JP6870515B2 - リチウムイオンキャパシタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
炭素材料を正極活物質として有する正極と、
二酸化タングステンを負極活物質として含み、LixWO2における放電状態のLi吸蔵量xが0.10≦x≦0.60の範囲に含まれ、Li基準電位で該二酸化タングステンの0.78V以上1.05V以下の電位範囲が充放電に使用される負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
炭素材料を正極活物質として有する正極と、二酸化タングステンを負極活物質として含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたリチウムイオンキャパシタの製造方法であって、
LixWO2における放電状態のLi吸蔵量xが0.10≦x≦0.60の範囲に含まれるよう前記二酸化タングステンにリチウムイオンを吸蔵させる調整工程と、
前記リチウムイオンを吸蔵した二酸化タングステンを含む負極と前記正極とを組み合わせて電極体とする作製工程と、
を含ものである。
次に、リチウムイオンキャパシタの製造方法について説明する。本明細書で開示するリチウムイオンキャパシタの製造方法は、炭素材料を正極活物質として有する正極と、二酸化タングステンを負極活物質として含む負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体とを備えたものの製造方法である。この製造方法は、電極のLi吸蔵量を調整する調整工程と、電極体を作製する作製工程とを含む。なお、この製造方法は、調整工程の前に正負極を作製する電極作製工程を含むものとしてもよい。
この工程では、負極に対して、LixWO2における放電状態のLi吸蔵量xが0.10≦x≦0.60の範囲に含まれるよう二酸化タングステンにリチウムイオンを吸蔵させる処理を行う。この範囲に調整すると、ハイレート特性をより向上することができる。このLi吸蔵量xは、0.20≦x≦0.60の範囲に調整されることが好ましい。この範囲に調整すると、より低温でのハイレート特性を向上することができる。リチウムイオンキャパシタでは、正極ではアニオンが吸着、脱離され、負極ではLiイオンが吸蔵、放出されるため、このようにLi吸蔵量xを調整すると、使用開始時のLi吸蔵量が調整されるから、リチウムイオンキャパシタにおける負極の充放電に用いられる電位範囲が調整される。調整されるリチウムイオンキャパシタの負極の電位範囲は、Li基準電位で0.78V以上1.05V以下の範囲が好ましく、0.78V以上0.90V以下の範囲がより好ましい。
この工程では、上記調整工程にてリチウムイオンを吸蔵した二酸化タングステンを含む負極と正極とを組み合わせて電極体とする処理を行う。この工程では、調整工程で用いた二極セルを不活性雰囲気下で解体し、必要に応じて正極と負極との間にセパレータや電解質を挟み、電極体とする。この電極体は、必要に応じて捲回され、セルケースに収納される。また、必要に応じて非水系電解液などが注入され密封される。このようにして、リチウムイオンキャパシタが作製される。
正極活物質としてフェノール樹脂を出発原料とする比表面積2000m2/gの粉末状活性炭を用い、この活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを7質量%、結着材としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を3質量%、分散材としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を5質量%となるように混合し、これに水を添加、分散することでスラリー状合材とした。このスラリー状合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させた。120mm幅×100mm長の形状に切り出して正極電極とした。負極活物質として二酸化タングステンを用い、この活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%となるように混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加、分散することでスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、122mm幅×102mm長の形状に切り出して負極電極とした。上記正極電極もしくは負極電極と、シート状のリチウム金属を25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで対向させ、積層型電極体を作製した。この電極体をアルミラミネート型袋に封入し、非水電解液を含浸させた後に密閉した。非水電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネートを体積比で30/40/30となるよう混合した混合溶媒にLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させたものを用いた。
上記方法で作製した正極シートから直径16mmの円盤状電極を打ち抜き、リチウム金属を対極としてコインサイズのセルを作製し、このセルを用いて活性炭正極の充放電容量Qcを確認した。まず、このセルをC/2レート、3.0V〜4.2Vの範囲で充放電させたときの放電容量(還元方向の容量)をQcとした。図2は、活性炭正極の充放電曲線である。本実施例の活性炭正極の放電容量Qcは、35mAh/gであった。また、正極シートと同様に負極シートから直径16mmの円盤状電極を打ち抜き、リチウム金属を対極としてコインサイズのセルを作製し、このセルを用いて二酸化タングステン負極の放電容量Qwを確認した。まず、このセルをC/10レート、0.4V〜1.5Vの範囲で充放電させたときの放電容量(酸化方向の容量)をQwとした。図3は、二酸化タングステン負極の充放電曲線である。本実施例の二酸化タングステン負極の放電容量Qwは、125mAh/gであった。
(実験例1)
上記正極シートとリチウム金属を対向させたセルを、C/2レートで3.0V〜4.2Vの電位範囲で3サイクル充放電し、Li基準電位で3.0Vの正極放電状態とした。負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レートで0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから40mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした(調整工程)。この負極は、この調整処理により、放電時の下限電位がLi基準電位で0.78V近傍になっている。上記方法で作製した放電状態の2種類のセルをグローブボックス中で解体し、正極シートと負極シートを取り出した。この正極、負極シートを25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで対向させ、積層型電極体を作製した(作製工程)。この正極と負極との放電容量比により、負極の充電時の上限電位が0.90V近傍になっている。このため、負極は、Li基準電位で0.78V〜0.90Vの範囲内で充放電される。この電極体をアルミラミネート型袋に封入し、非水電解液を含浸させた後に密閉してリチウムイオンキャパシタを作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネートを体積比で30/40/30となるよう混合した混合溶媒にLiPF6を1.5Mの濃度で溶解させたものを用いた。実験例1のリチウムイオンキャパシタでは、活性炭正極の活物質量を2mg/cm2とし、二酸化タングステン負極の活物質量を6.8mg/cm2とし、放電容量比Qw/Qcを12.14とした。図4は、実験例1のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。
室温ハイレート特性は、25℃の温度環境下、1Cレートで2.15V〜3.3Vの範囲において充放電させたときの放電容量に対する60Cレートで2.15V〜3.3Vの範囲において充放電させたときの放電容量の割合とした(式(1))。また、低温ハイレート特性は、0℃の温度環境下、1Cレートで2.15V〜3.3Vの範囲において充放電させたときの放電容量に対する60Cレートで2.15V〜3.3Vの範囲において充放電させたときの放電容量の割合とした。
ハイレート特性(%)=(60Cの放電容量)/(1Cの放電容量)×100 …(1)
特性評価後のデバイスを放電させて放電状態とし、アルゴンガス含有グローブボックス中で解体して負極電極を取り出した。負極を炭酸ジメチルで洗浄、乾燥を3回繰り返した後、80℃に加熱した6N塩酸中に負極を2時間浸漬した。溶液をろ過して不純物を取り除き、ICP−OES(日立ハイテクサイエンス製PS3520UVDDII)でタングステン量に対するリチウム量を定量化し、LixWO2の Li吸蔵量xを算出した。Li量算出の結果、実験例1の二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.32であった。
活性炭正極の活物質量を1mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を7.0mg/cm2とした以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例2とした。実験例2の放電容量比Qw/Qcは25.0であった。また、放電状態のLi量算出の結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.33であった。図5は、実験例2のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を4.7mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例3とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから35mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは8.39であった。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.28であった。図6は、実験例3のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を4.0mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例4とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから30mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは7.14であった。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.24であった。図7は、実験例4のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を3.5mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例5とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから35mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは6.25であった。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.29であった。図8は、実験例5のリチウムイオンキャパシタの充放電曲線である。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を2.5mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例6とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから20mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは4.46であった。この実験例6では、室温、低温ハイレート特性試験を2.1V〜3.3Vの範囲で行った。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.16であった。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を7.0mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例7とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから15mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは12.5であった。この実験例7では、室温、低温ハイレート特性試験を2.0V〜3.25Vの範囲で行った。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.12であった。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を7.0mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例8とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.5V〜0.7Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vまで電気化学的に酸化させ、そこから90mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは12.5であった。この実験例8では、室温、低温ハイレート特性試験を2.35V〜3.55Vの範囲で行った。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.72であった。
活性炭正極の活物質量を2mg/cm2、二酸化タングステン負極の活物質量を3.5mg/cm2とし、調整処理の条件を変更した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例9とした。この調整処理では、負極シートとリチウム金属を対向させたセルをC/10レート、Li基準電位で0.7V〜1.5Vの電位範囲で3サイクル充放電したあと、Li基準電位で1.5Vから5mAh/g還元させた状態を負極放電状態とした。このときの放電容量比Qw/Qcは12.5であった。この実験例9では、室温、低温ハイレート特性試験は、1.9V〜3.0Vの範囲で行った。放電状態のLi量を算出した結果、二酸化タングステン中のLi吸蔵量xは0.05であった。
非水電解液としてLiPF6を1.0Mの濃度で溶解させた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例10とした。非水電解液としてLiClO4を1.0Mの濃度で溶解させた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例11とした。非水電解液としてLiBF4を1.0Mの濃度で溶解させた以外は実験例1と同様の工程を経て得られたものを実験例12とした。
表1に実験例1〜12の負極の充放電領域、放電状態での二酸化タングステンのLi吸蔵量x、放電容量比Qw/Qc、電解質、ハイレート特性をまとめて示す。なお、表1における「WO2の充放電領域」は、そのセルの充放電における下限電位及び上限電位の数値を直接示すものではなく、少なくともその範囲内で充放電される電位範囲を示している。表1に示すように、実験例8、9では、放電状態で二酸化タングステンに吸蔵されているLi吸蔵量xが0.1〜0.6の範囲を外れ、二酸化タングステンの充放電領域で示すとLi基準電位で0.78V〜1.05Vの電位範囲を外れた。このような実験例8、9では、正負極の放電容量比Qw/Qcの値に関わらずハイレート性能が極めて低かった。実験例6、7では、放電状態で二酸化タングステンに吸蔵されているLi吸蔵量xが0.1〜0.6の範囲に入っており、二酸化タングステンの充放電領域で示すとLi基準電位で0.78V〜1.05Vの範囲にあり、室温及び低温のハイレート特性が実験例8、9に比して向上した。実験例5は、放電状態で二酸化タングステンに吸蔵されているLi吸蔵量xが0.2〜0.6の範囲に含まれ、二酸化タングステンの充放電領域では、Li基準電位で0.78V〜0.90Vに位置する。放電容量比Qw/Qcは7未満であるが、実験例6,7と比べて性能向上が見られ、特に低温特性が向上した。実験例3、4は、放電状態で二酸化タングステンに吸蔵されているLi吸蔵量xが0.2〜0.6の範囲に含まれ、二酸化タングステンの充放電領域では、Li基準電位で0.78V〜0.90Vに位置する。また、放電容量比Qw/Qcが7以上であり、実験例5と比して室温、低温共にハイレート性能が更に向上した。実験例1、2は、放電状態で二酸化タングステンに吸蔵されているLi吸蔵量xが0.2〜0.6の範囲に含まれ、二酸化タングステンの充放電領域では、Li基準電位で0.78V〜0.90Vに位置する。また、放電容量比Qw/Qcが12以上である。この実験例1、2では、室温、低温共に顕著にハイレート性能が向上した。
Claims (7)
- 炭素材料を正極活物質として有する正極と、
二酸化タングステンを負極活物質として含み、LixWO2における放電状態のLi吸蔵量xが0.10≦x≦0.60の範囲に含まれ、Li基準電位で該二酸化タングステンの0.78V以上1.05V以下の電位範囲が充放電に使用される負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたリチウムイオンキャパシタ。 - 前記負極は、前記Li吸蔵量xが0.20≦x≦0.60 の範囲に含まれる、請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記負極は、Li基準電位で前記二酸化タングステンの0.78V以上0.90V以下の電位範囲が使用される、請求項1又は2に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極の放電容量Qcに対する前記負極の放電容量Qwの比Qw/Qcが7以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極の放電容量Qcに対する前記負極の放電容量Qwの比Qw/Qcが12以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記イオン伝導媒体は、1.0M以上1.5M以下の範囲でLiPF6を非プロトン性溶媒に溶解した電解液である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 炭素材料を正極活物質として有する正極と、二酸化タングステンを負極活物質として含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたリチウムイオンキャパシタの製造方法であって、
LixWO2における放電状態のLi吸蔵量xが0.10≦x≦0.60の範囲に含まれるよう前記二酸化タングステンにリチウムイオンを吸蔵させる調整工程と、
前記リチウムイオンを吸蔵した二酸化タングステンを含む負極と前記正極とを組み合わせて電極体とする作製工程と、
を含むリチウムイオンキャパシタの製造方法。
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