JP5662746B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
従来、リチウムイオン二次電池における非水電解液の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などの環状炭酸エステル類が高誘電率を有するため好適であることが知られている。特に、PCは、融点が低い(−49℃程度)ため、低温特性を高める観点から好ましいことが知られている。しかしながら、負極材料として結晶性の高い炭素材料である黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池では、充電時に、PCによって溶媒和されたLi+イオンが黒鉛のグラフェン層に共挿入されて黒鉛の層間が剥離したり、黒鉛との接触によってPCが分解するなどして、充電が良好に進行しないことがあった。
そこで、負極活物質として表面の少なくとも一部が黒鉛よりも結晶性の低い低結晶性炭素材料で被覆された黒鉛を用い、非水電解液としてプロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒にLiPF6とリチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)とを溶解させたものを用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。このリチウムイオン二次電池では、黒鉛を被覆している低結晶性炭素によって黒鉛の非水電解液との接触が抑制されるため、充放電を良好に行うことができる。このとき、LiBOBはPCと溶媒和し、負極活物質表面での分解によって生じた生成物が粘着性ポリマーの機能を示し、これにより黒鉛の表面から低結晶性炭素が剥離するのを抑制する役割を果たす。
特開2008−91236号公報
しかしながら、特許文献1に記載のリチウムイオン二次電池では、負極活物質を低結晶性炭素被覆黒鉛とする必要があったり、電解液溶媒中のPC濃度を30体積%未満とする必要があるなどの制約があった。このため、黒鉛系負極とPC系電解液を用いたものにおいて、より容易に電池特性を高めることができるリチウムイオン二次電池の開発が望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、黒鉛系負極とPC系電解液を用いたものにおいて、より容易に電池特性を高めることができるリチウムイオン二次電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、黒鉛系負極とPC系電解液を用いたリチウムイオン二次電池おいて、非水電解液を、一般式(1)で表される化合物(以下PFOとも称する)を含み、非水電解液中のPFO量A(mol)と、黒鉛の表面積B(m2)とが所定の関係を満たすものとしたところ、充放電可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
Figure 0005662746
即ち、本発明のリチウムイオン二次電池は、
リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を有する正極と、
黒鉛を含む負極活物質を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し、プロピレンカーボネートを含む非水溶媒と、一般式(1)で表される化合物を含み、非水電解液中の前記一般式(1)で表される化合物の量をA(mol)、前記黒鉛の表面積をB(m2)とすると、0.5×10-4≦A/B≦5.0×10-4を満たす非水電解液と、
を備えたものである。
このリチウムイオン二次電池は、負極に黒鉛を用いた場合でも、非水溶媒としてPCを使用したものにおいてより容易に電池特性を高めることができる。このような効果が得られる理由は定かではないが、例えば黒鉛表面に低結晶性炭素材料を被覆するなどの処理をしなくても、非水溶媒および一般式(1)で表される化合物の一部が初期充放電時に電極上で分解して適量の安定なSEI被膜を黒鉛表面に形成し、黒鉛によるPCの分解や、黒鉛の層間剥離が抑制されるためと考えられる。
リチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図である。 A/Bと充放電効率との関係を表すグラフである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する非水電解液と、を備えたものである。
本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、例えばリチウムを吸蔵放出可能な正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質には、黒鉛が含まれるが、リチウムを吸蔵・放出可能であるものとすれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛,鱗状黒鉛)、人造黒鉛などを用いることができる。この黒鉛は、BET法で測定した比表面積が0.7m2/g以上1300m2/g以下であることが好ましく、1m2/g以上10m2/g以下であることがより好ましい。0.7m2/g以上であればリチウムの挿入脱離を十分に行うことができ、1300m2/g以下であれば負極の体積が大きくなりすぎないと考えられるからである。ここで、黒鉛の比表面積は、液体窒素温度で窒素ガスを吸着させて測定したBET比表面積をいうものとする。負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の非水電解液は、プロピレンカーボネートを含む非水溶媒と、一般式(1)で表される化合物(PFO)を含み、PFO量をA(mol)、上述した負極活物質に含まれる黒鉛の表面積をB(m2)とすると、0.5×10-4≦A/B≦5.0×10-4を満たすものである。このうち、1.0×10-4≦A/B≦2.3×10-4を満たすものであることが好ましい。PFOの一部は、電池の初期充放電によって電極上で分解し、活物質表面に安定なSEI被膜を形成すると考えられるが、A/Bが0.5×10-4以上であれば、負極活物質表面に安定なSEI被膜が十分に形成され充放電可能であり、5.0×10-4以下であれば、形成される被膜が厚くなりすぎず、充放電反応を阻害しないと考えられるからである。なお、この際、PFOが分解して形成した被膜にはフッ素が含まれると考えられるが、このフッ素は、電気陰性度、電子親和力、イオン化エネルギーが大きく、水素結合にも関与するなど特異な性質を示すものである。そして、PCにより溶媒和されたLi+イオンがSEI被膜を通過する際に、このようなフッ素との相互作用によりPCが脱溶媒和しやすくなり、黒鉛のグラフェン層への共挿入が防止されるため、リチウムイオンの挿入及び脱離がスムーズに行われ、充放電可能で充放電効率などの電池特性に優れる電池とすることができるものと考えられる。また、充放電の繰り返しによる負極の劣化を抑制することができると考えられる。ここで、一般式(1)において、M+は、Li+,Na+,K+,NH4+および4級アルキルアンモニウムイオンから選択される1種以上である。このうち、Li+であることが好ましい。また、PFOの濃度としては、0.03mol/l以上0.5mol/l以下であることが好ましく、0.05mol/l以上0.3mol/l以下であることがより好ましい。0.03mol/l以上であれば安定なSEI被膜を形成可能であり、0.5mol/l以下であれば形成するSEI被膜の厚さが厚くなりすぎず充放電効率の低下を抑制可能であると考えられるからである。
Figure 0005662746
また、この非水電解液は、上述したPFOとその他の支持塩とをプロピレンカーボネートを含む非水溶媒に溶かしたものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4,LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(CF3CF2SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiClO4,LiAsF6,などの公知の支持塩を用いることができ、このうち、LiPF6,LiBF4,LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(CF3CF2SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23から選択される1種以上であることが好ましく、LiPF6であることがより好ましい。支持塩の濃度としては、0.1mol/l以上2.0mol/l以下であることが好ましく、0.8mol/l以上1.2mol/l以下であることがより好ましい。非水溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)を含んでいればよいが、このほかに、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)など従来の二次電池やキャパシタに使われる非水溶媒などを含んでもよい。このうち、EMC,DEC,DMCなどの鎖状カーボネートを用いることが好ましい。なお、低温特性を高めたい場合などには、ECなどの高融点溶媒は含まない又は少量であることが好ましい。ところで、非水電解液としては、低温特性を高める観点などから、低融点溶媒であるPCの割合が高い非水溶媒を用いることが好ましい。一方で、従来のリチウムイオン二次電池では、PCを多く用いるとPCが黒鉛系負極と反応するなどして電池特性を低下させてしまうことがあった。例えば、上述した特許文献1に記載の電池では、PCを30体積%以上含むものを用いた場合には、充放電を行うことができなかった。しかし、本発明のリチウムイオン二次電池では、PCを50体積%含むものであっても充放電反応が進行し、充放電効率などの電池特性を高めることができる。よって、従来充放電を行うことが難しかった、PCを30体積%以上含むものであっても、充放電反応が進行し、充放電効率などの電池特性を高めることができると考えられる。また、PCを多く含むものとすることで、低温特性に優れたリチウムイオン二次電池とすることができると考えられる。以上のことから、非水溶媒は、PCを30体積%以上含むものであることが好ましく、50体積%以上含むものであることがより好ましい。一方、PCを30体積%以下の範囲で含むものとしても、黒鉛負極との反応などがより抑制され、充放電効率などの電池特性をより高めることができると考えられる。なお、黒鉛系負極を保護する観点などからPCを90体積%以下や70体積%以下で含むものとしてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、二次電池の使用範囲に耐え得る組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明のリチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウムイオン二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水電解液20と、を備えたものである。このリチウムイオン二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。ここで、負極活物質17は、黒鉛を含むものであり、非水電解液20はプロピレンカーボネートを含む非水溶媒と、一般式(1)で表される化合物(PFO)を含み、非水電解液中のPFO量をA(mol)、前記黒鉛の表面積をB(m2)とすると、0.5×10-4≦A/B≦5.0×10-4を満たすものである。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、リチウムイオン二次電池を具体的に作製した例を実施例として説明する。
(リチウムイオン二次電池の作製)
[実施例1]
正極活物質としてLiNi0.75Co0.15Al0.05Mg0.052を各金属の硝酸塩を原料として周知の共沈法で合成した。この正極活物質を85重量%、導電材としてのカーボンブラックを10重量%、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。これらスラリー状合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、52mm×450mmに切り出して正極シート(正極電極)とした。次に、負極活物質として人造黒鉛(大阪ガスケミカル製)を用い、この負極活物質を95重量%、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散してスラリー状合材とした。この人造黒鉛は、BETによって測定した比表面積が1.35m2/gであった。これらスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、54mm×500mmに切り出して負極シート(負極電極)とした。この負極電極中の黒鉛重量は3.0gであった。このようにして作製した正極シート及び負極シートを25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状電極体を作製して18650型円筒ケースに挿入した。次に、LiPF6を1mol/lとなるように溶解したポリカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを等体積で混合した非水溶媒に、一般式(1)におけるMがLiである化合物(以下LPFOとも称する)を0.30mmol溶解して非水電解液を調整した。そして、調製した非水電解液を上述した18650型円筒ケースに含浸させ、密閉して円筒形の電池を作製した。このようにして実施例1の電池を得た。
[実施例2〜5]
LPFOが0.45mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電池を得た。また、LPFOが0.60mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電池を得た。また、LPFOが0.90mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の電池を得た。また、LPFOが1.50mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の電池を得た。
[比較例1〜4]
LPFOを加えないで非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電池を得た。また、LPFOが0.09mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電池を得た。また、LPFOが2.10mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電池を得た。また、LPFOが2.70mmolとなるように溶解して非水電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の電池を得た。
(充放電試験)
上述のように作製した電池を、20℃の温度条件下で、電流密度2mA/cm2の定電流で充電上限電圧4.1Vまで充電を行い、次いで、電流密度2mA/cm2の定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を行った。このとき、充電容量(mAh/g)および放電容量(mAh/g)を測定し、放電容量を充電容量で除したものに100を乗じて充放電効率(%)を求めた。表1には、実施例1〜5及び比較例1〜4の充放電試験の結果を示した。また、LPFO量をA(mol)、人造黒鉛の表面積をB(m2)で表したときのA/Bの値も示した。図2には、A/Bと充放電効率との関係を表すグラフを示した。
Figure 0005662746
(実験結果)
A/Bが0.5×10-4未満である比較例1,2では、充放電反応が進行しなかった。また、A/Bが5.0×10-4より大きい比較例3,4では、充放電反応は進行したものの、充放電効率が90%未満であった。これに対し、A/Bが0.5×10-4以上5.0×10-4以下の実施例1〜5では、90%以上の高い充放電効率が得られた。このように、実施例1〜5で高い充放電効率が得られた理由としては、A/Bが0.5×10-4以上であれば、非水電解液中のPCの分解を抑制可能であり、A/Bが5.0×10-4以下であれば、活物質表面に形成される被膜の厚さが厚くなり過ぎず充放電効率の低下を抑制可能なためと推察された。更に、図2より、A/Bが1.0×10-4以上2.3×10-4以下であれば、充放電効率が95%以上のより高い充放電効率が得られることが分かった。また、実施例1〜5より、負極活物質として黒鉛を用いたものであっても、充放電反応が良好に進行し、高い充放電効率が得られることが分かった。このことから、このリチウムイオン二次電池は、低結晶性炭素を黒鉛表面に被覆する必要があり黒鉛表面に被覆した低結晶性炭素の脱落等を防止する目的で電解液にLiBOBを添加する特許文献1に記載の電池とは異なる機構で充放電効率を高めているものと推察された。また、電解液溶媒中のPCが50体積%という高い濃度でも充放電反応が良好に進行し、高い充放電効率が得られることが分かった。さらに、電解液溶媒中のPCが多いほどPCの分解などの抑制が困難となり充放電効率が低下する傾向があると考えられるため、電解液溶媒中のPCが50体積%以下(例えば30体積%など)であれば、より高い充放電効率が得られるものと推察された。このような効果が得られる理由としては、例えば、PFOがフッ素を有していること、PFOが2つの環状構造を有していること、A/Bの範囲が適切であることなどによって、より好適なSEI被膜が活物質表面に形成されているためと推察された。以上より、本発明のリチウムイオン二次電池では、高い充放電効率が得られるなど、電池特性を高めることができることが分かった。
10 リチウムイオン二次電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。

Claims (3)

  1. リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を有する正極と、
    黒鉛を含む負極活物質を有する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在し、プロピレンカーボネートを含む非水溶媒と、一般式(1)で表される化合物を含み、非水電解液中の前記一般式(1)で表される化合物の量をA(mol)、前記黒鉛の表面積をB(m2)とすると、0.75×10-4≦A/B≦3.75×10-4を満たす非水電解液と、
    を備えたリチウムイオン二次電池。
    Figure 0005662746
  2. 前記非水電解液は、1.0×10-4≦A/B≦2.3×10-4を満たすものである、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記非水溶媒は、プロピレンカーボネートを30体積%以上含むものである、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
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