JP5665320B2 - 多目標追尾装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーダ等のセンサから得られた観測値から、複数の目標の運動諸元を推定する多目標追尾装置に関するもので、特に、既追尾目標から分離した目標の航跡の確立を早期にかつ正確に行える様に工夫した多目標追尾装置に関するものである。
目標の位置や速度等の運動諸元を推定する目標追尾では、レーダ等のセンサから得られる観測値を、ある目標からのものか、それとも、不要信号であるかを判定する相関決定処理を行い、同一目標とされた観測値の時系列から航跡を生成し、目標の運動諸元を算出する。
相関判定処理では、観測値をある目標からのものと判定した場合、それが既に追尾を行っている目標のものであるのか(既存の目標が複数ある場合はそのうちのどれであるのか)、新たに発生した目標なのかを判定する。この判定には、既存目標の航跡の速度推定値から該当時刻における位置を算出した予測値を中心とする空間領域であるゲートを利用する。このゲートの大きさについては、追尾目標からの観測値がこのゲート内で観測される確率が、例えば0.9以上といった高い確率となる様設定される。このゲート内に入った観測値は既存目標からのものである可能性が高く、どのゲートにも入らなかった観測値は不用信号または新目標、すなわちそれまで未知だった目標である可能性が高いといえる。既存目標から得られたと判定された観測値については、その既存目標の航跡が持つ予測値との重み付け統合により、観測値が得られたサンプリング時刻における目標の真の位置と速度の推定値、すなわち、平滑値が算出される。
図12に、航跡と観測値の相関の例を示す。現サンプリング時刻t=3で、30,31,32,33の4つの観測値が得られている。目標0の航跡(観測値00,10,20によって構成される航跡)のゲートには観測値30,31が入り、目標1の航跡(観測値00,11,21によって構成される航跡)のゲートには観測値32が入る。観測値33はどちらのゲートにも入らない。このとき、一つの可能性としては、「観測値30:目標0、観測値31:不要信号、観測値32:目標1、観測値33:新目標」というものがあるし、別の可能性として、「観測値30:不要信号、観測値31:目標0、観測値32:目標1、観測値33:不要信号」も考えられる。この様に可能性が多くある状況で、割り当てをサンプリング時刻毎に一意に決定してしまうと、それが誤りであった場合には目標の追跡に失敗する危険性が高くなる。この問題を回避するために、割り当てを仮説として複数設けて観測値と目標の相関を仮説毎に決定し、十分時間が経過した時点で最も良い仮説を残せば、より正確な相関決定が可能である。このやり方に基づいた目標追尾技術は数多く提案されており、その一例が、特許文献1に示されている。この手法では、観測値とその組み合わせである航跡、航跡の組み合わせである仮説を、互いに観測値を共有しないクラスタ毎に処理することにより、処理の効率化を図っている。
ここで、従来技術の手順図を図10に、装置構成図を図9に示す。以下、この手順図および装置構成図に従って、従来技術の動作を説明する。
まず、ステップS100の「観測値入力」で、観測値選択部100がその時刻の観測値を、センサ110から読み込む。
次のステップS101の「ゲート内判定」で、観測値選択部100が、ゲート算出部107が算出した既存航跡のゲートと観測値の相関具合を調べ、入ってきた観測値がどのクラスタに属するのか決定する。
これらのステップS100,S101の処理について、以下、図11〜13までの図を例として説明する。あるクラスタにおいて、時刻t=0から時刻t=2までに、3サンプリングで、5つの観測値があり、図11の様な状態であったとする。この時、航跡は観測値の組で表記して、
T1: 10−20
T2: 10−21
T3: 11−20
T4: 11−21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1、T4}rel1
H2:{T1、T6}rel2
H3:{T2、T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
である。このとき、ステップS100の「観測値入力」で、時刻t=3で、観測値30,31,32,33が入り、ステップS101の「ゲート内判定」で、30,31がT1,T3,T5の航跡のゲートに、32がT2,T4のゲートに入ったとする。また、33はどの航跡のゲートにも入らなかったとする。
次のステップS102の「航跡および新クラスタの作成」では、クラスタ新設統合部101により、ゲートと観測値の相関具合を元に、航跡が作成される。作成される航跡は以下の3つの種類がある。
(1)更新航跡:既存航跡に、ゲート内に入った観測値を追加して出来る航跡
(2)新航跡:その時刻に入った観測値を起点とする航跡
(3)メモリトラック航跡:既存航跡に対し、「該当する時刻には相関する観測値がなかった」とする航跡
図13の例では、まず更新航跡として、
T11: 10−20−30
T12: 10−20−31
T21: 10−21−32
T31: 11−20−30
T32: 11−20−31
T41: 11−21−32
T51: 20−30
T52: 20−31
T61: 21−32
がある。また、新航跡としては、
T71: 30
T72: 31
T73: 32
が生成され、メモリトラック航跡としては、
T81: 10−20
T82: 10−21
T83: 11−20
T84: 11−21
T85: 20
T86: 21
が作成される。
航跡は新航跡として生成されたばかりの段階では仮航跡であり、その後更新を続け、本航跡として認められるまで仮航跡の状態であり続ける。仮航跡は目標を追跡しているのかどうかの判断が保留されている段階の航跡であり、本航跡は目標を追跡していると判断された状態の航跡である。
また、本ステップS102では、どのクラスタとも相関がなかった観測値については、その観測値を起点とする新たなクラスタを生成する。図13の例では観測値33はどの航跡とも相関がないので、この観測値による新クラスタが生成される。
また、本ステップS102では、この時刻における観測値により後述する同値関係が複数のクラスタ間で発生した場合、それらのクラスタを統合する処理が行われる。
次のステップS103の「クラスタ毎の航跡相関行列作成」では、まず、ゲート内判定行列算出部102によって、各クラスタに相関した観測値に対する解釈の可能性の一覧である、ゲート内判定行列が生成される。
このゲート内判定行列の各行は該当時刻にクラスタと相関した観測値を示している。この例では(図14(a)参照)、第1行が観測値30、第2行が観測値31、第3行が観測値32に相当する。また、列に関しては、第1列は不要信号であることを示し、第2列から第7列までが既存航跡T1〜T6を示し、終わりの3列は新航跡であることを示す。全ての観測値は不要信号である可能性を持っているので、第1列の要素は全て1となる。第2列については、既存航跡T1と相関する観測値は30,31であるので第1,2行が1となり、第3行は0となる。第3〜第7までも同様である。終わりの3列については、3つの新航跡はそれぞれの起点にしか対応できないから、単位行列となる。
次に、航跡相関行列算出部103が、このゲート内判定行列から航跡相関行列を作る。航跡相関行列は、
・1となる要素と同一のゲート内判定行列の要素は必ず1となっている。
・各行で、1となる要素の数は1つのみ
・各列は高々1つの要素が1となる。ただし、第1列はいくつ1の要素があってもよい。
という条件を満たす全ての行列である。これは、各観測値の互いに矛盾しない解釈の組み合わせである。図14(a)に本例におけるゲート内判定行列を示し、図4(b)にそれより得られる航跡相関行列のいくつかの例を示す。
次のステップS104の「仮説の作成」では、仮説更新部104が既存仮説を航跡相関行列によって更新する処理を行う。各仮説の更新では、その中に含まれている航跡以外の航跡の存在を仮定している航跡相関行列を除いた全ての航跡相関行列を使用する。例えば、仮説H1ではT1とT4が参照されている。図14(b)の航跡相関行列(1)〜(5)では、(2)と(3)が航跡T2の存在を仮定しているので、仮説H1の更新には用いられない。H1を(1)によって更新すると、これはt=3の観測値が全て不要信号であることを示しているので、
H11:{T81、T84}
となる。また、H1を(4)によって更新すると、
H12:{T11、T41}
となる。また、H1を(5)によって更新すると、
H13:{T81、T72、T41}
となる。この様にして、可能な仮説と航跡相関行列の組み合わせによって既存仮説を更新し、新たな仮説を生成する。
次のステップS105の「準最適化とクラスタ分離」において、仮説縮小部105が、信頼度の低い仮説の削除、及び/または、似た仮説どうしの統合によって、仮説群を縮小する準最適化処理を実行し、さらに、クラスタ分離部106が、それに伴うクラスタ分離の処理を実行する。準最適化には様々な手法があり、
・信頼度に閾値を設け、それに満たない信頼度を持つ仮説を全て削除する。
・仮説数の上限を設け、信頼度が高い順に、設定した個数の仮説のみを残し、その他を削除する。
・過去サンプリング時刻分の観測値の相関内容が同一の航跡を統合し、さらにその航跡の統合によって内容が同一となった仮説を統合する。
といった手法が知られている。また、クラスタ分離はクラスタ分離部106によって以下の様に航跡間の観測値の共有具合を検査することによって行われる。原則として観測値を共有する航跡を構成する観測値は全て同じクラスタに属していなければならない。例えば、
Ta:11−20−30
Tb:21−32
Tc:20−32
なる3航跡が存在する場合、TaとTc、TbとTcは観測値の共有があり、これらは同一クラスタを構成する。この状況で準最適化によりTcが削除された場合を考える。残りの2航跡は観測値を共有していないので、各々独立にクラスタを構成することができる。
次のステップS106の「航跡確立判定」において、航跡確立判定部108が、仮航跡群の中から、目標を追跡している可能性が極めて高い仮航跡を確立して本航跡に昇格させる処理が行われる。この「目標を追跡している可能性が極めて高い」ことを判定するための条件として、例えば、
・その航跡が残存する全ての仮説に含まれること。
・その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること。
が挙げられる。
最後に、ステップS107の「センサ指示」において、追尾処理で生成された航跡に応じて、センサを向ける方向が決定される。
以上がセンサの1サンプリング時刻分の観測値の装置の処理の流れであり、この1サイクルが終了すると、次の観測値を読み込み、次のサンプリング時刻分の観測値を用いた追尾処理が実行される。
ここで本発明が問題とする、「既追尾目標から複数の目標が分離される」状況とその対処方法について説明する。センサから得られる観測値を利用して目標の軌道である航跡を推定する目標追尾の機能は、
1.未知の目標を探知する、追尾初期化機能
2.既知の目標を追跡する、追尾維持機能
に大別することができる。前者については、各観測値について新たに発生した目標からのものであるとする可能性を考慮する必要があるが、後者については、それが維持対象目標からのものであるかどうかのみを考えればよい。上記に説明した従来の追尾方式でこれらをどの様に実現するかについて説明する。追尾初期化機能では各観測値について新航跡を考慮し、新航跡から更新された仮航跡が確立して本航跡に昇格されることにより目標が探知されたとすればよい。これに対して追尾維持機能では本航跡が始めからあることを仮定しており、各観測値について新航跡を考慮せずに維持対象の本航跡との相関の有無のみを検査する。
追尾維持機能では上記で説明した追尾方式の中で、ゲート内判定行列、航跡相関行列を作る際、新航跡に相当する列が不要となる。しかし遠方からセンサに近づく複数目標を観測する場合、センサの分解能が原因で遠方では1目標として観測されていたものが、ある時点から複数の目標として観測されるという場合が起こる。この様な目標を追尾維持対象とする場合、維持対象目標から一つ、または、それ以上の別目標が分離され、それらと元の既追尾目標全てを追尾しなければならない。この様な場合、上記の追尾維持機能を適用すると、追尾維持機能のみでは、分離された目標のどれか一つのみしか追尾できない。
また、追尾維持および初期化の両機能を備えた追尾方式では、分離された目標のうちのどれか一つを既追尾目標、他を新目標として扱う。新航跡として開始した航跡は仮航跡から成長して本航跡に昇格する。図15に、分離目標を追尾維持および初期化の両機能を備えた追尾方式で追尾した際の観測値と航跡例を示す。この方式により、分離発生した目標の全てを追尾することが可能である。しかし目標が分離発生した直後では、既追尾目標の本航跡と分離発生目標の仮航跡の間で、観測値との相関判定結果に応じた航跡が数多く生成される。この追尾開始は既存の本航跡と仮航跡の相関が定まらず、特定の仮航跡を早期に確定させることが困難となる。
特開平8−271617号公報
目標の分離直後、既追尾目標と分離発生目標が極めて近接して、得られる観測値は図16の様に間隔がセンサの観測誤差の数倍程度の状況が続く。この状況では従来技術では、図17の様に、あるサンプリング時刻において、本体を追尾する本航跡が分離発生目標の観測値と相関したり、分離発生目標を追尾する仮航跡が本体の観測値と相関する仮説が数多く生成される。また、センサの探知抜けや不要信号の存在を仮定するため、仮航跡が1つも生成されない仮説(図17における仮説4がその例である)や、仮航跡が2個以上存在する仮説も生成される。これらの仮説の信頼度が同程度となり、特定の仮航跡の信頼度が上がらず、結果として特定の分離発生目標を追尾する仮航跡を早期に確定させることが困難となってしまう。すなわち、従来方式においては、時間が経過して、二つの目標が離れるまで、目標航跡を確立することができないという問題点があった。
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、多目標相関決定追尾処理と並行して目標数推定を行って、分離目標の存在が確認されたら、多目標相関決定追尾処理で生成された仮航跡群から最も確度の高い航跡を抽出して確立させることによって、早期にかつ正確に目標航跡を確立させることが可能な多目標追尾装置を得ることを目的としている。
この発明は、目標を観測するセンサから得られた観測値を使って目標を追尾するための多目標追尾装置であって、目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成する多目標相関決定追尾処理部と、上記多目標相関決定追尾処理部によって得られた仮航跡のうち、予め設定された条件を満たす航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立する航跡確立判定部と、センサから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算する目標数推定部と、上記目標数推定部によって計算された目標数に関する仮説の信頼度の最大値が予め設定された閾値を超えた場合に、目標数が確定したと判定して、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部と、上記目標数確定判定部によって決定された目標数が上記航跡確立判定部によって確立された航跡の数に一致していないときに、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説中の仮航跡を候補として抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立する航跡確立再判定部と、上記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡のうちの既存の確立航跡と、上記航跡確立判定部または上記航跡確立再判定部によって新たに確立した航跡の予測位置とに、上記センサを向ける様に、上記センサに対して指示を行うセンサ指示部とを備え、上記航跡確立判定部における上記条件は、その航跡が、残存する全ての仮説に含まれること、または、その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること、のいずれか一方である多目標追尾装置である。
この発明は、目標を観測するセンサから得られた観測値を使って目標を追尾するための多目標追尾装置であって、目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成する多目標相関決定追尾処理部と、上記多目標相関決定追尾処理部によって得られた仮航跡のうち、予め設定された条件を満たす航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立する航跡確立判定部と、センサから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算する目標数推定部と、上記目標数推定部によって計算された目標数に関する仮説の信頼度の最大値が予め設定された閾値を超えた場合に、目標数が確定したと判定して、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部と、上記目標数確定判定部によって決定された目標数が上記航跡確立判定部によって確立された航跡の数に一致していないときに、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説中の仮航跡を候補として抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立する航跡確立再判定部と、上記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡のうちの既存の確立航跡と、上記航跡確立判定部または上記航跡確立再判定部によって新たに確立した航跡の予測位置とに、上記センサを向ける様に、上記センサに対して指示を行うセンサ指示部とを備え、上記航跡確立判定部における上記条件は、その航跡が、残存する全ての仮説に含まれること、または、その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること、のいずれか一方である多目標追尾装置であるので、多目標相関決定追尾処理と並行して目標数推定を行って、分離目標の存在が確認されたら、多目標相関決定追尾処理で生成された仮航跡群から最も確度の高い航跡を抽出して確立させることによって、早期にかつ正確に目標航跡を確立させることができる。
本発明の実施の形態1に係る多目標追尾装置の構成を示した構成図である。 本発明の実施の形態1に係る多目標追尾装置の処理の流れを示したフローチャートである。 本発明の実施の形態2に係る多目標追尾装置の構成を示した構成図である。 本発明の実施の形態2に係る多目標追尾装置の処理の流れを示したフローチャートである。 本発明の実施の形態3に係る多目標追尾装置の構成を示した構成図である。 本発明の実施の形態3に係る多目標追尾装置の処理の流れを示したフローチャートである。 本発明の実施の形態4に係る多目標追尾装置の構成を示した構成図である。 本発明の実施の形態4に係る多目標追尾装置の処理の流れを示したフローチャートである。 従来の多目標追尾装置の構成を示した構成図である。 従来の多目標追尾装置の処理の流れを示したフローチャートである。 従来の多目標追尾装置におけるt=2までの観測値処理終了時の例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置における航跡および新クラスタの作成ステップ終了時の例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置における観測値と航跡の相関の例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置におけるゲート内判定行列と航跡相関行列の例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置における分離目標を追尾する例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置における2つの航跡と4サンプリング時刻分の観測値の例を示した説明図である。 従来の多目標追尾装置が生成した仮設の例を示した説明図である。
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る多目標追尾装置について説明を行う。図1は、その装置構成図である。図1において、1は航跡確立判定部、2はセンサ指示部、3は目標数推定部、4は目標数確定判定部、5は航跡確立再判定部、7は多目標相関決定追尾処理部、8はセンサである。
多目標相関決定追尾処理部7は、目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成するものである。多目標相関決定追尾処理部7は、既存の従来の多目標追尾装置で構成することができ、例えば、従来技術の例である図9の構成から、センサ110と、航跡確立判定部108と、センサ指示部109とを除いた、残りの部分200で実現することができる。
また、航跡確立判定部1は、多目標相関決定追尾処理部7によって得られた仮航跡のうち、確度の高い航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立するものである。
目標数推定部3は、センサから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算することによって観測領域に存在する目標の数を推定するものである。
目標数確定判定部4は、目標数推定部3によって計算された目標数に関する仮説の信頼度によって、観測領域における目標数を決定するものである。
航跡確立再判定部5は、目標数確定判定部4によって目標数が決定されたときに、その数に応じて多目標相関決定追尾処理部7の仮航跡の候補を抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立するものである。
センサ指示部2は、多目標相関決定追尾処理部7が生成した仮航跡のうちの既存の確立航跡と、航跡確立判定部1または航跡確立再判定部5によって新たに確立した航跡の予測位置とに、センサ8を向ける様に、センサ8に対して指示を行うものである。
なお、図1に示した、航跡確立判定部1とセンサ指示部2とは、それぞれ、従来技術の図9の航跡確立判定部108とセンサ指示部109と同等の動作を行うものである。
本実施の形態における追尾処理の手順を図2に示す。この図は1サンプリング時刻の観測値の処理を示しており、サンプリング時刻毎にこの処理が繰り返される。以下、このフローチャートに従って追尾処理を説明する。
まず、ステップS00の「観測値入力」において、多目標相関決定追尾処理部7が、最新のサンプリング時刻における観測値を、センサ8から読み込む。
次のステップS01の「多目標相関決定追尾処理」では、多目標相関決定追尾処理部7が、上述した従来の追尾処理を行う。これは、図10における、ステップS101の「ゲート内判定」からステップS105の「準最適化とクラスタ分離」までの処理と同等である。したがって、ここでは、その説明を省略する。
このステップS01の「多目標相関決定追尾処理」の後には、ステップS02の「航跡確立判定」を行う。このステップS02の「航跡確立判定」では、航跡確立判定部1が、航跡の確立判定処理を行うが、これは、図10における、ステップS106の「航跡確立判定」の処理と同等であるため、これについても、ここでは説明を省略する。
また、ステップS01の「多目標相関決定追尾処理」およびステップS02の「航跡確立判定」の処理と並行して、ステップS03の「目標数推定」およびステップS04の「目標数確定判定」の処理を実行する。
ステップS03の「目標数推定」の処理では、目標数推定部3が、目標数に関する仮説を生成し、その信頼度を各サンプリング時刻の観測値数に応じて計算する。この目標数に関する仮説は以下のNmax個である。
・目標数は1である(目標は1回も分離していない)。
・目標数は2である(目標は1回分離した)。
・目標数は3である(目標は2回分離した)。
・・・・・・
・目標数はNmaxである(目標は(Nmax−1)回、分離した)。
このNmax個の目標数に関する仮説の信頼度を、サンプリング時刻毎に、以下に説明する様にして計算する。なお、最初に追尾維持を始めた時点での初期値を以下とする。
Figure 0005665320
ここで、P は「k番目のサンプリング時刻における目標数がNである。」とする目標数に関する仮説の信頼度である。また、Nmaxは、事前に設定する最大目標数を示すパラメータであり、追尾対象に応じて決定する。kが1以上の場合、各々の目標数に関する仮説の信頼度は1サンプリング時刻前のk−1番目のサンプリング時刻の目標数に関する仮説の信頼度を用いて、以下の式(2)により計算する。
Figure 0005665320
ここで、式(2)に現れる記号の意味は次の通りである。NTGT はk番目のサンプリング時刻における目標数である。mは、k番目のサンプリング時刻において、センサ8より得られた観測値の数である。また、M={m,m,m,・・・,m}はk番目のサンプリング時刻までの観測値数の列である。cは、式(2)の2段目をベイズの定理により展開して得られる、目標数に関する仮説に依存しない定数である。また、ρは、1サンプリング時刻毎の目標分離確率を示すパラメータであり、追尾目標対象に応じて事前に設定される値である。
このρは、常に一定の値としても良いが、以下に説明する様に、目標数推定の状況に応じて動的に変えても良い。例えば、あらかじめ分離発生する目標の数がnsplitであることが分かっており、各々の分離確率が分離する順にρ,ρ,・・・,ρnsplitであるとする。このとき、追尾維持を始めた時点の目標分離確率ρは、以下の式(3)で与えられる。
Figure 0005665320
式(3)の目標分離確率は、目標数が1と確定されている間に適用する。この確定目標数は、後述するステップS04の「目標数確定判定」の処理で確定される。あるサンプリング時刻で1目標が分離し、目標数が2となったとことが確定したとする。このとき、目標分離確率は以下の式(4)となる。
Figure 0005665320
また、目標数がnTGTと確定された場合の目標分離確率は以下となる。
Figure 0005665320
式(2)の最終段は3つの項より成り立つが、第1項は定数であるため、Nmax個の目標数に関する仮説の信頼度の和が1.0となる様に正規化することによって計算する。第3項は、1サンプリング時刻前の仮説の信頼度と、事前設定のパラメータρにより計算できる。また、第2項の計算方法は、以下の式(6)の通りである。
Figure 0005665320
式(6)に現れる記号の意味は次の通りである。pは探知確率、βFTは不要信号密度であり、センサの観測性能や気候等の観測条件に応じて事前に設定するパラメータである。Vは観測領域の体積であり、例えば、センサ8がレーダである場合は、ビーム幅と観測距離の最小値と最大値によって決まる値である。また、NDTは、存在するN目標のうち、k番目のサンプリング時刻でセンサによって探知された目標数であり、0からNまでの値を取り得る。以上によって得られた式(6)を式(2)に代入して最新の第kサンプリング時刻の仮説の信頼度P を計算する。
次のステップS04の「目標数確定判定」では、目標数確定判定部4が、前ステップS03の「目標数推定」によって得られた目標数に関する仮説の状況に応じて、目標数が確定したか否かを判定する。この判定方法としては、以下の式(7)が成り立った場合に確定、成り立たない場合に不確定とする。
Figure 0005665320
ここで、relthは、目標数確定判定のための目標数に関する仮説の信頼度の閾値であり、事前に設定するパラメータである。すなわち、最良の目標数に関する仮説の信頼度が閾値relthを超えた場合に、目標数が確定したと判定する。
次に、ステップS05の「目標数確定か?」判定処理で、ステップS04の「目標数確定判定」で目標数が確定したか否かを判定する。確定していれば、ステップSS06に進む。
ステップS06の「確立航跡数が目標数確定値と一致するか?」判定処理では、多目標相関決定追尾処理部7で生成された確立航跡数がその確定目標数と一致したか否かを判定する。一致していなければ、ステップS07に進む。
このようにして、ステップS05の判定処理で、目標数が確定していると判定され、ステップS06の判定処理で、追尾処理を行っている確立航跡数がその確定目標数と一致しないと判定された場合、ステップS07の「目標運動仮説選択」に移行する。一方、ステップS05の判定処理で目標数が確定していないと判定されるか、あるいは、ステップS06の判定処理で確率航跡数と確定目標数とが一致すると判定された場合は、ステップS09の「センサ指示」に移行し、この時点で第kサンプリング時刻の観測値の処理は終了する。
ステップS07の「目標運動仮説選択」では、多目標相関決定追尾処理部7が、目標運動に関する仮説のうち、本航跡の数と仮航跡の数との和が確定目標数と一致する仮説のみを選択し、一致しない仮説を削除する。確定目標数が2であるとすると、図17の仮説のうち、仮説1,2は本航跡数が1で仮航跡数が1であるから確定目標数と一致するが、仮説3は本航跡数が1で仮航跡数は2なので確定目標数よりも多い目標の存在を仮定し、仮説4は本航跡数が1で仮航跡はないので確定目標数よりも少ない目標の存在を仮定している。従って、このステップでは仮説1,2を選択し、仮説3,4は削除する。
次のステップS08の「尤度に基づく航跡選択」では、航跡確立再判定部5が、全ステップで選択された目標運動仮説の各々の仮航跡の尤度を計算する。この尤度は、各仮航跡の最新の平滑値を過去Nbackサンプリング時刻分の観測値を用いて計算する。各観測値については、その仮航跡の平滑値を過去に遡って、その観測値のサンプリング時刻における予測値を追尾フィルタの運動モデルに基づいて算出し、観測位置とその予測値の差分から観測モデルに基づいて尤度を計算する。このステップS08で計算した最も高い尤度を実現する仮航跡を、確立させる。この尤度は過去誤相関を起こしたために運動モデルに合致しない仮航跡ほど小さくなることが期待できるので、結果として正しい相関による仮航跡を確立することができる。
最後のステップS09の「センサ指示」では、センサ指示部2が、センサ8の向きが、最新サンプリング時刻の確立航跡の予測位置に向く様に、センサ8に指示を出力する。
以上が、本実施の形態に係る多目標追尾装置の動作説明である。
以上のように、本実施の形態で説明した多目標追尾装置によれば、センサ8から得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算することによって観測領域に存在する目標の数を推定する目標数推定部3と、目標数推定部3によって計算された目標数に関する仮説の信頼度によって、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部4と、目標数確定判定部4によって目標数が決定されたら、その数に応じて、多目標相関決定追尾処理部7の仮航跡の候補を抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立する航跡確立再判定部5を備え、従来の多目標相関決定追尾処理と並行して、目標数推定を行って、分離目標の存在が確認されたら、多目標相関決定追尾処理で生成された仮航跡群から最も確度の高い航跡を抽出して確立させるようにしたので、目標分離直後の複数目標が近接している状況で、従来の多目標相関決定追尾処理では確立できなかった目標航跡を早期にかつ正確に確立することができる。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る多目標追尾装置について説明を行う。図3は、その装置構成図である。図1との構成の違いは、図3においては、多重サンプリング航跡再構成部6が追加されている点である。他の構成については、図1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
多重サンプリング航跡再構成部6は、航跡確立再判定部5が選択した目標航跡の最新の平滑値の尤度が低い場合は、多目標相関決定追尾処理部7が生成した仮航跡を全て破棄し、過去数サンプリングの観測値から航跡を再構成して、再構成によって生成された航跡の中から航跡を選択することによって航跡を確立するものである。
本実施の形態における追尾処理の手順を図4に示す。以下、この図4のフローチャートに従って説明する。図4において、ステップS00の「観測値入力」からステップS07の「目標運動仮説選択」までの処理内容は、図2に示した実施の形態1の処理と同様である。従って、ここでは、その説明を省略する。
次のステップS08の「尤度に基づく航跡選択」では、航跡確立再判定部5が、前ステップS07で選択された目標運動仮説の各々の仮航跡の尤度を計算する。この尤度は、各仮航跡の最新の平滑値を過去Nbackサンプリング時刻分の観測値を用いて計算する。各観測値について、その仮航跡の平滑値を過去に遡って、その観測値のサンプリング時刻における予測値を追尾フィルタの運動モデルに基づいて算出し、観測位置とその予測値の差分から観測モデルに基づいて尤度を計算する。次に、航跡確立再判定部5は、計算した尤度のうち、最も高い尤度を実現する仮航跡を選択する。
次に、ステップS21の「抽出された航跡の尤度が閾値を超える?」判定処理において、航跡確立再判定部5が選択した仮航跡の尤度が閾値を越えているか否かを判定する。超えていたら、その航跡を確立させ、ステップS09の「センサ指示」に移行する。この閾値は事前に設定するパラメータであり、確度が低過ぎる航跡の確立を防止する役目を有する。一方、航跡確立再判定部5が選択した仮航跡の尤度が閾値よりも低い場合は、ステップS22の「多重サンプリング航跡再構成」に移行する。
次のステップS22の「多重サンプリング航跡再構成」では、多重サンプリング航跡再構成部6が、多目標相関決定追尾処理部7が生成した航跡を全て破棄し、Nbackサンプリング時刻分の観測値を用いて航跡を再構成して、再構成によって生成された航跡の中から航跡を選択することによって航跡を確立する。この再構成における、複数サンプリング時刻に渡る航跡生成技術については、既知の方法を用いることとし、例えば、文献:A.B.Poore and A.J.Robertson著、“A New Multi-dimensional Data Association Algorithm for Multisensor- Multitarget Tracking”、(Proc. Of SPIE vol.2561、1995)において、その一例の詳細が記述されているので、そちらを参照することとする。
最後のステップS09の「センサ指示」では、センサ指示部2が、センサ8の向きが、最新サンプリング時刻の確立航跡の予測位置に向く様に、センサ8に指示を出力する。
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様に、目標分離直後の複数目標が近接している状況で、従来の多目標相関決定追尾処理では確立できなかった目標航跡を、早期にかつ正確に確立することができる。さらに、本実施の形態においては、航跡確立再判定部5が選択した目標航跡の最新の平滑値の尤度が低い場合に、多目標相関決定追尾処理部7が生成した航跡を全て破棄し、過去数サンプリングの観測値から航跡を再構成して、再構成によって生成された航跡の中から航跡を選択することによって航跡を確立する多重サンプリング航跡再構成部6を設けるようにしたので、多目標相関決定追尾処理によって生成された航跡の中に正しい相関結果による航跡が含まれない場合でも、目標航跡を早期にかつ正確に確立することができる。
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3に係る多目標追尾装置について説明を行う。図5は、その装置構成図である。図1の構成との違いは、図5においては、図1に示した、航跡確立再判定部5が設けられていない点である。また、本実施の形態においては、多目標相関決定追尾処理部7が、目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定するだけでなく、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定する際のパラメータを、目標数確定判定部4によって確定した目標数に応じて変更するようにした点も、図1と異なる。他の構成については、図1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
本実施の形態における追尾処理の手順を図6に示す。以下、この図6のフローチャートに従って説明する。図6において、ステップS00の「観測値入力」からステップS06の「確立航跡数が目標数確定値と一致するか?」判定処理までの処理内容は、実施の形態1と同様である。従って、ここでは、それらのステップについては説明を省略する。
ステップS05およびステップ06の判定処理の結果、ステップS04の「目標数確定判定」で目標数が確定し、多目標相関決定追尾処理部7が追尾処理を行っている確立航跡数がその確定目標数と一致しないと判定された場合、次のステップ31の「多目標相関決定追尾処理パラメータ選択」に移行する。一方、ステップS05およびステップ06の判定処理の結果、目標数が確定していないか、あるいは、確率航跡数と確定目標数が一致すると判定された場合は、ステップS09の「センサ指示」に移行し、この時点で第kサンプリング時刻の観測値の処理は終了する。
次のステップS31の「多目標相関決定追尾処理パラメータ選択」では、多目標相関決定追尾処理部7が、まず、目標運動に関する仮説のうち、本航跡の数と仮航跡の数の和が確定目標数と一致する仮説のみを選択し、一致しない仮説を削除する。図17の例では、確定目標数が2であるとすると、4つの仮説のうち、仮説1,2は本航跡数が1で仮航跡数が1であるから確定目標数と一致するが、仮説3は本航跡数が1で仮航跡数は2なので確定目標数よりも多い目標の存在を仮定し、仮説4は本航跡数が1で仮航跡はないので確定目標数よりも少ない目標の存在を仮定している。従って、このステップでは仮説1,2を選択し、仮説3,4は削除する。この仮説選択の後、更に、航跡統合のパラメータを変更する。この航跡統合は、ステップS01の「多目標相関決定追尾処理」において、過去Nscanサンプリング時刻の間の相関内容が一致する航跡を統合するという、良く知られた仮説縮小処理である。本ステップでは、このパラメータNscanを通常よりも小さい値に再設定することにより、次のサンプリング時刻以降で仮説を限定して航跡確立が起こり易くなる様にする。
最後のステップS09の「センサ指示」では、センサ指示部2が、センサ8の向きが、最新サンプリング時刻の確立航跡の予測位置に向く様に、センサ8に指示を出力する。
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様に、目標分離直後の複数目標が近接している状況で、従来の多目標相関決定追尾処理では確立できなかった目標航跡を早期にかつ正確に確立することができる。また、実施の形態1,2とは異なり、本実施の形態では、航跡確立再判定部5を設けない構成とし、航跡の尤度判定あるいは航跡の再構成処理を行わないため、少ない計算機負荷で実現できる。
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4に係る多目標追尾装置について説明を行う。図7はその装置構成図である。また、本実施の形態では、基本的に、図5の構成と同じであるが、但し、本実施の形態においては、センサがレーダであることを前提とするため、図5のセンサ8を、図7においては、レーダ8Aとして示している。また、同様に、図5のセンサ指示部2も、レーダ指示部2Aとして示し、そこから出力されるセンサ制御指令もレーダ制御指令と呼ぶこととする。また、本実施の形態においては、多目標相関決定追尾処理部7が、目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定するだけでなく、目標数確定判定部4によって確定した目標数に応じて検定ビーム照射対象となる仮航跡を決定するようにした。
本実施の形態における追尾処理の手順を図8に示す。以下、この図8のフローチャートに従って説明する。ステップS00の「観測値入力」からステップS06の「確立航跡数が目標数確定値と一致するか?」判定処理までの処理内容は、実施の形態1と同様である。
ステップS04の「目標数確定判定」で目標数が確定し、ステップS06の判定処理で、多目標相関決定追尾処理部7が追尾処理を行っている確立航跡数がその確定目標数と一致しないと判定された場合、次のステップS41の「検定ビーム対象仮航跡選択」に移行する。一方、ステップS05,S06の判定処理で、目標数が確定していないか、あるいは、確立航跡数と確定目標数が一致すると判定された場合には、この時点で第kサンプリング時刻の観測値の処理は終了する。
次のステップS41の「検定ビーム対象仮航跡選択」では、多目標相関決定追尾処理部7が、まず、目標運動に関する仮説のうち、本航跡の数と仮航跡の数との和が確定目標数と一致する仮説のうち、最も信頼度が高いものを選択し、選択された仮説に含まれる仮航跡を検定ビーム照射対象航跡とする。例えば、確定目標数が2であるとすると、図17の例では、4つの仮説のうち、仮説1,2は本航跡数が1で仮航跡数が1であるから確定目標数と一致する。信頼度は仮説1の方が高いため、この仮説1に含まれる仮航跡を検定ビーム照射対象航跡とする。
上記の検定ビーム対象仮航跡選択では、本航跡の数と仮航跡の数の和が確定目標数と一致する仮説の全て選択し、検定ビームの照射位置としては、それらの仮説の全ての仮航跡の予測値の重心位置としてもよい。図17の仮説の例では仮説1に含まれる仮航跡と仮説2に含まれる仮航跡の予測値の重心の位置を検定ビームの照射位置とする。
最後のステップS09Aの「レーダ指示」では、レーダ指示部2Aが、レーダ8Aの向きが最新サンプリング時刻の確立航跡の予測位置に向く様に、レーダ8Aに指示を出力して、当該予測位置にレーダ8Aを向けさせ、さらに検定ビーム照射対象航跡の予測位置、あるいは、複数の対象航跡の予測値の重心に向かって検定ビームを撃つ様に、レーダ8Aに指示を出力する。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、目標分離直後の複数目標が近接している状況で、従来の多目標相関決定追尾処理では確立できなかった目標航跡を早期にかつ正確に確立することができる。また、本実施の形態においては、センサをレーダから構成して、検定ビームを照射して航跡確立を早め、さらに、実施の形態1,2とは異なり、本実施の形態では、実施の形態3と同様に、航跡確立再判定部5を設けない構成とし、航跡の尤度判定あるいは航跡の再構成処理を行わないため、少ない計算機負荷で実現できる。
1 航跡確立判定部、2 センサ指示部、2A レーダ指示部、3 目標数推定部、4 目標数確定判定部、5 航跡確立再判定部、6 多重サンプリング航跡再構成部、7 多目標相関決定追尾処理部、8 センサ、8A レーダ。

Claims (4)

  1. 目標を観測するセンサから得られた観測値を使って目標を追尾するための多目標追尾装置であって、
    目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成する多目標相関決定追尾処理部と、
    上記多目標相関決定追尾処理部によって得られた仮航跡のうち、予め設定された条件を満たす航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立する航跡確立判定部と、
    センサから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算する目標数推定部と、
    上記目標数推定部によって計算された目標数に関する仮説の信頼度の最大値が予め設定された閾値を超えた場合に、目標数が確定したと判定して、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部と、
    上記目標数確定判定部によって決定された目標数が上記航跡確立判定部によって確立された航跡の数に一致していないときに、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説中の仮航跡を候補として抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立する航跡確立再判定部と、
    上記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡のうちの既存の確立航跡と、上記航跡確立判定部または上記航跡確立再判定部によって新たに確立した航跡の予測位置とに、上記センサを向ける様に、上記センサに対して指示を行うセンサ指示部と
    を備え
    上記航跡確立判定部における上記条件は、その航跡が、残存する全ての仮説に含まれること、または、その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること、のいずれか一方である
    ことを特徴とする多目標追尾装置。
  2. 目標を観測するセンサから得られた観測値を使って目標を追尾するための多目標追尾装置であって、
    目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成する多目標相関決定追尾処理部と、
    上記多目標相関決定追尾処理部によって得られた仮航跡のうち、予め設定された条件を満たす航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立する航跡確立判定部と、
    センサから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算する目標数推定部と、
    上記目標数推定部によって計算された目標数に関する仮説の信頼度の最大値が予め設定された閾値を超えた場合に、目標数が確定したと判定して、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部と、
    上記目標数確定判定部によって決定された目標数が上記航跡確立判定部によって確立された航跡の数に一致していないときに、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説中の仮航跡を候補として抽出し、抽出された候補の最新の平滑値の尤度を過去数サンプリング時刻分の観測値に対して計算し、最も尤度が大きい仮航跡を選択して航跡を確立する航跡確立再判定部と、
    上記航跡確立再判定部が選択した目標航跡の最新の平滑値の尤度が予め設定された閾値より低い場合は、上記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡を全て破棄し、過去数サンプリングの観測値から航跡を再構成して、再構成によって生成された航跡の中から航跡を選択することによって航跡を確立する多重サンプリング航跡再構成部と、
    上記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡のうちの既存の確立航跡と、上記航跡確立判定部、上記航跡確立再判定部または上記多重サンプリング航跡再構成部によって新たに確立した航跡の予測位置とに、上記センサの観測方向を制御する様に、上記センサに対して指示を行うセンサ指示部と
    を備え
    上記航跡確立判定部における上記条件は、その航跡が、残存する全ての仮説に含まれること、または、その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること、のいずれか一方である
    ことを特徴とする多目標追尾装置。
  3. 目標を観測するレーダから得られた観測値を使って目標を追尾するための多目標追尾装置であって、
    目標と観測値の対応を決定し、目標に対応付けられた観測値を用いて目標の運動諸元を推定して、仮航跡を生成する多目標相関決定追尾処理部と、
    上記多目標相関決定追尾処理部によって得られた仮航跡のうち、予め設定された条件を満たす航跡を抽出することにより、未知の目標の航跡を確立する航跡確立判定部と、
    レーダから得られたサンプリング時刻毎の観測値の数の履歴から目標数に関する仮説を立て、その信頼度を計算する目標数推定部と、
    上記目標数推定部によって計算された目標数に関する仮説の信頼度の最大値が予め設定された閾値を超えた場合に、目標数が確定したと判定して、観測領域における目標数を決定する目標数確定判定部と、
    上記目標数確定判定部によって決定された目標数が上記航跡確立判定部によって確立された航跡の数に一致していないときに、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説のうち、信頼度が最も高い仮説を検定ビーム照射対象となる仮航跡として決定する検定ビーム対象仮航跡選択部と
    記多目標相関決定追尾処理部が生成した仮航跡のうち、確立した航跡の予測位置と検定ビームの照射対象となった仮航跡の予測位置に、上記レーダのビームを向ける様に、上記レーダに対して指示を行うレーダ指示部と
    を備え
    上記航跡確立判定部における上記条件は、その航跡が、残存する全ての仮説に含まれること、または、その航跡を含む仮説の信頼度の和が、あらかじめ設定した閾値を超えること、のいずれか一方である
    ことを特徴とする多目標追尾装置。
  4. 上記多目標相関決定追尾処理部が、上記多目標相関決定追尾処理部の仮航跡の中から、既存の確立航跡の数と上記仮航跡の数との和が上記目標数と一致する目標運動に関する仮説を全て選択し、それらの仮説の全ての仮航跡の予測値の重心を、検定ビームの照射位置とすることを特徴とする請求項に記載の多目標追尾装置。
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