY−22B−T 70μm厚 日鉱金属株式会社製)を重ね合わせて、プレス温度210℃で、20分間プレスすることにより導体層を形成した。
積層体の両面にメタルエッチング用のドライフィルムレジストをラミネートし、耐アルカリ基材側には全面露光を、導体層側にはパターン露光し、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、導体層上にレジストパターンを形成した。次に、エッチング液として塩化第2鉄水溶液を用い、レジストパターンを介して、導体層にパターンエッチングを施した後、レジストパターンを剥離した。
その後、パターニングされた導体層上に、除去したい絶縁層部分が露出するようにレジストパターンを形成した。絶縁層が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて除去することにより、ポリイミドからなる絶縁層が所望のパターン上に除去された積層体Dを得た。
[実施例6]
陽極として銅が2mm幅のライン状にパターニングされた積層体C−1を準備した。放熱基板基板上に、α−NPD(N,N'-di[(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl]-1,1'-biphenyl)
-4,4'-diamine)とMoO3とを体積比4:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で膜厚40nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α−NPDを真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚20nmとなるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。次に、ホスト材料としてAlq3(Tris-(8-hydroxyquinoline)aluminium)を用い、緑色発光ドーパントとしてC545tを用いて、上記正孔輸送層上に、Alq3およびC545tを、C545t濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで35nmの厚さに真空蒸着により成膜し、発光層を形成した。次に、Alq3を真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚10nmとなるように真空蒸着し、電子輸送層を形成した。次に、Alq3およびLiFを共蒸着にて、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度0.1Å/secで15nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子注入層を形成した。最後に、IZOを膜厚200nmとなるようにスパッタすることにより陰極を形成した。
陰極の形成後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した後、バリアフィルムを用いてELの封止を行うことにより、放熱基材上にEL素子を形成した。
1 … 耐アルカリ基材
2 … 絶縁層
2a … 熱可塑性層
2b … 非熱可塑性層
3 … 導体層
4 … 金属基材
5 … 耐アルカリ保護層
10 … 積層体
20 … 素子
21 … 電子素子
22 … 背面電極層
23 … EL層
24 … 透明電極層
25 … 透明基板

Claims (6)

  1. 金属基材および前記金属基材表面に形成された耐アルカリ保護層を有する耐アルカリ基材と、
    前記耐アルカリ基材上にパターン状に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層と、
    前記絶縁層上に形成された導体層と、
    を有し、
    前記金属基材が、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金からなるものであり、
    前記耐アルカリ保護層が、無機材料を主成分とする耐アルカリ材料からなるものであり、
    前記耐アルカリ基材の厚みが70μm以上であり、
    前記耐アルカリ基材の波長400nm〜780nmの範囲内の光の表面反射率の最低値が、40%以上であり、
    前記耐アルカリ保護層が、メッキ層であり、
    前記耐アルカリ保護層の形成箇所が、前記金属基材の全表面であることを特徴とする積層体。
  2. 前記絶縁層が、アルカリ性の溶液により現像もしくはエッチングによりパターニングされたものであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記絶縁層が、非熱可塑性層、および、前記非熱可塑性層の前記導体層側表面上に形成され、前記非熱可塑性層よりもガラス転移温度の低い導体層側熱可塑性層を含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
  4. 前記絶縁層が、前記非熱可塑性層の前記耐アルカリ基材側表面上に形成され、前記非熱可塑性層よりもガラス転移温度の低い耐アルカリ基材側熱可塑性層を含むものであることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
  5. 前記絶縁層の厚さが、1μm〜7μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の積層体。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の積層体と、
    前記積層体上に配置された電子素子と、
    を有することを特徴とする素子。
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