以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図13基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の記録装置の一例としてのプリンター11は、シリアルタイプのインクジェット式のプリンターである。プリンター11は、記録媒体の一例としての長尺状のシートSLが巻回されたロールRSから長尺状のシートSLを少しずつ送り出し搬送する搬送装置12を備えている。
第1のモーター13により軸部材14が所定方向に回転駆動することで、ロールRSからシートSLが搬送経路に沿って送り出される。搬送装置12は、ロールRSから長尺状のシートSLを少しずつ送り出すための送出し部15と、この送出し部15の搬送方向下流側に配置される搬送ローラー対16とを備えている。送出し部15は、第2のモーター18が駆動されることによって送出しローラー17aが回転しかつ従動ローラー17bが従動回転することにより、長尺状のシートSLを搬送方向下流側へ送り出す。
搬送ローラー対16は、搬送モーター19の駆動によって搬送ローラー16aが回転しかつ従動ローラー16bが従動回転することにより、長尺状のシートSLを搬送方向下流側へ搬送する。
また、長尺状のシートSLの搬送方向Y(「副走査方向」ともいう)における中途位置には、長尺状のシートSLに対して記録を施す記録手段の一例としての記録ユニット20が設けられている。この記録ユニット20には、キャリッジ21がガイド軸22に案内されて主走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21はシートSLと対向する部分に、複数の記録部の一例として複数の記録ヘッド23を有している。この記録ヘッド23には、プリンター11に着脱自在に装着された図示しないインクカートリッジから流体の一例としてのインクが供給される。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることによってキャリッジ21は主走査方向Xに往復移動し、この移動途中で記録ヘッド23内の駆動素子が駆動されることで各ノズル25(図2参照)から長尺状のシートSLの表面(図1では上面)に向けてインク滴が噴射される。
そして、キャリッジ21と共に記録ヘッド23が主走査方向Xに1回(1パス)移動して行われる1行分の印刷動作と、シートSLを次行の記録位置まで搬送する搬送装置12による搬送動作とが略交互に行われることにより、シートSLの表面に印刷が施される。本実施形態では、シートSLには例えば写真などの印刷画像が印刷される。なお、記録ヘッド23とシートSLを挟んで対向する位置には、シートSLを支持する支持部材26がシートの幅方向(主走査方向X)に沿って延びるように設けられている。
また、記録ユニット20の搬送方向下流側(図1では左側)の位置(切断位置)では、切断用モーター32からの駆動力により切断ユニット30のカッター31がシートSLの幅方向(主走査方向X)移動することにより、長尺状のシートSLから記録済み部分が切り離される。また、切断ユニット30の搬送方向下流側には、長尺状のシートSLから切り離されたカットシートSCを搬送方向最下流へ排出する排出ユニット34が設けられている。
排出ユニット34は、搬送方向Yに沿って配置される複数(本実施形態では2つ)の排出ローラー対35,36を備えている。排出用モーター37が駆動されると、記録済みのカットシートSCを搬送方向に沿った二位置で挟持しつつローラー35a,35bとローラー36a,36bとがそれぞれ回転し、カットシートSCは搬送方向下流側へ排出され、排出トレイ38に積層状態に収容される。なお、搬送ローラー対16よりも搬送方向Yにおける上流側位置には、長尺状のシートSLの先端を検出するための検出センサー39が設けられている。この検出センサー39からの検出信号は、プリンター11を制御するコントローラー40に出力され、シートSLの搬送位置制御などに用いられる。
図2は、キャリッジの底面を示す模式図である。図2に示すように、キャリッジの底面には、主走査方向Xに沿った所定の二位置に2つの記録ヘッド23が組み付けられている。この種のプリンター11における印刷解像度はかなり高いため、ノズル25から噴射されたインク滴により形成されるドットの間隔が非常に小さい。このため、複数の記録ヘッド23を主走査方向Xに位置精度よく組付ける必要があるが、取付け位置のばらつきにより必要な印刷精度が確保できる組付位置精度で組み付けることは困難となっている。記録ヘッド23は、複数個(例えば180個)のノズル25が副走査方向Yに沿って所定のノズルピッチで配列されてなるノズル列を2列有している。
本実施形態では、主走査方向Xに沿って配置される複数(本例では2個)の記録ヘッド23を、記録ヘッドA,Bと呼ぶ場合もある。また、記録ヘッドAの2列のノズル列をそれぞれノズル列A1,A2と記し、記録ヘッドBの2列のノズル列をそれぞれノズル列B1,B2と記すことにする。
図2に示すように、ノズル列A1,A2は記録ヘッドAに形成され、ノズル列B1,B2は記録ヘッドBに形成されている。記録ヘッドA,Bをキャリッジ21に組み付ける際の組付位置のばらつきに比べ、記録ヘッド23にノズル列を形成する際の加工精度のばらつきはほぼ無視できる程度に極めて小さい。このため、両ノズル列A1,A2の主走査方向Xの間隔のばらつき、及び両ノズル列B1,B2の主走査方向Xの間隔のばらつきは共にほぼ無視することができる。これに対して、ノズル列A1とノズル列B1の主走査方向Xの間隔のばらつき、ノズル列A2とノズル列B2の主走査方向Xの間隔のばらつきは、記録ヘッドA,Bの主走査方向Xにおける組付位置のばらつきに左右される。この間隔のばらつきは記録ヘッドA,Bの組付位置のばらつきに依存して比較的大きく、印刷精度上無視できない。このため、本実施形態では、この種の記録ヘッドの組付位置のばらつきがあっても所望の印刷品質で印刷できるように、ノズル列毎の噴射タイミングに補正を加え、組付位置のばらつきに起因する噴射タイミングのずれを解消又は低減させるようにしている。なお、本例では記録ヘッドA,B毎に噴射タイミングを調整できる。
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。図3は、プリンター11の内部構成を示す概略図である。なお、図3では、搬送装置12及びその駆動制御系を省略している。
図3に示すように、プリンター11は、その内部にコントローラー40を備えている。このコントローラー40は、インターフェイス部(以下I/F部41と称す)を介してホスト装置HCのプリンタードライバーPDから印刷データを受信する。
コントローラー40は、CPU、ASIC((Application Specific IC(特定用途向けIC))、ROM、不揮発性メモリー及びRAMを有している。ROMには、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリーには、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAMは、CPUの演算結果等を一時的に記憶する他、ホスト装置HCから受信した印刷データ、印刷データの処理途中及び処理後のデータなどを格納するバッファーとして用いられる。
コントローラー40は、I/F部41の他、受信バッファー42、コマンド解析部43、画像処理部44、制御部45、イメージバッファー46、不揮発性メモリー47、印刷タイミング信号生成回路48、ヘッド駆動部49、キャリッジ駆動部50、搬送制御部51などを備えている。また、プリンター11には、ユーザーが入力操作を行うための操作手段の一例としての操作部53が設けられ、操作部53の操作による入力値はI/F部41を介して制御部45に入力される。なお、コマンド解析部43、画像処理部44及び制御部45は、ROMに記憶された制御プログラムを実行するCPU(ソフトウェア)とASIC(ハードウェア)の少なくとも一方により実現されている。もちろん、各部43〜45は、ソフトウェアとハードウェアの協働により構築される以外に、ソフトウェアだけで構成されたり、ハードウェアだけで構成されたりしてもよい。また、受信バッファー42及びイメージバッファー46はRAMにより構成されている。
図3に示すように、キャリッジ21は、キャリッジモーター24の駆動軸に連結された駆動用のプーリー55と従動用のプーリー56に巻き掛けられたタイミングベルト57の一部と固定されている。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることにより、キャリッジ21は、正転・逆転するタイミングベルト57を介して主走査方向Xに往復移動する。キャリッジ21の移動経路の背面側の位置には、キャリッジ21の移動位置(キャリッジ位置)を検出するためのリニアエンコーダー58が設けられている。
図3に示すように、リニアエンコーダー58は、一定ピッチ(例えば1/180インチ(=1/180×2.54cm))毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板58aと、キャリッジ21に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサー58bとを有している。キャリッジ21が移動するときに発光素子から出射されて符号スリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサー58bが検出パルスを出力する。コントローラー40は、リニアエンコーダー58から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)の例えばパルスエッジを計数するCR位置カウンター(図示せず)を内蔵している。そして、そのCR位置カウンターの計数値をキャリッジが反ホーム位置側へ移動するときにインクリメントし、ホーム位置側へ移動するときにデクリメントすることで、ホーム位置HPを原点とするキャリッジ21の位置を把握する。
プリンタードライバーPDは、モニター表示用の表色系(例えばRGB表色系)の画像データに対し、公知の色変換処理、解像度変換処理、ハーフトーン処理及びラスタライズ処理などを行って印刷データを生成する。
また、ヘッダに記述された制御コマンドは、印刷条件データ及び印刷画像データに基づいて作成されたもので、給紙動作、紙送り動作、排紙動作等の搬送系コマンドや、キャリッジ動作及び記録ヘッド動作(記録動作)等の印字系コマンドなどの各種コマンドからなる。本例の場合、印刷条件の1つとして複数種用意された印刷モードのうち1つを選択すると、その選択された印刷モードに応じて、「双方向印刷」又は「一方向印刷」が選択される。
図1に示す受信バッファー42は、I/F部41を介して受信された印刷データが一時格納される記憶領域(格納領域)である。
コマンド解析部43は、受信バッファー42から印刷データのヘッダを読み出してその中の制御コマンド等を取得し、プリンター記述言語で記述された制御コマンドを解析する。コマンド解析結果は制御部45のヘッド制御部63、キャリッジ制御部64及び搬送制御部65に送られる。
画像処理部44は、受信バッファー42から印刷データ中の印刷画像データを一行分(主走査ライン)ずつ読み出し、所定の画像処理を行い、画像処理後のヘッドイメージデータをイメージバッファー46に格納する。
制御部45は、調整部61、指示部62、ヘッド制御部63、キャリッジ制御部64及び搬送制御部65を備えている。指示部62は、各記録ヘッド23の噴射タイミングを個別に調整し、各記録ヘッド23の噴射タイミングの組合せを少しずつ変化させて調整用チャートCT(図5参照)を印刷するためのチャート印刷処理を行う。
不揮発性メモリー47には、チャート印刷用データCPと、調整データTDとが記憶されている。チャート印刷用データCPとは、図5に示す調整用チャートCTを印刷するための印刷データである。
ユーザーは、シートSLに印刷された調整用チャートを見て各記録ヘッド23の噴射タイミングの合った最適なパターンに対応する数値(調整値)を、操作部53を操作して入力するようになっている。調整データTDは、調整用チャートCTの印刷結果を見たユーザーが、最適な印刷噴射タイミングで印刷された最適なパターンに対応する数値を入力したときに、その入力された数値を基に最適な噴射タイミングを決めるための調整値などが設定されたデータである。
調整部61は、操作部53から入力された数値に基づいて噴射タイミングの調整値を取得する。調整部61は、噴射タイミングを決定するうえで必要な各種の演算を行うための演算部67を有している。
また、キャリッジ制御部64は、リニアエンコーダー58から入力されるA相・B相の二相のエンコーダーパルス信号の位相差に基づきキャリッジ21の移動方向を認識する。そして、キャリッジ制御部64は、エンコーダーパルス信号のエッジを検出する度に、キャリッジ用のカウンターを往動時にインクリメント、復動時にデクリメントすることにより、キャリッジ21の原点位置(例えばホームポジション)からの移動位置を検出する。このキャリッジ21の主走査方向Xにおける位置は、キャリッジモーター24の速度制御に用いられる。
次に、印刷タイミング信号生成回路48の構成について説明する。図4は、印刷タイミング信号生成回路の構成を示すブロック図である。印刷タイミング信号生成回路48は、一例としてASIC内に設けられており、リニアエンコーダー58から入力したエンコーダーパルス信号を基に印刷タイミング信号PTSを生成するための回路である。
図4に示すように、印刷タイミング信号生成回路48は、リニアエンコーダー58からのエンコーダーパルス信号を入力するエッジ検出回路71、内部タイミング信号生成回路72、ディレイ信号生成回路73、内部パルス計数回路74、ディレイカウンター75、ディレイ設定値用レジスター76及び出力パルス制御回路77を備えている。
エッジ検出回路71は、リニアエンコーダー58のセンサー58bから入力されるエンコーダーパルス信号の立ち上がりエッジを検出する度にパルスを発生させることで基準パルス信号RS1を生成する。この基準パルス信号RS1は、内部タイミング信号生成回路72、ディレイ信号生成回路73、内部パルス計数回路74に入力される。
印刷タイミング信号生成回路48が行う信号生成処理には、基準パルス信号RS1の周期を分割(逓倍)してその1周期を複数分割した周期のパルスを発生させる周期分割処理(逓倍処理)と、周期分割処理で得られたパルス信号をキャリッジ21の移動速度及び移動方向(往動と復動の違い)などに応じて決定されるディレイ時間だけ遅延させて印刷タイミング信号を生成する遅延処理とが含まれる。
内部タイミング信号生成回路72には、エッジ検出回路71から基準パルス信号RS1が入力されると共に、クロック回路78からクロック信号CKが入力される。こうした内部タイミング信号生成回路72は、基準パルス信号RS1の周期を16分割する周期分割処理を行って周期(1/16)のパルスを有する内部タイミング信号TS1を生成する。そして、内部タイミング信号生成回路72は、生成した内部タイミング信号TS1をディレイ信号生成回路73及び内部パルス計数回路74に出力する。
ディレイ信号生成回路73には、エッジ検出回路71から基準パルス信号RS1が入力されると共に、クロック回路78からクロック信号CKが入力され、さらに内部タイミング信号生成回路72から内部タイミング信号TS1が入力される。こうしたディレイ信号生成回路73は、内部タイミング信号TS1の周期の1/128周期のパルスを有するディレイ信号DS1を、基準パルス信号RS1の周期を分割する周期分割処理を行って生成する。そして、ディレイ信号生成回路73は、生成したディレイ信号DS1をディレイカウンター75に出力する。
内部パルス計数回路74には、エッジ検出回路71から基準パルス信号RS1が入力されると共に、内部タイミング信号生成回路72から内部タイミング信号TS1が入力される。こうした内部パルス計数回路74は、内部タイミング信号TS1のパルスを計数し、その計数結果が「15」になる度、及び基準パルス信号RS1のパルスを入力した場合に、パルスが発生する新たな内部タイミング信号TS2を出力する。そして、内部パルス計数回路74は、基準パルス信号RS1のパルス入力によりリセットされた場合に、次の周期の1回目の内部タイミング信号TS2のパルスを出力する。こうして、内部パルス計数回路74は、基準パルス信号RS1の1周期の間に16個のパルスが含まれる内部タイミング信号TS2を出力する。この内部タイミング信号TS2は、インク滴を噴射する噴射タイミング(駆動タイミング)を決定する基準信号として用いられ、ディレイカウンター75へ出力される。
ディレイカウンター75には、内部パルス計数回路74から内部タイミング信号(基準信号)TS2が入力されると共に、ディレイ信号生成回路73からディレイ信号DS1が入力される。こうしたディレイカウンター75は、ディレイ設定値用レジスター76に記憶されるディレイ設定値Dcに基づき、内部タイミング信号TS2をディレイ時間だけ遅らせて出力する機能を有している。
出力パルス制御回路77は、予備タイミング信号PSのパルス1個につきパルス1個の割合で印刷タイミング信号PTSを出力する。この印刷タイミング信号PTSは、出力パルス制御回路77に電気的に接続されたヘッド駆動部49に出力される。
ヘッド駆動部49は、内部の駆動信号生成回路により3種類の吐出波形パルスを生成する。そして、ヘッド駆動部49は、入力される階調値データに基づいて3種類の吐出波形パルスのうち階調値に応じた所定の少なくとも1つを選択して印刷タイミング信号PTSに基づいたタイミングでその選択された吐出波形パルスを記録ヘッド23内の各圧電素子に印加する。この結果、各圧電素子のうち階調値データで非噴射の値以外の値をとる画素を打つノズルに対応する圧電素子には吐出波形パルス(駆動電圧)が印加され、その圧電素子に対応するノズルからインク滴が噴射される。本実施形態では、印刷タイミング信号生成回路48は、図4に示す構成の回路部を記録ヘッド23毎に設けられており、記録ヘッド23毎に印刷タイミングを設定できるようになっている。
図5は、各記録ヘッドの印刷タイミング(噴射タイミング)を調整するための調整用チャートを示す。ここで、調整用チャートとは、記録ヘッドの組付位置のばらつきによるサブ画素のずれを正すために各記録ヘッドの噴射タイミングを調整する調整値を取得するために印刷されるパターン群からなる。
各記録ヘッドA,Bの組付位置のばらつきに起因して印刷画素(記録画素)を構成する複数のサブ画素の印刷位置が微妙にずれている場合は、図5に示す調整用チャートCTを印刷し、調整パターンCT1,CT2をそれぞれ構成する複数組のパターンPGのうち最適な一組ずつのパターンPGに対応する数値(調整値)を、操作部53を操作してプリンター11に入力する。この数値は基準パルスからのディレイパルス数に対応する数値であり、入力された数値に対応するディレイ値が設定される。
この調整用チャートCTの印刷は、ユーザーによる操作部53の操作で調整用チャートの印刷実行指示を受け付けたとき、あるいはホスト装置HCの操作部の操作で調整用チャートの印刷実行指示を受け付けたプリンタードライバーPDからの印刷指示信号を受け付けたときに、制御部45内の指示部62が行う。指示部62は、調整用チャートの印刷実行指示を受け付けると、不揮発性メモリー47に保存されたチャート印刷用データCPを読み出し、この印刷用データCPを画像処理部44に送るとともに、ヘッド制御部63、キャリッジ制御部64、搬送制御部65に指示して、チャート印刷用データCPに基づく調整用チャートCTの印刷動作を行わせる。このとき、画像処理部44は送られてきたチャート印刷用データCPの画像処理を行い、画像処理を経て得られたヘッド制御データがイメージバッファー46を介してヘッド駆動部49へ送られる。
また、指示部62は印刷タイミング信号生成回路48に指示することにより、チャート印刷時の記録ヘッドA,Bの印刷タイミングを個別に制御する。この指示とは、指示部62が、図4に示す印刷タイミング信号生成回路48内のディレイ設定値用レジスター76に設定するディレイ設定値Dcを変化させることにより行われる。本実施形態では、図4に示す回路構成を有する印刷タイミング信号生成回路48が、記録ヘッドA,B毎に設けられている。指示部62は、各記録ヘッドA,Bに対応するディレイ設定値用レジスター76に、それぞれ印刷すべきパターンに応じた印刷タイミングを規定するディレイ設定値Dcを個別に設定する。なお、3個以上の複数個の記録ヘッド23を備える構成の場合は、印刷タイミング信号生成回路48は、記録ヘッドと同数用意されることになる。
指示部62は、キャリッジ21が1回主走査方向に移動する1パス毎に印刷タイミング、すなわちディレイ設定値Dcを設定することができる。このため、印刷タイミングのずれ量、すなわちディレイ設定値Dcの差分の異なる組み合わせで複数組(J組)のパターンを印刷するためには、Jパスの印刷を行う必要がある。
但し、本実施形態では、チャート印刷のために必要なキャリッジ21の走査回数(パス数)をなるべく少なく抑えられるように、1回の走査(1パス)で複数組のパターンを印刷できるようにチャート印刷用データCPのパターンを工夫している。
すなわち、本実施形態では、チャート印刷用データCPのパターンの主走査方向における配置位置の設定と、印刷タイミング(つまりディレイ設定値Dc)の設定との両方により、印刷タイミングのずれ量の異なる複数組(J組)のパターンを印刷するようにしている。
調整用チャートCTは、往動用の調整チャートCTAと復動用の調整チャートCTB(但し、復動用は図示省略)とにより構成される。往動用と復動用とでは、チャート印刷時のキャリッジ移動方向が逆方向になるだけであり、チャートそのものは基本的に同じである。図5では、往動時の調整チャートCTAのみを示している。図5に示すように、調整用チャートCTは、記録ヘッド23が2個である本実施形態の場合、往動時の調整チャートCTAは、図5(a),(b)に示す2列の調整パターンCT1,CT2からなる。なお、図示していない復動時用の調整チャートCTBは、図5(a),(b)に示す調整パターンCT1,CT2とほぼ同様の調整パターンCT3,CT4(図示省略)からなる。
図5(a)に示すのが、A1/B1列(ノズル列)間の印刷タイミングの適正化を図るための調整パターンCT1である。図5(b)に示すのが、A2/B2列(ノズル列)間の印刷タイミングの適正化を図るための調整パターンCT2である。
本実施形態では、図2に示す記録ヘッドAの第1列目のノズル列A1と、記録ヘッドBの第1列目のノズル列B1との各印刷タイミングのずれ量を変化させた図5(a)に示す調整パターンCT1を印刷する。図2に示す記録ヘッドAの第2列目のノズル列A2と、記録ヘッドBの第2列目のノズル列B2との各印刷タイミングのずれ量を変化させた図5(b)に示す調整パターンCT2を印刷する。
本実施形態では、同一記録ヘッド内における複数のノズル列間の印刷タイミングも適正化するために、図5(a)に示すA1/B1列調整パターンと、図5(b)に示すA2/B2列調整パターンとを印刷するようにしている。なお、図5(a)の調整パターンと図5(b)の調整パターンのうちどちらか一方のみを印刷してもよい。
本実施形態の記録ヘッドA,Bは、ノズル列A1,A2,B1,B2によって4色の印刷を行う。例えばノズル列A1はイエロー(Y)、ノズル列A2はマゼンタ(M)、ノズル列B1はシアン(C)、ノズル列B2はブラック(K)のインクを噴射する。
図2に示す記録ヘッドA,Bのうち、記録ヘッドAを基準記録ヘッドとし、基準記録ヘッドである記録ヘッドAについては印刷タイミングを同じにして複数のパターンを印刷する。そして、記録ヘッドBを相対記録ヘッドとし、印刷タイミングをマイナス側とプラス側にずらしたパターンを印刷する。
図5の例では、調整値を「0」を中心としてマイナス側とプラス側とに少しずつ変化させている。詳しくは、調整値「0」付近では、変化させる量(本例では「1」)を小さくし、調整値が「0」から離れるに従って変化させる量(本例では「2」)を大きくしている。図5に示すように本例では、調整値を「−10,−8,−6,−4,−2,−1,0,1,2,4,6,8,10」の13種類で変化させている。つまり、N組(13組)のパターンPGからなるそれぞれ構成される4列の調整パターンCT1,CT2,CT3,CT4を印刷する。
図5(a)の例のように調整用チャートCTが印刷された場合、数値「2」のときのパターンが、複数のサブ画素を最適位置に印刷できるパターンである。記録ヘッドAのノズル列A1が記録した白抜きの3本のパターン(基準パターン)と、記録ヘッドBのノズル列B1が記録したハッチングの2本のパターン(相対パターン)とが印刷されている。3本の基準パターンの隙間に、2本の相対パターンが隣接して配置されている。この状態が最適な印刷タイミングの条件となる。
図6(a)に示す3本の基準パターンSPと、図6(b)に示す2本の相対パターンRPとにより、1組のパターンPGが構成される。3本の基準パターンSPは、同じ長さで同じ幅の矩形パターンにより構成されており、各基準パターンSPの主走査方向(図6における左右方向)の間隔が、相対パターンRPの幅と等しくなっている。また、2本の相対パターンRPは、それぞれ同じ長さで同じ幅の矩形パターンにより構成されており、各相対パターンRPの主走査方向(図6における左右方向)の間隔が、基準パターンSPの幅と等しくなっている。
図7は、基準パターンと相対パターンとの相対位置関係、すなわち基準パターンに対する相対パターンの主走査方向のずれ量を示す。図7(a)は、ずれなしの例である。この場合、図7(a)に示すように、基準パターンSPと相対パターンRPが隣接して配置される。
図7(b)は、相対パターンがマイナス側にずれた例である。この場合、図7(b)に示すように、相対パターンRPのマイナス側へのずれによって、相対パターンRPはその左側部分(マイナス側部分)で左隣の基準パターンSPと一部重なり、その右側部分(プラス側部分)で右隣の基準パターンSPとの間に隙間が発生する。
図7(c)は、相対パターンがプラス側にずれた例である。この場合、図7(c)に示すように、相対パターンRPのプラス側へのずれによって、相対パターンRPはその左側部分(マイナス側部分)で左隣の基準パターンSPとの間に隙間が発生し、その右側部分(プラス側部分)で右隣の基準パターンSPと一部重なる。
このように基準パターンSPと相対パターンRPは、そのずれ量に応じた量の隙間と重複が発生する。このため、図7(a)に示すように、基準パターンSPと相対パターンRPとの間に隙間も重複もなく、きれいに隣接して配置されたパターンを探し、そのパターンに対応する数値(調整値)を入力するようになっている。
図5に示す調整用チャートCT(往動用の調整チャートCTA)の例では、図5(a)のA1/B1列調整パターンCT1では、調整値「2」のときが基準パターンSPと相対パターンRPが、両者間に隙間も重複もなく、隣接して配置されており、最適な印刷タイミングの組合せとなっている。つまり、調整値「2」のときの印刷タイミングの組合せを選択することにより、記録ヘッドA,Bの主走査方向Xの組付位置のばらつきによる印刷位置(各サブ画素印刷位置)のずれ量が補完される。
また、図5(b)のA2/B2列調整パターンCT2では、調整値「2」のときが基準パターンSPと相対パターンRPが、両者間に隙間も重複もなく、隣接して配置されており、最適な印刷タイミングの組合せとなっている。つまり、調整値「2」のときの印刷タイミングの組合せを選択することにより、記録ヘッドA,Bの主走査方向Xの組付位置のばらつきによる印刷位置のずれ量が補完される。
図8は、調整用チャートを印刷するときの記録ヘッドの噴射タイミングを説明する模式図である。図8(a)は、基準パターンSPを印刷するときの噴射タイミングを示す。この図8(a)における基準記録ヘッドAから所定噴射タイミングで噴射したインク滴の着弾位置を主走査方向Xの基準位置とする。このときの基準噴射タイミングを決めているディレイ設定値DcをDsとする(Dc=Ds)。
図8(b)〜(c)は、記録ヘッドBの異なる噴射タイミングでインク滴を噴射したときの模式図である。図8(b)は、適正パターンが印刷されたときの噴射タイミングを示す。このときインク滴は基準位置に着弾する。この場合、図7(a)に示すずれなしのパターンPGが印刷される。このため、このときの基準噴射タイミングを決めているディレイ設定値Dc=Doとすると、Dc=Doが記録ヘッドBの最適なディレイ設定値となる。
図8(c)は、マイナス側にずれたパターンを印刷するときの噴射タイミングを示す。このときインク滴は基準位置よりもマイナス側にずれた位置に着弾する。このときの噴射タイミングを決めるディレイ設定値Dcは、ディレイ設定値Doに対しマイナス側にずれて設定される(Dc=Do−d)(但しdはずれ量)。この場合、図7(b)に示すマイナスずれのパターンPGが印刷される。
図8(d)は、プラス側にずれたパターンを印刷するときの噴射タイミングを示す。このときインク滴は基準位置よりもプラス側にずれた位置に着弾する。このときの噴射タイミングを決めるディレイ設定値Dcは、ディレイ設定値Doに対しプラス側にずれて設定される(Dc=Do+d)。この場合、図7(c)に示すプラスずれのパターンPGが印刷される。
図9は、キャリッジ21の往動時と復動時の双方で印刷を行う双方向印刷(Bi−d印刷)時における往動時と復動時の噴射タイミングを調整する方法を説明するものである。双方向印刷時に高い印刷品質を保証するためには、往動過程の着弾位置と復動過程の着弾位置とを一致させる必要がある。このため、往動過程の噴射タイミング、つまりディレイ設定値Dcを変化させたパターンを印刷し、復動過程の噴射タイミング、つまりディレイ設定値Dcを変化させたパターンを印刷する。そして、往動過程に印刷したパターンと、復動過程に印刷したパターンとの主走査方向の位置関係が最適な組合せのパターンを探し、そのパターンに対応する数値を入力する。図9に示すように、双方向印刷時における往動過程と復動過程の噴射タイミングの設定(Bi−d調整値の設定)は、基準記録ヘッドAを使って行われる。そして、図9に示すように、キャリッジ21の往動過程と復動過程で着弾位置(サブ画素)が一致することになるようなBi−d調整値を設定する。もちろん、相対記録ヘッドBを使用して双方向印刷設定用のパターンを印刷し、Bi−d調整値を設定する構成としてもよい。
図10は、調整用チャートCTを印刷するときに用いるチャート印刷用データの構成をキャリッジ21の走査(パス)ごとに分けて説明するものである。なお、図10では、3本の基準パターンを模式的に1つの矩形パターンで示し、2本の相対パターンを模式的に1つの矩形パターンで示している。本実施形態では、噴射タイミング(つまりディレイ設定値Dc)は、1回のパスで1つしか設定できない。このため、例えばJ組の異なる噴射タイミングで調整パターンを印刷するに際して、噴射タイミングを1パスずつ切り換える方法をとると、1つの調整パターンCT1(又はCT2)を印刷するためにJパスの印刷動作を行わなければならない。さらに本実施形態のような記録ヘッドA,Bを2個備える場合、往動と復動でそれぞれ個別に調整パターンを印刷するため、合計4列分の調整パターンを印刷する必要がある、この場合、4・Jパス分の印刷動作を行う必要がある。
そのため、本実施形態では、チャート印刷に必要なパス数を低減するために、噴射タイミングの切り換えだけでなく、チャート印刷用データCP(画像データ)におけるパターンの配置位置(印刷位置)を工夫することにより、調整パターンを印刷するのに必要なキャリッジ21のパス数を低減させている。
図11は、印刷画素を示す。ディレイ設定値Dcの最小単位をΔdとしたときに、主走査方向Xに隣り合う画素Gのピッチ(画素ピッチ)xを一例として、x=10・Δdとする。この場合、相対パターンの印刷位置を1画素ピッチx(=10・Δd)分だけマイナス方向にずらせば、ディレイ設定値Dc=Do(ずれ量0)の噴射タイミングで印刷しても、その印刷結果は、実質的にディレイ設定値Dc=−10の噴射タイミングで印刷したときの印刷位置と同じになる。つまり、印刷位置を1画素ピッチx(=10・Δd)分だけマイナス方向にずらした相対パターンと、印刷位置をずらしていない相対パターンと、印刷位置を1画素ピッチx(=10・Δd)分だけプラス方向にずらした相対パターンとを、ディレイ設定値D=Do(ずれ量0)で1回の主走査で印刷すると、ディレイ調整量「−10」、「0」、「10」の相対パターンRPを1パスで印刷できる。
また、印刷位置をずらしていない相対パターンと、印刷位置を1画素ピッチx(=10・Δd)分だけプラス方向にずらした相対パターンとを、ディレイ設定値Dc=Do−8・Δd(ずれ−8)で1回の主走査と印刷すると、ディレイ調整量「−8」、「2」の相対パターンRPを1パスで印刷できる。
さらに印刷位置をずらしていない相対パターンと、印刷位置を1画素ピッチx(=10・Δd)分だけプラス方向にずらした相対パターンとを、ディレイ設定値Dc=Do−6・Δd(ずれ量−6)で1回の主走査と印刷すると、ディレイ調整量「−6」、「4」の相対パターンRPを1パスで印刷できる。
このようにパターンの配置位置(印刷位置)を主走査方向に1画素ピッチ分ずらすことにより、実質的に噴射タイミングのずれ量の異なる2種類以上の相対パターンRPを同一パスで印刷することができる。
図10の例では、1パス目に、記録ヘッドAを用いて所定のディレイ設定値Dc=Dsで基準パターンSPを印刷するとともに、記録ヘッドBを用いて「−10」、「0」、「10」の相対パターンRPを印刷する。2パス目は、「−8」、「2」の相対パターンRPを印刷する。3パス目は、「−6」、「4」の相対パターンRPを印刷する。4パス目は、「−4」、「6」の相対パターンを印刷する。5パス目は、「−2」、「8」の相対パターンRPを印刷する。6パス目は、「−1」の相対パターンを印刷する。7パス目は、「1」の相対パターンRPを印刷する。
このように、噴射タイミングのずれ量の異なるJ組(図5及び図10の例ではJ=13組)のパターンPGを印刷する場合、噴射タイミングのパス毎の切り換えによる手法だけで行えば、13パスの印刷動作が必要であるところ、約半分の7パスの印刷動作で1つの調整パターンCT1を印刷できる。このため、調整用チャートCTを構成する4列の調整パターンCT1〜CT4を印刷する場合は、噴射タイミングの切り換えだけの手法で52パスの印刷動作が必要なところ、約半分の28パスの印刷動作で済む。なお、ディレイ設定値Dcの「1」変化当たりの主走査方向Xにおける印刷位置のずれ量は、キャリッジ速度に依存する。
この噴射タイミングの調整作業は、例えばプリンター製造過程の工程検査で設定される。また、ユーザーがプリンター購入後に最初にプリンターを起動させたときの初期化処理の一つとして、或いはユーザーが定期的に行うメンテナンスの一つとして行われる。
なお、記録ヘッド23には、ノズル毎に吐出駆動素子が内蔵されており、印刷画像データのドット値が例えば「1」のときには吐出駆動素子に所定駆動波形の電圧が印加されてノズル19aからインク滴が吐出され、一方、印刷画像データのドット値が例えば「0」のときには吐出駆動素子に電圧が印加されずノズルからインク滴の吐出が行われない。吐出駆動素子としては、圧電駆動素子(ピエゾ素子)、静電駆動素子の他、インクを加熱して膜沸騰による気泡(バブル)の圧力を利用してノズルからインク滴を吐出させるヒーターなどを挙げることができる。
次に図12のフローチャートに従って処理を説明する。なお、この処理は、コントローラー40内の制御部45が行う。ユーザーは操作部53を操作して不図示の画面に表示されたメニュー中の調整項目の中からヘッド調整機能を選択し、その実行を指示操作する。制御部45は、その指示操作に基づくヘッド調整処理の実行を指示する指令信号を入力すると、図12のフローチャートで示される調整処理を実行する。
まずステップS10では、チャート(調整用チャート)を印刷する。すなわち、図5に示す往動用の調整チャートCTAと、不図示の復動用の調整チャートCTBとを印刷する。本実施形態では、このステップS10の処理が、記録段階に相当する。
次のステップS20では、調整用チャートCTを構成する4列の調整パターンCT1,CT2,CT3,CT4を見て、各列から基準パターンSPと相対パターンRPとが一番合った(一番隣接した状態にある)1組のパターンPGをそれぞれ選択し、選択した各パターンPGに対応する数値(N,M)、(P,Q)を入力する。ここで、数値(N,M)は、往動時のノズル列A1,B1間の一番合ったパターンPGに対応する数値Nと、往動時のノズル列A2,B2間の一番合ったパターンPGに対応する数値Mとの組合せを示す。また、数値(P,Q)は、復動時のノズル列A1,B1間の一番合ったパターンPGに対応する数値Pと、復動時のノズル列A2,B2間の一番合ったパターンPGに対応する数値Qとの組合せを示す。例えば図5のチャートCTの例では、往動用の調整チャートCTAにおけるA1/B1列の調整パターンCT1では数値「2」のパターンが一番合っており、A2/B2列の調整パターンCT2では数値「2」のパターンが一番合っている。このため、ユーザーは操作部53を操作して(N,M)として(2,2)を入力することになり、(N,M)=(2,2)が入力される。こうして制御部45は、数値(N,M)、(P,Q)を入力する。
ステップS30では、N=Mであるか否かを判断する。N=Mであれば、ステップS50において往動用の調整値として「N」を設定する。一方、N=Mでなければ、ステップS40においてN=(N+M)/2を計算し、ステップS50において往動用の調整値としてこの計算したN(=(N+M)/2)を設定する。すなわち、N=Mの場合は、A1/B1列調整パターンCT1とA2/B2列調整パターンCT2とで最適な調整値が同じ(N=M)なので、その値Nをそのまま往動用の調整値として設定する。また、N=Mでない場合は、A1/B1列調整パターンCT1とA2/B2列調整パターンCT2とで最適な調整値が異なる(N≠M)なので、各調整値N,Mの平均値(=(N+M)/2)を往動用の調整値として設定する。
また、ステップS60〜S80は、復動用の調整値を設定する処理を、ステップS30〜S50の往動用の調整値を設定する処理と同様に行う。
ステップS60では、P=Qであるか否かを判断する。P=Qであれば、ステップS80において復動用の調整値として「P」を設定する。一方、P=Qでなければ、ステップS70においてP=(P+Q)/2を計算し、ステップS80において復動用の調整値としてこの計算したP(=(P+Q)/2)を設定する。すなわち、P=Qの場合は、A1/B1列調整パターンCT3とA2/B2列調整パターンCT4とで最適な調整値が同じ(P=Q)なので、その値Pをそのまま復動用の調整値として設定する。また、P=Qでない場合は、A1/B1列調整パターンCT3とA2/B2列調整パターンCT4とで最適な調整値が異なる(P≠Q)なので、各調整値P,Qの平均値(=(P+Q)/2)を復動用の調整値として設定する。
次のステップS90では、Bi−d調整値Rを取得する。例えば予め設定されたBi−d調整値Rを不揮発性メモリー47から読出す。Bi−d調整値Rは、図9に示すように、記録ヘッドAの一例としてノズル列A1を使用して、往動時と復動時のディレイ値の組合せ(つまりディレイ値の組合せの差分であるずれ量)を変化させて印刷したBi−d調整用のパターンの中から一番ずれの小さなパターンを選択し、その選択したパターンに対応する調整値Rを設定したものである。
ステップS100では、調整値P=P+Rを計算する。つまり、復動用の調整値PにBi−d調整値Rを加味した調整値Pを計算する。そして、ステップS110において、この調整値Pを設定する。こうして往動用の調整値Nと復動用の調整値Pとがそれぞれ設定され、これらの調整値N,Pは不揮発性メモリー47の所定記憶領域に記憶される。本実施形態では、ステップS20〜S110の処理が、調整段階に相当する。
ここで、本実施形態では、ステップS10におけるチャートの印刷は、制御部45が、図13のフローチャートで示されるチャート印刷処理ルーチンを実行することにより行われる。以下、このチャート印刷処理の内容を図13に基づいて説明する。なお、図13のフローチャートは、1列の調整パターンを印刷するための処理内容を示し、4列の調整パターンにより構成される調整用チャートCTを印刷する場合は、図13のフローチャートの処理を4列分(4回)行うことになる。なお、調整パターンCT1,CT2を印刷するときは、キャリッジ21を往動させる過程で記録ヘッドA,Bのノズルからインク滴を噴射させ、一方、調整パターンCT3,CT4を印刷するときは、キャリッジ21を復動させる過程で記録ヘッドA,Bのノズルからインク滴を噴射させる。
ステップS210では、チャート印刷データを不揮発性メモリー47から読み出して取得する。チャート印刷データは、1列分の基準パターンと、ずれ量δn(但しn=1,2,…,K)の相対パターンとを含む画像データである。
次のステップS220では、n=1を設定する。ここで、nはカウンターの計数値であり、パターンのずれ量δnを決めるために使用される。ここでは、nを初期値に設定する(n=1)。また、本例では、このnは、調整パターンを印刷する際のパス数にも対応している。
ステップS230では、基準パターンと、ずれ量δn(=δ1)の相対パターンPn(=P1)とを印刷する。このとき、基準パターンデータDstと相対パターンデータDn(=D1)とを読み出し、データDstに基づいて記録ヘッドAのノズル列A1を用いて基準パターンSPを印刷するとともに、データDn(=D1)に基づいて記録ヘッドBのノズル列B1を用いて相対パターンRPを印刷する。すなわち、1パス目の印刷を行って、図10に示す基準パターンSPと、ずれ量δ1(例えば「ずれ量0」)の相対パターンRPとを印刷する。この場合、図10に示すように、ずれ量「−10,0,10」の3つのパターンRPが印刷される。
ステップS240では、n=n+1を設定する。すなわち、nを「1」だけインクリメントする(n=2)。
ステップS250では、相対パターンデータDnを読み出す。
ステップS260では、ずれ量δnで相対パターンRPnを印刷する。すなわち、2パス目の印刷を行って、図10に示すずれ量δ2(例えば「ずれ量−8」)の相対パターンRPを印刷する。この場合、図10に示すように、ずれ量「−8,2」の2つのパターンRPが印刷される。
ステップS270では、n=Kに達したか否かを判断する。ここで、Kは調整パターンの印刷に必要なパス数に相当する値であり、n=Kに達したことをもって調整パターンの印刷が終了したか否かを判断する。n=Kでなければ、まだ印刷すべきパターンが残っているので、ステップS240に戻る。
こうして1パス分の印刷を行う度に終了か否かを確認し、印刷すべきパターンが残っていれば、nをインクリメントし、そのときのn値に応じた相対パターンデータDnを読み出し、そのデータDnに基づいてずれ量δnの相対パターンRPnを印刷する。これをn=Kに達するまで1パスごと繰り返す。
これらの処理(S240〜S270)の結果、図10に示すように、3パス目の印刷で、ずれ量「−6,4」の2つのパターンRPが印刷される。4パス目の印刷で、ずれ量「−4,6」の2つのパターンRPが印刷される。5パス目の印刷で、ずれ量「−2,8」の2つのパターンRPが印刷される。6パス目の印刷で、ずれ量「−1」の1つのパターンRPが印刷される。そして、7パス目の印刷で、ずれ量「1」の1つのパターンRPが印刷される。この7パス目の印刷を終えると、n=K(本例ではn=7)が成立し、当該処理を終了する。この処理の結果、例えば図5(a)に示す調整パターンCT1が印刷される。さらに図13のルーチンを実行し、図5(b)に示す調整パターンCT2が印刷される。また、復動時の印刷に切替えて、図13のルーチンを1回実行して調整パターンCT3が印刷され、さらに図13のルーチンをもう1回実行して調整パターンCT4が印刷される。
なお、最適な一組のパターンPGが、例えばずれ量「0」から大きくずれており、例えばずれ量「6」や「−6」などの場合は、そのずれ量に応じた数値を基に演算し調整値を設定した後、再度、調整値に基づき調整用チャートを印刷し、最適な一組のパターンPGに応じた数値を入力する。そして、ずれ量が所定範囲内(例えば−2以上かつ2以下)の条件を満たす最適な一組のパターンPGが選択されるまで、この操作を繰り返し行う。
また、A1/B1列調整パターンCT1で選択された最適な一組のパターンPGに対応する数値と、A2/B2列調整パターンCT2で選択された最適な一組のパターンPGに対応する数値とがずれていた場合は、同一の記録ヘッドに形成された複数のノズル列の主走査方向Xの間隔が、複数の記録ヘッド23間で異なることを意味する。よって、このような場合は、エラーを報知する。但し、プリンター11は出荷前検査が行われているので、基本的にこの種のエラーが発生することは極めて稀である。
こうして取得された調整値N,Pは調整データTDの一部として不揮発性メモリー47に記憶される。調整値N,Pはデフォルトのディレイ設定値Dcに対する補正値であり、調整後に印刷するときには、指示部62が、不揮発性メモリー47から調整値を読み出し、その調整値をディレイ設定値Dcのデフォルト値に補正として加える。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)指示部62により、複数の記録ヘッドA,Bの噴射タイミングが個別に調整され、複数の記録ヘッドA,B間の噴射タイミングのずれ量を異ならせた複数組の噴射タイミングが指示される。そして、記録実行手段を構成するヘッド制御部63及びキャリッジ制御部64は、指示部62により指示された複数組の噴射タイミングで複数の記録ヘッドA,Bに記録を行わせる。その結果、シートSL(記録媒体)には、複数組の噴射タイミングに応じた複数組のパターンPGを含む調整パターンが印刷される。そして、調整部61は、複数組のパターンPGのうちから最適な一組のパターンPGに対応する数値を入力すると、その数値を基に演算した調整値を設定することにより噴射タイミングを設定する。このため、複数の記録ヘッドA,Bの相対移動方向における位置のばらつきに起因する記録位置のばらつきを比較的簡単に小さく抑えることができる。従って、各記録ヘッドA,Bの位置のばらつきに起因する印刷品質の低下を抑制できる。
(2)シリアル式のプリンター11において、キャリッジ21に個別に組付けられた複数の記録ヘッドA,Bの主走査方向X(相対移動方向)における組付位置のばらつきが考慮された適切な調整値を設定することができる。
(3)指示部62により、一の記録ヘッドの噴射タイミングに対する他の記録ヘッドの噴射タイミングが少しずつずれ量が異なるように指示される。一の記録ヘッドの噴射タイミングを一定とし、他の記録ヘッドの噴射タイミングを少しずつ異なるずれ量でずらすので、指示部62による指示が比較的簡単に済ませられる。
(4)複数の記録ヘッドA,Bのうち一の記録ヘッドが印刷したパターンと、他の一の記録ヘッドが印刷したパターンとが相対移動方向に隣接して配置される複数組のパターンを記録させる。よって、複数組のパターンPGのうち、最適な一組のパターンPGを判定し易い。この結果、最適な記録タイミングを決める最適な調整値を設定できる。
(5)ユーザーが複数組のパターンPGを見てそのうち最適な一組のパターンに対応する入力値を、操作部53の操作により入力する構成を採用した。そして、調整部61は、操作部53の操作により受け付けた入力値を基に複数の記録ヘッドA,Bの最適な噴射タイミングを決める調整値を設定する。ユーザーが見て判断した最適な一組のパターンPGに対応する噴射タイミングを決める調整値が設定されるので、ユーザーの所望する印刷品質を得ることができる。また、画像解析などの比較的複雑な処理を行うことなく、比較的簡単な構成の噴射タイミング調整装置を提供できる。
(6)一のずれ量の噴射タイミングでキャリッジ21を1パスさせ、この1パスの度にずれ量を異ならせて複数パスのキャリッジ移動を行って複数組のパターンが印刷される。このとき、主走査方向Xにパターンの印刷位置を印刷画素の画素ピッチ単位でずらしたチャート印刷用データ(画像データ)を用いることにより、1パスで噴射タイミングのずれ量の異なる複数組のパターンを印刷することができる。よって、調整用チャートCTを印刷するために必要なキャリッジ21のパス数を比較的少なく済ませられ、比較的短時間で調整用チャートCTを印刷することができる。
(7)複数の記録ヘッドA,Bに、往動過程の記録と、復動過程の記録とを別々に行わせて、往動用調整チャートCTAと、復動用調整チャートCTBとを印刷する。そして、各調整チャートCTA,CTBから、往動用の調整値と復動用の調整値と設定する。よって、複数の記録ヘッドA,Bの往動過程と復動過程の双方向においてそれぞれ個別に適切な噴射タイミングを設定できる。このため、複数の記録ヘッドA,Bのうち少なくとも一つが水平面に対してノズル開口面が傾いて組み付けられていても、この傾きも考慮された適切な噴射タイミングを設定することができる。
(8)複数の記録ヘッドA,Bのうち一つの記録ヘッドAの往動過程の噴射タイミングと復動過程の噴射タイミングとをずれ量を少しずつ変えてBi−d調整用のチャートの印刷(第2の記録)が行われる。調整部61は、Bi−d調整値Rと、調整値N,Pとに基づいて、複数の記録ヘッドA,Bの噴射タイミングを決める調整値N.Pを設定する。よって、Bi−d調整値Rも考慮された適切な調整値N,Pを設定することができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図14及び図15を用いて説明する。
チャートの印刷画像を読み取って画像解析を行うことにより最適な調整値を自動で設定する点が前記第1実施形態と異なる。
図14(a)に示すように、プリンター11には読取手段の一例としてのスキャナー81が接続されている。プリンター11に例えばスキャナー81が別装置として接続されている構成や、プリンター11と一体にスキャナー81が設けられた複合機の構成などが挙げられる。
また、他の構成として、図14(b)に示すように、キャリッジ21の走行エリアよりも搬送方向下流側に、シートSLの印刷面をシートSLの幅方向全域に亘って読み取り可能な長さを有する読取手段の一例としてのイメージセンサー82が設けられた構成も採用できる。イメージセンサー82は、例えば複数のCCD素子がシート幅方向に沿って配列されてなる。なお、キャリッジ21に搭載されたイメージセンサーにより、キャリッジ21が主走査方向に移動する過程で、シートSL上に印刷されたパターンを読み取る構成も採用できる。
スキャナー81又はイメージセンサー82によりシートSL上に印刷された調整用チャートCT(複数の調整パターンCT1〜CT4)を読み取ったチャート画像データは、コントローラー40内の受信バッファー42に格納される。コントローラー40に設けられた制御部45内には画像解析手段の一例である画像解析部85が備えられ、画像解析部85は、受信バッファー42から読み出したチャート画像データを、調整パターンCT1〜CT4毎に画像解析する。そして、画像解析の結果、基準パターンSPと相対パターンRPとが一番合っている(つまり隣接状態にある)一組のパターンPGを特定し、特定した一組のパターンPGに対応する調整値を取得する。
図15は、この調整処理を説明するフローチャートである。
まずステップS310では、チャートCTを印刷する。ステップS320では、チャートCTをスキャンする。ステップS330では、画像解析により(N,M),(P,Q)を取得する。ステップS340では、N設定処理を行う。このN設定処理は、図12におけるS30〜S50の処理に相当する。
ステップS350では、P設定処理を行う。このP設定処理は、図12におけるS600〜S110の処理に相当する。すなわち、このP設定処理では、チャートCTの画像解析により求めたP値にBi−d調整値Rを加味して調整値Pを設定する。この調整値N,Pが設定されることにより、複数の記録ヘッドA,Bの最適な印刷タイミングが設定される。なお、S310が記録段階、S320〜S350が調整段階に相当する。
この第2実施形態によれば、チャートCTをスキャナー81又はイメージセンサー82により読み取った画像データに対して画像解析処理を施し、その画像解析結果から最適な一組のパターンPGを特定する。そして、その特定した一組のパターンPGに対応する調整値を設定する。よって、複数の記録ヘッド23の最適な印刷タイミングを自動で設定できる。
(第3実施形態)
次に記録装置の一例が、インクジェット記録方式のラインプリンターである第3実施形態を図16及び図17に基づいて説明する。
図16は、ラインプリンターの模式平面図である。図16に示すように、このラインプリンター100では、複数本のローラー91〜93に巻き掛けられた搬送ベルト94上へローラー95を介してシートSLは搬入される。搬送ベルト94の搬送方向略中央部にそのベルト面から上方(図16では紙面直交方向手前側)へ所定のギャップを隔てた位置には記録ユニット96が配置されている。記録ユニット96は、複数の記録ヘッド♯1〜♯n(図17参照)が最大用紙幅全域に渡って配置された、所謂マルチヘッドタイプの記録ユニットである。図16に示すコントローラー97が搬送モーター98を駆動することで搬送ベルト94上をシートSLは搬送方向Y下流側(図16では左側)へ一定速度で搬送され、このシートSLに対して記録ユニット96の各記録ヘッド101A〜104A,101B〜104B(図17参照)からインク滴が噴射されることで、シートSLへの印刷が行われる。なお、搬送ベルト94の側縁部にはリニアエンコーダー99が設けられ、リニアエンコーダー99のセンサー99Aから出力されるエンコーダーパルスから生成された吐出タイミング信号に基づいて記録ヘッド101A〜104A,101B〜104Bの噴射タイミングがコントローラー97により制御されるようになっている。
図17は、このようなラインプリンター100における記録ユニットの底部及びコントローラーを示す。ラインプリンター100では、図17に示すように、記録ユニット96の本体96Aの底面側には、複数個(本例では8個)の記録ヘッド101A〜104A,101B〜104Bが設けられている。記録ヘッド101A〜104A,101B〜104Bは、搬送方向Yに隣り合って配置された2個を一組とする計4組が千鳥配置で配列されている。各記録ヘッド101A〜104A,101B〜104Bはコントローラー97と電気的に接続され、コントローラー97により噴射制御される。コントローラー97は、基本的に第1実施形態のコントローラー40と同様の構成である。
組をなすうち搬送方向上流側に位置する記録ヘッド101A〜104Aは、そのノズル開口面にインク色(K,C)に対応する2列のノズル列105を有し、搬送方向下流側に位置する記録ヘッド101B〜104Bは、そのノズル開口面にインク色(M,Y)に対応する2列のノズル列105を有している。
ラインプリンター100では、搬送されるシートSL上の印刷画素を構成する複数のサブ画素をそれぞれ印刷する記録ヘッド101Aと101B、102Aと102B、103Aと103B、104Aと104Bが、搬送方向Yの異なる位置に配列されている。図17に示すように8個の記録ヘッドを記録ヘッドA〜Hとし、それぞれのノズル列をノズル列A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2,…,G1,G2,H1,H2とする。この場合、第1実施形態と同様に、A1/B1列調整パターン、C1/D1列調整パターン、E1/F1列調整パターン、G1/H1列調整パターンなどを印刷する。このラインプリンター100においても、調整用チャートCTを印刷し、最適なパターンPGに対応する数値は、操作部の操作に基づく入力値として取得したり、スキャナーやイメージセンサーなどの読取り手段の読み取り画像の画像解析結果から取得したりする。そして、取得した数値を基に調整部61が所定の演算を行って調整値を求め、求めた調整値を設定することにより、各記録ヘッドの適正な噴射タイミングが設定される。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・記録ヘッドの個数は2個に限定されず、図18に示すようにキャリッジ21に3個の記録ヘッドA,B,C(23)が主走査方向Xに沿って配置された構成でもよい。この例では、A1/B1列調整チャートとA1/C1列調整チャートを印刷する。また、これに加え、A2/B2列調整チャートとA2/C2列調整チャートを印刷してもよい。
・記録タイミングの調整のみに限定されない。複数の記録ヘッドA,Bの位置関係を調整してもよい。図19に示すように、キャリッジ21には、複数の記録ヘッドA,B(23)がガイドレール111に案内されて主走査方向Xに移動可能な状態で取り付けられている。また、各記録ヘッドA,Bには、各記録ヘッドA,Bを個別に主走査方向Xに移動(変位)させることが可能なアクチュエーター112が設けられている。アクチュエーター112には、例えば電歪作用で駆動する圧電アクチュエーターなどが使用される。例えばディレイ設定値Dcによる調整には限界があるため、アクチュエーター112を駆動させて複数の記録ヘッドA,Bの主走査方向Xの相対位置を調整することでまず粗調整し、この粗調整の後、必要に応じて調整用チャートCTを再度印刷し、最適な一組のパターンPGに対応する数値を取得する。そして、調整部61は、取得した数値を基に演算した調整値を調整データTDの一部として設定する。
・記録ヘッドの異なる複数組のノズル列間(A1/B1列とA2/B2列)で噴射タイミングのずれ量の異なる複数組の噴射タイミングで印刷を行う構成としたが、記録ヘッドと同数のノズル列の組合せのみの調整パターンを印刷する構成を採用してもよい。例えば第1実施形態において、A1/B1列調整パターンのみ、又はA2/B2列調整パターンのみを印刷する構成としてもよい。
・A1/B2列調整パターンとA2/B1列調整パターンを採用してもよい。また、A1/B2列調整パターンのみ、又はA2/B1列調整パターンのみを採用してもよい。
・図18の変形例において、A1/B1列調整パターンとA1/C1列調整パターンのみを採用してもよい。
・1種類のパターンPGを構成するパターンの形状及び数は適宜変更してよい。例えば、基準パターンと相対パターンの数を逆にし、基準パターンが2本、相対パターンが3本の組合せも採用できる。また、基準パターンが2本で相対パターンが1本の組合せや、この逆で、基準パターンが1本で相対パターンが2本の組合せも採用できる。さらには基準パターンと相対パターンの本数が同数であってもよく、例えば1本ずつ、2本ずつ、3本ずつなどの構成も採用できる。また、パターンの幅も適宜変更でき、基準パターンと相対パターンとの幅が異なっていたり、基準パターンの中で幅が異なっていたり、相対パターンの中で幅が異なっていてもよい。また、パターン形状も矩形に限定されず、三角形、円、楕円、五角以上の多角形であってもよい。さらに基準パターンと相対パターンの各形状が異なっていてもよい。その他、基準パターンと相対パターンとの相対位置関係の違いが分かれば、各パターンは任意の形状及び個数を採用してよい。
・基準パターンと相対パターンとの間に隙間や重複がないものに対応する数値(調整値)を選択する構成としたが、これとは逆に、隙間や重複があるものに対応する数値(調整値)を選択する構成としてもよい。その他、基準パターンと相対パターンとの相対位置関係の違いが分かれば、各パターンは任意の形状及び個数を採用してよい。
・記録ヘッド一個当たりのノズル列の個数は適宜変更できる。例えば記録ヘッド一個につきノズル列が1本のみの構成や、ノズル列が3本以上ある構成も採用できる。
・記録ヘッドと記録媒体とが1回相対移動(例えば1パス)するときに各記録ヘッドの記録タイミングを変更できる構成を採用してもよい。この構成によれば、調整用チャートを印刷するために必要なパス数を低減できる。
・記録タイミング調整装置は、例えばCPUによるソフトウェアではなく、ASIC等の集積回路によるハードウェアで構成してもよい。さらには、ソフトウェアとハードウェアとの協働により構成してもよい。
・記録媒体は、紙又は樹脂などからなる長尺状のシートに限定されず、単票紙や単票状の樹脂フィルムでもよい。また、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板、半導体ウェハなどでもよい。また、CD、DVDなどの光ディスクや磁気ディスクなどの記憶媒体でもよい。さらに、記録媒体はシート状に限定されず、所定の立体形状の表面に印刷できる機構を有する記録装置の場合、そのような所定の立体形状を有する物体も含む。
・記録装置は、インクジェット式のプリンター11に限定されず、ドットインパクト式プリンター、レーザープリンターなどでもよい。
・前記実施形態では、記録装置として、インクジェット式のプリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。