JP5669491B2 - ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関するものである。特に、引張強度、比弾性率(曲げ弾性率を密度で割った値)、低ソリ性をバランスよく兼ね備えたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
従来からポリアミド樹脂の強度と弾性率を向上させることを目的として、無機充填材を配合して強化ポリアミド樹脂を得ることが行なわれてきた。ポリアミド樹脂組成物に強度と弾性率を付与させる場合は繊維状強化材で強化したポリアミド樹脂組成物が一般的に用いられている。特に炭素繊維を用いた場合は、低密度かつ高強度・高弾性率である材料が得られる。しかしながら、さらに弾性率を付与するために、少量の添加で弾性率を大幅に向上させることができる膨潤性層状珪酸塩を併用した場合、引張強度が低下して、強度と剛性のバランスがとれた材料を得ることができない。また、繊維状の強化材であるため、ソリが大きいという問題があり、その結果として、ポリアミド樹脂組成物の用途が限定される場合があった。
一方で、無機充填剤の一種である膨潤性層状珪酸塩を樹脂中に分子レベルで分散させ、強化効率を大幅に向上させた強化ポリアミド樹脂組成物が開発されている(特許文献1)。この場合、膨潤性層状珪酸塩を少量用いた場合であっても、弾性率の大幅な向上が得られる。しかし、引張強度に対する補強効果については、膨潤性層状珪酸塩のみでは大きな向上は得られないという問題があった。
また、ポリアミド樹脂に弾性率、耐熱性を付与することを目的として、ガラス繊維と無機充填剤を併用させたポリアミド樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。しかしながら、このようなポリアミド樹脂組成物では、無機充填剤の添加効果が小さく、一定以上の弾性率を付与するためには、ある程度の量のガラス繊維および無機充填剤を配合する必要があり、低密度でありながら、引張強度と曲げ弾性率、ソリ性のバランスがいい材料を得ることができなかった。
また、ポリアミド樹脂組成物に対して、炭素繊維と層状珪酸塩を配合することで、高強度・高弾性率でかつ表面外観にも優れる繊維強化ポリアミド樹脂が開発されている(特許文献3)。しかしながら、かかる場合には曲げ強度は十分であるが、引張強度が不十分であるという問題があった。
特開平6−248176号公報 特開昭51−50960号公報 特開2002−284985号公報
本発明は、樹脂組成物中のサイズが特定の範囲のものであるヘクトライト、炭素繊維、シランカップリング剤を併用することにより、ポリアミド樹脂の機械物性に優れ、特に引張強度、比弾性率、低ソリ性をバランスよく兼ね備えたポリアミド樹脂組成物を得ることを目的とする。さらに、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法、および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体を得ることを目的とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリアミド樹脂100質量部に対し、ヘクトライト0.5〜20質量部、炭素繊維20〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトは、層間に、12−アミノドデカン酸と無機酸との反応により形成した4級アミンが侵入したものであり、ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが平均厚み1〜10nm、かつ短辺の平均長さ10〜70nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.0〜1.4であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを無機酸および12−アミノドデカン酸とともに加熱溶融して攪拌し、次いで、ヘクトライトを配合してポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合に付した後、炭素繊維とシランカップリング剤を配合し、混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(3)(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
本発明によれば、樹脂組成物中のサイズが特定の範囲のものであるヘクトライト、炭素繊維、シランカップリング剤を併用することにより、ポリアミド樹脂の各種物性に優れ、特に引張強度、低ソリ性をバランスよく兼ね備えて、なおかつ比弾性率が大きいポリアミド樹脂組成物を得ることができる。このようなポリアミド樹脂組成物は、高度な物性を要求される材料分野で好適に用いることができ、産業上の利用価値は極めて高いものである。
本発明のソリ量の評価における円板の斜視図(状態調湿前)。 本発明のソリ量の評価における円板の斜視図(状態調湿後)。
以下、本発明を詳述する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、樹脂組成物中のサイズが特定の範囲のものであるヘクトライト、炭素繊維、およびシランカップリング剤を含有するものである。
本発明におけるポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸、それらの一対の塩を主たる原料とするアミド結合を主鎖内に有する重合体である。ポリアミド樹脂の原料の具体例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のジアミン;アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸などが挙げられる。
かかるポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)およびこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でも、ヘクトライトによる引張強度、低ソリ性を高める効果を十分に引き出すことができる観点から、ナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
本発明においては、ヘクトライトは、炭素繊維で補強されたポリアミド樹脂が本来有する機械特性を損なうことなく、曲げ弾性率を向上させることを目的として用いられる。加えて、ヘクトライトは、低ソリ性を付与する役割を担う。ヘクトライトは珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、天然に得られるものであってもよいし、合成により得られるものであってもよい。ヘクトライトの組成は、一般的には、Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHOで表される。
該ヘクトライトは、陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g以上であることが好ましく、60ミリ当量/100g以上であることがより好ましい。この陽イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いために、ポリアミド樹脂組成物中においては、実質的に未劈開状態のままとなり、本発明に規定するサイズになりにくくなるおそれがある。加えて、ポリアミド樹脂組成物中において、良好に分散することができない。そのため、引張強度、曲げ弾性率、寸法安定性および反り防止性をバランスよく兼ね備えたポリアミド樹脂組成物を得ることができない。この陽イオン交換容量の値の上限に特に制限はなく、現実に調製可能なヘクトライトの中から適宜選択できる。
なお、上記のヘクトライトの陽イオン交換容量は、日本ベントナイト工業会標準試験方法によるベントナイト(粉状)の陽イオン交換容量測定方法(JBAS-106-77)などにより求められる。具体的には、浸出液容器、浸出管および受器を縦方向に連結した装置を用いて、まず初めに、ヘクトライトをpH=7に調製した1N酢酸アンモニウム水溶液により、その層間のイオン交換性カチオンの全てをNH4+に交換する。その後、水とエチルアルコールを用いて十分に洗浄してから、前記したNH4+型のヘクトライトを10質量%の塩化カリウム水溶液中に浸し、試料中のNH4+をKへと交換する。引き続いて、前記したイオン交換反応に伴い浸出したNH4+を0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定することにより、原料であるヘクトライトの陽イオン交換容量を求めることができる。
本発明においては、ヘクトライトの初期サイズは特に制限されない。ここで初期サイズとは、ポリアミド樹脂組成物に含有される前のヘクトライトのサイズであり、ポリアミド樹脂組成物中に含有されるヘクトライトのサイズとは異なるものである。本発明の効果を奏するためには、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトのサイズを所定の範囲に規定することが必須である。ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトのサイズを所定の範囲に規定することにより、ポリアミド樹脂組成物の各種物性、特に引張強度を大幅に向上させことができる。なお、ヘクトライトのサイズを調整するための方法として、ジェットミル等の公知の装置で粉砕することなど挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物中でのヘクトライトのサイズについて、以下に説明する。ヘクトライトは、膨潤性層状珪酸塩であり、複数の層構造が重なっているものであるが、その平均厚み(すなわち、該層構造における重なり部分の合計の平均厚み)が1〜10nmであることが必要であり、1.5〜8nmであることが好ましい。ヘクトライトの平均厚みが10nmを超えると、劈開が不十分であり、十分な曲げ弾性率が発現しない。一方、1nm未満であると、十分な補強効果が得られないという問題がある。
ポリアミド樹脂組成物中でのヘクトライトのサイズは、その短辺の平均長さが10nm〜70nmであることが必要であり、15〜65nmであることが好ましい。短辺の平均長さが10nm未満であると、十分な剛性(引張強度、曲げ弾性率、比弾性率)、低ソリ性(寸法安定性)が発現しない。一方、短辺の平均長さが70nmを越えると、弾性率は十分であるが、引張強度が十分ではない。
従って、本発明の効果を奏するためには、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトの粒子サイズが、上記の特定のサイズであることが必要である。なお、平均長さの求め方は、実施例において詳述する。
本発明において、ヘクトライトは、板状であって、かつ円形に近い形状であることが必要である。円形に近い形状とすることで、低ソリ性(寸法安定性)を高めるという効果を奏することができる。従って、本発明においては、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、(長辺の平均長さ)/(短辺の平均長さ)=1.0〜1.4であることが必要であり、(長辺の平均長さ)/(短辺の平均長さ)=1.1〜1.3であることがより好ましい。長辺の平均長さと短辺の平均長さの比率が上記の範囲を外れると、低ソリ性(寸法安定性)が低下するという問題がある。
ヘクトライトの含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが必要であり、1〜18質量部であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満であると、低ソリ性(寸法安定性)が低下するという問題があり、20質量部を超えると重合時などの操業性が低下するという問題がある。
ヘクトライトは、特に、溶融混練時に配合する場合の、ポリアミド樹脂との接着性向上を目的として、有機処理剤にヘクトライトを分散させる等の操作により、十分に有機処理剤をヘクトライトに含浸させ、乾燥するなどの方法により有機処理されていてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を、ヘクトライトと併用しても構わない。ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩としては、例えば、スメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられる。ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩の含有量は、低ソリ性(寸法安定性)を損なわないために、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。ただし、ヘクトライトの含有量を超えて配合すべきでない。
本発明においては、ポリアミド樹脂の引張強度および曲げ弾性率をより向上させることを目的として、炭素繊維が用いられることが必要である。すなわち、炭素繊維とヘクトライトを併用することにより、引張強度を維持しつつ、低ソリ性と比弾性率を向上させることができる。
炭素繊維としては、特に限定されず、一般的に熱可塑性樹脂の補強に用いられる炭素繊維が用いられる。炭素繊維のサイズも特に限定されない。また、炭素繊維は、取り扱い性を向上させるために、束ねて造膜剤等を配合した薬液でコートし、集束させてもよい。造膜剤には公知のウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ナイロン系樹脂などを用いることができる。
炭素繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、20〜200質量部であることが必要であり、30〜180質量部であることが好ましい。含有量が20質量部未満であると、十分な引張強度が得られないという問題がある。一方、200質量部を超えると溶融混練時の操業性が低下するという問題がある。
本発明においては、炭素繊維とポリアミド樹脂との接着性を向上させること、およびヘクトライトとポリアミド樹脂の接着性を向上させるために、炭素繊維とシランカップリング剤を配合する必要がある。炭素繊維とシランカップリング剤を配合する方法は種々の態様を採用することができ、予めシランカップリング剤で表面処理された炭素繊維とシランカップリング剤を配合するようにしてもよいし、炭素繊維とシランカップリング剤を混練時に別々に配合するようにしてもよいし、または予めシランカップリング剤で表面処理された炭素繊維のみを配合するようにしてもよい。炭素繊維とシランカップリング剤を配合することにより、得られるポリアミド樹脂組成物の引張強度をより向上させることができる。なお、シランカップリング剤で炭素繊維を表面処理する方法としては、ディッピング等で炭素繊維表面に処理層を付与する方法が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、炭素繊維とヘクトライトとシランカップリング剤をいずれも含有することが必要である。炭素繊維とヘクトライトとシランカップリング剤とを併用することにより、ポリアミド樹脂とヘクトライト、ポリアミド樹脂と炭素繊維のそれぞれについて、相互の密着性を向上させることができるという利点がある。
シランカップリング剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが必要であり、0.02〜2質量部であることがより好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、上記、相互の密着性向上の効果が不十分で、十分な引張強度が得られない。一方、3質量部を超えると、上記、相互の密着性向上の効果が飽和するばかりでなく、ポリアミド樹脂の有する靭性を損ない、十分な機械特性が得られない。
本発明で用いられるシランカップリング剤は特に限定されず、ビニル系シランシランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤などが挙げられる。中でも、本発明においては、エポキシ系シランカップリング剤を用いることが好ましい。エポキシ系シランカップリング剤以外のものを用いた場合は、ポリアミド樹脂と炭素繊維との接着性、およびポリアミド樹脂とヘクトライトとの接着性が十分発現せず、十分な引張強度を得ることができない場合がある。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、リン酸、亜リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が含有されていてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、デシルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、メチルドデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミンなどの脂肪族アミン、ベンジルトリメチルアミン、ベンジルトリエチルアミン、ベンジルトリブチルアミン、ベンジルジメチルドデシルアミン、ベンジルジメチルオクタデシルアミンなどの芳香族アミン等のアミノ基を有する化合物が含有されていてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、添加剤として、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等が含有されていてもよい。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
また本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、他の重合体が配合されていてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について以下に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、上述のポリアミド樹脂を構成するモノマーをアミノ基を有する化合物、無機酸とともに加熱溶融して攪拌する工程(以下、単に「調製工程」と称する場合がある)と、該調製工程を経た調製液に、上述のヘクトライトを配合しポリアミドスラリーを得た後、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合するとともに、ヘクトライトがポリアミド樹脂中にて分散する工程(以下、単に「重合工程」と称する場合がある)、その後、ポリアミド樹脂とヘクトライトからなる樹脂組成物を溶融させ、炭素繊維とシランカップリング剤を混練する工程(以下、単に「混練工程」と称する場合がある)とからなる。すなわち、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを溶液状とし、該溶液状のモノマーにヘクトライトを配合して、重合に付し、炭素繊維とシランカップリング剤を溶融混練することにより、本発明のポリアミド樹脂組成物が得られる。
まず調製工程について説明する。
調製工程における攪拌方法は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物、無機酸が均一に混合させるため、加熱溶融して攪拌しながら混合させる必要がある。また、必要に応じて水を添加することもできる。
調製工程の温度は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーが溶融する温度であれば特に限定されるものではない。また、攪拌条件に関しても、攪拌翼の形状や回転数などは特に限定されるものではない。
調製工程においては、アミノ基を有する化合物、無機酸を用いることが必要である。アミノ基を有する化合物は、無機酸と反応して4級アミンを形成するものである。4級アミンは、後の重合工程において、ヘクトライトの層間に侵入することにより、層間を親水性より疎水性に変化させ、ヘクトライトの分散性を促進させることが可能である。
アミノ基を有する化合物としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、デシルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、メチルドデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミンなどの脂肪族アミン、ベンジルトリメチルアミン、ベンジルトリエチルアミン、ベンジルトリブチルアミン、ベンジルジメチルドデシルアミン、ベンジルジメチルオクタデシルアミンなどの芳香族アミン等が挙げられ、アミノ基以外の他の官能基を有するものであっても構わない。なかでも、ヘクトライト層間へのイオン交換のしやすさと重合の起点となりうるモノマーであるという観点から、12−アミノドデカン酸が好ましい。
無機酸としては、pKa(25℃、水中での値)が6以下である酸であって、具体的には、リン酸、亜リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。なかでも、ヘクトライトのへき開のしやすさと設備へ腐食性が低いという観点から、亜リン酸が好ましい。
アミノ基を有する化合物の使用量は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがさらに好ましい。アミノ基を有する化合物の使用量が0.05質量部未満であると、ヘクトライトの層間を十分に疎水化できず、ヘクトライトの分散性が低下する場合がある。一方、5質量部を超えると、アミノ基を有する化合物がポリアミドの末端に付き、ポリアミド樹脂の重合度が上がらない場合がある。
無機酸の使用量は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがさらに好ましい。酸の使用量が0.05質量部未満であると、ヘクトライトが十分に劈開しない場合がある。一方、5質量部を超えると、攪拌工程において操業性が低下する場合がある。
次に重合工程について説明する。
ヘクトライトは、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、層間に水分子が入り込みやすく(すなわち、親水性が高く)、膨潤しやすいものである。加えて、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、粒径も小さいものである。そのため、従来技術のように、カプロラクタムやアミノカルボン酸などのポリアミド樹脂を構成するモノマー、水を、ヘクトライトとともに攪拌・重合に付してポリアミド樹脂組成物を得る場合、ヘクトライト層間の親水性が高いため、際限なく水を吸収する。そのため、ヘクトライトの配合量が多い場合は、該ポリアミド樹脂組成物の粘度が大きくなり、均一な攪拌が困難である。加えて、得られる樹脂組成物の取扱性も悪化するという問題があった。従って、ヘクトライトの配合量を増加させることができず、ポリアミド樹脂の各種物性をバランスよく兼ね備えることが困難となる。
一方、本発明においては、まず、ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物、無機酸を調製工程に付して、その後ヘクトライトを配合して重合工程に付している。そのため、ヘクトライトの層間がアミノ基を有する化合物と無機酸が反応して形成される4級アミンに置換され、疎水性となり、ヘクトライトの層間には、水分子が入り込みにくくなり、その結果として膨潤しにくくなる。その結果、スラリーの粘度増加を抑制することができ、取扱性の低下を防止しつつ、重合を行なうことができる。スラリーの粘度増加を抑制することで、均一攪拌が可能となり、ヘクトライトが樹脂中に均一に分散したポリアミド樹脂組成物が得られる。得られたポリアミド樹脂組成物は各種物性がバランスよく向上したものとなる。
重合工程におけるヘクトライトの形態は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを含むスラリー中における分散性を向上させることができれば特に制限されるものではない。
重合工程における重合温度は、240〜280℃であることが好ましく、245〜275℃であることがより好ましい。重合温度が240℃未満であると、重合度が上がり難かったり、ヘクトライトの分散性が低下したりするという問題がある。一方、重合温度が280℃を超えると、ポリアミド樹脂が分解し、物性低下を招く場合がある。
重合工程における圧力は、0.1〜1.5MPaであることが好ましく、0.2〜1.0MPaであることがより好ましい。圧力が0.1MPa未満であると、ヘクトライトが良好に分散しない場合があり、ひいては、引張強度、比弾性率、低ソリ性が十分に発現しない。一方、圧力が1.5MPaを越えると、重合性、ヘクトライトの分散性の向上が期待できる反面、耐圧能力の高い設備仕様としなくてはならず、経済面の負担が高くなる場合がある。
次に、混練工程について説明する。混練工程は、ポリアミド樹脂とヘクトライトからなる樹脂組成物に、炭素繊維とシランカップリング剤を溶融混練する工程である。
混練工程における混練条件は、特に限定されず、例えば、二軸混練押出機等を用いて、溶融温度240〜290℃、スクリュー回転150〜400rpmの条件下溶融混練することができる。また、主ホッパーより重合工程で得られたポリアミド樹脂、サイドフィーダーより炭素繊維の供給を行うことで、本発明のポリアミド樹脂組成物を得ることができる。なお、シランカップリング剤は、主ホッパーよりポリアミド樹脂とドライブレンド、または主ホッパーよりポリアミド樹脂とは別供給で液状添加、あるいは二軸混練押出機の途中より液状添加する等、任意の手段を用いて製造を行うことができる。
なお、本発明で得られたポリアミド樹脂組成物に、前述の添加剤や他の重合体を配合する場合、これらの添加剤や他の重合体の配合は、任意の段階で行われる。
本発明で得られたポリアミド樹脂組成物を通常の成形加工方法に付することにより、本発明の成形体を作製することができる。例えば、射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形などの成形法を用いて、成形体とすることができる。なかでも、本発明のポリアミド樹脂祖組成物の特性である優れた引張強度、比弾性率、低ソリ性を最も効果的に用いることができるという観点から、射出成形により成形体とすることが好ましい。かかる場合の成形条件は、特に限定されないが、例えば、樹脂温度230〜290℃、金型温度80℃程度が好ましい。また、本発明のポリアミド樹脂組成物を有機溶媒溶液に溶解させ、流延法に付することにより、薄膜とすることもできる。
本発明の成形体は、その優れた特性を活かして、自動車用部品、電気部品、家庭用品等に用いることができる。特に、自動車のトランスミッション周り、エンジン周りで使用される部品に用いる部品として使用できる。具体的には、自動車のトランスミッション周りとしては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジン周りとしては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等に好適に用いられる。
以下本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた原料は次の通りである。
(A)ポリアミド樹脂を構成するポリアミドモノマーおよびポリアミド樹脂
・ε―カプロラクタム(宇部興産社製)
・ナイロン6(ユニチカ社製、「A1030BRL」)
・ナイロン66(ユニチカ社製、「A125」)
(B)ヘクトライト、またはその他の膨潤性層状珪酸塩
・B−1:ヘクトライト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSWN」)[組成:Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHO](陽イオン交換量:65ミリ当量/100g)
・B−2:有機処理ヘクトライト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSPN」)(層間がアミンでイオン交換されたヘクトライト)[組成:RNH 0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nHO](陽イオン交換量:65ミリ当量/100g)
・B−3:モンモリロナイト(クニピア社製、商品名「クニピアF」)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
・B−4:膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製、商品名「ME−100」)(陽イオン交換量:110ミリ当量/100g)
・B−5:有機処理モンモリロナイト(Nanocor社製、商品名「I.30T」)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
(C)繊維
・C−1:炭素繊維(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm、東邦テナックス社製、商品名「HTA−C6−NR」)
・C−2:ガラス繊維(径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維)(PPG社製、商品名「HP3540」)
(D)シランカップリング剤
・D−1:エポキシ系シランカップリング剤
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−403」)
・D−2:アミノ系シランカップリング剤
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−903」)
実施例および比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)引張強度
ISO527に従って測定した。なお、炭素繊維を50質量部未満配合した場合は、160MPa以上であるものが実用に耐えうるものとし、炭素繊維を50質量部以上配合した場合は、220MPa以上であるものが実用に耐えうるものとした。
(2)曲げ弾性率
ISO178に従って測定した。曲げ弾性率は高い方が好ましい。
(3)ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたはヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩のサイズ(平均厚み、平均短辺長さ,および平均長辺長さ)の測定および長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率の算出
得られたポリアミド樹脂組成物から、射出成形により、ISO試験片を作製した。該試験片の長手方向に平行面から、適当なサイズで一部を取り出し、凍結ミクロトームを用いて厚さ70nmの超薄切片を作製した。該超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM-1230 TEM」)(加速電圧:100kv)により、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の分散状態を調べた。すなわち、観察された電子顕微鏡写真から、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の厚みと短辺および長辺の長さを測定し、平均値を算出した。なお、n=50とした。
また、算出した長辺の平均長さと短辺の平均長さより、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライト(またはヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩)の長辺の平均長さと短辺の平均長さの比率{(長辺の平均長さ)/(短辺の平均長さ)}を算出した。
(4)低ソリ性
得られたポリアミド樹脂組成物のソリ量を測定する試験片として、射出成形(サイドゲート)により、厚み1.6mmtの直径100mmの円板を作製し(図1参照)、作製した円板を、23℃、絶乾状態で24時間放置後、ソリにより生じた円板の凹部が上向きとなるように、水平盤上に静置した(図2参照)。この円板の外周部上の各点につき、水平盤からの垂直距離を測定し、円板が水平盤に接地する(水平盤からの垂直距離が0となる)2点を点a,点cとし、ソリが大きい(水平盤からの垂直距離が大きくなる)2点を点b,点dとした。なお、これら4点a,b,c,dは、この順で、反時計回りに点をとった。ソリ量は、下式によって求めた。
ソリ量 = (B+D)/2
ただし、Bは、水平盤から点bへの垂直距離[mm]であり、Dは、水平盤から点dへの垂直距離[mm]である。
上記方法により求められるソリ量は、小さいものほど低ソリ性であり、好ましいといえる。実質的には1.3mm以下、特に1.0mm以下であることが好ましい。
(5)密度
ISO1183に従って、水中置換法にて、23℃の条件下で測定した。
(6)比弾性率
上記、(2)で求められた曲げ弾性率、(5)で求められた密度より、比弾性率の算出を行った。
比弾性率=(曲げ弾性率)/(密度)
比弾性率の数値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物、またはそれより得られる成形体の単位重量当たりの曲げ弾性率が高いことを示す。なお、炭素繊維を50質量部未満配合した場合は、12以上であるものが実用に耐えうるものとし、炭素繊維を50質量部以上配合した場合は、15以上であるものが実用に耐えうるものとした。
ポリアミド樹脂と、ヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩からなる樹脂組成物(P−1)〜(P−5)、(P−8)〜(P−14)の調製
ε−カプロラクタム100質量部に対して、アミノドデカン酸1質量部、亜リン酸0.4質量部、純水5質量部を配合して、80℃で、30分間加温しながら攪拌し、次いで表1に示すように、種類と配合量をそれぞれ変えてヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩を仕込み、260℃、0.7MPa下で1時間重合し、次いで260℃、常圧で1時間重合した。
(P−6)、(P−7)としては、それぞれ、ポリアミド樹脂であるナイロン6、ナイロン66を用いた。
調整した各樹脂組成物(P−1)〜(P−14)の組成を表1に示す。
Figure 0005669491
実施例1
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維20質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
Figure 0005669491
実施例2
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例3
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、アミノ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例4
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維100質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例5
(P−2)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物の引張試験、曲げ試験を行った。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例6
(P−3)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例7〜10、13、14
表2に記載の組成に従い、実施例1と同様の操作を行ってポリアミド樹脂組成物を得た後、評価に付した。評価結果を表2に示す。
参考例1
ナイロン6を100質量部、ヘクトライト7質量部の合計107質量部{(P−6)107質量部}に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
参考例2
ナイロン66を100質量部、ヘクトライト7質量部の合計107質量部{(P−7)107質量部}に対して、炭素繊維50質量部と、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は280℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
比較例1
炭素繊維の代わりにガラス繊維を用いた以外は、実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
Figure 0005669491
比較例2
炭素繊維を配合しない以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例3
シランカップリング剤を配合せず、(P−1)105質量部を用い、実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
比較例4
(P−9)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例5
(P−10)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例6
(P−11)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例7
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維300質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。炭素繊維の配合量が多すぎて、ストランドの引取りが出来ず、ポリアミド樹脂組成物(樹脂ペレット)を得られなかった。
比較例8
(P−12)130質量部を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例9
(P−13)101質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例10
(P−14)115質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例11
(P−8)100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例12
シランカップリング剤の配合を5質量部としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
実施例1〜10、13〜14、参考例1〜2は、引張強度、比弾性率が十分な数値であり、ソリ量が十分に小さく、低ソリ性に優れるものであった。
比較例1は、炭素繊維ではなくガラス繊維を用いたため、比弾性率が低く、不十分であった。
比較例2は、炭素繊維を配合しなかったため、引張強度、比弾性率が低く、不十分であった。
比較例3は、シランカップリング剤を用いなかったため、引張強度が低く、不十分であった。
比較例4、比較例5、比較例6は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用いており、ポリアミド樹脂組成物中の膨潤性層状珪酸塩の平均短辺長さが長くなり、引張強度が低く、不十分であった。
比較例7は、炭素繊維の配合量が過多であったため、ポリアミド樹脂組成物を得ることができなかった。
比較例8は、ヘクトライトの含有量が多く、ヘクトライトの分散性が低下してポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトの平均厚みが大きくなってしまい、引張強度が低く、不十分であった。
比較例9は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用い、膨潤性層状珪酸塩の平均短辺長さが規定より長く、かつ平均長辺長さが規定より長くなったため、引張強度と比弾性率が低く、不十分であった。
比較例10は、ヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩を用い、膨潤性層状珪酸塩の平均短辺長さが規定より長くなり、かつ平均長辺長さが規定より長くなったため、引張強度と比弾性率が低く、不十分であった。
比較例11は、ヘクトライトを含有していないものであったため、比弾性率が低く、また、ソリ量が大きく、低ソリ性が得られなかった。
比較例12は、シランカップリング剤の配合量が過多であったため、引張強度が低く、不十分であった。

Claims (3)

  1. ポリアミド樹脂100質量部に対し、ヘクトライト0.5〜20質量部、炭素繊維20〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトは、層間に、12−アミノドデカン酸と無機酸との反応により形成した4級アミンが侵入したものであり、ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが平均厚み1〜10nm、かつ短辺の平均長さ10〜70nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.0〜1.4であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを無機酸および12−アミノドデカン酸とともに加熱溶融して攪拌し、次いで、ヘクトライトを配合してポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合に付した後、炭素繊維とシランカップリング剤を配合し、混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  3. 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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