JP5686054B2 - シアネート樹脂およびそれを含有する硬化性樹脂組成物 - Google Patents

シアネート樹脂およびそれを含有する硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、優れた耐熱性、誘電特性、耐湿信頼性が求められる電子回路基板用のマトリックス樹脂、半導体封止材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、絶縁塗料等のコーティング材料等の原料として好適に用いることができる、熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、電子回路基板用樹脂組成物、該組成物をマトリックス樹脂として用いた電子回路基板、及び新規シアネート樹脂に関する。
電子機器用の回路基板材料として、ガラスクロスに、エポキシ樹脂系、BT(ビスマレイミド−トリアジン)樹脂系などの熱硬化性樹脂を含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ、該プリプレグを加熱硬化した積層板、該積層板と該プリプレグとを組み合わせ、加熱硬化した多層板が広く使用されている。
近年、これら各種用途、とりわけ先端材料用途において、耐熱性、誘電特性、耐湿信頼性に代表される性能の一層の向上が求められている。
更に近年、環境調和の観点からハロゲン系難燃剤排除の動きがより一層高まり、臭素化合物をベースにした難燃剤に対する種々の規制が論議され、例えば、非ハロゲン系エポキシ樹脂に、硬化剤として多官能フェノール化合物や窒素又はリン含有フェノール化合物を組み合わせ、水酸化アルミニウムなどの無機充填剤を併用する手法や、リン含有エポキシ樹脂を主体とした応用例が数多く提案されている。
かかる要求に応えるものとして、エポキシ樹脂と特定構造の多官能シアネート樹脂に無機充填剤を配合した組成物(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、耐熱性と誘電率はある程度改善されるが、難燃性の改善効果が充分ではなく、また耐湿耐半田性も乏しく、先端材料には使用できるものではなかった。
特開2004−182850号公報
本発明は、優れた耐熱性と誘電特性を有しつつ耐湿信頼性と難燃性にも優れたシアネート樹脂、これを含有する熱硬化性組成物、その硬化物、該組成物を用いた電子基板用樹脂組成物、これをマトリックス樹脂として用いた電子回路基板を提供することにある。
本発明者はこの様な課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の、フェノール系樹脂をシアン酸エステル化して得られるシアネート樹脂、当該シアネート樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は
複数のシアナト基含有芳香族骨格(Cy)が、下記一般式(1)および(2)のいずれか1つの結節基(X)を介して結合した構造を基本骨格とするシアネート樹脂構造を有し、かつ、該シアナト基含芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有し、かつ、前記シアナト基含有芳香族骨格(Cy)の総数を100とした場合に、前記ナフチルメチル基又はアントラニルメチル基の総数が10〜200となる割合であることを特徴とするシアネート樹脂
Figure 0005686054
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のメチル基、メトキシ基又は水酸基で置換されていてもよいアリール基を表し、Rは独立的に水素原子又はメチル基、Arはフェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。)に関する。
本発明によれば、本発明は、優れた耐熱性と誘電特性を有しつつ耐湿信頼性と難燃性にも優れたシアネート樹脂、これを含有する熱硬化性組成物、その硬化物、該組成物を用いた電子基板用樹脂組成物、これをマトリックス樹脂として用いた電子回路基板を提供することができる。
合成例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のGPCチャートである。 合成例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のC13NMRチャートである。 合成例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のMSスペクトルである。 合成例2で得られたフェノール樹脂(A−2)のGPCチャートである。 合成例2で得られたフェノール樹脂(A−2)のC13NMRチャートである。 合成例2で得られたフェノール樹脂(A−2)のMSスペクトルである。 合成例3で得られたフェノール樹脂(A−3)のGPCチャートである。 合成例3で得られたフェノール樹脂(A−3)のC13NMRチャートである。 合成例3で得られたフェノール樹脂(A−3)のMSスペクトルである。 合成例3で得られたフェノール樹脂(A−4)のGPCチャートである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のシアネート樹脂は、
複数のシアナト基含有芳香族骨格(Cy)が、下記一般式(1)および(2)のいずれか1つで表される結節基(X)を介して結合した構造を基本骨格とするシアネート樹脂構造を有し、かつ、該シアナト基含芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有し、かつ、前記シアナト基含有芳香族骨格(Cy)の総数を100とした場合に、前記ナフチルメチル基又はアントラニルメチル基の総数が10〜200となる割合であることを特徴とするものである。
Figure 0005686054
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のメチル基、メトキシ基又は水酸基で置換されていてもよいアリール基を表し、Rは独立的に水素原子又はメチル基、Arはフェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。)
本発明のシアネート樹脂は、芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有するシアナト基含有芳香族骨格(以下、この構造部位を「シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)」と略記する)と、芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有しないシアナト基含有芳香族骨格(以下、この構造部位を「シアナト基含有芳香族骨格(Cy2)」と略記する)とを樹脂構造中に有するものであり、これらの 構造部位が上記一般式(1)および(2)のいずれか1つによって結節された樹脂構造を有するものである。
ここで、シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)としては、例えば、下記構造式Cy1−1〜Cy1−13で表されるものが挙げられる。
Figure 0005686054
ここで、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
本発明では、これらのなかでも、低粘度で、硬化性、耐熱性、耐湿耐半田性に優れる点では前記構造式Cy1−1のフェニル骨格を有するものが好ましい。また、前記構造式Cy1−4に代表されるようにフェニル骨格にメチル基を有するものは、耐熱性と耐湿耐半田性の改善効果が顕著なものとなり好ましい。また、シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)が分子末端に位置する場合には、下記構造式Cy1−14〜Cy1−22で表されるものが挙げられる。
Figure 0005686054
ここで、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
本発明では、これらのなかでも、低粘度で、硬化性、耐熱性、耐湿耐半田性に優れる点では前記構造式Cy1−14のフェニル骨格を有するものが好ましい。また、前記構造式Cy1−15、Cy1−20、Cy1−22に代表されるようにフェニル骨格にメチル基を有するものは、耐熱性と耐湿耐半田性の改善効果が顕著なものとなり好ましい。
一方、芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有しない、前記シアナト基含有芳香族骨格(Cy2)は、具体的には、下記構造式Cy2−1〜Cy2−17で表されるものが挙げられ、フェニレン、ナフチレン及びこれらの芳香核上の置換基としてアルキル基を有する化合物から形成される芳香族炭化水素基であることが、耐熱性と耐湿耐半田性に優れる点から好ましい。
Figure 0005686054
ここで、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
本発明では、これらのなかでも、特に、硬化性に優れる点ではCy2−1、耐湿耐半田性の点からはCy2−4が好ましい。
次に、シアネート樹脂の樹脂構造中に有する、2価の結節基(X)は、前記したとおり、下記一般式(1)および(2)から選ばれる少なくとも1種である。すなわち、
Figure 0005686054
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のメチル基、メトキシ基又は水酸基で置換されていてもよいアリール基を表し、Rは独立的に水素原子又はメチル基、Arはフェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。)で表されるものであり、具体的には、下記X1〜X11で表される構造のものが挙げられる。
Figure 0005686054
これらの中でも特に耐熱性と難燃性に優れる点ではX1、X6、難燃性と耐湿耐半田性に優れる点ではX7が好ましい。
本発明のシアネート樹脂は、シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)及びシアナト基含有芳香族骨格(Cy2)が、2価の結節基(X)を介してシアナト基含有芳香族骨格(Cy1)又はシアナト基含有芳香族骨格(Cy2)と結合された樹脂構造を有するものであり、これらの結合の形態は任意の組み合わせを採り得る。このような各構成部位から構成されるシアナト樹脂の分子構造は、シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)を「CY1」、シアナト基含有芳香族骨格(Cy2)を「CY2」、2価の結節基(X)を「X」で表した場合、下記部分構造式B1及びB2で表される構造部位
Figure 0005686054
を繰り返し単位とするランダム共重合体、若しくはブロック共重合体、B2を繰り返し単位とする重合体ブロックの分子鎖中にB1が存在する重合体、或いは、下記構造式B3〜B8
Figure 0005686054
で表される構造部位を分岐点として樹脂構造中に有する重合体、或いは、これら自体を繰り返し単位とする重合体であって、その樹脂構造の末端に下記構造式B9又はB10
Figure 0005686054
で表される構造を有するものが挙げられる。
本発明では、このような特徴的な化学構造を有することから、分子構造中の芳香族含有率が高くなり、硬化物に優れた耐熱性と難燃性を付与することができる。特に、本発明のシアネート樹脂の基本骨格となるシアナト基含有芳香族骨格(Cy1)又はシアナト基含有芳香族骨格(Cy2)を構成する芳香核がフェニレン又はアルキル置換フェニレン基で構成されるものが耐湿耐半田性の改善効果が大きくなる点から好ましい。フェニレン基又はアルキル置換フェニレン基で構成されることにより、硬化物に靭性をもたらし、また、側鎖として配置された縮合多環骨格が低粘度を発現させる為、低熱膨張で密着性を改善して耐湿耐半田性が飛躍的に改善される他、難燃性を向上させることができる。
また、前記シアネート樹脂において、シアナト基含有芳香族骨格(Cy1)中に存在するナフチルメチル基又はアントニルメチル基は、下記構造式(3)又は下記構造式(4)
Figure 0005686054
で表されるように多重化した構造を有するものであってもよい。ここで、上記構造式(3)又は構造式(4)は、その平均が0〜5の値を採りうるが、本発明では優れた難燃性を発現する点から多重化していないもの、即ちnが0のものが好ましい。これらのなかでも特に流動性、難燃性の点からナフチルメチル基であることが好ましい。
更に、本発明のシアネート樹脂は、その芳香核に前記結節基(X)を介してアルコキシ基含有芳香族炭化水素基又はアルキルチオ基含有芳香族炭化水素基が結合していてもよく、かかるアルコキシ基含有芳香族炭化水素基又はアルキルチオ基含有芳香族炭化水素基は、例えば、下記構造式A1〜A13で表されるものが挙げられる。
Figure 0005686054
本発明においては、前記シアネート樹脂は、アルコキシ基含有芳香族炭化水素基をその樹脂構造中に含む場合、該アルコキシ基含有芳香族炭化水素基は、前記構造式A8で表される構造を有するものが硬化物の耐熱性、難燃性に優れ、且つ誘電正接を著しく低減できることができる点から好ましい。
また、前記シアネート樹脂は、ICI粘度計で測定した180℃における溶融粘度が0.1〜100dPa・sの範囲であるのものが、特に、180℃で0.1〜20dPa・sのものが成形時の流動性や耐湿耐半田性に優れる点で好ましい。更に、前記シアネート樹脂は、その水酸基当量が、120〜500g/eq.の範囲のものが、硬化物の耐熱性と難燃性が一層良好となる点から好ましい。また、上記水酸基当量は、特に150〜300g/eq.の範囲のであることが、硬化物の耐湿耐半田性と難燃性、並びに、組成物の硬化性とのバランスが特に優れたものとなる点から好ましい。
更に、本発明においては、前記芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有するシアナト基含有芳香族炭化水素基(Cy1)と、前記芳香核にナフチルメチル基又はアントニルメチル基を有しないシアナト基含有芳香族炭化水素基(Cy2)の合計総数を100としたとき、前記ナフチルメチル基又はアントニルメチル基の総数が10〜200となる割合であることが、硬化物の難燃性と耐湿耐半田性が一層良好となる点から好ましい。特に、15〜120の割合となることが硬化性、成形性、耐湿信頼性、及び難燃性の改善効果が高くなることから好ましい。更に20〜100の範囲にあることが、シリカ等の充填材の親和性やガラス基材への含浸性に優れ、特に本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましく、とりわけ20〜80、さらには20〜60の割合であることが好ましい。
本発明のシアネート樹脂は、公知慣用のシアン酸エステル化反応をフェノール系樹脂に対して用いて製造することができる。例えば、下記構造式
Figure 0005686054
(式中、n、mはそれぞれ独立して0より大きい整数である。)
で表されるフェノール樹脂、下記構造式
Figure 0005686054
(式中、n、mはそれぞれ独立して0より大きい整数である。)
で表されるフェノール樹脂、又は下記構造式
Figure 0005686054
(式中、n、mはそれぞれ独立して0より大きい整数である。)
で表されるフェノール樹脂などのフェノール系樹脂と塩化シアンや臭化シアンなどのハロゲン化シアン化合物とを有機溶媒に溶解させて、それに−5℃〜15℃で脱ハロゲン化水素剤を加え、この際に生じたハロゲン化水素酸塩を水洗等で除去した後、有機溶媒を留去する方法などが挙げられる。その際、ハロゲン化シアン化合物は、フェノール性水酸基に対して当量から過剰量となるように添加すれば良く、例えば、フェノール性水酸基1当量に対して、ハロゲン化シアン化合物が1〜1.5モルの範囲が好ましい。また、この際に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N,N-ジメチルホルムアミドのような非プロトン系極性溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル類が好適である。また、2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。また、脱ハロゲン化水素剤としては3級アミンであれば特に制限はないが、トリエチルアミンやピリジン等を用いることができる。脱ハロゲン化水素剤の使用量はハロゲン化シアン化合物1モルに対して、0.01〜1.5モルの範囲である。
また、本発明で用いる上記フェノール系樹脂は、例えば以下の方法で製造することができる。即ち、下記構造式
Figure 0005686054
(式中、nは0以上の整数である。)
で表されるフェノールアラルキル樹脂、下記構造式
Figure 0005686054
(式中、nは0以上の整数である。)
で表されるビフェニルノボラック樹脂、又は下記構造式
Figure 0005686054
(式中、nは0以上の整数である。)
で表されるナフトールアラルキル樹脂などの2価アラルキル基含有のフェノール樹脂と、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤とを反応させる方法(方法1)、フェノール化合物(Ph1’)を2価のアラルキル化剤(X’)と反応させてアラルキル型フェノール樹脂を製造した後、これをナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤と反応させる方法(方法2)、ノボラック樹脂と、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤とを反応させる方法(方法3)、或いは、フェノール化合物(Ph1’)を2価のアラルキル化剤(X’)と反応させてアラルキル型フェノール樹脂を製造した後、これをナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤と反応させる方法(方法4)などが挙げられる。
方法2または方法4において使用できるフェノール化合物(Ph1’)としては、例えば、フェノール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの無置換フェノール系化合物、クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、t−ブチルフェノールなどの一置換フェノール系化合物、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチルヘキシルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノールなどの二置換フェノール系化合物、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等の三置換フェノール系化合物、1−ナフトール、2−ナフトール、メチルナフトールなどのナフトール類などのフェノール系化合物等が挙げられる。
これらのなかでも、硬化物の難燃性と耐湿耐半田性及び組成物が流動性に優れる点から1−ナフトール、2−ナフトール、クレゾール、フェノールが特に好ましい。
また、2価のアラルキル化剤(X’)は、具体的には、1,2−ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,2−ジ(ブロモメチル)ベンゼン、1,3−ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,3−ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ジ(ブロモメチル)ベンゼン、1,4−ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジ(クロロメチル)−2,5−ジメチルベンゼン、1,3−ジ(クロロメチル)−4,6−ジメチルベンゼン、1,3−ジ(クロロメチル)−2,4−ジメチルベンゼン、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,4
’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,3’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ジフェニルエーテル、2,7−ジ(クロロメチル)ナフタレン、p−キシリレングリコール、m−キシレングリコール、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−エチル)ベンゼン、4,4’−ビス(ジメチロール)ビフェニル、2,4’−ビス(ジメチロール)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ビフェニル、2,4’−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ビフェニル、1,4’−ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,4’−ジ(エトキシメチル)ベンゼン、1,4’−ジ(イソプロポキシ)ベンゼン、1,4’−ジ(ブトキシ)ベンゼン、1,3’−ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,3’−ジ(エトキシメチル)ベンゼン、1,3’−ジ(イソプロポキシ)ベンゼン、1,3’−ジ(ブトキシ)ベンゼン、1,4−ジ(2−メトキシ−2−エチル)ベンゼン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−エチル)ベンゼン、1,4−ジ(2−エトキシ−2−エチル)ベンゼン、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,3’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(エトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(イソプロポキシ)メチルビフェニル、2,4’−ビス(イソプロポキシ)メチルビフェニル、ビス(1−メトキシ−1−エチル)ビフェニル、ビス(1−メトキシ−1−エチル)ビフェニル、ビス(1−イソプロポキシ−1−エチル)ビフェニル、ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ビフェニル、ビス(2−メトキシ−2−プロピル)ビフェニル、ビス(2−イソプロポキシ−2−プロピル)ビフェニル、p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、4,4’−ビス(ビニル)ビフェニルが挙げられる。
ここで、フェノール化合物(Ph1’)と2価のアラルキル化剤(X’)との反応はアラルキル化剤に対して過剰量のフェノール性化合物が使用される。縮合剤の使用量は、フェノール性化合物1モルに対して0.01〜1.0モルの範囲であるが、0.01〜0.7モル、0.05〜0.5モルの範囲である。これより多いと、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤を反応させた後の樹脂の粘度が高くなり成形性、含浸性に支障をきたし、本発明の効果を十分発揮することができない。
この反応は酸触媒の存在下に行うことがよく、この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。このような酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいは、活性白土、シリカ−アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
方法2における上記反応は、10〜250度(摂氏)で1〜20時間行うことができる。更に、反応溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を使用してもよい。
反応終了後、場合により、中和、水洗等の方法により、触媒を除去し、必要に応じて残存する溶媒及び未反応フェノール性化合物を減圧留去等の方法により系外に除き、多価ヒドロキシ樹脂とする。未反応フェノール性化合物は、通常、3%以下、好ましくは1%以下とする。これより多いと硬化物とした場合の耐熱性が低下する。但し、反応に2価以上のフェノール性化合物を用いる場合は、反応後、残存するフェノール性化合物を除かなくてもよい。
また、カルボニル化合物(X’)は、具体的には、次に、カルボニル基含有化合物(a3)は、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族系アルデヒド、グリオキザール等のジアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の芳香族系アルデヒド、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン等のケトン化合物が挙げられる。
これらのなかでも得られる硬化物の難燃性にすぐれる点からホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒドが好ましい。
ここで、フェノール化合物(Ph1’)とカルボニル化合物(X’)との反応は、フェノール化合物(Ph1’)1モルに対し、カルボニル化合物(X’)を0.01〜0.9モルを触媒の存在下、加熱することで得られる。これより多いと、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤を反応させた後の樹脂の粘度が高くなり成形性、含浸性に支障をきたし、本発明の効果を十分発揮することができない。ここで用いる重合触媒としては、特に限定されるものではないが、酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総質量に対して、0.1〜5質量%なる範囲であることが好ましい。
この反応を行う際、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機溶剤の使用量としては仕込み原料の総質量に対して通常10〜500質量%、好ましくは30〜250質量%である。また反応温度としては通常40〜250℃であり、100〜200℃の範囲がより好ましい。また反応時間としては通常1〜20時間である。
また得られる該多価ヒドロキシ化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。前記酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。前記還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩や亜鉛などが挙げられる。
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば酸触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることができる。中和の際には、事前にリン酸等のバッファーを入れておいても良いし、また、一旦塩基サイドにしたのちシュウ酸などでpH値が3〜7としてもよい。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で、主にフェノール化合物(Ph1’)を含む未反応原料や有機溶剤、副生物を留去し生成物の濃縮を行い、目的の多価ヒドロキシ化合物を得ることが出来る。ここで回収した未反応原料は再利用することもできる。反応終了後の処理操作のなかに、精密濾過工程を導入すると、無機塩や異物類を精製除去することができる点でより好ましい。
次に、前記方法1〜方法4において用いられるナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤は、具体的には、1−ナフチルメチルクロリド、2−ナフチルメチルクロリド、(9−アントリルメチル)クロリド、1−メトキシメチルナフタレン、1−ナフチルメタノール、2−メトキシメチルメチルナフタレン、2−ナフチルメタノール、9−(メトキシメチル)アントラセンが挙げられる。これらの中ででも反応触媒を使用せずに反応でき、反応後の精製工程が不要となる点で、1−ナフチルメチルクロリド、2−ナフチルメチルクロリド、(9−アントリルメチル)クロリドが好ましい。
方法1〜方法4における、フェノール系樹脂と、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤との反応は、50〜200℃の温度条件、好ましくは70〜180℃の反応条件下に行うことができる。ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤の使用量はフェノール系樹脂中の水酸基1モルに対して0.01モル〜2モルの範囲、好ましくは0.03モル〜1モルの範囲である。反応に際し、反応触媒を用いる場合は、酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総質量に対して、0.1〜5質量%なる範囲であることが好ましい。
また、ナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤として、1−ナフチルメチルクロリド、2−ナフチルメチルクロリド、(9−アントリルメチル)クロリドを用いる場合は、特に反応触媒を用いる必要がなく、自己発生するハロゲン化水素により反応することが可能である。反応初期にハロゲン化水素の発生が起こらない場合、水や塩酸を0.1質量%から5質量%程度加えて、ハロゲン化水素の自己発生を促進することができる。この時、発生する塩化水素ガスは、速やかに系外に放出し、アルカリ水などにより中和、無害化することが望ましい。
反応時間は、原料であるナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤が消失すればよく、一般的に1時間〜50時間程度である。1−ナフチルメチルクロリド、2−ナフチルメチルクロリド、(9−アントリルメチル)クロリドを用いる場合は実質的に塩化水素ガスの発生が無くなり、原料であるクロライド化合物が消失し、且つ原料であるナフチルメチル化剤又はアントニルメチル化剤由来の塩素分が検出されなくなるまでであり、反応温度にもよるが、実際の反応においては、反応温度は速やかに塩化水素ガスが発生し、且つ安定して系外に放出できる程度にコントロールできる温度が望ましく、この様な反応温度において反応時間は1時間〜25時間程度である。
また、反応の終点は、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により原料のキシリレンジクロライドの消失を確認し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布に変動が無くなること、並びに屈折率の変動が無くなることを確認して決定することが望ましい。
更に、最終的に得られた樹脂の溶融粘度が変動しなくなるまでの条件を確認して決定することが望ましい。
ここでいう溶融粘度とは、ICIコーンプレート粘度計やB型粘度計、E型粘度計等、いずれの測定方法でも構わない。
この様にして得られた反応生成物には、未反応フェノール化合物が多量に残存しており、蒸留、水洗等任意の方法で未反応フェノールを除去することにより本発明のフェノール系樹脂が得られる。
この反応を行う際、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。但し、1−ナフチルメチルクロリド、2−ナフチルメチルクロリド、(9−アントリルメチル)クロリドを用いる場合は、副反応が起こるためアルコール系有機溶剤は使用しない方が好ましい。
有機溶剤の使用量としては仕込み原料の総質量に対して通常10〜500質量%、好ましくは30〜250質量%である。
また得られる該多価ヒドロキシ化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。前記酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。前記還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩や亜鉛などが挙げられる。
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば酸触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることができる。中和の際には、事前にリン酸等のバッファーを入れておいても良いし、また、一旦塩基サイドにしたのちシュウ酸などでpH値が3〜7としてもよい。
次に本発明の熱硬化性樹脂組成物を詳述する。この組成物には、本発明のシアネート樹脂の単量体を単独で使用してもよいが、必要に応じて、該化合物以外に、当該シアネート樹脂中のシアナト基が環状3量化してトリアジン骨格(シアヌレート構造)を形成した、シアネート樹脂プレポリマーを併用してもよい。
特に、熱硬化性樹脂組成物として後述の有機溶媒に溶解している場合、或いは後述のそれ以外の樹脂を併用している場合は、シアネート樹脂プレポリマーが混合されていることが好ましい。この場合のシアネート樹脂(単量体)とシアネート樹脂プレポリマーの混合比率は、混合物中の全シアナト基の5〜50モル%が環状3量化している様に混合することが、有機溶媒やそれ以外の樹脂との相溶性の面から好ましい。
前記環状3量化の方法は特に限定されるものではないが、前記シアン酸エステル化合物の単量体を、触媒の存在下、例えば、100〜160℃で、必要に応じて有機溶媒を用い0.5〜15時間反応させることで得ることができる。前記触媒としては、例えばフェノール類、鉱酸やルイス酸等の酸類、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩や炭酸ナトリウムなどの塩類を用いることができる。
このシアネート樹脂(単量体)、或いはシアネート樹脂プレポリマーとしては、これを1種類で使用してもよく、2種類以上のシアネート樹脂(単量体)、及び/またはシアネート樹脂プレポリマーを混合使用しても良い。
また本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その他の樹脂として、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スピロピラン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイドなど熱可塑性樹脂の1種類以上の樹脂と混合して使用しても良い。これらの中でも、得られる硬化物が耐熱性と耐湿信頼性に優れることからエポキシ樹脂とフェノール樹脂が好ましい。
具体的にエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
またフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。またこれらのフェノール樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
前記フェノール樹脂の中でも、特に耐熱性が優れる点では、例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂類が特に好ましく、耐湿性が優れる点では、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂が特に好ましく、難燃性が優れる点では、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が特に好ましい。
これらのその他の樹脂類を本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合して使用する際の配合比に関しては特に限定されるものではないが、硬化を速める、または、プリプレグ用のマトリックス樹脂として使用し、プレスによって積層板を作製する際のプレス温度を下げる等の場合には、本発明の熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、その他の樹脂類を30重量部〜70重量部配合することが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、170〜300℃で、必要に応じて触媒としてフェノール類或いはアミン化合物を用いて反応させることによって、硬化物を得ることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の使用用途としては、積層板や電子回路基板等に用いられるプリプレグ等のマトリックス樹脂、その他高周波特性を必要とする注型材料、接着剤及び絶縁塗料等のコーティング材料等が挙げられ、これらの中でも、電子回路基板用のマトリックス樹脂に好適に用いることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物をプリプレグのマトリックス樹脂として使用する場合、該組成物とフェノール化合物、硬化触媒の混合物をこれらが可溶な溶媒に溶解したワニスを調製する。このワニスを通常の方法で基材に含浸し乾燥し半硬化させることによって、プリプレグを得る。
前記硬化触媒としてはイミダゾール類、第3級アミン、有機金属化合物等が挙げられる。これらの中でも、有機金属化合物が好ましく、例えばオクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。
前記フェノール化合物は硬化促進の目的で用いられるが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の各種ビスフェノール類やノニルフェノール等が挙げられる。
前記溶媒としては、熱硬化性樹脂組成物を溶解させられるものであれば特に限定されるものではないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類やトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、エタノール、メタノール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等の単独あるいは混合溶媒が挙げられ、これらの中でも芳香族系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が好ましい。
前記基材としては繊維状物質からなる基材が好ましく、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス基材、クラフト紙、リンター紙などの紙基材、アラミド不織布、アラミド織布などの合成繊維基材の単体または複合が挙げられる。
また必要に応じて、無機フィラーを混合しても良い。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミ、クレー、タルク、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーン等を単独で混合しても良いし、2種類以上を混合使用してもよい。
また本発明における熱硬化性樹脂組成物を加熱溶解させて前記基材に含浸させてプリプレグを作製することもできる。この際、前記フェノール化合物と前記硬化触媒を加熱溶解した樹脂に配合することもできる。
前記の熱硬化性樹脂組成物を本発明の電子回路基板用樹脂組成物に調製する場合は、本発明のシアネート樹脂を必須成分とし、好ましくは本発明のシアネート樹脂と前記シアネート樹脂プレポリマーとを併用し、それ以外に必要に応じて、更にエポキシ樹脂、フェノール樹脂等を配合してもよい。また、前記プリプレグのマトリックス樹脂用として調製した熱硬化性樹脂組成物をそのまま本発明の電子回路基板用樹脂組成物として用いることもできる。この際の溶剤の使用量は、電子回路基板用樹脂組成物100重量部中で通常10〜70重量部、好ましくは15〜65重量部、特に好ましくは30〜65重量部を占める量を用いる。なお、前記電子回路基板としては、例えば、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
電子回路基板の作製手法は、様々な方法があり特に限定されるものではないが、例えば、(1)積層プレス法、(2)加圧連続製造法、(3)無圧連続製造法が挙げられる。これらのうち(1)及び(2)は、前記プリプレグのマトリックス樹脂として本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用した方法と同様の手法でプリプレグを得た後、後述の方法で電子回路基板を得ることができる。
前記の電子回路基板の作製方法を詳細に説明するならば、(1)積層プレス法は、熱硬化性樹脂組成物を含浸し、溶剤除去後、半硬化しプリプレグを通常の方法でプレス熱板間にセットして上下に金属箔を配して加熱加圧硬化させることによって両面金属張積層板を製造する。(2)加圧連続積層法は、紙管に連続的に巻取ったプリプレグと金属箔を用いることにより、積層板を得る。(3)無圧連続積層法は、連続的に繰り出される複数の基材に対して、加熱溶解した熱硬化性樹脂組成物を連続的に含浸した後、これらの含浸基材を金属箔と連続的に積層し、硬化させることによって金属張積層板を得る。
また本発明の熱硬化性樹脂組成物を接着剤や塗料等のコーティング材料として使用する場合は、該組成物を溶融してコーティングしても良いし、該組成物を前記溶剤に溶解したものを通常の方法でコーティングした後、溶剤を乾燥除去させ硬化させても良い。この際、必要に応じて、前記硬化触媒を使用してもよい。また、前記の無機フィラー等を混合しても良い。
以下本発明の実施例について説明する。
〔合成例1〕 原料となる多価フェノール樹脂の合成(A−1)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、下記構造式
Figure 0005686054
で表されるフェノールノボラック樹脂(昭和高分子製「M−70G」軟化点70℃、水酸基当量103g/eq)103.0g、メチルイソブチルケトン103.0gを仕込み、115℃まで昇温した。昇温後、予めメチルイソブチルケトン88.8g1−クロロメチルナフタレン88.8g(0.50モル)の混合液を、115℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、120℃で1時間、更に150℃で3時間反応させフェノール樹脂(A−1)161gを得た。得られたフェノール樹脂の軟化点は105℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は16.1dPa・s、水酸基当量は173g/eq.であった。
得られたフェノール樹脂(A−1)のGPCチャートを図1に、C13 NMRチャートを図2に、MSスペクトルを図3に示す。上記分析により、前記一般式(Cy1−1)に該当するメチルナフチル基の存在を確認した。また、フェノール性水酸基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は50の割合であった。
〔合成例2〕 原料となる多価フェノール樹脂の合成(A−2)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、下記構造式
Figure 0005686054
で表されるフェノールアラルキル樹脂(三井化学製「ミレックスXLC−4L」軟化点63℃、水酸基当量168)168.0g(水酸基1当量)とメチルイソブチルケトン168.0gを仕込み、115℃まで昇温した。昇温後、予めメチルイソブチルケトン88.8gと1−クロロメチルナフタレン88.8g(0.50モル)の混合液を、115℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、120℃で1時間、更に150℃で3時間反応させフェノール樹脂(A−2)225gを得た。得られたフェノール樹脂(A−2)の軟化点は95℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は9.2dPa・s、水酸基当量は238g/eq.であった。
得られたフェノール樹脂(A−2)のGPCチャートを図4に、C13 NMRチャートを図5に、MSスペクトルを図6に示す。上記分析により、前記一般式(Cy1−1)に該当するメチルナフチル基の存在を確認した。また、フェノール性水酸基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は50となる割合であった。
〔合成例3〕 原料となる多価フェノール樹脂の合成(A−3)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、下記構造式
Figure 0005686054
で表されるビフェニルノボラック樹脂(明和化成製「MEH−7851SS」軟化点67℃、水酸基当量200g/eq)200g(水酸基1当量)とメチルイソブチルケトン200.0gを仕込み、115℃まで昇温した。昇温後、予めメチルイソブチルケトン88.8gと1−クロロメチルナフタレン88.8g(0.50モル)の混合液を、115℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、120℃で1時間、更に150℃で3時間反応させフェノール樹脂(A−3)254gを得た。
得られたフェノール樹脂(A−3)の軟化点は91℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は4.7dPa・s、水酸基当量は234g/eq.であった。
得られたフェノール樹脂(A−3)のGPCチャートを図7に、C13 NMRチャートを図8に、MSスペクトルを図9に示す。上記分析により、前記一般式(Cy1−1)に該当するメチルナフチル基の存在を確認した。また、フェノール性水酸基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は50となる割合であった。
続いてフェノール樹脂(A−3)47.0gとビフェニルノボラック樹脂(明和化成製「MEH−7851SS」軟化点67℃、水酸基当量200g/eq)52.0gを仕込み、130℃で1時間混合しフェノール樹脂(A−4)を得た。得られたフェノール樹脂(A−4)の軟化点は79℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は2.1dPa・s、水酸基当量は234g/eq.であった。
得られたフェノール樹脂(A−4)のGPCチャートを図10に示す。また、フェノール性水酸基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は20となる割合であった。
〔実施例1〕 シアン酸エステル(B−1)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、臭化シアン106g(1.0モル)と合成例1で合成した多価フェノール樹脂(A−1)86.5g(0.5モル)を仕込みアセトン1000gに溶解させた後、−3℃に冷却した。次に、トリエチルアミン111g(1.1モル)を滴下ロートに仕込み、攪拌しながらフラスコ内温が10℃以上にならない様な速度で滴下した。滴下終了後、2時間10℃以下の温度下で攪拌し、生じた沈澱を濾過により除いた。その後、アセトンを除去、塩化メチレン1000gを加え、水洗することにより樹脂を得た。IRスペクトルは2260cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さず、またマススペクトルはM=390のピークを示したことから、下記の構造式で表される構造を有する目的のシアネート樹脂(B−1)であることが確認された。シアナト基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は50の割合であった。
Figure 0005686054
〔実施例2〕 シアン酸エステル(B−2)の合成
実施例1の多価フェノール樹脂(A−1)を多価フェノール樹脂(A−2)に変更する以外は、実施例1と同様の操作で、下記構造式で表される構造を有するシアネート樹脂(B−2)を得た。シアナト基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は50となる割合であった。
Figure 0005686054
IRスペクトルは2260cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さず、またマススペクトルはM=480のピークを示したことから、下記の構造式で表される目的のシアン酸エステル化合物(B−2)であることを確認した。
〔実施例3〕 シアン酸エステル(B−3)の合成
実施例1の多価フェノール樹脂(A−1)を多価フェノール樹脂(A−4)に変更する以外は、実施例1と同様の操作で、下記構造式で表される構造を有するシアネート樹脂(B−3)を得た。シアナト基含有芳香族骨格の総数100に対してメチルナフチル基の総数は20となる割合であった。
Figure 0005686054
IRスペクトルは2260cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、かつ水酸基の吸収は示さず、またマススペクトルはM=556のピークを示したことから、下記の構造式で表される目的のシアン酸エステル化合物(B−3)であることを確認した。
〔実施例4〜6〕組成物及び成形物の作成
実施例1〜3で得られたシアン酸エステル化合物(B−1)、(B−2)、(B−3)、エポキシ樹脂としてビスフェノールF(BPF)型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 「830−S」)、フェール・ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 「NC−3000」)、フェノール樹脂としてフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製 「TD−2131」)、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 「CL303」)、溶融シリカ(電気化学株式会社製 「FB3SDC」)、ジメチルベンジルアミン、オクチル酸亜鉛を表1に示したとおりに混合し、プレスで200℃の温度で10分間成型した後、200℃の温度で5時間後硬化して厚さ0.8mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価結果を表1に示す。
〔比較例1〕組成物及び成形物の作成
比較用のシアネート樹脂およびエポキシ樹脂には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製 EPICLON N−680、表中「N−680」と表記する)、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ製「PT−30」)、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンとのプレポリマー(三菱ガス化学株式会社製 「BT2070」)、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 「CL303」)、溶融シリカ(電気化学株式会社製 「FB3SDC」)、ジメチルベンジルアミン、オクチル酸亜鉛を表1に示したとおりに混合して、プレスで200℃の温度で10分間成型した後、200℃の温度で5時間後硬化して厚さ0.8mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価結果を表1に示す。
<ガラス転移温度>
厚さ0.8mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片1とした。この試験片1を粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片1の1GHzでの誘電正接を測定した。
<耐吸湿性>
厚さ0.8mmの硬化物を幅25mm、長さ75mmのサイズに切り出し、試験片2とした。この試験片2を用いて85℃/85%RHの雰囲気下168時間放置し、処理前後の重量変化を測定した
<ハンダリフロー性>
試験片2を10個作成した後、85℃/85%RHの雰囲気下168時間放置し、吸湿処理を行った後、これを260℃のハンダ浴に10秒間浸漬させた際、クラックの発生した試験片の数を数えた。
<難燃性>
厚さ0.8mmの硬化物を幅12.7mm、長さ127mmに切り出し、試験片3とした。この試験片3を用いてUL−94試験法に準拠し、試験片5本を用いて、燃焼試験を行った。
*1:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
*2:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
Figure 0005686054

Claims (6)

  1. 複数のシアナト基含有芳香族骨格(Cy)が、下記一般式(1)および(2)のいずれか1つの結節基(X)を介して結合した構造を基本骨格とするシアネート樹脂構造を有し、かつ、該シアナト基含芳香核にナフチルメチル基又はアントリルメチル基を有し、かつ、前記シアナト基含有芳香族骨格(Cy)の総数を100とした場合に、前記ナフチルメチル基又はアントリルメチル基の総数が10〜200となる割合であることを特徴とするシアネート樹脂。
    Figure 0005686054
    (式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のメチル基、メトキシ基又は水酸基で置換されていてもよいアリール基を表し、Rは独立的に水素原子又はメチル基、Arはフェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。)
  2. 請求項1記載のシアネート樹脂とエポキシ樹脂および/又はフェノール樹脂を必須成分とすることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項2記載の熱硬化性組成物に、更に無機フィラーを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項2又は3記載の熱硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
  5. 請求項2又は3記載の熱硬化性組成物と基材からなるプリプレグ。
  6. 請求項2又は3記載の組成物を加熱硬化することを特徴とする電子回路基板。
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