本発明は、目標を追尾する追尾装置に関し、特に目標機や妨害機等の多目標を追尾する追尾装置に関する。
従来から、移動している目標を検出して追尾する追尾装置が知られている。図5は、従来の追尾装置の構成を示すブロック図である。図5に示すように、従来の追尾装置は、選択部1、相関処理部2a、トラックファイルメンテナンス部3a、フィルタリング処理部4a、トラックファイル11a、相関処理部2b、トラックファイルメンテナンス部3b、フィルタリング処理部4b、及びトラックファイル11bで構成される。ここで、相関処理部2a、トラックファイルメンテナンス部3a、フィルタリング処理部4a、及びトラックファイル11aは、目標機を追尾する際に用いられる。また、相関処理部2b、トラックファイルメンテナンス部3b、フィルタリング処理部4b、及びトラックファイル11bは、妨害機を追尾する際に用いられる。妨害機とは、妨害波を送信する移動体を指す。したがって、追尾装置は、妨害波の到来方向を観測して妨害機の方角を知ることはできるが、距離を観測することはできない。
選択部1は、観測値が目標機と妨害機とのいずれの観測値であるかにより、観測値の出力先を切り替える。
相関処理部2aは、フィルタリング処理部4aにより算出された予測値と入力された観測値とに基づき目標機の相関を判断する。具体的な相関の判断方法については、後述する。
フィルタリング処理部4aは、選択部1により観測値が目標機に関する観測値であると判別された場合に、目標機の過去の航跡情報に基づき目標機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、観測値と予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある目標機に対する航跡情報を生成する。なお、観測値が新規に発見された目標機である場合、目標機の過去の航跡情報は存在しないため、観測値のみに基づき平滑値を算出する。具体的な算出方法は、後述する。
トラックファイル11aは、フィルタリング処理部4aにより生成された航跡情報を記憶する。
トラックファイルメンテナンス部3aは、トラックファイル11aに記憶された航跡情報を管理する。具体的な管理方法については後述する。
相関処理部2b、トラックファイルメンテナンス部3b、フィルタリング処理部4b、及びトラックファイル11bは、目標機ではなく妨害機を追尾する際に用いるという点を除き、基本的に相関処理部2a、トラックファイルメンテナンス部3a、フィルタリング処理部4a、及びトラックファイル11aと同様の機能を有する。
具体的には、フィルタリング処理部4bは、選択部1により観測値が妨害機に関する観測値であると判別された場合に、妨害機の過去の航跡情報に基づき妨害機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、観測値と予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある妨害機に対する航跡情報を生成する。
相関処理部2bは、フィルタリング処理部4bにより算出された予測値と入力された観測値とに基づき妨害機の相関を判断する。
次に、上述のように構成された従来の追尾装置の作用を説明する。図6は、従来の追尾装置の処理の流れを示すフローチャート図である。
最初に、観測値が追尾装置に入力される(ステップS101a)。選択部1は、入力された観測値が目標機と妨害機とのいずれに関する観測値であるかを判別する(ステップS103a)。ここでは、観測値が目標機に関する観測値であったと仮定する。選択部1は、観測値を相関処理部2aに出力する。
フィルタリング処理部4aは、目標機の過去の航跡情報に基づき目標機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出する(ステップS105a)。目標機の過去の航跡情報は、トラックファイル11aに目標機ごとに記憶されている。ここで、フィルタリング処理にαβフィルタを用いた場合、フィルタリング処理部4aは、k回目の目標機の観測値に対応する予測値(予測位置x
a(k|k−1))を以下の式により算出する。
ここで、xa(k−1|k−1)は、k−1回目の目標機の平滑位置である。また、va(k−1|k−1)は、k−1回目の目標機の平滑速度である。さらにTaは、目標機の観測時間間隔である。
次に、相関処理部2aは、フィルタリング処理部4aにより算出された予測値と入力された観測値とに基づき目標機の相関を判断する。具体的には、相関処理部2aは、フィルタリング処理部4aから出力された予測値を中心にゲートを開き、観測値がゲート内にあるか否かを判定するゲーティング処理を行う(ステップS107a)。なお、ゲートは、目標機が到達すると予測される範囲を示すものであるため、ゲートの範囲や形状は、追尾装置に観測値を入力するレーダ装置等の観測精度に左右される。一般的には、角度方向の観測精度よりも距離方向の観測精度が高いため、ゲートの形状は楕円形状になる場合が多い。
さらに、相関処理部2aは、ゲート内の観測値とゲートを一対一に対応させる連結処理を行う(ステップS109a)。これにより、過去の目標機の航跡情報と連続した値であるか否かを判断し、判断結果をトラックファイルメンテナンス部3aに出力する。
トラックファイルメンテナンス部3aは、相関処理部2aにより入力された判断結果に基づき、トラックファイル11aに記憶された航跡情報を管理、すなわちトラックファイルメンテナンス処理を行う(ステップS111a)。まず、トラックファイルメンテナンス部3aは、いずれのゲートにも対応しない観測値があった場合、新しい目標が発生したと判断して、その目標に対応する航跡情報を新たにトラックファイル11aに作成する。
またトラックファイルメンテナンス部3aは、過去の航跡情報がトラックファイル11aに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続した場合に、目標が失われたとしてトラックファイル11aにより記憶された該当する目標機に対する航跡情報を削除する。
ステップS111aにおいて、新たな目標が観測され、その目標に対応する航跡情報がトラックファイル11aに作成された場合、フィルタリング処理部4aは、初期化済みか否かを判断し(ステップS112a)、初期化済みでなければ初期化処理を行う(ステップS113a)。ここで、フィルタリング処理部4aは、1回目の目標機の平滑値(平滑位置x
a(1|1)及び平滑速度v
a(1|1))と2回目の目標機の平滑値(平滑位置x
a(2|2)及び平滑速度v
a(2|2))に対して、以下の式に基づき初期化を行う。
なお、xa m(1)とxa m(2)は、1回目と2回目の目標機の観測値である。
初期化済みであれば、フィルタリング処理部4aは、ステップS109aにおいて、相関処理部2aにより連結が取れた観測値(過去の目標機の航跡情報と連続した値であると判断された観測値)と予測値を用いて、平滑値を算出する(ステップS115a)。また、フィルタリング処理部4aは、算出された平滑値をトラックファイル11aに出力する。ここで、k回目(k;3以上)の目標機の平滑値(平滑位置x
a(k|k)と平滑速度v
a(k|k))は、以下の式により算出する。
上記の式において、xa m(k)は、k回目の目標機の観測値である。また、αa,βaは、目標機のフィルタゲインである。
また、トラックファイル11aは、フィルタリング処理部4aにより生成された航跡情報を記憶する。ここで、航跡情報は、追尾している目標に関する情報データを示し、位置、速度等の情報の他、観測回数やフィルタリング処理のフィルタゲインに関する情報等を含む。
ステップS101aにおいて、妨害機の観測値が入力された場合、選択部1は、観測値を相関処理部2bに出力する。以降の処理は、相関処理部2b、トラックファイルメンテナンス部3b、フィルタリング処理部4b、及びトラックファイル11bを用いてステップS117aからステップ127aにおいて、目標機を追尾する場合と同じ処理が行われるため、重複した説明を省略する。
なお、目標機に対する(1)〜(7)式は、妨害機に対しては、以下の(8)〜(14)式のようになる。
k回目の妨害機の観測値に対応する予測値(予測位置x
b(k|k−1))を以下の式により算出する。
ここで、xb(k−1|k−1)は、k−1回目の妨害機の平滑位置である。また、vb(k−1|k−1)は、k−1回目の妨害機の平滑速度である。また、Tbは、妨害機の観測時間間隔である。
フィルタリング処理部4bは、1回目の妨害機の平滑値(平滑位置x
b(1|1)及び平滑速度v
b(1|1))と2回目の妨害機の平滑値(平滑位置x
b(2|2)及び平滑速度v
b(2|2))に対して、以下の式に基づき初期化する。
ここで、xb m(1)は、1回目の妨害機の観測値である。また、xb m(2)は、2回目の妨害機の観測値である。
また、フィルタリング処理部4bは、k回目(k;3以上)の妨害機の平滑値(平滑位置x
b(k|k)と平滑速度v
b(k|k))を以下の式に基づき算出する。
ここで、xb m(k)は、k回目の妨害機の観測値である。また、αb,βbは、妨害機のフィルタゲインである。
ただし、追尾装置は、上述したように、妨害波の到来方向を観測して妨害機の方角を知ることはできるが、距離を観測することはできない。したがって、妨害機に対する航跡情報は、主に角度情報となる。
図7は、従来の追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。図6で説明したように、観測値が目標機に関する観測値であり、且つその観測値がいずれのゲートにも対応しない場合、ステップS111aにおいて、トラックファイルメンテナンス部3aは、新しい目標が発生したと判断して、その目標に対応する航跡情報を新たにトラックファイル11aに作成する。また上述したように、フィルタリング処理部4aは、初期化処理を行う。
従来の追尾装置は、追尾処理を周期的に行う。図7において、2回目及び3回目の観測値も、目標機に関する観測値である。したがって、相関処理部2aにより相関があると判断され、連結処理が行われた場合には、トラックファイル11aは、フィルタリング処理部4aにより生成された平滑値等の航跡情報を記憶する。
ところが図7において、4回目の観測値は、妨害機に関する観測値である。ここで、目標機に関する観測値は、入力されなかったものとする。トラックファイルメンテナンス部3bは、新しい妨害機が観測されたと判断して、その妨害機に対応する航跡情報を新たにトラックファイル11bに作成する。またフィルタリング処理部4bは、初期化処理を行う。
さらに図7において、5回目の観測値も妨害機に関する観測値であり、目標機に関する観測値は、入力されなかったものとする。したがって、相関処理部2bにより相関があると判断され、連結処理が行われた場合には、トラックファイル11bは、フィルタリング処理部4bにより生成された方角や角速度等の航跡情報を記憶する。
一方トラックファイルメンテナンス部3aは、過去の航跡情報がトラックファイル11aに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続しているため、目標が失われたとしてトラックファイル11aにより記憶された該当する目標機に対する航跡情報を削除する。
あとは同様に、6回目の観測値も妨害機に関する観測値であるため、航跡情報がトラックファイル11bに記憶されるが、7回目の観測値は、再び目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部3aにより、新たな航跡情報がトラックファイル11aに作成される。
その後、8回目の観測値が目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部3bは、妨害機に対する過去の航跡情報がトラックファイル11bに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続しているため、目標が失われたとしてトラックファイル11bにより記憶された該当する妨害機に対する航跡情報を削除する。
図7における9回目の観測値は、目標機に関する観測値である。したがって、ゲーティング処理や連結処理等が行われた後、フィルタリング処理部4aは、平滑値等の航跡情報を生成して、トラックファイル11aに記憶させる。
また、特許文献1には、移動目標を見失った場合に、移動目標の存在範囲を算出し、移動目標の捜索を短時間で行う誘導方法を取り入れて移動目標への誘導をする飛しょう体誘導装置が記載されている。この飛しょう体誘導装置によれば、飛しょう体の位置・速度情報と、移動目標の追尾情報である相対速度・相対距離をもとにして、移動目標から妨害を受けて移動目標を見失ったとしても、移動目標の存在範囲を算出することで、短時間に移動目標を再発見することができる。
特開2003−114098号公報
しかしながら、上述した従来の追尾装置は、新規に観測された目標機又は妨害機を追尾する際、1回目の観測値から目標機又は妨害機の速度情報や加速度情報を得ることができない。したがって、(3)式又は(10)式に示したように、1回目の観測時における速度は0であるといった初期値を代入することになる。
また従来の追尾装置は、観測2回目においても、目標機又は妨害機の加速度情報を得ることはできない。さらに得られた目標機又は妨害機の速度情報は、(5)式又は(12)式に示すように観測誤差の影響により誤差を有する。観測誤差による影響は、観測回数が増加するにつれて減少して行くが、観測回数の少ない追尾の初期段階では、追尾が不安定であると言う問題がある。
さらに従来の追尾装置は、妨害機を追尾する場合、方向の観測値は得られるが、距離の観測値を得ることができないため、当該妨害機に対する角速度や角加速度の拘束条件を設定できず、目標機を追尾する場合よりも、追尾が不安定になると言う問題がある。特に図7で説明したように、目標機と妨害機に相関があったとしても、両者は独立して処理されるため、作成した航跡情報が無駄に失われる可能性がある。
また、上記の事情は特許文献1に記載された飛しょう体誘導装置を用いた場合にも該当する。この飛しょう体誘導装置は、移動目標から妨害を受けた場合に、移動目標の存在範囲を算出することで、短時間に移動目標を再発見することができるが、見失ってから再発見するまでにタイムラグが存在し、また、再発見直後には、上述した理由により追尾が不安定になる。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、観測の初期段階から、観測誤差の少ない速度情報や加速度情報を得て、安定した目標機及び妨害機の追尾を行うことができる追尾装置を提供することを課題とする。
本発明に係る追尾装置は、上記課題を解決するために、第1の発明は、入力された観測値に基づいて目標機及び妨害機の追尾処理を行う追尾装置であって、前記観測値が目標機に関する観測値である場合に、目標機の過去の航跡情報に基づき目標機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、前記観測値と前記予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある目標機に対する航跡情報を生成する第1フィルタリング処理部と、前記第1フィルタリング処理部により算出された予測値と入力された観測値とに基づき目標機の相関を判断する第1相関処理部と、前記観測値が妨害機に関する観測値である場合に、妨害機の過去の航跡情報に基づき妨害機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、前記観測値と前記予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある妨害機に対する航跡情報を生成する第2フィルタリング処理部と、前記第2フィルタリング処理部により算出された予測値と入力された観測値とに基づき妨害機の相関を判断する第2相関処理部と、前記観測値が妨害機に関する観測値であり、且つ前記第2相関処理部により前記観測値がいずれの妨害機にも相関がないと判断された場合に、第1フィルタリング処理部により生成された相関のある目標機に対する航跡情報に基づき相関のある前記目標機の航跡情報を前記観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値に設定する初期化処理部とを備えることを特徴とする。
第2の発明は、入力された観測値に基づいて目標機及び妨害機の追尾処理を行う追尾装置であって、前記観測値が目標機に関する観測値である場合に、目標機の過去の航跡情報に基づき目標機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、前記観測値と前記予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある目標機に対する航跡情報を生成する第1フィルタリング処理部と、前記第1フィルタリング処理部により算出された予測値と入力された観測値とに基づき目標機の相関を判断する第1相関処理部と、前記観測値が妨害機に関する観測値である場合に、妨害機の過去の航跡情報に基づき妨害機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出するとともに、前記観測値と前記予測値とに基づき平滑値を算出して相関のある妨害機に対する航跡情報を生成する第2フィルタリング処理部と、前記第2フィルタリング処理部により算出された予測値と入力された観測値とに基づき妨害機の相関を判断する第2相関処理部と、前記観測値が目標機に関する観測値であり、且つ前記第1相関処理部により前記観測値がいずれの目標機にも相関がないと判断された場合に、第2フィルタリング処理部により生成された相関のある妨害機に対する航跡情報に基づき相関のある前記妨害機の航跡情報を前記観測値に対する目標機の航跡情報の初期値に設定する初期化処理部とを備えることを特徴とする。
本発明の第1の発明によれば、妨害機の追尾を開始する際、観測の初期段階から、観測誤差の影響の少ない速度情報や加速度情報を用いて、安定した妨害機追尾を行うことができる。
本発明の第2の発明によれば、目標機の追尾を開始する際、観測の初期段階から、観測誤差の影響の少ない速度情報や加速度情報を用いて、安定した目標機追尾を行うことができる。
以下、本発明の追尾装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の追尾装置の構成を示すブロック図である。この追尾装置は、入力された観測値に基づいて目標機及び妨害機の追尾処理を周期的に行う。図1に示すように、従来の追尾装置と異なる点は、初期化処理部25を備えている点である。その他の構成は、図5に示したように、従来の追尾装置と同様である。
相関処理部22a、トラックファイルメンテナンス部23a、フィルタリング処理部24a、及びトラックファイル27aは、目標機を追尾する際に用いられる。また、相関処理部22b、トラックファイルメンテナンス部23b、フィルタリング処理部24b、及びトラックファイル27bは、妨害機を追尾する際に用いられる。
選択部21は、図5における選択部1と同様の機能を有する。
相関処理部22aは、本発明の第1相関部に対応し、図5における相関処理部2aと同様の機能を有する。
フィルタリング処理部24aは、本発明の第1フィルタリング処理部に対応し、図5におけるフィルタリング処理部4aと同様の機能を有する。
トラックファイル27aは、図5におけるトラックファイル11aと同様の機能を有する。
トラックファイルメンテナンス部23aは、図5におけるトラックファイルメンテナンス部3aと同様の機能を有する。
相関処理部22b、トラックファイルメンテナンス部23b、フィルタリング処理部24b、及びトラックファイル27bは、目標機ではなく妨害機を追尾する際に用いるという点を除き、基本的に相関処理部22a、トラックファイルメンテナンス部23a、フィルタリング処理部24a、及びトラックファイル27aと同様の機能を有する。また、相関処理部22bは、本発明の第2相関処理部に対応する。フィルタリング処理部24bは、本発明の第2フィルタリング処理部に対応する。
初期化処理部25は、選択部21により観測値が妨害機に関する観測値であると判別され、且つ相関処理部22bにより観測値がいずれの妨害機にも相関がないと判断された場合に、フィルタリング処理部24aにより生成された相関のある目標機に対する航跡情報に基づき相関のある目標機の航跡情報を観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値に設定する。
また初期化処理部25は、選択部21により観測値が目標機に関する観測値であると判別され、且つ相関処理部22aにより観測値がいずれの目標機にも相関がないと判断された場合に、フィルタリング処理部24bにより生成された相関のある妨害機に対する航跡情報に基づき相関のある妨害機の航跡情報を観測値に対する目標機の航跡情報の初期値に設定する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の追尾装置の作用を説明する。図2は、本実施例の形態の追尾装置の処理の流れを示すフローチャート図である。基本的には、図6で説明した従来の追尾装置の処理の流れと同様である。ただし、ステップS113bとステップS125bにおける初期化処理が異なる。それに伴い、ステップS115bとステップS127bにおけるフィルタリング処理の際の平滑値の算出に違いが出る。
ステップS111bにおいて、新たな目標が観測され、その目標に対応する航跡情報がトラックファイル27aに作成された場合、フィルタリング処理部24aは、初期化処理を行う(ステップS113b)。
ここで、初期化処理部25は、フィルタリング処理部24bにより生成され。トラックファイル27bにより記憶された相関のある妨害機に対する航跡情報に基づき、観測値が航跡情報を有する妨害機のいずれかと相関があるか否かを判断し、相関がある場合に相関のある妨害機の航跡情報を観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶させる。
具体的には、初期化処理部25は、相関の有無の判断時に、まずトラックファイル27bにより記憶された妨害機の過去の航跡情報(平滑位置や平滑速度等)に基づき妨害機が到達すると予測される位置を示す予測値を算出する。次に、初期化処理部25は、算出された予測値と入力された目標機に関する観測値とに基づき相関を判断する。すなわち、初期化処理部25は、算出された予測値を中心にゲートを開き、観測値がゲート内にあるか否かを判定するゲーティング処理を行う。さらに、初期化処理部25は、ゲート内の観測値とゲートを一対一に対応させる連結処理を行う。
上述した処理により、過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値であると判断された場合に、初期化処理部25は、相関のある妨害機の航跡情報を観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶させる。
フィルタリング処理部24aは、ステップS109b又はステップS113bにおいて、連結が取れた観測値とトラックファイル27aに記憶された航跡情報に基づく予測値とを用いて、平滑値を算出する(ステップS115b)。ここで、ステップS113bにおいて、初期化処理部25により過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値でない(相関がない)と判断された場合に、フィルタリング処理部24aは、1回目の目標機の平滑値(平滑位置xa(1|1)及び平滑速度va(1|1))と2回目の目標機の平滑値(平滑位置xa(2|2)及び平滑速度va(2|2))に対して、従来技術と同様に(2)式乃至(5)式に基づき初期化する。同様に、フィルタリング処理部24aは、k回目(k;3以上)の目標機の平滑値(平滑位置xa(k|k)と平滑速度va(k|k))を、(6)式及び(7)式に基づき算出する。
また、ステップS113bにおいて、初期化処理部25により過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値である(相関がある)と判断された場合に、相関のある妨害機の航跡情報は、今回観測された観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶されている。したがって、フィルタリング処理部24aは、目標機に対する観測1回目の平滑値(平滑位置x
a(1|1)及び平滑速度v
a(1|1))を以下の式により初期化する。
ここで、xb(1|0)とvb(0|0)は、今回観測された目標機に関する観測値と相関のある妨害機の航跡情報に基づく予測位置と平滑速度である。またαb,βbは、今回観測された目標機に関する観測値と相関のある妨害機の航跡情報に基づくフィルタゲインである。さらに、Tbaは、前回観測された妨害機の観測値から今回観測された目標機の観測値までの観測時間間隔である。
よって、上述した(15)式及び(16)式を用いる場合、フィルタリング処理部24aは、今回観測された目標機に関する観測値と相関のある妨害機の航跡情報に基づく予測値、当該妨害機の平滑速度、及びフィルタゲインを用いて平滑値の算出を行う。しかしながら、今回観測された目標機に関する観測値と相関のある妨害機の平滑速度のみを用いて平滑値を算出する方法もある。その場合、フィルタリング処理部24aは、目標機に対する観測1回目の平滑値(平滑位置x
a(1|1)及び平滑速度v
a(1|1))を以下の式により初期化する。
同様に、フィルタリング処理部24aは、(15)、(16)式又は(17)、(18)式による初期化を実施した場合、k回目(k;2以上)の目標機の平滑値(平滑位置xa(k|k)と平滑速度va(k|k))を(6)、(7)式に基づき算出する。
なお、目標機に対する(15)式乃至(18)式は、妨害機に対しては、以下の(19)式乃至(22)式のようになる。
ここで、x
a(1|0)とv
a(0|0)は、今回観測された妨害機に関する観測値と相関のある目標機の航跡情報に基づく予測位置と平滑速度である。またα
a,β
aは、今回観測された妨害機に関する観測値と相関のある目標機の航跡情報に基づくフィルタゲインである。さらに、T
abは、前回観測された目標機の観測値から今回観測された妨害機の観測値までの観測時間間隔である。
なお、本実施例においてフィルタリング処理部24aは、フィルタリング処理にαβフィルタを用いているが、αβγフィルタ、カルマンフィルタ等を用いることもできる。また、初期化に用いる情報は、フィルタリング処理に用いるフィルタに応じて、位置や速度の他にも、加速度、ジャーク(加速度の微分成分)等、高次の時間微分情報を用いることができる。また、平滑値を算出する式として示した(15)式乃至(22)式は、1例であり、これらの式に限定するものではない。
なお、目標機を追尾する場合と妨害機を追尾する場合の座標系が、直交座標と極座標のように異なる場合には、初期化処理部25は、座標変換機能を備えることもできる。
ステップS101bにおいて、妨害機の観測値が入力された場合、選択部21は、観測値を相関処理部22bに出力する。以降の処理は、相関処理部22b、トラックファイルメンテナンス部23b、フィルタリング処理部24b、初期化処理部25、及びトラックファイル27bを用いてステップS117bからステップ127bにおいて、目標機を追尾する場合と同じ処理が行われるため、重複した説明を省略する。この場合の初期化処理を簡単に説明すると、以下のようになる。
ステップS123aにおいて、新たな妨害機が観測され、その妨害機に対応する航跡情報がトラックファイル27bに作成された場合、フィルタリング処理部24bは、初期化処理を行う(ステップS125b)。
ここで、初期化処理部25は、フィルタリング処理部24aにより生成され。トラックファイル27aにより記憶された相関のある目標機に対する航跡情報に基づき、観測値が航跡情報を有する目標機のいずれかと相関があるか否かを判断し、相関がある場合に相関のある目標機の航跡情報を観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27bに記憶させる。
フィルタリング処理部24bは、ステップS121b又はステップS125bにおいて、連結が取れた観測値とトラックファイル27bに記憶された航跡情報に基づく予測値とを用いて、平滑値を算出する(ステップS127b)。
図3は、本実施例の形態に係る追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。図2で説明したように、観測値が目標機に関する観測値であり、且つその観測値がいずれのゲートにも対応しない場合、ステップS111bにおいて、トラックファイルメンテナンス部23aは、新しい目標が発生したと判断して、その目標に対応する航跡情報を新たにトラックファイル27aに作成する。また上述したように、フィルタリング処理部24aは、初期化処理を行う。
ここで、初期化処理部25により過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値でない(相関がない)と判断された場合に、フィルタリング処理部24aは、目標機に対する観測1回目の平滑値を上述した(2)式及び(3)式により算出する。
図3において、2回目及び3回目の観測値も、目標機に関する観測値である。したがって、相関処理部22aにより相関があると判断され、連結処理が行われた場合には、トラックファイル27aは、フィルタリング処理部24aにより生成された平滑値等の航跡情報を記憶する。
ところが図3において、4回目の観測値は、妨害機に関する観測値である。ここで、目標機に関する観測値は、入力されなかったものとする。トラックファイルメンテナンス部23bは、新しい妨害機が観測されたと判断して、その妨害機に対応する航跡情報を新たにトラックファイル11bに作成する。またフィルタリング処理部24bは、初期化処理を行う。
ここで、初期化処理部25は、過去の目標機の航跡情報と今回観測された妨害機に関する観測値とが連続した値である(相関がある)と判断した場合に、相関のある目標機の航跡情報を、今回観測された観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27bに記憶させる。したがって、フィルタリング処理部24bは、妨害機に対する観測1回目の平滑値を上述した(19)式及び(20)式により算出する。この際、(19)式及び(20)式の代わりに(21)式及び(22)式を用いてもよい。
さらに図3において、5回目の観測値も妨害機に関する観測値であり、目標機に関する観測値は、入力されなかったものとする。したがって、相関処理部22bにより相関があると判断され、連結処理が行われた場合には、トラックファイル27bは、フィルタリング処理部24bにより(13)式及び(14)式を用いて生成された方角や角速度等の航跡情報を記憶する。
一方トラックファイルメンテナンス部23aは、過去の航跡情報がトラックファイル27aに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続しているため、目標が失われたとしてトラックファイル27aにより記憶された該当する目標機に対する航跡情報を削除する。
あとは同様に、6回目の観測値も妨害機に関する観測値であるため、航跡情報がトラックファイル27bに記憶されるが、7回目の観測値は、再び目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部23aにより、新たな航跡情報がトラックファイル27aに作成される。
ここでも同様に、フィルタリング処理部24aは、初期化処理を行う。ここで、初期化処理部25は、過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値である(相関がある)と判断した場合に、相関のある妨害機の航跡情報を、今回観測された観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶させる。したがって、フィルタリング処理部24aは、目標機に対する観測1回目の平滑値を上述した(15)式及び(16)式により算出する。この際、(15)式及び(16)式の代わりに(17)式及び(18)式を用いてもよい。
その後、8回目の観測値が目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部23bは、妨害機に対する過去の航跡情報がトラックファイル27bに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続しているため、妨害機を見失ったとしてトラックファイル27bにより記憶された該当する妨害機に対する航跡情報を削除する。なお、目標機に関しては、相関処理部22aにより相関があると判断され、連結処理が行われた場合には、トラックファイル27aは、フィルタリング処理部24aにより(6)式及び(7)式を用いて生成された方角や角速度等の航跡情報を記憶する。
図3における9回目の観測値は、目標機に関する観測値である。したがって、ゲーティング処理や連結処理等が行われた後、フィルタリング処理部24aは、平滑値等の航跡情報を生成して、トラックファイル27aに記憶させる。
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る追尾装置によれば、新規に観測された妨害機を追尾する際、それまでに蓄積された目標機に関する航跡情報を用いて相関があると判断された場合には、新規に観測された妨害機と、相関のある目標機とは同一機であるものとし、当該目標機の航跡情報を妨害機の航跡情報の初期値に設定するので、観測の初期段階から、観測誤差の影響の少ない速度情報や加速度情報を用いて、安定した妨害機追尾を行うことができる。
基本的に妨害機を追尾する場合、方向の観測値しか得られないが、本実施例の形態による追尾装置によれば、距離が判明している目標機の航跡情報を初期値に用いるので、妨害機の方角のみならず距離がわかり、安定した妨害機追尾を行うことができる。
また、本発明の実施例1の形態に係る追尾装置によれば、新規に観測された目標機を追尾する際も同様に、それまでに蓄積された妨害機に関する航跡情報を用いて相関があると判断された場合には、新規に観測された目標機と、相関のある妨害機とは同一機であるものとし、当該妨害機の航跡情報を目標機の航跡情報の初期値に設定するので、観測の初期段階から、観測誤差の影響の少ない速度情報や加速度情報を用いて、安定した目標機追尾を行うことができる。
なお、本実施例において、新目標に対して相関のある航跡情報が複数存在する場合、後述するような複数の航跡仮説情報は生成されず、初期化処理部25は、最も予測誤差の小さい航跡情報のみを用いて初期化を行うように構成することができる。新目標に対して相関のある航跡情報が複数存在し、複数の航跡仮説情報が生成される場合(実施例2)の詳細は、後述する。
次に実施例2の追尾装置について説明する。本実施例の形態に係る追尾装置の構成は、図1に示した実施例1の追尾装置の構成と同じであり、重複した説明を省略する。
ただし、フィルタリング処理部24bは、選択部21により観測値が妨害機に関する観測値であると判別されるとともに、相関処理部22bにより観測値がいずれの妨害機にも相関がないと判断され、且つ初期化処理部25により相関のある目標機の航跡情報を観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値に設定された場合に、観測値が目標機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報と、観測値が目標機と相関があると仮定して観測値と観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値とに基づいた第2航跡仮説情報とを生成する。
また、観測値に対して相関のある航跡情報が複数存在する場合には以下のようになる。フィルタリング処理部24bは、観測値が妨害機に関する観測値であるとともに、相関処理部22bにより観測値がいずれの妨害機にも相関がないと判断され、且つ初期化処理部25により相関のある複数の目標機の航跡情報の各々を観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値に設定された場合に、観測値が複数の目標機の各々と相関があると仮定して観測値と観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値とに基づいた複数の第2航跡仮説情報とを生成する。もちろんこの場合にも、観測値が目標機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報も生成することができる。
生成された第1航跡仮説情報と1以上の第2航跡仮説情報とは、トラックファイル27bにより記憶される。ただし、フィルタリング処理部24bは、第1航跡仮説情報を生成せず、第2航跡仮説情報のみを生成する構成でもよい。
トラックファイルメンテナンス部23bは、本発明の判断部に対応し、実施例1で説明した機能に加え、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報との一方を選択するとともに、他方の情報をトラックファイル27bから削除する。また、観測値に対して相関のある航跡情報が複数存在する場合、トラックファイルメンテナンス部23bは、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報(第1航跡仮説情報が無い場合もある)及び複数の第2航跡仮説情報のうち1つを選択するとともに、その他の情報を削除する。
ここで、所定の条件とは、操作人が自由に設定することができる。例えば、第1航跡仮説情報は、観測値が目標機と相関がないと仮定しているので、フィルタリング処理部24bは、(9)式及び(10)式を用いて第1航跡仮説情報の平滑値を算出したとする。また同時に、第2航跡仮説情報は、観測値が目標機と相関があると仮定しているので、フィルタリング処理部24bは、(19)式及び(20)式を用いて第2航跡仮説情報の平滑値を算出する。
その後、観測値が入力されるたびに、フィルタリング処理部24bは、(1)式を用いて予測値、さらに(13)式及び(14)式を用いて平滑値を算出する。もしも観測値が目標機と相関が実際にあるならば、第2航跡仮説情報に用いた初期値は正しいので、フィルタリング処理部24bの算出する予測値と実際の観測値は近い値になると予想される。逆に、観測値が目標機との相関が実際には無い場合、第2航跡仮説情報に用いた初期値は誤りであるため、フィルタリング処理部24bの算出する予測値と実際の観測値との間に大きな差があると予想される。
したがって、1例として操作人は、所定回数の観測の後、フィルタリング処理部24bの算出する予測値が観測値に近い航跡仮説情報を選択し、他方の航跡仮説情報を削除する、といった条件を設定することができる。もちろん、最初からトラックファイルメンテナンス部23bに設定されているとしてもよい。さらに、複数の第2航跡仮説情報が生成された場合にも、トラックファイルメンテナンス部23bは、予測値が観測値に近い第2航跡仮説情報を選択し、その他の情報を削除することができる。第1航跡仮説情報と複数の第2航跡仮説情報が存在する場合には、全体の情報の中から最も予測値が観測値に近い情報を選択する。
以下に目標機と妨害機に相関が無い場合の1例を示す。妨害機に関しては、上述したように、方位のみしか知ることができないため、今まで観測していた目標機と同方向から妨害波を受信した場合に、初期化処理部25は、目標機と妨害機は相関があると判断する可能性が高い。しかしながら、目標機と妨害機とが実際には別の機体であり、目標機と比較して妨害機の距離が追尾装置から相当離れている場合には、フィルタリング処理部24bの予測する予測値と比較して、妨害機の角速度は遅いため、予測値と観測値との間には開きが発生する。したがって、トラックファイルメンテナンス部23bは、相関が無いと仮定した第1航跡仮説情報を選択し、第2航跡仮説情報を削除する。
なお、トラックファイルメンテナンス部23bの代わりに、フィルタリング処理部24bが、所定の条件(例えば予測誤差から算出した尤度)に基づき第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報との一方を選択するとともに、他方の情報をトラックファイル27bから削除することもできる。その場合には、フィルタリング処理部24bが本発明の判断部に対応する。また、観測値に対して相関のある航跡情報が複数存在する場合、フィルタリング処理部24bは、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報(第1航跡仮説情報が無い場合もある)及び複数の第2航跡仮説情報のうち1つを選択するとともに、その他の情報を削除する。
またフィルタリング処理部24aは、選択部21により観測値が目標機に関する観測値であると判別されるとともに、相関処理部22aにより観測値がいずれの目標機にも相関がないと判断され、且つ初期化処理部25により相関のある妨害機の航跡情報を観測値に対する目標機の航跡情報の初期値に設定された場合に、観測値が妨害機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報と、観測値が妨害機と相関があると仮定して観測値と観測値に対する目標機の航跡情報の初期値とに基づいた第2航跡仮説情報とを生成する。
さらに、新目標に対して相関のある航跡情報が複数存在する場合、フィルタリング処理部24aは、観測値が目標機に関する観測値であるとともに、相関処理部22aにより観測値がいずれの目標機にも相関がないと判断され、且つ初期化処理部25により相関のある複数の妨害機の航跡情報の各々を観測値に対する目標機の航跡情報の初期値に設定された場合に、観測値が複数の妨害機の各々と相関があると仮定して観測値と観測値に対する目標機の航跡情報の初期値とに基づいた複数の第2航跡仮説情報とを生成する。もちろんこの場合にも、観測値が妨害機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報も生成することができる。
この場合、生成された第1航跡仮説情報と1以上の第2航跡仮説情報とは、トラックファイル27aにより記憶される。
トラックファイルメンテナンス部23aは、本発明の判断部に対応し、実施例1で説明した機能に加え、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報との一方を選択するとともに、他方の情報をトラックファイル27aから削除する。所定の条件に関しては、上述したように、操作人が自由に設定することができる。もちろん、最初からトラックファイルメンテナンス部23aに設定されているとしてもよい。さらに、複数の第2航跡仮説情報が生成された場合にも、トラックファイルメンテナンス部23aは、トラックファイルメンテナンス部23bと同様、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報(第1航跡仮説情報が無い場合もある)及び複数の第2航跡仮説情報のうち1つを選択するとともに、その他の情報を削除する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の追尾装置の作用を説明する。基本的には、図2に示した実施例1の形態の追尾装置の処理の流れを示すフローチャート図と同様である。ただし、ステップS113bとステップS125bにおいて、フィルタリング処理部24a又はフィルタリング処理部24bは、上述したように第1航跡仮説情報と1以上の第2航跡仮説情報とを生成する。
また、ステップS111bとステップS123bにおいて、トラックファイルメンテナンス部23a又はトラックファイルメンテナンス部23bは、上述したように、所定の条件にしたがって不要な航跡仮説情報を削除する。
図4は、本実施の形態に係る追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。基本的には実施例1で説明した図3における流れと同様である。図3と異なる点を以下に示す。
図4において、4回目の観測値は、妨害機に関する観測値である。ここで、目標機に関する観測値は、入力されなかったものとする。トラックファイルメンテナンス部23bは、新しい妨害機が観測されたと判断して、その妨害機に対応する航跡情報を新たにトラックファイル11bに作成する。またフィルタリング処理部24bは、初期化処理を行う。
ここで、初期化処理部25は、過去の目標機の航跡情報と今回観測された妨害機に関する観測値とが連続した値である(相関がある)と判断した場合に、相関のある目標機の航跡情報を、今回観測された観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27bに記憶させる。フィルタリング処理部24bは、観測値が目標機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報と、観測値が目標機と相関があると仮定して観測値と観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値とに基づいた第2航跡仮説情報とを生成する。したがって、フィルタリング処理部24bは、第2航跡仮説情報を生成する際にのみ、トラックファイル27bに記憶された今回観測された観測値に対する妨害機の航跡情報の初期値を用いる。
以上より、フィルタリング処理部24bは、(9)式及び(10)式を用いて第1航跡仮説情報の平滑値を算出する。また同時に、第2航跡仮説情報は、観測値が目標機と相関があると仮定しているので、フィルタリング処理部24bは、(19)式及び(20)式を用いて第2航跡仮説情報の平滑値を算出する。この際、(19)式及び(20)式の代わりに(21)式及び(22)式を用いてもよい。
図4において、7回目の観測値は、再び目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部23aにより、新たな航跡情報がトラックファイル27aに作成される。
ここでも同様に、フィルタリング処理部24aは、初期化処理を行う。ここで、初期化処理部25は、過去の妨害機の航跡情報と今回観測された目標機に関する観測値とが連続した値である(相関がある)と判断した場合に、相関のある妨害機の航跡情報を、今回観測された観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶させる。この場合、初期化処理部25は、第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報のいずれに対しても、今回観測された目標機に関する観測値が相関があるか否かを判断する。図4においては、第2航跡仮説情報と相関があったため、初期化処理部25は、第2航跡仮説情報を、今回観測された観測値に対する目標機の航跡情報の初期値としてトラックファイル27aに記憶させる。
なお、図4には記載されていないが、7回目の観測の際、フィルタリング処理部24aは、観測値が妨害機と相関がないと仮定して観測値のみに基づいた第1航跡仮説情報と、観測値が妨害機と相関があると仮定して観測値と観測値に対する目標機の航跡情報の初期値とに基づいた第2航跡仮説情報とを生成してもよい。
その後、8回目の観測値が目標機に関する観測値であるため、トラックファイルメンテナンス部23bは、妨害機に対する過去の航跡情報がトラックファイル27bに記憶されているにもかかわらず、ゲート内に観測値が入らず、且つその状態が連続しているため、妨害機を見失ったとしてトラックファイル27bにより記憶された該当する妨害機に対する第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報とを削除する。なお、図4に示す例においては、妨害機が観測された時間が短いため、トラックファイルメンテナンス部23bは、所定の条件に基づき第1航跡仮説情報と第2航跡仮説情報との一方を選択するとともに、他方の情報をトラックファイル27aから削除するといった動作を行っていない。したがって、仮にトラックファイルメンテナンス部23bが一方の航跡仮説情報を正しいと判断して選択した場合には、妨害機を見失うまでもなく他方の航跡仮説情報は削除される。
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る追尾装置によれば、実施例1の効果に加え、新規に観測された目標機又は妨害機を追尾する際に、過去の航跡情報によらず生成された第1航跡仮説情報と、それまでに蓄積された目標機又は妨害機に関する航跡情報を用いて相関があると仮定して生成された第2航跡仮説情報に基づき追尾を行うので、ゲーティング処理や連結処理において相関の有無の判断に誤りがあったとしても、安定した目標機追尾を行うことができる。
また、不要な航跡仮説情報は削除されるため、無駄に記憶領域を必要とせず、効率よく必要な情報のみ残すことができる。
本発明に係る追尾装置は、レーダセンサーやソナーセンサー等の追尾装置に利用可能である。
本発明の実施例1の形態の追尾装置の構成を示すブロック図である。
本発明の実施例1の形態の追尾装置の動作を示すフローチャート図である。
本発明の実施例1の形態の追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。
本発明の実施例2の形態の追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。
従来の形態の追尾装置の構成を示すブロック図である。
従来の形態の追尾装置の動作を示すフローチャート図である。
従来の形態の追尾装置におけるデータの流れの1例を示す図である。
符号の説明
1 選択部
2a、2b 相関処理部
3a、3b トラックファイルメンテナンス部
4a、4b フィルタリング処理部
11a、11b トラックファイル
21 選択部
22a、22b 相関処理部
23a、23b トラックファイルメンテナンス部
24a、24b フィルタリング処理部
25 初期化処理部
27a、27b トラックファイル