JP4621622B2 - 便座昇降装置 - Google Patents

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Description

本発明は、洋式便器を清掃する際に便座を持ち上げるための便座昇降装置に関するもの
である。
洋式便器においては、便座や便蓋が奥の方を中心に回転して平伏姿勢および起立姿勢と
なる。このため、便器本体上面の奥の方を清掃しようとしても便器本体と便座との間には
極めて狭い隙間しか空いていないため、手が届かない。そこで、便器の側から、ラックが
形成されたガイド部材を立ち上げる一方、便座を支持するスライダにピニオンを設けてス
ライダをガイド部材に沿って昇降可能に構成することにより、便座を便蓋とともに上方に
持ち上げるようにした便座昇降装置が案出されている。また、ここに開示の便座昇降装置では、ピニオンに対してロータリダンパー装置を設けることにより、スライダを下降させる際、スライダが急速に下降しないように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−28619号公報
最近では、便座や便蓋を自重で傾倒する際の速度を低下させるダンパー装置とともに便座ユニットとして一体化させたり、さらには、便蓋を電動で開閉させる電動機構とともに便座ユニットとして一体化させた便座昇降装置が出回っていて、これらの機構もスライダと一緒に下降するため、スライダをこれら全ての荷重に抗して、急速に下降しないようにする必要がある。しかしながら、ダンパー装置は、このような過酷な条件で使用されるため破損するリスクが高まっている。特に、上記特許文献1のようなロータリダンパー装置では、オイル等の粘性液体を含んでおり、破損によってオイルが染み出し、便座を汚染するという問題がある。
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、オイルを使用しないダンパー装置を用いた便座昇降装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、洋式の便器本体への固定部となる座板と、該座板から立ち上がったガイド部材と、該ガイド部材に沿って昇降可能に構成され、便座が取り付けられたスライダとを有する便座昇降装置において、前記座板と前記スライダとの間には、前記便座を下降させるときに前記スライダに抗力を発揮するエアーダンパー機構を有し、該エアーダンパー機構は、前記座板と前記スライダのいずれか一方側に設けたシリンダと、該シリンダに密閉空間を形成する、前記座板と前記スライダのいずれか他方側に設けたピストンとから構成され、前記シリンダと前記ピストンとの摺動による相対移動に伴い、前記密閉空間内のエアーが流通する連通孔を前記スライダまたは前記ピストンに形成し、前記シリンダの前記ピストンが摺動する摺動面には、摺動方向の全範囲のうち前記密閉空間のエアーの圧力が増加する後半部分に、前記摺動面を摺動する前記ピストンの摺動部を跨いで前記密閉空間のエアーを逃がすエアー逃がし部が形成され、前記エアー逃がし部は、円周方向の一部のみに、前記密閉空間の体積が最小となる位置の直前位置に形成され、前記密閉空間の体積が最小となる位置において前記ピストンの摺動部が前記エアー逃がし部と対向していないことを特徴とする。
本発明において、前記連通孔は、重力方向に延設されるとともに重力方向の下方に形成された前記密閉空間の反対側の端部が、前記密閉空間から離間する方向に開口面積が広がったすり鉢状に形成されたすり鉢部を有していることが好ましい。このように構成すると、連通孔から放出されたエアーがスムーズに拡散するため、連通孔近傍で渦を発生し難くなり騒音の発生を抑えることができる。しかも、すり鉢部により、ともすれば連通孔が塵埃等により閉鎖され易い構造ではあるが、エアー逃がし部を通じて密閉空間からのエアーを放出することができるので、連通孔が塵埃等により閉鎖されたとしても、密閉空間のエアー圧力の増加を抑制し、確実に便座を下降させることができる。
本発明において、前記すり鉢部の開口面積が広がった側の開口端面は、前記密閉空間からのエアーが放出される放出側の端面に形成された凹部の底面に形成されていることが好ましい。このように構成すると、凹部の底面であってすり鉢部の周囲にゴミを溜めることができるので、密閉空間に侵入するゴミの量を減少させることができる。
本発明の便座昇降装置では、ダンパー装置が、座板とスライダのいずれか一方側に設けたシリンダと、シリンダに密閉空間を形成する、座板とスライダのいずれか他方側に設けたピストンとから構成されたエアーダンパー機構としたため、オイルを使用せずにダンパー作用を得ることができる。しかも、スライダまたはピストンには、シリンダとピストンとの相対移動に伴って、密閉空間内のエアーが流通する連通孔が形成され、シリンダのピストンが摺動する摺動面には、摺動方向の全範囲のうち密閉空間のエアーの圧力が増加する後半部分に、摺動面を摺動するピストンの摺動部を跨ぐように形成され密閉空間のエアーを逃がすエアー逃がし部が形成されている。従って、連通孔が塵埃等により閉鎖された場合であっても、エアー逃がし部を通じて密閉空間からのエアーを放出することができる。故に、密閉空間のエアー圧力の増加を抑制することにより、確実に便座を下降させることができる。
また、前記エアー逃がし部が、円周方向の一部のみに形成されている構成としたため、エアー逃がし部が形成された円周方向の一部を除く全ての部分をピストンの摺動面にすることができる。故に、エアー逃がし部によってピストン動作が妨げられることがない。
さらに、前記エアー逃がし部が、前記密閉空間の体積が最小となる位置の直前位置に形成され、前記密閉空間の体積が最小となる位置において前記ピストンの摺動部が前記エアー逃がし部と対向していない構成にした。密閉空間の体積が最小となる位置は、ピストンが移動する全範囲のうちで一方の端部に相当しており、この位置でピンストンが保持されることが多い。ピストンは、通常、その摺動部に、ゴム製のOリングが係合されている。そのため、このように構成することにより、密閉空間の体積が最小となる位置の直前位置でOリングがエアー逃がし部に対向しており、ピストンの保持位置においては、Oリングをエアー逃がし部に対向させずにすむ。故に、Oリングがエアー逃がし部に対向する時間が極めて短時間となり、Oリングが経時変化してエアー逃がし部の深部まで進入してしまうという問題がない。従って、Oリングがエアー逃がし部の深部まで進入することによるピストンの動作不良を未然に防止することができる。
図面を参照して、本発明を適用した便座昇降装置の一例を説明する。
(全体構成)
図1(a)、(b)はそれぞれ、本発明を適用した便座昇降装置を用いた洋式トイレユ
ニットにおいて、便座を下ろした状態の説明図、および便座を便器本体から持ち上げた状
態を示す説明図である。図2(a)ないし(d)は、本発明を適用した便座昇降装置の平
面図、正面図、右側面図、および可動プレートを外した状態の正面図である。図3(a)
、(b)は、図2(a)のA−A線における概略断面図、および図2(a)のB−B線に
おける概略断面図である。
図1(a)に示すように、本形態の洋式トイレユニットは、洋式の便器本体11と、こ
の便器本体11上で開閉される便座12と、この便座12上で開閉される便蓋13とを有
しており、便座12および便蓋13は、奥の方を中心に回転して平伏姿勢および起立姿勢
となる。ここで、便座12および便蓋13は、便座ユニットとして一体化されており、こ
の便座ユニットには、必要に応じて、便座12および便蓋13が自重で平伏する際の速度
を緩和するダンパー装置や便蓋を電動で開閉するための電動装置が内蔵される場合がある
これらいずれの場合においても、本形態の洋式トイレユニットには、図1(b)に示す
ように、便座12(便座ユニット)を手動で便器本体11から浮き上がらせて、便器本体
11の上面を奥まで清掃可能とする便座昇降装置1が構成されている。
図2(a)〜(d)、および図3(a)、(b)に示すように、本形態の便座昇降装置
1は、便器本体11(図1を参照)の上面部分への固定面21を備えた固定プレート2(
座板)と、固定プレート2の後端で上方に折り曲げられた垂直面22の上端部分にビスで
固定された逆L字形状のストッパプレート3と、ストッパプレート3の水平部分31と固
定プレート2の固定面21との間に掛け渡された2本の円柱状のガイド軸41、42(ガ
イド部材)とを有しており、2本のガイド軸41、42には、これらのガイド軸41、4
2に沿って上下にスライド可能なスライダ5が支持されている。
スライダ5は、ガイド軸41、42が差し込まれるガイド穴511、521を備えた軸
受け部分51、52と、これらの軸受け部分51、52の上端部分を繋ぐ天板部分53と
を有している。スライダ5には、その前面および天板部分53を覆うように可動プレート
6が取り付けられており、可動プレート6の水平部分60の上面に便座12(便座ユニッ
ト)が取り付けられる。
(ストッパの構成)
スライダ5の左右の軸受け部分51、52では、固定プレート2の垂直面22と対向す
る部分に角穴55が各々開口している。これらの角穴55の内部には各々、係合部材95
が水平方向に進退可能に配置され、その奥には、係合部材95を固定プレート2の垂直面
22に向けて付勢するばね97が配置されている。
これに対して、固定プレート2の垂直面22には、スライダ5を上下したときに係合部
材95が通過する線上のうち、その下方位置に、係合部材95の先端部が入り込む下側凹
部98が左右に形成されている一方、上方位置には、係合部材95の先端部が入り込む上
側凹部99が左右に形成されている。
このため、スライダ5側の係合部材95、およびばね97と、固定プレート2の垂直面
22側の下側凹部98は、便座12(便座ユニット)を下降させたときのスライダ5の保
持位置を規定する第1のストッパ91として機能する。また、スライダ5側の係合部材9
5、およびばね97と、固定プレート2の垂直面22側の上側凹部99は、便座12(便
座ユニット)を上昇させたときのスライダ5の保持位置を規定する第2のストッパ92と
して機能する。
(ダンパーおよび付勢手段の構成)
このように構成した便座昇降装置1において、本形態では、固定プレート2の固定面2
1とスライダ5の天板部分53との間には、便座12(便座ユニット)を下降させるとき
にスライダ5に抗力を発揮するエアーダンパー機構7が配置されている。
このエアーダンパー機構7を構成するにあたって、本形態では、スライダ5の天板部分
53の下面から固定プレート2の固定面21に向けて円筒状のシリンダ71が延びている。
一方、ピストン72は、シリンダ内に配設されているものの、ピストン72の下端が、固定プレート2の固定面21に取り付けられていない。即ち、固定プレート2の固定面21には、シリンダ71の下端開口からシリンダ71内の中間位置まで延びた筒体78が直立姿勢で取り付けられており、この筒体78の上端面の中央に中央孔781が形成されている。その中央孔781から、ピストン72が、筒体78内部に挿入され、中央孔781の内壁にガイドされながらスライダ5のスライド方向に移動可能に支持されている。ピストン72の上端部には、大径のヘッド74が形成されている。ヘッド74には、Oリング75が周溝内に取り付けられ、Oリング75の外径とシリンダ71内壁とは圧入寸法に設定されている。また、ピストン72の下端部には、係合部771を有する大径の係合突起77が形成されている。
故に、便座12の上昇に伴って、スライダ5を図3のピストンの一方の保持位置である実線の状態からピストンの他方の保持位置である2点鎖線の状態に移動させる動作に際して、係合部771が中央孔781の周縁784に当接する途中までは、Oリング75とシリンダ71の内壁との圧入関係による両者間の摩擦によって、ピストン72がスライダ5とともに移動する。しかし、係合部771が中央孔781の周縁784に当接すると、ピストン72の移動が阻止されるため、Oリング75の外壁側750とシリンダ71の内壁である摺動面710とが摺動して、スライダ5のみが移動する。故に、シリンダ71の奥にあったヘッド74がシリンダ71の開口近傍まで相対移動する。
反対に、便座12の下降に伴って、スライダ5をピストンの他方の保持位置である2点鎖線の状態からピストンの一方の保持位置である実線の状態に移動させる動作に際して、ピストン72の係合突起77の下端面が固定プレート2の固定面21に当接する途中までは、Oリング75とシリンダ71の内壁との圧入関係による両者間の摩擦によって、ピストン72がスライダ5とともに移動する。しかし、ピストン72の係合突起77の下端面が固定プレート2の固定面21に当接すると、ピストン72の移動が阻止されるため、Oリングの外壁側750とシリンダ71の内壁である摺動面710とが摺動して、スライダ5のみが移動する。故に、シリンダ71の開口近傍にあったヘッド74がシリンダ71の奥まで相対移動する。
本形態の場合、エアーダンパーとしての効果は、ピストン72の係合突起77の下端面が固定プレート2の固定面21に当接した後、スライダ5のみが移動することにより得られ、ピストン72がシリンダ71とともに移動しているときには、エアーダンパーの効果が得られない。しかし、便座の破損を防止するためには、便座が便器本体に衝突するときの衝突速度が十分に減速していれば良く、便座2が下降する後半のみエアーダンパーの効果が得られる構成であっても問題ない。本形態によると、ピストン72の移動する距離相当分、短縮できるので、便座昇降装置1をスライダ5の移動方向に小型化できる。
また、シリンダ71の奥端面に相当する天板部分53には、密閉空間73に連通する連通孔76が形成されている。
図4(a)、(b)は、図3に示す、すり鉢部を斜め上方から見た斜視図、およびすり鉢部を説明するための断面図である。図3および図4に示すように、天板部分53は、その中央に密閉空間73に連通する連通孔76が重力方向である軸線L1(図4(b)参照)の方向に延設されており、この連通孔76は、重力方向の下方に形成された密閉空間73の側から順に、直径が0.2mm程度の小孔部76d、すり鉢部76a、および密閉空間73の側に凹んだ凹部76bによって構成されている。すり鉢部76aは、軸線L1を中心にして密閉空間73から離間する方向に開口面積が広がったすり鉢状に形成されており、具体的には、図4(b)に示すように、軸線L1を含む断面において、軸線L1を中心にした2つの斜面L2およびL3のなす角度が59度に設定されている。ただし、2つの斜面L2およびL3のなす角度は、必ずしも59度に限定されるものではなく、120度以下、好ましくは30度から90度の範囲であれば、連通孔76を通って放出されるエアーのノイズを低減することができる。なお、すり鉢部76aの一方の開口端面である開口面積が広がった側は、凹部76bの底面76cに開口するようになっている。
また、凹部76bの底面76cは、すり鉢部76aの一方の開口端面より広く形成され、しかも凹部76bは、すり鉢部76aの軸線L1を含むあらゆる方向の断面において、該軸線を中心にした2つの斜面の延長線L2およびL3(図4(b)参照)の外側に形成されている。故に、凹部76aを形成する密閉空間73から放出されたエアーが凹部76aよって邪魔されることなくスムーズに拡散することが可能となる。
図5(a)、(b)は、図3(a)に示す実線の状態におけるピストンのヘッド周辺を拡大して示す拡大図、および(a)のピストンを削除したシリンダを斜め下方から見た斜視図である。
図5に示すように、シリンダ71のピストン72が摺動する摺動面710には、このピストン72が摺動する摺動方向の全範囲のうち、密閉空間73のエアーの圧力が増加する後半部分に、シリンダ71の摺動面710を摺動するピストン72の摺動部であるOリング75の外壁側750を跨いで密閉空間73のエアーを外部へ逃がすエアー逃がし部711が形成されている。エアー逃がし部711は、密閉空間73の体積が最小となる位置の直前位置に形成されているため、図5(a)に示すように、密閉空間73の体積が最小となる位置においては、Oリング75の外壁側750がエアー逃がし部711と対向していない。ただし、エアー逃がし部711は、必ずしも密閉空間73の体積が最小となる位置の直前位置に形成されている必要は無く、ピストン72が摺動する摺動方向の全範囲のうち、半分から後半部分であればどこに形成しても構わない。
本形態では、エアー逃がし部711の長さLが、Oリング75の直径Rより大きく形成されている。なお、図5において、エアー逃がし部711の長さ方向の下方にテーパ面が形成されているが、このテーパ面は、エアー逃がし部711を有するシリンダ71を樹脂により形成した後、金型から円滑に外すための抜きテーパであり、長さLは、この抜きテーパの長さ含めない長さになっている。また、エアー逃がし部711の深さは、Oリング75の外壁側750がエアー逃がし部711上を移動する際、エアー逃がし部711に対向するOリング75の外壁側750がエアー逃がし部711内に進入した場合でも、エアー逃がし部711の底部712までは到達しないように形成されている。故に、Oリング75の外壁側750を跨いで密閉空間73のエアーを外部へ逃がすことができる。さらに、エアー逃がし部711は、円周方向の一部のみに形成されているので、Oリング75の外壁側750がエアー逃がし部711に対向した際に、エアー逃がし部711を除く他の全ての部分が、シリンダ71の摺動面710に当接するようになっている。
さらに本形態では、固定プレート2の固定面21とスライダ5の天板部分53の間には
、圧縮コイルばねからなるアシストばね8(付勢手段)が配置されている。ここで、アシ
ストばね8は、シリンダ71の周りに同軸状に配置され、シリンダ71は、アシストばね
8のガイド部を兼ねている。
図6は、本発明を適用した便座昇降装置において、スライダに可動プレートを介して取り付けられた便座を昇降させる際に、便座に作用する力を示すグラフである。なお、ここに示すグラフでは、アシストばね8がない場合の便座12への荷重が50Nであり、第1のストッパ91および第2のストッパ92での係合解除に要する力(保持力)が30Nであるとして表わしてある。
まず、図6において、アシストばね8として、スライダ5が下方にあるときの付勢力が70Nで、スライダ5が上方に移動するうちに付勢力が55Nまで低下するものを用いた場合、便座12に作用する荷重は、太線L1で表わされる。従って、図1(a)に
示す状態から便座12を浮き上がらせるには、第1のストッパ91での係合を解除する際
に10N以上の力を便座12に加えればよく、しかも、第1のストッパ91での係合を解
除した以降は、便座12に力を加えなくてもアシストばね8の付勢力で便座12が自動的
に上昇し、しかる後に、第2のストッパ92での係合により、図1(b)に示す状態で、
便座12は自動的に停止する。
この状態から便座12を下ろす際には、第2のストッパ92での係合を解除するための
30Nの力に加えて、アシストばね8を圧縮するための力を加えることになり、かつ、便
座12が下降するに伴って大きな力を加えていくことになるが、スライダ5に対してはエ
アーダンパー機構7が構成されているので、便座12に体重をかけても、便座12の下降
速度が遅いため、安全である。また、下降速度が遅いので、便座12が便器本体11に激
しく衝突することがなく、便座11などが破損するおそれもない。
しかも、アシストばね8の付勢力が便座12やそれと一体に昇降する機構の重量よりも
大きいときでも、スライダ5は第1のストッパ91で保持されるので、便座12が便器本
体11から不用意に浮き上がることがない。また、アシストばね8の付勢力が便座12や
それと一体に昇降する機構の重量よりも小さいときでも、スライダ5は第2のストッパ9
2で保持されるので、それ以上、下降することがない。
(本形態の効果)
本形態において、エアーダンパー機構7が、スライダ5の天板部材53の下面から固定プレート2の固定面21に向けて延びた円筒状のシリンダ71と、このシリンダ71内に配設されシリンダ71とにより密閉空間を形成する、固定プレート2側に支持されたピストン72とによって形成されている。故に、オイルを使用せずにダンパー作用を得ることができる。しかも、シリンダ71のピストン72が摺動する摺動面710には、このピストン72が摺動する摺動方向の全範囲のうち、密閉空間73のエアーの圧力が増加する後半部分に、シリンダ71の摺動面710を摺動するピストン72の摺動部であるOリング75の外壁側750を跨いで密閉空間73のエアーを外部へ逃がすエアー逃がし部711が形成されている。従って、連通孔76が塵埃等により閉鎖された場合であってもエアー逃がし部711を通じて密閉空間73からのエアーを放出することができる。故に、密閉空間73のエアー圧力の増加を抑制することにより、確実に便座12を下降させることができる。
本形態において、天板部材53には、密閉空間73に連通する連通孔76が形成されており、この連通孔76に重力方向の軸線L1を中心にして密閉空間73から離間する方向に開口面積が広がったすり鉢状のすり鉢部76aを有している。従って、密閉空間73からのエアーが連通孔76を通って放出される際のノイズを抑制し、静音性を図ることができる。しかも、すり鉢部76aにより、ともすれば連通孔76が塵埃等により閉鎖され易い構造ではあるが、エアー逃がし部711を通じて密閉空間73からのエアーを放出することができる。故に、密閉空間73のエアー圧力の増加を抑制することにより、確実に便座12を下降させることができる。
本形態において、エアー逃がし部711は、円周方向の一部のみに形成されているので、Oリング75の外壁側750がエアー逃がし部711に対向したとき、エアー逃がし部711を除く他の全ての部分が、シリンダ71の摺動面710に当接するようになっている。すなわち、エアー逃がし部711が形成された円周方向の一部を除く全ての部分がピストンの摺動面710となるため、エアー逃がし部711がピストン72の動作の妨げになることがない。
本形態において、エアー逃がし部711は、密閉空間73の体積が最小となる位置の直前位置に形成されているため、図5(a)に示すように、密閉空間73の体積が最小となるピストン72の保持位置においては、Oリング75の外壁側750がエアー逃がし部711と対向していない。故に、Oリング75は、密閉空間73の体積が最小となる位置の直前位置でエアー逃がし部711に対向しており、Oリング75がエアー逃がし部711に対向する時間が極めて短時間となるため、Oリング75の経時変化によりエアー逃がし部711の深部まで進入し、ピストン72の動作不良を招くことを未然に防止することができる。
本形態において、凹部76bの底面76cは、すり鉢部76aの一方の開口端面より広く形成されているので、凹部76bに落下したゴミが、すり鉢部76aの周囲に溜まるため、密閉空間73に侵入するゴミの量を減少させることができる。
(その他の実施の形態)
上記実施の形態では、エアー逃がし部711が円周方向の一部に1箇所形成されているが、これに限定されるものではない。すなわち、複数箇所に形成してもよい。
また、上記実施の形態では、凹部76bを有しているが、必ずしも凹部76bを有している必要はない。凹部76bを有していない場合、すり鉢部76aの一方の開口端面である開口面積が広がった側は、天板部材53の上面と同一平面に開口するように構成されることになる。
また、上記実施の形態では、便座12を常に上方に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね(アシストばね8)を用いたが、引張りコイルばね等、各種ばねを用いてもよい。
さらに、上記実施の形態では、スライダ5の側にシリンダ71を形成し、固定プレート2の側にピストン72を構成したが、スライダ5の側にピストン72を形成し、固定プレート2の側にシリンダ71を構成してもよい。
(a)、(b)はそれぞれ、本発明を適用した便座昇降装置を用いた洋式トイレユニットにおいて、便座を下ろした状態の説明図、および便座を便器本体から持ち上げた状態を示す説明図である。 (a)ないし(d)は、本発明を適用した便座昇降装置の平面図、正面図、右側面図、および可動プレートを外した状態の正面図である。 (a)、(b)は、図2(a)のA−A線における概略断面図、および図2(a)のB−B線における概略断面図である。 (a)、(b)は、図3に示す、すり鉢部を斜め上方から見た斜視図、およびすり鉢部を説明するための断面図である。 (a)、(b)は、図3(a)に示す実線の状態におけるピストンのヘッド周辺を拡大して示す拡大図、および(a)のピストンを削除したシリンダを斜め下方から見た斜視図である。 本発明を適用した便座昇降装置において、スライダに可動プレートを介して取り付けられた便座を昇降させる際に、便座に作用する力を示すグラフである。
符号の説明
1 便座昇降装置
2 固定プレート(座板)
5 スライダ
7 エアーダンパー機構
11 便器本体
12 便座
41、42 ガイド軸(ガイド部材)
71 シリンダ
72 ピストン
73 密閉空間
76 連通孔
76a すり鉢部
76b 凹部
76c 底面
710 摺動面
711 エアー逃がし部
750 Oリングの外壁側(摺動部)

Claims (3)

  1. 洋式の便器本体への固定部となる座板と、該座板から立ち上がったガイド部材と、該ガイド部材に沿って昇降可能に構成され、便座が取り付けられたスライダとを有する便座昇降装置において、
    前記座板と前記スライダとの間には、前記便座を下降させるときに前記スライダに抗力を発揮するエアーダンパー機構を有し、該エアーダンパー機構は、前記座板と前記スライダのいずれか一方側に設けたシリンダと、該シリンダに密閉空間を形成する、前記座板と前記スライダのいずれか他方側に設けたピストンとから構成され、前記シリンダと前記ピストンとの摺動による相対移動に伴い、前記密閉空間内のエアーが流通する連通孔を前記スライダまたは前記ピストンに形成し、前記シリンダの前記ピストンが摺動する摺動面には、摺動方向の全範囲のうち前記密閉空間のエアーの圧力が増加する後半部分に、前記摺動面を摺動する前記ピストンの摺動部を跨いで前記密閉空間のエアーを逃がすエアー逃がし部が形成され、
    前記エアー逃がし部は、円周方向の一部のみに、前記密閉空間の体積が最小となる位置の直前位置に形成され、前記密閉空間の体積が最小となる位置において前記ピストンの摺動部が前記エアー逃がし部と対向していないことを特徴とする便座昇降装置。
  2. 請求項1において、前記連通孔は、重力方向に延設されるとともに重力方向の下方に形成された前記密閉空間の反対側の端部が、前記密閉空間から離間する方向に開口面積が広がったすり鉢状に形成されたすり鉢部を有していることを特徴とする便座昇降装置。
  3. 請求項2において、前記すり鉢部の開口面積が広がった側の開口端面は、前記密閉空間からのエアーが放出される放出側の端面に形成された凹部の底面に形成されていることを特徴とする便座昇降装置。
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