JP2011222333A - 熱伝導性封止部材およびそれにより封止された電子デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、水分の遮断性が極めて高く、かつまた放熱性を備えた熱伝導性封止部材を提供することを主目的とするものである
【解決手段】本発明は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、熱伝導性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように形成された絶縁層除去部とを有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供することにより、上記目的を達成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばエレクトロルミネッセンス素子等の電子素子を封止するための封止部材、およびこの封止部材により上記電子デバイスが封止された電子デバイスに関するものである。
近年、開発が進んでいる電子デバイスの中には、例えばエレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す場合がある。)素子等のように、水分に対する耐性が弱く、水分の影響により表示品質等のデバイスの品質が低下する電子デバイスがある。
このような電子デバイス内への水分の浸入を防止する手法としては、EL素子を封止部材または封止構造によって封止するのが主流であり、従来から種々の検討がなされている。
例えば、素子の支持基板にガラス基板を接着剤で貼り合せることにより、素子の封止が一般的に行われている。しかしながら、ガラス封止は封止性能に優れるものの、ガラス基板が数百μm以上と分厚く、素子全体を薄型化することが困難である。特に、断面形状がコの字型に加工されたガラス製の封止キャップで封止する場合には、強度を持たせるために封止キャップを厚くする必要があるので、薄型化がさらに困難となる。また、ガラスの加工性の問題により、接着部分の幅を細くすることが困難であり、素子の小型化が阻まれる。
一方、このような電子デバイスにおいては、駆動により熱を発生するものがあり、このような熱が、電子デバイス内部に蓄熱することにより、電子デバイスの駆動を阻害するといった悪影響を及ぼす場合もある。
これらの問題、すなわち水分の浸入の防止や内部での蓄熱の防止といった問題を解決するために、封止部材または封止構造に放熱性を付与する検討がなされており、例えば、金属板または金属箔上に、EL素子の発熱を吸熱する吸熱体と、この吸熱体で吸熱した熱を外部へ放熱する放熱体とが順に積層された封止構造(例えば特許文献1〜3参照)が提案されている。また、封止部材または封止構造ではなくEL素子を支持する基板に放熱性を付与する検討もなされている(例えば特許文献4参照)。
しかしながら、これらの方法は、EL素子上に接着剤を塗布し、さらにEL素子上に封止構造を形成し、その後に接着剤を硬化させるため、製造工程が煩雑である。このような問題点を解決する方法として、所定の熱伝導率を有する金属板の少なくとも片面が絶縁層で被覆された封止部材を用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。
特開2008−10211号公報 特開2008−34142号公報 特開2008−181832号公報 特開2006−331694号公報 特開2006−331695号公報
しかしながら、このような封止部材を用いる方法では、封止に際して支持基板と金属板との間に、必ず絶縁層が介在することになる。具体的には、上記封止部材と支持基板とを水分を透過させない封止樹脂で封止した場合であっても、封止樹脂は支持基板と絶縁層との間に形成されることになるため、封止樹脂と金属板との間に絶縁層が介在することになり、絶縁層の端面が露出する。ここで、絶縁層は有機膜で形成されているものであるので、水分に対するバリア性が必ずしも十分でない場合があり、このような場合は、絶縁層の端面から水分が浸入し、内部に水分を透過させてしまう恐れがあった。
絶縁層の端面を露出させないために、上記封止部材の外周を囲むように封止樹脂を配置して封止樹脂で封止部材の端面を覆うことにより封止する方法も考えられる。しかしながら、封止部分が封止部材の外側に形成されることから、電子デバイスの形状が大型化してしまうといった問題点があった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、水分の遮断性が極めて高く、かつ放熱性を備えた熱伝導性封止部材を提供することを主目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するために、金属基材と、上記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有することを特徴とする熱伝導性封止部材を提供する。
本発明によれば、上記絶縁層除去部を有するものであるので、本発明の熱伝導性封止部材を用いて、水分遮蔽性を有するバリア性基板上に形成された電子素子を封止する際に、上記絶縁層除去部に封止樹脂からなる封止樹脂部を形成することにより、上記金属基材と上記バリア性基板とを直に上記封止樹脂部により封止することが可能となる。これにより、絶縁層を介して封止樹脂部により封止された場合と比較して、より水分遮断性の高い封止を行うことが可能となる。また、放熱性の高い金属基材により封止することができることから、電子素子内部で発生した熱を速やかに放熱することが可能となる。さらに、絶縁層の微細加工により絶縁層除去部の幅を狭くすることが可能であり、素子の大型化に寄与するとともに、金属基材および絶縁層による熱伝導性封止部材の薄膜化が可能であり、素子の薄型化を実現することができる。
本発明においては、上記絶縁層除去部が、上記絶縁層の外縁より内側に形成されていることが好ましい。このように上記絶縁層除去部が、上記絶縁層の外縁より内側に形成されていることにより、絶縁層除去部の外側に絶縁層が存在することになる。これにより、上述した封止樹脂部を形成する際には、絶縁層除去部に封止樹脂を充填すればよいので封止樹脂部の形成が容易であり、また施工性が向上するという利点がある。さらに、封止樹脂を上記絶縁層除去部に配置して上記電子デバイスのバリア性基板と圧着した際に上記封止樹脂が外側に流れ出すことがないため、より封止性の高い封止樹脂部を形成することが可能となる。また、このような構成の場合には、封止の際に、素子内部と外部との気圧差によって、封止樹脂部に外部とのリークパス(外部と内部との間の連通孔)が形成されるのを低減することができるため、水分遮蔽性を向上させ、封止性をより一層高めることが可能である。
また、本発明においては、上記絶縁層除去部は、上記絶縁層の中心部から外縁方向に複数周形成されていることが好ましい。このように絶縁層除去部が複数周形成されてことにより、それぞれの絶縁層除去部に封止樹脂部を形成した場合、最外周の封止樹脂部が完全な封止とならずに外部から水分が内部に浸入してきたとしても、その内側にさらに封止樹脂部が存在することになることから、完全な水分の遮断を可能とすることができるからである。
本発明においては、上記絶縁層除去部の幅が、20μm〜10mmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さい場合は、絶縁層除去部に封止樹脂を充填することが困難になる場合や封止樹脂部を形成した際に封止性に劣る可能性があるからであり、上記範囲より大きい場合は、封止性が向上するものの得られる素子の小型化を阻害する可能性があるからである。
本発明では、さらに上記絶縁層上に形成され、耐熱性を有する粘着層を有することが好ましい。このように粘着層が形成されているので、熱伝導性封止部材の粘着層を電子素子などの被封止物に貼り付けることによって、粘着層が被封止物の凹凸に追従し、熱伝導性封止部材と被封止物とを密着させることができる。よって、煩雑な工程を要することなく簡便な方法で被封止物を封止することが可能となるからである。
本発明においては、上記粘着層上に剥離層が形成されていることが好ましい。本発明の熱伝導性封止部材の取り扱いが容易になるからである。
本発明では、上記絶縁層の厚みが0.5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。絶縁層の厚みが薄すぎると絶縁性が低下し、厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
また、本発明においては、上記絶縁層がポリイミドを主成分とすることが好ましい。ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となり、特にポリイミドを主成分とすることにより、絶縁層の薄膜化が可能となり絶縁層の熱伝導性が向上し、より熱伝導性に優れた熱伝導性封止部材とすることができるからである。
このように、ポリイミドを主成分とする樹脂を絶縁層に用いる場合は、上記絶縁層の吸湿膨張係数が0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましい。絶縁層は吸水性が低いことが好ましいからである。
また、ポリイミドを主成分とする樹脂を絶縁層に用いる場合は、上記絶縁層の線熱膨張係数が0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましい。絶縁層の線熱膨張係数が上記範囲であれば、絶縁層および金属基材の線熱膨張係数を近いものとすることができ、熱伝導性封止部材の反りを抑制できるとともに絶縁層および金属基材の密着性を高めることができるからである。
さらに、ポリイミドを主成分とする樹脂を絶縁層に用いる場合は、上記絶縁層の線熱膨張係数と上記金属基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましい。上述したように、絶縁層および金属基材の線熱膨張係数が近いほど、熱伝導性封止部材の反りを抑制できるとともに絶縁層および金属基材の密着性が高くなるからである。
本発明は、水分バリア性を有するバリア性基板と、上記バリア性基板上に形成された電子素子と、上記電子素子を覆うように配置された熱伝導性封止部材とを有する電子デバイスであって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されてない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有し、上記絶縁層除去部に封止樹脂からなる封止樹脂部が形成され、上記バリア性基板と上記熱伝導性封止部材との間で、上記電子素子が封止されていることを特徴とする電子デバイスを提供する。
本発明によれば、上記絶縁層除去部に封止樹脂部が形成され、これにより上記バリア性基板と上記熱伝導性封止部材との間で上記電子素子が封止されていることから、上記封止樹脂部が、金属基材とバリア性基板と直に接触して封止することができる。これにより、絶縁層を介して封止する場合と比較して、水分の浸入をより高い確率で遮断することが可能となる。したがって、水分の浸入による不具合の可能性の極めて少ない電子デバイスとすることができる。また、上記金属基材を有する熱伝導性封止部材により封止されていることから、放熱性を高くすることが可能となる。これにより、電子素子内での蓄熱による不具合の無い電子デバイスとすることが可能となる。
本発明においては、上記電子素子が、EL素子であることが好ましい。EL素子は、水分に弱く、さらに蓄熱による不具合が生じる電子素子であり、本発明の効果をより有効に奏するものであるからである。
本発明においては、絶縁層除去部を有するので、この部分に封止樹脂部を形成することにより、より高い水分封止効果を得ることができるといった効果を奏する。
本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略平面図および概略断面図である。 本発明の電子デバイスの一例を示す概略断面図である。 本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略平面図および概略断面図である。 本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。 本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。 本発明の熱伝導性封止部材の他の例を示す概略断面図である。 本発明例の有機EL素子の初期の発光状態を示す写真である。 比較例の有機EL素子の初期の発光状態を示す写真である。 本発明例の有機EL素子の高温保存試験後の発光状態を示す写真である。 比較例の有機EL素子の高温保存試験後の発光状態を示す写真である。
以下、本発明の熱伝導性封止部材および電子デバイスについて詳細に説明する。
A.熱伝導性封止部材
まず、本発明の熱伝導性封止部材について説明する。
本発明の熱伝導性封止部材は、金属基材と、上記金属基材上に形成され、熱伝導性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有することを特徴とするものである。
本発明の熱伝導性封止部材について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の熱伝導性封止部材の一例を示す概略断面図である。ここで、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。図1に例示する熱伝導性封止部材1は、金属基材2と、金属基材2上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層3と、上記絶縁層3上に形成された粘着層4と、上記金属基材2上に上記絶縁層3および粘着層4が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層3の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部10とを有するものである。
図2は、本発明の熱伝導性封止部材を用いて封止した電子デバイスの一例を示す概略断面図である。図2に例示する電子デバイス20は、水分バリア性を有するバリア性基板21と、バリア性基板21上に形成された電子素子22と、上記電子素子22を覆うように形成された上記図1で示す熱伝導性封止部材1とを有するものである。ここで、上記バリア性基板と上記熱伝導性封止部材1とは、上記熱伝導性封止部材1の粘着層4により接着されている。
上記熱伝導性封止部材1の絶縁層除去部10には、封止樹脂からなる封止樹脂部23が配置されており、この封止樹脂部23は上記熱伝導性封止部材1の金属基材2と上記バリア性基板21とに直接密着することにより、上記電子素子22を封止している。
本発明においては、このように電子素子を封止する際に、封止樹脂部が直に金属基材およびバリア性基板と直に接した状態で封止することができる。上記金属基材およびバリア性基板の水分に対するバリア性は、通常極めて高いものであることから、封止樹脂部がこのように金属基材およびバリア性基板と直接接した状態で封止することにより、電子素子に対して極めて高い水分に対する封止性を発揮することが可能となる。
一般に金属基材は熱伝導性にも優れている。したがって本発明の熱伝導性封止部材においては、水分の遮断性が高いとともに、熱を速やかに伝導もしくは放射することができる。よって、このような本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合、熱伝導性が高く、発熱による悪影響を抑制することができ、発光ムラのない均一な発光を実現し、かつ寿命の短縮や素子破壊を低減することができる。また、熱伝導性封止部材は上述したように水分に対するバリア性にも優れるため、発光特性を長期間に亘って安定して維持することができる。
また、絶縁層の微細加工により絶縁層除去部の幅を狭くすることが可能であり、発光エリアを大きくとることができるとともに、金属基材および絶縁層による熱伝導性封止部材の薄膜化が可能であり、素子の薄型化を実現することができる。
なお、上記図1および図2に示す例では、絶縁層3上に粘着層4が形成された例を示したが、粘着層4は任意の構成であり、絶縁層3が他の手段により電子素子22と接着する場合は、特に必要無い部材となる。
以下、本発明の熱伝導性封止部材の各構成について説明する。
1.絶縁層除去部
本発明における絶縁層除去部は、金属基材上に絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された部位を示すものである。
(1)金属基材上に絶縁層が形成されてない部分
本発明における絶縁層除去部は、上述したように電子デバイスにおいて電子素子を封止する際に、封止樹脂部が形成される部位であり、この封止樹脂部により金属基材とバリア性基板との間を封止するものである。したがって、上記絶縁層除去部においては絶縁層が完全に除去されていることが、絶縁層を通じて水分が浸入する点を考慮すると最も良い態様である。しかしながら、封止樹脂部を構成する封止樹脂との接着性の関係等の必要性から所定の膜厚で絶縁層を残しておいた方がよい場合もあり、このような態様も本発明に含まれるものである。この場合であっても、絶縁層を通じて浸入する水分は大幅に減少させることが可能であるからである。
(2)絶縁層の中心部を囲うように連続して形成された部位
本発明の熱伝導性封止部材は、電子素子を覆うように配置され、電子素子の周囲を上記絶縁層除去部に形成された封止樹脂部により封止するものである。ここで、本発明の熱伝導性封止部材が電子デバイスに用いられた場合は、熱伝導性封止部材の絶縁層側の面と電子デバイスの電子素子側の面とが対向し、熱伝導性封止部材の主面の中心部、すなわち絶縁層の主面の中心部は電子素子に対応する部分となる。本発明における絶縁層の中心部とは、絶縁層の主面の中心部であり、このように本発明の熱伝導性封止部材が電子デバイスに用いられた場合に、電子素子に対応する部分とするものであり、上記絶縁層除去部は、その周囲、すなわち中心部を囲うように形成されているのである。
また、上記電子素子を封止するための封止樹脂部は、電子素子の全周囲を囲う必要があることから、この封止樹脂部が形成される絶縁層除去部も、絶縁層の中心部の全周囲を囲うように形成される必要がある。ここで、連続して形成されるとは、絶縁層の中心部の全周囲を欠けることなく囲うように形成されていることを示すものである。なお、本発明においては、実質的に連続的に形成されていればよく、電子デバイスにおける電子素子の封止性に影響を与えない範囲であれば、絶縁層の中心部の全周囲の一部に形成されていない部分があってもよい。この場合は、他の方法、例えば熱伝導性封止部材の外側から封止樹脂部を部分的に形成する方法等で封止性を確保してもよい。
(3)絶縁層除去部の形状
本発明における絶縁層除去部の幅は、そこに形成される封止樹脂部が封止性を発揮できる幅であれば特に限定されるものではないが、通常20μm〜10mmの範囲内であり、特に50μm〜3mmの範囲内、さらに好ましくは50μm〜1mmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より幅が狭い場合は、絶縁層除去部に封止樹脂を充填することが困難になる場合や封止樹脂部による封止が充分でなくなる可能性があり、上記範囲より幅が広い場合は、封止性は向上するものの電子デバイスの小型化が困難であるなど設計面で問題が生じる可能性があるからである。
上記絶縁層除去部の幅は、通常均一に形成されているが、封止性に影響を与えない範囲であれば、部分的に幅が変動してもよい。
また、上記絶縁層除去部の形状は、通常は図1(a)に示すように矩形状であるが、これに限定されるものではなく、他の形状、例えば円形状等であってもよい。
(4)絶縁層除去部の形成部位
本発明における絶縁層除去部は、上記図1に示すように、上記絶縁層の外縁より内側に形成されていても、また、図3に示すように外縁に形成されていてもよい。
しかしながら、本発明においては、図1に示すように、上記絶縁層の外縁より内側に形成されている態様、すなわち外縁に絶縁層が存在し、その内側に絶縁層除去部が形成されている態様が好ましい。このように外縁に絶縁層が存在し、その内側に絶縁層除去部が形成されていることにより、上述した封止樹脂部を形成するために、封止樹脂を上記絶縁層除去部に配置して上記電子素子のバリア性基板と圧着した際に上記封止樹脂が外側に流れ出すことがない。そのため、封止樹脂部による封止を完全に行うことができる。また、熱伝導性封止部材と電子素子のバリア性基板とを貼り合わせる際には、まず熱伝導性封止部材の粘着層と電子素子のバリア性基板とを接触させ、その後さらに密着させる(押し付ける)ことになる。この際、素子内部と外部とで気圧差が生じ、それを緩和するべく素子内部の気体が外側へ逃げることにより、封止樹脂部の内側と外側とを連通する微細孔(リークパス)が発生する場合がある。また、封止樹脂中に含まれる気泡によって、封止樹脂部に外部とのリークパスが形成される場合もある。上記図1に示す態様の場合は、このようなリークパスの発生を低減することができ、封止樹脂部による封止をより完全に行うことができる。さらに、図1に示すように絶縁層除去部が溝として形成されている場合、上述の封止樹脂部を形成する際には絶縁層除去部に封止樹脂を充填すればよいので封止樹脂部の形成が容易であり、また施工性が向上するという利点がある。
なお、図3では、図1の場合と異なり、粘着層4が形成されていない例を示すものである。また、図3に示される符号は、図1で示されるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(5)絶縁層除去部の個数
本発明における絶縁層除去部の数は、形成される封止樹脂部の封止性が確保できるのであれば特に限定されるものではない。しかしながら、封止樹脂部における封止性を完成なものとするためには、複数個、すなわち、上記絶縁層の中心部から外縁方向に複数周形成されていることが好ましい。
図4は、絶縁層除去部10が2個、すなわち2周形成された例を示すものである。この例では、外周側の絶縁層除去部10は、絶縁層の外縁の内側に形成されている。一方、図5も同様に絶縁層除去部10が2周形成された例を示すものであるが、この例では、外周側の絶縁層除去部10は、絶縁層の外縁に形成されている。
このように、本発明において絶縁層除去部が複数周形成される場合は、その最外周の絶縁層除去部は、外縁に形成されていてもよく、また外縁に絶縁層が存在し、その内側に形成されていてもよい。
上記例では、絶縁層除去部が完全に複数周形成された例を示したが、本発明においては、部分的に複数周となるように形成されていてもよい。例えば、矩形状の絶縁層除去部において、その一辺側が外気に接しており、他の辺はモジュール内部となるような場合においては、外気に接する一辺の部分のみ複数となるように絶縁層除去部が形成されていてもよいのである。
なお、図4および図5に示される符号は、図1で示されるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(6)絶縁層除去部の形成方法
上記絶縁層除去部の形成方法としては、金属基材全面に絶縁層を形成した後、絶縁層を部分的に除去する方法や、金属基材上に直接、絶縁層を部分的に形成する方法を用いることができる。
具体的に、上記絶縁層除去部を形成する方法としては、印刷法、フォトリソグラフィー法、レーザーで直接加工する方法などを用いることができる。
例えば、絶縁層がポリイミドである場合、フォトリソグラフィー法としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を金属基材上に製膜後、ポリアミック酸膜上に感光性樹脂膜(フォトレジスト層)を形成し、フォトリソグラフィー法により感光性樹脂膜パターン(フォトレジストパターン)を形成し、その後、そのパターンをマスクとして、パターン開口部のポリアミック酸膜を除去した後、感光性樹脂膜パターンを除去し、ポリアミック酸をイミド化する方法;上記感光性樹脂膜パターンの形成時に同時にポリアミック酸膜も現像し、その後、感光性樹脂膜パターンを除去し、ポリアミック酸をイミド化する方法;金属基材および絶縁層の積層体の状態で、絶縁層上に感光性樹脂膜パターンを形成し、そのパターンに沿って絶縁層をウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングした後、感光性樹脂膜パターンを除去する方法;金属基材と絶縁層と金属基材とが積層された積層体の一方の金属基材をパターニングし、そのパターンをマスクとして絶縁層をエッチングした後、金属パターンを除去する方法;感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体を用いて、金属基材上に直接、絶縁層のパターンを形成する方法が挙げられる。
印刷法としては、グラビア印刷やフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法など公知の印刷技術を用いた方法を例示することができる。
2.絶縁層
本発明における絶縁層は、金属基材上に形成され、絶縁性を有することを特徴とするものである。
本発明に用いられる絶縁層が必要とする絶縁性としては、絶縁層の体積抵抗が、1.0×10Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
また、本発明における絶縁層は、熱伝導性が良好なものが好ましい。具体的な絶縁層の熱伝導率としては、特に限定されるものではないが、通常0.1W/mK〜1.0W/mK程度である。熱伝導率は大きければ大きいほど好ましい。熱伝導率が大きければ大きいほど同じ膜厚における熱伝導性に優れている。
なお、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法、熱線法、平板熱流計法、温度傾斜法などにより測定が可能であり、絶縁層の材料に応じて適宜選択される。
本発明に用いられる絶縁層を形成する樹脂としては、上述したような絶縁性を有し、好ましくは熱導伝性に優れているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、フェノール樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリフタルアミド、PTFE(ポリエチレンテレフタラート)、アクリル樹脂,ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオキサイド、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、耐熱性や絶縁性の観点から、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
本発明に用いられる絶縁層は、中でもポリイミドを含有していることが好ましく、特に、ポリイミドを主成分とすることが好ましい。ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁性、耐熱性に優れた絶縁層とすることが可能となる。また、ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁層の薄膜化が可能となり絶縁層の熱伝導性が向上し、より熱伝導性に優れた熱伝導性封止部材とすることができる。
なお、絶縁層がポリイミドを主成分とするとは、後述するような種々の特性を満たす程度に、絶縁層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、絶縁層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に絶縁層がポリイミドのみからなることが好ましい。絶縁層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
また、本発明の熱伝導性封止部材は絶縁層除去部を有するものであるので、絶縁層除去部の形成過程での工程数の削減の観点から、上記樹脂としては感光性樹脂が好ましく用いられる。ただし、感光剤由来の成分が膜物性を低下させることもあるので、上記樹脂として非感光性樹脂を用いる場合にも利点がある。非感光性樹脂の場合、例えば、フォトレジストを用いてパターニングすることができる。
ポリイミドを絶縁層の主成分とする場合、一般にポリイミドは吸水性を有する。したがって、EL素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などの水分に弱い電子素子を封止する場合、素子内部の水分を低減させるように、ポリイミドを主成分とする絶縁層としては、吸水性が比較的小さいことが好ましい。
吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数がある。したがって、絶縁層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には、0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。
絶縁層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、絶縁層の吸水性を十分小さくすることができ、熱伝導性封止部材の保管が容易であり、熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合にはその工程が簡便になる。また、絶縁層の吸湿膨張係数が小さいほど、絶縁層の寸法安定性が向上する。絶縁層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い金属基材との膨張率の差によって、湿度の上昇とともに熱伝導性封止部材が反ったり、絶縁層および金属基材の密着性が低下したりする場合がある。
なお、吸湿膨張係数は、次のように測定する。まず、絶縁層のみのフィルムを作製する。絶縁層フィルムの作製方法としては、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製)など)やガラス基板上に絶縁層フィルムを作製した後、絶縁層フィルムを剥離する方法や、金属基板上に絶縁層フィルムを作製した後、金属をエッチングで除去し絶縁層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
また、絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、金属基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。絶縁層と金属基材との線熱膨張係数が近いほど、熱伝導性封止部材の反りが抑制されるとともに、熱伝導性封止部材の熱環境が変化した際に、絶縁層と金属基材との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、本発明の熱伝導性封止部材は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では平坦であることが好ましいのであるが、絶縁層および金属基材の線熱膨張係数が大きく異なると、熱伝導性封止部材が熱環境の変化により反ってしまう。
なお、熱伝導性封止部材が平坦であるとは、熱伝導性封止部材を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
具体的に、絶縁層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜10ppm/℃の範囲内である。
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、絶縁層のみのフィルムを作製する。絶縁層フィルムの作製方法は、上述したとおりである。次いで、得られた絶縁層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
絶縁層を構成するポリイミドとしては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリイミドの構造を適宜選択することで、絶縁性および熱伝導性を制御したり、吸湿膨張係数や線熱膨張係数を制御したりすることが可能である。
ポリイミドとしては、絶縁層の線熱膨張係数、吸湿膨張係数、熱伝導率を本発明の熱伝導性封止部材に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドの中でも芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、熱伝導率が高く、線熱膨張係数も低いことから、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁層に好ましく用いられる。
一般的なポリイミドは、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する。
(式(I)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(I)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
ポリイミドに適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、12,14−ジフェニル−12,14−ビス(トリフルオロメチル)−12H,14H−5,7−ジオキサペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
一方、ポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが挙げられる。また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種または2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部もしくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
絶縁層の耐熱性および絶縁性を向上させるためには、上述したように、ポリイミドが芳香族骨格を含むことが好ましい。芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、低アウトガスであることから、本発明の熱伝導性封止部材の絶縁層に好ましく用いられるからである。
また、ポリイミドにおいて、酸二無水物由来の部分が芳香族構造を有し、さらにジアミン由来の部分も芳香族構造を含むことが望ましい。それゆえジアミン由来の構造も芳香族ジアミンから誘導される構造であることが好ましい。特に、酸二無水物由来の部分およびジアミン由来の部分のすべてが芳香族構造を含む全芳香族ポリイミドであることが好ましい。
ここで、全芳香族ポリイミドとは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるものである。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とは、ポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、上述した原料の芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンの具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香環上に存在する必要はない。
以上の理由から、ポリイミドは、耐熱性および寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが好ましい。
中で、上記式(I)におけるRのうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがあるからである。
(式(II)中、aは0または1以上の自然数、Aは単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)、エステル結合のいずれかであり、全てが同じであっても、各々異なっていてもよい。結合基は、芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは3,4位に結合する。)
特に、上記(I)で表される構造を有するポリイミドが上記式(II)で表される構造を含むと低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなり得る。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(I)中のRのうち33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
ポリイミドを低吸湿にする酸二無水物の構造としては、下記式(III)で表わされるものが挙げられる。
(式(III)中、aは0または1以上の自然数、Aは単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)、エステル結合のいずれかであり、全てが同じであっても、各々異なっていてもよい。酸無水物骨格(―CO−O−CO−)は、隣接する芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは、3,4位に結合する。)
上記式(III)において、Aが単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)である酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物などが挙げられる。これらは、吸湿膨張係数を低減させる観点ならびに、ジアミンの選択性を広げる観点から、好ましい。
上記式(III)において、Aがエステル結合であるフェニルエステル系の酸二無水物は、ポリイミドを低吸湿にする観点から、特に好ましい。例えば、下記式で表わされる酸二無水物が挙げられる。具体的には、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などが挙げられる。これらは、吸湿膨張係数を低減させる観点ならびに、ジアミンの選択性を広げる観点から、特に好ましい。
(式中、aは0または1以上の自然数である。酸無水物骨格(―CO−O−CO−)は、隣接する芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは3,4位に結合する。)
上述の吸湿膨張係数が小さいテトラカルボン酸二無水物の場合、後述するジアミンとしては幅広く選択することができる。
併用するテトラカルボン酸二無水物として、下記式で表わされるような少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。フッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの吸湿膨張係数が低下する。少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、中でも、フルオロ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を有することが好ましい。具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。しかしながら、上記ポリイミド成分として含まれるポリイミド前駆体がフッ素を含んだ骨格を有する場合、上記ポリイミド前駆体が、塩基性水溶液に溶解しづらい傾向にあり、上記ポリイミド前駆体の状態で、レジスト等を用いてパターニングを行う際には、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある場合がある。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性、すなわち、低アウトガス化の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
また、上記ポリイミド成分においては、上記式(I)中のRのうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
(R3は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、R4およびR5は1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
上記ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、上記ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(I)中のRのうち少なくとも33%以上含有すればよい。中でも上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
上記ポリイミドをより低吸湿膨張とする観点からは、ジアミンの構造としては、下記式(IV−1)〜(IV−3)、(V)で表わされるものが好ましい。
(式(IV−2)〜(IV−3)中、同一の芳香環に2つアミノ基が結合していてもよい。式(V)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位またはパラ位に結合する。また、芳香環上の水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換されていてもよい。)
上記式(IV−1)〜(IV−3)で表されるジアミンとしては、具体的には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
上記式(V)で表わされるジアミンとしては、具体的には、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると、上記ポリイミドの吸湿膨張係数を低減させることができる。例えば、上記式(V)で表わされるジアミンの中でフッ素が導入された構造としては、下記式で表わされるものが挙げられる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、基板上に低アウトガス感光性ポリイミド絶縁層を部分的に形成する場合には、上記絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
ポリイミドに感光性を付与し、感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体として用いる際には、感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長に対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、更に好ましくは15%、より更に好ましくは50%以上である。
露光波長に対してポリイミドの透過率が高いということは、それだけ、光のロスが少ないということであり、高感度の感光性ポリイミドまたは感光性ポリミド前駆体を得ることができる。
ポリイミドとして、透過率を上げるためには、酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いることが望ましい。しかし、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、耐熱性が低下し、低アウトガス性を損なう恐れがあるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
本発明においては、透過率を上げるためには酸二無水物としてフッ素が導入された芳香族の酸二無水物を用いることが、耐熱性を維持しつつ(芳香族なので)、吸湿膨張も低減することが可能である点からさらに好ましい。
本発明において用いられる少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、上述のフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、なかでも、フルオロ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を有することが好ましい。具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミド前駆体は、塩基性水溶液に溶解しづらい傾向にあり、ポリイミド前駆体の状態で、レジスト等を用いてパターニングを行う際には、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある場合がある。
また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
ポリイミドとして、透過率を上げるためには、ジアミンとしてフッ素が導入されたジアミンや、脂環骨格を有するジアミンを用いることが望ましい。しかし、脂環骨格を有するジアミンを用いると、耐熱性が低下し、低アウトガス性を損なう恐れがあるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
透過率を上げるためにはジアミンとしてフッ素が導入された芳香族のジアミンを用いることが、耐熱性を維持しつつ(芳香族なので)、吸湿膨張も低減することが可能である点からさらに好ましい。
フッ素が導入された芳香族のジアミンとしては、具体的には、上述のフッ素が導入された構造を有するものを挙げることができ、より具体的には、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する場合には、上記絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、金属基材との密着性を改善したり、上記ポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
ポリイミドまたはポリイミド前駆体のポリイミド成分を含有するポリイミド樹脂組成物を用いてポリイミドを含有する絶縁層を形成する場合、ポリイミド成分の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミドとした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でもよいし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでもよい。
ポリイミド成分の含有量としては、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、上記ポリイミド樹脂組成物の固形分全体に対し、50重量%以上であることが好ましく、中でも、70重量%以上であることが好ましい。
なお、ポリイミド樹脂組成物の固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
本発明においては、絶縁層が上述のポリイミドを含有していればよく、必要に応じて適宜、このポリイミドと他の接着性を有するポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、絶縁層として用いてもよい。
また、上述のポリイミドは、感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体を用いて得られるものであってもよい。感光性ポリイミドは、公知の手法を用いて得ることができる。例えば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、得られるポリイミド前駆体に光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。また例えば、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とするなど、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加し、アルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。
これらの感光性ポリイミド前駆体には、ポリイミド成分の重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。そのため、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残渣がポリイミド中に残存する。これらの残存物が線熱膨張係数や吸湿膨張係数を大きくする原因となることから、感光性ポリイミド前駆体を用いると、非感光性のポリイミド前駆体を用いた場合に比べて、EL素子の信頼性が低下する傾向にある。しかしながら、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加した感光性ポリイミド前駆体は、添加剤である光塩基発生剤の添加量を15%以下にしてもパターン形成可能であることから、ポリイミドとした後も添加剤由来の分解残渣が少なく、線熱膨張係数や吸湿膨張係数などの特性の劣化が少なく、さらにアウトガスも少ないため、本発明に適用可能な感光性ポリイミド前駆体としては最も好ましい。
ポリイミドに用いられるポリイミド前駆体は、塩基性水溶液によって現像可能であることが、金属基材上に絶縁層を部分的に形成する際に、作業環境の安全性確保およびプロセスコストの低減の観点から好ましい。塩基性水溶液は、安価に入手でき、廃液処理費用や作業安全性確保のための設備費用が安価であるため、より低コストでの生産が可能となる。
絶縁層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
絶縁層の厚みとしては、絶縁性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.3μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜20μmの範囲内である。絶縁層の厚みが薄すぎると十分な絶縁性が得られない場合があり、絶縁層の厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
上記絶縁層除去部が、絶縁層の外縁より内側に形成されている場合、外縁側の絶縁層と中心部分側の絶縁層とに別れるが、この場合の外縁側絶縁層の膜厚と中心部分側絶縁層の膜厚は、同一であってもよく、また異なっていても良い。
例えば、外縁側絶縁層の膜厚を中心部分側絶縁層の膜厚より厚く形成することにより、封止した際に中心部分側絶縁層とバリア性基板との間にスペースを形成することが可能となり、電子素子を封止する際に好ましい場合がある等、外縁側絶縁層の膜厚と中心部分側絶縁層の膜厚とを異ならせることによる利点も考えられるが、絶縁層の製造面を考慮すると、同一の膜厚であることが好ましい。
絶縁層は、吸湿剤を含有していてもよい。絶縁層中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着する機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、化学的に水分を吸着するとともに、吸湿しても固体状態を維持する化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、金属酸化物、金属の無機酸塩もしくは有機酸塩などを挙げることができる。特に、アルカリ土類金属酸化物および硫酸塩が好ましい。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等を挙げることができる。硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル等を挙げることができる。また、シリカゲルや、ポリビニルアルコールなどの吸湿性を有する有機化合物も用いることができる。これらの中でも、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカゲルが特に好ましい。これらの吸湿剤は吸湿性が高いからである。
吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤とポリイミドの合計量100質量部に対して、5質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜60質量部の範囲内、さらに好ましくは5質量部〜50質量部の範囲内である。
絶縁層の形成方法としては、絶縁性を有する樹脂を所定の膜厚で形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的に用いられている方法を用いることができる。
本発明においては、上述したようにポリイミドを用いることが好ましいが、ポリイミドを用いる場合は、例えば、金属基材上にポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する方法を用いることができる。中でも、ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法が好適である。一般にポリイミドは溶媒への溶解性に乏しいからである。また、溶媒への溶解性が高いポリイミドは、耐熱性、線熱膨張係数、吸湿膨張係数などの物性に劣るからである。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
また、金属基材と絶縁層との積層体を形成するに際しては、ポリイミドフィルムを利用することもできる。ポリイミドフィルムを利用する場合には、ポリイミドフィルム上に金属材料を蒸着することで、金属基材と絶縁層との積層体を得ることができる。
3.粘着層
本発明の熱伝導性封止部材は、上記絶縁層上に粘着層を有することが好ましい。粘着層を有することにより、電子素子上に本発明の熱伝導性封止部材を配置して積層する工程を容易に行うことができるからである。
本発明において、粘着層が形成される場合は、上記絶縁層除去部に粘着層が形成されていないことが好ましい。工程上簡便に上記絶縁層除去部に封止樹脂を配置して封止樹脂部を形成することができるからである。
このように粘着層の形成部位は、上記絶縁層除去部に形成されていなければ特に限定されるものではないが、図1に示すように、絶縁層と同様のパターンで形成されていることが好ましい。
本発明に用いられる粘着層は、耐熱性を有するものであることが好ましい。このような粘着層の耐熱性としては、本発明の熱伝導性封止部材の製造過程における加熱や、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子等の電子素子を封止する場合には、電子素子の製造過程における加熱および電子素子の発熱などに耐える程度であればよく、プロセス温度において粘着層からガスが発生しないことが好ましい。具体的には、粘着層を構成する粘着剤の5%重量減少温度が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。5%重量減少温度が上記範囲より小さいと、例えば電子素子がEL素子の場合、EL素子の発光時の発熱により粘着剤が分解し、その分解時に発生する物質によって素子特性を劣化させるおそれがある。また、熱劣化により粘着層自身の粘着性が低下し、素子との密着性が悪くなり、素子から剥離する場合がある。
なお、5%重量減少温度は、熱重量分析装置または示差熱天秤(例えばThermo Plus TG8120(リガク社製))を用い、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で昇温し、測定した値である。
粘着層は、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際には透明電極層とEL層と背面電極層とを覆うように透明基板に接着されるものであり、凹凸追従性を備える。具体的には、粘着層の室温での貯蔵弾性率が、1.0×102Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがさらに好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが特に好ましい。なお、室温とは25℃をいう。粘着層の室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、実用上十分な粘着性と良好な凹凸追従性が得られる。室温における貯蔵弾性率が上記範囲より小さい場合は、粘着層が脆弱なものとなり凝集破壊を起こしやすくなる。一方、上記範囲より大きい場合は、凹凸に対する十分な追従性が発現されにくい。貯蔵弾性率は硬さ・軟らかさの指標となるものであり、粘着層の室温での貯蔵弾性率が上記範囲であれば、例えばEL素子の場合には透明電極層とEL層と背面電極層とによる段差を十分に埋めることができる。
なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、RSA3 (TAインスツルメンツ社製)を用い、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した値である。
また、粘着層の凹凸追従性としては、粘着層を構成する粘着剤のガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。本発明の熱伝導性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する場合、熱伝導性封止部材の粘着層をEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度が、粘着剤のTgよりも低いと、凹凸に追従することが困難となる。よって、粘着剤のTgは比較的低いことが好ましく、室温以下であることが特に好ましいのである。粘着剤のTgが上記範囲であれば、熱伝導性封止部材の粘着層をEL素子を支持する透明基板に貼り付ける際の温度を低くすることができる。
粘着層は、通常、絶縁性を有する。具体的に、絶縁層の体積抵抗は、1.0×10Ω・m以上であることが好ましく、1.0×10Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×109Ω・m以上であることがさらに好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
粘着層に用いられる粘着剤としては、上述の特性を満たすものであり、かつ本発明の耐熱性封止部材をEL素子に用いる場合にはEL層に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等の酸変性物などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂が好ましい。さらには、耐熱性の観点から、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。特に、非シリコーン系樹脂であることが好ましく、耐熱性および熱伝導性に優れることから、ポリイミド系樹脂が好適である。
また、粘着剤は硬化型粘着剤であってもよい。硬化型粘着剤とは、素子製造時は粘着性を有し、素子作製後に硬化するものをいう。硬化型粘着剤は、被封止物との密着性がより強固となる利点を有する。一方、本発明の熱伝導性封止部材をフレキシブルなEL素子に適用した場合、硬化型粘着剤を用いると、素子を屈曲させたときに粘着層の硬化した部分にクラックが発生し素子を劣化させる場合がある。硬化型粘着剤としては、上述の熱硬化型樹脂や光硬化型樹脂を用いることができる。
一般的なポリイミド系樹脂は、下記式(VI)で表される繰り返し単位を有する。
(式(VI)中、Rは4価の有機基、Rは2価の有機基、繰り返されるR6同士およびR7同士はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(VI)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
粘着性を創出する観点から、ポリイミド系樹脂に適用されるジアミンとしては、少なくとも脂肪族ジアミンを含むことが好ましい。ここで、脂肪族ジアミンとは、2つのアミノ基を連結する部位のアミノ基の窒素原子と結合する炭素原子が、脂肪族炭素であるものをいい、芳香族ジアミンとは、上記炭素原子が芳香族炭素であるものをいう。
同様に、テトラカルボン酸二無水物についても、2つの酸無水物基が接続する部位の構造が芳香族であるものが芳香族酸二無水物、脂肪族であるものが脂肪族酸二無水物という。
ポリイミド系樹脂としては、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物ならびに下記式(2)で表されるテトラカルボン酸および該テトラカルボン酸の誘導体から選ばれた1種以上の化合物からなるテトラカルボン酸成分と、下記式(3)で表される脂肪族ジアミンとをテトラカルボン酸成分のモル数が脂肪族ジアミンのモル数より過剰になるように配合して加熱反応させてポリイミド(A)とし、ポリイミド(A)と下記式(4)で表される芳香族ジアミンとを配合して加熱反応させて得られるポリイミド(B)を必須の成分とし、下記式(5)で表されるビスマレイミド化合物や、2官能エポキシ化合物、2官能アクリレートなどの2官能性の架橋剤を配合してなる熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を硬化して得られるものであることが好ましい。
(式(1)中、R11は4価の有機基である。)
(式(2)中、R11は4価の有機基であり、Y〜Yは独立して水素または炭素数1〜8の炭化水素基である。)
(式(3)中、Xは、アミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合している炭素数1〜221の2価の有機基であり、その構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
(式(4)中、Xは、アミノ基に芳香族環が直接結合している炭素数6〜27の2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
(式(5)中、Zは2価の有機基である。)
ここで、式(VI)におけるRは式(1)におけるR11であり、式(VI)におけるRは式(3)におけるXまたは式(4)におけるXである。
すなわち、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物およびポリイミド系樹脂は下記の工程(1)〜(4)を含む方法により得られる。
・工程(1):テトラカルボン酸成分と脂肪族ジアミンとを加熱反応させてポリイミド(A)を合成する工程
・工程(2):工程(1)で合成したポリイミド(A)と芳香族ジアミンとを加熱反応させてポリイミド(B)を合成する工程
・工程(3):工程(2)で合成したポリイミド(B)と2官能性の架橋剤とを配合して室温で混合し、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を製造する工程
・工程(4):工程(3)で得られた熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を加熱硬化させて、ポリイミド系樹脂を得る工程
上記式(1)のテトラカルボン酸二無水物のうち、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
上記式(1)のテトラカルボン酸二無水物のうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、3−カルボキシメチル−1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物等を挙げることができる。
上記式(2)のテトラカルボン酸、およびその誘導体のうち、脂肪族テトラカルボン酸、およびその誘導体としては、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸など、およびそれらと炭素数1〜8のアルコールとのエステル類を挙げることができる。
上記式(2)のテトラカルボン酸、およびその誘導体うち、芳香族テトラカルボン酸、およびその誘導体としては、例えば、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、エチレンテトラカルボン酸、3−カルボキシメチル−1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等およびそれらと炭素数1〜8のアルコールとのエステル類が挙げられる。
これらテトラカルボン酸無水物、テトラカルボン酸および該テトラカルボン酸の誘導体のうち、シクロヘキサンから誘導される構造を持つものまたはベンゼンから誘導される構造をもつものが好ましく、より好ましくはシクロヘキサンから誘導される構造を持つものが好ましく、特に好ましいのは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物または1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸が挙げられ、これらは1種類単独かあるいは2種類以上を混合して使用することができる。
上記式(3)の脂肪族ジアミンはアミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合しているジアミンである。式(3)の脂肪族ジアミンのXは、炭素数1〜221の2価の有機基であることが好ましく、その構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。特に脂肪族ジアミンがポリオキシアルキレンジアミンであると、可撓性に加え粘着性が得られて好ましい。なお、ここでいう粘着性とは、水、溶剤、熱などを使用せず、常温で短時間、わずかな圧力を加えるだけで接着する性質を指し、粘着力とは、試験片を常温で短時間被着体にわずかな圧力をかけて接触させた後、引き剥がす時に必要な力を指す。
ポリオキシアルキレンジアミンとしては、例えば下記式(7)で表されるようなポリオキシプロピレンジアミン、下記式(8)で表されるようなポリオキシエチレンジアミン、下記式(9)で表されるようなポリオキシブチレンジアミン及びこれらの共重合体が挙げられ、式(7)のポリオキシプロピレンジアミンまたは共重合体として下記式(6)で表されるプロピレンオキシドとエチレンオキシドに由来する骨格を含有するポリオキシアルキレンジアミンが良好な粘着性を持つポリイミド系樹脂を得る上で好ましい。
(式(6)中、a、cはプロピレンオキシド単位の重合度、bはエチレンオキシド単位の重合度である。)
(式(7)中、nはプロピレンオキシド単位の重合度である。)
(式(8)中、nはエチレンオキシド単位の重合度である。)
(式(9)中、nはブチレンオキシド単位の重合度である。)
ポリオキシアルキレンジアミンは、良好な粘着性を持つポリイミド系樹脂を得る上で、それぞれ次のような分子量であることが好ましい。上記式(6)のポリオキシアルキレンジアミンの分子量は好ましくは300〜4000(プロピレンオキシドの重合度(a+c)が1.0〜9.4(cは0ではない)、エチレンオキシドの重合度(b)が3.7〜79.8)であり、より好ましくは600〜2000(プロピレンオキシドの重合度(a+c)が3.6〜6.0(cは0ではない)、エチレンオキシドの重合度(b)が9.0〜38.7)である。上記式(7)のポリオキシプロピレンジアミンの分子量は好ましくは230〜4000(プロピレンオキシドの重合度nが2.6〜68.0)であり、より好ましくは600〜2000(プロピレンオキシドの重合度n1が8.7〜33.0)である。上記式(8)のポリオキシエチレンジアミンの分子量は好ましくは300〜4000(エチレンオキシドの重合度nが5.5〜89.5)であり、より好ましくは600〜2000(エチレンオキシドの重合度nが12.3〜44.1)である。上記式(9)のポリオキシブチレンジアミンの分子量は好ましくは200〜4000(ブチレンオキシドの重合度nが1.6〜54.3)であり、より好ましくは600〜2000(ブチレンオキシドの重合度nが7.1〜26.6)である。
上記式(3)の脂肪族ジアミンのうち、ポリオキシアルキレンジアミン以外のジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビシクロヘキシルジアミン、シロキサンジアミン類などを挙げることができる。中でも、高分子量化が容易で、耐熱性に優れるという点で、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン等の脂環構造を有するジアミンを用いることが好ましい。これらのジアミンは単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
上記工程(1)の反応生成物であるポリイミド(A)は、脂肪族ジアミンにテトラカルボン酸二無水物またはテトラカルボン酸もしくは該テトラカルボン酸の誘導体から選ばれた1種以上の化合物からなるテトラカルボン酸成分を添加し、イミド化反応させる方法により得られる。
上記工程(1)の反応生成物であるポリイミド(A)は、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物または上記式(2)で表されるテトラカルボン酸もしくは該テトラカルボン酸の誘導体から選ばれた1種以上の化合物からなるテトラカルボン酸成分を上記式(3)で表される脂肪族ジアミン1モルに対して好ましくは1.01モル以上2モル以下の比、より好ましくは1.5モル以上2モル以下の比で配合して合成するのが好ましい。この際、反応生成物の両末端に酸無水物基またはイミド形成可能なジカルボン酸誘導体の基を配することが好ましい。テトラカルボン酸成分を脂肪族ジアミン1モルに対して1モル以下の比で配合すると、上記工程(1)の反応生成物の両末端はテトラカルボン酸成分に由来する基とならないものが多くなり、後述する芳香族ジアミンと反応させることにおいて好ましくない。テトラカルボン酸成分の1種以上を脂肪族ジアミン1モルに対して2モルより大きい比で配合すると、未反応のテトラカルボン酸成分が多く残り、モノマー成分が残留することになり、耐熱性を低下させるおそれがある。
上記ポリイミド(A)は、無溶剤下で熱イミド化反応を行うことで得られるが、各種の有機溶媒を用いてもよい。具体的にはN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン等の1種又は2種以上の溶媒を使用できる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒に用いることが好ましい。また、共沸脱水を行うために、キシレンまたはトルエンを加えてもよい。ポリイミド(A)合成後は、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール等の低沸点溶媒で希釈することもできる。
脂肪族ジアミンは必要に応じて上記したような有機溶媒に溶解して使用してもよい。イミド化反応の反応温度は、150〜200℃が好ましく、特に180〜200℃が好ましい。150℃より低いと高分子量化が十分に行われず実用的なポリイミドが合成できない。200℃より高いとコストの問題で経済的に好ましくない。反応時間は1〜12時間が好ましく、特に3〜6時間が好ましい。1時間より短いと高分子量化が十分に行われず実用的なポリイミドが合成できない。12時間より長いとコストの問題で経済的に好ましくない。また、共沸溶剤としてトルエンあるいはキシレンを添加してイミド化反応を行ってもよい。ポリイミドの生成はIRスペクトルによる1770および1700cm−1付近のイミド環の特性吸収によって確認することができる。
上記工程(2)のポリイミド(B)は、上記工程(1)で得られたポリイミド(A)に芳香族ジアミンを配合しイミド化反応させる方法により得られる。上記式(4)で表される芳香族ジアミンをポリイミド(A)を製造する際に用いた脂肪族ジアミン1モルに対して好ましくは0.02モル以上2モル以下の比、より好ましくは1モル以上2モル以下の比で配合して合成する。この際、ポリイミド(B)の両末端に芳香族アミノ基を配するのが好ましい。芳香族ジアミンを脂肪族ジアミン1モルに対して2モルより大きい比で配合すると、未反応の芳香族ジアミンの割合が多くなり、この後の工程で得られるポリイミド系樹脂の可撓性が低くなる。
上記式(4)の芳香族ジアミンは、アミノ基に芳香族環が直接結合しているジアミンである。Xは炭素数6〜27の2価の有機基であることが好ましく、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。上記式(4)の芳香族ジアミンとしては、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、α、α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、α、α’―ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンおよび2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが挙げられ、これらは1種類単独かあるいは2種類以上を混合して使用することができる。
上記ポリイミド(B)は、無溶剤下で熱イミド化反応を行うことで得られるが、各種の有機溶媒を用いてもよい。具体的にはN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン等の高沸点溶媒、テトラヒドロフラン、アセトン等の低沸点溶媒の1種又は2種以上を使用できる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒に用いることが好ましい。また、共沸脱水を行うために、キシレンまたはトルエンを加えてもよい。ポリイミド(B)合成後は、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール等の低沸点溶媒で希釈することもできる。
芳香族ジアミンは必要に応じて上記したような有機溶媒に溶解させて使用してもよい。イミド化反応の反応温度は、150〜200℃が好ましく、特に180〜200℃が好ましい。150℃より低いと高分子量化が十分に行われず実用的なポリイミドが合成できない。200℃より高いとコストの問題で経済的に好ましくない。反応時間は1〜12時間が好ましく、特に3〜6時間が好ましい。1時間より短いと高分子量化が十分に行われず実用的なポリイミドが合成できない。12時間より長いとコストの問題で経済的に好ましくない。また、共沸溶剤としてトルエンあるいはキシレンを添加してイミド化反応を行ってもよい。
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド(B)と2官能性の架橋剤とを配合して室温で混合することにより得られる。2官能性の架橋剤としては、耐熱性の観点から、上記式(5)で表されるビスマレイミド化合物または2官能エポキシ化合物であることが好ましい。
上記式(5)のビスマレイミド化合物は以下のものが挙げられる。N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルスルホン)ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−{4,4’−〔2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)イソプロピリデン〕}ビスマレイミド、N,N’−{4,4’−〔2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン〕}ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジエチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジシクロヘキシルメタン)ビスマレイミド、N,N’−p―キシリレンビスマレイミド、N,N’−m―キシリレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミド等である。また、ポリオキシアルキレンジアミンの両末端が無水マレイン酸で封止されたビスマレイミド化合物を用いることもできる。例えば、ポリオキシエチレンジアミンの両末端が無水マレイン酸で封止されたビスマレイミド化合物、ポリオキシプロピレンジアミンの両末端が無水マレイン酸で封止されたビスマレイミド化合物、ポリオキシブチレンジアミンの両末端が無水マレイン酸で封止された化合物が挙げられる。この中で好ましいのは下記式(10)で表されるN,N’―(4,4’―ジフェニルメタン)ビスマレイミド、下記式(11)のN,N’−〔4,4’−ビス(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン〕ビスマレイミドである。
上記工程(3)の熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の製造の際に、上記式(5)で表されるビスマレイミド化合物をポリイミド(A)を製造する際に用いた脂肪族ジアミン1モルに対して好ましくは0.25モル以上4モル以下の比、より好ましくは0.75モル以上2モル以下の比で配合すると、可撓性のあるポリイミド系樹脂を与える熱硬化性ポリイミド樹脂組成物が得られる。ビスマレイミド化合物をポリイミド(A)を製造する際に用いた脂肪族ジアミン1モルに対して0.25モルより小さい比で配合すると、ポリイミド系樹脂の架橋密度が低く強度不足となる。テトラカルボン酸成分を脂肪族ジアミン1モルに対して1.01モル以上2モル以下の比で配合し、芳香族ジアミンを脂肪族ジアミン1モルに対して0.02モル以上2モル以下の比で配合し、ビスマレイミド化合物を脂肪族ジアミン1モルに対して4モルより大きい比で配合すると、ポリイミド系樹脂の可撓性が低くなる。
上記工程(3)の熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の製造に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒、他にアセトニトリル等が挙げられる。特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系溶媒を用いることが好ましい。
上記工程(3)の熱硬化性ポリイミド樹脂組成物は次の方法で得られる。上記工程(2)で得られたポリイミド(B)と2官能性の架橋剤とを溶媒に溶かして均一な液になるまで混合する。熱硬化性ポリイミド樹脂組成物における溶媒の量は、キャスト製膜が可能な粘度となる量であることが好ましい。混合温度は0℃〜80℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましい。混合温度が0℃より低いと、2官能性の架橋剤が溶けにくく、均一な液になりにくい。混合温度が80℃より高いと、混合中に液状から固体状へと硬化する。
粘着性を有するポリイミド系樹脂は、得られた熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を熱硬化させればよく、絶縁層が形成された金属基材上または剥離層上にキャストして膜状とし、熱硬化させると、ポリイミド系樹脂を含有する粘着層が得られる。硬化温度は、150℃〜250℃が好ましい。150℃より低いと未硬化の部分が残り粘着力が高くなりすぎて、粘着層に剥離層を貼り付けた後、剥がす時に凝集破壊が起きて糊残りが発生する。250℃より高いとコストの問題で経済的に好ましくない。硬化時間は0.5時間〜10時間が好ましい。0.5時間より短いと未硬化の部分が残り、粘着力が高くなりすぎて、粘着層に剥離層を貼り付けた後、剥がす時に凝集破壊が起きて糊残りが発生する。10時間より長いとコストの問題で経済的に好ましくない。
また、粘着層に用いられる樹脂組成物を後硬化させる場合には、樹脂組成物が、粘着層の形成過程での脱水ベークの際に硬化反応が開始するような添加剤を含有していることが好ましい。このような添加剤としては、例えば熱塩基発生剤または光塩基発生剤が挙げられる。
粘着層は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤の添加量が多くなると粘着層の耐熱性が向上するものの、粘着層中の酸化防止剤のEL層への移行などによりEL素子の信頼性低下を招く可能性も大きくなる。そのため、酸化防止剤の含有量は耐熱性とのバランスにおいてできる限り少ないほうがよい。
粘着層は、吸湿剤を含有していてもよい。粘着層中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。それにより、本発明の熱伝導性封止部材を用いてEL素子を作製した際には、素子性能の劣化をより一層抑制することができる。
なお、吸湿剤については、上記絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤と樹脂の合計量100質量部に対して、5質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜60質量部の範囲内、さらに好ましくは5質量部〜50質量部の範囲内である。
粘着層中の吸湿剤の含有量は、均一であってもよく不均一であってもよい。中でも、粘着層の外縁部のみに吸湿剤が含有されていることが好ましい。本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際に、背面電極層と接する粘着層の部分に吸湿剤が含有されていると、吸湿剤によって粘着層表面が荒れ、EL層にダメージを与えるおそれがあるからである。すなわち、本発明の耐熱性封止部材を用いて例えばEL素子を封止する際、背面電極層と接しない粘着層の部分に吸湿剤が含有されていることが好ましい。
また、粘着層は、白色反射層としての機能を有してもよい。本発明の熱伝導性封止部材をEL素子に用いた場合には、EL層からの発光が白色反射層である粘着層表面で拡散反射されるため、干渉効果により発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
粘着層の厚みは、凹凸追従性および熱伝導性を兼ね備えることができれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜20μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。粘着層の厚みが薄すぎると十分な凹凸追従性が得られない場合があり、粘着層の厚みが厚すぎると熱伝導性が低下するおそれがあるからである。
粘着層の形成方法としては、樹脂組成物を塗布する方法を用いることができる。樹脂組成物を塗布する際には、絶縁層上に塗布してもよく、後述する剥離層上に塗布してもよい。また、後述するように加工用シートを型抜きする方法を採用する場合には、剥離シート上に樹脂組成物を塗布する。塗布方法としては、均一な厚みで塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
4.金属基材
本発明における金属基材は、上記の絶縁層および粘着層を支持するものである。
金属基材の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、金属箔を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする以外は、上記絶縁層の線熱膨張係数の測定方法と同様である。
金属基材を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。中でも、大型の素子に適用する場合、SUSが好ましい。SUSは、耐久性、耐酸化性、耐熱性に優れている上、銅などに比べ線熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れる。また、SUS304およびSUS430が入手しやすいという利点もある。放熱性という観点では、銅やアルミニウムが好ましいが、銅については酸化し変質しやすい、アルミニウムについては耐熱性が低く耐薬品性に劣る部分があり、プロセスが制限されるという課題もある。
金属基材の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状や板状であってもよく、図6に例示するように金属基材2の形状が空気との接触面に凹凸を有する形状であってもよい。
金属基材が空気との接触面に凹凸を有する場合には、熱拡散が良好となり、放熱性を高めることができる。凹凸の形成方法としては、例えば金属基材の表面に直接、エンボス加工、エッチング加工、サンドブラスト加工、フロスト加工、スタンプ加工などの加工を施す方法、フォトレジスト等を用いて凹凸パターンを形成する方法、めっき方法、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法が挙げられる。エンボス加工の場合、例えば表面に凹凸を有する圧延ロールを用いてもよい。エッチング加工の場合、金属基材の種類に応じて薬剤が選択される。箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とを貼り合わせる方法の場合、例えば、ロウ付け、溶接、半田等により金属層同士を接合する、あるいは、エポキシ樹脂等の接着剤を介して金属層同士を貼り合わせることができる。この場合、箔状や板状等の金属層と表面に凹凸を有する金属層とは、同じ金属材料で構成されていてもよく、異なる金属材料で構成されていてもよい。中でも、コスト面から、エンボス加工、エッチング加工が好ましく用いられる。
凹凸の寸法や形状としては、金属基材の空気との接触面における表面積を増やすことができれば特に限定されるものではない。凹凸の幅、高さ、ピッチ等としては、金属基材の種類や熱伝導性封止部材の用途等に応じて適宜選択され、例えばシミュレーションにより熱伝導に好適な範囲を求めることができる。
金属基材の厚みとしては、熱伝導性を備えることができれば特に限定されるものではなく、本発明の熱伝導性封止部材の用途に応じて適宜選択される。金属基材の厚みが厚いほど、面方向への熱拡散に優れたものとなる。一方、金属基材の厚みが薄いほど、可撓性に富んだものとなる。例えば本発明の熱伝導性封止部材が可撓性を有する場合には、熱伝導性および可撓性を兼ね備えることができればよく、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2μm〜300μmの範囲内、さらに好ましくは5μm〜50μmの範囲内である。金属基材の厚みが薄すぎると、放熱機能を十分に発揮できなかったり、水蒸気に対するガスバリア性が低下したりする。また、金属基材の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
金属基材の作製方法としては、一般的な方法を用いることができ、金属材料の種類や金属基材の厚みなどに応じて適宜選択される。例えば、金属基材単体を得る方法であってもよく、ポリイミドフィルムからなる絶縁層上に金属材料を蒸着し、金属基材と絶縁層との積層体を得る方法であってもよい。中でも、ガスバリア性の観点から、金属基材単体を得る方法が好ましい。金属基材単体を得る方法の場合であって、金属基材が金属箔である場合、金属箔は圧延箔であってもよく電解箔であってもよいが、ガスバリア性が良好であることから、圧延箔が好ましい。
5.剥離層
本発明においては、上記粘着層上に剥離層が形成されていることが好ましい。本発明の熱伝導性封止部材の取り扱いが容易になるからである。
剥離層はガスバリア性を有することが好ましい。絶縁層や粘着層の吸湿を抑制することができ、本発明の熱伝導性封止部材を安定して保管することができるからである。剥離層のガスバリア性としては、本発明の熱伝導性封止部材を例えば有機EL素子の封止に用いるまでの間、絶縁層や粘着層の吸湿を抑制することができる程度のガスバリア性であればよい。具体的には、剥離層が水に対してバリア性を有することが好ましく、剥離層の水蒸気透過率が1.0×10-1g/m2/day以下であればよく、好ましくは1.0×10-3g/m2/day以下、より好ましくは1.0×10-5g/m2/day以下である。なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置パーマトラン3/31(米国MOCON社製)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した値である。
剥離層としては、剥離性を有し、所定のガスバリア性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、基材フィルム上にガスバリア層が形成された積層体、金属箔、フィルム単体、共押し出しフィルムを挙げることができる。
基材フィルムの材料としては、フィルム化することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ−ルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂を挙げることができる。また、これらの樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを用いてもよい。
基材フィルムの厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムにおける基材フィルムの厚みと同程度とすることができる。基材フィルムの厚みが厚いとフレキシブル性が低下し、基材フィルムの厚みが薄いと基材フィルムを構成する材料にもよるが強度に劣る可能性がある。
ガスバリア層の材料としては、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、無機材料および有機材料のいずれも用いることができる。
ガスバリア層に用いられる無機材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、金属を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金が挙げられる。無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンが挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、チタンが挙げられる。無機材料として窒化物を含む材料を利用すると、粘着層に対して離型性を示す場合が多く、ガスバリア性と離型性を兼ね備えた材料として使用できる。
一方、ガスバリア層に用いられる有機材料としては、例えば、エポキシ/シリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。PVAおよびEVOHは単独または混合物で使用することができる。
ガスバリア層は、単層であってもよく複数層が積層されたものであってもよい。
ガスバリア層の厚みとしては、剥離性およびガスバリア性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、ガスバリア層の材料に応じて適宜選択され、一般的なガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層と同程度とすることができる。ガスバリア層の厚みが厚いとフレキシブル性が低下したりクラックが生じたりし、ガスバリア層の厚みが薄いと十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
ガスバリア層の形成方法としては、乾式法であってもよく湿式法であってもよく、材料に応じて適宜選択される。ガスバリア層に無機材料を用いる場合には、通常、乾式法が用いられ、中でも真空成膜法が好ましく、特に樹脂フィルム上にガスバリア層を形成する際の樹脂フィルム自体の耐熱性を考慮するとプラズマCVD法が好ましい。一方、ガスバリア層に有機材料を用いる場合には、通常、湿式法が用いられる。
また、金属箔を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。金属箔は、表面が離型処理されていてもよい。
金属箔の厚みとしては、剥離性が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なガスバリア性フィルムに用いられる金属箔と同程度とすることができる。金属箔の厚みが厚い場合はフレキシブル性が低下し、金属箔の厚みが薄い場合は十分なガスバリア性が得られない可能性がある。
フィルム単体の場合、材料としては、上記基材フィルムの材料を用いることができる。
また、共押し出しフィルムの場合、材料としては、上記基材フィルムに用いられる樹脂に有機物または無機物の微粒子や粉体を混合したコンポジット材料などを使用することができる。
6.吸湿層
本発明においては、絶縁層上に、吸湿剤を含有する吸湿層が形成されていてもよい。吸湿層が形成されていることによって、素子内部に存在する水を除去することができる。
なお、吸湿層に含有される吸湿剤については、上記絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
吸湿層は、吸湿剤の他に、樹脂を含有していてもよい。
吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤と樹脂の合計量100質量部に対して、5質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜60質量部の範囲内、さらに好ましくは5質量部〜50質量部の範囲内である。
また、吸湿層は、白色反射層としての機能を有してもよい。本発明の熱伝導性封止部材をEL素子に用いた場合には、EL層からの発光が白色反射層である吸湿層表面で拡散反射されるため、干渉効果により発光色の角度依存性を緩和することができるからである。
吸湿層の厚みとしては、素子内部に存在する水を除去することができれば特に限定されるものではない。
吸湿層の形成方法としては、樹脂組成物を塗布する方法や、加工用シートを型抜きする方法などを用いることができる。塗布方法としては、所定の部分に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
7.その他の構成
本発明においては、金属基材と絶縁層との間に中間層が形成されていてもよい。例えば、金属基材および絶縁層の間に、金属基材を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属基材と絶縁層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属基材表面が酸化されることで形成される。
また、金属基材の絶縁層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
本発明において、剥離層が形成されていない場合には、熱伝導性封止部材は、粘着層を内側、金属基材を外側にして、ロール状に巻回されたものであることが好ましい。これにより、取り扱いが容易になるからである。
本発明の熱伝導性封止部材は、枚葉であってもよく長尺であってもよい。また、本発明の熱伝導性封止部材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよい。
8.用途
本発明の熱伝導性封止部材は、水分の浸入防止および放熱機能の付与が必要となる電子素子を有する電子デバイスの封止に用いられる。具体的には、EL素子、薄膜トランジスタ素子、有機薄膜太陽電池、固体撮像素子などの電子素子が挙げられる。
B.電子デバイス
次に、本発明の電子デバイスについて説明する。
本発明の電子デバイスは、水分バリア性を有するバリア性基板と、上記バリア性基板上に形成された電子素子と、上記電子素子を覆うように配置された熱伝導性封止部材とを有する電子デバイスであって、上記熱伝導性封止部材が、金属基材と、上記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有し、上記絶縁層除去部に封止樹脂からなる封止樹脂部が形成され、バリア性基板と熱伝導性封止部材との間で、上記電子素子が封止されていることを特徴とするものである。
このような本発明の電子デバイスについて、図面を参照して具体的に説明する。図2は、本発明の電子デバイスの一例を示すものである。図2に例示する電子デバイス20は、水分バリア性を有するバリア性基板21と、バリア性基板21上に形成された電子素子22と、上記電子素子22を覆うように形成された熱伝導性封止部材1とを有するものである。
上記熱伝導性封止部材1は、金属基材2と、金属基材2上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層3と、上記絶縁層3上に形成された粘着層4と、上記金属基材2上に上記絶縁層3および粘着層4が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層3の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部10とを有するものである。
ここで、上記バリア性基板と上記熱伝導性封止部材1とは、上記絶縁層除去部10内に配置された封止樹脂部23で封止され、さらに熱伝導性封止部材1の粘着層4により接着されている。
本発明によれば、絶縁層除去部を有する熱伝導性封止部材を用いて封止するものであるので、上記絶縁層除去部に封止樹脂部を形成して電子素子を封止することにより、封止樹脂部が直に金属基材およびバリア性基板と接した状態で封止することができる。上記金属基材およびバリア性基板の水分に対するバリア性は、通常極めて高いものであることから、封止樹脂部がこのように金属基材およびバリア性基板と直接接した状態で封止することにより、電子素子に対して極めて高い水分に対する封止性を有する電子デバイスとすることが可能となる。
以下、このような電子デバイスについて、詳細に説明する。
1.熱伝導性封止部材
本発明の電子デバイスは、金属基材と、上記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、上記金属基材上に上記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ上記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有する熱伝導性封止部材を用い、バリア性基板との間で電子素子を封止するものである。このような熱伝導性封止部材は、上記「A.熱伝導性封止部材」で説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
2.封止樹脂部
本発明に用いられる封止樹脂部は、上記熱伝導性封止部材の絶縁層除去部に配置されることにより、バリア性基板と金属基材とに直接接することより、内部に存在する電子素子を封止するものである。このように、絶縁層等の樹脂材料を介すことなく封止することができるので、より外部から浸入する水分をより完全に遮断することが可能となる。
このような封止樹脂部は、上記絶縁層除去部内に配置されることにより、封止される電子素子を囲うように形成される。
上記封止樹脂部の構成する封止樹脂としては、水分の浸入を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂を挙げることができる。
封止樹脂部は、吸湿剤を含有していてもよい。封止樹脂部中の吸湿剤による吸湿によって、外部からの水分の浸入をより有効に防ぐことができるからである。なお、吸湿剤については、上記絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤と樹脂の合計量100質量部に対して、5質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜60質量部の範囲内、さらに好ましくは5質量部〜50質量部の範囲内である。
図4および図5に例示するように絶縁層除去部10が複数周形成されている場合には、各絶縁層除去部に形成される封止樹脂部の材料は同一であってもよく異なっていてもよい。
上記封止樹脂部の幅は、通常、上記絶縁層除去部の幅に対応する幅となる。また上記封止樹脂部の厚みとしては、外部からの水分の浸入を防ぐことができる厚みであれば特に限定されるものではなく、電子素子の用途に応じて適宜選択される。
封止樹脂部の形成方法としては、上記絶縁層除去部内に、封止樹脂を塗布することができる方法であれば、特に限定されるものではなく、ディスペンサー法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ティスペンサー法などを用いることができる。
3.バリア性基板
本発明に用いられるバリア性基板としては、水分に対するバリア性を有する基材であれば特に限定されるものではない。
このときの水分バリア性としては、通常、水蒸気透過率が1.0×10-1g/m2/day以下であればよく、好ましくは1.0×10-3g/m2/day以下、より好ましくは1.0×10-5g/m2/day以下である。なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置パーマトラン3/31(米国MOCON社製)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した値である。
本発明においては、例えば電子デバイスが表示装置であったり、太陽電池であったりした場合、すなわち内部の光を外部へ出射する必要がある場合、もしくは外部の光を内部に取り込む必要がある場合等においては、本発明のバリア性基板は透明であることが好ましい。
このような透明なバリア性基板(以下、透明基板とする場合がある。)としては、例えば、石英、ガラス等の無機材料;ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の高分子材料;およびこれらの高分子材料に無機微粒子や無機物の繊維などを添加したものを挙げることができる。
バリア性基板の厚みとしては、透明基板の材料およびEL素子の用途により適宜選択される。具体的に、0.005mm〜5mm程度である。
4.電子素子
本発明に用いられる電子素子は、水分の浸入により不具合が生じるものであり、かつ内部に熱が蓄積することによる不具合が生じるものであれば特に限定されるものではない。このような電子素子としては、例えば、EL素子、有機薄膜太陽電池素子、固体撮像素子等を挙げることができる。
本発明においては、中でもEL素子であることが好ましい。EL素子は水分の浸入により、特に有機EL素子においては、大きなダメージがあり、また発光に伴う発熱が生じることから、放熱性も極めて重要なものだからである。
このようなEL素子は、上記バリア性基板である透明基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された背面電極層とを少なくとも有するものである。以下、このようなEL素子について詳細に説明する。
(1)EL層
本発明におけるEL層は、透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含むものである。
EL層を構成する発光層は、有機発光層であってもよく、無機発光層であってもよい。有機発光層の場合には有機EL素子となり、無機発光層の場合には無機EL素子となる。中でも、発光層は有機発光層であることが好ましい。有機発光層は無機発光層よりも発熱による劣化が顕著であるからである。
以下、発光層が有機発光層である場合について説明する。
発光層が有機発光層である場合、EL層は、少なくとも有機発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、EL層とは、少なくとも有機発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布法でEL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、EL層は1層もしくは2層の有機層を有する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
有機発光層以外にEL層内に形成される層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層を挙げることができる。正孔注入層および正孔輸送層は一体化されている場合がある。同様に、電子注入層および電子輸送層は一体化されている場合がある。その他、EL層内に形成される層としては、キャリアブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
このようにEL層は種々の層を積層した積層構造を有することが多く、積層構造としては多くの種類がある。
EL層を構成する各層としては、一般的な有機EL素子に用いられるものと同様とすることができる。
(2)透明電極層
本発明における透明電極層は、透明基板上に形成されるものである。
透明電極層の材料としては、透明電極を形成可能な導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
透明電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
(3)背面電極層
本発明における背面電極層は、EL層上に形成されるものである。
背面電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、背面電極層上に白色反射層が形成されている場合には、背面電極層は透明性を有していることが好ましい。EL層からの発光を白色反射層で効率良く反射することができるからである。
背面電極層の材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、透明性の有無などにより適宜選択されるものであり、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属単体、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。また、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることもできる。
背面電極層の形成方法および厚みとしては、一般的なEL素子における電極と同様とすることができる。
5.吸湿部
本発明において、図4および図5に例示するように絶縁層除去部10が複数周形成されている場合には、内周側の絶縁層除去部に、吸湿剤を含有する吸湿部が形成されていてもよい。吸湿部が形成されていることによって、素子内部に存在する水を除去することができる。
なお、吸湿部に含有される吸湿剤については、上記「A.熱伝導性封止部材」の絶縁層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
吸湿部は、吸湿剤の他に、樹脂を含有していてもよい。
吸湿剤の含有量は、特に限定されるものではないが、吸湿剤と樹脂の合計量100質量部に対して、5質量部〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜60質量部の範囲内、さらに好ましくは5質量部〜50質量部の範囲内である。
なお、吸湿部の厚み、幅、形成方法等については、上記封止樹脂部と同様とすることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[製造例]
1.絶縁層の評価
(1)ポリイミド前駆体溶液の調製
(製造例1)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を少しずつ添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
(製造例2)
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で下記の表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜15およびポリイミド前駆体溶液Z(比較例)を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2′-Dimethyl-4,4′-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2′-Bis(trifluoromethyl)-4,4′-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
(製造例3)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に{[(4,5-dimethoxy-2-nitrobenzyl) oxy]carbonyl} 2,6-dimethyl piperidine (DNCDP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液1とした。
(製造例4)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液2とした。
(2)線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価
上記ポリイミド前駆体溶液1〜15およびポリイミド前駆体溶液Zを、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド1〜15およびポリイミドZ(比較例)のフィルムを得た。
また、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)上に塗布し、100℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm2露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、耐熱フィルムより剥離し、膜厚10μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のフィルムを得た。
(線熱膨張係数)
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
(吸湿膨張係数)
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合、50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とした。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
(3)基板反り評価
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1〜15およびZ、ならびに感光性ポリイミド前駆体溶液1,2を用い、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド1〜15およびZのポリイミド膜、ならびに感光性ポリイミド1,2のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
このサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
これらの評価結果を以下に示す。
SUS304箔の線熱膨張係数は17ppm/℃であることから、ポリイミド膜と金属箔との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表2より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
2.粘着層の評価
(1)熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の調製
まず、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を調製するために、次のようにポリイミド16を調製し、さらにポリイミド17を調製した。
(ポリイミド16および17の合成)
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物20.35g(0.090モル)、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製、ジェファーミンD2000)118.81g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン91.50gを窒素気流下で加え合わせ、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置を用いて生成水を分離した。反応後、水の留出がないことを確認し、室温(23℃)まで放冷し反応物(ポリイミド16)を得た。ポリイミド16の生成の有無は、IRスペクトルを確認して、ν(C=O)1770、1706cm−1のイミド環の特性吸収を確認することで判定した。次に、ポリイミド16に、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル12.08g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン9.74gを加え、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置で生成水を分離した。イミド化反応後、水の留出が止まったのを確認し、反応生成物溶液を室温まで放冷し、反応生成物溶液中に反応物(ポリイミド17)を得た。ポリイミド17の生成有無は、IRスペクトルから確認した。
(熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6の調製)
上記ポリイミド17を用いて、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6を調製した。そして、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6を用いた硬化物に基づき、その耐熱性とゴム弾性とガラス転移温度とを測定した。
まず、窒素気流下、ポリイミド17に架橋剤のN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを混合するとともに、これに酸化防止剤を下記表3に示す配合量(重量比)で混合させて混合物を得た。次いで、混合物を、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と1,3−ジオキソランとの混合液(混合液の混合比率は、体積比率でDMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%とした。)を用いて、固形分濃度(重量%)が25%となるように希釈し、室温で1時間攪拌し完全に溶解させ、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6を得た。
酸化防止剤には、次に示す酸化防止剤A1〜A3を用いた。なお、混合物のそれぞれに添加される酸化防止剤の種別は、下記表3に示すとおりである。
酸化防止剤A1:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1010)
酸化防止剤A2:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1098)
酸化防止剤A3:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1010)と1,2,3−ベンゾトリアゾールとの併用(配合比率は、ヒンダートフェノール系酸化防止剤:1,2,3−ベンゾトリアゾール=2(重量部):1(重量部))
(2)特性評価
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6を200℃で30分硬化させた硬化物のガラス転移温度は、サンプルによらず損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づくと(DMA法に基づくと)、−43.0℃であり、25℃における貯蔵弾性率は、2.5×10Pa〜4.0×10Paの範囲内であった。また、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6の5%重量減少温度は、各サンプルとも290℃〜300℃の範囲内であった。
3.熱伝導性封止部材の評価
(比較作製例A):絶縁層ベタ
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1〜15をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μm〜12μmのポリイミド1〜15のポリイミド膜を形成し、積層体1〜15を得た。
積層体1〜15のうち、積層体1,2,3,5,6,8,9,10,12,15は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。一方、積層体4,7,11,13,14は、反りが目立った。
(比較作製例B):絶縁層ベタ/粘着層ベタ
上記積層体1,2,3,5,6,8,9,10に対して、上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物1〜6を、適宜DMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%の混合溶液で希釈し、ダイコート法により塗布し、熱処理後、2μmの膜厚になるように大気中200℃で30分加熱し、粘着層を形成し、熱伝導性封止部材1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6、3−1、3−2、3−3、3−4、3−5、3−6、5−1、5−2、5−3、5−4、5−5、5−6、6−1、6−2、6−3、6−4、6−5、6−6、8−1、8−2、8−3、8−4、8−5、8−6、9−1、9−2、9−3、9−4、9−5、9−6、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6とした。
これらの熱伝導性封止部材に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
上述の熱伝導性封止部材はいずれも、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(比較作製例C):金属基材の凹凸
まず、上記積層体1の両面にドライフィルムレジストをラミネートした。次いで、積層体1のSUS箔側から200μm幅のラインアンドスペース(L/S)で筋状にレジストが除去されるように露光し、積層体1の絶縁層側から全面露光した後、レジスト製版を行った。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、レジストの開口部にてSUS箔の厚みが9μm残存するようにSUS箔をハーフエッチングした後、レジストパターンを剥離することにより、SUS箔が200μm幅でハーフエッチングされた積層体1Hを得た。
次に、上記積層体1Hに対して、上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物4を、適宜DMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%の混合溶液で希釈し、ダイコート法により塗布し、熱処理後、2μmの膜厚になるように大気中200℃で30分加熱し、粘着層を形成し、熱伝導性封止部材1H−4とした。
熱伝導性封止部材1H−4に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
熱伝導性封止部材1H−4は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(比較作製例D):金属基材の凹凸
まず、上記積層体1の両面にドライフィルムレジストをラミネートした。次いで、積層体1のSUS箔側から50μm角のラインアンドスペース(L/S)で等間隔にレジストが除去されるように露光し、積層体1の絶縁層側から全面露光した後、レジスト製版を行った。その後、塩化第二鉄溶液を用いて、レジストの開口部にてSUS箔の厚みが9μm残存するようにSUS箔をハーフエッチングした後、レジストパターンを剥離することにより、SUS箔が50μm角でハーフエッチングされた積層体1H′を得た。
次に、上記積層体1H′に対して、上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物4を、適宜DMAc:1,3−ジオキソラン=50%:50%の混合溶液で希釈し、ダイコート法により塗布し、熱処理後、2μmの膜厚になるように大気中200℃で30分加熱し、粘着層を形成し、熱伝導性封止部材1H′−4とした。
熱伝導性封止部材1H′−4に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
熱伝導性封止部材1H′−4は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(作製例A):絶縁層パターン
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。その後、ポリイミド前駆体膜上に、レジスト製版し現像と同時にポリイミド前駆体膜を現像し、その後、レジストパターンを剥離したのち、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、所望のパターンが除去された積層体1Pを得た。
積層体1Pは、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(作製例B):絶縁層パターン
上記積層体10のポリイミド膜上に、レジストパターンを形成した。ポリイミド膜が露出している部分を、ポリイミドエッチング液TPE-3000(東レエンジニアリング製)を用いて除去後、レジストパターンを剥離し、所望のパターンが除去された積層体10Pを得た。
積層体10Pは、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(作製例C):絶縁層パターン
15cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記感光性ポリイミド前駆体溶液1および2をそれぞれダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた。フォトマスクを介して、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃、10分加熱した後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚3μmの感光性ポリイミド1および感光性ポリイミド2のポリイミド膜を形成し、所望のパターン部が除去された積層体11および12を得た。
積層体11および12は、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
(作製例D):絶縁層パターン/粘着層パターン
ポリエチレンテレフタラート製の剥離フィルム上に、乾燥後の厚みが2μmになるように上記熱硬化性ポリイミド樹脂組成物2、4および6を、バーコートにより塗布し、大気中オーブンにより80℃、30分の条件で乾燥させた。そのフィルムを、上記積層体1P、積層体10P、積層体11および12における絶縁層のパターンに合わせて、最終的に形成される粘着層のサイズにあわせて切り出し、積層体1P、積層体10P、積層体11および12の絶縁層に重なるように貼り付け、剥離フィルムを剥がし、大気中200℃で30分加熱処理し、熱伝導性封止部材1P−2P、1P−4P、1P−6P、10P−2P、10P−4P、10P−6P、11−2P、11−4P、11−6P、12−2P、12−4P、12−6Pとした。
これらの熱伝導性封止部材に、ポリエチレンテレフタラートフィルム上にバリア層が蒸着されたバリアフィルムを、バリア層が粘着層と密着するように貼り付けた。
上述の熱伝導性封止部材はいずれも、温度や湿度環境の変化に対しても安定して平坦性が確保されていた。
[実施例1]:熱伝導性封止部材の作製
(作製例1)
上記作製例Aに記載の手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から5mmの位置に500μmの幅で絶縁層が除去されるようにパターニングされた熱伝導性封止部材−1を得た。
(作製例2)
上記作製例Dに記載の熱伝導性封止部材1P−4Pの作製手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から5mmの位置に500μmの幅で絶縁層が除去されており、絶縁層上の中心部に50mm角の粘着層を有する熱伝導性封止部材−2を得た。
(作製例3)
上記作製例Aに記載の手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から1.7mmおよび3.4mmの位置に500μmの幅で絶縁層が除去されるようにパターニングされた熱伝導性封止部材−3を得た。
(作製例4)
上記作製例Dに記載の熱伝導性封止部材1P−4Pの作製手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から1.7mmおよび3.4mmの位置に500μmの幅で絶縁層が除去されており、絶縁層上の中心部に50mm角の粘着層を有する熱伝導性封止部材−4を得た。
(作製例5)
上記作製例Aに記載の手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から5mmの幅で絶縁層が除去されるようにパターニングされた熱伝導性封止部材−5を得た。
(作製例6)
上記作製例Dに記載の熱伝導性封止部材1P−4Pの作製手法を用いることにより、60mm角の絶縁層の外縁部から5mmの幅で絶縁層が除去されており、絶縁層上の中心部に50mm角の粘着層を有する熱伝導性封止部材−6を得た。
(作製例7)
上記熱伝導性封止部材−1の上に、60mm角で中心50mm角が切り抜かれたフィルムを貼り付けた。次いで、熱伝導性封止部材−1の絶縁層が露出している中心部に、スクリーン印刷によって、酸化カルシウムを練り込んだペーストを塗布した。その後、フィルムを除去し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で200℃にて乾燥させた後、吸湿層が絶縁層上の中心部に50mm角で形成された熱伝導性封止部材−7を得た。
[実施例2]:有機EL素子の作製
以下、有機EL素子の作製1〜9においては、上述の熱伝導性封止部材を60mm角に切り出して使用した。熱伝導性封止部材のサイズを60mm、有機ELパネルのサイズを70mm、発光エリアを50mm□とした。
(有機EL素子の作製1)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、α−NPD(N,N'-di[(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl]-1,1'-biphenyl)-4,4'-diamine)とMoO3とを体積比4:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で膜厚40nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α−NPDを真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚20nmとなるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。次に、ホスト材料としてAlq3(Tris-(8-hydroxyquinoline)aluminium)を用い、緑色発光ドーパントとしてC545tを用いて、上記正孔輸送層上に、Alq3およびC545tを、C545t濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで35nmの厚さに真空蒸着により成膜し、発光層を形成した。次に、Alq3を真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で膜厚10nmとなるように真空蒸着し、電子輸送層を形成した。次に、Alq3およびLiFを共蒸着にて、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度0.1Å/secで15nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子注入層を形成した。最後に、陰極としてAlを用いて、真空度10-5Paの条件下、5.0Å/secの蒸着速度で膜厚200nmとなるように真空蒸着した。
陰極の形成後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−1を、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂をSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子1とする。)を得た。
(有機EL素子の作製2)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−2のバリアフィルムを剥がし、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂をSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子2とする。)を得た。
(有機EL素子の作製3)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−3を、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂を、外周側および内周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子3とする。)を得た。
(有機EL素子の作製4)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−4のバリアフィルムを剥がし、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂を、外周側および内周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子4とする。)を得た。
(有機EL素子の作製5)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−3を、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、酸化カルシウムを練り込んだペーストを、内周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布し、加熱乾燥した。次いで、エポキシ樹脂を、外周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子5とする。)を得た。
(有機EL素子の作製6)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−4のバリアフィルムを剥がし、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、酸化カルシウムを練り込んだペーストを、内周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布し、加熱乾燥した。次いで、エポキシ樹脂を、外周側のSUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子6とする。)を得た。
(有機EL素子の作製7)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−5を、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂を、SUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子7とする。)を得た。
(有機EL素子の作製8)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、上記熱伝導性封止部材−6のバリアフィルムを剥がし、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂を、SUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子8とする。)を得た。
(有機EL素子の作製9)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、バリア性フィルムにてパッケージされた上記熱伝導性封止部材−7を、グローブボックス中で開封し、加熱乾燥させた。その後、エポキシ樹脂を、SUS箔が露出している部分(絶縁層除去部)にディスペンサーにより塗布した。上記エポキシ樹脂を塗布した熱伝導性封止部材と素子とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。上記貼り合せた素子を、発光部を遮光するようにCrがパターンニングされた石英ガラスを通して紫外線を照射し、上記エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(有機EL素子9とする。)を得た。
[比較例]:有機EL素子の作製
(比較有機EL素子の作製1)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、60mm角に切り出し上記積層体1を、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子と熱伝導性封止部材とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、紫外線により硬化させることにより、有機EL素子(比較有機EL素子1とする。)を得た。
(比較有機EL素子の作製2)
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した後、真空蒸着装置から水分濃度0.1ppm以下の窒素雰囲気下にしたグローブボックスへ素子を搬送した。また、60mm角に切り出した上記熱伝導性封止部材1−4のバリアフィルムを剥がし、グローブボックス中で加熱乾燥させた。その後、素子と熱伝導性封止部材とを、発光部上に熱伝導性封止部材の絶縁層が配置されるように位置合わせし、貼り合わせた。その外側からエポキシ樹脂を塗布し、紫外線により硬化させることにより、有機EL素子(比較有機EL素子2とする。)を得た。
(比較有機EL素子の作製3):ガラス封止
上記有機EL素子の作製1と同様にして陰極まで形成した。また、発光エリアよりも広くなるようにエッチングで加工した、キャップ形状のガラス製の封止部材を準備した。この封止部材の土手にエポキシ樹脂を塗布し、水分濃度を1ppm以下にした窒素雰囲気下のグローブボックス内で、素子と貼り合せた。発光エリアをフォトマスクにより遮光した上で、紫外線を照射し、エポキシ樹脂を硬化させ、有機EL素子(比較有機EL素子3とする。)を得た。
[評価]
有機EL素子1〜9(本発明例)および比較有機EL素子1〜3を評価した。評価結果を表4に示す。
(初期特性)
有機EL素子1〜9および比較有機EL素子1〜3について、初期の発光状態は、何れの素子も発光面積の減少がない良好な発光が得られた。よって、この検証において、封止が良好な環境下(水分・酸素が1ppm以下)で行われ、且つ熱伝導性封止部材をグローブボックス内で加熱することで、水分の除去ができていることを確認した。
(80℃高温保存試験)
有機EL素子1〜9および比較有機EL素子1〜3について、80℃高温保存試験を行い、加速試験を行った。図7(a)〜(i)に有機EL素子1〜9、図8(a)〜(c)に比較有機EL素子1〜3の初期の発光状態の写真を示す。また、図9(a)〜(i)に有機EL素子1〜9、図10(a)〜(c)に比較有機EL素子1〜3の80℃高温保存試験、200時間後の発光状態の写真を示す。
キャップ形状のガラス製の封止部材にて封止を行った比較有機EL素子3と比較し、比較有機EL素子1,2は発光エリアの減少が大きくなることを確認した。これはポリイミドからの水分の浸入と思われる。
吸湿剤(酸化カルシウム)を用いていない有機EL素子1、2、3、4、7、8については、比較有機EL素子3と同等以上の結果が得られ、本発明の熱伝導性封止部材がガラス製のものと同等以上の特性を示すことが確認された。更には、有機EL素子5、6、9については、吸湿剤(酸化カルシウム)を導入することで、発光エリアの減少を極めて小さくすることが確認された。
(発光強度の角度依存性)
全ての有機EL素子1〜9及び比較有機EL素子1〜3について、発光面正面を0度として85度までの発光強度の角度依存性を調査した。有機EL素子9では、酸化カルシウムを含有する吸湿層が発光層にて発した光を拡散させることにより、発光面正面を0度として85度までの発光強度及び発光色の角度依存性が無いことが確認された。
(温度むらおよび放熱性)
全ての有機EL素子1〜9及び比較有機EL素子1〜3について、3000cd/m2にて点灯させてから10分後の面内の温度むらおよび放熱性を評価した。温度むらについては、K熱電対を用い、室温26.5℃にて、発光面であるガラス基板側から、発光エリアの中止部を含む任意の9箇所の温度を測定した。
本発明の熱伝導性封止部材を用いることで、比較有機EL素子3と比較し、温度の上昇を抑えることが確認された。また、面内の温度むら、熱伝導性封止部材側及び発光面側の温度差についても効果があることが確認された。
よって、本発明例の熱伝導性封止部材は、従来のガラス製の封止部材と比較し、有機EL素子の放熱や均熱に、良好に機能することが確認され、更には、SUS基板を露出することで、ポリイミド層を経由して浸入する水分に対して効果が大きいことを確認した。
1 … 熱伝導性封止部材
2 … 金属基材
3 … 絶縁層
4 … 粘着層
5 … 剥離層
10 … 絶縁層除去部
20 … 電子デバイス
21 … バリア性基板
22 … 電子素子
23 … 封止樹脂部

Claims (13)

  1. 金属基材と、
    前記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、
    前記金属基材上に前記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ前記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部と
    を有することを特徴とする熱伝導性封止部材。
  2. 前記絶縁層除去部が、前記絶縁層の外縁より内側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性封止部材。
  3. 前記絶縁層除去部は、前記絶縁層の中心部から外縁方向に複数周形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱伝導性封止部材。
  4. 前記絶縁層除去部の幅が、20μm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
  5. さらに、前記絶縁層上に形成され、耐熱性を有する粘着層を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
  6. 前記粘着層上に剥離層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の熱伝導性封止部材。
  7. 前記絶縁層の厚みが0.5μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の熱伝導性封止部材。
  8. 前記絶縁層がポリイミドを主成分とすることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の熱伝導性封止部材。
  9. 前記絶縁層の吸湿膨張係数が0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の熱伝導性封止部材。
  10. 前記絶縁層の線熱膨張係数が0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の熱伝導性封止部材。
  11. 前記絶縁層の線熱膨張係数と前記金属基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれかに記載の熱伝導性封止部材。
  12. 水分バリア性を有するバリア性基板と、前記バリア性基板上に形成された電子素子と、前記電子素子を覆うように配置された熱伝導性封止部材とを有する電子デバイスであって、
    前記熱伝導性封止部材が、金属基材と、前記金属基材上に形成され、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁層と、前記金属基材上に前記絶縁層が形成されていない部分であり、かつ前記絶縁層の中心部分を囲うように連続して形成された絶縁層除去部とを有し、
    前記絶縁層除去部に封止樹脂からなる封止樹脂部が形成され、バリア性基板と熱伝導性封止部材との間で、前記電子素子が封止されていることを特徴とする電子デバイス。
  13. 前記電子素子が、EL素子であることを特徴とする請求項12に記載の電子デバイス。
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