JP5669491B2 - ポリアミド樹脂組成物、該ポリアミド樹脂組成物の製造方法および該ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形体 - Google Patents
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(1)ポリアミド樹脂100質量部に対し、ヘクトライト0.5〜20質量部、炭素繊維20〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトは、層間に、12−アミノドデカン酸と無機酸との反応により形成した4級アミンが侵入したものであり、ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが平均厚み1〜10nm、かつ短辺の平均長さ10〜70nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.0〜1.4であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを無機酸および12−アミノドデカン酸とともに加熱溶融して攪拌し、次いで、ヘクトライトを配合してポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合に付した後、炭素繊維とシランカップリング剤を配合し、混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(3)(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、樹脂組成物中のサイズが特定の範囲のものであるヘクトライト、炭素繊維、およびシランカップリング剤を含有するものである。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、デシルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、メチルドデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミンなどの脂肪族アミン、ベンジルトリメチルアミン、ベンジルトリエチルアミン、ベンジルトリブチルアミン、ベンジルジメチルドデシルアミン、ベンジルジメチルオクタデシルアミンなどの芳香族アミン等のアミノ基を有する化合物が含有されていてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について以下に説明する。
調製工程における攪拌方法は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー、アミノ基を有する化合物、無機酸が均一に混合させるため、加熱溶融して攪拌しながら混合させる必要がある。また、必要に応じて水を添加することもできる。
ヘクトライトは、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、層間に水分子が入り込みやすく(すなわち、親水性が高く)、膨潤しやすいものである。加えて、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、粒径も小さいものである。そのため、従来技術のように、カプロラクタムやアミノカルボン酸などのポリアミド樹脂を構成するモノマー、水を、ヘクトライトとともに攪拌・重合に付してポリアミド樹脂組成物を得る場合、ヘクトライト層間の親水性が高いため、際限なく水を吸収する。そのため、ヘクトライトの配合量が多い場合は、該ポリアミド樹脂組成物の粘度が大きくなり、均一な攪拌が困難である。加えて、得られる樹脂組成物の取扱性も悪化するという問題があった。従って、ヘクトライトの配合量を増加させることができず、ポリアミド樹脂の各種物性をバランスよく兼ね備えることが困難となる。
重合工程における重合温度は、240〜280℃であることが好ましく、245〜275℃であることがより好ましい。重合温度が240℃未満であると、重合度が上がり難かったり、ヘクトライトの分散性が低下したりするという問題がある。一方、重合温度が280℃を超えると、ポリアミド樹脂が分解し、物性低下を招く場合がある。
混練工程における混練条件は、特に限定されず、例えば、二軸混練押出機等を用いて、溶融温度240〜290℃、スクリュー回転150〜400rpmの条件下溶融混練することができる。また、主ホッパーより重合工程で得られたポリアミド樹脂、サイドフィーダーより炭素繊維の供給を行うことで、本発明のポリアミド樹脂組成物を得ることができる。なお、シランカップリング剤は、主ホッパーよりポリアミド樹脂とドライブレンド、または主ホッパーよりポリアミド樹脂とは別供給で液状添加、あるいは二軸混練押出機の途中より液状添加する等、任意の手段を用いて製造を行うことができる。
本発明で得られたポリアミド樹脂組成物を通常の成形加工方法に付することにより、本発明の成形体を作製することができる。例えば、射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形などの成形法を用いて、成形体とすることができる。なかでも、本発明のポリアミド樹脂祖組成物の特性である優れた引張強度、比弾性率、低ソリ性を最も効果的に用いることができるという観点から、射出成形により成形体とすることが好ましい。かかる場合の成形条件は、特に限定されないが、例えば、樹脂温度230〜290℃、金型温度80℃程度が好ましい。また、本発明のポリアミド樹脂組成物を有機溶媒溶液に溶解させ、流延法に付することにより、薄膜とすることもできる。
(A)ポリアミド樹脂を構成するポリアミドモノマーおよびポリアミド樹脂
・ε―カプロラクタム(宇部興産社製)
・ナイロン6(ユニチカ社製、「A1030BRL」)
・ナイロン66(ユニチカ社製、「A125」)
(B)ヘクトライト、またはその他の膨潤性層状珪酸塩
・B−1:ヘクトライト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSWN」)[組成:Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si8O20(OH)4・nH2O](陽イオン交換量:65ミリ当量/100g)
・B−2:有機処理ヘクトライト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSPN」)(層間がアミンでイオン交換されたヘクトライト)[組成:RNH4 + 0.66(Mg5.34Li0.66)Si8O20(OH)4・nH2O](陽イオン交換量:65ミリ当量/100g)
・B−3:モンモリロナイト(クニピア社製、商品名「クニピアF」)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
・B−4:膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製、商品名「ME−100」)(陽イオン交換量:110ミリ当量/100g)
・B−5:有機処理モンモリロナイト(Nanocor社製、商品名「I.30T」)(陽イオン交換量:100ミリ当量/100g)
(C)繊維
・C−1:炭素繊維(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm、東邦テナックス社製、商品名「HTA−C6−NR」)
・C−2:ガラス繊維(径10μm、長さ3mmの円形断面を有するガラス繊維)(PPG社製、商品名「HP3540」)
(D)シランカップリング剤
・D−1:エポキシ系シランカップリング剤
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−403」)
・D−2:アミノ系シランカップリング剤
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−903」)
実施例および比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)引張強度
ISO527に従って測定した。なお、炭素繊維を50質量部未満配合した場合は、160MPa以上であるものが実用に耐えうるものとし、炭素繊維を50質量部以上配合した場合は、220MPa以上であるものが実用に耐えうるものとした。
(2)曲げ弾性率
ISO178に従って測定した。曲げ弾性率は高い方が好ましい。
(3)ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたはヘクトライト以外の膨潤性層状珪酸塩のサイズ(平均厚み、平均短辺長さ,および平均長辺長さ)の測定および長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率の算出
得られたポリアミド樹脂組成物から、射出成形により、ISO試験片を作製した。該試験片の長手方向に平行面から、適当なサイズで一部を取り出し、凍結ミクロトームを用いて厚さ70nmの超薄切片を作製した。該超薄切片を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM-1230 TEM」)(加速電圧:100kv)により、ポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の分散状態を調べた。すなわち、観察された電子顕微鏡写真から、ポリアミド樹脂組成物中に分散しているヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩の厚みと短辺および長辺の長さを測定し、平均値を算出した。なお、n=50とした。
(4)低ソリ性
得られたポリアミド樹脂組成物のソリ量を測定する試験片として、射出成形(サイドゲート)により、厚み1.6mmtの直径100mmの円板を作製し(図1参照)、作製した円板を、23℃、絶乾状態で24時間放置後、ソリにより生じた円板の凹部が上向きとなるように、水平盤上に静置した(図2参照)。この円板の外周部上の各点につき、水平盤からの垂直距離を測定し、円板が水平盤に接地する(水平盤からの垂直距離が0となる)2点を点a,点cとし、ソリが大きい(水平盤からの垂直距離が大きくなる)2点を点b,点dとした。なお、これら4点a,b,c,dは、この順で、反時計回りに点をとった。ソリ量は、下式によって求めた。
ソリ量 = (B+D)/2
ただし、Bは、水平盤から点bへの垂直距離[mm]であり、Dは、水平盤から点dへの垂直距離[mm]である。
(5)密度
ISO1183に従って、水中置換法にて、23℃の条件下で測定した。
(6)比弾性率
上記、(2)で求められた曲げ弾性率、(5)で求められた密度より、比弾性率の算出を行った。
比弾性率=(曲げ弾性率)/(密度)
比弾性率の数値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物、またはそれより得られる成形体の単位重量当たりの曲げ弾性率が高いことを示す。なお、炭素繊維を50質量部未満配合した場合は、12以上であるものが実用に耐えうるものとし、炭素繊維を50質量部以上配合した場合は、15以上であるものが実用に耐えうるものとした。
ε−カプロラクタム100質量部に対して、アミノドデカン酸1質量部、亜リン酸0.4質量部、純水5質量部を配合して、80℃で、30分間加温しながら攪拌し、次いで表1に示すように、種類と配合量をそれぞれ変えてヘクトライトまたは膨潤性層状珪酸塩を仕込み、260℃、0.7MPa下で1時間重合し、次いで260℃、常圧で1時間重合した。
調整した各樹脂組成物(P−1)〜(P−14)の組成を表1に示す。
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維20質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例3
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、アミノ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例4
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維100質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例5
(P−2)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物の引張試験、曲げ試験を行った。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例6
(P−3)105質量部に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
実施例7〜10、13、14
表2に記載の組成に従い、実施例1と同様の操作を行ってポリアミド樹脂組成物を得た後、評価に付した。評価結果を表2に示す。
参考例1
ナイロン6を100質量部、ヘクトライト7質量部の合計107質量部{(P−6)107質量部}に対して、炭素繊維50質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は260℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
参考例2
ナイロン66を100質量部、ヘクトライト7質量部の合計107質量部{(P−7)107質量部}に対して、炭素繊維50質量部と、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。溶融混練には、二軸混練押出機{TEM37BS(東芝機械社製)}を使用した。溶融混練の温度は280℃だった。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表2に示す。
比較例1
炭素繊維の代わりにガラス繊維を用いた以外は、実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
炭素繊維を配合しない以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例3
シランカップリング剤を配合せず、(P−1)105質量部を用い、実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。
比較例4
(P−9)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例5
(P−10)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例6
(P−11)105質量部を用いた以外は実施例2と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例7
(P−1)105質量部に対して、炭素繊維300質量部、エポキシ系シランカップリング剤0.1質量部を溶融混錬した。炭素繊維の配合量が多すぎて、ストランドの引取りが出来ず、ポリアミド樹脂組成物(樹脂ペレット)を得られなかった。
比較例8
(P−12)130質量部を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例9
(P−13)101質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例10
(P−14)115質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例11
(P−8)100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例12
シランカップリング剤の配合を5質量部としたこと以外は、実施例2と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物を評価に付した。評価結果を表3に示す。
比較例1は、炭素繊維ではなくガラス繊維を用いたため、比弾性率が低く、不十分であった。
比較例3は、シランカップリング剤を用いなかったため、引張強度が低く、不十分であった。
比較例8は、ヘクトライトの含有量が多く、ヘクトライトの分散性が低下してポリアミド樹脂組成物中のヘクトライトの平均厚みが大きくなってしまい、引張強度が低く、不十分であった。
比較例12は、シランカップリング剤の配合量が過多であったため、引張強度が低く、不十分であった。
Claims (3)
- ポリアミド樹脂100質量部に対し、ヘクトライト0.5〜20質量部、炭素繊維20〜200質量部、およびシランカップリング剤0.01〜3質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ヘクトライトは、層間に、12−アミノドデカン酸と無機酸との反応により形成した4級アミンが侵入したものであり、ヘクトライトのポリアミド樹脂組成物中でのサイズが平均厚み1〜10nm、かつ短辺の平均長さ10〜70nmであり、長辺の平均長さと短辺の平均長さ比率が、長辺の平均長さ/短辺の平均長さ=1.0〜1.4であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを無機酸および12−アミノドデカン酸とともに加熱溶融して攪拌し、次いで、ヘクトライトを配合してポリアミド樹脂を構成するモノマーを重合に付した後、炭素繊維とシランカップリング剤を配合し、混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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