JP5724669B2 - エンジンの動弁装置 - Google Patents

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Description

本発明は、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転方向の位相を変化させるカムシャフト位相可変装置を備えて、吸気バルブ、排気バルブのバルブタイミングを変更可能なエンジンの動弁装置に関する。
従来、この種のエンジンの動弁装置は、本願と同一の出願人が過去に出願した特許文献1のようなエンジンの動弁装置が開示されている。この動弁装置におけるカムシャフト位相可変装置100は、図12に示すように、吸気側カムシャフト101と相対回転可能で軸方向に相対移動不可能な従動部材102と、吸気側カムシャフト101に回転一体に設けられ、従動部材102に対して回転方向及び軸方向に相対変位可能なガイド部材103と、従動部材102とガイド部材103間に配置された遠心ウェイト104と、従動部材102及びガイド部材103を互いに接近する方向に付勢する付勢部材105とを有して構成される。
そして、ガイド部材103は、遠心ウェイト104が遠心力の作用で付勢部材105の付勢力に抗して径方向外方へ移動することで、従動部材102に対して回転方向及び軸方向に相対変位し、クランクシャフトに対する吸気側カムシャフト101の回転方向の位相を相対的に変化させるようにしている。
また、このカムシャフト位相可変装置100は、エンジンの回転数に伴う遠心力に応じて円滑に作動させる必要があるため、作動に関する重要部材であるガイド部材103は、吸気側カムシャフト101との結合に高精度なスプライン結合が適用されている。このスプライン結合は、ガイド部材103の内周面に形成されたスプライン溝106Bを、吸気側カムシャフト101のスプラインキー106Aに結合させて、ガイド部材103を吸気側カムシャフト101と回転一体で、且つ軸方向に移動可能に構成する。
特開2010−31855号公報
しかしながら、上記スプライン結合を構成するスプラインキー106A及びスプライン溝106Bは、高精度に製造するためには凹凸を極小に形成する必要があるため、ガイド部材103及び吸気側カムシャフト101を製造するに当たり、製造コストが上昇してしまう。
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、バルブタイミングの変更に関し動作特性が安定化し、且つ応答性が良好なエンジンの動弁装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡易な構成で装置の製造コストを低減できるエンジンの動弁装置を提供することにある。
本発明は、クランクシャフトと、このクランクシャフトに同期して回転し、エンジンのバルブを開閉させるカムシャフトと、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転方向の位相を相対的に変化させるカムシャフト位相可変装置とを有するエンジンの動弁装置であって、前記カムシャフト位相可変装置は、前記クランクシャフトの回転が伝達され、前記カムシャフトに対して回転方向に相対変位可能で軸方向に相対変位不能な従動部材と、前記カムシャフトと回転一体に設けられ、前記従動部材に対して回転方向及び軸方向に相対変位可能なガイド部材と、前記従動部材とガイド部材間に配設された遠心ウェイトと、前記従動部材及びガイド部材を互いに接近する方向に付勢する付勢部材とを有し、前記カムシャフトには、その軸を通過して径方向に貫通する貫通孔が設けられ、軸端に突起が形成された係合軸が前記貫通孔に挿通され、前記ガイド部材の内周面に設けられた係合溝に前記突起が係合されて、前記ガイド部材とカムシャフトとが回転一体に構成され、前記ガイド部材は、前記遠心ウェイトが遠心力の作用で前記付勢部材の付勢力に抗して移動することで、前記従動部材に対して回転方向及び軸方向に相対変位し、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転方向の位相を相対的に変化させるように構成される一方、前記カムシャフトには、その軸方向にオイル通路が形成されると共に、このオイル通路に連通して前記カムシャフト位相可変装置にオイルを供給する支流通路が設けられ、この支流通路よりも前記カムシャフトの軸端側に配置された前記係合軸によって、前記オイル通路が閉塞されるよう構成されたものである。
本発明によれば、遠心ウェイトが遠心力の作用で付勢部材の付勢力に抗して移動することで、ガイド部材が従動部材に対して回転方向に相対変位して、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転方向の位相を相対的に変化させる。このため、簡単な構造で確実にバルブタイミングを変更でき、バルブタイミングの変更に関し動作特性が安定化して信頼性が向上すると共に、応答性も向上する。
また、カムシャフトの貫通孔に挿通された係合軸の軸端の突起が、ガイド部材の内周面に設けられた係合溝に係合して、ガイド部材がカムシャフトに回転一体に構成されたので、スプライン構造と比較して簡易な構成になるため、装置の製造コストを低減できる。
本発明に係るエンジンの動弁装置における一実施形態が適用されたエンジンを搭載する自動二輪車を示す左側面図。 図1のエンジンを示す縦断面図。 図2におけるエンジンの動弁装置の一部であるカムシャフト位相可変装置の周囲を拡大し、図8のIII−III線に沿う断面図。 図3のカムシャフト位相可変装置を示す分解斜視図。 (A)は図3及び図4の従動部材を示す正面図、(B)は図5(A)のV部の部分拡大図。 (A)は図3及び図4のガイド部材を示す正面図、(B)は図6(A)のVI−VI線に沿う断面図、(C)は図6(B)の模式図。 (A)は、図3及び図4の係合軸の係合状態を示す断面図、(B)は図7(A)の係合軸の変形形態における係合状態を示す断面図。 図3のVIII矢視図。 図8のIX−IX線に沿う断面図。 図3のカムシャフト位相可変装置におけるエンジン低回転時の遠心ウェイトの位置を示す動作説明図で、(A)は図8のIII−III線に沿う断面図、(B)は従動部材を示す正面図、(C)はガイド部材を示す正面図。 図3のカムシャフト位相可変装置におけるエンジン高回転時の遠心ウェイトの位置を示す動作説明図で、(A)は図8のIII−III線に沿う断面図、(B)は従動部材を示す正面図、(C)はガイド部材を示す正面図。 従来のエンジンの動弁装置におけるカムシャフト位相可変装置の周囲を示す断面図。
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るエンジンの動弁装置における一実施形態が適用されたエンジンを搭載する自動二輪車を示す左側面図である。図2は、図1のエンジンを示す縦断面図である。図3は、図2におけるエンジンの動弁装置の一部であるカムシャフト位相可変装置の周囲を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は車体フレーム2を有し、その前方にヘッドパイプ3が設けられる。ヘッドパイプ3には、図示しないサスペンション機構を内装し、前輪4を回動自在に支持する左右一対のフロントフォーク5やハンドルバー6等から構成されるステアリング機構7が設けられ、ハンドルバー6により前輪4が左右に回動自在に操舵される。
一方、車体フレーム2は、例えばツインチューブ型のもので、ヘッドパイプ3の直後で左右方向に拡開された後、互いに平行に後斜下方に延びる左右一対のタンクレールを兼ねたメインフレーム8と、これらのメインフレーム8の後端部に接続され、略上下方へ向かって延びる左右一対のセンターフレーム9と、これらのセンターフレーム9の後上端から後方に延びる左右一対のシートレール10とを有して構成される。
メインフレーム8の上方には燃料タンク11が配置され、シートレール10の上方には運転シート12が配置される。また、センターフレーム9の略中央下部にはピボット軸13が架設され、このピボット軸13にスイングアーム14がピボット軸13廻りにスイング自在に枢着されると共に、このスイングアーム14の後端に後輪15が回動自在に軸支される。そして、前輪4と後輪15間の車体中央下部で、燃料タンク11下方にエンジン16が配置される。
さらに、この自動二輪車1は車体の前部が流線形のカウリング17で覆われており、走行中の空気抵抗低減と、走行風圧からのライダの保護とが図られている。また、車両の進行方向に向かって左側のセンターフレーム9下部にはサイドスタンド18が設けられる。
図2に示すように、エンジン16は4サイクル並列四気筒エンジンであり、主にヘッドカバー19、シリンダヘッド20、シリンダブロック21、そしてエンジンケース22から外形が構成される。このエンジンケース22は分割式であり、例えば図における上下方向に三分割され、シリンダブロック21が一体に形成されたアッパーエンジンケース22Aと、センターエンジンケース22Bと、ロアーエンジンケース22Cとを有して構成される。
シリンダブロック21は直立よりやや前傾して配置され、アッパーエンジンケース22Aとセンターエンジンケース22Bとの合わせ面内側に軸受部24がそれぞれ上下に分割して形成される。これらの軸受部24に、エンジン16の幅方向に延びるクランクシャフト25が回転自在に支持される。
クランクシャフト25には、コンロッド26の大端部26Aが連結され、また、コンロッド26の小端部26Bにはピストン27が連結される。そして、シリンダブロック21内にはピストン27が、図における略上下方向に摺動自在に収納される。また、シリンダヘッド20とピストン27との間の空間には燃焼室28が形成され、その中央部には外方から点火プラグ29がねじ結合される。
ピストン27の往復ストロークはクランクシャフト25により回転運動に変換され、センターエンジンケース22Bとロアーエンジンケース22Cとによって形成される空間内の図示しないクラッチ機構およびミッション機構を経てドライブチェーン30(図1参照)を介して駆動輪である後輪15に伝達される。
上記エンジン16は、また、シリンダヘッド20の内部に配設された吸気バルブ31、排気バルブ32を開閉駆動する動弁装置33を備える。この動弁装置33は、本実施の形態ではDOHC(Double OverHead Camshaft)型式である。
この動弁装置33は、カムドライブスプロケット34を回転一体に備えた前述のクランクシャフト25と、シリンダヘッド20及びヘッドカバー19間に配設されると共に、吸気カム35が一体に形成され、吸気側カムドリブンスプロケット36を備える吸気側カムシャフト37と、シリンダヘッド20及びヘッドカバー19間に配設されると共に、排気カム38が一体に形成され、図示しない排気側カムドリブンスプロケットを回転一体に備えた排気側カムシャフト40と、カムドライブスプロケット34と吸気側カムドリブンスプロケット36及び排気側カムドリブンスプロケット(不図示)とに巻き回されて、クランクシャフト25の回転駆動力を吸気側カムシャフト37及び排気側カムシャフト40へ伝達し、これらのカムシャフト37及び40をクランクシャフト25に同期して回転させるカムチェーン41と、吸気側カムシャフト37と吸気側カムドリブンスプロケット36との間に配設されたカムシャフト位相可変装置42とを有して構成される。
吸気側カムシャフト37及び排気側カムシャフト40は、車両幅方向に延びると共に、それぞれが車両前後方向に離間して平行に配置される。これらの吸気側カムシャフト37及び排気側カムシャフト40は、シリンダヘッド20の軸受部39と、この軸受部39に取り付けられたカムハウジング43により回転自在に軸支される。また、シリンダヘッド20及びシリンダブロック21には、車両の進行方向へ向かって右側、即ちサイドスタンド18とは反対側の端部に、カムチェーン41を収容するカムチェーン室44が形成される。
カムチェーン41が巻き回される排気側カムドリブンスプロケット(不図示)が排気側カムシャフト40と回転一体に設けられることから、この排気側カムシャフト40の排気カム38は、クランクシャフト25により駆動されて、このクランクシャフト25と回転方向に同一の位相で回転駆動され、排気バルブ32を開閉駆動する。
また、吸気側カムシャフト37と吸気側カムドリブンスプロケット36との間に設けられた前記カムシャフト位相可変装置42は、クランクシャフト25に対する吸気側カムシャフト37の回転方向の位相を相対的に変化させるものである。従って、吸気側カムシャフト37の吸気カム35は、クランクシャフト25により駆動されて、このクランクシャフト25と回転方向に同一の位相または異なった位相で回転駆動され、吸気バルブ31を開閉駆動する。尚、カムチェーン41は、チェーンガイド(不図示)に案内されると共に、チェーンテンショナ(不図示)によりその緩みが抑制される。
さて、図3に示すカムシャフト位相可変装置42は、エンジン16の運転状態に応じて、吸気バルブ31と排気バルブ32の少なくとも一方(本実施の形態では吸気バルブ31)のバルブタイミングを制御して、吸気バルブ31の開時期と排気バルブ32の開時期とが重なるバルブオーバーラップを調整するものである。例えば、エンジン16の高回転時には、バルブオーバーラップを小さく設定して吸気の吹き抜けを防止し、出力及び燃費を向上させると共に、排気中への有害物質の排出を抑制する。また、エンジン16の低回転時にはバルブオーバーラップを大きく設定して、吸気の慣性を利用して吸気効率を高め、エンジン16のトルクを向上させる。
このカムシャフト位相可変装置42は、図3及び図4に示すように、従動部材45、ガイド部材46、遠心ウェイト47、付勢部材48及びサークリップ49を有して構成され、これらのサークリップ49、付勢部材48、ガイド部材46、遠心ウェイト47、従動部材45が吸気側カムシャフト37の軸端側から順次配設される。
従動部材45は、図3及び図5に示すように、外周面に動力受部としての前記吸気側カムドリブンスプロケット36が形成され、カムチェーン41を介してクランクシャフト25の回転が伝達されて駆動され、このクランクシャフト25に対する回転方向の位相が一定(つまり同一)に設けられる。更にこの従動部材45は、吸気側カムシャフト37に対して回転方向に相対変位可能で、軸方向に相対変位不能に設けられる。
また、ガイド部材46は、図3、図6及び図7(A)に示すように、係合軸60を介して吸気側カムシャフト37に回転一体に構成される。つまり、図4にも示すように、吸気側カムシャフト37には、その軸Oを通過して径方向に貫通する貫通孔61が形成されている。また、前記係合軸60には両軸端に突起62が設けられ、この係合軸60が吸気側カムシャフト37の貫通項61に挿通される。この挿通状態では、係合軸60の両突起62が吸気側カムシャフト37から突設される。そして、この突起62が、ガイド部材46の内周面に対向して形成された一対の係合溝63のそれぞれに係合される。
このように、吸気側カムシャフト37の貫通孔61に挿通された係合軸60の突起62がガイド部材46の係合溝63に係合することで、ガイド部材46は、吸気側カムシャフト37と回転一体で、且つ吸気側カムシャフト37の軸O方向に摺動自在に設けられる。更に、このガイド部材46は、従動部材45に対し回転方向及び軸方向に相対変位可能に設けられる。尚、図7中の二点鎖線は、ガイド部材46の破断箇所を示す。
遠心ウェイト47は、図3に示すように、従動部材45とガイド部材46のそれぞれのガイド溝51、52(後述)間に保持されて、従動部材45の回転をガイド部材46へ伝達する。また付勢部材48は、従動部材45とガイド部材46の少なくとも一方(本実施の形態ではガイド部材46)に、これらの従動部材45及びガイド部材46を互いに接近する方向に付勢する付勢力を与える。更に、サークリップ49は、吸気側カムシャフト37軸端に取り付けられて付勢部材48を保持する。
更に詳説すると、従動部材45は、図3及び図5に示すように、吸気側カムドリブンスプロケット36の内周側に周壁部55が形成され、この周壁部55の内壁面56にガイド部材46の外周面が軸方向に摺接可能に設けられる。また、この従動部材45には、周壁部55の内側部分でガイド部材46に対向する面に、放射状のガイド溝51が複数形成される。このガイド溝51は、遠心ウェイト47を案内するものであり、溝深さが一定に形成されると共に、従動部材45の径方向に対し周方向一方側に角度θ(図5(B))だけ傾斜して形成される。
ガイド部材46は、図3及び図6に示すように、従動部材45と対向する面に放射状のガイド溝52が複数形成される。このガイド溝52は、遠心ウェイト47を案内するものであり、ガイド部材46の径方向に沿って形成される。また、このガイド溝52には、ガイド部材46の径方向外方へ向かうに従って溝深さが浅くなる勾配が設けられると共に、この勾配は、ガイド部材46の径方向外方へ向かうに従って急峻になるように構成される。つまり、ガイド溝52の溝深さの勾配は、ガイド部材46の径方向内側が勾配αであり、外側が勾配β(β>α)に設定される。勾配αと勾配βは、ガイド溝52の底部のある一点(図6(B)の点X)付近で滑らかに変化するように構成されている。このガイド溝52の勾配α及びβによって、従動部材45のガイド溝51とガイド部材46のガイド溝52とは、径方向外側へ向かうに従って互いの溝底部が接近するように構成される。
具体的には、ガイド部材46のガイド溝52は、径方向内側の勾配αの平面が径方向外側の勾配βの平面に所要の曲率Pの曲面を介して滑らかに連続している。図6(C)に示すように、ある点Xを通る曲面が所要の曲率Pで形成される曲面形状となっており、この曲面の両側(径方向内側と径方向外側)が勾配αと勾配βの平面状に構成されている。
図3に示す遠心ウェイト47は、鋼やタングステンなどのように比重の大きな材料にて構成され、ボール形状に形成される。また、付勢部材48は、本実施の形態では皿ばねが用いられているが、波板ばね、渦巻ばね(竹の子ばね)等であってもよい。更に、サークリップ49は、図3及び図8に示すように、吸気側カムシャフト37の軸端に結合され、付勢部材48の座面58を支持して、ガイド部材46との間で付勢部材48を保持する。これにより、付勢部材48の付勢力がガイド部材46に付与される。
図3及び図9に示すように、吸気側カムシャフト37には、その軸O方向に沿って、この軸Oを通る中心部分にオイル通路65が形成されると共に、このオイル通路65に連通して導入通路66及び支流通路67が、吸気側カムシャフト37の軸Oに直交して形成される。導入通路66は、内側端がオイル通路65に開口すると共に、外側端が、吸気側カムシャフト37用の軸受部39及びカムハウジング43にリング状に形成されたオイル溝68に開口する。また、支流通路67は、内側端がオイル通路65に開口すると共に、外側端が、吸気側カムシャフト37の外周面におけるガイド部材46との摺動面に開口される。
軸受部39及びカムハウジング43のオイル溝68に導入されたエンジンオイルは、矢印Mに示すように、オイル溝68から導入通路66を経てオイル通路65内へ流入し、矢印Nに示すように、オイル通路65から支流通路67を経てカムシャフト位相可変装置42(特に、ガイド部材46と吸気側カムシャフト37との摺動面、並びにガイド溝51及び52内の遠心ウェイト47等)へ供給されて、このカムシャフト位相可変装置42を潤滑する。その後、エンジンオイルは、図3及び図5(A)に示す従動部材45のガイド溝51に形成されたオイル排出孔69を経て、カムシャフト位相可変装置42外へ排出される。
このオイル排出孔69は、従動部材45に形成された複数のガイド溝51のうち、従動部材45の周方向で略等間隔に位置する数個(例えば3個)のガイド溝51の径方向内側位置に貫通して形成される。また、図9に示すように、吸気側カムシャフト37の軸Oを通る中央部分に形成されたオイル通路65は、支流通路67よりも吸気側カムシャフト37の軸端側で、この吸気側カムシャフト37の軸Oを通過してその径方向に配置された前記係合軸60によって閉塞される。従って、オイル通路65は、吸気側カムシャフト37の軸端側に専用のオイルプラグが不要になる。
このように構成されたカムシャフト位相可変装置42では、遠心ウェイト47に遠心力が作用して、この遠心ウェイト47が従動部材45、ガイド部材46のそれぞれのガイド溝51、52内を径方向外方へ移動する。これにより、ガイド部材46は、付勢部材48の付勢力に抗して、吸気側カムシャフト37の軸方向に沿って従動部材45から離反する方向に移動すると共に、従動部材45のガイド溝51の傾斜(角度θ)の作用で、従動部材45に対して回転方向に相対変位する。この結果、クランクシャフト25に対する吸気側カムシャフト37の回転方向の位相が相対的に変化して、吸気側カムシャフト37の吸気カム35による吸気バルブ31のバルブタイミングが変更される。
次に、作用を説明する。
図10に示すように、エンジン16が低回転域にあるときには、遠心ウェイト47に作用する遠心力が小さく、この遠心ウェイト47はガイド部材46のガイド溝52の勾配αと付勢部材48の付勢力との作用で、ガイド溝51及び52の径方向内側端の初期位置に留まる。このため、吸気側カムシャフト37は、吸気側カムドリブンスプロケット36つまりクランクシャフト25と回転方向の位相が同一となり、この吸気側カムシャフト37に一体に形成された吸気カム35は、組み付け時の位相で吸気バルブ31を駆動する。これにより、吸気バルブ31と排気バルブ32は、バルブオーバーラップの大きな低中速用バルブタイミングとなり、中速トルクが向上する。
図11に示すように、エンジン16が高回転域に至ると、遠心ウェイト47に作用する遠心力が大きくなり、この遠心ウェイト47は従動部材45のガイド溝51とガイド部材46のガイド溝52内を径方向外方へ向かって移動する。これにより、ガイド部材46は、ガイド溝52の勾配α及びβの作用で、付勢部材48の付勢力に抗して、吸気側カムシャフト37の軸方向外方側(矢印A方向)へ移動する。このとき、従動部材45のガイド溝51には径方向に対して周方向一方側に角度θ(図5)の傾斜が設けられているので、ガイド部材46は、ガイド溝51の傾斜方向(図11(B)及び(C)の矢印B方向)に従動部材45に対して上記角度θだけ相対回転する。なお、図11(B)及び(C)の矢印B方向の反対方向が、吸気側カムシャフト37の回転方向Rである。
これにより、吸気側カムシャフト37は、ガイド部材46との係合軸60及び係合溝63による結合の作用で、クランクシャフト25に対して回転方向の位相が変化する。このときの吸気側カムシャフト37の位相の変化は、吸気側カムシャフト37の回転方向Rの反対方向(遅角側)である。従って、この吸気側カムシャフト37に一体に形成された吸気カム35は、組み付け時の位相よりも遅角側へ変化した位相で吸気バルブ31を駆動する。この結果、吸気バルブ31と排気バルブ32は、バルブオーバーラップが小さな高速用バルブタイミングとなり、エンジン16の出力及び燃費が向上し、有害物質の排出が抑制される。
エンジン16の回転数が低下すると、遠心ウェイト47に作用する遠心力が小さくなるため、遠心力によってガイド部材46を矢印A方向に移動させる力よりも付勢部材48による付勢力の方が勝り、付勢部材48の付勢力の作用でガイド部材46が従動部材45側へ移動し、遠心ウェイト47がガイド溝51及び52の径方向内側へ移動して、ガイド部材46及び遠心ウェイト47は、やがて図10に示す原位置に復帰する。遠心ウェイト47の原位置への復帰に伴い、ガイド部材46は、従動部材45に対して進角側(図11(B)及び(C)の矢印B方向の反対方向)に相対回転し、係合軸60及び係合溝63の作用で、吸気側カムシャフト37はクランクシャフト25に対して進角側へ位相を変化させる。この結果、吸気バルブ31と排気バルブ32は、バルブオーバーラップが大きな低中速用バルブタイミングとなり、前述のごとく中速トルクが向上する。
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(8)を奏する。
(1)カムシャフト位相可変装置42は、図3に示すように、遠心ウェイト47が遠心力の作用で付勢部材48の付勢力に抗して移動することで、ガイド部材46が従動部材45に対して回転方向に変位して、クランクシャフト25に対する吸気側カムシャフト37の回転方向の位相を相対的に変化させる。このため、簡単な構造で確実に吸気バルブ31のバルブタイミングを変更でき、バルブタイミングの変更に関し動作特性が安定化して信頼性が向上すると共に、応答性も向上する。
(2)ガイド部材46を従動部材45に対して相対回転させることで、クランクシャフト25に対する吸気側カムシャフト37の回転方向の位相を相対的に変化させる構造であり、吸気側カムシャフト37を軸方向にスライドさせる構造ではないので、シリンダヘッド20周りを含めた動弁装置33ひいてはエンジン16の小型化を実現できる。
(3)吸気側カムシャフト37の貫通孔61に挿通された係合軸60の両軸端の突起62が、ガイド部材46の内周面に形成された係合溝63に係合して、ガイド部材46が吸気側カムシャフト37に回転一体に構成されている。このため、吸気側カムシャフト37とガイド部材46とをスプライン結合させる場合と比較して、吸気側カムシャフト37とガイド部材46との結合が簡易な構成になるため、カムシャフト位相可変装置42(ひいては動弁装置33)の製造コストを低減できる。
(4)係合軸60が吸気側カムシャフト37の貫通孔61内で回転可能であるため、図3及び図4に示すように、係合軸60の両軸端の突起62とガイド部材46の係合溝63とを常に面接触させることができ、これらの突起62と係合溝63との間の接触面圧を安定化できる。また、係合軸60が吸気側カムシャフト37とは別部材にて構成されるので、この係合軸60を耐磨耗性に優れた材料で構成できる。これらの結果、吸気側カムシャフト37とガイド部材46との結合部分の耐磨耗性及び摺動性を向上させることができる。
(5)係合軸60は、吸気側カムシャフト37の軸Oを通過し、その両軸端に設けられた突起62をガイド部材46の係合溝63に係合させる。このため、係合軸60の両突起62は、図7(A)に示すように、吸気側カムシャフト37の回転に伴いその回転方向Rに同じ角度だけ、吸気側カムシャフト37の軸Oに対称に傾倒する。この結果、係合軸60の両突起62は、ガイド部材46の係合溝63に対して同時に且つ同一の応力をガイド部材46へ伝達させることになるので、カムシャフト位相可変装置42を高精度に且つ円滑に作動させることができる。
(6)従来の図12に示すカムシャフト位相可変装置100のように、ガイド部材103と吸気側カムシャフト101とをスプラインキー106A及びスプライン溝106Bによりスプライン結合し、且つオイル通路108の軸端をオイルプラグとして機能するボルト107により閉塞する構造と比較すると、本実施形態では次の利点がある。つまり、図3に示すように、係合軸60を用いて、ガイド部材46と吸気側カムシャフト37とを結合させ、且つオイル通路65を閉塞するので、このオイル通路65を閉塞するためのオイルプラグが不要になり、簡素な構造のカムシャフト位相可変装置42及び動弁装置33を実現できる。
(7)従来のカムシャフト位相金装置100におけるオイル通路108の閉塞は、吸気側カムシャフト101の軸端に、オイルプラグとして機能するボルト107が螺装されていたが、この構造では、ボルト107が緩みシール性が低下することを防止するために、ボルト107の軸長を長く設定して、吸気側カムシャフト101に螺装させる必要がある。このため、オイル通路108に連通してカムシャフト位相可変装置100へエンジンオイルを導く支流通路109は、ボルト107の径方向外側に設けること以外できず、カムシャフト位相可変装置100へ供給するエンジンオイル量が不足する恐れがある。
これに対し、本実施形態のカムシャフト位相可変装置42では、図3に示すように、係合軸60が吸気側カムシャフト37の径方向に挿通されて、この吸気側カムシャフト37に設けられたオイル通路65を閉塞するので、吸気側カムシャフト37の軸Oの中心部分にオイル通路65を形成するに十分なスペースを確保できる。従って、このスペースにオイル通路65を形成することで、カムシャフト位相可変装置42に十分な量のエンジンオイルを供給できる。
(8)吸気側カムシャフト37のオイル通路65から支流通路67(図3、図9)を経てカムシャフト位相可変装置42内へ導入されたエンジンオイルは、カムシャフト位相金装置42の従動部材45のガイド溝51に貫通して形成されたオイル排出孔69を経て外部へ排出される。このオイル排出孔69がガイド溝51における内径側に形成されたので、従動部材45のガイド溝51とガイド部材46のガイド溝52との間に支流通路67を経て導入されたエンジンオイルを、遠心ウェイト47に油圧が作用する前に排出できる。この結果、支流通路67を経てガイド溝51、52間に導入されたエンジンオイルの油圧が遠心ウェイト47に作用することで生ずるカムシャフト位相可変装置42の作動特性の変化を未然に防止できる。しかも、このエンジンオイルによって遠心ウェイト47を、ガイド溝51、52間のいずれの位置にあっても良好に潤滑できる。
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、排気側カムシャフト40に、カムシャフト位相可変装置42と同様なカムシャフト位相可変装置を設置し、エンジン高回転時に排気側カムシャフト40の回転方向の位相をクランクシャフト25に対し進角側に変化させて、吸気バルブ31と排気バルブ32のバルブタイミングを、バルブオーバーラップの小さな高速用バルブタイミングに変更するように構成してもよい。
また、これらの吸気側カムシャフト37と排気側カムシャフト40の両者にカムシャフト位相可変装置を設置して、エンジン高回転時に吸気バルブ31と排気バルブ32のバルブタイミングを、バルブオーバーラップの小さな高速用バルブタイミングに変更するように構成してもよい。
更に、図7(B)に示すように、カムシャフト位相可変装置42のガイド部材46から吸気側カムシャフト37へ伝達される伝達動力が小さな場合には、係合軸60の一軸端のみに突起62を設けてもよい。
16 エンジン
25 クランクシャフト
31 吸気バルブ
32 排気バルブ
33 動弁装置
35 吸気カム
37 吸気側カムシャフト
42 カムシャフト位相可変装置
45 従動部材
46 ガイド部材
47 遠心ウェイト
48 付勢部材
51、52 ガイド溝
60 係合軸
61 貫通孔
62 突起
63 係合溝
65 オイル通路
67 支流通路
O 軸

Claims (2)

  1. クランクシャフトと、
    このクランクシャフトに同期して回転し、エンジンのバルブを開閉させるカムシャフトと、
    前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転方向の位相を相対的に変化させるカムシャフト位相可変装置とを有するエンジンの動弁装置であって、
    前記カムシャフト位相可変装置は、
    前記クランクシャフトの回転が伝達され、前記カムシャフトに対して回転方向に相対変位可能で軸方向に相対変位不能な従動部材と、
    前記カムシャフトと回転一体に設けられ、前記従動部材に対して回転方向及び軸方向に相対変位可能なガイド部材と、
    前記従動部材とガイド部材間に配設された遠心ウェイトと、
    前記従動部材及びガイド部材を互いに接近する方向に付勢する付勢部材とを有し、
    前記カムシャフトには、その軸を通過して径方向に貫通する貫通孔が設けられ、軸端に突起が形成された係合軸が前記貫通孔に挿通され、前記ガイド部材の内周面に設けられた係合溝に前記突起が係合されて、前記ガイド部材とカムシャフトとが回転一体に構成され、
    前記ガイド部材は、前記遠心ウェイトが遠心力の作用で前記付勢部材の付勢力に抗して移動することで、前記従動部材に対して回転方向及び軸方向に相対変位し、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの回転方向の位相を相対的に変化させるように構成される一方、
    前記カムシャフトには、その軸方向にオイル通路が形成されると共に、このオイル通路に連通して前記カムシャフト位相可変装置にオイルを供給する支流通路が設けられ、この支流通路よりも前記カムシャフトの軸端側に配置された前記係合軸によって、前記オイル通路が閉塞されるよう構成されたエンジンの動弁装置。
  2. 前記オイル通路は、前記カムシャフトの軸を通る中心部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの動弁装置。
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