本発明の便座取付具を有する便座リフトアップ装置と便座装置とを備えた昇降便座を具体化した実施例1〜3及び参考例を図面を参照しつつ説明する。
<実施例1>
実施例1の昇降便座は、図1及び図2に示すように、便座装置10と便座取付具50を有する便座リフトアップ装置20とを備えている。
便座装置10は、便座11と、便蓋12と、便座11及び便蓋12を回動自在に軸支する便座支持部13と、レバー部材14とを備えている。
便座支持部材13はボックス状に形成されている。便座支持部材13は内部に局部洗浄装置を収納している。局部洗浄装置は、一対の局部洗浄用ノズル13A、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた温水タンク13B、局部洗浄用ノズル13Aへの洗浄水の給水路に設けられた開閉弁、温水タンク13Bに内蔵されたヒーター等を制御する制御装置等から構成されている。
便座支持部材13は、下面に設けられ、後述する便座リフトアップ装置20の上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態で収納する収納凹部16を有している。収納凹部16は後端部が開放している。また、収納凹部16は左右両端部に溝部16Aが設けられている。溝部16Aは上プレート30の左右に突出して設けられた鍔部30Aを挿入する。収納凹部16は、上プレート30と下プレート40とが重ね合わされた状態、若しくは上プレート30が下プレート40から上昇した状態で、収納凹部16の後方から鍔部30Aを溝部16Aに挿入させながらスライドさせることにより、重ね合わされた状態の上プレート30及び下プレート40、若しくは上プレート30のみを収納することができる。
レバー部材14は、便座装置10を便器本体1の上面に取り付けた状態で、便器本体1の前方から見て便座支持部材13の左側面に露出する操作部14Bを有している。レバー部材14は、左右方向に延び、左右方向に往復移動するレバー本体部14Aを有している。操作部14Bはレバー本体部14Aの一端部から下方に延びて形成されている。レバー本体部14Aは便座支持部材13内の底面に沿って配置されている。
レバー本体部14Aは、下方に延びて形成され、便座支持部材13の下面(収納凹部16の下面)より下方に突出しており、レバー本体部14Aの往復移動に伴い第1位置と第2位置との間を往復移動する1対の爪部14Cを有している。
レバー本体部14Aは爪部14Cが第1位置に配置される方向に弾性力を付与する圧縮コイルバネ15を取り付けている。圧縮コイルばね15の弾性力により爪部14Cが第1位置に配置されると、操作部14Bは、その外側面が便座支持部材13の左側面と面一になる位置に配置される。レバー部材14は、圧縮コイルバネ15の弾性力に抗して、操作部14Bを便座支持部材13の左側面より外側に引き出すことができる。これにより、爪部14Cは第1位置から第2位置に移動することができる。
便座リフトアップ装置20は、図2〜図4に示すように、便器本体1の上面に固定される下プレート40と、下プレート40に対して昇降する上プレート30と、上プレート30を上昇させる方向に弾性力を付与する弾性部材である第1圧縮コイルバネ51を有する便座取付具50とを備えている。
下プレート40は、下プレート本体部材41と、第1係止部材42と、第2弾性部材である第2圧縮コイルバネ43とを有している。
下プレート本体部材41は、下プレート40が便器本体1の上面に固定された状態で、便器本体1の前方から見て左右に前後方向に延びた固定部41Aと、各固定部41Aの後部を連結する連結部41Bとを有している。
各固定部41Aは、長方形状の平板であり、前後端及び外側端に上方に延びる土手部が形成されている。各固定部41Aには前後に並んで2つずつ貫通孔44が設けられている。便器本体1が標準タイプの場合、前側の貫通孔44に後述する便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。また、便器本体1が大型タイプの場合、後側の貫通孔44に便座取付具50の筒部材53を挿通して便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付ける。
各貫通孔44の前後には切り取り可能な切取部44Aが設けられている。切取部44Aを切り取ることにより、固定部41Aに前後方向に延びる長孔を形成することができる。切取部44Aを切り取って長孔を形成することにより、便座取付具50の筒部材53の挿通位置を便器本体1の大きさに合わせて前後方向に微調整することができる。
各固定部41Aの左右側部の上面には、複数の小突起45を所定間隔ごとに前後方向に整列させた凹凸部が形成されている。この凹凸部は、後述する便座取付具50の筒部材53の頭部53Cの下面との間で柔軟性を有するリング部材53Gを挟持することにより、筒部材53の挿通位置がずれることを防止するものである。各固定部41Aの下面には、固定部41Aの外形よりも僅かに小さい形状であり、前後方向に延びる長孔が形成された滑り止め部材46が貼着されている。
連結部41Bは第1係止部材42を収納する収納部47を形成している。収納部47は下方に開口しており、下方から第1係止部材42を挿入する。収納部47の下方開口は蓋部材47Aにより閉鎖されている。蓋部材47Aは、連結部41Bの前端面に設けられた係止部41Cの小突起と、蓋部材47Aの前端面に設けられた被係止部47Bの開口とを係止し、ビスSによって連結部41Bに固定されている。収納部47は第2圧縮コイルバネ43の一端が当接する第1当接部43Bを内部に形成している。
収納部47は、上面を上下方向に貫通し、左右に長い長方形状の第1開口部47Bを有している。第1開口部47Bの上方から、収納部47内に収納された第1係止部材42の後述する後側の第1係止部42Cを望むことができる。また、第1開口部47Bには、上方から上プレート30に設けられた後述する後側の第2係止部32Bが挿入される。この第2係止部32Bは、第1開口部47Bの上方から挿入され、第1係止部42Cに係止する。
収納部47は右側面の後部に左右方向に貫通した第2開口部47Cを有している。第2開口部47Cは第1係止部材42の後述する凸部42Dが収納部47の内側から突出する。
第1係止部材42は、左右方向に延びた直方体形状の本体部42Aと、前端面の左右端部の2箇所に設けられた前側の第1係止部42Bと、後端面の左右中間部に設けられた後側の第1係止部42Cと、後端面の右側端部から右方向に突出して設けられた凸部42Dとを有している。前側の各第1係止部42Bは、第1係止部材42が収納部47に収納された状態では、収納部47の前端部より前方に露出している。
本体部42Aは上面の中央部に左右方向に延びて設けられた凹部42Eを有している。凹部42Eは第2圧縮コイルバネ43を収納する。凹部42Eは右側内面に第2圧縮コイルバネ43の他端が当接する第2当接部43Aを形成している。
第1係止部材42を下プレート40の収納部47に収納する際、第2圧縮コイルバネ43は収納部47内に形成された第1当接部43Bと第1係止部材42に設けられた第2当接部43Aとの間に挟持される。このため、第1係止部材42は第2圧縮コイルバネ43の弾性力が右方向に付与されている。
上プレート30は、レバー部材14に形成された一対の爪部14Cと同じ間隔を有して設けられ、上方に開口した2列の係止凹部31を有している。各係止凹部31は、前端部が上プレート30の前端部に開口している。また、各係止凹部31の後端部は直角に右方向に屈曲し、爪部14Cが係止する段部31Aを形成している。このため、各係止凹部31の前端部から後端部に挿入された爪部14Cは、レバー本体部14Aに取り付けられた圧縮コイルバネ15により第1位置に移動すると、段部31Aに係止する。右側の係止凹部31は、左側面の後部に左右方向に貫通した第3開口部31Bを有している。第3開口部31Bは第1係止部材42の凸部42Dが内側から突出する。
上プレート30は、下方に開放して形成した下プレート40の連結部41Bを収納する空洞部を有している。この空洞部には、下プレート40に設けられた前側の第1係止部42Bに対応する2つの前側の第2係止部32Aと、下プレート40に設けられた後側の第1係止部42Cに対応する1つの後側の第2係止部32Bとが形成されている。
上プレート30は、下プレート40の各固定部41Aに対応する位置に前後方向に延びて形成された固定凹部33を有している。固定凹部33は中央部を前後方向に延びて形成した長孔33Aを有している。この固定凹部33は、後述する便座取付具50の軸部材52を固定するワッシャーW1及びボルトB1が収納する。また、この長孔33Aは軸部材52を固定するボルトB1を挿通する。
上プレート30は下プレート40と重ね合わされた状態で左右に突出する鍔部30Aを有している。左右の鍔部30Aは前部において外側部間の間隔が狭くなるように中央側へ傾斜している。このため、上プレート30の鍔部30Aは、前端側から便座支持部材13の溝部16Aに挿入し易い。
便座取付具50は、図3、図5〜図8に示すように、軸部材52と、軸部材52が挿通して上下動する貫通孔(第1貫通孔部53D、第2貫通孔部53E)を有する筒部材53と、軸部材52が上昇する方向に弾性力を付与する弾性部材である第1圧縮コイルバネ51とを有している。
軸部材52は、円柱状の第1軸部52Aと、この第1軸部52Aの下端に連続する円柱状の第2軸部52Bと、この第1軸部52Aの上端に連続する円盤状の頭部52Cとを有している。第2軸部52Bの外径は第1軸部52Aの外径よりも小さく形成されている。頭部52Cの直径は第1軸部52Aの外径よりも大きく形成されている。
軸部材52は、頭部52Cの上面の中心部から下方へ向けて螺子孔が形成されている。第2軸部52Bは下端部の外周に形成された第2軸部52Bを一周する溝部52Dを有している。この溝部52Dは第1結合部であるOリング54を嵌め込み取り付けている。Oリング54の外周面が第2軸部52Bの外周面より外側に突出している。Oリング54は圧縮コイルバネをリング状に連結したものであり、弾性変形する。
第2軸部52Bは下端面に円盤状の停止部材52EをボルトB2により取り付けている。停止部材52Eは、後述する筒部材53の下端部に取り付けられる被結合部材55の外径と等しい外径を有している。このため、停止部材52Eが被結合部材55の下端面に当接し、軸部材52が筒部材53から上方へ抜けてしまうことを防止している。
筒部材53は、外周面にねじ山が刻まれた円筒状の胴部53Aと、胴部53Aの下端に連続する接続部53Bと、接続部53Bに取り付けられた被結合部である凸部55Eを有する被結合部材55と、胴部53Aの上端に連続する平面視が正方形の平板状の頭部53Cとを有している。筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されている。筒部材53は、便器本体1の後部上面に左右に並んで垂直方向に貫設された一対の取付孔2の夫々に上方から挿通し、下端から挿入したワッシャーW2を挟持してナットNを下端からねじ込むことによって便器本体1に固定される。
筒部材53は、軸部材52の第1軸部52Aの外径より僅かに大きい内径を有する第1貫通孔部53Dを頭部53Cの上面の開口から連続して、胴部53A内の上下方向に形成している。また、筒部材53は、軸部材52の第2軸部52Bの外径より僅かに大きい内径を有する第2貫通孔部53Eを第1貫通孔部53Dの下端に連続して接続部53B内に形成している。
接続部53Bは外周に筒状の被結合部材55を取り付けている。被結合部材55は、内周面の下端部に軸部材52のOリング54が係止する凸部55Eを形成している。この凸部55Eが被結合部である。被結合部材55は、図9及び図10に示すように、被結合部材55の中心軸に対して対称の位置となる側面に、上下に並んだ2列のスリット55A、55Bを夫々形成している。上側のスリット55Aは被結合部材55の上端部の内面に設けられた縦溝55Cに連結している。また、上側のスリット55Aは下面の中間部に隆起部55Dを形成している。接続部53Bは筒部材53の中心軸に対して対称の位置となる外側面に、2つの凸部53Fを形成している。
このように形成された被結合部材55は、次のように接続部53Bに取り付ける。図10(a)、(b)に示すように、接続部53Bの凸部53Fを被結合部材55の縦溝55Cに挿通し、接続部53Bを被結合部材55内に挿入する。すると、凸部53Fは上側のスリット55Aの端部に挿入される。次に、被結合部材55を筒部材53の中心軸回りに回転すると、図10(c)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越える。この際、上側のスリット55Aと下側のスリット55Bとの境界部分が下側スリット55Bの空間側に変形することができるため、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越えることができる。また、凸部53Fが乗り上げる側の隆起部55Dの立ち上がり面を上り傾斜に形成しているため、凸部53Fが隆起部55Dを容易に乗り越えることができる。このようにして、図10(d)に示すように、凸部53Fが隆起部55Dを乗り越え、被結合部材55は接続部53Bに取付けられる。隆起部55Dを乗り越えた凸部53Fは、乗り越えた側の隆起部55Dの側面が上側のスリット55Aの底面から垂直に立ち上がっているため、逆方向に隆起部55Dを乗り越え難く、被結合部材55が逆回転して接続部53Bから抜け落ちてしまわない。
第1圧縮コイルバネ51は、図5〜図8に示すように、第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第1軸部52Aの下端面と第1貫通孔部53Dの下端面との間に挟持されている。このため、軸部材52は上昇する方向に第1圧縮コイルバネ51の弾性力が付与されている。
筒部材53は第2軸部52Bより長く形成されているため、軸部材52が上昇した状態では、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に挿入しており、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに挿通している。このように、軸部材52は上昇した状態で、第1軸部52Aの下端部が第1貫通孔部53Dの上端部に保持され、第2軸部52Bの下端部が第2貫通孔部53Eに保持されている。つまり、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持することができる。
また、第1圧縮コイルバネ51が第2軸部52Bと第1貫通孔部53Dとの間に配置され、第2軸部52Bの外周面と第1貫通孔部53Dの内周面とが第1圧縮コイルバネ51の伸縮をガイドする。このため、第1圧縮コイルバネ51が長くても安定して伸縮することができる。
また、第1圧縮コイルバネ51が常時、筒部材53に覆われており露出してしまわない。このため、第1圧縮コイルバネ51に埃等が溜まらず、安定して伸縮することができる。また、第1圧縮コイルバネ51の伸縮時に生じる音を筒部材53内に閉じ込めることができるため、静音化を図ることができる。
このように構成された昇降便座では、次に示すように、便座装置10を便器本体1に取り付ける。
先ず、図2に示すように、便座リフトアップ装置20を便器本体1の後部上面に取り付ける。この際、便器本体1が標準タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の前側の貫通孔44に挿通する。また、便器本体1が大型タイプの場合、便座取付具50の筒部材53を下プレート40の後側の貫通孔44に挿通する。また、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした上で、便座取付具50の筒部材53をこの長孔に挿通してもよい。
次に、便器本体1の後部上面の取付孔2に筒部材53を挿通し、下方からナットNをねじ込んで下プレート40を便器本体1の後部上面に固定する。この際、下プレート40の切取部44Aを切り取って長孔にした場合には、前後方向に微調整しながら下プレート40を便器本体1の後部上面に固定することができる。
次に、下プレート40の第1係止部42B、42Cと上プレート30の第2係止部32A、32Bとを係止し、下プレート40と上プレート30とを重ね合わせた状態にする。この状態でボルトB1を締め込み、軸部材52の頭部52CとボルトB1が挿通するワッシャーW1とにより上プレート30を挟み込み、上プレート30に便座取付具50の軸部材52を固定する。
次に、便器本体1の後部上面に取り付けた上プレート30と下プレート40とを便座装置10の便座支持部材13に設けられた収納凹部16に収納するように、便座支持部材13を前方から後方へスライドさせる。この際、便座支持部材13の収納凹部16に設けた溝部16Aに上プレート30の鍔部30Aを挿入しながら、スライドさせる。すると、便座支持部材13の収納凹部16の下面より下方に突出する爪部14Cが上プレート30の係止凹部31の前端部から挿入される。爪部14Cは、便座支持部材13を後方へスライドさせ、収納凹部16に上プレート30と下プレート40とが完全に収納されると、図11(a)及び図12(a)に示すように、圧縮コイルバネ15の弾性力により第1位置に配置される。つまり、爪部14Cが段部31Aに係止した状態となる。このようにして、便座支持部材13は上プレート16に対して固定される。つまり、昇降便座の便座装置10は便器本体1の上面に取り付けられる。
便器本体1に取り付けられた昇降便座において、操作部14Bを一方向(左方向)に引き出す操作を行うと、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)に示すように、爪部14Cは第1位置から第2位置へ向けて移動する。すると、爪部14Cが下プレート40の第1係止部材42に設けられた凸部42Dを左方向に押す。このため、第2圧縮コイルバネ43の弾性力に抗して第1係止部材42が左方向に移動する。これにより、第1係止部材42に設けられた第1係止部42B、42Cも左方向に移動する。
このように、爪部14Cを第1位置から第2位置へ向けて移動させるために操作部14Bを操作する際、第2圧縮コイルバネ43の弾性力が加わるため、意図せずに爪部14Cが移動してしまうことを防止することができる。つまり、意図せずに便座装置10を便器本体1上で上昇させてしまったり、便器本体1から取り外してしまったりすることを防止することができる。
爪部14Cが第1位置から第2位置へ移動する中間位置において、図11(b)及び図12(b)に示すように、第1係止部42B、42Cは第2係止部32A、32Bとの係止状態を解除する。これにより、便座取付具50の第1圧縮コイルバネ51の弾性力を利用して上プレート30を下プレート40から容易に上昇させることができる。つまり、便座装置10を便器本体1の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。
第1圧縮コイルバネ51の弾性力は便座装置10の荷重と略等しく設定されているため、第1係止部42B、42Cと第2係止部32A、32Bとの係止状態が解除されたのみでは、便座装置10は上昇しない。しかし、第1圧縮コイルバネ51の弾性力と便座装置10の荷重とが均衡しているため、便座装置10の荷重を感じずに便座装置10を持ち上げることができる。つまり、操作部14Bを左方向に引き出して爪部14Cを中間位置に移動させながら、便座装置10の便座支持部材13の両側を保持し、便座装置10を容易に上方に持ち上げることができる。
便座装置10を持ち上げて、図7及び図8に示すように、第2軸部52Bの下端部のOリング54を被結合部材55の凸部55Eに係止すると、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。
したがって、実施例1の昇降便座及び便座取付具50は、上昇位置にある便座装置10を安定させることができる。
また、便座装置10が上昇位置に保持された状態において、筒部材53の上端部と下端部との最も離れた2箇所で軸部材52を保持しているため、上昇位置にある便座装置10をさらに安定させることができる。
便座装置10を持ち上げて、Oリング54を凸部55Eに係止する際に被結合部材55が弾性変形するためクリック感が生じる。このため、便座装置10が上昇位置に保持されたことを認識することができ、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。このため、図13に示すように、便座装置10を上昇させた状態でも、上プレート30に対して便座装置10を以下に示す操作によって取り外したり、取付けたりすることができる。
操作部14Bを左方向へさらに引き出す操作を行い、爪部14Cを第2位置へ移動させると、図11(c)及び図12(c)に示すように、爪部14Cが係止凹部31の段部31Aからはずれた位置まで移動し、爪部14Cと係止凹部31との係止状態が解除される。これにより、便座支持部材13を前方へ引き出すことができる。つまり、便座装置10を便器本体1から容易に取り外すことができる。このように、爪部14Cを完全に第2位置に移動させなければ、爪部14Cと係止凹部31との係止状態は解除することができない。このため、便座装置10を便器本体1から取り外す際には、爪部14Cが第2位置に完全に移動するように操作部14Bを操作することになり、便座装置10を便器本体1から取り外すための操作部14Bの操作と、便座装置10を便器本体の上面から上昇させるための操作部14Bの操作とを明確に区別することができる。
このように、この昇降便座では、一つの操作部14Bを一方向(左方向)に操作することによって、その中間位置で便座装置10を便器本体1の上面から上昇させることができ、さらに操作すると便座装置10を便器本体1から取り外すことができる。また、操作部14Bは便器本体1の上面に配置された便座支持部材13の左側面に露出しているため、操作を容易に行なうことができる。つまり、便座装置10の便器本体1上での昇降及び便座装置10の便器本体1に対する着脱を容易に行なうことができる。
また、実施例1の便座リフトアップ装置20は、同様のレバー部材14を備えた便座装置に対して利用することができる。つまり、この便座リフトアップ装置20を便器本体1に取り付けることにより、同様のレバー部材14を備えている便座装置であれば、たとえ、既存の便座装置であっても便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。また、同様のレバー部材14を備えていれば、新規な便座装置に取り替えたとしても、便器本体1上での昇降及び便器本体1に対する着脱を同様に行なうことができる。このように、この便座リフトアップ装置20は、複数種類の便座装置に適用することができる。
<参考例>
参考例の昇降便座は、図14及び図15に示すように、便座取付具150の構成が実施例1と相違する。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
参考例の便座取付具150は、軸部材52の下端部に設けられた第1結合部を構成する結合部材154と、筒部材53の下端部に設けられた被結合部を構成する被結合部材155とを有している。
結合部材154は、磁力を有し、中央部にボルトB2が挿通する挿通孔を有する円筒状に形成されている。結合部材154は、上面を軸部材52の第2軸部52Bの下端面に当接してボルトB2によって取り付けている。この結合部材154の外径は第2軸部52Bの外径よりも大きく形成している。このため、結合部材154(第1結合部)は第2軸部52B(軸部材)の外周面よりも外側に広がった接触面154Aを有している。
被結合部材155は、筒状であり、強磁性体である鉄製で形成されている。また、被結合部材155は、被結合部材155の中心軸に対して対称の位置となる側面に、傾斜したスリット155Aを夫々形成している。このスリット155Aは、高い側の端部が縦溝55Cに連結している。
このように形成された被結合部材155は、次のように接続部53Bに取り付ける。図15(a)に示すように、上下面が接着面のリング状の接着シート156の中央開口を接続部53Bに挿通し、接着シート156の上面を筒部材53の胴部53Aの下端面に接着する。次に、凸部53Fを被結合部材155の縦溝55Cに挿通し、接続部53Bを被結合部材155内に挿入する。すると、図15(b)に示すように、凸部53Fはスリット155Aの高い側の端部に挿入される。次に、被結合部材155を筒部材53の中心軸回りに回転すると、図15(c)に示すように、凸部53Fは低い側の端部に移動する。この際、スリット155Aが傾斜しているため、被結合部材155の上面は上方に移動し、接着シート156を筒部材53の胴部53Aの下端面との間で強く挟みこむことになる。被結合部材155は、接着シート156の接着力によって逆回転することができないため、接続部53Bから抜け落ちてしまわない。
接続部53Bに取り付けられた被結合部材155の下端面が、第2軸部52Bの下端部に取り付けられた結合部材154の接触面154Aに接触する被接触面155Bとなる。
この結合部材154と被結合部材155とは、便座装置10を持ち上げると、結合部材154の磁力により、図14(b)に示すように、結合する。このように、結合部材154と被結合部材155とが磁力により結合することで、上昇位置にある便座装置10を確実に保持することができる。
したがって、参考例の昇降便座及び便座取付具は、上昇位置にある便座装置10を安定させることができる。
<実施例2>
実施例2の昇降便座は、図16〜図18に示すように、便座取付具250の構成が実施例1等と相違する。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
実施例2の便座取付具250は、軸部材252と、軸部材252が挿通して上下動する貫通孔253Dを有する筒部材253と、軸部材252が上昇する方向に弾性力を付与する弾性部材である第1圧縮コイルばね251とを有している。
軸部材252は、円柱状の第1軸部252Aと、この第1軸部252Aの下端に連続する円柱状の第2軸部252Bと、この第1軸部252Aの上端に連続する円盤状の頭部252Cとを有している。第2軸部252Bの外径は第1軸部252Aの外径よりも小さく形成されている。頭部252Cの直径は第1軸部252Aの外径よりも大きく形成されている。
軸部材252は、頭部252Cの上面の中心部から下方へ向けて螺子孔が形成されている。第1軸部252Aは外周面の下端部を一周する溝部252Dを有している。この溝部252Dはゴム製のOリング252Pが嵌め込まれている。
第2軸部252Bは外周面の下端部に第1結合部である第1凸部256を形成している。第1凸部256は、図18に示すように、後述する筒部材253に形成された被結合部であるOリング254に係止(結合)すると、便座装置10が上昇位置で保持される。つまり、軸部材252が最も上昇した状態になる。
第1凸部256は、最も外側に張り出した第1中間部256Aと、第1中間部256Aの上端外周縁から延びて第1中間部256Aより上方の第2軸部252Bの外周面に連続した第1上傾斜面256Bと、第1中間部256Aの下端外周縁から延びて第1中間部256Aより下方の第2軸部252Bの外周面に連続した第1下傾斜面256Cとから形成されている。第1上傾斜面256Bは下方に向けて外側に広がる方向に緩やかに傾斜しており、第1下傾斜面256Cは下方に向けて内側に狭まる方向に急激に傾斜している。
第2軸部252Bは第1凸部256よりも上方の外周面に第2結合部である第2凸部257を形成している。第2凸部257は、図17に示すように、後述する筒部材253に形成された被結合部であるOリング254に結合すると、便座装置10が便器本体1の上面に載置した状態となる。つまり、軸部材252が最も下降した状態になる。
第2凸部257は、最も外側に張り出した第2中間部257Aと、第2中間部257Aの上端外周縁から延びて第2中間部257Aより上方の第2軸部252Bの外周面に連続した第2上傾斜面257Bと、第2中間部257Aの下端外周面から延びて第2中間部257Aより下方の第2軸部252Bの外周面に連続した第2下傾斜面257Cとから形成されている。第2上傾斜面257Bは下方に向けて外側に広がる方向に急激に傾斜しており、第2下傾斜面257Cは下方に向けて内側に狭まる方向に緩やかに傾斜している。
第2軸部252Bは下端面に円盤状の停止部材252EをボルトB2により取り付けている。停止部材252EとボルトB2の頭部との間にはワッシャー252Wを挟持している。停止部材252Eは、後述する筒部材253の下端部に取り付けられる挟持部材255に貫設された貫通孔の内径よりも大きい外径を有している。このため、停止部材252Eが挟持部材255の下端面に当接し、軸部材252が筒部材253から上方へ抜けてしまうことを防止している。
筒部材253は、外周面にねじ山が刻まれた円筒状の胴部253Aと、胴部253Aの上端に連続する平面視が正方形の平板状の頭部253Bとを有している。筒部材253は第2軸部252Bより長く形成されている。頭部253Bは上面に円環状の土手部253Cを形成している。土手部253C内の凹部には、軸部材252が下降した際、軸部材252の頭部252Cが収納される。筒部材253は、便器本体1の後部上面に左右に並んで垂直方向に貫設された一対の取付孔2の夫々に上方から挿通し、下端から挿入したワッシャーW2を挟持してナットNを下端からねじ込むことによって便器本体1に固定される。
筒部材253は頭部253Cの上面から連続して胴部253A内の上下方向に貫通する貫通孔253Dを有している。貫通孔253Dは軸部材252の第1軸部252Aの外径より僅かに大きい内径に形成されている。また、筒部材253は貫通孔253Dの下部の内周面に内側に突出して形成された凸部253Eを有している。貫通孔253Dの凸部253Eが形成されている部分は、第2軸部材252Bの第1凸部256及び第2凸部257が形成されている部分の外径よりも僅かに大きい内径に形成されている。
筒部材253は、凸部253Eより下方であって、筒部材253の中心軸に対して対称の位置となる側面の2か所に係止孔253Fを貫設している。筒部材253は下端開口からOリング254及び挟持部材255をこの順に挿入している。
挟持部材255は、筒状であり、下端部から外側に広がった鍔部255Aを有している。挟持部材255は挟持部材255の中心軸に対して対称の位置となる外周面の2か所に外側に突出した係止爪255Bを有している。挟持部材255は、筒部材253の下端開口に挿入すると、鍔部255Aの上面が、筒部材255の下端面に当接し、係止爪255Bが係止孔253Fに係止して筒部材253の下端部に取り付けられる。
Oリング254は、筒部材253の内周面に設けられた凸部253Eの下端面と挟持部材255の上端面との間に挟持されている。Oリング254の内周面は凸部253E及び挟持部材255の内周面よりも内側に突出している。Oリング254は圧縮コイルバネをリング状に連結したものであり、弾性変形する。
筒部材253は上端開口から貫通孔253D内にパッキン258及び第1圧縮コイルバネ251をこの順に挿入している。パッキン258は、環状であり、断面が外周面側に開口したコ字形状である。パッキン258は筒部材253の貫通孔253D内に形成された凸部253Eの上面に当接して配置されている。
パッキン258は第1軸部252Aに嵌め込まれたOリング252Pより下方の貫通孔253D内への空気の流出入を制限することができる。このため、筒部材253に対して、軸部材252が下降する際には、Oリング252Pより下方の貫通孔253D内の空気が徐々に外部に流出し、軸部材252が上昇する際には、Oリング252Pより下方の貫通孔253D内に空気が徐々に流入する。このように、軸部材252、貫通孔253D、Oリング252P、及びパッキン258がエアーダンパーのように作用するため、急激に軸部材252(便座装置10)が上昇又は下降することを防止することができる。
筒部材253内に挿入されたパッキン258及び第1圧縮コイルバネ251の内側を軸部材252の第2軸部252Bが挿通している。このようにして、第1圧縮コイルバネ251は、第2軸部252Bと貫通孔253Dとの間に配置され、第1軸部252Aの下端面とパッキン258の上端面との間に挟持される。このため、軸部材252は上昇する方向に第1圧縮コイルバネ251の弾性力が付与されている。
このような構成を有する便座取付具では、第1圧縮コイルバネ251の弾性力を利用して、軸部材252に連結した便座装置10を便器本体1の上面から上昇位置に容易に上昇させることができる。便座装置10を上昇位置に上昇させると、図18に示すように、軸部材252の下端部に設けられた第1凸部256が筒部材253に設けられたOリング254に係止して、便座装置10を上昇位置に確実に保持することができる。
したがって、実施例2の昇降便座及び便座取付具250は、上昇位置にある便座装置10を安定させることができる。
また、軸部材252の第1凸部256が筒部材253に設けられたOリング254に係止する際、第1上傾斜面256Bが緩やかに傾斜しているため、Oリング254は徐々に拡径し、軸部材252(便座装置10)の上昇をスムーズに行うことができる。一方、第1下傾斜面256Cは急激に傾斜しているため、Oリング254は第1下傾斜面256Cに確実に係止する。
実施例2の便座取付具250は、図17に示すように、軸部材252が筒部材253に対して最も下降した状態で第2凸部257がOリング254に係止する。つまり、便座装置10を下降させて、便器本体1の上面に載置すると、第2凸部257とOリング254とが係止する。このため、便座装置10が不意に上昇することを防止することができる。
また、軸部材252の第2凸部257が筒部材253に設けられたOリング254に係止する際、第2下傾斜面257Cが緩やかに傾斜しているため、Oリング254は徐々に拡径し、軸部材252(便座装置10)の下降をスムーズに行うことができる。一方、第2上傾斜面257Bは急激に傾斜しているため、Oリング254は第2上傾斜面257Bに確実に係止する。
第1凸部256及び第2凸部257がOリング254に係止する際にクリック感が生じるため、便座装置10が上昇位置等に保持されたことを確認することができる。また、Oリング254は筒部材253の内周面に嵌め込まれて、外部に露出していないため、清掃時等に人が触れることがなく、脱落するおそれがない。
<実施例3>
実施例3の昇降便座は、図19に示すように、実施例2の軸部材252に対して、第1凸部256と第2凸部257との間に第3係合部である第3凸部258が形成されている点が相違する。他の構成は、実施例2と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
第3凸部258は、最も外側に張り出した第3中間部258Aと、第3中間部258Aの上端外周縁から延びて第3中間部258Aより上方の第2軸部252Bの外周面に連続した第3上傾斜面258Bと、第3中間部258Aの下端外周面から延びて第3中間部258Aより下方の第2軸部252Bの外周面に連続した第3下傾斜面258Cとから形成されている。第3上傾斜面258Bは下方に向けて外側に広がる方向に急激に傾斜しており、第3下傾斜面258Cは下方に向けて内側に狭まる方向に緩やかに傾斜している。
このため、軸部材252の第3凸部258が筒部材253に設けられたOリング254に係止する際、第3下傾斜面258Cが緩やかに傾斜しているため、Oリング254は徐々に拡径し、軸部材252(便座装置10)の下降をスムーズに行うことができる。一方、第3上傾斜面258Bは急激に傾斜しているため、Oリング254は第3上傾斜面258Bに確実に係止する。よって、第1圧縮コイルバネ251の弾性力に抗して便座装置10を中間高さに保持することができる。このように、実施例3の昇降便座は、昇降目的(例えば、便座装置に組み込まれた脱臭装置の脱臭カートリッジの交換と、便器本体10の上面の清掃等)に応じて、便座装置10を複数の高さに昇降させ、保持することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、上プレートを介して便座装置を昇降させていたが、便座装置の便座支持部材の下面に直接、便座取付具の軸部材の頭部を取り付けて便座装置を昇降させてもよい。
(2)実施例1〜3では、第1弾性部材である第1圧縮コイルバネの弾性力を便座装置の荷重と略等しく設定したが、第1弾性部材の弾性力は便座装置の荷重より強くしてもよい。この場合、便座装置を第1弾性部材の弾性力のみによって上昇させることができる。
(3)実施例1〜3では、Oリングは圧縮コイルバネをリング状に連結したものであるが、Oリングはゴム材料で形成されたものでもよい。
(4)実施例2及び3では、筒部材の貫通孔内にパッキンを挿入して配置しているが、パッキンを258挿入しなくてもよい。