JP5702550B2 - 防火性弾性発泡体材料 - Google Patents

Description

本発明は、改善された防火特性と低い煙生成とを有する、膨張可能(expandable)かつ架橋可能な弾性材料、それらの材料の製造方法、及びそれらの材料の使用に関する。

防火性及びそれに関連した議論は、エラストマー開発の分野において重要な役割を果たしている。防火性ゴムベースの選択及び製造に多くの努力が為されており、ＰＶＣ又はクロロプレン（ＣＲ）のような優れた例が存在する。後者は、度々、防火性接着剤（例えば、特許文献１）、コーティング（例えば、特許文献２）、又は同一目的のための含浸物（例えば、特許文献３）として使用されている。並外れた挑戦は、弾性発泡体を防火性とし、又は少なくとも低可燃性とすることであるが、というのは、発泡体気泡内に含まれる空気及び薄い気泡壁が炎の拡大を促進するからである。クロロプレンはここでも可燃性を低下させるために使用されており、それには例えば現存する発泡体の含浸（例えば、特許文献４）、又は発泡ＣＲラテックス、乳剤及び類似物（例えば、特許文献５、特許文献６、後者は、断熱にも好適であると云われている）がある。しかしながら、これらの方法は、非可撓性材料、及び／又は機械的に脆弱な化合物をもたらすであろう。ＣＲにおいては、より良好な機械的及び一般的な特性を有する純粋な発泡ゴムは極めて希であり、ある場合には、ＣＲは（数あるポリマー及び充填材の中でも）単に中実(massive)ゴムベースとして使用され、発泡体は炎と接してのみ形成され（特許文献７、特許文献８、特許文献９：にて膨張物(intumescences)と称されている）、他の場合には、発泡体の製造は非常に複雑かつ高価であり、それは製造が重合を用いて行われ（特許文献１０、しかしながら、難燃特性は言及さえもされていない）、又は複雑な配合方法及び膨張(expansion)方法の両方を使用して行われる（特許文献１１及び特許文献１２；イソシアナート等の重要な化学物質に基づく）ためである。

上記に言及した特許文献から、クロロプレンを含有する調合物は、耐火特性を改善するために使用することができることが知られているが、それらの調合物は、火事の際に人に対して最も重大な脅威であると思われる高いレベルの煙を生成する。

難燃性の絶縁材料、特に断熱化合物に関しては更に研究が少なく、特許文献１３は、水蒸気を形成することによって火事中の炎の拡大に対する絶縁効果を与える化合物（ＣＲが可能な成分）に言及する一方、特許文献１４は、低伝導性充填材によって絶縁特性を達成したウェットスーツのための発泡ＣＲに言及している。しかしながら、工業的及び一般的な（例えば、建造物）絶縁、及び遮蔽／減衰目的のための好適な難燃性の可撓性発泡体材料は、特に全ての公共部門において難燃性及び保護特性が必要とされ、より厳格となっている事実に関しては、上述した最先端技術のいずれによっても得ることができない：建造物及び構造物の絶縁に関する欧州規格（ＥＮ１３８２３、「Ｅｕｒｏｃｌａｓｓｅｓ」）の調和等の新たな挑戦が生じており、これらの規格は、一般的な難燃性を要求するのみでなく、厳しい試験条件（「ＳＢＩラウンド・コーナー・テスト（round corner test）」）を含み、炎及び煙生成、並びに煙密度等のパラメータを導入することにより、基準履行に対して更なる障壁を付加している。

特開平１１−３４６４１６号 ドイツ特許（ＤＥ）第２４５３２３８号 特開昭６２−１６７３３４号 英国特許（ＧＢ）第９７７９２９号 特開昭６１−２７２２４８号 特開平１０−０６０１５１号 ドイツ特許（ＤＥ）第４１３５６７８号 ウクライナ特許（ＵＡ）第６１４１９号 ウクライナ特許（ＵＡ）第７８１３１号 特開昭６０−４１３４１号 特開昭６０−１８６５４３号 特開昭６０−１８６５４４号 特開平１０−０７７４７８号 特開平１１−８２０３０号

従って、本発明の主な目的は、上述した欠陥を有さないのみでなく、高いレベルの内在的な難燃性、低い炎拡大性、及び低い煙密度レベルにより、製造及び取り扱い（例えば、取り付けにて）の両方において容易な、即ち経済的かつ環境保護性を有し、卓越した絶縁特性を有し、各々の適用分野における現代の規制を満たす発泡ゴム材料を提供することにある。

驚くべきことに、上述した欠点を有さないそのような多用途弾性発泡体材料は、クロロプレンゴムをクロロパラフィン及び異なる種類及びレベルの充填材と混合し、それを膨張及び架橋させることにより、非常に限られたステップ数にてクロロプレンゴムから直接作製できることが見出されている。

特許請求される材料は、クロロプレンゴム（ポリクロロプレン、ＣＲ）である化合物（Ａ）を含有し、該化合物は調合物中に、総ポリマー含有量を基準として、最少レベル５０重量パーセントで存在することができる。

ポリクロロプレンゴムは、硫黄−、キサントゲン−又はメルカプタン−変性タイプの群から選択でき、特にメルカプタン変性タイプが好ましい。ポリクロロプレンは、２５〜１２５ムーニー（Ｍｏｏｎｅｙ）単位のムーニー粘度（１００℃でＭＬ１＋４）を有するものを使用することができ、特に３５〜４５ムーニー単位のものが好ましい。

特許請求される材料は、全ての可能な鎖長と分子量とを有する、総ポリマー含有率１００重量％を基準として計算して、２５重量％を越えるレベルのクロロパラフィン（塩素化パラフィン）である化合物（Ｂ）を更に含有する。好ましい鎖長は、Ｃ_８〜Ｃ_５０である。Ｃ_１７〜Ｃ_２７の鎖長が特に好ましい。クロロパラフィンは、１０〜８０％、好ましくは４８〜７２％の塩素レベルを示すことができる。

特許請求される材料は、一種又はそれ以上の充填材（Ｃ）を含有し、該充填材は、金属及び非金属酸化物、カーボンブラック、金属水酸化物、シリカ、炭酸塩等及びそれらの混合物等の活性及び不活性充填材の両方のクラスから選択されてもよい。特に好ましくは、金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属酸化物のクラスの充填材である。充填材（一種又は複数種）（Ｃ）は、総ポリマー含有率１００重量％を基準として計算して、５０〜８００重量％、好ましくは１００〜５００重量％、特に好ましくは２００〜４００重量％の範囲で含まれてもよい。

特許請求される材料は、硫黄ベースのシステム、照射、過酸化物、又はそれらの混合物等の好適な架橋システム（Ｄ）を含有する。好ましくは、ゴム工業界にて使用されている、硫黄及び全種類の有機促進剤を含有する硫黄ベースのシステムである。特に好ましくは、硫黄、ジペンタメチレンチウラム（pipentamethylenethiuram）テトラスルフィド、亜鉛−Ｎ−ジベンジル−ジチオカルバメート、Ｎ、Ｎ’−ジフェニルチオウレア、エチレンチオウレア及びジベンゾチアジルジスルフィドの混合物である。

特許請求される材料は、開放及び独立気泡、並びに混合気泡構造の形成を誘導し得る好適な発泡システム（Ｅ）を更に含有する。独立気泡構造を形成する添加剤が好ましい。発泡システム（Ｅ）は、規定温度で気体を形成する化学物質か、又は機械的方法、例えば圧力により気体（窒素、二酸化炭素、蒸気等）を化合物にする物理的発泡システムのいずれか、及び両方の方法の組み合わせからなっていてもよい。膨張のための化学物質（Ｅ）は、ＣＯ_２放出化学物質（例えば、炭酸塩、カルバメート、カルボンアミド等）、水又は水放出化合物（結晶及び層間（intercalate）水を含む）、窒素放出化学物質（例えば、アゾ化合物、アジド、ヒドラジン）、膨張可能な気体又は液体を含有する一般的に膨張性ミクロ球及び中空球、膨張性粘土及び黒鉛並びに類似した粒子等、並びにそれらの任意の混合物であってもよい。

特許請求される材料は、更に、ゴム及びプラスチック工業界において使用されている、例えばハロゲン化合物、金属酸化物及び水酸化物、金属スルフィド、リン及びリンベースの化合物、メラミンベースの化合物、並びにそれらの混合物等の、難燃剤（Ｆ）及びその混合物を含有してもよい。難燃剤の好ましいクラスは、三酸化アンチモンのような共力剤(synergist)と組み合わせてもよい有機臭素化物であろう。

特許請求される材料は、１００重量％の総ポリマー含有率を基準として計算して、０〜２００重量％の範囲内で可塑剤（Ｇ）を含有して、その混合及び製造特性を改善してもよい。

本発明に有用な弾性組成物は、例えば成分を内部ミキサー内又は粉砕機上で混合する等、任意の従来の手順により調製されてもよい。

特許請求される材料は、その製造、適用、外観及び性能特性を改善するための任意の添加剤（Ｈ）、例えば抑制剤、遅延剤、促進剤、安定剤（例えば、熱、ＵＶ）、着色剤等を更に含有してもよい。添加剤（Ｈ）は、膨張性添加剤のクラス、例えば膨張性黒鉛、バーミキュライト、パーライト等から選択されて、火事の場合に該材料を自己膨張性とし、例えば壁及び隔壁貫通を遮断又は防止することができる。添加剤（Ｈ）はまた、火事の場合に自己セラミック化効果を誘導して、ケーブル、パイプ、壁貫通等を防止するであろう物質、例えばホウ素化合物、ケイ素含有化合物等、から構成されてもよい。

特許請求される材料は、ゴム化合物と混合され得る追加のポリマー又はポリマー化合物（Ｉ）を含有して、例えば有機ゴム、シリコーン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性及び熱硬化性樹脂、並びにそれらの混合物等のゴム又はゴム／プラスチックブレンドを得ることができる。

特許請求される材料は、更に、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、ポリエステル繊維等、及びそれらの混合物等のような繊維若しくは短繊維、又はパルプを、充填材料（Ｃ）及び補強剤（Ｊ）の両方として含有してもよい。

特許請求される材料の主な利点は、低い煙拡散性と、低い煙生成性が必要とされる「Ｅｕｒｏｃｌａｓｓ」用途に対するその適合性であり（表３、ＦＩＧＲＡ／ＳＭＯＧＲＡ参照）、またこの適合性が該材料に内在し、これは即ちこの適合性が外部手段により達成されず、調合物自体により生じることを意味する。

特許請求される材料の更なる利点は、要求される耐炎性の達成に臭素化難燃剤を全く必要としないことである。臭素化難燃剤は環境問題にとって重大であり、火事の場合に有毒な煙霧を生成し得る。その理由から、臭素化難燃剤は既に一部禁止されている。

特許請求される材料の基本的な利点は、該材料がその好ましい組成において、繊維及びＰＶＣの両方を含有しない事実にあり、この繊維及びＰＶＣの両方は調査下にあり、環境及び健康上の問題に関して論議されている。

特許請求される材料の更なる利点は、同様の理由のために一部論議下にあり、既に一部禁止されているフタレートを可塑剤として必要としないことである。

特許請求される材料の更なる利点は、完全な開放気泡から完全な独立気泡迄の適切な発泡体気泡構造に膨張することにより、その特性が所望の特性プロファイル（機械学、減衰、絶縁等に関する）に適合可能なことである。このことは架橋システム（一種又は複数種）、発泡剤（一種又は複数種）及びベースマトリックスを変更することにより達成することができる。

特許請求される材料の更なる利点は、クロロプレンを用いて適切なポリマーが選択されているため、硫黄及び過酸化物硬化の両方のような、広く普及した経済的な方法により架橋し得る事実にある。

特許請求される材料が、一ステップ混合及び一ステップ成形の工程、例えば成型、押出し及び他の成形方法にて経済的な方法で製造できることは、該材料の顕著な利点である。本材料は、製造及び適用の可能性において多様性を有する。本材料は、単一品目又は多層構造として、押出し、共押出し、積層、成型、共成型等が可能であり、従って自動車、輸送機関、航空機、建造物及び構造物、家具、機械工学並びに多数の他の工業界において、様々な表面上への無拘束の成形に適用することができる。

特許請求される材料が、工業界において広く普及した標準的な方法により変形され及び形状を付与することができ、また特殊な装置を必要としないことは、該材料の更なる利点である。

特許請求される材料の更なる利点は、例えば主に黒色である現存する絶縁材料とは対照的に、容易に着色できる事実にある。

特許請求される材料の重要な利点は、ガス発生が少ない事実にあり、これは例えば自動車用途のみでなく、一般的な難燃性にも重要である。

本材料の他の利点は、その防火性又は他の関連した特性を有意に損失することなく、非常に高い程度迄、同一種類のスクラップ又はリサイクル材料をブレンドし、又は該材料で充填し、又は該材料を含有できる事実にある。

特許請求される材料の更なる利点は、適切な化合物を選択することによる、非常に低い（−１００℃）温度から非常に高い（１５０℃）温度に亘る、断熱用途に対するその適合性である。

特許請求された材料の用途に関する重要な利点は、該材料が容易に糊付け、被覆することができ、それ自体が難燃性を有するポリクロロプレンゴム及び／又はラテックスベースの糊／コーティングを用いてでも容易に糊付け、被覆することができ、従ってこれらを適用した材料の防火特性を低下させない事実にある。

特許請求される材料の主な利点は、その防火性が内在的であり、従って防火性は材料自体に含まれ、他の任意の手段によりもたらされていない事実にある。このことは、重要な特性を損失することなく、材料を修正、適合及び変更することを容易にするであろう。

特許請求される材料の、結果としての主な利点は、様々な薬剤及び様々な手段を用いて表面処理、例えば被覆、溶接、編成(braid)等が可能である事実にある。これらの手段により、それらが適切に適用された場合、防火性を更に高いレベルに向上させることができる。

以下の実施例及び比較例において、エラストマー加工は以下のように行った：加工は、５０００立方センチメートルの内容積を有する内部ミキサー内で行い；混練は約３０ｒｐｍで行った。バッチは２パス（two pass）混合物として加工した。第一のパスにおいて、硫黄、促進剤及び活性剤を除く全成分を内部ミキサーに加えそして混合して温度約１３５℃迄にし、放出し、粉砕し、周囲温度に冷却した。第二のパスにおいて、マスターバッチ化合物を硫黄、促進剤及び活性剤と一緒に混合して１０５℃迄とし、放出し、粉砕し、周囲温度に冷却した。

最終加工は、スクリュー径３７．２５ｍｍ及びスクリュー長２５Ｄを有する研究室押出機上で行った。押出機に真空ポートとチューブダイを搭載した。押出したチューブを押出し後直接切断し、オーブンライン内に移動する前に拡げてシートとした。

押出した化合物の膨張及び加硫は、１２０℃から開始して、段階的に１８０℃に上昇する連続オーブンライン上で行った。

表１に、本発明の実施例２、４、５及び６、並びに比較例１及び３の試験サンプル用の弾性組成物の調合物を示す。

表１：化学組成：成分の申告は、総ポリマー含有率１００重量％を基準として計算される。

表２に、使用した原料及びその供給源を記載する。

表２：使用した化学物質

加工、膨張及び加硫後、全化合物に関して物理的試験を行った。得られた発泡体（シート）の特性は、以下の試験プロトコールに従って測定した：
ＩＳＯ ８４５による密度；ＩＳＯ ４５８９によるＬＯＩ；ＥＮ １２６６７による熱伝導性；ＥＮ １３８２３による可燃性、並びに総熱放出（Total Heat Release ）（ＴＨＲ）、火災成長速度（Fire Growth Rate）（ＦＩＧＲＡ）、煙生長速度（Smoke Growth Rate）（ＳＭＯＧＲＡ）及び総煙生成量（Total Smoke Production）（TSP）の測定；ＥＮ １３５０１による可燃性分類（Flammability Classification）。表３に、特に火災試験からの分析データを示す。

表３：物理的データ

Claims (11)

1. 総ポリマー含有量を基準として５０〜１００重量パーセントのポリクロロプレンと、総ポリマー含有量を基準として２５重量パーセントを超えるクロロパラフィンとを含有する弾性材料であって、加硫処理され膨張され、充填材及び添加剤を含有する弾性材料。
2. ポリクロロプレンが、ポリクロロプレンの重量を基準として、５０重量パーセント迄の一種又は数種の追加の弾性又は熱可塑性の材料とブレンドされる、請求項１に記載の材料。
3. 独立気泡を有する発泡体に膨張された、請求項１又は２に記載の材料。
4. ２００ｋｇ／ｍ³未満の最終密度に膨張された、請求項１〜３のいずれか一項に記載の材料。
5. 繊維及びＰＶＣの両方を含有しない、請求項１〜４のいずれか一項に記載の材料。
6. 一ステップ混合工程及び一ステップ成形工程を含むことを特徴とする、請求項１〜５のいずれか一項に記載の材料の製造方法。
7. 保護のための、請求項１〜５のいずれか一項に記載の材料の使用。
8. 温度及び／又は雑音に対する保護を必要とする用途のための、請求項７に記載の材料の使用。
9. 断熱及び／若しくは防音、並びに／又は、音減衰及び／若しくは振動減衰のための請求項１〜５のいずれか一項に記載の材料の使用。
10. 構造体、器、容器及びパイプの内部及び外部の断熱のための、請求項９に記載の材料の使用。
11. 防火のための、請求項１〜５のいずれか一項に記載の材料の使用方法。