JP5716513B2 - セラミックス接合体及びその製造方法 - Google Patents
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この工程は、被接合材である複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に、ケイ素(Si)を含む有機ケイ素系ポリマーであるセラミックス前駆体ポリマーを塗布する工程である。ここで、セラミックス前駆体ポリマーとは、焼成することにより、セラミックスに転化するポリマーである。本工程において使用するセラミックス前駆体ポリマーは、ケイ素を含む有機ケイ素系ポリマーであり、例えば、ポリカルボシラン(PCS)、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)、ポリフェニルシルセスキオキサン(PPSQ)等が好適に使用できる。セラミックス前駆体ポリマーを塗布する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、図1に示すように、セラミックス前駆体ポリマーをトルエン等の溶媒に溶解させた溶液6に、セラミックス焼結体2の少なくとも接合面2aが浸かるようにディッピングする方法を好適に用いることができる。なお、被接合材であるセラミックス焼結体の材質は特に限定されるものではなく、最終的に製造されるセラミックス接合体の用途や使用環境に応じて、適宜選択される。
この工程は、前記工程Aにおいて複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に塗布されたセラミックス前駆体ポリマーを、不活性雰囲気下又は酸化雰囲気下で不融化する工程である。例えば、セラミックス前駆体ポリマーとして、PCSを用いた場合には、大気流通下のような酸化雰囲気下にて200℃程度の温度で十数時間程度熱処理することにより、不融化(酸化不融化)することが好ましい。また、セラミックス前駆体ポリマーとして、PMSQを用いた場合には、アルゴンガス(Ar)流通下のような不活性雰囲気下にて130〜160℃程度の温度で2〜3時間程度熱処理することにより、不融化することが好ましい。
この工程は、前記工程Bにおいて不融化したセラミックス前駆体ポリマーを焼成することにより、複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に、セラミックス被膜を形成する工程である。本工程における焼成は、使用するセラミックス前駆体ポリマーの種類にもよるが、前記工程Bにおける不融化処理と同様に、不活性雰囲気下又は酸化雰囲気下で行うことが好ましい。焼成温度及び焼成時間は、不融化したセラミックス前駆体ポリマーがセラミックスに転化するのに要する温度及び時間とする。例えば、セラミックス前駆体ポリマーとして、PCSを用いた場合は、不融化後、Ar流通下等の不活性雰囲気下にて、800℃以上の温度(例えば1000℃程度)で1時間程度焼成することにより、セラミックス焼結体の少なくとも接合面に、炭化ケイ素(SiC)被膜を形成することができる。また、これを更に、大気流通下のような酸化雰囲気下にて、1400℃以上の温度で再焼成することにより、炭化ケイ素(SiC)被膜を酸化ケイ素(SiO2)被膜へと変化させるようにしてもよい。セラミックス被膜の厚さは1〜15μm程度であることが好まく、7〜12μm程度であることがより好ましい。セラミックス被膜の厚さが、1μm未満では、後述する工程Eにおいて、金属箔との反応層であるセラミックス中間層が形成されない場合があり、15μmを超えると、後述する工程Eにおいて、金属箔を全て反応させることが難しく、金属成分が金属単体の状態で残存する場合がある。工程Aから工程Cまでの操作を1回行うだけでは、好適なセラミックス被膜の厚さが得られない場合は、当該操作を複数回繰り返してもよい。
この工程は、図2に示すように、複数のセラミックス焼結体2のセラミックス被膜3が形成された接合面同士を対向させ、金属箔5を介して重ね合わせる工程である。ここで用いる金属箔は、前記工程Cにより、被接合材であるセラミックス焼結体の接合面に形成されたセラミックス被膜に対して、置換反応、テルミット反応等の化学反応を起こすものである。例えば、セラミックス被膜がSiC被膜やSiO2被膜である場合には、それらの被膜に対して直接反応を起こすアルミ箔、マグネシウム箔等を用いるのが好ましい。金属箔の厚さは1〜15μm程度であることが好まく、7〜12μm程度であることがより好ましい。金属箔の厚さが、1μm未満では、後述する工程Eにおいて、セラミックス被膜の一部との反応層であるセラミックス中間層が形成されない場合があり、15μmを超えると、後述する工程Eにおける焼成後に、金属箔の金属成分が金属単体の状態で残存する場合がある。
この工程は、前記工程Dにより、金属箔を介して重ね合わされた複数のセラミックス焼結体を焼成して、セラミックス被膜と金属箔とを化学反応させることにより、それら複数のセラミックス焼結体を接合する工程である。この工程における焼成の条件は、セラミックス被膜や金属箔の材質等により、適宜決定される。例えば、セラミックス被膜がSiC被膜やSiO2被膜であり、金属箔がアルミ箔である場合には、真空中にて800℃程度の温度で2時間程度焼成することが好ましい。本工程における焼成によって生じた化学反応で、金属箔とセラミックス被膜の一部(金属箔との接触面に近い部分)とから、セラミックス被膜とは異なった組成を持つセラミックス中間層が形成され、そのセラミックス中間層によって複数のセラミックス焼結体が接合される。
純度が99.9%以上のバルクアルミナ体をカットして、20×30×20mmの大きさのアルミナ試料片を2つ作製した。次いで、各アルミナ試料片の30×20mmの面の1つを、ポリカルボシラン(PCS)を0.1mol/l含有するトルエン溶液に浸して当該面に溶液を塗布した後、エアブローで乾燥させた。その後、各アルミナ試料片を、大気流通下にて200℃に加熱した状態で13.5時間静置する酸化不融化処理を行った。この酸化不融化処理後、各アルミナ試料片を、Ar流通下(流通速度:300ml/min)にて1000℃で1時間焼成した。このトルエン溶液の塗布、乾燥、酸化不融化処理、焼成という操作を数回繰り返し、膜厚が約12μmのSiC被膜が形成されたアルミナ試料片(SiC被膜付きアルミナ試料片)を2つ作製した。次に、この2つのSiC被膜付きアルミナ試料片のSiC被膜が形成された面同士を対向させ、それら面の間に、厚さが約24μmのアルミ箔を介在させた状態で重ね合わせた後、真空中にて800℃で2時間焼成することにより、2つのSiC被膜付きアルミナ試料片が接合されたアルミナ接合体を得た。こうして得られたアルミナ接合体の接合部位を観察したところ、接合された2つのSiC被膜付きアルミナ試料片のSiC被膜同士の間に、SiC被膜とは異なる組成を持つ厚さ約40μmのセラミックス中間層が形成されていた。また、得られたアルミナ接合体を構成するアルミナ試料片、SiC被膜及びセラミックス中間層のそれぞれについて、組織構造を解析したところ、アルミナ試料片はα−アルミナであり、SiC被膜はアモルファス(非晶質)であり、セラミックス中間層はAl2O3とSiO2とSiCのマトリクス構造を有するものであった。更に、得られたアルミナ接合体について、4点曲げ強度を複数回測定したところ、図4に示すように、平均値が127.3MPa、最大値が250.7MPaであった。なお、4点曲げ強度の測定は、JIS R1601に準拠して行った。
実施例1と同様にして作製した2つのSiC被膜付きアルミナ試料片のSiC被膜が形成された面を対向させて重ね合わせた後、真空中にて800℃で2時間焼成することにより、2つのSiC被膜付きアルミナ試料片が接合されたアルミナ接合体を得た。こうして得られたアルミナ接合体について、実施例1と同様に4点曲げ強度を複数回測定したところ、図4に示すように、平均値が109.2MPa、最大値が152.0MPaであった。
実施例1と同様にして作製した2つのSiC被膜付きアルミナ試料片を、更に大気雰囲気下にて1400℃で1時間焼成(再焼成)することにより、SiC被膜がSiO2被膜へと変化した2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片を得た。次に、この2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片のSiO2被膜が形成された面同士を対向させ、それら面の間に、厚さが約24μmのアルミ箔を介在させた状態で重ね合わせた後、真空中にて800℃で2時間焼成することにより、2つSiO2被膜付きアルミナ試料片が接合されたアルミナ接合体を得た。こうして得られたアルミナ接合体の接合部位を観察したところ、接合された2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片のSiO2被膜同士の間に、SiO2被膜とは異なる組成を持つ厚さ約25μmのセラミックス中間層が形成されていた。また、得られたアルミナ接合体を構成するアルミナ試料片、SiO2被膜及びセラミックス中間層のそれぞれについて、組織構造を解析したところ、アルミナ試料片はα−アルミナであり、SiO2被膜の結晶構造はトリディマイトであり、セラミックス中間層はAl2O3とSiO2のマトリクス構造を有するものであった。更に、得られたアルミナ接合体について、実施例1と同様に4点曲げ強度を複数回測定したところ、図4に示すように、平均値が176.5MPa、最大値が236.9MPaであった。
純度が99.9%以上のバルクアルミナ体をカットして、20×30×20mmの大きさのアルミナ試料片を2つ作製した。次いで、各アルミナ試料片の30×20mmの面の1つを、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)を0.1mol/l含有するトルエン溶液に浸して当該面に溶液を塗布した後、エアブローで乾燥させた。その後、各アルミナ試料片を、大気流通下にて140℃に加熱した状態で3時間静置する酸化不融化処理を行った。この酸化不融化処理後、各アルミナ試料片を、大気流通下(流通速度:100ml/min)にて800℃で2時間焼成した。このトルエン溶液の塗布、乾燥、酸化不融化処理、焼成という操作を数回繰り返し、膜厚が約12μmのSiO2被膜が表面に形成されたアルミナ試料片(SiO2被膜付きアルミナ試料片)を2つ作製した。次に、この2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片のSiO2被膜が形成された面同士を対向させて重ね合わせた後、真空中にて800℃で2時間焼成することにより、2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片が接合されたアルミナ接合体を得た。こうして得られたアルミナ接合体について、実施例1と同様に4点曲げ強度を複数回測定したところ、図4に示すように、平均値が39.76MPa、最大値が100MPaであった。
図4に示すとおり、2つのSiC被膜付きアルミナ試料片のSiC被膜が形成された面同士の間にアルミ箔を介在させて焼成することにより接合された実施例1のアルミナ接合体は、2つのSiC被膜付きアルミナ試料片のSiC被膜が形成された面同士の間に何も介在させずに焼成することにより接合された比較例1に対し、高い接合強度を発揮した。同様に、2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片のSiO2被膜が形成された面同士の間にアルミ箔を介在させて焼成することにより接合された実施例2のアルミナ接合体は、2つのSiO2被膜付きアルミナ試料片のSiO2被膜が形成された面同士の間に何も介在させずに焼成することにより接合された比較例2に対し、大幅に高い接合強度を発揮した。
2:セラミックス焼結体
2a:接合面
3:セラミックス被膜
4:セラミックス中間層
5:金属箔
6:溶液
Claims (8)
- 複数のセラミックス焼結体が接合されてなるセラミックス接合体であって、前記各セラミックス焼結体の接合面に、少なくともケイ素を含み、前記セラミックス焼結体とは異なる組成及び組織構造を有するセラミックス被膜が形成されており、前記セラミックス被膜の少なくとも最表面部分が、炭化ケイ素であり、前記セラミックス被膜が形成された接合面同士が、セラミックス中間層を介して接合されているセラミックス接合体。
- 前記複数のセラミックス焼結体が、前記セラミックス被膜が形成された接合面同士を、金属箔を介して重ね合わせて焼成することにより接合されており、前記セラミックス中間層が、前記セラミックス被膜の一部と前記金属箔との化学反応により形成された、前記セラミックス被膜の構成元素を含むものである請求項1に記載のセラミックス接合体。
- 前記セラミックス中間層における前記セラミックス被膜の構成元素の存在する割合が、前記セラミックス中間層の厚さ方向の中心部から前記セラミックス焼結体へ向かうにつれて傾斜的に減少している請求項2に記載のセラミックス接合体。
- 前記セラミックス中間層の厚さが、1〜45μmである請求項1〜3の何れか一項に記載のセラミックス接合体。
- 複数のセラミックス焼結体が接合されてなるセラミックス接合体の製造方法であって、
前記複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に、ケイ素を含む有機ケイ素系ポリマーであるセラミックス前駆体ポリマーを塗布する工程A、
前記複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に塗布された前記セラミックス前駆体ポリマーを、不活性雰囲気下又は酸化雰囲気下で不融化する工程B、
不融化した前記セラミックス前駆体ポリマーを焼成することにより、前記複数のセラミックス焼結体の少なくとも接合面に、セラミックス被膜を形成する工程C、
前記複数のセラミックス焼結体のセラミックス被膜が形成された接合面同士を対向させ、前記セラミックス被膜に対して化学反応を起こすような金属箔を介して重ね合わせる工程D、及び、
前記金属箔を介して重ね合わされた前記複数のセラミックス焼結体を焼成して、前記セラミックス被膜と前記金属箔とを化学反応させることにより、前記複数のセラミックス焼結体を接合する工程E、
を含むセラミックス接合体の製造方法。 - 前記工程Cにおける焼成が、不活性雰囲気下又は酸化雰囲気下における800℃以上での焼成である請求項5に記載のセラミックス接合体の製造方法。
- 前記工程Cにおける焼成が、不活性雰囲気下又は酸化雰囲気下における800℃以上での焼成と、それに続いて行われる酸化雰囲気下における1400℃以上での再焼成とからなる請求項5に記載のセラミックス接合体の製造方法。
- 前記工程Eにおける焼成によって生じた前記化学反応で、前記金属箔と前記セラミックス被膜の一部とから、前記セラミックス被膜とは異なった組成を持つセラミックス中間層が形成されることにより、前記複数のセラミックス焼結体が接合される請求項5〜7の何れか一項に記載のセラミックス接合体の製造方法。
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