JP2004309166A - 目標追尾装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】気象条件等、レーダ装置が一時的に目標を検出できなくなった場合においても、目標監視情報を与えることができる目標追尾装置を提供する。
【解決手段】目標追尾装置100は、レーダ装置1と、相関ゲート判定器2と、信頼度算出器3と、平滑器4と、追尾終了判定器5と、追尾開始判定器6と、第1の遅延回路7と、平滑誤差評価器8と、第2の遅延回路9と、予測誤差評価器10と、ゲイン行列算出器11と、仮航跡登録判定器12と、初期値算出器13と、第3の遅延回路14と、相関対象区画探索器15と、区画内仮航跡選択器16と、休止終了判定器17と、区画データベース18と、予測器19とを備えて構成される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーダ、レーザ、カメラ等の目標観測手段にて計測した、人、自転車、車両、航空機等の移動する目標の距離、俯角(仰角)、方位角、位置、またはこれらの時間変化率(速度)等の運動諸元の観測値に基づき目標を追尾する目標追尾装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、空間に放出した電波の反射信号から目標を検出し、その検出信号に基づいて目標を追尾する目標追尾装置がある。例えば、レーダ装置により観測された観測ベクトルが目標に係る観測ベクトルである可能性が高い場合、即ち所定の予測存在確率の範囲内に観測ベクトルが存在する場合、その観測ベクトルを航跡または仮航跡と相関があるとみなし、一方、何れの航跡及び仮航跡とも相関のとれない観測ベクトルは新目標の可能性のあるデータであるとみなす。そして航跡及び仮航跡と相関があるとみなされた観測ベクトルは、その信頼度と予測ベクトルとに基づいて各航跡及び仮航跡毎に目標の位置及び速度が予測される。この航跡及び仮航跡に対する探索が予め設定された連続失探回数以内であれば目標として追尾を続行し、一方、連続失探回数以上であれば追尾を終了させ、新たな航跡の探索が開始される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
Multiple−Target Tracking with Radar Application,ARTECK HOUSE,1986,pp299−302
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の目標追尾装置は以上のように構成されているため、気象条件その他によりレーダ装置が一時的に検出できなくなった場合、予測ベクトルは失探時間が長くなるにつれて誤差が大きくなる。このため、航跡が現実の目標の運動と大きくかけ離れてしまい、他の航跡の追尾を妨げ、或いは他の目標に追尾が乗り移る問題が発生する。従って、ある程度連続して検出の得られない航跡は追尾を終了せざるを得なかった。また、目標以外からの電波の反射や、受信機雑音により誤検出が発生した場合、誤検出を航跡として追尾する可能性が高く、結果として、航跡数が実際の目標数と異なったり、追尾の異常終了により目標の動静が把握できない等の課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、例えば、車線幅の狭い一方通行路を走行する車両のように、追尾対象となる複数の目標の走行方向が限定され、かつ、追い越しや追い抜きができない状況や運行上ありえない状況において、気象条件等によりレーダ装置が一時的に目標を検出できなくなった場合においても、その目標の概略の動静や、数等の目標監視情報を与えることのできる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る目標追尾装置は、目標の位置を計測する目標観測手段と、目標の追尾開始を判定する追尾開始判定手段と、目標の状態の予測値を演算する予測値演算手段と、目標の状態の平滑値を演算する平滑値演算手段とを備えた目標追尾装置において、失探した航跡の追尾を一時休止し、追尾開始判定手段において新規に登録された仮航跡と失探した航跡との相関を判定する仮航跡相関判定手段を備えたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の目標追尾装置に係る実施の一形態について説明する。
実施の形態1.
実施の形態1に係る目標追尾装置100について図1から図4を参照して説明する。なお、図1は目標追尾装置100の構成を示すブロック図であり、図2は動作原理を説明するための図であり、図3および図4は動作の例を示す図である。
【0008】
目標追尾装置100は、レーダ装置1と、相関ゲート判定器2と、信頼度算出器3と、平滑器4と、追尾終了判定器5と、追尾開始判定器6と、第1の遅延回路7と、平滑誤差評価器8と、第2の遅延回路9と、予測誤差評価器10と、ゲイン行列算出器11と、仮航跡登録判定器12と、初期値算出器13と、第3の遅延回路14と、相関対象区画探索器15と、区画内仮航跡選択器16と、休止終了判定器17と、区画データベース18と、予測器19とを備えて構成されている。
【0009】
レーダ装置1は、空間に放出した電波の反射信号から目標を検出し、その位置を計測する。但し、反射信号にはクラッタ等の不要信号が含まれるため、そのレベルによってはレーダ装置1は目標以外の位置を出力することもある。
相関ゲート判定器2は、レーダ装置1により観測された観測ベクトルと、航跡(追尾維持中の目標)及び仮航跡(まだ航跡と認められない仮航跡)との相関を判定し、いずれかの航跡及び仮航跡と相関がある観測データを信頼度算出器3に出力し、いずれの航跡及び仮航跡とも相関のない観測データを仮航跡登録判定器12に出力する。
【0010】
信頼度算出器3は、相関ゲート判定器2で航跡及び仮航跡の相関対象として選択された観測データの信頼度を算出する。
平滑器4は、信頼度算出器3により算出された観測ベクトルの信頼度と、予測器19で算出された予測ベクトルと、ゲイン行列算出器11により算出されたゲイン行列を用いて、目標の位置及び速度の平滑ベクトルを算出する。
【0011】
追尾終了判定器5は、航跡及び区画内仮航跡選択器16から入力した仮航跡が区画デ―タベース18から入力した追尾終了対象区域内、または、追尾終了条件を満たす場合に追尾を終了し、休止条件を満たす航跡は、追尾を一時休止して第3の遅延回路14を介して相関対象区画探索器15に送出する。
【0012】
追尾開始判定器6は、仮航跡が区画データベース18から入力した追尾開始対象区域内、または、追尾開始条件を満たす場合に、その仮航跡を航跡として登録する。
第1の遅延回路7は、平滑器4により算出された航跡及び仮航跡の平滑ベクトルを1サンプリング時間だけ遅延する。
【0013】
平滑誤差評価器8は、平滑器4で算出された残差ベクトル及び信頼度による重み付き残差ベクトルと、ゲイン行列算出器11により算出されたゲイン行列と、予測誤差評価器10により算出された予測誤差共分散行列とを用いて平滑誤差共分散行列を算出する。
第2の遅延回路9は、平滑誤差評価器8により算出された平滑誤差共分散行列を1サンプリング時間だけ遅延する。
【0014】
予測誤差評価器10は、平滑誤差評価器8により算出された平滑誤差共分散行列を第2の遅延回路9を介して入力し、現時刻より1サンプリング後の予測誤差共分散行列を算出する。
ゲイン行列算出器11は、予測誤差評価器10により算出された予測誤差共分散行列と予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列からゲイン行列を算出する。
【0015】
仮航跡登録判定器12は、相関ゲート判定器2で何れの航跡及び仮航跡とも相関のとれなかった観測データを入力し、前サンプリング時に目標の可能性があると判定され、保持されている過去の観測データとの相関を判定し、相関がとれた観測データの組みを初期値算出器13に送出し、相関がとれない観測データを新たに目標の可能性のあるデータとして登録し、保持する。
【0016】
初期値算出器13は、仮航跡登録判定器12から入力した観測データのペアを用いて目標の状態の初期値を算出し、新規に仮航跡として登録する。
第3の遅延回路14は、追尾終了判定器5で追尾が一時休止された航跡情報と、休止終了判定器17の出力する休止航跡とを1サンプリング時間だけ遅延する。
相関対象区画探索器15は、第3の遅延回路14を介して追尾休止航跡情報を入力し、区画データベース18から入力した区画情報を元に、追尾休止航跡が再検出される可能性のある区画を探索する。
【0017】
区画内仮航跡選択器16は、相関対象区画探索器15で探索した追尾休止航跡が再検出される可能性のある区画情報と、平滑器4から出力される仮航跡と、初期値算出器13から出力される仮航跡とを入力し、これらの仮航跡のうち上記追尾休止航跡が再検出される可能性のある区画内に存在し、最も追尾休止航跡と相関の可能性の高い仮航跡を追尾休止航跡と同一目標と判断する。
【0018】
休止終了判定器17は、区画内仮航跡選択器16で相関のとれなかった追尾休止航跡のうち、積算休止時間が予め定められた値より大きい追尾休止航跡を削除する。
区画データベース18は、目標の走行領域の区画情報を格納する。
予測器19は、平滑器4から出力される平滑ベクトルを第1の遅延回路7を介して入力し、これと予め設定された目標の運動モデルを用いて現時刻より1サンプリング後の目標の位置及び速度の予測ベクトルを算出する。
【0019】
次に動作について説明する。まず、この実施の形態1に係る目標追尾装置100の動作原理を説明する。
【0020】
レーダ装置1は、図2に示すように地上から高さZr位置に設置され、一車線の一方通行路を走行する車両を追尾する場合を仮定する。レーダ装置1のアンテナ取り付け位置の鉛直線と地上面との交点を原点とし、道路面をXY平面、鉛直上向きをZ軸の正にとったO−XYZ座標を基準座標とする。また、基準座標におけるレーダ装置1のアンテナ取り付け位置は(0,0,Zr)とする。レーダ装置1はアンテナ取り付け位置を原点とする極座標において、車両の距離R及び方位角Az(Y軸正の方向より反時計回りを正とする)を計測し、式(1)及び式(2)により基準座標の位置に変換する。
【0021】
【数1】
Figure 2004309166
【0022】
次に、車両の運動モデルを式(3)に示す。ここで、χ はサンプリング時刻tにおける車両の運動諸元の真値を表す状態ベクトルであり、XY座標における車両の位置ベクトルを式(4)、速度ベクトルを式(5)とすると、車両の状態ベクトルは式(6)で表される。また、 はベクトルの転置ベクトルを表す。
【0023】
【数2】
Figure 2004309166
【0024】
Φk−1はサンプリング時刻tk−1よりtへの状態ベクトルの推移行列であり、式(7)で表される。また、 はサンプリング時刻tにおける駆動雑音ベクトルであり、Γ(k)はサンプリング時刻t における駆動雑音ベクトルの変換行列である。例えば、車両の運動モデルを等速直線運動と仮定したことによる打ち切り誤差項をΓ(k−1) k−1とみれば、 は加速度ベクトル相当であり、Γ(k−1)は式(8)で表される。なお、Tはレーダ装置1のサンプリング間隔、Iは2行2列の単位行列である。
【0025】
【数3】
Figure 2004309166
【0026】
また、平均を表す記号としてEを用いると、 は平均の2次元正規分布白色雑音であり、式(9)及び式(10)とする。ただし、は零ベクトルであり、Qはサンプリング時刻tにおける駆動雑音共分散行列である。
【0027】
【数4】
Figure 2004309166
【0028】
次に車両の距離R及び方位角Azがサンプリング時刻tにレーダ装置1より観測される場合のXY座標におけるレーダ装置1の観測モデルを式(11)で表す。ここで、 はXY座標で表されるサンプリング時刻tにおけるレーダ観測装置1の観測ベクトル、Hは観測行列で、式(12)で表される。また、 はサンプリング時刻tにおけるレーダ装置1の観測雑音ベクトルであり、平均の2次元正規分布白色雑音で、式(13)及び式(14)で表される。なお、Rはサンプリング時刻tにおけるレーダ装置1の観測誤差共分散行列である。Γ(k)は極座標よりXY座標への観測雑音ベクトルの変換行列で、式(15)で表される。サンプリング時刻tまでの間に車両の追尾に用いたレーダ装置1の観測ベクトル全体をZ とする(式(16)を参照)。
【0029】
【数5】
Figure 2004309166
【0030】
次に、サンプリング時刻tk−1までのレーダ装置1の観測ベクトルZk−1が得られているときの予測処理について述べる。サンプリング時刻tにおける車両の状態ベクトルχ の予測ベクトルをχ(−)、予測誤差共分散行列をP(−)とすると、それぞれ条件付平均ベクトル、条件付共分散行列で定義され、式(17)及び式(18)で表される。ここで、χk−1(+)及びPk−1(+)はそれぞれ前サンプリング時刻tk−1の平滑ベクトル及び平滑誤差共分散行列である。これらの算出方法については後で述べる。
【0031】
【数6】
Figure 2004309166
【0032】
誤検出や周辺反射物等からの車両以外の観測ベクトルは空間に一様に分布しているとし、サンプリング時刻tにおける単位体積あたりの発生頻度をβ FTとし、追尾車両と相関をとるべき車両予測存在範囲の体積をVGkとしたとき、追尾車両以外からの観測ベクトルが車両予測存在範囲内に存在する総数は平均β FTGkのポアソン分布に従うとする。
【0033】
サンプリング時刻tにおいて、i番目の観測ベクトル k,iが追尾車両からの観測ベクトルであるとの仮説をχk,i として、それ以外の観測ベクトルは追尾車両でないと仮定している。また、追尾目標より観測ベクトルが得られないとの仮説をχk,0 と書く。サンプリング時刻tまでの観測情報Zにより仮説χk,i が真である確率、すなわち仮説χk,i の信頼度をβk,i と書き、式(19)で定義される。また、確率論より式(20)が成立する。
【0034】
【数7】
Figure 2004309166
【0035】
次に相関ゲート判定処理について述べる。追尾車両の存在位置の確率分布は、式(21)に示す条件付確率密度関数で表される。すなわち、追尾車両からの観測ベクトルは、式(22)で与えられる予測位置ベクトル (−)を平均とし、式(23)で与えられるSを共分散行列とする2次元正規分布に従うとする。そこで、式(24)を満たすZk,i を追尾車両と相関がある観測ベクトルと判定する。ここで、dは目標との相関範囲を決めるパラメータであり、自由度3のχ自乗分布により算出する。
【0036】
【数8】
Figure 2004309166
【0037】
サンプリング時刻tに目標と相関があると判定された観測ベクトルが追尾車両からの観測ベクトルであるとの仮説、または追尾車両より観測ベクトルが得られないとの仮説の信頼度の算出方法を示す。式(19)にベイズの定理を使用し、追尾車両の存在位置の確率分布、検出確率P等により、相関の仮説χk,i が真である尤度γk,i を求め、これを正規化した式(25)から各仮説の信頼度を算出する。ここで、PGkはパラメータdにより求まる追尾車両が相関はんいないに存在する確率である。
【0038】
【数9】
Figure 2004309166
【0039】
次に、平滑処理について述べる。前述の相関ゲート判定処理により、追尾車両と相関があると判定された観測ベクトルを と置き直すと、ゲイン行列K、平滑ベクトルχ^ (+)及び平滑誤差共分散行列P(+)は通常のカルマンフィルタの理論により、式(28)から式(31)で与えられる。ここで、Rは式(14)で表される。サンプリング時刻tにおけるレーダ装置1の観測誤差共分散行列であり、 は式(32)で与えられる残差ベクトルある。
【0040】
【数10】
Figure 2004309166
【0041】
次に、前述の相関ゲート判定処理により、いずれの追尾車両とも相関がないと判定された観測ベクトルの扱いについて述べる。相関がない観測ベクトルは新目標の可能性があるため、まず、前サンプル時刻において相関がなかった観測ベクトルz k−1との関連性を調べる。すなわち、予め設定された距離範囲ρに対し、式(33)を満たす観測ベクトルz k,iを前記サンプル時刻において相関がなかった観測ベクトルz k−1と同一で判断する。そして同一であると判断された観測ベクトルをz と置き換えると、関連性が認められた観測ベクトルのペアに対し、式(34)及び、式(35)を用いて状態ベクトルとその誤差共分散行列の初期値を算出し、新規の仮航跡として登録する。
【0042】
【数11】
Figure 2004309166
【0043】
次に、車両の走行領域を複数の区画に分割する方法と区画処理について説明する。ここで、例えば、車線幅の狭い一方通行路を走行する車両のように、追尾対象となる複数の目標の走行方向が限定され、かつ、追い越しや追い抜きができないまたは運行上ありえない状況を仮定する。区画は、1つの区画内で少なくても2サンプル点以上車両を検出できるサイズになるように設定する。図2の走行領域の区画分割例を図3に示す。
【0044】
現在追尾中の車両に加えて新たに車両が発生するのは、車両が追尾を行う領域に流入する場合、もしくは、気象条件や電波のマルチパスなどによって失探した車両が再び検出される場合である。従って、仮航跡を航跡として認定するのは、仮航跡が追尾領域に流入する区画内に存在する場合と、仮航跡が失探した車両と相関があると認められた場合の2ケースとする。例えば、図3の例では、区画101が追尾領域に流入する区画である。なお、失探した車両と仮航跡の相関処理については後で述べる。一方、車両が消滅するのは車両が追尾領域から流出する場合なので、追尾の終了は流出する区画内の航跡に限定する。例えば、図3の例では、区画104もしくは区画102.3内に航跡が入った場合に追尾を終了する。
【0045】
一時的な失探により連続失探サンプル回数Nlostが予め設定された値aに対し、式(36)を満たす航跡は、車両が追尾領域に存在している可能性が高いため、追尾を終了せずに一時休止させ、次サンプル以降、休止以後に登録された仮航跡との相関を調べる。ここで、休止とは、失探時の時刻、平滑ベクトルを保持したまま平滑処理を行わない状態である。ただし、失探サンプル回数Nlostが予め設定された値b(>a)に対し、式(37)を満たす場合には、車両が追尾領域内に存在する可能性が低いと見なし休止を終了し、航跡を削除する。
【0046】
【数12】
Figure 2004309166
【0047】
次に、休止航跡(失探した車両)と仮航跡の相関方法について説明する。例えば、図4に示すように追尾領域に3台の車両が走行しており、そのうち、1台の車両(車両31)の検出が不能になり追尾が休止された場合を想定する。このとき、再検出された車両の初期検出時刻は失探時刻よりも後になる。
【0048】
また、失探した車両は一方方向にしか走行できず、かつ、先行する他の車両より前に存在しないとの前提条件から、失探車両は、失探車両の前方かつ失探車両に先行する直近の車両の後方の区画内に存在する可能性が高い。例えば、図4において失探した車両が再検出される可能性のある領域は、区画101の失探車両の前方、区画102、区画103、区画104の車両32の後方、区画102.1、区画102.2、区画102.3の車両33の後方の何れかである。
【0049】
これらの条件から、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後であり、かつ、失探航跡の前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画内に存在する仮航跡を休止航跡と同一の車両であると見なす。そして、このように休止航跡と相関のある仮航跡が見つかった場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡とみなして追尾を引き継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行う。
【0050】
次に、この実施の形態1に係る目標追尾装置100の動作を具体的に説明する。
レーダ装置1では、図2に示すように車両の距離R及び方位角Azを観測し、式(1)及び式(2)に従いXY座標に変換する。
【0051】
相関ゲート判定器2では、予測器19から航跡及び仮航跡の予測ベクトルχ(−)、及び平滑誤差共分散行列P(−)を予測器19から入力し、これらと予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから、観測ベクトルの予測ベクトル (−)とその誤差共分散行列S をそれぞれ、式(22)及び式(23)に従い算出し、レーダ装置1から入力した観測ベクトルのうち、予め設定されたゲートサイズパラメ―タdに対して式(24)を満たす観測ベクトルの全てを対応する航跡または仮航跡と相関があると見なして選択する。これを全ての航跡及び仮航跡に対して行う。
【0052】
信頼度算出器3では、相関ゲート判定器2で航跡または仮航跡の相関対象として選択された各観測ベクトル k,i に対し、その相関の度合いを示す信頼度βk,iを式(25)に従い算出する。
【0053】
平滑器4では、各航跡に対し、信頼度算出器3で算出した観測ベクトルの信頼度βk,iと、予測器19で算出した予測ベクトルχ(−)と、ゲイン行列算出器11で算出したゲイン行列Kとを入力し、式(29)に従い平滑ベクトルχ(+)を算出する。
【0054】
追尾終了判定器5では、平滑器4から航跡の平滑ベクトルを、区画内仮航跡選択器16から仮航跡の平滑ベクトルを、それぞれ入力し、また、区画データベース18から車両が追尾領域外に流出する区画の情報を入力し、平滑位置がこの区画内に存在する航跡及び仮航跡の追尾を終了させる。また、連続失探サンプル回数Nlostが予め設定された値aに対し、式(35)を満たす航跡は、追尾を一時休止させ、第3の遅延回路14に送出する。
【0055】
追尾開始判定器6では、追尾終了判定器5から追尾終了とならなかった仮航跡と、区画データベース18からの車両が追尾領域内に流入する区画の情報とを、それぞれ入力し、平滑位置がこの区画内に存在する仮航跡を航跡として登録する。
【0056】
平滑誤差評価器8では、予測誤差評価器10からの予測誤差共分散行列P(−)と、ゲイン行列算出器11からのゲイン行列Kと、平滑器4からの観測ベクトルの信頼度βk,iをそれぞれ入力し、式(30)に従い平滑誤差共分散行列P(+)を算出する。
【0057】
予測誤差評価器10では、第2の遅延回路9から1サンプリング前の平滑誤差共分散行列Pk−1(+)を入力し、予め設定された駆動雑音Qk−1を用いて式(18)に従い予測誤差共分散行列P(−)を算出する。
【0058】
ゲイン行列算出器11では、予測誤差評価器10から入力した予測誤差共分散行列P(−)と、予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから式(28)に従いゲイン行列Kを算出する。
【0059】
仮航跡登録判定器12では、相関ゲート判定器2から何れの航跡及び仮航跡とも相関のとれなかった観測ベクトルz k,iを入力し、前サンプリング時刻に車両の可能性があると判定され、保持されている過去の観測ベクトルz k−1との相関を判定し、式(33)を満たす観測ベクトルの組みを初期値算出器13に送出する。なお、相関がとれない観測ベクトルは新規に検出された車両である可能性のあるベクトルとして登録し、保持する。
【0060】
初期値算出器13では、仮航跡登録判定器12から式(33)を満たす観測ベクトルのペアを入力し、状態ベクトル及びその誤差共分散行列の初期値を、それぞれ、式(34)及び式(35)に従い算出する。
【0061】
相関対象区画探索器15では、第3の遅延回路14から追尾休止航跡の平滑ベクトルと失探時の情報を、区画データベース18から区画情報を、それぞれ入力し、失探航跡の失探時の位置に対して前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画(再検出予測区画と呼ぶ)を探索する。
【0062】
区画内仮航跡選択器16では、相関対象区画探索器15からの再検出予測区画と、初期値算出器13及び平滑器4からの仮航跡の状態ベクトルを、それぞれ入力し、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後、かつ、失探航跡の前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画内に存在する仮航跡を休止航跡と相関があると判定する。そして、休止航跡と相関のある仮航跡が存在する場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡と見なして追尾を引き継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行う。なお、相関のある仮航跡が存在しない休止航跡は休止終了判定器17に、休止航跡と相関のとれない仮航跡は追尾終了判定器5にそれぞれ出力される。
【0063】
休止終了判定器17では、区画内仮航跡選択器16で相関のとれなかった休止航跡を入力し、休止航跡の失探サンプル回数Nlostが予め設定された値b(>a)に対し、式(37)を満たす場合には、車両が追尾領域内に存在する可能性が低いと見なし休止を終了し、航跡を削除する。
【0064】
予測器19では、1サンプリング前の平滑ベクトルχk−1(+)を第1の遅延回路7を介して入力し、式(17)に従い予測ベクトルχ(−)を算出する。
【0065】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、気象条件その他によりレーダ装置1が一時的に車両を検出できなくなった場合においても、追尾を終了させずに一時休止状態とし、相関対象区画探索器15において、休止航跡が再検出される可能性のある区画を探索し、区画内仮航跡選択器16において休止航跡と再検出された仮航跡との相関を調べることによって、休止状態とした航跡の追尾を引き継ぐ構成としているため、目標のおおよその動静や、数の目標監視情報を正確に与えることが可能となる。
【0066】
また、区画データベース18からの区画情報を用いることにより、追尾領域に車両が流入する区画及び追尾領域から車両が流出する区画のみにおいて、追尾の開始や追尾の終了を判断し、かつ、それ以外の区画における追尾の開始及び終了を禁止し、追尾開始においては、休止航跡との相関がとれた仮航跡のみ航跡として登録する構成としているため、目標以外からの電波の反射や、受信機雑音により誤検出が発生する状況においても、誤って誤検出を航跡として登録・追尾する可能性が極めて低くなる。
【0067】
なお、この実施例は、走行領域が追い越しのない区画に分割可能であれば、車両以外の他の移動体であっても適用可能である。また、電波を利用した送受信器の代わりに、レーザレーダ、光学カメラ等を用いて移動体の位置を測定する場合や、これらのセンサを複数配置してネットワークで利用する場合にも適用可能である。
【0068】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る目標追尾装置200について図5を参照して説明する。なお、図5は目標追尾装置200の構成を示すブロック図である。同図において、図1と同一符号である1〜14、16〜19は実施の形態1と同一または相当部分を示すものであり、その説明を省略する。また、目標追尾装置200は更に、進行距離算出器20と、進行予測区画探索器21とを備えるものである。
【0069】
進行距離算出器20は、第3の遅延回路14を介して追尾休止航跡を入力し、休止時の速度情報から現時刻の車両の進行距離を算出する。
進行予測区画探索器21は、進行距離算出器20から出力される追尾休止航跡の進行距離と、区画データベース18から入力した区画情報に基づき、追尾休止航跡が再検出される可能性のある区画を探索する。
【0070】
次に動作について説明する。まず、この実施の形態2に係る目標追尾装置200の動作原理を説明する。
【0071】
レーダ装置1による車両の観測、車両の運動モデル、車両の観測モデル、予測処理、誤検出や周辺反射物などからの車両以外の観測ベクトルの発生モデル、仮説の生成、相関ゲート判定処理、仮説の信頼度の算出方法、平滑処理、新規仮航跡の相関判定、新規仮航跡の初期値の算出方法、車両の走行領域を複数の区画に分割する方法と区画処理は、実施の形態1における式(1)から式(37)までの原理と同じであり、これらに関する説明は省略する。
【0072】
次に、休止航跡(失探した車両)と仮航跡の相関方法について説明する。例えば、図4に示すように追尾領域に3台の車両が走行しており、そのうち、1台の車両(車両31)の検出が不能になり追尾が休止された場合を想定する。このとき、再検出された車両の初期検出時刻は失探時刻よりも後になる。
【0073】
また、失探した車両は一方方向にしか走行できず、かつ、先行する他の車両より前に存在しないとの前提条件から、失探車両は、失探車両の前方かつ失探車両に先行する直近の車両の後方の区画内に存在する可能性が高い。例えば、図4において失探した車両が再検出される可能性のある領域は、区画101の失探車両の前方、区画102、区画103、区画104の車両32の後方、区画102.1、区画102.2、区画102.3の車両33の後方の何れかである。
【0074】
また、失探サンプリング時刻をt、現サンプリング時刻をt 、失探時の平滑ベクトルを式(38)で表すと、失探の間に車両が進行したと予想される距離Gは式(39)で表せるので、車両が再検出される可能性が高い領域は、前述の区画内かつ失探位置からの距離がG以下の領域である。
【0075】
これらの条件から、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後であることと、失探航跡の前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画内に存在し、かつ、失探位置からの距離がG以下であることとを満たす仮航跡を休止航跡と同一の車両であると見なす。そして、このように休止航跡と相関のある仮航跡が見つかった場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡とみなして追尾を引き継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行う。
【0076】
【数13】
Figure 2004309166
【0077】
次に、この実施の形態2に係る目標追尾装置200の動作を具体的に説明する。
レーダ装置1では、図2に示すように車両の距離R及び方位角Azを観測し、式(1)及び式(2)に従いXY座標に変換する。
【0078】
相関ゲート判定器2では、予測器19から航跡及び仮航跡の予測ベクトルχ(−)と予測誤差共分散行列P(−)を入力し、これらと予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから観測ベクトルの予測ベクトル (−)とその誤差共分散行列Sをそれぞれ、式(22)及び式(23)に従い算出し、レーダ装置1から入力した観測ベクトルのうち、予め設定されたゲートサイズパラメ―タdに対して式(24)を満たす観測ベクトルの全てを対応する航跡または仮航跡と相関があると見なして選択する。これを全ての航跡及び仮航跡に対して行う。
【0079】
信頼度算出器3では、相関ゲート判定器2で航跡または仮航跡の相関対象として選択された各観測ベクトル k,iに対し、その相関の度合いを示す信頼度βk,i を式(25)に従い算出する。
【0080】
平滑器4では、各航跡に対し、信頼度算出器3で算出した観測ベクトルの信頼度βk,iと、予測器19で算出した予測ベクトルχ(−)と、ゲイン行列算出器11で算出したゲイン行列Kとを入力し、式(29)に従い平滑ベクトルχ(+)を算出する。
【0081】
追尾終了判定器5では、平滑器4からの航跡の平滑ベクトルと、区画内仮航跡選択器16からの仮航跡の平滑ベクトルを、それぞれ入力し、また、区画データベース18から車両が追尾領域外に流出する区画の情報を入力し、平滑位置がこの区画内に存在する航跡及び仮航跡の追尾を終了させる。また、連続失探さんプル回数Nlostが予めせてされた値aに対し、式(35)を満たす航跡は、追尾を一時休止させ、第3の遅延回路14に送出する。
【0082】
追尾開始判定器6では、追尾終了判定器5から追尾終了とならなかった仮航跡と、区画データベース18からの車両が追尾領域内に流入する区画の情報とを、それぞれ入力し、平滑位置がこの区画内に存在する仮航跡を航跡として登録する。
【0083】
平滑誤差評価器8では、予測誤差評価器10からの予測誤差共分散行列P(−)と、ゲイン行列算出器11からのゲイン行列Kと、平滑器4から観測ベクトルの信頼度βk,iをそれぞれ入力し、式(30)に従い平滑誤差共分散行列P(+)を算出する。
【0084】
予測誤差評価器10では、第2の遅延回路9から1サンプリング前の平滑誤差共分散行列Pk−1(+)を入力し、予め設定された駆動雑音Qk−1を用いて式(18)に従い予測誤差共分散行列P(−)を算出する。
【0085】
ゲイン行列算出器11では、予測誤差評価器10から入力した予測誤差共分散行列P(−)と、予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから式(28)に従いゲイン行列Kを算出する。
【0086】
仮航跡登録判定器12では、相関ゲート判定器2から何れの航跡及び仮航跡とも相関のとれなかった観測ベクトルz k,iを入力し、前サンプリング時刻に車両の可能性があると判定され、保持されている過去の観測ベクトルz k−1との相関を判定し、式(33)を満たす観測ベクトルのペアを初期値算出器13に送出する。なお、相関がとれない観測ベクトルは新規に検出された車両である可能性のあるベクトルとして登録し、保持する。
【0087】
初期値算出器13では、仮航跡登録判定器12から式(33)を満たす観測ベクトルのペアを入力し、状態ベクトル及びその誤差共分散行列の初期値を、それぞれ、式(34)及び式(35)従い算出する。
【0088】
進行距離算出器20では、第3の遅延回路14から追尾休止航跡の平滑ベクトルと失探時刻を入力し、式 (39)に従い、失探中に進行したと予想される距離Gを算出する。
【0089】
進行予測区画探索器21では、進行距離算出器20から進行予測距離Gを、区画データベース18から区画情報を、それぞれ入力し、失探航跡の前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画、かつ、失探位置からの距離がG以下である区画を探索する。
【0090】
区画内仮航跡選択器16では、進行予測区画探索器21で探索した区画情報と休止航跡情報を入力し、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後であり、かつ、進行予測区画探索器21で探索した区画内に存在する仮航跡を休止航跡と同一の車両であると見なす。そして休止航跡と相関のある仮航跡が存在する場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡と見なして追尾を引継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行なう。なお、相関のある仮航跡が存在しない休止航跡は休止終了判定器17に、休止航跡と相関の取れない仮航跡は追尾終了判定器5にそれぞれ出力する。
【0091】
休止終了判定器17では、区画内仮航跡選択器16で相関のとれなかった休止航跡を入力し、休止航跡の失探サンプル回数Nlostが予め設定された値b(>a)に対し、式(37)を満たす場合には、車両が追尾領域内に存在する可能性が低いと見なし休止を終了し、航跡を削除する。
【0092】
予測器19では、1サンプリング前の平滑ベクトルχk−1(+)を第1の遅延回路7を介して入力し、式(17)に従い予測ベクトルχ(−)を算出する。
【0093】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、気象条件その他によりレーダ装置1が一時的に車両を検出できなくなった場合においても、追尾を終了させずに一時休止状態とし、進行距離算出器20において失探車両の予測進行距離を予測し、進行予測区画探索器21において、前述の予測進行距離を用いて休止航跡が再検出される可能性の高い区画を探索し、区画内仮航跡選択器16において休止航跡と再検出された仮航跡との相関を調べることによって、休止状態とした航跡の追尾を引き継ぐ構成としているため、目標のおおよその動静や、数の目標監視情報を正確に与えることが可能となる。
【0094】
また、区画データベース18からの区画情報を用いることにより、追尾領域に車両が流入する区画及び追尾領域から車両が流出する区画のみにおいて、追尾の開始や追尾の終了を判断し、かつ、それ以外の区画における追尾の開始及び終了を禁止し、追尾開始においては、休止航跡との相関がとれた仮航跡のみ航跡として登録する構成としているため、目標以外からの電波の反射や、受信機雑音により誤検出が発生する状況においても、誤って誤検出を航跡として登録・追尾する可能性が極めて低くなる。
【0095】
なお、この実施例は、走行領域が追い越しのない区画に分割可能であれば、車両以外の他の移動体であっても適用可能である。また、電波を利用した送受信器の代わりに、レーザレーダ、光学カメラ等を用いて移動体の位置を測定する場合や、これらのセンサを複数配置してネットワークで利用する場合にも適用可能である。
【0096】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る目標追尾装置300について図6を参照して説明する。なお、図6は目標追尾装置300の構成を示すブロック図である。同図において、図1と同一符号である1〜15、17、18は実施の形態1と同一または相当部分を示すものであり、その説明を省略する。また、目標追尾装置300は更に、第1の予測器19aと、第2の予測器19bと、存在確率分布算出器22と、仮航跡相関判定器23とを備えるものである。
【0097】
第2の予測器19bは、休止終了判定器17から出力される追尾休止航跡を第3の遅延回路14を介して入力し、これと予め設定された目標の運動モデルを用いて現時刻より1サンプリング後の目標の位置及び速度の予測ベクトルを算出する。なお、第1の予測器19aは実施の形態1の予測器19と同様の動作をするものであり、その説明は省略する。
【0098】
存在確率分布算出器22は、休止終了判定器17の出力する追尾休止航跡情報を第3の遅延回路14及び第2の予測器19bを介して入力し、失探車両の予測存在確率分布を算出する。
【0099】
仮航跡相関判定器23は、存在確率分布算出器22の出力する失探車両の予測存在確率分布と、相関対象区画探索器15の出力する追尾休止航跡が再検出される可能性のある区画情報と、平滑器4の出力する仮航跡と、初期値算出器13の出力する仮航跡とを入力し、これらの仮航跡のうち最も追尾休止航跡と相関の可能性の高い仮航跡を追尾休止航跡と同一目標と判断する。
【0100】
次に動作について説明する。まず、この実施の形態3に係る目標追尾装置300の動作原理を説明する。
【0101】
レーダ装置1による車両の観測、車両の運動モデル、車両の観測モデル、予測処理、誤検出や周辺反射物などからの車両以外の観測ベクトルの発生モデル、仮説の生成、相関ゲート判定処理、仮説の信頼度の算出方法、平滑処理、新規仮航跡の相関判定、新規仮航跡の初期値の算出方法、車両の走行領域を複数の区画に分割する方法と区画処理は、実施の形態1における式(1)から式(37)までの原理と同じであり、これらに関する説明は省略する。
【0102】
次に、休止航跡(失探した車両)と仮航跡の相関方法について説明する。例えば、図4に示すように追尾領域に3台の車両が走行しており、そのうち、1台の車両(車両31)の検出が不能になり追尾が休止された場合を想定する。このとき、再検出された車両の初期検出時刻は失探時刻よりも後になる。
【0103】
また、失探した車両は一方方向にしか走行できず、かつ、先行する他の車両より前に存在しないとの前提条件から、失探車両は、失探車両の前方かつ失探車両に先行する直近の車両の後方の区画内に存在する可能性が高い。例えば、図4において失探した車両が再検出される可能性のある領域は、区画101の失探車両の前方、区画102、区画103、区画104の車両32の後方、区画102.1、区画102.2、区画102.3の車両33の後方の何れかである。
【0104】
一方、失探サンプリング時刻をt 、現サンプリング時刻をt 、失探時の平滑ベクトルを式(38)で表すと、現サンプル時刻における失探車両の予測位置は式(40)で表される。また、その確率密度関数は式(41)で表されるので、失探車両の予測確率分布内の仮航跡の位置ベクトル tb,iは式(43)を満たす。
【0105】
【数14】
Figure 2004309166
【0106】
これらの条件から、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後であり、失探航跡の前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画内に存在し、かつ、位置ベクトル tb,iが式(43)を満たす仮航跡を休止航跡と同一の車両であると見なす。そして、このように休止航跡と相関のある仮航跡が見つかった場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡とみなして追尾を引き継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行う。
【0107】
次に、この実施の形態3に係る目標追尾装置300の動作を具体的に説明する。
レーダ装置1では、図2に示すように車両の距離R及び方位角Azを観測し、式(1)及び式(2)に従いXY座標に変換する。
【0108】
相関ゲート判定器2では、第1の予測器19aから航跡及び仮航跡の予測ベクトルχ(−)と予測誤差共分散行列P(−)を入力し、これらと予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから観測ベクトルの予測ベクトル (−)とその誤差共分散行列Sをそれぞれ、式(22)及び式(23)に従い算出し、レーダ装置1から入力した観測ベクトルのうち、予め設定されたゲートサイズパラメ―タdに対して式(24)を満たす観測ベクトルの全てを対応する航跡または仮航跡と相関があると見なして選択する。これを全ての航跡及び仮航跡に対して行う。
【0109】
信頼度算出器3では、相関ゲート判定器2で航跡または仮航跡の相関対象として選択された各観測ベクトル k,iに対し、その相関の度合いを示す信頼度βk,i を式(25)に従い算出する。
【0110】
平滑器4では、各航跡に対し、信頼度算出器3で算出した観測ベクトルの信頼度βk,iと、予測器19で算出した予測ベクトルχ(−)と、ゲイン行列算出器11で算出したゲイン行列Kとを入力し、式(29)に従い平滑ベクトルχ(+)を算出する。
【0111】
追尾終了判定器5では、平滑器4からの航跡の平滑ベクトルと、区画内仮航跡選択器16からの仮航跡の平滑ベクトルとを入力し、また、区画データベース18から車両が追尾領域外に流出する区画の情報を入力し、平滑位置がこの区画内に存在する航跡及び仮航跡の追尾を終了させる。また、連続失探サンプル回数Nlostが予め設定された値aに対し、式(35)を満たす航跡は、追尾を一時休止させ、第3の遅延回路14に送出する。
【0112】
追尾開始判定器6では、追尾終了判定器からの追尾終了とならなかった仮航跡と、区画データベース18からの車両が追尾領域内に流入する区画の情報とを入力し、平滑位置がこの区画内に存在する仮航跡を航跡として登録する。
【0113】
平滑誤差評価器8では、予測誤差評価器10からの予測誤差共分散行列P(−)と、ゲイン行列算出器11からのゲイン行列Kと、平滑器4からの観測ベクトルの信頼度βk,iをそれぞれ入力し、式(30)に従い平滑誤差共分散行列P(+)を算出する。
【0114】
予測誤差評価器10では、第2の遅延回路9から1サンプリング前の平滑誤差共分散行列Pk−1(+)を入力し、予め設定された駆動雑音Qk−1を用いて式(18)に従い予測誤差共分散行列P(−)を算出する。
【0115】
ゲイン行列算出器11では、予測誤差評価器10から入力した予測誤差共分散行列P(−)と、予め設定されたレーダ装置1の観測誤差共分散行列Rとから式(28)に従いゲイン行列Kを算出する。
【0116】
仮航跡登録判定器12では、相関ゲート判定器2から何れの航跡及び仮航跡とも相関のとれなかった観測ベクトルz k,iを入力し、前サンプリング時刻に車両の可能性があると判定され、保持されている過去の観測ベクトルz k−1との相関を判定し、式(33)を満たす観測ベクトルのペアを初期値算出器13に送出する。なお、相関がとれない観測ベクトルは新規に検出された車両である可能性のあるベクトルとして登録し、保持する。
【0117】
初期値算出器13では、仮航跡登録判定器12から式(33)を満たす観測ベクトルの組みを入力し、状態ベクトル及びその誤差共分散行列の初期値を、それぞれ、式(34)及び式(35)従い算出する。
【0118】
相関対象区画探索器15では、第3の遅延回路14から追尾休止航跡の平滑ベクトルと失探時の情報、及び区画データベース18からの区画情報を、それぞれ入力し、失探航跡の失探時の位置に対して前方かつ先行する直近の航跡の後方の区画(再検出予測区画と呼ぶ)を探索する。
【0119】
第2の予測器19bでは、休止終了判定器17の出力する追尾休止航跡情報を第3の遅延回路14から入力し、式(40)に従い失探車両の予測位置χ (−)を算出する。
【0120】
存在確立分布算出器22では、第2の予測器19bの出力する失探車両の予測位置χ (−)と、休止終了判定器17の出力する追尾休止航跡情報を第3の遅延回路14及び第2の予測器19bを介して入力し、式(42)に従い失探車両の予測存在確率分布Stbを算出する。
【0121】
仮航跡相関判定器23では、存在確率分布算出器22の出力する失探車両の予測存在確率分布Stbと、相関対象区画探索器15の出力する再検出予測区画情報と、平滑器4の出力する仮航跡と、初期値算出器13の出力する仮航跡とを入力し、初期登録時刻が休止航跡の休止時刻よりも後であり、再検出予測区画内、かつ、位置ベクトル tb,iが式(43)を満たす仮航跡を休止航跡と同一の車両であると見なす。
【0122】
そして、このように休止航跡と相関のある仮航跡が見つかった場合には、この休止航跡を消去し、仮航跡を航跡とみなして追尾を引き継ぎ、次サンプル以降は通常の追尾維持処理を行う。なお、相関のある仮航跡が存在しない休止航跡は休止終了判定器17に、休止航跡と相関の取れない仮航跡は追尾終了判定器5にそれぞれ出力する。
【0123】
休止終了判定器17では、仮航跡相関判定器23で相関のとれなかった休止航跡を入力し、休止航跡の失探サンプル回数Nlostが予め設定された値b(>a)に対し、式(37)を満たす場合には、車両が追尾領域内に存在する可能性が低いと見なし休止を終了し、航跡を削除する。
【0124】
第1の予測器19aでは、1サンプリング前の平滑ベクトルχk−1(+)を第1の遅延回路7を介して入力し、式(17)に従い予測ベクトルχ(−)を算出する。
【0125】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、気象条件その他によりレーダ装置1が一時的に車両を検出できなくなった場合においても、追尾を終了させずに一時休止状態とし、第2の予測器19b及び存在確率分布算出器22で失探車両の予測存在確率分布を算出し、仮航跡相関判定器23において予測確率分布と予測区画の両方の情報を用いて休止航跡が再検出される可能性の高い仮航跡との相関を調べ、休止状態とした航跡の追尾を引き継ぐ構成としているため、目標のおおよその動静や、数の目標監視情報を正確に与えることが可能となる。
【0126】
また、区画データベース18からの区画情報を用いることにより、追尾領域に車両が流入する区画及び追尾領域から車両が流出する区画のみにおいて、追尾の開始や追尾の終了を判断し、かつ、それ以外の区画における追尾の開始及び終了を禁止し、追尾開始においては、休止航跡との相関がとれた仮航跡のみ航跡として登録する構成としているため、目標以外からの電波の反射や、受信機雑音により誤検出が発生する状況においても、誤って誤検出を航跡として登録・追尾する可能性が極めて低くなる。
【0127】
なお、この実施例は、走行領域が追い越しのない区画に分割可能であれば、車両以外の他の移動体であっても適用可能である。また、電波を利用した送受信器の代わりに、レーザレーダ、光学カメラ等を用いて移動体の位置を測定する場合や、これらのセンサを複数配置してネットワークで利用する場合にも適用可能である。
【0128】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、気象条件その他によりレーダ装置が一時的に車両を検出できなくなった場合においても、追尾を終了させずに一時休止状態とし、休止航跡が再検出される可能性のある区画を探索し、休止航跡と再検出された仮航跡との相関を調べることによって、休止状態とした航跡の追尾を引き継ぐ構成としているため、目標のおおよその動静や、数の目標監視情報を正確に与えることが可能となる効果がある。
【0129】
この発明によれば、区画情報を用いることにより、追尾領域に車両が流入する区画及び追尾領域から車両が流出する区画のみにおいて、追尾の開始や追尾の終了を判断し、かつ、それ以外の区画における追尾の開始及び終了を禁止し、追尾開始においては、休止航跡との相関がとれた仮航跡のみ航跡として登録する構成としているため、目標以外からの電波の反射や、受信機雑音により誤検出が発生する状況においても、誤って誤検出を航跡として登録・追尾する可能性が極めて低くなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の動作原理を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の動作の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の動作の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 レーダ装置(目標観測手段)、2 相関ゲート判定器、3 信頼度算出器、4 平滑器(平滑手段)、5 追尾終了判定器、6 追尾開始判定器(追尾開始判定手段)、7 第1の遅延回路、8 平滑誤差評価器、9 第2の遅延回路、10 予測誤差評価器、11 ゲイン行列算出器、12 仮航跡登録判定器、13 初期値算出器、14 第3の遅延回路、15 相関対象区画探索器(相関対象区画探索手段)、16 区画内仮航跡選択器(区画内仮航跡選手段)、17休止終了判定器、18 区画データベース、19 予測器(予測手段)、19a 第1の予測器(予測手段)、19b 第2の予測器(予測手段)、20 進行距離算出器(進行距離算出手段)、21 進行予測区画探索器(進行予測区画探索手段)、22 存在確立分布算出器(存在確立分布算出手段)、23 仮航跡相関判定器(仮航跡相関判定手段)、31,32,33 車両、100,200,300 目標追尾装置。

Claims (4)

  1. 目標の位置を計測する目標観測手段と、目標の追尾開始を判定する追尾開始判定手段と、目標の状態の予測値を演算する予測値演算手段と、目標の状態の平滑値を演算する平滑値演算手段とを備えた目標追尾装置において、
    失探した航跡の追尾を一時休止し、前記追尾開始判定手段において新規に登録された仮航跡と失探した航跡との相関を判定する仮航跡相関判定手段を備えたことを特徴とする目標追尾装置。
  2. 目標の移動領域を予め所定の区画に分割し、
    当該分割された区画の情報と失探時の航跡の情報とから失探した航跡の相関対象となる区画を探索する相関対象区画探索手段と、
    前記相関対象区画探索手段によって探索された相関対象となる区画の情報と追尾開始判定手段において新規に登録された仮航跡の情報とから、仮航跡と失探した航跡との相関を判定し、仮航跡を選択する区画内仮航跡選択手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
  3. 目標の移動領域を予め所定の区画に分割し、
    失探した航跡の速度から失探した航跡が進行したと予測される距離を算出する進行距離算出手段と、
    前記分割した区画のうちから、前記算出された距離に基づいて失探した航跡の相関対象となる区画を探索する進行予測区画探索手段と、
    前記探索された区画の情報と追尾開始判定手段において新規に登録された仮航跡との情報とから仮航跡と失探した航跡の相関を判定し、仮航跡を選択する区画内仮航跡選択手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
  4. 目標の移動領域を予め所定の区画に分割し、
    失探した航跡の予測存在範囲を算出する存在確率分布算出手段と、
    前記分割した区画のうちから、前記分割した区画の情報と失探時の航跡の情報に基づき、失探した航跡の相関対象となる区画を探索する相関対象区画探索手段とを備え、
    航跡相関判定手段は前記予測存在範囲と相関対象となる区画の情報と追尾開始判定手段において新規に登録された仮航跡の情報とから、仮航跡と失探した航跡の相関を判定すること
    を特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
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