以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、用紙搬送ローラ4等を備えている。キャリッジ2は、2本のガイドレール5に沿って、走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、その下面であるインク吐出面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。ここで、複数のノズル10は、走査方向とほぼ直交する(交差する)配列方向に、長さKにわたって配列されることによってノズル列9を形成しており、インク吐出面には、このようなノズル列9が、配列方向と直交する方向に4列に並んでいる。そして、複数のノズル10からは、走査方向の右側に配置されているノズル列9を形成するノズルから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する。用紙搬送ローラ4(搬送手段)は、記録用紙Sを、平面視で走査方向とほぼ直交する(交差する)搬送方向に搬送する。
そして、インクジェットプリンタ1では、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、ノズル10からインクを吐出させることにより、記録用紙Sに記録を行う。記録時のキャリッジ2やインクジェットヘッド3の動作については、後程詳細に説明する。
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御する制御装置50について説明する。制御装置50は、図5に示すように、制御部51、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)52などからなる。制御部51は、バスによって互いに接続されたCPU(Central Processing Unit)56、ROM(Read Only Memory)57、RAM(Random Access Memory)58などからなり、CPU56が、ROM57やRAM58に記憶されているデータ値や制御プログラムにしたがって、ASIC52に対する指令などを行う。
ASIC52は、キャリッジ2を駆動するキャリッジモータ41、インクジェットヘッド3を駆動するドライバIC42、用紙搬送ローラ4を駆動するローラモータ43等を動作させるための回路など、各種の制御回路を備え、制御部51からの指令を受けて、インクジェットプリンタ1の各部分の動作を制御することによって、インクジェットプリンタ1に記録を行わせる。
そして、制御装置50は、制御部51及びASIC52が、図3に示すように、モード決定部61、基準タイミング記憶部62、補正量決定部63、補正係数記憶部64、記録制御部65等として機能する。図3は、制御装置50により実現される機能を示す機能ブロック図である。ここで、図3に示す制御装置50の各機能のうち、基準タイミング記憶部62及び補正係数記憶部64は、図2に示す制御部51のRAM58などによって実現されている。また、制御装置50の図3の構成のうち、モード決定部61、補正量決定部63及び記録制御部65は、図2に示す制御部51(CPU56、ROM57、RAM58)とASIC52とによって実現されている。あるいは、モード決定部61、補正量決定部63及び記録制御部65は、制御部51によってのみ実現されていてもよいし、ASIC52によってのみ実現されていてもよい。
モード決定部61は、インクジェットプリンタ1に接続されたPCなどから入力された記録指令に応じて、記録モードを決定する。より詳細に説明すると、インクジェットプリンタ1では、後述する第1片方向記録モード、第2片方向記録モード、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードのうち、いずれかの記録モードで選択的に記録を行うことができるようになっており、モード決定部61は、記録する画像データのヘッダ部分に記録されたデータの種類や、ユーザによる記録モードの指示などに応じて、これら4つのいずれの記録モードで記録を行うかを決定する。なお、本実施の形態では、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードが、本発明に係る双方向記録モードに相当する。
基準タイミング記憶部62は、記録時におけるノズル10からのインクの吐出タイミングを決定するときの基準となる基準タイミングを記憶している。基準タイミングについては後ほど説明する。補正量決定部63は、後述する、ノズル10から吐出されたインク滴の着弾位置に生じるズレを補正するための補正量を決定する。補正係数記憶部64は、補正量決定部63が補正量を決定するのに用いる補正係数を記憶している。具体的には、補正係数記憶部64は、後述する第1片方向記録モードに対する補正係数P1と、後述する第2片方向記録モードに対する補正係数P2とを記憶している。補正量や補正係数については、後程詳細に説明する。
記録制御部65は、モード決定部61が決定した記録モード、基準タイミング記憶部62に記憶された基準タイミング、補正量決定部63が決定した補正量に基づいて、記録時の、キャリッジモータ41、ドライバIC42及びローラモータ43の動作を制御する。このとき、記録制御部65は、インクの着弾位置が、基準タイミングでインクを吐出させたとした場合のインクの着弾位置から、補正量決定部63が決定した補正量だけずれた位置となるような吐出タイミングで、ノズル10からインクを吐出させる。
次に、上述の補正量及び補正係数について説明する。インクジェットプリンタ1では、上述したように、ノズル10の配列方向が、走査方向に対してほぼ直交しており、走査方向と搬送方向とがほぼ直交している。また、インクジェットプリンタ1では、ノズル10の配列方向が、記録用紙Sの記録面Saとほぼ平行となっている。そして、基準タイミング記憶部62には、ノズル10の配列方向が、記録用紙Sの記録面と完全に平行であるとともに、走査方向に対して完全に直交しており、走査方向と搬送方向とが完全に直交しており、ノズルと記録用紙の間隔が設計値に等しく、キャリッジの移動速度およびインク滴の飛翔速度が設計値に等しいとした場合(以下、「理想的であるとした場合」とする)のインクの吐出タイミングが、基準吐出タイミングとして記憶されている。
しかしながら、インクジェットプリンタ1では、製造誤差などにより、厳密には、図4(a)に示すように、平面視で、ノズル10の配列方向が、走査方向と直交する方向(以下、A方向とする)に対して若干傾いており、走査方向が、搬送方向と直交する方向(以下、B方向とする)に対して若干傾いている。また、図4(b)に示すように、走査方向から見て、ノズル10の配列方向が、記録用紙Sの記録面Saに対して傾いている。以下では、図4(a)に示すように、平面視での、A方向のノズル10の配列方向に対する時計回り方向の傾きをθ1、平面視での、B方向の走査方向に対する時計回り方向の傾きをθ2とし、図4(b)に示すように、走査方向の左側から見た、ノズル10の配列方向の、記録用紙Sの記録面Saに対する時計回り方向の傾きをφとして説明を行う。
次に、インクジェットプリンタ1の上記4つの記録モードについて詳細に説明する。第1片方向記録モードでは、キャリッジ2を走査方向に往復移動させるとともに、キャリッジ2が走査方向の右側(第1向き)に移動するときにノズル10からインクを吐出して、図5に示すような、最終的に記録される画像Gの一部である単位画像Uを記録し(以下、この動作を第1記録動作とする)、用紙搬送ローラ4により、記録用紙Sを搬送方向に搬送距離F1ずつ間欠的に搬送しつつ、第1記録動作による単位画像Uの記録を繰り返し行うことによって画像Gの記録を行う。ここで、搬送距離F1は画像の形成方法等によって異なるが、同一領域に重複してインク吐出を行わない場合(単位画像Uを意図的に重ねない場合)には、配列方向におけるノズル列9の長さをKとして、計算上F1=K・cos(θ1+θ2)に近い距離となる。一般には調整用パターンの印刷などを行って、上記理論値の近傍の最適値にあらかじめ設定されている。
第1片方向記録モードで記録を行うと、A方向の配列方向に対する傾きθ1により、単位画像Uの走査方向両端の縁E1が、平面視でA方向に対してθ1だけ傾く。また、配列方向の記録面Sa傾きφにより、単位画像Uの縁E1が、平面視で、A方向に対してθ3だけ傾く。ここで、θ3は、キャリッジ2の移動速度をW、ノズル10から吐出されるインク滴の飛翔速度をVとして、θ3=φ・(W/V)の角度である。そして、以上のことから、図5(a)に示すように、単位画像Uの縁E1は、平面視でA方向に対してθ1+θ3だけ傾く。また、B方向の走査方向に対する傾きθ2により、単位画像Uの搬送方向両側の縁E2が、平面視で走査方向に対してθ2だけ傾く。
そのため、第1片方向記録モードにおいて、上述の基準タイミングでノズル10からインクを吐出して記録を行うと、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2が、当該縁E2と重なって記録される、搬送方向上流側(図5の上側)の単位画像Uの搬送方向下流側(図5の下側)の縁E2に対して、走査方向の右側にズレ量D1だけずれる。ここで、ズレ量D1は、D1=F1・tan(θ1+θ3)+F1・sinθ2となり、θ1、θ2、θ3が微小な角度であることからtanθ≒θ、sinθ≒θで近似することにより、D1≒F1・(θ1+θ2+θ3)のように近似することができる。
本実施の形態では、補正係数記憶部64に、第1片方向記録モードに対応する補正係数P1として、例えば、上記θ1+θ2+θ3の値が記憶されている。そして、第1片方向記録モードで記録を行う場合には、補正量決定部63が、この補正係数P1を用いて、各単位画像Uに対する補正量を決定し、記録制御部65は決定された補正量に応じて各単位画像Uを記録する。
具体的に、例えば、図5(b)に示すように、5つの単位画像U(U1〜U5)で画像Gを記録する場合を例として説明する。用紙搬送のある時点、例えば先端レジスト位置を基準にして、単位画像Ukを記録するときの累積搬送量をGkと表現できる(k=1,2,3,4,5)。累積搬送量がある位置G0であるような単位画像U0が存在するとき、U0を、基準タイミングでインクを吐出する場合と同じ位置に記録する(補正量を0とする)。そして、各単位画像Ukを記録するときの補正量をHk=P1・(Gk−G0)として決定する。ただしHkが正のときの補正量が、画像が走査方向の左側にずれる向きの補正量とする。このとき、隣接する単位画像の補正量の差はHk+1−Hk=P1・(Gk+1−Gk)=P1・F1=D1であるから、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。たとえばU0がU3に一致する場合は、中央の単位画像U3から搬送方向下流側に数えてN番目(N=1、2)の単位画像U2、U1は、HN=P1・(G3−N−G3)=−N・P1・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・P1・F1だけ走査方向の右側に補正された位置に記録することになる。また、単位画像U3から搬送方向上流側に数えてN番目の単位画像U4、U5は、HN=P1・(G3+N−G3)=N・P1・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・P1・F1だけ走査方向の左側に補正された位置に記録することになる。これにより、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。
第2片方向記録モードでは、キャリッジ2を走査方向に往復移動させ、キャリッジ2が走査方向の左側(第2向き)に移動するときにノズル10からインクを吐出して、図6に示すような単位画像Uを記録し(以下、この動作を第2記録動作とする)、用紙搬送ローラ4により記録用紙Sを搬送距離F1ずつ間欠的に搬送しつつ、第2記録動作による単位画像Uの記録を繰り返し行うことによって記録を行う。
第2片方向記録モードで記録を行うと、A方向の配列方向に対する傾きθ1により、単位画像Uの縁E1が、平面視でA方向に対してθ1だけ傾く。また、配列方向の記録面Sa傾きφにより、単位画像Uの縁E1が、平面視でA方向に対して−θ3だけ傾く。以上のことから、図6(a)に示すように、単位画像Uの走査方向両端の縁は、平面視でA方向に対してθ1−θ3だけ傾く。また、B方向の走査方向に対する傾きθ2により、単位画像Uの縁E2が、平面視で走査方向に対してθ2だけ傾く。
そのため、第2片方向記録モードにおいて、上述の基準タイミングでノズル10からインクを吐出して記録を行うと、図6(a)に示すように、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向上流側の単位画像Uの搬送方向下流側の縁E2が、当該縁E2と重なって記録される、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2に対して、走査方向の右側にズレ量D2だけずれる。ここで、ズレ量D2は、D2=F1・tan(θ1−θ3)+F1・sinθ2となり、θ1、θ2、θ3が微小な角度であることからtanθ≒θ、sinθ≒θで近似することにより、D1≒F1・(θ1+θ2−θ3)のように近似することができる。
本実施の形態では、補正係数記憶部64に、第2片方向記録モードに対応する補正係数P2として、例えば、上記(θ1+θ2−θ3)の値が記憶されている。そして、第2片方向記録モードで記録を行う場合には、補正量決定部63が、この補正係数P2を用いて、各単位画像Uに対する補正量を決定し、記録制御部65は決定された補正量に応じて各単位画像Uを記録する。
具体的には、例えば、図6(b)に示すように、5つの単位画像U1〜U5で画像Gを記録する場合を例として説明する。第1片方向記録モードの場合と同様、単位画像Ukを記録するときの累積搬送量をGkと表現できる(k=1,2,3,4,5)。累積搬送量がある位置G0であるような単位画像U0が存在するとき、U0を、基準タイミングでインクを吐出する場合と同じ位置に記録する(補正量を0とする)。そして、各単位画像Ukを記録するときの補正量をHk=P2・(Gk−G0)として決定する。ただしHkが正のときの補正量が、画像が走査方向の左側にずれる向きの補正量とする。このとき、隣接する単位画像の補正量の差はHk+1−Hk=P2・(Gk+1−Gk)=P2・F1=D2であるから、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。たとえばU0がU3に一致する場合は、中央の単位画像U3から搬送方向下流側に数えてN番目(N=1、2)の単位画像U2、U1は、HN=P2・(G3−N−G3)=−N・P2・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・P2・F1だけ走査方向の右側に補正された位置に記録することになる。また、単位画像U3から搬送方向上流側に数えてN番目の単位画像U4、U5は、HN=P2・(G3+N−G3)=N・P2・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・P2・F1だけ走査方向の左側に補正された位置に記録することになる。これにより、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。
完全交互記録モードでは、キャリッジ2を走査方向に往復移動させ、上述の第1記録動作による単位画像Uの記録と、第2記録動作による単位画像Uの記録とを、記録用紙Sを搬送距離F1ずつ間欠的に搬送しつつ交互に行うことによって記録を行う。
この場合には、第1記録動作によって記録された単位画像Uの縁E1が第1片方向記録モードの場合と同様、A方向に対してθ1+θ3だけ傾き、第2記録動作によって記録された単位画像Uの縁E1が第2片方向記録モードの場合と同様、A方向に対してθ1−θ3だけ傾く。そのため、完全交互記録モードにおいて、上述の基準タイミングでインクを吐出して記録を行うと、図7(a)に示すように、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向上流側の単位画像Uの搬送方向下流側の縁E2が、当該縁E2と重なって記録される、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2に対して、走査方向の右側にズレ量Dsだけずれる。ズレ量Dsは、第1片方向記録モードの場合の上記ズレ量D1(=F1・(θ1+θ2+θ3))と、第2片方向記録モードの場合の上記ズレ量D2(=F1・(θ1+θ2−θ3))とを単純平均したズレ量F1・θ1となる。
本実施の形態では、完全交互記録モードで記録を行う場合に、補正量決定部63は、補正係数記憶部64に記憶された補正係数P1、P2の単純平均値を算出することで単純平均補正係数Ps(=(P1+P2)/2、双方向補正係数)を取得し、単純平均補正係数Psを用いて各単位画像Uに対する補正量を決定する。そして、記録制御部65は決定された補正量に応じて各単位画像Uを記録する。
具体的には、例えば、図8(b)に示すように、5つの単位画像U1〜U5で画像Gを記録する場合を例として説明する。第1片方向記録モードの場合と同様、単位画像Ukを記録するときの累積搬送量をGkと表現できる(k=1,2,3,4,5)。累積搬送量がある位置G0であるような単位画像U0が存在するとき、U0を、基準タイミングでインクを吐出する場合と同じ位置に記録する(補正量を0とする)。そして、各単位画像Ukを記録するときの補正量をHk=Ps・(Gk−G0)として決定する。ただしHkが正のときの補正量が、画像が走査方向の左側にずれる向きの補正量とする。このとき、隣接する単位画像の補正量の差はHk+1−Hk=Ps・(Gk+1−Gk)=Ps・F1=Dsであるから、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。たとえばU0がU3に一致する場合は、中央の単位画像U3から搬送方向下流側に数えてN番目(N=1、2)の単位画像U2、U1は、HN=Ps・(G3−N−G3)=−N・Ps・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・Ps・F1だけ走査方向の右側に補正された位置に記録することになる。また、単位画像U3から搬送方向上流側に数えてN番目の単位画像U4、U5は、HN=P1・(G3+N−G3)=N・Ps・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・Ps・F1だけ走査方向の左側に補正された位置に記録することになる。これにより、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。また、このとき、単純平均補正係数Psは、補正係数P1、P2から算出可能であるので、補正係数記憶部64に補正係数P1、P2と別に、単純平均補正係数Psを記憶しておく必要がない。
不完全交互記録モードでは、キャリッジ2を走査方向に往復移動させ、後述するように記録する画像に応じて、各単位画像Uを、上述の第1記録動作及び第2記録動作のいずれかによって選択的に記録し、記録用紙Sを距離F1ずつ間欠的に搬送しつつ、上記第1記録動作及び第2単位記録動作のいずれかによる単位画像Uの記録を繰り返すことによって記録を行う。
不完全交互記録モードでも、完全交互記録モードと同様、図8(a)に示すように、第1記録動作によって記録された単位画像Uの縁E1がA方向に対してθ1+θ3だけ傾き、第2記録動作によって記録された単位画像Uの縁E1がA方向に対してθ1−θ3だけ傾く。ここで、不完全交互記録モードでは、隣接する2つの単位画像Uが、(i)いずれも第1記録動作によって記録された単位画像Uである場合、(ii)いずれも第2記録動作によって記録された単位画像Uである場合、(iii)一方が第1記録動作によって記録された単位画像Uで、他方が第2記録動作によって記録された単位画像Uである場合、があり得る。
そして、(i)の場合には、第1片方向記録モードの場合と同様、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向上流側の単位画像Uの搬送方向下流側の縁E2が、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2に対してD1(=F1・(θ1+θ2+θ3))だけ走査方向の右側にずれる。また(ii)の場合には、第2片方向記録モードの場合と同様、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向上流側の単位画像Uの搬送方向下流側の縁E2が、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2に対してD2(=F1・(θ1+θ2−θ3))だけ走査方向の右側にずれる。また、(iii)の場合には、完全交互記録モードの場合と同様、隣接する2つの単位画像Uのうち、搬送方向上流側の単位画像Uの搬送方向下流側の縁E2が、搬送方向下流側の単位画像Uの搬送方向上流側の縁E2に対してDs(=F1・(θ1+θ2))だけ走査方向の右側にずれる。各単位画像Uの記録動作において、隣接する2つの単位画像Uの縁E2同士のズレがすべて0になるような補正値を個別に算出して適用することは、印刷開始前にその画像の何番目の単位画像を第1記録動作及び第2記録動作のどちらで記録するかが確定していれば原理的には可能である。しかしながら実際には記録開始前にはこれらの情報全てが記録装置に渡されていない、あるいは渡されていても上記補正値を算出するリソースが不足する場合が多い。
そこで、本実施の形態では、不完全交互記録モードで記録を行う場合に、補正量決定部63は、補正係数記憶部64に記憶された補正係数P1、P2を、不完全交互記録モードで画像Gの記録を行う場合の第1記録動作の回数T1及び第2記録動作の回数T2を用いて加重平均した加重平均補正係数Pr(双方向補正係数)を算出する。具体的には、Pr=(P1・T1+P2・T2)/(T1+T2)によって加重平均補正係数Prを算出する。そして、補正量決定部63は、算出された加重平均補正係数Prを用いて各単位画像Uに対する補正量を決定する。記録制御部65は決定された補正量に応じて各単位画像Uを記録する。
具体的には、例えば、図8(b)に示すように、5つの単位画像U1〜U5で画像Gを記録する場合を例として説明する。第1片方向記録モードの場合と同様、単位画像Ukを記録するときの累積搬送量をGkと表現できる(k=1,2,3,4,5)。累積搬送量がある位置G0であるような単位画像U0が存在するとき、U0を、基準タイミングでインクを吐出する場合と同じ位置に記録する(補正量を0とする)。そして、各単位画像Ukを記録するときの補正量をHk=Pr・(Gk−G0)として決定する。ただしHkが正のときの補正量が、画像が走査方向の左側にずれる向きの補正量とする。このとき、隣接する単位画像の補正量の差はHk+1−Hk=Pr・(Gk+1−Gk)=P1・F1=D1であるから、隣接する単位画像Uの上記縁E2同士のズレが解消される。たとえばU0がU3に一致する場合は、中央の単位画像U3から搬送方向下流側に数えてN番目(N=1、2)の単位画像U2、U1は、HN=Pr・(G3−N−G3)=−N・Pr・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・Pr・F1だけ走査方向の右側に補正された位置に記録することになる。また、単位画像U3から搬送方向上流側に数えてN番目の単位画像U4、U5は、HN=Pr・(G3+N−G3)=N・Pr・F1より、基準タイミングでインクが吐出されたとした場合から、N・P1・F1だけ走査方向の左側に補正された位置に記録することになる。
また、図8(b)の例では、搬送方向上流側から数えて、1、4、5番目の単位画像U1、U4、U5が第1記録動作によって記録され、2、3番目の単位画像U2、U3が第2記録動作によって記録されている。したがって、5つの単位画像Uのうち3つの単位画像U1、U4、U5が第1記録動作によって記録され、残り2つの単位画像U2、U3が第2記録動作によって記録される。そのため、T1=3、T2=2となり、加重平均補正係数Prは、Pr=0.6・P1+0.4・P2となる。
ただし、このように各単位画像Uの記録を行った場合には、図8(b)に示すように、隣接する単位画像Uの縁E2同士のズレは完全には解消されない。しかしながら、1つの補正係数を用いて補正量を決定する場合には、補正係数を上述したような加重平均補正係数Prとすることにより、上記単位画像U同士の平均のズレを最小にすることができる。また、このとき、加重平均補正係数Prは、補正係数P1、P2から算出可能であるので、補正係数記憶部64に補正係数P1、P2と別に、加重平均補正係数Prを記憶しておく必要がない。
このように、ノズル10の配列方向が、記録用紙Sの記録面Saに対して傾いている場合には、第1片方向記録モードや、第1記録動作のように、キャリッジ2を右側に移動させつつ、ノズル10からインクと吐出させることによって単位画像Uを記録した場合と、第2片方向記録モードや、第2記録動作のように、キャリッジ2を左側に移動させつつ、ノズル10からインクと吐出させることによって単位画像Uを記録した場合とで、単位画像Uの縁E1のA方向に対する傾きが異なる。そのため、上述したように、隣接する単位画像Uの縁E2同士の走査方向のズレ量が、記録モードによって異なってくる。
なお、第1記録動作で記録された単位画像Uの縁E1のA方向に対する傾き(θ1+θ3)と、第2記録動作で記録された単位画像Uの縁E1のA方向に対する傾き(θ1−θ3)との違いは、ノズル10の配列方向の記録面Saに対する傾きφの他、キャリッジ2を走査方向の右側に移動させたときと左側に移動させたときのキャリッジ2の歪み方の違い等によっても生じる。
本実施の形態では、上記のとおり、第1片方向記録モード、第2片方向記録モードに対して設定された補正係数P1、P2と、双方向記録モード(完全交互記録モード及び不完全交互記録モード)に対して設定された補正係数Ps又はPrを用いて、各単位画像Uに対する吐出タイミングの補正量を決定している。したがって、各記録モードにおいて、隣接する単位画像Uの縁E2同士の走査方向のズレを適切に補正することができる。
また、上記傾き傾きθ1、θ2、θ3に対して、補正係数P1、P2、Ps、Prは、それぞれ、P1=θ1+θ2+θ3、P2=θ1+θ2−θ3、Ps=θ1+θ2、Pr=(θ1・T1+θ2・T2)/(T1+T2)のように、P1とP2は互いに独立であり、PsやPrはP1とP2の値に伴って決まるように設定されている。したがって、第1片方向記録モードと第2片方向記録モードのそれぞれに対して隣接する単位画像Uの縁E2同士の走査方向のズレを適切に補正することができ、なおかつ、双方向記録モードの走査方向のズレを補正するために第3の補正係数を取得・保持していなくても、補正係数P1、P2からPsまたはPrを算出して使用することで双方向記録モードに対して隣接する単位画像Uの縁E2同士の走査方向のズレを適切に補正することができる。
なお、当然のことではあるが、このような関係にある補正係数P1、P2、Ps、Prは、別の見方をすれば、例えば、補正係数P1、P2のうちいずれか一方の補正係数と、補正係数Ps、Prのいずれか一方の補正係数とが、互いに独立であり、これら2つの補正係数に伴って残りの補正係数が決まるように設定されていると捉えることもできる。したがって、本実施の形態では、第1片方向記録モードに対する補正係数P1と、双方向記録モードに対する補正係数Ps又はPrとが、互いに独立に設定されている。
ここで、補正係数P1、P2、Ps、Prは、以上に説明したように、補正係数を用いて決定された各単位画像Uに対する補正量が、隣接する2つの単位画像Uの互いに重なる部分(本実施の形態では縁E2)同士のズレを低減する補正量となるような補正係数であり、好ましくは、隣接する2つの単位画像Uの互いに重なる部分同士のズレを完全になくす補正量となるような補正係数である。隣接する2つの単位画像Uの間のズレを完全になくす補正量とは、搬送量F1あたりの補正量の変化率に他ならない。したがって、補正係数は、搬送量と補正量の関係式に現れる係数として表現される。
また、本実施の形態では、各記録モードにおいて、一例として、中央の単位画像U3を走査方向に補正せずに記録し、中央の単位画像U3よりも搬送方向上流側の単位画像U1、U2を走査方向の右側に補正された位置に記録し、中央の単位画像U3よりも搬送方向下流側の単位画像U4、U5を走査方向の左側に補正された位置に記録している。また、中央の単位画像U3から同じ距離だけ離れた、単位画像U1とU5、及び、単位画像U2とU4において、走査方向への補正量の大きさが同じになっている。このため、最終的に記録される画像Gは、単位画像U1〜U5を全て基準タイミングでインクを吐出することによって記録した場合と比較して、走査方向の片側に偏ることがない。したがって、基準タイミングでインクを吐出することによってすべての単位画像Uを記録した場合と比較して、画像Gが記録された記録用紙Sの走査方向の両側の余白の面積差が大きくなってしまうのを防止することができる。
次に、各記録モードの使い分けについて説明する。完全交互記録モードでは、キャリッジ2が走査方向に1回往復移動する間に、常に第1記録動作と第2記録動作の両方が一度ずつ行われる。これに対して、第1、第2片方向記録モードでは、キャリッジ2が走査方向に1回往復移動する間に、第1記録動作及び第2記録動作の一方のみが行われる。したがって、記録速度の面では、双方向記録モードが、第1片方向記録モード及び第2片方向記録モードよりも有利である。
一方、完全交互記録モードで記録された場合には、キャリッジ2を右側に移動させるときに記録を行う第1記録動作により記録された単位画像Uと、キャリッジ2を左側に移動させるときに記録を行う第2記録動作によって記録された単位画像Uとが交互に隣接して並ぶ。これに対して、第1片方向記録モードでは、キャリッジ2を右側に移動させるときに記録を行う第1記録動作で記録された単位画像U同士が隣接して並び、キャリッジ2を左側に移動させるときに記録を行う第2片方向記録モードでは、第2記録動作で記録された単位画像Uが隣接して並ぶ。前述のように、基準タイミングは、装置が理想的であるとした場合、すなわち、ノズル10の配列方向が、記録用紙Sの記録面と完全に平行であるとともに、走査方向に対して完全に直交しており、走査方向と搬送方向とが完全に直交しており、ノズルと記録用紙の間隔が設計値に等しく、キャリッジの移動速度およびインク滴の飛翔速度が設計値に等しいとした場合に着弾ズレが生じないように決められている。これらのうちノズルと記録用紙の間隔(上記傾きφ)、キャリッジの移動速度、及びインク滴の飛翔速度の、上記理想的であるとした場合からのズレは、双方向記録モードでの記録においてのみ、隣接する単位画像U間の相対的な位置ズレの原因になり、第1片方向記録モード、及び、第2片方向記録モードでの記録においては隣接する単位画像U間の相対的な位置ズレの原因にならない。したがって、上記補正を行った場合でも、完全交互記録モードでは、第1、第2片方向記録モードに対して、単位画像Uの間に走査方向のズレが生じやすい。すなわち、画質の面では、第1、第2片方向記録モードが、双方向記録モードよりも有利である。
これらのことから、完全交互記録モードは、例えば、テキストの記録など、画質よりも記録速度が要求されるような画像の記録に用いられ、第1、第2片方向記録モードは、例えば、写真の記録など、記録速度よりも画質が要求されるような画像の記録に用いられる。
また、第1片方向記録モードと第2片方向記録モードとを比較すると、記録用紙Sのある部分に各色のインク滴を重ねて着弾させる場合、第1片方向記録モードでは、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの順にインク滴が着弾するのに対して、第2片方向記録モードでは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順にインク滴が着弾する。そして、第1片方向記録モードと第2片方向記録モードとでは、このようなインク滴の着弾順序の違いにより、記録される画像の色に差が生じる。したがって、高画質で記録を行う場合において、記録用紙Sの種類や記録される画像の種類などに応じて、第1片方向記録モードと第2片方向記録モードとを使い分ける。例えば、記録用紙Sが普通紙である場合に第1片方向記録モードで記録を行い、記録用紙Pが光沢紙である場合に第2片方向記録モードで記録を行う。また、上記の原因により、双方向記録モードでは異なる色合いの画像が隣接することになってしまう場合があり、この点からも画質の面では、第1、第2片方向記録モードが、双方向記録モードよりも有利である。
不完全交互記録モードでは、画像Gのある部分を形成する単位画像Uを、完全交互記録モードと同様に、第1記録動作と第2記録動作とを交互に行うことによって記録し、画像Gの他の部分を形成する単位画像Uを、第1片方向記録モードあるいは第2片方向記録モードと同様に、第1記録動作のみ、あるいは、第2記録動作のみによって記録することが可能である。そこで、不完全交互記録モードは、例えば、テキストなど高い画質が要求されない部分と、写真など高い画質が要求される部分とが混在する画像の記録に用いられる。なお、画像Gのある部分を形成する単位画像Uを第1記録動作のみによって記録するか、第2記録動作のみによって記録するかは、上述のインク滴の着弾順序の違いによって生じる色の違いに応じて使い分けたり、直前の動作後のキャリッジの位置から、所要時間が最短になる方向の動作を選択したりする。
次に、補正係数記憶部64に記憶する補正係数P1、P2を決定する方法について説明する。補正係数P1、P2を決定するためには、インクジェットプリンタ1の製造段階などに、キャリッジ2を走査方向の右側に移動させつつ、図9(a)に示す、複数のノズル10のうち、配列方向に長さYにわたって延びた所定の領域Ra内に位置するノズル10a、及び、領域Raから搬送方向下流側にF2だけ離れた配列方向に長さYにわたって延びた所定の領域Rb内に位置するノズル10bからそれぞれインクを吐出することによって、記録用紙Sに搬送方向に並ぶ複数のパターンC1を記録する。各パターンC1は、ノズル10aから吐出されたインク滴によって形成される配列方向に延びた直線L11と、ノズル10bから吐出されたインク滴によって形成される配列方向に延びた直線L12とが、走査方向に並んだパターンである。このとき、ノズル10aから基準タイミングでインク吐出させて各パターンC1の直線L11を記録する。また、基準タイミングでノズル10bからインクを吐出して、複数のパターンC1のうち搬送方向における中央に位置するパターンC2の直線L12を記録するとともに、パターンC1間で、直線L12を記録するためのノズル10bからのインクの吐出タイミングを少しずつずらす。また、このとき、図9(b)に示すように、記録用紙Sの各パターンC1から走査方向の左側にずれた領域に、パターンC1を識別するための識別番号71を記録する。
また、キャリッジ2を走査方向の左側に移動させつつ、ノズル10a、10bからそれぞれインクを吐出することによって、記録用紙Sに、搬送方向に並ぶ複数のパターンC2を記録する。各パターンC2は、ノズル10aから吐出されたインク滴によって形成される配列方向に延びた直線L21と、ノズル10bから吐出されたインク滴によって形成される配列方向に延びた直線L22とが、走査方向に並んだパターンである。このとき、ノズル10aから基準タイミングでインク吐出させて各パターンC2の直線L21を記録する。また、基準タイミングでノズル10bからインクを吐出して、複数のパターンC2のうち搬送方向における中央に位置するパターンC2の直線L22を記録するとともに、パターンC2間で、直線L22を記録するためのノズル10bからのインクの吐出タイミングを少しずつずらす。また、このとき、図9(b)に示すように、記録用紙Sの各パターンC2から走査方向の左側にずれた領域に、パターンC2を識別するための識別番号72を記録する。
なお、図9(b)では、パターンC1とパターンC2とを、同じ記録用紙Sに、走査方向に並べて記録しているが、パターンC1とパターンC2とを、同じ記録用紙Sのこれとは異なる領域に記録してもよいし、パターンC1とパターンC2とを、異なる記録用紙Sに記録してもよい。また、図9(b)では、複数のパターンC1を搬送方向に並べて記録しているが、複数のパターンC1を、走査方向に並べて記録するなどしてもよい。また、図9(b)では、複数のパターンC2を搬送方向に並べて記録しているが、複数のパターンC2を、走査方向に並べて記録するなどしてもよい。
ここで、上記理想的であるとした場合には、上述したようにして複数のパターンC1、C2を記録すると、図9(c)に示すように、中央に位置するパターンC1において直線L11と直線L12とが重なり、中央に位置するパターンC2において直線L21と直線L22とが重なる。
これに対して、ノズル10の配列方向の、A方向に対する傾きθ1、B方向の走査方向に対する傾きθ2、ノズル10の配列方向の記録面Saに対する傾きφがある場合には、図9(b)に示すように、中央に位置するのとは異なるパターンC1において、直線L11と直線L12とが重なり、中央に位置するのとは異なるパターンC2において、直線L21と直線L22とが重なる。そして、直線L11と直線L12が重なるパターンC1を形成する直線L12の、中央に位置するパターンC1を形成する直線L12に対する走査方向のズレをI1とすると、I1=F2・(θ1+θ2+θ3)となる。また、直線L21と直線L22とが重なるパターンC2を形成する直線L22の、中央に位置するパターンC2を形成する直線L22に対する走査方向のズレをI2とすると、I2=F2・(θ1+θ2−θ3)となる。したがって、I1、I2の値、及び、距離F1とF2との比から、補正係数P1、P2の値を算出することができる。
そこで、本実施の形態では、上述したようにして記録用紙Sに複数のパターンC1、C2を記録した後、インクジェットプリンタ1を製造する作業者等に、記録用紙Sに記録されたパターンC1、C2を目視で確認させ、直線L11と直線L12とが重なっているパターンC1の識別番号71、及び、直線L21と直線L22とが重なっているパターンC2の識別番号72を、インクジェットプリンタ1の図示しない操作部の操作などによって入力させる。そして、識別番号71、72の入力が行われると、補正係数記憶部64に、入力された識別番号71、72に対応する補正係数P1、P2の値が書き込まれる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
上述の実施の形態では、不完全交互記録モードにおける補正係数を、Pr=(P1・T1+P2・T2)/(T1+T2)によって算出される加重平均補正係数Prとしたが、不完全交互記録モードにおける補正係数を、補正係数P1、P2と、不完全交互記録モードで画像Gを記録するときの、第1記録動作の回数T1と第2記録動作の回数T2に基づいて算出される他の値としてもよい。さらには、不完全交互記録モードにおける補正係数を、画像Gを記録するときの第1記録動作の回数T1と第2記録動作の回数T2によらず、完全交互記録モードと同様に、補正係数P1とP2とを単純平均した単純平均補正係数してもよい。これらの場合でも、不完全交互記録モードにおける、隣接する単位画像Uの縁E2同士の走査方向のズレをある程度は補正することができる
また、上述の実施の形態では、補正係数記憶部64に、第1片方向記録モード及び第2片方向記録モードに対する補正係数P1、P2を記憶しておき、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードにおける補正係数を、補正係数P1、P2から算出するようにしていたが、補正係数記憶部64に、第1片方向記録モード及び第2片方向記録モードに対する補正係数P1、P2と別に、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードに対する補正係数を記憶しておいてもよい。この場合には、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードに対する補正係数を、単純平均補正係数Psや加重平均補正係数Prのような補正係数P1、P2から算出される値とは異なる値とすることもできる。すなわち、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードに対する補正係数を、補正係数P1、P2に対して独立して設定してもよい。
また、上述の実施の形態では、不完全交互記録モードにおいて、1つの加重平均補正係数Prを用いて、各単位画像Uに対する吐出タイミングの補正量を決定するようになっていたが、これには限られない。記録を行う前に、各単位画像Uが第1記録動作及び第2記録動作のどちらで記録されるのかがわかっている場合には、ある単位画像Uに対する補正量を、当該単位画像U、及び、その直前に記録される単位画像Uが、それぞれ、第1、第2記録動作のどちらで記録されるものであるかの関係によって決まる補正係数(例えば、補正係数P1、P2、Psのいずれか)を用いて決定してもよい。
また、上述の実施の形態では、記録時の、記録用紙Sの1回の搬送距離F1が、K・cos(θ1+θ2)に近い値すなわちノズル長さKに近い値となっていたが、搬送距離F1は実際の記録用紙Sの搬送として有り得る全ての搬送距離を取り得る。例えば、同じ領域に2回重ねて記録することでノズル分解能の2倍の分解能の画像を得るようなモードでは、F1はKの約半分の長さの一定値になったり、Kの約x倍と約1−x倍の搬送を交互に繰り返したり、様々な組み合わせを取り得る。この場合にも、各記録モードにおける、上記単位画像Uの互いに重なる部分同士のズレ量と、補正量との関係は、上述の実施の形態の場合と同じ補正係数で結びつけられた関係となるため、上述の実施の形態と同様、上記単位画像Uの縁E2同士のズレを解消することができる。
また、上述の実施の形態では、基準タイミングでインクを吐出させることによって、中央の単位画像U3を記録したが、単位画像U3以外の単位画像Uを、基準タイミングでインクを吐出させることによって記録してもよい。ただし、この場合には、基準タイミングでインクを吐出することによってすべての単位画像Uを記録した場合と比較して、画像Gが全体として走査方向の片側に偏ってしまう。また、実際の単位画像を記録する位置とは異なる位置、たとえばU3とU4の中間を基準位置としてもよい(つまりG0=(G3+G4)/2)。
また、上述の実施の形態では、第1片方向記録モード、第2片方向記録モード、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードの4つの記録モードのうち、いずれかの記録モードで選択的に記録を行うことができるようになっていたが、これには限られない。例えば、双方向記録モードとして、完全交互記録モード及び不完全交互記録モードのいずれか一方の記録モードでのみ記録を行うことができるようになっていてもよい。あるいは、片方向記録モードとして、第1片方向記録モード及び第2片方向記録モードのいずれか一方記録モードでのみ記録を行うことができるようになっていてもよい。あるいは、第1片方向記録モード及び第2片方向記録モードの2つの記録モードのいずれかでのみ記録を行うことができるようになっていてもよい。
このとき、2つの記録モードのいずれかで記録を行うことができるようになっている場合には、これら2つの記録モードに対して互いに独立に補正係数を設定すればよい。また、3つ以上の記録モードのいずれかで記録を行うことができるようになっている場合には、これら3つ以上の記録モードのうち、少なくとも2つの記録モードに対して互いに独立に補正係数を設定すればよい。
なお、上述の実施の形態では、便宜上、キャリッジ2が走査方向の右側に移動するときにのみインクを吐出する記録モードを第1片方向記録モードとし、キャリッジ2が走査方向の左側に移動するときにのみインクを吐出する記録モードを第2片方向記録モードとし、これに合わせて、双方向記録モードにおいて、キャリッジ2が走査方向の右側に移動するときにインクを吐出して単位画像Uを記録する動作を第1記録動作とし、キャリッジ2が走査方向の左側に移動するときにインクを吐出して単位画像Uを記録する動作を第2記録動作としていたが、第1片方向記録モードと第2片方向記録モード、及び、第1記録動作及び第2記録動作が、それぞれ、上述したのと逆であってもよい。
また、上述の実施の形態では、インクジェットプリンタ1を製造する作業者などに、複数のパターンC1、C2を目視で確認させ、直線L11と直線L12が重なるパターンC1に対応する識別番号71、及び、直線L21と直線L22とが重なるパターンC2に対応する識別番号72をインクジェットプリンタ1に入力させることで、補正係数記憶部64への補正係数P1、P2の書き込みを行ったが、これには限られない。例えば、インクジェットプリンタ1が、スキャナを備えた複合機である場合に、複数のパターンC1、C2が記録された記録用紙Sをスキャナに読み取らせ、その読み取り結果に応じて補正係数記憶部64への補正係数の書き込みが行わるようになっていてもよい。また、目視による確認やスキャナによる読み取り作業は、インクジェットプリンタ1を製造する作業者ではなく、製品を使用するユーザなどに行わせてもよい。
また、上述の実施の形態では、着弾位置を補正するために吐出タイミングすなわち吐出指令が出てから実際に吐出するまでの時間に対する補正を用いたが、吐出指令を出す位置に対して直接に位置的な補正を行ってもよい。(着弾位置ズレ)=(キャリッジ速度)・(吐出タイミングズレ)であるから、位置の補正であっても時間の補正と本質的に同様の補正を行うことができる。
また、上述の実施の形態では、補正量は補正係数に搬送量を乗じる線形の関係から算出したものをそのまま用いたが、他の関係にあってもよい。例えば、単位画像Uは、補正量が大きい場合ほど、基準タイミングでインクを吐出させた場合に対して大きく走査方向に補正された位置に記録される。そのため、ある単位画像Uに対する補正量があまりに大きいと、記録用紙Sの当該単位画像Uの走査方向両側の余白の面積の差が大きくなりすぎてしまうことがある。そこで、記録用紙Sの各単位画像Uの走査方向両側の余白の面積の差が大きくなりすぎるのを防止する観点から、算出された補正量がある上限値を超えるときには、所定量をある上限値で頭打ちとして適用するなど、補正量と搬送量の関係が非線形であってもよい。