JP5730284B2 - ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体に関する。
従来から、ポリアミド樹脂の強度と剛性を向上させることを目的として、無機充填材を配合することにより、強化されたポリアミド樹脂を得ることが行なわれている。なかでも、ポリアミド樹脂組成物に強度と剛性を付与させることを目的として、繊維状強化材を含有することにより、ポリアミド樹脂組成物を強化することが行われている。しかしながら、一般的に、前記繊維状強化材の密度はポリアミド樹脂と比較すると大きいものである。そのため、引張強度や曲げ弾性率(剛性)を向上させるために、ポリアミド樹脂組成物の繊維状強化材の使用量を多くするに伴い、密度が増加する。軽量な樹脂が必要とされる分野においては、密度の大きいポリアミド樹脂組成物を用いることは不適であるため、密度が増加したポリアミド樹脂組成物の用途は限定される場合があった。
一方で、無機充填剤の一種である膨潤性層状珪酸塩を樹脂中に分子レベルで分散させることにより、強化効率が大幅に向上されたポリアミド樹脂組成物が開発されている。この場合、膨潤性層状珪酸塩の使用量が少量であっても、剛性が大幅に向上するという利点がある。しかし、膨潤性層状珪酸塩のみを用いた場合は、引張強度に対する補強効果が、それほど大きくは向上しないという問題があった。
このような問題に関して、JP2009−35593Aには、引張強度を向上させることを目的として、オクタデシルアミンなどの脂肪族アミンで表面処理された層状珪酸塩が配合されたポリアミド樹脂組成物が開示されている。しかしながら、JP2009−35593Aにおいては、脂肪族アミンで層状珪酸塩の表面に処理を行なう工程が必要であるため、工程が煩雑となり、コストアップにつながるという問題があった。さらに、引張強度が十分に向上しないという問題があった。
JP2009−35593Aと同様に、JP2009−35591Aには、ポリアミド樹脂の引張強度を向上させることを目的として、ガラス繊維、膨潤性層状珪酸塩、および微細繊維状マグネシウムシリケートが含有されたポリアミド樹脂組成物が開示されている。しかしながら、JP2009−35591Aにおいては、微細繊維マグネシウムシリケートを用いることに起因して、ポリアミド樹脂組成物の密度が増加するという問題があった。
本発明は、上記のような問題に鑑み、樹脂組成物中のサイズと分散状態が特定の範囲であるヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を併用することにより、ポリアミド樹脂が本来有している引張強度に加え、曲げ弾性率が顕著に優れた低密度なポリアミド樹脂組成物を得ることを目的とする。さらに、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法、および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体を得ることを目的とする。
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、樹脂組成物中のサイズと分散状態が特定の範囲であるヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を併用することにより、密度を増加させることなく、引張強度、曲げ弾性率に顕著に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリアミド樹脂100質量部、ヘクトライト0.5〜20質量部、繊維状強化材15〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが、平均厚みnmかつ短辺の平均長さ3391nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.594.5であり、前記ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中での平均粒子間距離が10〜200nmであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)(1)のポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、以下の工程(i)、(ii)および(iii)をこの順に含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
工程(i):ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物および無機酸を、ポリアミド樹脂を構成するモノマーの融点以上の温度で加熱溶融下、攪拌しながらヘクトライトを配合し、さらに水を加え、回転数100〜5000rpmで攪拌し、調製液を得る工程
工程(ii):工程(i)で得られた調製液を重合させ、ポリアミド樹脂とヘクトライトとを含む樹脂組成物を得る工程
工程(iii):工程(ii)で得られたポリアミド樹脂とヘクトライトとを含む樹脂組成物を溶融させて、繊維状強化材とシランカップリング剤を混練させる工程
(3)工程(i)において、B型粘度計で測定した調整液の回転粘度が1〜400Pa・sとなるように混合することを特徴とする(2)のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(4)(1)のポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、以下の工程(iv)を含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
工程(iv):ポリアミド樹脂に、ヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を溶融混練する工程
(5)(1)のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
本発明によれば、樹脂組成物中のサイズと分散状態が特定の範囲となるヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を併用することにより、密度を増加させることなく、ポリアミド樹脂の引張強度、曲げ弾性率が顕著に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。さらに、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法、および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体を得ることができる。このようなポリアミド樹脂組成物は、高度な機械特性を要求される材料分野で好適に用いることができ、産業上の利用価値は極めて高いものである。
透過型電子顕微鏡(TEM)によって撮影された、本発明に用いられるヘクトライトの層構造の画像である。 走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影された、本発明に用いられるヘクトライトの層構造が凝集した二次粒子の画像である。
以下、本発明を詳述する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、樹脂組成物中のサイズと分散状態が特定の範囲のものであるヘクトライト、繊維状強化材、およびシランカップリング剤を含有するものである。
本発明におけるポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタムジアミンとジカルボン酸、またはジアミンとジカルボン酸の一対の塩を主たる原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。ポリアミド樹脂の原料の具体例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のジアミン;アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸などが挙げられる。
このようなポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、およびこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、ヘクトライトによる引張強度を高める効果を顕著に高めることができる観点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12が特に好ましい。
本発明においては、ヘクトライトは、ポリアミド樹脂の引張強度と曲げ弾性率を顕著に向上させることを目的として用いられる。ヘクトライトは、珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものである。ヘクトライトの組成は、一般的には、Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHOで表される。
ヘクトライトは、板状であって、かつ略楕円形、または略長方形の形状を有する。そのため、繊維強化材のみを用いた場合と比較すると、その使用量を十分に低減させつつ、引張強度や曲げ弾性率を効果的に向上させることができる。従って、引張強度や曲げ弾性率が十分に向上されていても、密度が十分に低減されたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。また、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いると、ポリアミド樹脂組成物における膨潤性層状珪酸塩のサイズが本発明に規定された範囲とならないため、引張強度を向上させることができない。
本発明においては、ヘクトライトは、陽イオン交換容量が30〜100ミリ当量/100g以上であることが好ましく、55〜95ミリ当量/100g以上であることがより好ましい。この陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いために、ポリアミド樹脂組成物中においては、実質的に未劈開状態のままとなる。そのため、ヘクトライトのサイズが本発明に規定する範囲とならない。加えて、ポリアミド樹脂組成物中において、良好に分散することができない。そのため、引張強度と曲げ弾性率を顕著に向上させたポリアミド樹脂組成物を得ることができない。一方、陽イオン交換容量が100ミリ当量/100gを超えると、劈開が進み過ぎるため、曲げ弾性率は向上するものの脆化する傾向がある。その結果、繊維状強化材を併用した場合の引張強度を顕著に向上させることができない。
ヘクトライトの陽イオン交換容量は、日本ベントナイト工業会標準試験方法によるベントナイト(粉状)の陽イオン交換容量測定方法(JBAS-106-77)などに従って求められる。具体的には、浸出液容器、浸出管、受器を縦方向に連結した装置を用いる。そして、pHが7に調製された1N酢酸アンモニウム水溶液にヘクトライトを浸漬することにより、その層間のイオン交換性カチオンの全てをNH4+に交換して、NH4+型のヘクトライトを得る。その後、前記したNH4+型のヘクトライトを、水とエチルアルコールを用いて十分に洗浄してから、10質量%の塩化カリウム水溶液中に浸し、ヘクトライト中のNH4+をKへと交換する。引き続いて、前記したイオン交換反応に伴い浸出したNH4+を、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより、原料であるヘクトライトの陽イオン交換容量を求めることができる。
本発明の効果を奏するためには、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトのサイズを所定の範囲に規定することが必須である。ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトのサイズを特定の範囲とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の各種物性、特に引張強度と曲げ弾性率を大幅に向上させことができる。
本発明において、ヘクトライトの形状は、上述のように、板状であって、かつ楕円形状あるいは略長方形状である。このような形状とすることで、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形体としたときに、成形体中に分散するヘクトライトの配向方向が長片方向となる。その結果、長片方向への引張強度を高くすることができるという効果を奏することができる。ヘクトライトの形状が板状であって、かつ楕円形状あるいは略長方形状であることにより、ポリアミド樹脂組成物中でのヘクトライトのサイズが以下のようなものとなる。
ヘクトライトは、膨潤性層状珪酸塩であり、つまり複数の層構造がランダムに集合して重なっている構成を有している。そして、その平均厚み(すなわち、該層構造における重なり部分の合計の平均厚み)がnmであることが必要であ。ヘクトライトの平均厚みが10nmを超えるということは、劈開が不十分であるということを示す。従って、ヘクトライトのサイズが本発明に規定する範囲とならない。加えて、ポリアミド樹脂組成物中において、該ヘクトライトが良好に分散することができないため、十分な剛性、耐熱性が発現しない。一方、1nm未満であると、各種物性、特に引張強度と曲げ弾性率の補強効果が十分に得られないという問題がある。
ヘクトライトの形状について、図1および図2を用いて、以下に説明する。図1は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって撮影された、本発明に用いられるヘクトライトの層構造の画像である。図2は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影された、本発明に用いられるヘクトライトの層構造が凝集した二次粒子の画像である。図2にて示されるように、樹脂組成物中にて分散される前のヘクトライトの二次粒子は、図1で示される層構造がランダムに集合して重なり、凝集されたものである。一方、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩は、層構造が規則的に積み重なって二次粒子を形成する。そのため、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩の形状は、ヘクトライトの形状とは大きく異なる。その結果、ポリアミド樹脂組成物における膨潤性層状珪酸塩のサイズが本発明に規定された範囲とならない。
ポリアミド樹脂組成物中でのヘクトライトのサイズは、その短辺の平均長さが3391nmであることが必要であ。短辺の平均長さが25nm未満であると、十分な剛性、耐熱性が発現しない。一方、短辺の平均長さが100nmを越えると、剛性と耐熱性は十分に発現するが、引張強度が十分に発現しない。
ポリアミド樹脂組成物中でのヘクトライトのサイズは、その長辺の平均長さが38
〜500nmであることが好ましく、45〜400nmであることがより好ましい。長辺の平均長さが38nm未満であると、引張強度が十分に向上しない場合がある。一方、長辺の平均長さが500nmを越えると、引張強度が高くなるが、一方で靭性が低下する場合がある。
本発明においては、長辺の平均長さと短辺の平均長さの比率が、(長辺の平均長さ)/(短辺の平均長さ)=1.594.5であることが必要であり、1.6〜4.5であることがより好ましい。長辺と短辺の長さ比率が上記の範囲を下限に外れると、引張強度が向上しない。一方、長辺と短辺の長さ比率が上記の範囲を上限に外れると、ポリアミド樹脂中での分散性が低下するという問題がある。
本発明においては、ヘクトライトの初期サイズは特に制限されない。ここで初期サイズとは、ポリアミド樹脂組成物に含有される前のヘクトライトのサイズである。つまり、複数のヘクトライトの層単位が集合して重なることで形成される二次粒子のサイズであり、ポリアミド樹脂組成物中に含有されるヘクトライトのサイズとは異なるものである。ヘクトライトをポリアミド樹脂組成物中に含有させると、二次粒子の状態からヘクトライトの一枚ないし数枚からなる層単位まで劈開が進み、ポリアミド樹脂組成物中での分散が進む。したがって、ポリアミド樹脂組成物中に含有されるヘクトライトのサイズは、初期サイズと異なるのである。ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトのサイズを本発明に規定するサイズとするためには、前記初期サイズ(二次粒子サイズ)が平均粒径1〜50μmで用いることが好ましく、5〜45μmであることがより好ましく、10〜40μmであることがさらに好ましい。なお、ヘクトライトの初期サイズを調整するための方法として、ジェットミル等の公知の装置で粉砕することなどが挙げられる。
本発明の効果を奏するためには、樹脂組成物中のヘクトライトの粒子サイズが、上記の特定の範囲であることが必要である。なお、平均厚み、平均長さの求め方は、実施例において詳述する。
ヘクトライトは、特に、射出成形により得られる成形体において、樹脂流れ方向に対する引張強度の向上を目的として、ポリアミド樹脂組成物中に良好に分散していることが必要である。本発明においては、ポリアミド樹脂組成物中に良好に分散していることの指標として、樹脂組成物中の平均粒子間距離を用いている。すなわち、本発明においては、平均粒子間距離が10〜200nmであることが必要であり、15〜180nmであることがより好ましい。平均粒子間距離が10nm未満であると、靭性が低下するという問題がある。一方、200nmを超えると、引張強度および曲げ弾性率をバランスよく発現させることができないという問題がある。
なお、本発明における粒子間距離とは、透過型電子顕微鏡で樹脂組成物の内部を観察し、観察されたヘクトライトの隣り合うヘクトライトの互いの中心間を結ぶ直線距離をいう。その測定方法については後述の評価方法において詳述する。
ヘクトライトの含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが必要であり、1〜18質量部であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満であると、ヘクトライトを含有させることによる効果が十分に発現せず、引張強度が低下するという問題がある。一方、20質量部を超えると、樹脂組成物中での分散性が低下するため、引張強度が低下する。加えて、溶融混練時などにおける操業性が低下するという問題がある。なお、ポリアミド樹脂100質量部に対するヘクトライトの含有量0.5〜20質量部の中でも、ヘクトライトの含有量が少量である方が、ポリアミド樹脂組成物中での分散効率が高まるため劈開が進む傾向がある。
ヘクトライトは、溶融混練時に配合される場合の、ポリアミド樹脂との接着性向上を目的として、有機処理されていてもよい。有機処理の方法としては、層間にアミンやアミノ酸を挿入させる方法などが挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を、ヘクトライトと併用しても構わない。ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩としては、例えば、スメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)などが挙げられる。ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩の含有量は、引張強度の向上を阻害しない観点から、ヘクトライト100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。
本発明においては、ポリアミド樹脂の引張強度および曲げ弾性率をより向上させることを目的として、繊維状強化材が用いられる。すなわち、ヘクトライトと繊維状強化材とを併用することにより、引張強度および曲げ弾性率を著しく向上させることができる。
繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカーなどが挙げられる。なかでも、ヘクトライトと組合せられて、引張強度や曲げ弾性率を向上させる効果が最も高い観点から、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、特に限定されず、通常のものが用いられる。ガラス繊維の断面は、一般的な丸形状や、長方形や、それ以外の異形断面であってもよい。また、ガラス繊維のサイズは特に限定されない。
炭素繊維としては、特に限定されず、通常のものが用いられる。炭素繊維のサイズや断面形状も特に限定されない。
繊維状強化材の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、5〜200質量部であることが必要であり、10〜180質量部であることが好ましい。含有量が5質量部未満であると、十分な引張強度や曲げ弾性率が得られないという問題がある。一方、200質量部を超えると、溶融混練時の操業性が低下するという問題がある。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、繊維状強化材およびシランカップリング剤が同時に含有されることが必要である。繊維状強化材とシランカップリング剤とを併用することにより、ポリアミド樹脂と繊維状強化材の密着性を向上させ、十分な引張強度および曲げ弾性率が得られるという利点がある。シランカップリング剤が含有されないと、ポリアミド樹脂と繊維状強化材の密着性を向上効果が乏しいため、曲げ弾性率は向上するものの、引張強度は十分に向上しないという問題が発生する。また、シランカップリング剤以外のカップリング剤を用いると、効率よく引張強度を向上させることができないばかりか、曲げ弾性率向上効果を阻害してしまう。
シランカップリング剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが必要であり、0.02〜0.9質量部であることがより好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、ポリアミド樹脂と繊維状強化材との密着性向上の効果が不十分となり、十分な引張強度が得られない。一方、3質量部を超えると、ポリアミド樹脂と繊維状強化材との密着性向上の効果が飽和するばかりでなく、ポリアミド樹脂の有する靭性を損ない、十分な機械特性が得られない。
本発明で用いられるシランカップリング剤は特に限定されず、ビニル系シランシランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、十分な引張強度の向上効果を得やすい観点から、エポキシ系シランカップリング剤が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等が含有されていてもよい。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について以下に説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、以下の二つの方法のうち、いずれかを用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の第一の製造方法は、以下の工程(i)〜(iii)を含むものである。
工程(i):上述のポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物および無機酸を、ポリアミド樹脂を構成するモノマーの融点以上の温度で加熱溶融下、攪拌しながらヘクトライトを配合し、さらに水を加え、回転数100〜5000rpmで攪拌し調製液を得る工程(以下、単に「調製工程」と称する場合がある)
工程(ii):工程(i)で得られた調製液を重合させ、ポリアミド樹脂とヘクトライトを含む樹脂組成物を得る工程(以下、単に「重合工程」と称する場合がある)
工程(iii):工程(ii)で得られたポリアミド樹脂とヘクトライトを含む樹脂組成物を溶融させて、繊維状強化材とシランカップリング剤を混練させる工程(以下、単に「混練工程」と称する場合がある)
すなわち、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを溶融状態とし、該溶融状態のモノマーにヘクトライトを配合する。その後、重合に付し、繊維状強化材とシランカップリング剤を溶融混練することにより、本発明のポリアミド樹脂組成物が得られる。
まず、第一の製造方法における調製工程について、以下に説明する。
調製工程は、攪拌によりポリアミド樹脂を構成するモノマーを、アミノ基を有する化合物、無機酸とともに加熱溶融して、溶液状とし、ヘクトライト、水を順に加え攪拌する工程である。調製工程における攪拌方法は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー、ヘクトライト、水が均一に混合されるものであれば特に限定されないが、加熱攪拌しながら溶融混合させる方法などが挙げられる。その場合の攪拌翼の形状や回転数などは、特に限定されるものではない。
調製工程の温度は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーの融点以上の温度である必要がある。例えば、ポリアミド樹脂を構成するモノマーとして、ε−カプロラクタムを用いた場合は、加熱温度を69℃以上にして溶融させることが必要である。また、アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン等モル塩を用いた場合は、加熱温度を202℃以上にして溶融させることが必要である。
調製工程においては、アミノ基を有する化合物、無機酸を用いる必要がある。アミノ基を有する化合物は、無機酸と反応して4級アミンを形成するものである。4級アミンは、後の重合工程において、ヘクトライトの層間に侵入する。これにより、層間を親水性より疎水性に変化させ、ヘクトライトの分散性を促進させることが可能である。
アミノ基を有する化合物としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、デシルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、メチルドデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ベンジルトリメチルアミン、ベンジルトリエチルアミン、ベンジルトリブチルアミン、ベンジルジメチルドデシルアミン、ベンジルジメチルオクタデシルアミンなどのベンジルトリアルキルアミン等が挙げられる。アミノ基を有する化合物は、アミノ基以外の他の官能基を有するものであっても構わない。
無機酸は、pKa(25℃、水中での値)が6以下である酸である。具体的には、リン酸、亜リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。なかでも、ヘクトライトの劈開のしやすさと、設備への腐食性が低いという観点から、亜リン酸が好ましい。
アミノ基を有する化合物の使用量は、ヘクトライト100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。アミノ基を有する化合物の使用量が2質量部未満であると、ヘクトライトの層間を十分に疎水化できず、ヘクトライトの分散性が低下する場合がある。一方、20質量部を超えると、アミノ基を有する化合物がポリアミドの末端に付き、ポリアミド樹脂の重合度が上がらない場合がある。
無機酸の使用量は、ヘクトライトの劈開を促進させる観点から、また劈開したヘクトライトの(長辺の平均長さ)/(短辺の平均長さ)を1.5〜10とするために、
ヘクトライト100質量部に対して、0.3〜4質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。酸の使用量が0.3質量部未満であると、ヘクトライトが十分に劈開しない場合がある。一方、4質量部を超えると、調製工程において操業性が低下する場合がある。
調整工程における攪拌回転数は、100〜5000rpmであることが必要であり、200〜4500rpmであることが好ましい。回転数が100rpm未満であると調整液の均一性が低下する。一方、5000rpmを超えると、適正な回転粘度とすることが困難となる。
調整工程における調整液の回転粘度は、1〜400Pa・sであることが好ましく、5〜350Pa・sであることがより好ましく、10〜300Pa・sであることが特に好ましい。回転粘度が1Pa・s未満であると、ヘクトライトの分散性が低下するため、引張強度の向上効果が不十分となる。一方、400Pa・sを超えると、もはや調整液の回転粘度が高過ぎ、重合装置への調整液の払い出しが困難になる。
次に、第一の製造方法における重合工程について、以下に説明する。
重合工程は、調整液を重合させ、ポリアミド樹脂とヘクトライトを含む樹脂組成物を得る工程である。
ヘクトライトは、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、水酸基を多く含むため層間に水分子が入り込みやすく(すなわち、親水性が高く)、膨潤しやすい。加えて、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、粒径も小さい。そのため、従来技術のように、カプロラクタムやアミノカルボン酸などのポリアミド樹脂を構成するモノマーおよび水を、ヘクトライトとともに攪拌し、さらに重合に付してポリアミド樹脂組成物を得る方法を用いる場合においては、以下のような問題がある。すなわち、ヘクトライト層間の親水性が高いため、急激に水を吸収してヘクトライトが嵩高くなる。そのため、該ポリアミド樹脂組成物の回転粘度が大きくなり、均一な攪拌が困難となる。加えて、得られる樹脂組成物の取扱性が悪化する。従って、ヘクトライトの配合量を増加させることができず、ポリアミド樹脂の引張強度と曲げ弾性率を顕著に向上させることが困難となる。
それに対して、本発明の第一の製造方法においては、まず、ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物、無機酸を調製工程に付して、その後ヘクトライトを配合して重合工程に付している。そのため、ヘクトライトの層間がアミノ基を有する化合物と無機酸が反応して形成される4級アミンに置換され、疎水性となる。そのためヘクトライトの層間には、水分子は入り込みにくくなり、その結果として膨潤しにくくなる。加えて、ヘクトライトの層間には、ポリアミド樹脂が入り込むことで、劈開し、均一に分散される。その結果、得られるポリアミドスラリーの粘度増加を抑制することができ、取扱性の低下を防止しつつ、重合工程においてポリアミド樹脂とヘクトライトを含む樹脂組成物の各種物性をバランスよく向上させることができる。
第一の製造方法においては、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、ヘクトライトの含有量が上記の範囲となることが必要である。
重合工程におけるヘクトライトの形態は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー中における分散性を向上させることができれば特に制限されるものではないが、粉末状であれば、分散性が向上するため好ましい。
重合工程における重合温度は、240〜280℃であることが好ましく、245〜275℃であることがより好ましい。重合温度が240℃未満であると、重合度を上げることが困難となったり、ヘクトライトの分散性が低下したりするという問題がある。一方、重合温度が280℃を超えると、ポリアミド樹脂が分解し、黄変する場合がある。
重合工程における圧力は、0.3〜1.5MPaであることが好ましく、0.4〜1.0MPaであることがより好ましい。圧力が0.3MPa未満であると、ヘクトライトが良好に分散しない場合がある。その結果、引張強度、曲げ弾性率が十分に発現しない。一方、圧力が1.5MPaを越えると、重合性、ヘクトライトの分散性の向上が期待できるが、耐圧能力の高い設備仕様としなくてはならず、経済面の負担が高くなる場合がある。
次に、第一の製造方法における混練工程について説明する。混練工程は、重合工程で得られたポリアミド樹脂とヘクトライトを含む樹脂組成物に、繊維状強化材とシランカップリング剤を溶融混練する工程である。
混練工程においては、例えば、二軸混練押出機等を用いて混練をおこなうことができる。混練条件は、特に限定されないが、樹脂組成物の可塑化、劣化の抑制の観点から、溶融温度240〜290℃、スクリュー回転150〜400rpmの条件下で溶融混練することが好ましい。
混練工程においては、重合工程で得られたポリアミド樹脂の供給を主ホッパーより行い、繊維状強化材の供給をサイドフィーダーより行うことができる。
混練工程において、シランカップリング剤は、任意の手段を用いて供給することができる。その供給方法としては、主ホッパーよりポリアミド樹脂およびシランカップリング剤をドライブレンドしながら供給する方法、または主ホッパーよりポリアミド樹脂とは別に供給する方法、あるいはサイドフィーダーより供給する方法などが挙げられる。
第一の製造方法においては、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、繊維状強化材の含有量が上記の範囲となることが必要である。さらに、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、シランカップリング剤の含有量が上記の範囲となることが必要である。
本発明のポリアミド樹脂組成物の第二の製造方法は、以下の工程(iv)を含むものである。
工程(iv):ポリアミド樹脂に、ヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を溶融混練して樹脂組成物を得る工程(以下、単に「溶融混練工程」と称する場合がある)
すなわち、本発明のポリアミド樹脂組成物の第二の製造方法においては、ポリアミド樹脂にヘクトライトを溶融混練し、次いで繊維状強化材およびシランカップリング剤を溶融混練してもよいし、ポリアミド樹脂、ヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を一括で仕込んで溶融混練してもよい。なお、ポリアミド樹脂中でのヘクトライトの分散を促進するために、予めポリアミド樹脂、ヘクトライトを溶融混練した後に、繊維状強化材、シランカップリング剤を混練する方法が好ましい。
溶融混練は、二軸混練押出機等を用いることができ、溶融温度は、樹脂組成物の可塑化、劣化の抑制の観点から、240〜290℃であることが好ましい。なお、繊維状強化材、シランカップリング剤の配合は、繊維状強化材の折損を抑制するため、なるべく二軸混練押出機の下流側でサイドフィーダーを用いて添加することが好ましい。
溶融混練工程において、ポリアミド樹脂中にヘクトライトを分散するには、以下の任意の方法が挙げられる。つまり、主ホッパーよりポリアミド樹脂およびヘクトライトをドライブレンドして供給する方法、主ホッパーよりポリアミド樹脂、サイドフィーダーよりヘクトライトを供給する方法などの方法を用い、溶融混練することでポリアミド樹脂中にヘクトライトを分散できる。
第二の製造方法において、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、ヘクトライトの含有量が、上記の範囲となることが必要である。
溶融工程におけるヘクトライトの形態は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー中における分散性を向上させることができれば特に制限されるものではない。粉末状であれば、分散が容易となるため好ましい。
このようにヘクトライトを配合することにより、引張強度の向上効果を十分に得ることができるという効果を奏する。
第二の製造方法において、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、繊維状強化材の含有量が上記の範囲となることが必要である。さらに、最終的に本発明のポリアミド樹脂組成物を得た場合に、シランカップリング剤の含有量が上記の範囲となることが必要である。
第二の製造方法における利点を、以下に説明する。第一の製造方法は、ポリアミド樹脂の重合工程(つまり、工程(ii))を含むため、目的とするポリアミド樹脂組成物を得るために、大掛かりな設備を必要とする。一方、第二の製造方法は、溶融混練のみで目的とするポリアミド樹脂組成物を得ることができるため、比較的簡便な設備で、ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、ヘクトライトの分散性の点、量産性の点において、第一の製造方法を用いることがより好ましい。
本発明の第一の製造方法、第二の製造方法においては、本発明に効果を損なわない範囲において、必要に応じて、他の重合体や添加剤を配合する工程が含まれていることも可能である。なお、これらの他の重合体や添加剤の配合は、任意の段階で行われる。
本発明で得られたポリアミド樹脂組成物を通常の成形加工方法に付することにより、本発明の成形体を作製することができる。例えば、射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形などの熱溶融成形法を用いて、成形体とすることができる。なかでも、本発明のポリアミド樹脂組成物の特性である優れた引張強度、曲げ弾性率を最も効果的に用いることができるという観点から、射出成形により成形体とすることが好ましい。かかる場合の成形条件は、特に限定されないが、例えば、樹脂温度230〜290℃、金型温度80℃程度が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物を有機溶媒溶液に溶解させ、流延法に付することにより、薄膜とすることもできる。なお、成形体としては、ヘクトライトおよび繊維状強化材が配向しやすい形態を有する成形体であると、ヘクトライトと繊維状強化材との強化効果がより得られやすいため好ましい。
本発明の成形体は、その優れた特性を活かして、自動車用部品、電気部品、家庭用品等に用いることができる。特に、自動車のトランスミッション周り、エンジン周りにおいて使用できる。具体的には、自動車のトランスミッション周りとしては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジン周りとしては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等に好適に用いられる。
以下本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた原料は次の通りである。
(A)ポリアミド樹脂を構成するモノマー、またはポリアミド樹脂
・(A−1):ε―カプロラクタム(宇部興産社製)
・(A−2):12−アミノドデカン酸(宇部興産社製)
・(A−3):ナイロン6(ユニチカ社製、商品名「A1030BRL」)
・(A−4):ナイロン66(東レ社製、商品名「CM3001」)
(B)ヘクトライト、またはその他の膨潤性層状珪酸塩
・(B−1):ヘクトライト(Elementis Specialities社製、商品名「BentoneHC」)〔組成:Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHO〕(陽イオン交換量:90ミリ当量/100g)
・(B−2):有機処理ヘクトライト(Elementis Specialities社製、商品名「Bentone27」)(ベンジルメチルアルキルアンモニウムが層間に挿入したヘクトライト。アルキル基の炭素数は16〜18である。)〔組成:Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHO〕(陽イオン交換量:90ミリ当量/100g)
・(B−3):膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製、商品名「ME−100」)(陽イオン交換量:110ミリ当量/100g)
・(B−4):モンモリロナイト(クニピア社製、商品名「クニピアF」)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
・(B−5):有機処理モンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「エスベンNX」)(ジメチルオクタデシルアンモニウムが層間に挿入したモンモリロナイト)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
(C)繊維状強化材
・(C−1):ガラス繊維(径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維)(PPG社製、商品名「HP3540」)
・(C−2):ポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維(東邦テナックス社製、商品名「HTA−C6−NR」)
(D)シランカップリング剤
・(D−1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−403」)
・(D−2):3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−603」)
実施例および比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)引張強度
ISO527に従って測定した。本発明においては、180MPa以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(2)曲げ弾性率
ISO178に従って測定した。
(3)ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の平均厚み
得られたポリアミド樹脂組成物から、射出成形により、ISO試験片を作製した。該試験片における成形時の樹脂の流動方向に平行な面から、適当なサイズで一部を取り出し、凍結ミクロトームを用いて厚さ70nmの超薄切片を作製した。該超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM-1230 TEM」)(加速電圧:100kv)により、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩を調べた。すなわち、観察された電子顕微鏡写真から、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の厚みを測定し、平均値を算出した。なお、測定個数は100個とした。
(4)ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の平均短辺長さ、平均長辺長さ
得られたポリアミド樹脂組成物から、射出成形により、ISO試験片を作製した。該試験片における成形時の樹脂の流動方向に直角な方向から、適当なサイズで一部を取り出し、凍結ミクロトームを用いて厚さ70nmの超薄切片を作製した。該超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM-1230 TEM」)(加速電圧:100kv)により、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩を調べた。すなわち、観察された電子顕微鏡写真から、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の短辺長さ、長辺長さを測定し、平均値を算出した。なお、測定個数は100個とした。
(5)ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の平均粒子間距離
得られたポリアミド樹脂組成物から、射出成形により、ISO試験片を作製した。該試験片における成形時の樹脂の流動方向に平行な方向から、適当なサイズで一部を取り出し、凍結ミクロトームを用いて厚さ70nmの超薄切片を作製した。該超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM-1230 TEM」)(加速電圧:100kv)により、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまた膨潤性層状珪酸塩の分散状態を調べた。すなわち、観察された電子顕微鏡写真から、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の粒子間距離を測定し、平均値を算出した。粒子間距離とは、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の中心から、最も近くにあるヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の中心までの直線距離を測定したものである。なお、測定個数は100個とした。
(6)密度
ISO1183に従って、水中置換法にて、23℃の条件下で測定した。
(7)比弾性率
上記、(2)で求められた曲げ弾性率、(6)で求められた密度より、比弾性率を算出した。
比弾性率=(曲げ弾性率)/(密度)
比弾性率の数値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物、またはそれより得られる成形体の単位重量当たりの曲げ弾性率が高いことを示す。本発明においては、比弾性率が大きい方が好ましい。本発明においては、繊維状強化材を50質量部未満配合した場合は、5.5GPa以上、繊維状強化材を50質量部以上配合した場合は、6.5GPa以上であるものが実用に耐えうるものとした。
ポリアミド樹脂と、ヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩からなる樹脂組成物(P−1)〜(P−10)、(P−17)の調製
表1に示す割合で、ε−カプロラクタムまたは12−アミノドデカン酸、純水、リン酸を配合して、80℃で、30分間加温しながら攪拌した。ここまでは、工程(i)である。次いで、表1に示すように、ヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の種類と配合割合をそれぞれ変えて仕込み、表1に示す回転数、回転粘度で調整液を得た。その後、表1に示す圧力で260℃、1時間重合し、次いで260℃、常圧で1時間重合した。ここまでは、工程(ii)である。
ポリアミド樹脂と、ヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩からなる樹脂組成物(P−11)、(P−12)、(P−13)の調製
表1に示す割合で、ポリアミド樹脂と層状珪酸塩とを、280℃の溶融温度で溶融混練した。これは、工程(iv)である。
実施例1
(P−1)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37BS」)を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例2
(P−1)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)2質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例3
(P−1)105質量部、(C−1)50質量部、(D−2)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例4
(P−2)100.5質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例5
(P−3)110質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例6
(P−5)105質量部、(C−1)200質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例7
(P−6)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.01質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例8
(P−7)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)3質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は200℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例9
(P−12)107質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iv)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例10
(P−13)107質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iv)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例11
(P−4)120質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例12
(P−1)105質量部、(C−2)20質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例13
(P−4)120質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量部を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例1
(P−8)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例2
(P−9)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例3
(P−10)155質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例4
(P−11)107質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(v)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は285℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例5
(P−1)105質量部、(C−1)50質量部を溶融混錬した。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。これは、工程(iii)である。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例6
(P−1)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)4質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例7
(P−14)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例8
(P−15)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例9
(P−1)105質量部、(C−1)10質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例10
(P−1)105質量部、(C−1)210質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。(C−1)の配合が過多であったためポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができなかった。
比較例11
(P−16)120質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例12
(P−17)105質量部、(C−1)50質量部、(D−1)0.1質量を溶融混錬した。これは、工程(iii)である。溶融混練には、上記の二軸押出機を使用した。溶融混練の温度は270℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
実施例1〜12で得られたポリアミド樹脂組成物は、密度が増加することなく、引張強度および曲げ弾性率が十分に向上されたものであった。
比較例1および比較例2で得られたポリアミド樹脂組成物は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いたため、膨潤性層状珪酸塩の短辺の平均長さが過大となり、また、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小となった。そのため、引張強度に劣っていた。
比較例3で得られたポリアミド樹脂組成物は、ヘクトライトの含有量が過多であったため、膨潤性層状珪酸塩の平均粒子間距離が過小となり、また、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小となった。そのため、引張強度に劣っていた。
比較例4で得られたポリアミド樹脂組成物は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いたため、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小となり、また、層状珪酸塩の平均厚みも厚かった。そのため、引張強度に劣っていた。
比較例5で得られたポリアミド樹脂組成物は、シランカップリング剤を配合していないため、引張強度に劣っていた。
比較例6で得られたポリアミド樹脂組成物は、シランカップリング剤の配合が過多であったため、ポリアミド樹脂の靭性が損なわれ、引張強度および比弾性率に劣っていた。
比較例7で得られたポリアミド樹脂組成物は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いたため、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小であり、引張強度に劣っていた。
比較例8で得られたポリアミド樹脂組成物は、無機酸の配合を行わなかったため、ヘクトライトの平均短辺長さ、平均厚みが過大となり、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小であり、曲げ弾性率に劣っていた。
比較例9で得られたポリアミド樹脂組成物は、繊維状強化材の配合が過少であったため、引張強度や曲げ弾性率に劣っていた。
比較例11で得られたポリアミド樹脂組成物は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いたため、膨潤性層状珪酸塩の平均長辺長さ/平均短辺長さの比が過小であり、引張強度に劣っていた。
比較例12で得られたポリアミド樹脂組成物は、工程(i)における回転数が過小であったため、ヘクトライトの平均厚みが過大となり、曲げ弾性率に劣っていた。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、密度を増加させることなく、引張強度、曲げ弾性率を向上させることができる。そのため、様々な材料分野で好適に用いられることができ、有用である。

Claims (5)

  1. ポリアミド樹脂100質量部、ヘクトライト0.5〜20質量部、繊維状強化材15〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが、平均厚みnmかつ短辺の平均長さ3391nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.594.5であり、前記ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中での平均粒子間距離が10〜200nmであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、以下の工程(i)、(ii)および(iii)をこの順に含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
    工程(i):ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物および無機酸を、ポリアミド樹脂を構成するモノマーの融点以上の温度で加熱溶融下、攪拌しながらヘクトライトを配合し、さらに水を加え、回転数100〜5000rpmで攪拌し、調製液を得る工程
    工程(ii):工程(i)で得られた調製液を重合させ、ポリアミド樹脂とヘクトライトとを含む樹脂組成物を得る工程
    工程(iii):工程(ii)で得られたポリアミド樹脂とヘクトライトとを含む樹脂組成物を溶融させて、繊維状強化材とシランカップリング剤を混練させる工程
  3. 工程(i)において、B型粘度計で測定した調整液の回転粘度が1〜400Pa・sとなるように混合することを特徴とする請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、以下の工程(iv)を含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
    工程(iv):ポリアミド樹脂にヘクトライト、繊維状強化材およびシランカップリング剤を溶融混練する工程
  5. 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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