JP3685023B2 - 目標追尾装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーダ等のセンサから得られた観測ベクトル等の探知データを元に複数の目標の航跡を推定する目標追尾装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
目標の軌道である航跡を推定する目標追尾では、センサから得られる探知データをまず、目標からのものか、不用信号であるかを判定する。目標からのものと判定した場合、それが既に追尾を行っている目標のものであるのか(既存の目標が複数ある場合はそのうちのどれであるのか)、新たに発生した目標なのかを判定する。この判定には、既存目標の位置及び速度から該当時刻における位置を算出した予測値を中心とする空間領域であるゲートを利用する。このゲートの大きさについては、追尾目標からの探知データがこのゲート内で観測される確率が通常0.9以上の高い確率となる様設定される。このゲート内に入った探知データは既存目標からのものである可能性が高く、どのゲートにも入らなかった探知データは不用信号または新目標である可能性が高いといえる。既存航跡から得られたと判定した探知データについては、既存航跡から得られる予測値を利用して探知データが探知された時刻の目標の真の位置と速度を計算し、決定する。
【0003】
図16に航跡と探知データの相関の例を示す。この例では、現時刻t=3で30,31,32,33の4つの探知データが得られている。目標0の航跡(探知データ00,10,20によって構成される航跡)のゲートには探知データ30,31が入り、目標1の航跡(探知データ01,11,21によって構成される航跡)のゲートには探知データ32が入る。探知データ33はどちらのゲートにも入らない。一つの可能性としては、「探知データ30:目標0、探知データ31:不要信号、探知データ32:目標1、探知データ33:新目標」というものがあるし、別の可能性として「探知データ30:不要信号、探知データ31:目標0 、探知データ32:目標1、探知データ33:不要信号」も考えられる。この様に可能性が多くある状況で、どれか一つに決定してしまうと、それが誤りであった場合には目標追尾に失敗する危険性が高くなる。
【0004】
そこで、割り当て方(仮説)を複数考えて、探知データと目標の相関を仮説毎に決定し、最終的に最も良い仮説を残せば、より正確な目標追尾が可能である。この手法に基づいた目標追尾技術が特開平8-271617号公報「目標追尾装置」で開示されている。この手法では、探知データとそれの組み合わせである航跡、航跡の組み合わせである仮説を、互いに探知データを共有しないクラスタ毎に処理を行うことによって、処理の効率化を図っている。
【0005】
ここで従来技術のフローチャートを図12に、システム構成図を図11に示す。
図11において、1は観測ベクトル選択部、2はクラスタ新設統合部、3はゲート内判定行列算出部、4は航跡相関行列算出部、5は仮説更新部、6は仮説縮小部、7はクラスタ分離部、8はゲート算出部、10は航跡決定部、20は目標観測装置であり、センサともいう。30は目標表示装置である。
【0006】
以下、このフローチャート、システム構成図に従って、従来技術の動作を説明する。
まず、ステップS1201「次のサンプリングデータの読込」で「観測ベクトル選択部」1がその時刻の探知データを、センサ(目標観測装置)20から読み込む。次のステップS1202「ゲート内判定」で「観測ベクトル選択部」1が既存航跡のゲートと探知データの相関具合を調べ、入ってきた探知データがどのゲートに属するのかを決定する。以下、図13〜15までの図を例として、説明する。あるクラスタにおいて時刻t=2までに3サンプリングで00,10,11,20,21の都合5つの探知データがあり、図13の様な状態であったとする。この時、既存の航跡を探知データの組で表記すると、例えば、航跡T1は探知データの組み10-20から構成され、以下のように表記される。
T1: 10-20
同様にして、T2〜T6はそれぞれ
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
と表記される。
【0007】
また、航跡を採択する仮説を「ID:{航跡組}信頼度」と表記すると、例えば、既存の仮説H1は以下のように表記される、
H1:{T1,T4}rel1
ここで、rel1は信頼度を表す。同様にして、H2〜H5はそれぞれ
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
と表記される。
【0008】
このような状態の下で、続いて、次の時刻t=3において、ステップS1201の「次のサンプリングデータ読込」で探知データ30,31,32,33が読み込まれ、30,31が航跡T1,T3,T5のゲートに、32が航跡T2,T4,T6のゲートに入ったとする。また33はどの航跡のゲートにも入らなかったとする。
【0009】
次のステップS1203「航跡および新クラスタの作成」では「クラスタ新設統合部」2により、ゲートと探知データの相関具合を元に、航跡の更新又は生成が為される。作成される航跡は以下の3つの種類がある。
(1)更新航跡:既存航跡に、ゲート内に入った探知データを追加して出来る航跡(2)新航跡:その時刻にゲート内に入った探知データを起点として新たに生成した航跡
(3)メモリトラック航跡:既存航跡に対し、「該当する時刻にはゲートと相関する探知データがなかった」とする航跡
図14の例では、まず更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡としては
T71: 30
T72: 31
T73: 32
が生成され、メモリトラック航跡としては
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。
【0010】
また、本ステップS1203では、「クラスタ新設統合部」2により、どの既存のクラスタとも相関がなかった探知データについては、その探知データを起点とする新たなクラスタが生成される。図14の例では探知データ33はどの既存の軌跡とも関係がない。従って、この探知データ33はどの既存のクラスタとも相関がないので、この探知データ33による新クラスタが生成される。
また、本ステップS1203ではこの時刻における探知データにより後述する同値関係が複数のクラスタ間で発生した場合、「クラスタ新設統合部」2によりそれらのクラスタを統合する処理が行われる。
【0011】
次のステップS1204「航跡相関行列生成」では、まず「ゲート内判定行列算出部」3によって各クラスタ毎にすべての航跡と相関した探知データに対する解釈の可能性の一覧である、ゲート内判定行列が生成される。
このゲート内判定行列は各クラスタにおける、不要信号、新航跡及びすべての既存航跡と探知データとの相関関係を示しており、このゲート内判定行列の各行は該当時刻に当該クラスタと相関した探知データを示している。この例では図17に示すように第1行が探知データ30、第2行が探知データ31、第3行が探知データ32に相当する。また、列に関しては、第1列は不要信号であることを示し、第2列〜第7列がそれぞれ既存航跡T1〜T6を示し、終わりの3列(第8列〜第10列)は新航跡であることを示す。全ての探知データは不要信号である可能性を持っているので、ゲート内判定行列の第1列の要素は全て1となる。第2列については、既存航跡T1と相関する探知データは30,31であり、32は相関がないので第1,2行が1となり第3行は0となる。終わりの3列については、3つの新航跡はそれぞれの起点にしか対応できないから、単位行列となる。
【0012】
次に、「航跡相関行列算出部」4はこのゲート内判定行列を元に探知データ30〜32により構成され得る航跡の組合わせである航跡相関行列を作る。航跡相関行列は、
(1)1となる要素と同一のゲート内判定行列の要素は必ず1となっている。
(2)各行で、1となる要素の数は1つのみ
(3)各列は高々1つの要素が1となる。ただし、第1列はいくつ1の要素があってもよい。
という条件を満たす全ての行列である。これは、各探知データの互いに矛盾しない解釈の組み合わせである。
図17に、本例における航跡相関行列のいくつかの例を示す。
【0013】
次のステップS1205「仮説の作成」では、「仮説更新部」5が既存仮説を航跡相関行列によって更新する処理を行う。各仮説の更新では、その仮定の中に含まれている航跡以外の航跡の存在を仮定している航跡相関行列を除いた全ての航跡相関行列を使用する。例えば、仮説H1では航跡T1とT4が参照されている。図17の航跡相関行列(1)〜(5)では、(2)と(3)が航跡T1、T4以外の航跡T2の存在を仮定しているので、この(2)と(3)は仮説H1の更新には用いられない。H1を(1)によって更新すると、これはt=3の探知データが全て不要信号であることを示しているので、
H11:{T81,T84}
となる。この場合、航跡T1:10-20はこれ以上延長されず更新後もT81:10-20のままであり、航跡は前回と変わらない。同様に航跡T2:10-21もはこれ以上延長されず更新後もT82:10-21のままであり、航跡は前回と変わらない。
【0014】
また、H1を(4)によって更新すると、
H12:{T11,T41}
となる。すなわち、航跡T1:10-20はT11:10-20-30へ更新され、航跡は延長される。同様に航跡T2:10-21はT41:10-21-32へ更新され、航跡は延長される。
また、H1を(5)によって更新すると、
H13:{T81,T72,T41}
となる。この場合、航跡はT1:10-20及びT2:10-21から、不要信号でありこれ以上延長されない航跡T81:10-20と、前回から延長された航跡T41:10-21-32と、新たに生成された航跡T72:31とに更新される。
この様に、「仮説更新部」5は可能な仮説と航跡相関行列の組み合わせによって既存仮説を更新し、新たな仮説を生成する。
【0015】
次のステップS1206「準最適化とクラスタ分離」において、「仮説縮小部」6は信頼度の低い仮説を削除したり、類似した仮説を統合したりすることによって仮説数を削減する処理を実行し、さらに「クラスタ分離部」7はそれに伴うクラスタ分離の処理を実行する。準最適化には様々な手法があるが、ここでは過去N(Nは自然数)時刻分の内容が同一の仮説を統合する「過去データ棄却」の処理を行った例を説明する。この処理では、最新の時刻からN回前の探知データより過去の探知データを捨て、最新N回分の探知データが同一となった航跡、仮説をひとまとめにする。
【0016】
このステップS1206「準最適化とクラスタ分離」の詳細フローチャートを図12のS1207〜S1210に示す。
まず、ステップS1207の「過去データ棄却判定」で過去データを棄却した場合の航跡の統合の可能性の判定が行われる。N=2として、上記の例で説明した航跡の統合の例を示す。元の更新済み航跡は以下の通りである。
[統合航跡]
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
[新航跡]
T71: 30
T72: 31
T73: 32
[メモリトラック航跡]
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
これらについて、時刻t=0以前の探知データを除くと、以下の探知データの共通の組みができる。
{T11,T31,T51}:探知データ10、11、20、30を含む。
{T12,T32,T52}:探知データ10、11、20、31を含む。
{T21,T41,T61}:探知データ10、11、21、32を含む。
{T71}:探知データ30を含む。
{T72}:探知データ31を含む。
{T73}:探知データ32を含む。
{T81,T83,T85}:探知データ10、11、20を含む。
{T82,T84,T86}:探知データ10、11、21を含む。
【0017】
次のステップS1208「航跡の運動諸元統合」では、前ステップで同一判定された航跡群より一つの統合航跡を作る。本例では、N=2であるから時刻t=1以前の探知データ10、11を捨て、まとめられた後の航跡一覧は以下となる。
T91: 20-30
T92: 20-31
T93: 21-32
T94: 20
T95: 21
T96: 30
T97: 31
T98: 32
次に、このようにひとまとめにされた航跡に対して平滑値等の運動諸元の計算が行われ航跡の推定値が求められる。この場合、統合される航跡の平滑値を信頼度の重み付け平均をとることによって求める。
【0018】
次に、ステップS1209「仮説の統合」が行われる。これは航跡を統合することによって同一となった仮説をひとまとめにする処理である。
【0019】
次のステップS1210「クラスタ分離」では「クラスタ分離部」7は、航跡、仮説の縮小によって互いに探知データを共有しない航跡、仮説の組みが発生した場合に、この探知データを共有しない航跡、仮説の組みにクラスタを分離する。クラスタでは、探知データを共有する航跡を構成する探知データは全て同じクラスタに属していなければならない。例えば、一つのクラスタで
Ta:11,20,30
Tb:11,21,32
なる二つの航跡のみが存在する場合を考える。両者は探知データ11を共有しているので、二つの航跡を構成する探知データ{11, 20, 21, 30, 32}は同じクラスタに属していなければならない(以上の関係を同値関係と呼ぶ)。しかし、過去データ棄却により探知データ11を除くと、二つの航跡20-30と21-32との間では同値関係がなくなるので{20,30}と{21,32}は各々独立にクラスタを構成することができる。図15の例では、過去データ棄却により、探知データ{20,30,31}から構成されるクラスタ1と、探知データ{21,32}から構成されるクラスタ2に分けることができる。
【0020】
以上が1サイクル分のデータ処理の流れであり、1サイクルが終了すると、次の探知データを読み込み、次のサイクルの処理が実行される。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、「準最適化」ステップで仮説を縮小しても、その次のサイクルにおいて既存クラスタ内のゲートで探知データが観測された場合、その探知データを起点とする新航跡が新たに生成され、その新航跡と既存航跡から更新された航跡との組み合わせによる仮説の数が膨大となり、実行時間が増大してしなくなる可能性があるという問題があった。
【0022】
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたもので、許容可能な時間内に必ず処理を終了する高速な目標追尾装置を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る目標追尾装置は、互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、探知データが既存航跡のゲート内に入るか否かにより、この探知データからの新目標生成方針を決定することを特徴とするものである。
【0024】
また、第2の発明に係る目標追尾装置は、互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、クラスタ内のサンプリング回数により新目標生成の方針を決定することを特徴とするものである。
【0025】
また、第3の発明に係る目標追尾装置は、互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、仮説毎にゲート内判定行列、航跡相関行列を作り、既存航跡のゲート内に入った探知データについては新目標を作らないことを特徴とするものである。
【0026】
また、第4の発明に係る目標追尾装置は、互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記ゲート算出部は既存航跡に対し、大ゲート、小ゲートを算出し、
上記航跡選択部は前記小ゲートに入った探知データについては新目標を作らないことを特徴とするものである。
【0028】
また、第5の発明に係る目標追尾装置は、互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、新目標のない仮説生成を先に行い、時間が十分に残っていなければ、新目標を考慮した仮説生成を行わないことを特徴とするものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明に係る目標追尾装置の実施の形態1を示すシステム構成図であり、図中、1は既追尾目標の予測値と探知データの相関具合を調べて既追尾目標がどのケートに存在するかを決定する観測ベクトル選択部、2は既存のクラスタのいずれにも属さない新たな探知データに基いてクラスタを新設したり、同値関係の探知データに基いてクラスタを統合したりするクラスタ新設統合部、3は各クラスタ毎に相関した全ての探知データの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するかの可能性の一覧であるゲート内判定行列を算出するゲート内判定行列算出部、4はゲート内判定行列を元に探知データにより構成され得る航跡の組合わせである航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部、5は既存仮説を航跡相関行列によって更新する仮説更新部、6は仮説の削除や統合によって仮説数を削減する仮説縮小部、7は仮説数削減に伴うクラスタを分離するクラスタ分離部、8は既存追尾目標の位置及び速度から該当時刻における位置を算出した予測値を中心とする空間領域であるゲートを算出するゲート算出部、9は新航跡の生成に関する判定を行う航跡選択部、10は航跡決定部、20は目標追尾装置のセンサである目標観測装置、30は目標表示装置である。
【0033】
本実施の形態1における追尾処理の手順を図2に示す。以下、従来手法の説明で利用した例を用いて、本発明の処理の流れを説明する。
ステップS201「次のサンプリングデータの読込」、S202「ゲート内判定」では従来手法のステップS1201およびS1202と同様の処理が実行される。
時刻t=2までのサイクルで図13の様になり、航跡は探知データの組で表記して、
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
であったとする。
【0034】
続いて、次の時刻t=3で30〜33の探知データが観測され、30,31,32はこのクラスタ内の航跡のゲート内に入り、33はどのクラスタのどの航跡のゲートにも入らなかったとする。この状態を図14に示す。
【0035】
ステップS203「新航跡生成判定」では航跡選択部9による新航跡の生成に関する判定がなされる。この判定基準としては、
(1)既存クラスタ内に入った探知データからは新航跡を作らない。
(2)新規に生成されてから一定のサンプリングを経過した既存クラスタ内に入った探知データからは新航跡を作らない。
がある。この実施の形態では、このうちの前者を基準とした場合について以下の説明を行う。
【0036】
ステップS204「航跡および新クラスタの作成」では、30、31、32については既存航跡からの更新航跡を生成し、新航跡は作らない。この時点では、クラスタ内には以下の航跡が出来ている。
更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡はこのクラスタ内では生成されない。
メモリトラック航跡として
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。
また、探知データ33についてはこのクラスタのどの航跡とも相関がないので、この探知データによる新クラスタが生成され、その中でこの探知データを起点とする新航跡が作られ、さらにこの航跡を採択する仮説と採択しない仮説の2仮説が作られる。
【0037】
ステップS205「航跡相関行列作成」〜S207「準最適化」までは、従来方法の同名の処理(ステップS1204〜S1206)と同様な処理が実行される。
クラスタ1における、ステップS205「航跡相関行列作成」で生成されるゲート内判定行列の一例を図5に示す。このゲート内判定行列例において、新航跡を示す終わりの3列の3×3の部分が全て0となっていることが分かる。このゲート内判定行列から航跡相関行列が生成されるが、新航跡を考慮しない分、航跡相関行列の数も少なくなる。
【0038】
以上のようにこの実施の形態によれば、判定基準(1)を採用した場合、クラスタ内に入った探知データについては新航跡を作らないので、全ての探知データについて新航跡を作る従来に比べゲート内判定行列が小さくなり、その分航跡相関行列の数が減るのでデータの規模が縮小されることになり、高速に仮説生成を実行することができる。
また、判定基準(2)を採用した場合、一定時間経過後にクラスタ内に入った探知データについては新航跡を作らないので、ゲート内判定行列が小さくなり、その分航跡相関行列の数が減るのでデータの規模が縮小されることになり、高速に仮説生成を実行することができる。
【0039】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を説明する。フローチャートが図2、システム構成図が図1に相当する。
まず、ステップS201「次のサンプリングデータの読込」、ステップS202「ゲート内判定」はそれぞれ従来技術のステップS1201、S1202の動作と同様である。ステップS203「新航跡生成判定」では航跡選択部9により新航跡の生成に関する判定がなされる。ステップS204「航跡および新クラスタの作成」は従来技術の動作と同様である。
この時点での例を以下、図13、14を用いて説明する。あるクラスタにおいて時刻t=2までに3サンプリングで00,10,11,20,21の都合5つの探知データがあり、図13の様な状態であったとする。この時、航跡は探知データの組で表記して、
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
であるとする。
【0040】
続いて、次の時刻t=3において、ステップS201「次のサンプリングデータの読込」で探知データ30,31,32が入り、30,31がT1,T3,T5の航跡のゲートに、32がT2,T4,T6のゲートに入ると、図14の様に
更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡として
T71: 30
T72: 31
T73: 32
メモリトラック航跡として
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。また、探知データ33についてはこのクラスタのどの航跡とも相関がないので、この探知データによる新クラスタが生成され、その中でこの探知データを起点とする新航跡が作られ、さらにこの航跡を採択する仮説と採択しない仮説の2仮説が作られる。
【0041】
次のステップS202〜S204の動作は実施の形態1と同様である。次のステップS205「航跡相関行列生成」では、まず「ゲート内判定行列算出部」3によって各クラスタに相関した探知データの解釈の可能性の一覧である、ゲート内判定行列が生成される。ただし、本実施の形態ではこのゲート内判定行列は仮説毎に生成される。図7にH1〜H5までの仮説毎のゲート内判定行列を示す。H1の場合、既存航跡として存在を仮定しているのはT1とT4のみであるので、既存航跡列としてこの2航跡に相当する2列しか作られない。そして、新航跡部の第4〜6列については既存航跡と相関がない探知データのみに「1」が設定される様にする。H1のゲート内判定行列では、探知データ30と31は航跡T1と相関があるので、第4,5列に「1」は設定されない。また、探知データ32については航跡T4と相関があるので第6列についても「1」は設定されない。これに対し、H4のゲート内判定行列では既存航跡はT2のみでこれと相関のある探知データは32のみであるので、探知データ30、31に相当する新航跡部第3,4列については「1」が設定され、第5列に「1」は設定されない。
【0042】
次に、「航跡相関行列算出部」4が仮説毎に生成されたゲート内判定行列から航跡相関行列を作る。航跡相関行列の生成方法は従来技術と同様である。
次のステップS206「仮説の作成」で、「仮説更新部」5は既存仮説を航跡相関行列によって更新する処理を行う。 各仮説の更新では、その仮説から作られたゲート内判定行列を展開して出来た全ての航跡相関行列を使用する。この仮説生成では既存仮説に含まれる既存航跡と相関のある探知データを新航跡とする仮説は生成されない。例えば、H1に含まれる航跡T1は探知データ30と相関があるので、H1を更新してできた仮説には30を起点とする新航跡は含まれない。
次のステップS207「準最適化とクラスタ分離」の動作は従来技術のステップS1206の動作と同様である。
【0043】
以上が1サイクル分のデータ処理の流れであり、1サイクルが終了すると、次の探知データを読み込み、次のサイクルの処理が実行される。
【0044】
以上のようにこの実施の形態によれば、仮説毎にゲート内判定行列および航跡相関行列を作り、既存航跡のゲート内に入った探知データについては新目標を作らないので、高速に仮説生成を実行することができる。
【0045】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3を説明する。フローチャートが図2、システム構成図が図1に相当する。
まず、ステップS201「次のサンプリングデータの読込」の動作は従来技術のステップS1201の動作と同様である。次のステップS202「ゲート内判定」で、各航跡は小ゲートと大ゲートを設定する。図8に航跡T1(10-20)の小ゲート、大ゲートを示す。小ゲートには探知データ30のみが入り、大ゲートには30,31が入る。ステップS203「新航跡生成判定」では航跡選択部9により新航跡の生成に関する判定がなされる。
【0046】
次のステップS204「航跡および新クラスタの作成」の動作は従来技術のステップS1203の動作と同様であるが、更新航跡生成の基準としては、既存航跡の大ゲートと探知データによる相関を用いる。例えば航跡T1については、探知データ30による更新航跡と、31による更新航跡を生成する。
この時点での例を以下、図13〜15を用いて説明する。或るクラスタにおいて時刻t=2までに3サンプリングで00,10,11,20,21の都合5つの探知データがあり、図13の様な状態であったとする。この時、航跡は探知データの組で表記して、
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
であるとする。続いて、次の時刻t=3において、ステップS201の「次のサンプリングデータ読込」で探知データ30,31,32,33が入り、30,31がT1,T3,T5の航跡のゲートに、32がT2,T4,T6のゲートに入り、図14の様に
更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡として
T71: 30
T72: 31
T73: 32
メモリトラック航跡として
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。また、探知データ33についてはこのクラスタのどの航跡とも相関がないので、この探知データによる新クラスタが生成され、その中でこの探知データを起点とする新航跡が作られ、さらにこの航跡を採択する仮説と採択しない仮説の2仮説が作られる。
【0047】
次のステップS202〜S204の動作は実施の形態1と同様である。次のステップS205「航跡相関行列生成」では、まず「ゲート内判定行列算出部」3によって各クラスタに相関した探知データの解釈の可能性の一覧である、ゲート内判定行列が生成される。本実施の形態では実施の形態2と同様に、ゲート内判定行列は仮説毎に生成される。この生成の規則を以下に示す。
(1)何れかの既存航跡の小ゲートに入った探知データについては新航跡を生成しない。
(2)どの既存航跡の小ゲートにも入らず、何れかの大ゲートに入った探知データについては新航跡を生成する。
(3)どの既存航跡の大ゲートにも入らなかった探知データについては新航跡を生成する。
【0048】
図9にH1〜H5までの仮説毎のゲート内判定行列を示す。H1の場合、既存航跡として存在を仮定しているのはT1とT4のみであるので、既存航跡列はこの2航跡に相当する2列しか作られない。T1の小ゲートに30、大ゲートに30,31が入り、T4の小ゲートに32、大ゲートに32が入ったとする。H1のゲート内判定行列では、探知データ30は航跡T1の小ゲートに入るので、第4列に「1」は設定されない。探知データ31については、どの航跡の小ゲートにも入らないので第5列には「1」が設定される。探知データ32については航跡T4の小ゲートに入るので第6列についても「1」は設定されない。
【0049】
次に、「航跡相関行列算出部」4が仮説毎に生成されたゲート内判定行列から航跡相関行列を作る。航跡相関行列の生成方法は従来技術と同様である。
次のステップS206「仮説の作成」で、「仮説更新部」5が既存仮説を航跡相関行列によって更新する処理を行う。この処理は実施の形態2と同様である。
次のステップS207「準最適化とクラスタ分離」の動作は従来技術のステップS1206の動作と同様である。
【0050】
以上が1サイクル分のデータ処理の流れであり、1サイクルが終了すると、次の探知データを読み込み、次のサイクルの処理が実行される。
【0051】
以上のようにこの実施の形態によれば、仮説毎にゲート内判定行列および航跡相関行列を作り、既存航跡と探知データの相関を小ゲートと大ゲートによって行い、小ゲートに入った探知データについては新目標を作らないので、高速に仮説生成を実行することができる。
【0052】
実施の形態4.
以下、本発明における第5の発明の実施の形態4の説明を行う。図1はこの発明に係る追尾装置の実施の形態4を示すシステム構成図である。
本実施の形態4における追尾処理の手順をフローチャート2に示す。以下、従来手法の説明で利用した例を用いて、本発明の処理の流れを説明する。
【0053】
まず、ステップS201「次のサンプリングデータの読込」、ステップS202「ゲート内判定」の動作はそれぞれ従来技術のステップS1201、S1202の動作と同様である。次のステップS203「新航跡生成判定」では航跡選択部9により新航跡の生成に関する判定がなされる。次のステップS204「航跡および新クラスタの作成」の動作は従来技術のステップS1203動作と同様である。
時刻t=2までのサイクルで図13の様になり、航跡は探知データの組で表記して、
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
であったとする。
【0054】
続いて、次の時刻t=3において、30〜33の探知データが観測され、30、31、32はこのクラスタ内の航跡のゲート内に入り、33はどのクラスタのどの航跡のゲートにも入らなかったとする。この状態を図14に示す。また、各探知データはS/N比(signal-to-noise)を持っていてるとする。このS/N比はその探知データが目標からのものである可能性を示す一つの指標となり、値が大きいほど目標から得られたものである可能性が高い。ステップS203「新航跡生成判定」ではこのS/N比についての閾値を設け、探知データのS/N比がその閾値を超えたらその探知データについては新航跡を生成し、閾値を超えない場合は新航跡は生成しない様に判定する。
【0055】
この例では30、31は閾値を超え、32については閾値を超えなかったとする。ステップS204「航跡および新クラスタの作成」終了時点では、クラスタ内には以下の航跡が出来ている。
更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡として
T71: 30
T72: 31
メモリトラック航跡として
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。このように、30,31については新航跡としてそれぞれT71,T72が生成されるが、32については新航跡は生成されない。
また、探知データ33についてはこのクラスタのどの航跡とも相関がないので、この探知データによる新クラスタが生成され、その中でこの探知データを起点とする新航跡が作られ、さらにこの航跡を採択する仮説と採択しない仮説の2仮説が作られる。
【0056】
ステップS205「航跡相関行列作成」〜S207「準最適化とクラスタ分離」では、従来方法の同名の処理(ステップS1204〜S1206)と同様な処理が実行される。
クラスタ1における、ステップS205「航跡相関行列作成」で生成されるゲート内判定行列を図6に示す。このゲート内判定行列例において、新航跡を示す終わりの3列の3×3の部分のうち探知データ32に相当する列に「0」が設定されていることが分かる。このゲート内判定行列から航跡相関行列が生成されるが、新航跡が少なくなる分、航跡相関行列の数も少なくなる。
【0057】
以上のようにこの実施の形態によれば、探知データのS/N比により新航跡生成の判断を行い、閾値より低いS/N比を持つ探知データについては新航跡を生成しないので、高速に仮説生成を実行することができる。
【0058】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5を説明する。フローチャートが図3、システム構成図が図1に相当する。
まず、ステップS201「次のサンプリングデータの読込」、ステップS202「ゲート内判定」ステップS204「航跡および新クラスタの作成」の動作はそれぞれ従来技術のステップS1201,S1202,S1203の動作と同様である。
以下、図13,14を用いて説明する。或るクラスタにおいて時刻t=2までに3サンプリングで00,10,11,20,21の都合5つの探知データがあり、図13の様な状態であったとする。この時、航跡は探知データの組で表記して、
T1: 10-20
T2: 10-21
T3: 11-20
T4: 11-21
T5: 20
T6: 21
である。また、航跡を採択する仮説は「ID:{航跡組}信頼度」と表記して、
H1:{T1,T4}rel1
H2:{T1,T6}rel2
H3:{T2,T5}rel3
H4:{T2}rel4
H5:{T5}rel5
であるとする。
【0059】
続いて、次の時刻t=3において、ステップS201「次のサンプリングデータ読込」で30〜33の探知データが観測され、30,31がT1,T3,T5の航跡のゲートに、32がT2,T4,T6のゲートに入り、図14の様に
更新航跡として、
T11: 10-20-30
T12: 10-20-31
T21: 10-21-32
T31: 11-20-30
T32: 11-20-31
T41: 11-21-32
T51: 20-30
T52: 20-31
T61: 21-32
新航跡として
T71: 30
T72: 31
T73: 32
メモリトラック航跡として
T81: 10-20
T82: 10-21
T83: 11-20
T84: 11-21
T85: 20
T86: 21
が作成される。また、探知データ33についてはこのクラスタのどの航跡とも相関がないので、この探知データによる新クラスタが生成され、その中でこの探知データを起点とする新航跡が作られ、さらにこの航跡を採択する仮説と採択しない仮説の2仮説が作られる。
【0060】
次のステップS205「航跡相関行列生成」では、まず「ゲート内判定行列算出部」3によって各クラスタに相関した探知データの解釈の可能性の一覧である、ゲート内判定行列が従来技術と同様な方法で生成される。
次に、「航跡相関行列算出部」4が仮説毎に生成されたゲート内判定行列を元に航跡相関行列を作る。航跡相関行列の生成方法は従来技術と同様であるが、ここでは新航跡に相当する列に「1」が設定されない航跡相関行列のみが生成される。
【0061】
次のステップS206「仮説の作成」で、「仮説更新部」5が既存仮説を航跡相関行列によって更新する処理を行う。 この手法は実施の形態2と同様である。前のステップで航跡相関行列の新航跡の部分に「1」は設定されないので、新航跡T71,T72,T73を含む仮説は生成されない。
この時点で残り時間の見積もりが行われ、十分時間が残っていればステップS208「航跡相関行列作成2」の処理に進み、残っていなければステップS207「準最適化とクラスタ分離」に進む。
【0062】
ステップS208「航跡相関行列作成2」では、前の「航跡相関行列作成」ステップで生成されなかった、新航跡に相当する列に「1」が設定される航跡相関行列が生成される。その次のステップS209「仮説の作成2」では、「仮説更新部」4が既存仮説を「航跡相関行列作成2」で生成された航跡相関行列によって更新する処理を行う。 前のステップで航跡相関行列の新航跡の部分に「1」が設定されるので、新航跡T71,T72,T73の何れかを含む仮説が生成される。
次のステップS207「準最適化とクラスタ分離」の動作は従来技術のステップS1206の動作と同様である。
【0063】
以上が1サイクル分のデータ処理の流れであり、1サイクルが終了すると、次の探知データを読み込み、次のサイクルの処理が実行される。
【0064】
以上のようにこの実施の形態によれば、まず新航跡を含まない仮説のみを作ってから、残り時間によって新航跡を含む仮説を作るか否か決定するので、指定時間内で仮説生成を実行することができる。
【0065】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6を説明する。フローチャートが図4、システム構成図が図1に相当する。ステップS211「不要航跡削除」以外は従来技術と同様であるので、このステップの動作のみについて説明する。
【0066】
ステップS211「不要航跡削除」では航跡選択部9がクラスタ内に保存されている航跡のうち、誤り航跡である可能性が高いものを削除する。この誤り航跡の判定基準として、
(1)最新サンプリングから過去連続Nサンプル以上で探知データと相関しない、すなわちメモリトラック状態であること。(図10(1)に例を示す)
(2)起点から最新サンプリングに至るまでの全サンプリング中の探知データと相関しない、すなわちメモリトラック状態であるサンプリングの割合が一定値を超えること。(図10(2)に例を示す)
がある。
【0067】
ステップS205「航跡相関行列生成」では、ゲート内判定行列は、「不要航跡削除」ステップで削除された航跡は考慮されない。
【0068】
以上のようにこの実施の形態によれば、目標を追尾していない可能性の高い航跡を更新する前に削除するので、ゲート内判定行列の列数が少なくなり、高速に仮説生成を実行することができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、第1の発明によれば、航跡選択部は、探知データ既存航跡のゲート内に入るか否かにより、その探知データからの新目標生成方針を決定するので、新航跡の発生を抑制することができ、従来より仮説生成の高速化を図ることができる。
【0070】
また、第2の発明によれば、一定時間経過後にクラスタ内に入った探知データについては新航跡を作らないので、ゲート内判定行列が小さくなり、航跡相関行列の数が減るのでデータの規模が縮小されることになり、高速に仮説生成を実行することができるという効果を奏する。
【0071】
また、第3の発明によれば、仮説毎にゲート内判定行列および航跡相関行列を作り、既存航跡のゲート内に入った探知データについては新目標を作らないので、高速に仮説生成を実行することができるという効果を奏する。
【0072】
また、第4の発明によれば、仮説毎にゲート内判定行列および航跡相関行列を作り、既存航跡と探知データの相関を小ゲートと大ゲートによって行い、小ゲートに入った探知データについては新目標を作らないので、高速に仮説生成を実行することができるという効果を奏する。
【0074】
また、第5の発明によれば、まず新航跡を含まない仮説のみを作ってから、残り時間によって新航跡を含む仮説を作るか否か決定するので、指定時間内で仮説生成を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る目標追尾装置の実施の形態1を示すシステム構成図である。
【図2】 実施の形態1〜4における追尾処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】 実施の形態5における追尾処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】 実施の形態6における追尾処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】 第1の発明におけるゲート内判定行列の例を示す説明図である。
【図6】 第5の発明におけるゲート内判定行列の例を示す説明図である。
【図7】 仮説毎に生成されるゲート内判定行列の例を示す説明図である。
【図8】 小ゲート、大ゲートの例を示す説明図である。
【図9】 仮説毎に生成されるゲート内判定行列の例を示す説明図である。
【図10】 実施の形態6における削除航跡の例を示す説明図である。
【図11】 従来技術のシステム構成図である。
【図12】 従来技術のフローチャート図である。
【図13】 従来技術におけるt=2までの探知データ処理時の例を示す説明図である。
【図14】 従来技術における航跡および新クラスタの作成ステップ終了時の例を示す説明図である。
【図15】 従来技術におけるクラスタ分離を示す説明図である。
【図16】 従来技術における探知データと航跡の相関の例を示す説明図である。
【図17】 従来技術におけるゲート内判定行列と航跡相関行列の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 観測ベクトル選択部、 2 クラスタ新設統合部、 3 ゲート内判定行列算出部、 4 航跡相関行列算出部、 5 仮説更新部、 6 仮説縮小部、7 クラスタ分離部、 8 ゲート算出部、 9 航跡選択部、 10 航跡決定部、 20 目標観測装置、 30 目標表示装置。
Claims (5)
- 互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、探知データが既存航跡のゲート内に入るか否かにより、この探知データからの新目標生成方針を決定することを特徴とすることを特徴とする目標追尾装置。 - 互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、クラスタ内のサンプリング回数により新目標生成の方針を決定することを特徴とすることを特徴とする目標追尾装置。 - 互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応する クラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、仮説毎にゲート内判定行列、航跡相関行列を作り、既存航跡のゲート内に入った探知データについては新目標を作らないことを特徴とする目標追尾装置。 - 互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記ゲート算出部は既存航跡に対し、大ゲート、小ゲートを算出し、
上記航跡選択部は前記小ゲートに入った探知データについては新目標を作らないことを特徴とする目標追尾装置。 - 互いに観測ベクトルを共有しないクラスタ毎に、このクラスタに含まれる既存の航跡を元に観測ベクトルの存在可能領域であるゲートを算出するゲート算出部と、
前記ゲートと全体の観測ベクトルとから前記各クラスタ毎に航跡対応の観測ベクトルを選択する観測ベクトル選択部と、
既存のクラスタ内の航跡と対応がとれない観測ベクトルによって新クラスタを作成し、また、複数のクラスタ内の航跡と対応付けられる観測ベクトルが存在する場合に対応するクラスタを統合するクラスタ新設統合部と、
前記各クラスタ毎に対応する全ての観測ベクトルの各々が不要信号、既存航跡、新目標のいずれに対応するのかの可能性を示すゲート内判定行列を算出するゲート内判行列算出部と、
前記ゲート内判定行列からそれぞれが仮説の一つの拡張方法を示す複数の航跡相関行列を算出する航跡相関行列算出部と、
航跡相関行列と既存の仮説から新しい仮説を作成する仮説更新部と、1以上の仮説から 一つを選択し航跡を決定する航跡決定部と、
仮説数を削減する仮説縮小部と、
航跡間の探知データの共有具合からクラスタを分離するクラスタ分離部と、
新航跡生成の方針の決定を行う航跡選択部と、
を備えた目標追尾装置において、
上記航跡選択部は、新目標のない仮説生成を先に行い、時間が十分に残っていなければ、新目標を考慮した仮説生成を行わないことを特徴とする目標追尾装置。
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