JP5717985B2 - 樹脂架橋体、樹脂組成物、及び樹脂架橋体の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)ポリオレフィンと下記一般式(1)で表される高分子化合物とを含有する樹脂組成物に加速電圧が3MeVを超えるエネルギー線を照射して架橋した樹脂架橋体であって、
該一般式(1)で表される高分子化合物を前記ポリオレフィン100質量部に対して0質量部を超え40質量部以下で配合し、
該ポリオレフィンが密度0.935〜0.960g/cm3のポリエチレンまたはエチレン−α−アルキレン共重合体である
ことを特徴とする樹脂架橋体。
(2)前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合したことを特徴とする(1)に記載の樹脂架橋体。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位Bの含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。)
(3)前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする(2)に記載の樹脂架橋体。
(4)前記一般式(1)で表される樹脂化合物がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずいれか1項に記載の樹脂架橋体。
(5)前記エネルギー線の照射による架橋工程を経て管状に加工されたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
(6)前記エネルギー線が電子線であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
(7)給水用途または給湯用途として好適な架橋ポリエチレン管としたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
(8)ゲル分率を60%以上としたことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
(9)下記一般式(1)で表される高分子化合物をポリオレフィン100質量部に対して0質量部を超え40質量部以下で配合した樹脂組成物であって、
該ポリオレフィンが密度0.935〜0.960g/cm3のポリエチレンまたはエチレン−α−アルキレン共重合体であって、
該樹脂組成物に加速電圧が3MeVを超えるエネルギー線を照射して樹脂架橋体とすることを特徴とするエネルギー線照射架橋用の樹脂組成物。
(10)前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合したことを特徴とする(9)に記載の樹脂組成物。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位の含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。)
(11)前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする(10)に記載の樹脂組成物。
(12)ポリオレフィンと下記一般式(1)で表される高分子化合物とを含有する樹脂組成物に加速電圧が3MeVを超えるエネルギー線を照射して架橋した樹脂架橋体とするに当たり、
該一般式(1)で表される高分子化合物を前記ポリオレフィン100質量部に対して0質量部を超え40質量部以下で配合し、
該ポリオレフィンが密度0.935〜0.960g/cm3のポリエチレンまたはエチレン−α−アルキレン共重合体である
ことを特徴とする樹脂架橋体の製造方法。
(13)前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合することを特徴とする(12)に記載の樹脂架橋体の製造方法。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位の含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。)
(14)前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする(13)に記載の樹脂架橋体の製造方法。
以下、本発明の好ましい実施形態を中心に本発明について説明する。
ポリオレフィンベース樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−アルキレン共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、これらの塩素化物、ポリ塩化ビニルなどに代表される汎用性ポリオレフィン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、ポリオレフィン含有熱可塑性エラストマーなどの弾性樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系ポリオレフィンならびにその共重合体などが挙げられる。
本発明においては、ポリオレフィンであるポリエチレン、エチレン−α−アルキレン共重合体を使用する。本発明においてベース樹脂として用いるポリエチレンは、その種類は特に限定されず、シングルサイト触媒で重合させたポリエチレンであっても、マルチサイト触媒で重合させたポリエチレンであってもよい。
本実施形態においては、ポリオレフィンと特定の量の下記一般式(1)で表される高分子化合物(熱可塑性樹脂)を含有させた樹脂組成物を、エネルギー線を照射により架橋の原材料として用いる。
本発明において上記VA率及びVM率は、上記市販のものを用いるのであれば上記のようなその公表値を採用することができる。未知の場合には、例えば、赤外分光法によるカルボニル基の赤外光吸収測定から算出するなどのようして求めることができる。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位の含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。数式1における、{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}で算出される値を、「全樹脂に対するVA単位含量」ということがあり、「VA単位含量」と略称することがある。上記数式1の意味についてさらに補足すると、一般式1で表される化合物が1種の場合iを想定して算定する必要はなく、単純に下記式のとおりとなる。
0.01≦{a×b/(100+b)}≦10.0 数式2
一般式(1)で表される高分子化合物を複数の種類にわたり用いる場合には、そのVA率(ai)は種類ごとに異なることがあり、また配合比率(bi)も種類ごとに異なることがある。このような場合に数式1のようにして特定高分子化合物ごとの比率を求めその総和を算出することで、一般式(1)で表される化合物のポリオレフィン(ベース樹脂)に対する配合率を規定することができる。本実施形態において前記VA単位含量の下限は0.01であるが、VA単位含量の上限は10.0である。VA単位含量は要求条件や製造適正等に応じてその範囲で適宜設定すればよく、例えばその値を高めてより有意な架橋効率向上効果を発現させることができ、逆に、これを抑えて架橋体の力学的強度や耐クリープ性を所望の範囲で発現させることができる。VA単位含量は0.01〜10.0重量%であることが好ましいが、0.1〜7.0重量%であることがより好ましく、0.5〜5.0重量%であることが特に好ましい。ただし、VA単位含量は要求条件や製造適正等に応じてその範囲で適宜設定すればよく、例えばその値を高めてより有意な架橋効率向上効果を発現させることができ、逆に、これを抑えて架橋体の力学的強度や耐クリープ性を所望の範囲で発現させることができる。
本実施態様に用いることができる架橋のためのエネルギー線は特に限定されないが、電子線、γ線が挙げられ、特に電子線を用いることが好ましい。本実施態様に用いられる電子線照射装置としては特に制限されるものではなく、任意の装置を用いることができる。なかでも、本発明においては架橋工程における加速電圧が3MeVを超える電子線を照射することが好ましく、5〜10MeVであることがより好ましい。そのため、それを可能にする電子線照射装置を用いることが好ましい。具体的な電子線照射装置としては、例えば、IBA社製 ロードトロン(Rohdotron[商品名])などが挙げられる。
ただし、本発明では、加速電圧が3MeVを超えるエネルギー線で照射される。
本発明における組成物には、添加剤として、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、加工助剤、架橋助剤、着色剤、鉱物油系軟化剤、可塑剤、充填剤、難燃助剤、銅害防止剤、耐熱安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤、スリップ剤(滑剤)等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
本実施形態の樹脂組成物を用いて架橋ポリオレフィン管を製造する際には、押出機にて組成物を管体状に押出し、所定寸法に成形し冷却後、ポリオレフィン管素材とすることができる。このとき、押出温度は、当該組成物が適度な流動性を有し、かつ管体に押し出すことに問題が起きないような温度であればどのような温度でもよい。具体的には100〜300℃の間の好適な温度を選ぶことが好ましい。次にこのポリオレフィン管素材(未架橋)に放射線を照射し、最終的に架橋ポリオレフィン管(架橋体)とする。このような照射架橋法でオレフィンを含有する樹脂組成物を架橋する。エネルギー線(放射線)としては、上述のとおり電子線を用いることが好ましい。このような架橋ポリオレフィン管への照射は、ポリオレフィン管製造時の工程中か、製造後の別工程において、電子線を照射する装置内に管を連続的に通して行うことができる。あるいは、束状にドラムに巻きつけられた所定長の管体を装置内に送入することによって行ってもよい。
・前記一般式(1)に表される高分子化合物を配合しない場合に比べて、ポリオレフィンベース樹脂の架橋にかかるエネルギー線照射時の架橋効率を上げることができる。
・所望の架橋度に達せさせるために必要な線量を小さくすることができるため、照射工程のコストダウンが可能になる。
・副反応として懸念される樹脂の劣化も最小限に抑えることができ、長期特性に優れた管の製造が可能になる。
・照射時に分解する酸化防止剤等の量を減らすことができ、分解物残渣を最小限に食い止められるとともに、コストダウンにも繋がる。
・分解物量が少なくなることから、これに起因する樹脂の着色が抑えられ、より外観に優れた管の製造にも有利である。
・前記一般式(1)に表される高分子化合物を配合することで、押出特性が向上し、メルトフラクチャーや鮫肌などの成形不良の問題が軽減するとともに、押出速度も向上し、生産性の向上にも繋がる。
・成形品の柔軟性も増すため、架橋ポリオレフィン管を施工する際の負担の軽減にもなる。
ポリオレフィン(ベース樹脂)として、密度0.942g・cm−3、メルトフローレート2.5g/10min、融点126℃の直鎖・中−高密度ポリエチレン(コモノマー成分として1−ヘキセン成分を含むエチレン−α−ヘキセン共重合体)(旭化成ケミカルズ製、クレオレックスK4125(商品名))を用いた。一方、前記一般式(1)で表される高分子化合物として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル単位含量(VA率)41質量%、密度0.970g・cm−3、メルトフローレート2.0g/10min)を、上述のポリオレフィン100質量部に対して2.5質量部配合し、さらに全樹脂重量に対して1質量%の酸化防止剤(イルガノックス1010(商品名):チバスペシャリティケミカルズ)を添加し、パイプ素材(未架橋)を成形した。なお、このパイプ素材の寸法は、外径が17.0mm、内径が12.8mmである。
次に、上記パイプ素材について、下記のとおり架橋処理を施した。電子線照射機(IBA社製、Rohdotron:商品名)にて、加速電圧10MeV、電流値10mA、1回の照射量15kGy、温度常温(各照射パス後に常温に戻るまで空冷)、雰囲気空気の条件にて電子線の照射を行った。照射量の調整は各パスでゲル分率を確認しながら照射を行い、所定のゲル分率を得る照射量となる架橋ポリエチレン管を製造した。
上記実施例1に対し、下記表1に示したように、配合量及び前記一般式(1)で表される高分子化合物もしくはベース樹脂を変更した以外、同様にして各実施例及び比較例の架橋ポリエチレン管を製造した。なお、実施例7および8においては、前記一般式(1)で表される高分子化合物として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル単位含量(VA率)19質量%、密度0.940g・cm−3、メルトフローレート2.5g/10min)を、上述のポリオレフィン100質量部に対して0.53質量部および2.70質量部配合した。また、実施例9においては、ポリオレフィンとして、実施例1のものに変え、密度0.946g・cm−3、メルトフローレート0.3g/10min、融点130℃の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製、ノバテックHB233R:商品名)を用いた。なお、表1中、電子線の照射量は、架橋したときのゲル分率が60%を超えたときの電子線照射量を測定したものである。ゲル分率はJIS K 6796(架橋ポリエチレン製(PE−X)管及び継手−ゲル含量の測定による架橋度の推定:以降も「ゲル分率」と表記)に準じて以下のとおりにして測定した。
ゲル分率の測定に用いる試料は、0.1〜0.2mmの厚みにスライス又は削り取ったものとした。試料の質量を0.750±0.050gとした。ふた付きのクリーンで乾燥したかごの質量を1mgの感量で測定した(質量m1)。次いでかごの中に試料を入れ、試料入りのかごの質量を1mgの感量で測定した(質量m2)。試料が入ったかごをフラスコ内に入れ、確実に浸漬し続けることのできる十分な量のキシレンを入れた。勢いよく溶剤を8時間±5分沸騰させた。沸騰した溶剤から試料の残留物とかごを取り出し、140℃±2℃で少なくとも85kPaの負圧下の真空炉によって3時間乾燥させた。冷却後にかご及び残留物を1mgの感量で測定した(質量m3)。ゲル分率G1は以下の下記数式Aにより算定した。
G1=(m3−m1)/(m2−m1)×100 数式A
試験片の両端部を密栓し(図1参照)、内部に一定の内圧を加えるための加圧装置、試験片の温度を一定に保つための水槽又はオーブンを使用した。試験片はすべて製造後15時間以上経過した管から採取した。試験片の両端は管軸に直角になるように切断し、試験片の有効長さは、最小250mmとした。試験片の数は少なくとも3個とした。試験片は試験温度(95℃(170時間法)もしくは110℃(8760時間法))に対し0〜5℃高い温度に設定した水で管内を満たし、前記試験温度の水槽ないしオーブンに入れ、15分間静置した。その後、加圧装置に連結して附属書2表1により求められる規定圧力になるよう加圧した。この状態でそれぞれの試験片を規定時間放置した。表1中、破壊があった場合を「×」、破壊が無かった場合を「○」とした。この試験によって確認される架橋ポリエチレン管の性能としては、JIS−K6769に記載の表1におけるPN15種の管の使用温度および最高使用圧力による分類によって明確にされており、この条件下における50年の使用を保証している。
Claims (14)
- 前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂架橋体。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位Bの含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。) - 前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂架橋体。
- 前記一般式(1)で表される樹脂化合物がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずいれか1項に記載の樹脂架橋体。
- 前記エネルギー線の照射による架橋工程を経て管状に加工されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
- 前記エネルギー線が電子線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
- 給水用途または給湯用途として好適な架橋ポリエチレン管としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
- ゲル分率を60%以上としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂架橋体。
- 前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合したことを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位の含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。) - 前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする請求項10に記載の樹脂組成物。
- 前記一般式(1)で表される高分子化合物を、下記数式1を満たす量で配合することを特徴とする請求項12に記載の樹脂架橋体の製造方法。
0.01≦{Σ(ai×bi)/(100+Σbi)}≦10.0 数式1
(iは1以上の自然数であり、aiはi番目における前記高分子化合物の繰り替えし構成単位の含有率[質量%]を表す。biはi番目における前記高分子化合物の前記ポリオレフィン100質量部に対する配合比率(質量部)を表す。) - 前記数式1における上限値が2.0であることを特徴とする請求項13に記載の樹脂架橋体の製造方法。
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