JP2004144616A - 目標追尾装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】計算機の処理能力の観点から仮説の設定数に上限が設けられている場合、既に航跡を確定することが可能な状態にある目標物があるとき、その目標物に係る仮説が多く残されて、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物に係る仮説がほとんど残されないことがある。この場合、目標物の航跡精度が著しく劣化する課題があった。
【解決手段】目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合する。
【選択図】 図1
【解決手段】目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の目標物の航跡を確定する目標追尾装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の目標追尾装置は、複数の目標物のうち、互いに影響を及ぼす目標物の集合毎にクラスタを設定し、各クラスタが目標物と観測点を対応付ける仮説を保持するようにしている。
そして、ゲート算出部が各クラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間を予測し、目標観測装置が複数の目標物を観測する。
【0003】
観測ベクトル選択部は、ゲート算出部の予測結果と目標観測装置の観測結果を比較して互いに影響を及ぼす目標物を識別し、クラスタ新設・統合部は、観測ベクトル選択部の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する。
そして、仮説更新部は、ゲート算出部の予測結果と目標観測装置の観測結果を参照して再構成後のクラスタに保持される仮説を更新し、航跡決定部は、仮説更新部により更新された仮説にしたがって目標物の航跡を決定する。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−166048公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の目標追尾装置は以上のように構成されているので、計算機の処理能力の観点から仮説の設定数に上限が設けられている場合、既に航跡を確定することが可能な状態にある目標物があるとき、その目標物に係る仮説が多く残されて、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物に係る仮説がほとんど残されないことがある。この場合、目標物の航跡精度が著しく劣化する課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る目標追尾装置は、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標追尾装置を示す構成図であり、図において、目標観測装置1(観測手段)は複数の目標物を観測し、追尾処理装置2は目標観測装置1の観測結果を用いて目標物の航跡を決定し、航跡表示装置3は追尾処理装置2により決定された目標物の航跡を表示する。
【0009】
初期値設定部11は目標物の追尾を開始する際、目標物に関する各種諸元を設定する機能を備え、クラスタ別データベース12は複数の目標物のうち、互いに影響を及ぼす目標物の集合毎に設定されているクラスタを格納し、各クラスタは目標物と観測点を対応付ける仮説を保持している。
予測手段を構成する予測処理部13はクラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間を予測する機能を備えている。
【0010】
観測ベクトル選択部14は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を比較して互いに影響を及ぼす目標物を識別する機能を備え、クラスタ再構成部15は観測ベクトル選択部14の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する機能を備えている。なお、観測ベクトル選択部14及びクラスタ再構成部15から再構成手段が構成されている。
【0011】
仮説作成部16は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して再構成後のクラスタに保持される仮説を作成する機能を備えている。
相関行列作成部17は相関行列を作成する機能を備え、航跡確定フラグ対応仮説生成部18は相関行列作成部17により作成された相関行列に基づいて仮説を生成する機能を備えるとともに、仮説を生成する際、航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識して、その目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させる機能を備えている。仮説信頼度算出部19は航跡確定フラグ対応仮説生成部18により生成された仮説の信頼度を算出する機能を備えている。
【0012】
平滑処理部20は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して、各目標物の位置,速度や予測誤差等を更新する機能を備え、準最適化処理部21は目標物の観測回数を計数して航跡確定フラグを管理する機能の他に、仮説作成部16により作成された仮説のうち、仮説信頼度算出部19により算出された信頼度が所定値以上の仮説のみを選択して、クラスタ別データベース12のクラスタに出力する機能を備えている。なお、仮説作成部16及び準最適化処理部21から仮説更新手段が構成されている。
航跡決定部22は各クラスタに保持されている更新後の仮説にしたがって目標物の航跡を決定する航跡決定手段を構成している。
【0013】
次に動作について説明する。
最初に、目標物と観測点の対応付けについて説明する。図2は目標物と観測点の対応例を示している。
ただし、T1,T2は目標物、×印は目標物T1,T2の観測点、(0,0)〜(3,2)は各観測点を区別するID、t(0)〜t(3)は点線で囲まれた領域における観測時刻、太矢印は目標物T1,T2の移動方向、細矢印は目標物T1,T2が観測点に至る航跡である。
【0014】
まず、観測時刻t(0)において、目標物T1が観測点(0,0)に対応付けられ、目標物T2が観測点(0,1)に対応付けられているとき、観測時刻t(1)において、観測点(1,0)と(1,1)が観測されたものとする。この場合、目標物T1の移動先の予測結果が観測点(1,0)で、目標物T2の移動先の予測結果が観測点(1,1)であれば、目標物T1を観測点(1,0)に対応付け、目標物T2を観測点(1,1)に対応付ける。
このとき、上記の対応付けにしたがって目標物T1,T2の運動諸元(例えば、位置、速度、予測誤差)を更新する。
【0015】
次に、観測時刻t(2)において、観測点(2,0)と(2,1)が観測された場合、目標物T1,T2の移動先の予測結果がそれぞれ観測点(2,0)と(2,1)であるとすると、次の仮説A,Bを設定して、目標物T1,T2の観測点を対応付ける。
仮説A:目標物T1→観測点(2,0)、目標物T2→観測点(2,1)
仮説B:目標物T1→観測点(2,1)、目標物T2→観測点(2,0)
このとき、仮説Aと仮説Bを評価し、仮説毎に目標物T1,T2の運動諸元を更新する。
【0016】
次に、観測時刻t(3)において、観測点(3,0)と(3,1)と(3,2)が観測された場合、目標物T1,T2の移動先の予測結果と仮説A,Bを参照して、次の仮説a,b,c,dを設定し、目標物T1,T2の観測点を対応付ける。
仮説a:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,1)
仮説b:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,2)
仮説c:目標物T1→観測点(3,1)、目標物T2→観測点(3,0)
仮説d:目標物T1→観測点(3,2)、目標物T2→観測点(3,0)
このとき、仮説a〜dを評価し、仮説毎に目標物T1,T2の運動諸元を更新する。
【0017】
以上が目標物を複数回観測しながら複数の仮説を設定して、目標物と観測点を対応付ける際の処理の流れである。
なお、図2の例では、目標物T1,T2は、互いに同じ観測点を対応付けの候補として有する。このため、目標物T1,T2は、その後の観測点との対応付けにおいて、互いに影響を及ぼし合う関係にある。
クラスタは、上記のように、互いに影響がある目標物同士をまとめたものである。複数回の観測をもって、目標物と観測点の対応付けを行う場合、1つのクラスタは、複数の仮説を有することになる。
目標追尾装置は、クラスタに保持されている複数の仮説の中の一部を選択(あるいは、一部を破棄)することにより、互いに影響がない2以上のクラスタに分離したり、異なるクラスタの目標物同士が同じ観測点を候補として有するという条件のもとで、2以上のクラスタを1つに結合したりする。
以下、図1の目標追尾装置の動作を具体的に説明する。
【0018】
まず、追尾処理装置2の予測処理部13は、クラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間(以下、ゲートという)を予測する。
即ち、ゲートは中心座標と、その中心座標からの広がりとによって表現することができ、その中心座標は目標物の観測時刻における予測位置である。したがって、目標物の運動が等速直線運動であって、目標観測装置1が一定の時間間隔(サンプリング間隔)で観測を行うものとすると、ゲートの中心座標は次のように求めることができる。また、中心座標からの広がりは、目標物の予測誤差と目標観測装置1のSNなどから求めることができる。
ゲートの中心座標=前回の観測位置+目標物の推定速度×サンプリング間隔
ただし、前回の観測位置及び目標物の推定速度はクラスタ別データベース12に保存されているものとする。
【0019】
追尾処理装置2の観測ベクトル選択部14は、目標観測装置1が複数の目標物を観測して、その観測結果である観測ベクトルをそれぞれ出力すると、その観測ベクトル毎に、予測処理部13から出力されたゲートとの内外判定を実施して、互いに影響を及ぼす目標物を識別する。
具体的には、観測ベクトルをZm、ゲートの中心座標をZt、ゲートの広がりを示す行列をS、所定の閾値をdとして下記の評価式に代入し、下記の評価式を満足するとき、観測ベクトルがゲートの中に存在するものとし、観測ベクトルが同一のゲートの中に存在する目標物同士は互いに影響を及ぼすものと認識する。
(Zm−Zt)T×S×(Zm−Zt)≦d
ただし、Tは行列の転置を示す記号である。
【0020】
追尾処理装置2のクラスタ再構成部15は、観測ベクトル選択部14の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する。
即ち、各クラスタは、仮説のリストと、目標物のリストと、目標物のゲートに入っている観測ベクトルのリストとから構成されており、例えば、ある観測ベクトルがクラスタAのリストに含まれ、クラスタBのリストにも含まれているとき、クラスタAとクラスタBを統合する。これをクラスタの再構成と呼ぶものとする。
具体的には、異なるクラスタに属する2つの目標物に着目すると、2つの目標物のゲートに同一の観測ベクトルが存在するとき、2つのクラスタを統合して1つのクラスタとすることにより、クラスタを再構成する。なお、どのゲートにも入らない観測ベクトルを新しいクラスタとして誕生させるようにしてもよい。
【0021】
追尾処理装置2の仮説作成部16は、クラスタ再構成部15が複数のクラスタを再構成すると、再構成後のクラスタに保持される仮説を作成する。
即ち、仮説作成部16の相関行列作成部17は、再構成後のクラスタに保持される仮説毎に、観測点が各目標物に対応付けられる可能性と、観測点が新航跡に対応付けられる可能性と、観測点が不要信号に対応付けられる可能性とを要素に持つ相関行列を作成する。
【0022】
ここで、図3は目標物と観測点の位置関係を示す一例であり、T1〜T4は目標物、□は目標物T1〜T4の前回観測時における位置、G1〜G4は目標物T1〜T4が一定の確率以上での観測される空間であるゲート、m1〜m4は目標観測装置1によって観測され、かつ、観測ベクトル選択部14によって当該クラスタに関連付けられた観測点であり、文字の下の×印が観測された座標を示している。
【0023】
図4は図3の状態にあるときに生成される相関行列を示し、観測点m1〜m4は目標物T1〜T4、新航跡又は不要信号のいずれかに対応付けられる。図4では観測点m1が目標物T1〜T4に対応付けられる可能性をT1m1〜T4m1と表記し、観測点m1が新航跡である可能性をNm1と表記し、観測点m1が不要信号である可能性をCm1と表記している。観測点m2〜m4についても同様である。なお、これら可能性を示す値を相関度と呼ぶものとする。
【0024】
仮説作成部16の航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、相関行列作成部17が相関行列を作成すると、その相関行列に基づいて評価値が最も高い最良仮説を生成する。
最良仮説の生成方法は、相関行列の各行から任意の要素を1つずつ選択し、その選択した要素を相互に掛け合わせる乗算演算を行う。そして、全ての要素の組み合せについて上記の乗算演算を行うと(ただし、同一の列では、2以上の要素を選択しない条件の下で、要素の組み合せを行う)、各乗算結果を相互に比較して、最も乗算値が高くなる要素の組み合せを選択する。
例えば、T1m1,T2m2,T3m4,T4m3の組み合せの乗算値が最高値になる場合は、目標物T1→観測点m1、目標物T2→観測点m2、目標物T3→観測点m4、目標物T4→観測点m3の対応関係を示す仮説が最良仮説となる。
【0025】
仮に、目標物T1,T2の航跡確定フラグがオン(既に航跡を確定することが可能な状態にあることを示す)で、目標物T1,T2の航跡確定フラグがオフ(未だ航跡を確定することが不可能な状態にあることを示す)であるとすると、最良仮説は、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説(目標物T1→観測点m1、目標物T2→観測点m2)と、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に係る仮説(目標物T3→観測点m4、目標物T4→観測点m3)の集合であるとみなすことができる。
【0026】
航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、n個の仮説を生成する場合、上記最良仮説の他に、評価値が高い順にn−1個の仮説を生成する必要があるが、既に航跡を確定することが可能な状態にある目標物T1,T2に係る仮説は1つだけにして、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物T3、T4に係る仮説を数多く生成するため、まず、図4の相関行列から目標物T1,T2に係る2つの行と、観測点m1,m2に係る2つの列を削除する。
航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、削除後の相関行列から上記の最良仮説と同様にして、1番評価値が高い仮説、2番目に評価値が高い仮説、・・・、n−1番目に評価値が高い仮説を生成する。
そして、航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、上記のようにしてn−1個の仮説を生成すると、目標物T1,T2に係る仮説(最良仮説の一部を構成する仮説)をn−1個の仮説にそれぞれ追加して、n個の仮説を完成させる。
【0027】
仮説作成部16の仮説信頼度算出部19は、航跡確定フラグ対応仮説生成部18がn個の仮説を生成すると、n個の仮説の信頼度を算出する。
例えば、組み合せの乗算値と元仮説の信頼度を掛け合わせることにより、仮説の信頼度を算出する。
【0028】
追尾処理装置2の平滑処理部20は、予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して、各目標物の位置,速度や予測誤差等を更新し、その更新後の値をクラスタ別データベース12に格納する。
例えば、目標物の位置は、ゲートの中心座標Zt(予測位置)と観測ベクトルZm(観測位置)の中間点として算出し、目標物の速度は、前回の観測位置と今回の観測位置とサンプリング間隔とから算出する。
また、予測誤差は、追尾開始時に設定された大きな初期値から、予測位置と観測位置のずれが徐々に小さくなれば、徐々に小さな値に更新する。
【0029】
追尾処理装置2の準最適化処理部21は、仮説作成部16が仮説の生成の際に参照する航跡確定フラグを管理する。
例えば、ある目標物について初めて観測が行われると、その目標物についてフラグ値がオフの航跡確定フラグを設定する。また、ある目標物についての観測が予め設定された回数(当該設定回数は目標物毎に設定されてもよいし、全目標物に共通の回数が設定されてもよい)に到達すると、その目標物の航跡確定フラグをオンに設定する。
【0030】
また、準最適化処理部21は、仮説作成部16の航跡確定フラグ対応仮説生成部18がn個の仮説を生成し、仮説信頼度算出部19がn個の仮説の信頼度を算出すると、n個の仮説のうち信頼度が予め設定された所定値以上の仮説のみを選択し、その選択した仮説を各クラスタが保持することにより、各クラスタに保持される仮説を更新する。
【0031】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するように構成したので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させるように構成したので、構成の複雑化を招くことなく、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物に係る仮説を数多く生成することができる効果を奏する。
【0032】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説生成部31は相関行列作成部17により作成された相関行列に基づいて再構成後のクラスタに保持される可能性のある仮説を予め設定された数だけ生成する機能を備え、仮説統合部32は仮説生成部31により航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説が複数生成された場合、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
【0033】
上記実施の形態1では、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させることにより、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を複数生成しないものについて示したが、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を複数求めた後、その複数の仮説を統合するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0034】
仮説生成部31は、上記実施の形態1と同様にして、相関行列作成部17が相関行列を作成すると、その相関行列に基づいて予め設定された数だけ仮説を生成する。
例えば、図4の相関行列が作成された場合、観測点m1〜m4を目標物T1〜T4、新航跡又は不要信号のいずれかに対応付ける仮説を生成するが、ここでは、説明の便宜上、下記に示すように、4つの仮説の集合A〜D(以下、仮説の集合A〜Dは“仮説A〜D”と表記するが、仮説A〜Dはそれぞれ4つ仮説から構成されている)が生成されたものとする。なお、仮説A〜Dは「観測点−目標物(対応付け先)」という形で表している。
【0035】
仮説A m1−T1,m2−T2 ,m3−T3,m4−T4
仮説B m1−T2,m2−T1 ,m3−T3,m4−T4
仮説C m1−T1,m2−不要信号,m3−T2,m4−T3
仮説D m1−T1,m2−不要信号,m3−T3,m4−T4
仮説統合の説明を行うため、仮説A〜Dを目標物を基準にして表現しなおすと次のようになる。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
なお、仮説C,Dの対応先の「無」とは、この観測において、その目標物が観測できなかったことを示している。
【0036】
仮説統合部32は、仮説生成部31が仮説A〜Dを生成すると、航跡確定フラグがオンである目標物T1,T2がどの観測点に対応付けられているかを調査する。
この例では、目標物T1が観測点m1又はm2に対応付けられていると認識し、目標物T2が観測点m1,m2,m3に対応付けられ、あるいは、対応付け無しと認識する。
【0037】
そして、仮説統合部32は、目標物T1,T2における複数の対応付けを統合する。
対応付けの統合方法としては、例えば、「最も近い観測点を採用する」、「観測点の重心」、「仮説の評価値に基づく荷重平均」などを用いる。
この対応付けの統合により、目標物T1と目標物T2の航跡は確定し、その対応付けは同じになる。その結果、「仮説Aと仮説Bと仮説D」は同一の仮説となるため、仮説統合部32は、仮説Aと仮説Bと仮説Dを統合する。
【0038】
なお、仮説を統合する際、各仮説の評価値も足し合わせる。この足し合わせは単純な加算でもよいし、影響度に合わせて別途算出式を設定してもよい。
上記の統合処理により、仮説A〜Dは次の2つの仮説X,Yにまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説Y T1−統合1,T2−統合2,T3−m4,T4−無
この実施の形態2によれば、演算量を削減することができる効果を奏する。
【0039】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図5と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説統合部33は仮説生成部31により生成された複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に係る仮説の対応先である観測点を基準にして上記複数の仮説を分類し、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
仮説分類部34は仮説生成部31により生成された複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に対応する観測点を基準にして上記複数の仮説を分類する機能を備え、分類別仮説統合部35は同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
【0040】
上記実施の形態2では、仮説統合部32は仮説生成部31により航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説が複数生成された場合、直ちに航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物に対応する観測点を基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類し、その後、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0041】
まず、仮説生成部31は、上記実施の形態2と同様にして、仮説A〜Dを生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
【0042】
仮説分類部34は、仮説生成部31が仮説A〜Dを生成すると、仮説A〜Dの中で、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点を基準にして、下記に示すように、仮説A〜Dを分類する。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D
分類2 仮説C
仮説A,仮説B,仮説Dにおける目標物T3の対応先が観測点m3である点で共通し、かつ、目標物T4の対応先が観測点m4である点で共通しているため、同一分類に分類されている。
【0043】
分類別仮説統合部35は、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。
即ち、分類1に属する仮説A,仮説B,仮説Dの中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。この例では、分類2には1つの仮説しか属していないので、分類2に関しては仮説の統合は行われない。
【0044】
上記の統合処理により、仮説A〜Dは次の2つの仮説X’,Y’にまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X’ T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説Y’ T1−m1 ,T2−m3 ,T3−m4,T4−無
【0045】
ここで、上記実施の形態2における統合後の仮説X,Yと、この実施の形態3における統合後の仮説X’,Y’を比較すると、上記実施の形態2では、仮説Xにおいて、観測点m3が目標点T3と対応付けられると同時に、目標点T2とも対応付けられる(統合2が、仮説CにおけるT2−m3を考慮している為)。
これに対して、この実施の形態3では、仮説X’において、仮説Cを考慮せずに統合が行われるので、観測点m3は目標点T3とのみ対応付けられ、目標点T2と対応付けられることはない。
したがって、この実施の形態3によれば、1つの観測点が複数の目標物に対応付けられることがないので、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
【0046】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点を基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点の和集合と、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に対応する観測点の和集合とを基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0047】
ここでは、説明の便宜上、仮説生成部31が下記の5つの仮説A〜Eを生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
仮説E T1−m2,T2−m1,T3−m4,T4−m3
【0048】
上記実施の形態3における仮説分類部34は、目標物T3,T4に対応する観測点を基準にするので、次のように3つに分類することになる。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D
分類2 仮説C
分類3 仮説E
これに対して、この実施の形態4における仮説分類部34は、目標物T3,T4に対応する観測点の和集合と、目標物T1,T2に対応する観測点の和集合とに重複がないものは同一分類とみなすようにする。したがって、次のように2つに分類することになる。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D,仮説E
分類2 仮説C
【0049】
分類別仮説統合部35は、上記実施の形態3と同様に、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。
上記の統合処理により、仮説A〜Eは次の3つの仮説X’,X”,Y’にまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X’ T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説X” T1−統合1,T2−統合2,T3−m4,T4−m3
仮説Y’ T1−m1 ,T2−m3 ,T3−m4,T4−無
したがって、この実施の形態4によれば、上記実施の形態3と同様に、1つの観測点が複数の目標物に対応付けられることがないので、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
【0050】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図6と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説補充要請部36は仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説の追加生成を要請する機能を備えている。
【0051】
上記実施の形態2〜4では、特に言及していないが、仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説補充要請部36が仮説の追加生成を仮説生成部31に要請するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0052】
仮説補充要請部36は、仮説統合部33が仮説の統合処理を完了すると、統合後の仮説の個数と、予め設定された個数とを比較し、統合後の仮説の個数が予め設定された個数より少ない場合、その不足分だけ仮説の生成を指示する生成要請信号を仮説生成部31に出力する。
仮説生成部31は、仮説補充要請部36から生成要請信号を受けると、不足分に相当する数だけ仮説を生成する。
この際、仮説生成部31は、航跡の確定精度を高める観点から、評価値の高い仮説から優先的に生成するものとする。
【0053】
これにより、常に予め設定された個数の仮説を確保することができるため、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
なお、仮説の追加生成を要請しても、仮説統合部33の統合処理によって設定数に満たない数の仮説しか得られない場合もあり得る。その場合には、仮説の個数が設定数に満たなくても、仮説の補充を打ち切る条件を別途設定してもよい。
【0054】
実施の形態6.
上記実施の形態5では、仮説生成部31が予め設定された個数の仮説を生成するものについて示したが、例えば、ネットワークに接続された複数のプロセッサが仮説作成部16を構成する場合(仮説生成部31と仮説補充要請部36を別のプロセッサとする場合)、仮説補充要請部36から生成要請信号が出力されてから仮説生成部31に到達するまでの遅延時間が大きくなり、その生成要請信号の発生回数が増加する場合がある。
【0055】
そこで、この実施の形態6では、仮説補充要請部36から出力される生成要請信号の発生回数を抑制して、処理負荷や実行時間を軽減できるようにする。
具体的には、まず、仮説生成部31が予め設定された個数以上の仮説を生成する。
仮説補充要請部36は、仮説統合部33の統合処理によって残った仮説の個数が予め設定された個数を超えている場合、その超過分の仮説を廃棄するようにする。
一方、残った仮説の個数が予め設定された個数に満たない場合、上記実施の形態5と同様にして、生成要請信号を仮説生成部31に出力するようにする。
この実施の形態6によれば、仮説補充要請部36から出力される生成要請信号の発生回数を抑制することができるため、処理負荷や実行時間を軽減することができる効果を奏する。
【0056】
実施の形態7.
上記実施の形態6では、統合処理によって残った仮説の個数が予め設定された個数を超えている場合、その超過分の仮説を廃棄するものについて示したが、その超過分の仮説を廃棄せずに、統合後の仮説の全てをクラスタ別データベース12に格納するようにしてもよい。
このようにすれば、次回の観測時に余裕があれば、超過分の仮説を処理対象に含めることができる一方、特に余裕がなければ、この時点で超過分の仮説を破棄して、予め設定された個数の仮説で処理を行うという選択が可能になる。
【0057】
実施の形態8.
上記実施の形態5〜7では、航跡確定フラグのオン・オフに関わらず、単に評価値の高い仮説から順番に追加生成するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に係る仮説であって、その目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を評価値の高いものから優先的に生成するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0058】
ここでは、説明の便宜上、仮説生成部31が図4の相関行列から次の4つの仮説を生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
【0059】
これらの仮説は、航跡確定フラグがオフである目標物T3,T4の対応付けの違いで見ると、「T3−m3,T4−m4」と「T3−m4,T4−無」の2つにまとめることができる。
ここで、図4の相関行列において、目標物T3が観測点m3に対応付けられる可能性を示すT3m3を0にして、仮説の生成を行えば、得られる仮説は、目標物T3が観測点m3以外に対応付けられるものになる(もしくは未観測となる)。
また、図4の相関行列のT3m1〜T3m4の列と、T1m3〜T4m3,Cm3の行を取り除き、さらに、T4m4を0にした行列から仮説の生成を行えば、得られる仮説は、目標物T3は観測点m3に対応付けられるが、目標物T4が観測点m4以外に対応付けられるものになる(もしくは未観測となる)。
【0060】
つまり、この2つにおいて生成される仮説は、互いに必ず異なる仮説であり、かつ、「T3−m3,T4−m4」とは対応づけが異なるものになる。「T3−m4,T4−無」でも同じような修正を加えた上で仮説の生成を行えば、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を生成することができる。
したがって、この実施の形態8によれば、予め設定された個数に至るまでの仮説の生成効率が向上し、演算負荷を軽減することができる効果を奏する。
なお、このように修正を加えた相関行列群は、仮説生成の条件が同じになったり、包含関係になったりするケースが生じる。その場合は、その重複は無駄な処理であるため、これを除去する。
【0061】
実施の形態9.
上記実施の形態8では、仮説生成部31が仮説の追加要請を受けたとき、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を優先的に生成するものについて示したが、仮説の補充時からではなく、当初の仮説生成時から、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を優先的に生成するようにしてもよい。
【0062】
実施の形態10.
上記実施の形態8では、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説の中で、評価値が高い仮説を優先的に生成するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4の何れにおいても仮説として成立しない場合を除き、その目標物T3,T4の対応先が異なる仮説を生成するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0063】
上記実施の形態8の場合、航跡確定フラグがオフである目標物に偏りがあると、航跡確定フラグがオフである目標物の中には、複数の候補が残らないものが生じる可能性がある。
例えば、次の4つの仮説が生成されたとする。
仮説A m1−T1,m2−T2,m3−T3 ,m4−T4
仮説B m1−T1,m2−T3,m3−T2 ,m4−T4
仮説C m1−T2,m2−T3,m3−新航跡 ,m4−T4
仮説D m1−T1,m2−T2,m3−不要信号,m4−T4
【0064】
上記の仮説A〜Dを目標物を基準にして表現しなおすと次のようになる。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m1,T2−m3,T3−m2,T4−m4
仮説C T1−無 ,T2−m1,T3−m2,T4−m4,新航跡−m3
仮説D T1−m1,T2−m2,T3−無 ,T4−m4
【0065】
新航跡は航跡確定フラグがオフである目標物であるとすると、上記の仮説A〜Dは、航跡確定フラグがオフである目標物の対応先が異なる仮説となる。しかし、目標物T4の対応先は、全て観測点m4になるケースのみである。
そこで、目標物T4の対応先が観測点m4以外となる仮説は、上記実施の形態8における相関行列の修正と同様にT4m4を0にして仮説を生成すればよい。
ただし、上記実施の形態8では、重複する仮説が生成されないようにしていたが、重複する仮説の生成を許し、図4の相関行列のT3m3を0にした行列から仮説を生成するとともに、図4の相関行列のT4m4を0にした行列から仮説を生成する。
これにより、目標物T4に関しても対応先が異なる仮説を得ることができる。
【0066】
上記の処理を航跡確定フラグがオフである目標物の全てに適用し、同一の仮説が生成されたら、重複分を破棄することで、航跡確定フラグがオフである全目標物において、複数の対応先(もしくは、対応先が無い未観測という状態)を持つことができるようになる。
なお、航跡確定フラグがオフである目標物の全てに本方式を適用するのではなく、目標物に優先度を設けることにより、航跡確定フラグがオフである目標物の一部にだけ本方式を適用するようにしてもよい。
【0067】
実施の形態11.
上記実施の形態10では、目標物T1〜T4を観測し、それらの観測点を目標物T1,T2,T3,T4,新航跡又は不要信号のいずれかに対応付けるものについて示したが、ある目標物の観測点が未観測ではない場合、仮説の生成を優先するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0068】
この実施の形態11では、仮説生成部31が仮説を生成する際、相関行列作成部17により作成された相関行列の行と列を入れ換えることにより、各目標物を観測点m1,m2,m3,m4又は未観測のいずれかに対応付けるようにする。
その結果、目標物に対応付けられなかった観測点を新航跡か不要信号のいずれかに対応付けるようにする。この場合も、上記実施の形態10と同様の仮説を得ることができる。
なお、対応付けられなかった観測点を、新航跡か不要信号のいずれかに対応付ける処理は、組み合せ問題を解く必要がなく、観測点毎に独立に行える処理であるため、処理負荷への影響をほとんど考えなくてもよい。
【0069】
図8は図4の相関行列の行と列を入れ換えた行列を示す、T1m1〜T4m4は、図4と同じように目標物T1〜T4がそれぞれ観測点m1〜m4に対応付けられる可能性を示している。また、T1L〜T4Lは、目標物T1〜T4がそれぞれ未観測とされる可能性を示している。
【0070】
上記実施の形態10の仮説生成部31は、航跡確定フラグがオフである目標物の対応付けが異なる仮説の生成を図4の相関行列を元に、各観測点が目標物、不要信号、新航跡のいずれかを選択するという形で仮説の生成を行っており、未観測以外の仮説を求めるのが困難であった。
これに対して、この実施の形態11では、目標物が観測点か未観測を選択するようにしているので、目標物が未観測以外となる仮説も簡単に求めることができる。
例えば、目標物T1が未観測とならない場合の仮説は、図8の相関行列のT1Lを0に書き換えた行列を元に仮説の生成をするだけでよい。
【0071】
実施の形態12.
上記実施の形態11では、各目標物を観測点m1,m2,m3,m4又は未観測のいずれかに対応付け、その結果、目標物に対応付けられなかった観測点を新航跡か不要信号のいずれかに対応付けるものについて示したが、このままでは、既存の目標物よりも新航跡である確率が高いという仮説を生成するのが困難である。そこで、次のような4つの手順で仮説を生成するようにしてもよい。
【0072】
・手順(1)
各観測点において、不要信号や新航跡である可能性が他の目標物であるとする可能性よりも大きい場合、その観測点を相関行列に用いる観測点から除外する。
・手順(2)
手順(1)で除外されなかった観測点と目標物から相関行列を作成する。
・手順(3)
上記の相関行列から仮説を生成する。
・手順(4)
手順(3)で生成された仮説において、目標物との対応付けが無かった観測点と、手順(1)で除外された観測点に対し、新航跡か不要信号かの対応付けを行い、手順(3)で生成された仮説に対して当該対応付け結果を付加する。
【0073】
ただし、数多くの仮説を生成する場合には、手順(1)で除外した観測点を不要信号や新航跡とする場合の仮説を全て求めても、まだ仮説の生成が続く場合もある。その場合には、除外せずに相関行列に組み込んで仮説の生成を行うことになる。
この方法であれば、新航跡である可能性が高い観測点について、その観測点が新航跡になる仮説を確実に生成することができる。
【0074】
実施の形態13.
上記実施の形態5では、仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説補充要請部36が仮説の追加生成を仮説生成部31に要請し、仮説生成部31が評価値の高い順番に仮説を追加生成するものについて示したが、仮説生成部31は、仮説生成部31からの追加生成の要請に関わらず、評価値が所定の閾値より高い仮説であれば無条件に生成するようにしてもよい。
この場合、仮説生成部31が膨大な数の仮説を生成する場合があるが、仮説の生成を評価値の高いものから順番に行う必要がないため、1つの仮説の生成に要する演算負荷を大幅に削減することができる効果を奏する。
【0075】
実施の形態14.
上記実施の形態5では、仮説の生成数が予め設定された個数に到達するまで仮説補充要請部36が仮説の追加生成を要請するものについて示したが、仮説補充要請部36が既に生成済みの仮説の評価値の総和を計算し、その評価値の総和が所定の閾値を越えるまで仮説の追加生成を要請するようにしてもよく、上記実施の形態5と同様の効果を奏することができる。
【0076】
実施の形態15.
上記実施の形態14では、仮説補充要請部36が仮説の評価値に基づいて仮説の追加生成を制御するものについて示したが、図9に示すように、仮説信頼度算出部19と仮説補充要請部36を入れ換えることにより、仮説補充要請部36が仮説信頼度算出部19により算出された信頼度と閾値を比較して、仮説の追加生成を制御するようにしてもよく、上記実施の形態14と同様の効果を奏することができる。
【0077】
実施の形態16.
上記実施の形態13では、仮説の生成数が予め設定された個数に到達するまで仮説補充要請部36が仮説の追加生成を要請するものについて示したが、仮説補充要請部36に対して仮説の生成処理時間を予め設定し、その生成処理時間内に限り、仮説の追加生成を要請することができるようにしてもよい。
これにより、仮説の生成処理を処理負荷が少ない状態時に制限することができるため、装置の処理効率を高めることができる効果を奏する。
【0078】
実施の形態17.
上記実施の形態11,12では、仮説生成部31が相関行列の行と列の要素を入れ換えた行列を元に仮説の生成を実施し、航跡確定フラグがオフである目標物T3,T4について2以上の候補が残るように仮説を生成するものについて示したが、この航跡確定フラグの代わりに、目標物毎の航跡候補数を示す航跡候補数パラメータを参照するようにしてもよい。
この場合、違う候補を確保できるだけでなく、その候補の数をパラメータとして設定できるようになる。具体的には下記の通りである。
【0079】
例えば、図8の相関行列を元にして仮説の生成を実施し、得られた仮説において、目標物T3が観測点m3に対応付けられた時、図8のT3m3の値を0にして再度仮説の生成を行えば、目標物T3が観測点m3以外に対応付けられた仮説を得ることができる。その対応先が仮に観測点m4であるとすれば、T3m3に続きT3m4も0にして再度仮説の生成を行えば、目標物T3の対応先として第3の候補を持つ仮説を得ることができる。
航跡確定フラグを用いれば、複数の候補を残すことができるが、航跡候補数パラメータを用いれば、複数の候補を残すことができるとともに、残す数まで設定することができる。
【0080】
実施の形態18.
上記実施の形態1〜16では、航跡確定フラグを参照して仮説の統合を実施するものについて示したが、その航跡確定フラグを参照する代わりに、目標物毎の観測数を示す航跡遅延パラメータを参照して仮説の統合を実施するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0081】
航跡遅延パラメータは、値が1の場合は航跡確定フラグがオンであることと等価であり、2以上の場合は航跡確定フラグがオフであることと等価である。
図2を参照して、目標物T1,T2の確定遅延パラメータの値がそれぞれ2である場合の動作を説明する。なお、説明を簡単化するため、観測されないケースから新航跡が生まれるケースは除外する。
【0082】
(1)時刻t(1)の観測において、「目標物T1が(0,0)から(1,0)に移動し、目標物T2が(0,1)から(1,1)に移動するものとする仮説」のみが生成される。
(2)時刻t(2)の観測において、目標物T1,T2の移動先を予測した結果、次の2つの仮説が生成される。
仮説A:目標物T1→観測点(2,0)、目標物T2→観測点(2,1)
仮説B:目標物T1→観測点(2,1)、目標物T2→観測点(2,0)
(3)この例では、目標物T1,T2の航跡遅延パラメータの値がそれぞれ2であるため、仮説A,Bはそのまま残される。
【0083】
(4)時刻t(3)の観測において、目標物T1,T2の移動先を予測すると、その予測結果と仮説A,Bに基づいて次の4つの仮説が生成される。
仮説a:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,1)
仮説b:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,2)
仮説c:目標物T1→観測点(3,1)、目標物T2→観測点(3,0)
仮説d:目標物T1→観測点(3,2)、目標物T2→観測点(3,0)
(5)目標物T1,T2の航跡遅延パラメータの値がそれぞれ2であるため、時刻t(1)〜t(2)の移動である航跡を確定する。つまり、目標物T1を観測点(2,0)に対応付ける仮説Aも、観測点(2,1)に対応付ける仮説Bも残っているが、目標物T1の移動先をここで1つに確定させる。この例では、目標物T1,T2の対応先として、仮説Aの割り当てと同じものが選択されたとすると、仮説Bの状態がなくなるたため、(4)で生成した4つの仮説は、準最適化処理部21によって、仮説c,dが破棄され、仮説a,bが残ることになる。
【0084】
以上の動作によって、時刻t(3)までの処理が終る。この例では、目標物の対応先を簡単な選択の例で済ませているが、前述の実施の形態と同様の統合を行うこともできる。
また、前述の実施の形態の統合において、航跡確定フラグがオンである目標物が複数の候補を残す場合があったが、この実施の形態18においても、航跡遅延パラメータの観測回数を過ぎても複数の候補が残る場合がある。
この実施の形態18によれば、航跡を確定するまでの観測数を目標物毎に制御することができる効果を奏する。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するように構成したので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による目標追尾装置を示す構成図である。
【図2】目標物と観測点の対応例を示す説明図である。
【図3】目標物と観測点の位置関係を示す説明図である。
【図4】相関行列の一例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図8】相関行列の一例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態15による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【符号の説明】
1 目標観測装置(観測手段)、2 追尾処理装置、3 航跡表示装置、11初期値設定部、12 クラスタ別データベース、13 予測処理部(予測手段)、14 観測ベクトル選択部(再構成手段)、15 クラスタ再構成部(再構成手段)、16 仮説作成部(仮説更新手段)、17 相関行列作成部、18 航跡確定フラグ対応仮説生成部、19 仮説信頼度算出部、20 平滑処理部、21 準最適化処理部(仮説更新手段)、22 航跡決定部(航跡決定手段)、31 仮説生成部、32 仮説統合部、33 仮説統合部、34 仮説分類部、35 分類別仮説統合部、36 仮説補充要請部。
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の目標物の航跡を確定する目標追尾装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の目標追尾装置は、複数の目標物のうち、互いに影響を及ぼす目標物の集合毎にクラスタを設定し、各クラスタが目標物と観測点を対応付ける仮説を保持するようにしている。
そして、ゲート算出部が各クラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間を予測し、目標観測装置が複数の目標物を観測する。
【0003】
観測ベクトル選択部は、ゲート算出部の予測結果と目標観測装置の観測結果を比較して互いに影響を及ぼす目標物を識別し、クラスタ新設・統合部は、観測ベクトル選択部の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する。
そして、仮説更新部は、ゲート算出部の予測結果と目標観測装置の観測結果を参照して再構成後のクラスタに保持される仮説を更新し、航跡決定部は、仮説更新部により更新された仮説にしたがって目標物の航跡を決定する。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−166048公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の目標追尾装置は以上のように構成されているので、計算機の処理能力の観点から仮説の設定数に上限が設けられている場合、既に航跡を確定することが可能な状態にある目標物があるとき、その目標物に係る仮説が多く残されて、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物に係る仮説がほとんど残されないことがある。この場合、目標物の航跡精度が著しく劣化する課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る目標追尾装置は、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標追尾装置を示す構成図であり、図において、目標観測装置1(観測手段)は複数の目標物を観測し、追尾処理装置2は目標観測装置1の観測結果を用いて目標物の航跡を決定し、航跡表示装置3は追尾処理装置2により決定された目標物の航跡を表示する。
【0009】
初期値設定部11は目標物の追尾を開始する際、目標物に関する各種諸元を設定する機能を備え、クラスタ別データベース12は複数の目標物のうち、互いに影響を及ぼす目標物の集合毎に設定されているクラスタを格納し、各クラスタは目標物と観測点を対応付ける仮説を保持している。
予測手段を構成する予測処理部13はクラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間を予測する機能を備えている。
【0010】
観測ベクトル選択部14は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を比較して互いに影響を及ぼす目標物を識別する機能を備え、クラスタ再構成部15は観測ベクトル選択部14の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する機能を備えている。なお、観測ベクトル選択部14及びクラスタ再構成部15から再構成手段が構成されている。
【0011】
仮説作成部16は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して再構成後のクラスタに保持される仮説を作成する機能を備えている。
相関行列作成部17は相関行列を作成する機能を備え、航跡確定フラグ対応仮説生成部18は相関行列作成部17により作成された相関行列に基づいて仮説を生成する機能を備えるとともに、仮説を生成する際、航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識して、その目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させる機能を備えている。仮説信頼度算出部19は航跡確定フラグ対応仮説生成部18により生成された仮説の信頼度を算出する機能を備えている。
【0012】
平滑処理部20は予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して、各目標物の位置,速度や予測誤差等を更新する機能を備え、準最適化処理部21は目標物の観測回数を計数して航跡確定フラグを管理する機能の他に、仮説作成部16により作成された仮説のうち、仮説信頼度算出部19により算出された信頼度が所定値以上の仮説のみを選択して、クラスタ別データベース12のクラスタに出力する機能を備えている。なお、仮説作成部16及び準最適化処理部21から仮説更新手段が構成されている。
航跡決定部22は各クラスタに保持されている更新後の仮説にしたがって目標物の航跡を決定する航跡決定手段を構成している。
【0013】
次に動作について説明する。
最初に、目標物と観測点の対応付けについて説明する。図2は目標物と観測点の対応例を示している。
ただし、T1,T2は目標物、×印は目標物T1,T2の観測点、(0,0)〜(3,2)は各観測点を区別するID、t(0)〜t(3)は点線で囲まれた領域における観測時刻、太矢印は目標物T1,T2の移動方向、細矢印は目標物T1,T2が観測点に至る航跡である。
【0014】
まず、観測時刻t(0)において、目標物T1が観測点(0,0)に対応付けられ、目標物T2が観測点(0,1)に対応付けられているとき、観測時刻t(1)において、観測点(1,0)と(1,1)が観測されたものとする。この場合、目標物T1の移動先の予測結果が観測点(1,0)で、目標物T2の移動先の予測結果が観測点(1,1)であれば、目標物T1を観測点(1,0)に対応付け、目標物T2を観測点(1,1)に対応付ける。
このとき、上記の対応付けにしたがって目標物T1,T2の運動諸元(例えば、位置、速度、予測誤差)を更新する。
【0015】
次に、観測時刻t(2)において、観測点(2,0)と(2,1)が観測された場合、目標物T1,T2の移動先の予測結果がそれぞれ観測点(2,0)と(2,1)であるとすると、次の仮説A,Bを設定して、目標物T1,T2の観測点を対応付ける。
仮説A:目標物T1→観測点(2,0)、目標物T2→観測点(2,1)
仮説B:目標物T1→観測点(2,1)、目標物T2→観測点(2,0)
このとき、仮説Aと仮説Bを評価し、仮説毎に目標物T1,T2の運動諸元を更新する。
【0016】
次に、観測時刻t(3)において、観測点(3,0)と(3,1)と(3,2)が観測された場合、目標物T1,T2の移動先の予測結果と仮説A,Bを参照して、次の仮説a,b,c,dを設定し、目標物T1,T2の観測点を対応付ける。
仮説a:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,1)
仮説b:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,2)
仮説c:目標物T1→観測点(3,1)、目標物T2→観測点(3,0)
仮説d:目標物T1→観測点(3,2)、目標物T2→観測点(3,0)
このとき、仮説a〜dを評価し、仮説毎に目標物T1,T2の運動諸元を更新する。
【0017】
以上が目標物を複数回観測しながら複数の仮説を設定して、目標物と観測点を対応付ける際の処理の流れである。
なお、図2の例では、目標物T1,T2は、互いに同じ観測点を対応付けの候補として有する。このため、目標物T1,T2は、その後の観測点との対応付けにおいて、互いに影響を及ぼし合う関係にある。
クラスタは、上記のように、互いに影響がある目標物同士をまとめたものである。複数回の観測をもって、目標物と観測点の対応付けを行う場合、1つのクラスタは、複数の仮説を有することになる。
目標追尾装置は、クラスタに保持されている複数の仮説の中の一部を選択(あるいは、一部を破棄)することにより、互いに影響がない2以上のクラスタに分離したり、異なるクラスタの目標物同士が同じ観測点を候補として有するという条件のもとで、2以上のクラスタを1つに結合したりする。
以下、図1の目標追尾装置の動作を具体的に説明する。
【0018】
まず、追尾処理装置2の予測処理部13は、クラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間(以下、ゲートという)を予測する。
即ち、ゲートは中心座標と、その中心座標からの広がりとによって表現することができ、その中心座標は目標物の観測時刻における予測位置である。したがって、目標物の運動が等速直線運動であって、目標観測装置1が一定の時間間隔(サンプリング間隔)で観測を行うものとすると、ゲートの中心座標は次のように求めることができる。また、中心座標からの広がりは、目標物の予測誤差と目標観測装置1のSNなどから求めることができる。
ゲートの中心座標=前回の観測位置+目標物の推定速度×サンプリング間隔
ただし、前回の観測位置及び目標物の推定速度はクラスタ別データベース12に保存されているものとする。
【0019】
追尾処理装置2の観測ベクトル選択部14は、目標観測装置1が複数の目標物を観測して、その観測結果である観測ベクトルをそれぞれ出力すると、その観測ベクトル毎に、予測処理部13から出力されたゲートとの内外判定を実施して、互いに影響を及ぼす目標物を識別する。
具体的には、観測ベクトルをZm、ゲートの中心座標をZt、ゲートの広がりを示す行列をS、所定の閾値をdとして下記の評価式に代入し、下記の評価式を満足するとき、観測ベクトルがゲートの中に存在するものとし、観測ベクトルが同一のゲートの中に存在する目標物同士は互いに影響を及ぼすものと認識する。
(Zm−Zt)T×S×(Zm−Zt)≦d
ただし、Tは行列の転置を示す記号である。
【0020】
追尾処理装置2のクラスタ再構成部15は、観測ベクトル選択部14の識別結果に基づいて複数のクラスタを再構成する。
即ち、各クラスタは、仮説のリストと、目標物のリストと、目標物のゲートに入っている観測ベクトルのリストとから構成されており、例えば、ある観測ベクトルがクラスタAのリストに含まれ、クラスタBのリストにも含まれているとき、クラスタAとクラスタBを統合する。これをクラスタの再構成と呼ぶものとする。
具体的には、異なるクラスタに属する2つの目標物に着目すると、2つの目標物のゲートに同一の観測ベクトルが存在するとき、2つのクラスタを統合して1つのクラスタとすることにより、クラスタを再構成する。なお、どのゲートにも入らない観測ベクトルを新しいクラスタとして誕生させるようにしてもよい。
【0021】
追尾処理装置2の仮説作成部16は、クラスタ再構成部15が複数のクラスタを再構成すると、再構成後のクラスタに保持される仮説を作成する。
即ち、仮説作成部16の相関行列作成部17は、再構成後のクラスタに保持される仮説毎に、観測点が各目標物に対応付けられる可能性と、観測点が新航跡に対応付けられる可能性と、観測点が不要信号に対応付けられる可能性とを要素に持つ相関行列を作成する。
【0022】
ここで、図3は目標物と観測点の位置関係を示す一例であり、T1〜T4は目標物、□は目標物T1〜T4の前回観測時における位置、G1〜G4は目標物T1〜T4が一定の確率以上での観測される空間であるゲート、m1〜m4は目標観測装置1によって観測され、かつ、観測ベクトル選択部14によって当該クラスタに関連付けられた観測点であり、文字の下の×印が観測された座標を示している。
【0023】
図4は図3の状態にあるときに生成される相関行列を示し、観測点m1〜m4は目標物T1〜T4、新航跡又は不要信号のいずれかに対応付けられる。図4では観測点m1が目標物T1〜T4に対応付けられる可能性をT1m1〜T4m1と表記し、観測点m1が新航跡である可能性をNm1と表記し、観測点m1が不要信号である可能性をCm1と表記している。観測点m2〜m4についても同様である。なお、これら可能性を示す値を相関度と呼ぶものとする。
【0024】
仮説作成部16の航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、相関行列作成部17が相関行列を作成すると、その相関行列に基づいて評価値が最も高い最良仮説を生成する。
最良仮説の生成方法は、相関行列の各行から任意の要素を1つずつ選択し、その選択した要素を相互に掛け合わせる乗算演算を行う。そして、全ての要素の組み合せについて上記の乗算演算を行うと(ただし、同一の列では、2以上の要素を選択しない条件の下で、要素の組み合せを行う)、各乗算結果を相互に比較して、最も乗算値が高くなる要素の組み合せを選択する。
例えば、T1m1,T2m2,T3m4,T4m3の組み合せの乗算値が最高値になる場合は、目標物T1→観測点m1、目標物T2→観測点m2、目標物T3→観測点m4、目標物T4→観測点m3の対応関係を示す仮説が最良仮説となる。
【0025】
仮に、目標物T1,T2の航跡確定フラグがオン(既に航跡を確定することが可能な状態にあることを示す)で、目標物T1,T2の航跡確定フラグがオフ(未だ航跡を確定することが不可能な状態にあることを示す)であるとすると、最良仮説は、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説(目標物T1→観測点m1、目標物T2→観測点m2)と、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に係る仮説(目標物T3→観測点m4、目標物T4→観測点m3)の集合であるとみなすことができる。
【0026】
航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、n個の仮説を生成する場合、上記最良仮説の他に、評価値が高い順にn−1個の仮説を生成する必要があるが、既に航跡を確定することが可能な状態にある目標物T1,T2に係る仮説は1つだけにして、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物T3、T4に係る仮説を数多く生成するため、まず、図4の相関行列から目標物T1,T2に係る2つの行と、観測点m1,m2に係る2つの列を削除する。
航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、削除後の相関行列から上記の最良仮説と同様にして、1番評価値が高い仮説、2番目に評価値が高い仮説、・・・、n−1番目に評価値が高い仮説を生成する。
そして、航跡確定フラグ対応仮説生成部18は、上記のようにしてn−1個の仮説を生成すると、目標物T1,T2に係る仮説(最良仮説の一部を構成する仮説)をn−1個の仮説にそれぞれ追加して、n個の仮説を完成させる。
【0027】
仮説作成部16の仮説信頼度算出部19は、航跡確定フラグ対応仮説生成部18がn個の仮説を生成すると、n個の仮説の信頼度を算出する。
例えば、組み合せの乗算値と元仮説の信頼度を掛け合わせることにより、仮説の信頼度を算出する。
【0028】
追尾処理装置2の平滑処理部20は、予測処理部13の予測結果と目標観測装置1の観測結果を参照して、各目標物の位置,速度や予測誤差等を更新し、その更新後の値をクラスタ別データベース12に格納する。
例えば、目標物の位置は、ゲートの中心座標Zt(予測位置)と観測ベクトルZm(観測位置)の中間点として算出し、目標物の速度は、前回の観測位置と今回の観測位置とサンプリング間隔とから算出する。
また、予測誤差は、追尾開始時に設定された大きな初期値から、予測位置と観測位置のずれが徐々に小さくなれば、徐々に小さな値に更新する。
【0029】
追尾処理装置2の準最適化処理部21は、仮説作成部16が仮説の生成の際に参照する航跡確定フラグを管理する。
例えば、ある目標物について初めて観測が行われると、その目標物についてフラグ値がオフの航跡確定フラグを設定する。また、ある目標物についての観測が予め設定された回数(当該設定回数は目標物毎に設定されてもよいし、全目標物に共通の回数が設定されてもよい)に到達すると、その目標物の航跡確定フラグをオンに設定する。
【0030】
また、準最適化処理部21は、仮説作成部16の航跡確定フラグ対応仮説生成部18がn個の仮説を生成し、仮説信頼度算出部19がn個の仮説の信頼度を算出すると、n個の仮説のうち信頼度が予め設定された所定値以上の仮説のみを選択し、その選択した仮説を各クラスタが保持することにより、各クラスタに保持される仮説を更新する。
【0031】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するように構成したので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させるように構成したので、構成の複雑化を招くことなく、未だ航跡を確定することが不可能な状態にある目標物に係る仮説を数多く生成することができる効果を奏する。
【0032】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説生成部31は相関行列作成部17により作成された相関行列に基づいて再構成後のクラスタに保持される可能性のある仮説を予め設定された数だけ生成する機能を備え、仮説統合部32は仮説生成部31により航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説が複数生成された場合、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
【0033】
上記実施の形態1では、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させることにより、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を複数生成しないものについて示したが、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を複数求めた後、その複数の仮説を統合するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0034】
仮説生成部31は、上記実施の形態1と同様にして、相関行列作成部17が相関行列を作成すると、その相関行列に基づいて予め設定された数だけ仮説を生成する。
例えば、図4の相関行列が作成された場合、観測点m1〜m4を目標物T1〜T4、新航跡又は不要信号のいずれかに対応付ける仮説を生成するが、ここでは、説明の便宜上、下記に示すように、4つの仮説の集合A〜D(以下、仮説の集合A〜Dは“仮説A〜D”と表記するが、仮説A〜Dはそれぞれ4つ仮説から構成されている)が生成されたものとする。なお、仮説A〜Dは「観測点−目標物(対応付け先)」という形で表している。
【0035】
仮説A m1−T1,m2−T2 ,m3−T3,m4−T4
仮説B m1−T2,m2−T1 ,m3−T3,m4−T4
仮説C m1−T1,m2−不要信号,m3−T2,m4−T3
仮説D m1−T1,m2−不要信号,m3−T3,m4−T4
仮説統合の説明を行うため、仮説A〜Dを目標物を基準にして表現しなおすと次のようになる。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
なお、仮説C,Dの対応先の「無」とは、この観測において、その目標物が観測できなかったことを示している。
【0036】
仮説統合部32は、仮説生成部31が仮説A〜Dを生成すると、航跡確定フラグがオンである目標物T1,T2がどの観測点に対応付けられているかを調査する。
この例では、目標物T1が観測点m1又はm2に対応付けられていると認識し、目標物T2が観測点m1,m2,m3に対応付けられ、あるいは、対応付け無しと認識する。
【0037】
そして、仮説統合部32は、目標物T1,T2における複数の対応付けを統合する。
対応付けの統合方法としては、例えば、「最も近い観測点を採用する」、「観測点の重心」、「仮説の評価値に基づく荷重平均」などを用いる。
この対応付けの統合により、目標物T1と目標物T2の航跡は確定し、その対応付けは同じになる。その結果、「仮説Aと仮説Bと仮説D」は同一の仮説となるため、仮説統合部32は、仮説Aと仮説Bと仮説Dを統合する。
【0038】
なお、仮説を統合する際、各仮説の評価値も足し合わせる。この足し合わせは単純な加算でもよいし、影響度に合わせて別途算出式を設定してもよい。
上記の統合処理により、仮説A〜Dは次の2つの仮説X,Yにまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説Y T1−統合1,T2−統合2,T3−m4,T4−無
この実施の形態2によれば、演算量を削減することができる効果を奏する。
【0039】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図5と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説統合部33は仮説生成部31により生成された複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に係る仮説の対応先である観測点を基準にして上記複数の仮説を分類し、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
仮説分類部34は仮説生成部31により生成された複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に対応する観測点を基準にして上記複数の仮説を分類する機能を備え、分類別仮説統合部35は同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合する機能を備えている。
【0040】
上記実施の形態2では、仮説統合部32は仮説生成部31により航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説が複数生成された場合、直ちに航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物に対応する観測点を基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類し、その後、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0041】
まず、仮説生成部31は、上記実施の形態2と同様にして、仮説A〜Dを生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
【0042】
仮説分類部34は、仮説生成部31が仮説A〜Dを生成すると、仮説A〜Dの中で、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点を基準にして、下記に示すように、仮説A〜Dを分類する。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D
分類2 仮説C
仮説A,仮説B,仮説Dにおける目標物T3の対応先が観測点m3である点で共通し、かつ、目標物T4の対応先が観測点m4である点で共通しているため、同一分類に分類されている。
【0043】
分類別仮説統合部35は、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。
即ち、分類1に属する仮説A,仮説B,仮説Dの中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。この例では、分類2には1つの仮説しか属していないので、分類2に関しては仮説の統合は行われない。
【0044】
上記の統合処理により、仮説A〜Dは次の2つの仮説X’,Y’にまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X’ T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説Y’ T1−m1 ,T2−m3 ,T3−m4,T4−無
【0045】
ここで、上記実施の形態2における統合後の仮説X,Yと、この実施の形態3における統合後の仮説X’,Y’を比較すると、上記実施の形態2では、仮説Xにおいて、観測点m3が目標点T3と対応付けられると同時に、目標点T2とも対応付けられる(統合2が、仮説CにおけるT2−m3を考慮している為)。
これに対して、この実施の形態3では、仮説X’において、仮説Cを考慮せずに統合が行われるので、観測点m3は目標点T3とのみ対応付けられ、目標点T2と対応付けられることはない。
したがって、この実施の形態3によれば、1つの観測点が複数の目標物に対応付けられることがないので、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
【0046】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点を基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点の和集合と、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に対応する観測点の和集合とを基準にして、仮説生成部31により生成された複数の仮説を分類するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0047】
ここでは、説明の便宜上、仮説生成部31が下記の5つの仮説A〜Eを生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
仮説E T1−m2,T2−m1,T3−m4,T4−m3
【0048】
上記実施の形態3における仮説分類部34は、目標物T3,T4に対応する観測点を基準にするので、次のように3つに分類することになる。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D
分類2 仮説C
分類3 仮説E
これに対して、この実施の形態4における仮説分類部34は、目標物T3,T4に対応する観測点の和集合と、目標物T1,T2に対応する観測点の和集合とに重複がないものは同一分類とみなすようにする。したがって、次のように2つに分類することになる。
分類1 仮説A,仮説B,仮説D,仮説E
分類2 仮説C
【0049】
分類別仮説統合部35は、上記実施の形態3と同様に、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物T1,T2に係る仮説を統合する。
上記の統合処理により、仮説A〜Eは次の3つの仮説X’,X”,Y’にまとめられる。ただし、統合1は目標物T1の対応付けの統合結果、統合2は目標物T2の対応付けの統合結果を示している。
仮説X’ T1−統合1,T2−統合2,T3−m3,T4−m4
仮説X” T1−統合1,T2−統合2,T3−m4,T4−m3
仮説Y’ T1−m1 ,T2−m3 ,T3−m4,T4−無
したがって、この実施の形態4によれば、上記実施の形態3と同様に、1つの観測点が複数の目標物に対応付けられることがないので、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
【0050】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による目標追尾装置の仮説作成部16を示す構成図であり、図において、図6と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
仮説補充要請部36は仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説の追加生成を要請する機能を備えている。
【0051】
上記実施の形態2〜4では、特に言及していないが、仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説補充要請部36が仮説の追加生成を仮説生成部31に要請するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0052】
仮説補充要請部36は、仮説統合部33が仮説の統合処理を完了すると、統合後の仮説の個数と、予め設定された個数とを比較し、統合後の仮説の個数が予め設定された個数より少ない場合、その不足分だけ仮説の生成を指示する生成要請信号を仮説生成部31に出力する。
仮説生成部31は、仮説補充要請部36から生成要請信号を受けると、不足分に相当する数だけ仮説を生成する。
この際、仮説生成部31は、航跡の確定精度を高める観点から、評価値の高い仮説から優先的に生成するものとする。
【0053】
これにより、常に予め設定された個数の仮説を確保することができるため、航跡の確定精度を高めることができる効果を奏する。
なお、仮説の追加生成を要請しても、仮説統合部33の統合処理によって設定数に満たない数の仮説しか得られない場合もあり得る。その場合には、仮説の個数が設定数に満たなくても、仮説の補充を打ち切る条件を別途設定してもよい。
【0054】
実施の形態6.
上記実施の形態5では、仮説生成部31が予め設定された個数の仮説を生成するものについて示したが、例えば、ネットワークに接続された複数のプロセッサが仮説作成部16を構成する場合(仮説生成部31と仮説補充要請部36を別のプロセッサとする場合)、仮説補充要請部36から生成要請信号が出力されてから仮説生成部31に到達するまでの遅延時間が大きくなり、その生成要請信号の発生回数が増加する場合がある。
【0055】
そこで、この実施の形態6では、仮説補充要請部36から出力される生成要請信号の発生回数を抑制して、処理負荷や実行時間を軽減できるようにする。
具体的には、まず、仮説生成部31が予め設定された個数以上の仮説を生成する。
仮説補充要請部36は、仮説統合部33の統合処理によって残った仮説の個数が予め設定された個数を超えている場合、その超過分の仮説を廃棄するようにする。
一方、残った仮説の個数が予め設定された個数に満たない場合、上記実施の形態5と同様にして、生成要請信号を仮説生成部31に出力するようにする。
この実施の形態6によれば、仮説補充要請部36から出力される生成要請信号の発生回数を抑制することができるため、処理負荷や実行時間を軽減することができる効果を奏する。
【0056】
実施の形態7.
上記実施の形態6では、統合処理によって残った仮説の個数が予め設定された個数を超えている場合、その超過分の仮説を廃棄するものについて示したが、その超過分の仮説を廃棄せずに、統合後の仮説の全てをクラスタ別データベース12に格納するようにしてもよい。
このようにすれば、次回の観測時に余裕があれば、超過分の仮説を処理対象に含めることができる一方、特に余裕がなければ、この時点で超過分の仮説を破棄して、予め設定された個数の仮説で処理を行うという選択が可能になる。
【0057】
実施の形態8.
上記実施の形態5〜7では、航跡確定フラグのオン・オフに関わらず、単に評価値の高い仮説から順番に追加生成するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に係る仮説であって、その目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を評価値の高いものから優先的に生成するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0058】
ここでは、説明の便宜上、仮説生成部31が図4の相関行列から次の4つの仮説を生成したものとする。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m2,T2−m1,T3−m3,T4−m4
仮説C T1−m1,T2−m3,T3−m4,T4−無
仮説D T1−m1,T2−無 ,T3−m3,T4−m4
【0059】
これらの仮説は、航跡確定フラグがオフである目標物T3,T4の対応付けの違いで見ると、「T3−m3,T4−m4」と「T3−m4,T4−無」の2つにまとめることができる。
ここで、図4の相関行列において、目標物T3が観測点m3に対応付けられる可能性を示すT3m3を0にして、仮説の生成を行えば、得られる仮説は、目標物T3が観測点m3以外に対応付けられるものになる(もしくは未観測となる)。
また、図4の相関行列のT3m1〜T3m4の列と、T1m3〜T4m3,Cm3の行を取り除き、さらに、T4m4を0にした行列から仮説の生成を行えば、得られる仮説は、目標物T3は観測点m3に対応付けられるが、目標物T4が観測点m4以外に対応付けられるものになる(もしくは未観測となる)。
【0060】
つまり、この2つにおいて生成される仮説は、互いに必ず異なる仮説であり、かつ、「T3−m3,T4−m4」とは対応づけが異なるものになる。「T3−m4,T4−無」でも同じような修正を加えた上で仮説の生成を行えば、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を生成することができる。
したがって、この実施の形態8によれば、予め設定された個数に至るまでの仮説の生成効率が向上し、演算負荷を軽減することができる効果を奏する。
なお、このように修正を加えた相関行列群は、仮説生成の条件が同じになったり、包含関係になったりするケースが生じる。その場合は、その重複は無駄な処理であるため、これを除去する。
【0061】
実施の形態9.
上記実施の形態8では、仮説生成部31が仮説の追加要請を受けたとき、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を優先的に生成するものについて示したが、仮説の補充時からではなく、当初の仮説生成時から、目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説を優先的に生成するようにしてもよい。
【0062】
実施の形態10.
上記実施の形態8では、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4に対応する観測点が異なる仮説の中で、評価値が高い仮説を優先的に生成するものについて示したが、航跡を確定することが不可能な目標物T3,T4の何れにおいても仮説として成立しない場合を除き、その目標物T3,T4の対応先が異なる仮説を生成するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0063】
上記実施の形態8の場合、航跡確定フラグがオフである目標物に偏りがあると、航跡確定フラグがオフである目標物の中には、複数の候補が残らないものが生じる可能性がある。
例えば、次の4つの仮説が生成されたとする。
仮説A m1−T1,m2−T2,m3−T3 ,m4−T4
仮説B m1−T1,m2−T3,m3−T2 ,m4−T4
仮説C m1−T2,m2−T3,m3−新航跡 ,m4−T4
仮説D m1−T1,m2−T2,m3−不要信号,m4−T4
【0064】
上記の仮説A〜Dを目標物を基準にして表現しなおすと次のようになる。
仮説A T1−m1,T2−m2,T3−m3,T4−m4
仮説B T1−m1,T2−m3,T3−m2,T4−m4
仮説C T1−無 ,T2−m1,T3−m2,T4−m4,新航跡−m3
仮説D T1−m1,T2−m2,T3−無 ,T4−m4
【0065】
新航跡は航跡確定フラグがオフである目標物であるとすると、上記の仮説A〜Dは、航跡確定フラグがオフである目標物の対応先が異なる仮説となる。しかし、目標物T4の対応先は、全て観測点m4になるケースのみである。
そこで、目標物T4の対応先が観測点m4以外となる仮説は、上記実施の形態8における相関行列の修正と同様にT4m4を0にして仮説を生成すればよい。
ただし、上記実施の形態8では、重複する仮説が生成されないようにしていたが、重複する仮説の生成を許し、図4の相関行列のT3m3を0にした行列から仮説を生成するとともに、図4の相関行列のT4m4を0にした行列から仮説を生成する。
これにより、目標物T4に関しても対応先が異なる仮説を得ることができる。
【0066】
上記の処理を航跡確定フラグがオフである目標物の全てに適用し、同一の仮説が生成されたら、重複分を破棄することで、航跡確定フラグがオフである全目標物において、複数の対応先(もしくは、対応先が無い未観測という状態)を持つことができるようになる。
なお、航跡確定フラグがオフである目標物の全てに本方式を適用するのではなく、目標物に優先度を設けることにより、航跡確定フラグがオフである目標物の一部にだけ本方式を適用するようにしてもよい。
【0067】
実施の形態11.
上記実施の形態10では、目標物T1〜T4を観測し、それらの観測点を目標物T1,T2,T3,T4,新航跡又は不要信号のいずれかに対応付けるものについて示したが、ある目標物の観測点が未観測ではない場合、仮説の生成を優先するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0068】
この実施の形態11では、仮説生成部31が仮説を生成する際、相関行列作成部17により作成された相関行列の行と列を入れ換えることにより、各目標物を観測点m1,m2,m3,m4又は未観測のいずれかに対応付けるようにする。
その結果、目標物に対応付けられなかった観測点を新航跡か不要信号のいずれかに対応付けるようにする。この場合も、上記実施の形態10と同様の仮説を得ることができる。
なお、対応付けられなかった観測点を、新航跡か不要信号のいずれかに対応付ける処理は、組み合せ問題を解く必要がなく、観測点毎に独立に行える処理であるため、処理負荷への影響をほとんど考えなくてもよい。
【0069】
図8は図4の相関行列の行と列を入れ換えた行列を示す、T1m1〜T4m4は、図4と同じように目標物T1〜T4がそれぞれ観測点m1〜m4に対応付けられる可能性を示している。また、T1L〜T4Lは、目標物T1〜T4がそれぞれ未観測とされる可能性を示している。
【0070】
上記実施の形態10の仮説生成部31は、航跡確定フラグがオフである目標物の対応付けが異なる仮説の生成を図4の相関行列を元に、各観測点が目標物、不要信号、新航跡のいずれかを選択するという形で仮説の生成を行っており、未観測以外の仮説を求めるのが困難であった。
これに対して、この実施の形態11では、目標物が観測点か未観測を選択するようにしているので、目標物が未観測以外となる仮説も簡単に求めることができる。
例えば、目標物T1が未観測とならない場合の仮説は、図8の相関行列のT1Lを0に書き換えた行列を元に仮説の生成をするだけでよい。
【0071】
実施の形態12.
上記実施の形態11では、各目標物を観測点m1,m2,m3,m4又は未観測のいずれかに対応付け、その結果、目標物に対応付けられなかった観測点を新航跡か不要信号のいずれかに対応付けるものについて示したが、このままでは、既存の目標物よりも新航跡である確率が高いという仮説を生成するのが困難である。そこで、次のような4つの手順で仮説を生成するようにしてもよい。
【0072】
・手順(1)
各観測点において、不要信号や新航跡である可能性が他の目標物であるとする可能性よりも大きい場合、その観測点を相関行列に用いる観測点から除外する。
・手順(2)
手順(1)で除外されなかった観測点と目標物から相関行列を作成する。
・手順(3)
上記の相関行列から仮説を生成する。
・手順(4)
手順(3)で生成された仮説において、目標物との対応付けが無かった観測点と、手順(1)で除外された観測点に対し、新航跡か不要信号かの対応付けを行い、手順(3)で生成された仮説に対して当該対応付け結果を付加する。
【0073】
ただし、数多くの仮説を生成する場合には、手順(1)で除外した観測点を不要信号や新航跡とする場合の仮説を全て求めても、まだ仮説の生成が続く場合もある。その場合には、除外せずに相関行列に組み込んで仮説の生成を行うことになる。
この方法であれば、新航跡である可能性が高い観測点について、その観測点が新航跡になる仮説を確実に生成することができる。
【0074】
実施の形態13.
上記実施の形態5では、仮説統合部33による仮説の統合によって、仮説の生成数が予め設定された個数を下回ると、仮説補充要請部36が仮説の追加生成を仮説生成部31に要請し、仮説生成部31が評価値の高い順番に仮説を追加生成するものについて示したが、仮説生成部31は、仮説生成部31からの追加生成の要請に関わらず、評価値が所定の閾値より高い仮説であれば無条件に生成するようにしてもよい。
この場合、仮説生成部31が膨大な数の仮説を生成する場合があるが、仮説の生成を評価値の高いものから順番に行う必要がないため、1つの仮説の生成に要する演算負荷を大幅に削減することができる効果を奏する。
【0075】
実施の形態14.
上記実施の形態5では、仮説の生成数が予め設定された個数に到達するまで仮説補充要請部36が仮説の追加生成を要請するものについて示したが、仮説補充要請部36が既に生成済みの仮説の評価値の総和を計算し、その評価値の総和が所定の閾値を越えるまで仮説の追加生成を要請するようにしてもよく、上記実施の形態5と同様の効果を奏することができる。
【0076】
実施の形態15.
上記実施の形態14では、仮説補充要請部36が仮説の評価値に基づいて仮説の追加生成を制御するものについて示したが、図9に示すように、仮説信頼度算出部19と仮説補充要請部36を入れ換えることにより、仮説補充要請部36が仮説信頼度算出部19により算出された信頼度と閾値を比較して、仮説の追加生成を制御するようにしてもよく、上記実施の形態14と同様の効果を奏することができる。
【0077】
実施の形態16.
上記実施の形態13では、仮説の生成数が予め設定された個数に到達するまで仮説補充要請部36が仮説の追加生成を要請するものについて示したが、仮説補充要請部36に対して仮説の生成処理時間を予め設定し、その生成処理時間内に限り、仮説の追加生成を要請することができるようにしてもよい。
これにより、仮説の生成処理を処理負荷が少ない状態時に制限することができるため、装置の処理効率を高めることができる効果を奏する。
【0078】
実施の形態17.
上記実施の形態11,12では、仮説生成部31が相関行列の行と列の要素を入れ換えた行列を元に仮説の生成を実施し、航跡確定フラグがオフである目標物T3,T4について2以上の候補が残るように仮説を生成するものについて示したが、この航跡確定フラグの代わりに、目標物毎の航跡候補数を示す航跡候補数パラメータを参照するようにしてもよい。
この場合、違う候補を確保できるだけでなく、その候補の数をパラメータとして設定できるようになる。具体的には下記の通りである。
【0079】
例えば、図8の相関行列を元にして仮説の生成を実施し、得られた仮説において、目標物T3が観測点m3に対応付けられた時、図8のT3m3の値を0にして再度仮説の生成を行えば、目標物T3が観測点m3以外に対応付けられた仮説を得ることができる。その対応先が仮に観測点m4であるとすれば、T3m3に続きT3m4も0にして再度仮説の生成を行えば、目標物T3の対応先として第3の候補を持つ仮説を得ることができる。
航跡確定フラグを用いれば、複数の候補を残すことができるが、航跡候補数パラメータを用いれば、複数の候補を残すことができるとともに、残す数まで設定することができる。
【0080】
実施の形態18.
上記実施の形態1〜16では、航跡確定フラグを参照して仮説の統合を実施するものについて示したが、その航跡確定フラグを参照する代わりに、目標物毎の観測数を示す航跡遅延パラメータを参照して仮説の統合を実施するようにしてもよい。
具体的には次の通りである。
【0081】
航跡遅延パラメータは、値が1の場合は航跡確定フラグがオンであることと等価であり、2以上の場合は航跡確定フラグがオフであることと等価である。
図2を参照して、目標物T1,T2の確定遅延パラメータの値がそれぞれ2である場合の動作を説明する。なお、説明を簡単化するため、観測されないケースから新航跡が生まれるケースは除外する。
【0082】
(1)時刻t(1)の観測において、「目標物T1が(0,0)から(1,0)に移動し、目標物T2が(0,1)から(1,1)に移動するものとする仮説」のみが生成される。
(2)時刻t(2)の観測において、目標物T1,T2の移動先を予測した結果、次の2つの仮説が生成される。
仮説A:目標物T1→観測点(2,0)、目標物T2→観測点(2,1)
仮説B:目標物T1→観測点(2,1)、目標物T2→観測点(2,0)
(3)この例では、目標物T1,T2の航跡遅延パラメータの値がそれぞれ2であるため、仮説A,Bはそのまま残される。
【0083】
(4)時刻t(3)の観測において、目標物T1,T2の移動先を予測すると、その予測結果と仮説A,Bに基づいて次の4つの仮説が生成される。
仮説a:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,1)
仮説b:目標物T1→観測点(3,0)、目標物T2→観測点(3,2)
仮説c:目標物T1→観測点(3,1)、目標物T2→観測点(3,0)
仮説d:目標物T1→観測点(3,2)、目標物T2→観測点(3,0)
(5)目標物T1,T2の航跡遅延パラメータの値がそれぞれ2であるため、時刻t(1)〜t(2)の移動である航跡を確定する。つまり、目標物T1を観測点(2,0)に対応付ける仮説Aも、観測点(2,1)に対応付ける仮説Bも残っているが、目標物T1の移動先をここで1つに確定させる。この例では、目標物T1,T2の対応先として、仮説Aの割り当てと同じものが選択されたとすると、仮説Bの状態がなくなるたため、(4)で生成した4つの仮説は、準最適化処理部21によって、仮説c,dが破棄され、仮説a,bが残ることになる。
【0084】
以上の動作によって、時刻t(3)までの処理が終る。この例では、目標物の対応先を簡単な選択の例で済ませているが、前述の実施の形態と同様の統合を行うこともできる。
また、前述の実施の形態の統合において、航跡確定フラグがオンである目標物が複数の候補を残す場合があったが、この実施の形態18においても、航跡遅延パラメータの観測回数を過ぎても複数の候補が残る場合がある。
この実施の形態18によれば、航跡を確定するまでの観測数を目標物毎に制御することができる効果を奏する。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合するように構成したので、目標物の航跡精度の劣化を招くことなく、クラスタに保持される仮説の設定数を少なくすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による目標追尾装置を示す構成図である。
【図2】目標物と観測点の対応例を示す説明図である。
【図3】目標物と観測点の位置関係を示す説明図である。
【図4】相関行列の一例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【図8】相関行列の一例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態15による目標追尾装置の仮説作成部を示す構成図である。
【符号の説明】
1 目標観測装置(観測手段)、2 追尾処理装置、3 航跡表示装置、11初期値設定部、12 クラスタ別データベース、13 予測処理部(予測手段)、14 観測ベクトル選択部(再構成手段)、15 クラスタ再構成部(再構成手段)、16 仮説作成部(仮説更新手段)、17 相関行列作成部、18 航跡確定フラグ対応仮説生成部、19 仮説信頼度算出部、20 平滑処理部、21 準最適化処理部(仮説更新手段)、22 航跡決定部(航跡決定手段)、31 仮説生成部、32 仮説統合部、33 仮説統合部、34 仮説分類部、35 分類別仮説統合部、36 仮説補充要請部。
Claims (15)
- 複数の目標物のうち、互いに影響を及ぼす目標物の集合毎に設定され、その目標物を観測点と対応付ける仮説を保持する複数のクラスタと、上記クラスタに保持されている仮説を参照して目標物が一定の確率以上で観測される空間を予測する予測手段と、上記複数の目標物を観測する観測手段と、上記予測手段の予測結果と上記観測手段の観測結果を比較して互いに影響を及ぼす目標物を識別し、その識別結果に基づいて上記複数のクラスタを再構成する再構成手段と、上記予測手段の予測結果と上記観測手段の観測結果を参照して上記再構成手段による再構成後のクラスタに保持される仮説を更新する仮説更新手段と、上記仮説更新手段により更新された仮説にしたがって目標物の航跡を決定する航跡決定手段とを備えた目標追尾装置において、上記仮説更新手段は目標物毎に用意されている航跡確定の良否を示す航跡確定フラグを参照して航跡を確定することが可能な目標物を認識し、その目標物に係る仮説を統合することを特徴とする目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応付けを最良仮説の対応付けと一致させることを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、再構成後のクラスタに保持される可能性のある複数の仮説を求め、その複数の仮説の中に航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説が複数存在する場合、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、再構成後のクラスタに保持される可能性のある複数の仮説を求めたのち、その複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に係る仮説の対応先を基準にして上記複数の仮説を分類し、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、再構成後のクラスタに保持される可能性のある複数の仮説を求めたのち、その複数の仮説の中で、航跡を確定することが不可能な目標物に係る仮説の対応先の和集合と、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説の対応先の和集合とを基準にして上記複数の仮説を分類し、同一分類に属する仮説の中で、航跡を確定することが可能な目標物に係る仮説を統合することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、目標物に係る仮説を統合することにより、仮説の生成数が設定数を下回ると、仮説を追加生成することを特徴とする請求項3から請求項5のうちのいずれか1項記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、評価値の高い仮説から順番に生成することを特徴とする請求項6記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、航跡を確定することが不可能な目標物に係る仮説であって、その目標物に対応する観測点が異なる仮説を優先的に生成することを特徴とする請求項6記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、航跡を確定することが不可能な目標物の何れにおいても仮説として成立しない場合を除き、その目標物の対応先が異なる仮説を生成することを特徴とする請求項6記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、ある目標物の観測点が未観測ではない場合、仮説の生成を優先することを特徴とする請求項9記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、クラスタに保持される仮説を更新する際、評価値が所定の閾値より高い仮説に限り生成することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、クラスタに保持される仮説を更新する際、既に生成済みの仮説の評価値の総和が所定の閾値を越えるまで仮説を生成することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、クラスタに保持される仮説を更新する際、与えられた処理時間内に限り仮説の生成を行うことを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、目標物毎に航跡候補数が設定される場合、航跡確定フラグを参照する代わりに、その航跡候補数を示す航跡候補数パラメータを参照することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載の目標追尾装置。
- 仮説更新手段は、目標物毎に航跡を確定するまでの観測数が設定される場合、航跡確定フラグを参照する代わりに、目標物の観測数を示す航跡遅延パラメータを参照することを特徴とする請求項1から請求項13のうちのいずれか1項記載の目標追尾装置。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008209290A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Toshiba Corp | 追尾装置 |
JP2011145096A (ja) * | 2010-01-12 | 2011-07-28 | Mitsubishi Electric Corp | 多目標追尾装置 |
JP2012112807A (ja) * | 2010-11-25 | 2012-06-14 | Mitsubishi Electric Corp | 多目標追尾装置 |
JP2019143983A (ja) * | 2018-02-15 | 2019-08-29 | 三菱電機株式会社 | 目標追尾装置 |
-
2002
- 2002-10-24 JP JP2002309990A patent/JP2004144616A/ja not_active Abandoned
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