JP5651890B2 - 再灌流療法の治療効果を判定するキット - Google Patents

再灌流療法の治療効果を判定するキット Download PDF

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Description

本発明は、再灌流療法の治療効果を判定するキットに関する。特に、再灌流療法施術の治療効果の判定における、ADAMTS−1の使用に関する。
急性虚血状態やそれに対する再灌流治療の治療効果を的確に診断することは、初期段階でしか有効な治療法が存在しない、心筋梗塞や脳梗塞といった急性虚血性疾患を治療するために極めて重要なことである。従来、心筋梗塞の診断には、クレアチンキナーゼ(以下CKと記載)、トロポニン−T(以下TnTと記載)、および心臓由来脂肪酸結合蛋白質(以下H−FABPと記載)の発現の亢進が指標とされている(非特許文献1参照)。これらの蛋白質は心筋の収縮蛋白質や細胞膜蛋白質であって、急性虚血による心筋障害の結果として血中に逸脱する(以下これらをまとめて、心筋逸脱酵素と記載する)。
上記のとおり、心筋逸脱酵素は心筋梗塞のバイオマーカーとして汎用されている。しかしながらCKやTnTは、心筋梗塞発症から6時間以降では感度も特異性も極めて高いが、急性期の診断においては陽性率が低い。一方、H−FABPは発症1.5時間で陽性を示すが、虚血性以外の心不全でも陽性を示すなど偽陽性が多く、疾患原因を早期に確定する目的には適用しにくい。
急性心筋梗塞後の治癒過程において、細胞外マトリックス(ECM)が重要な役割を果たしていることが知られている。ECM分子が集積と分解の間で劇的に変化することで心筋梗塞後の心筋リモデリングがなされており、そしてプロテアーゼやそのインヒビター、増殖因子などの多様な生物学的物質がECM再構成に関与していることが報告されている。特にこの過程では、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現が亢進し、活性化することが分かっている。
また心筋梗塞後の心筋リモデリングには、側副血管の形成および発生(血管新生)も影響を与えることから、急性心筋梗塞における血管新生増殖因子の役割も注目されている。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、血管内皮マイトジェンであり、血管新生に関与すると考えられている。VEGFは冠状動脈の結紮後1時間以内に発現が亢進する。
ADAMTS( isintegrin nd etalloprotease with hrombopondin motifs)は、近年発見されたMMPである。ADAMTSは通常の組織では発現が認められないが、LPS刺激により誘導され、MMPよりも広範な種々の基質を認識する。
また、ADAMTSはECMを分解するだけでなく、血管新生阻害剤として機能することが報告されている。例えば、ADAMTS−1および8は抗血管新生作用を有することが報告されており(非特許文献2参照)、ADAMTS−1はFGF−2により誘導される血管形成を抑制し、かつVEGFにより誘導される血管新生を阻害することが報告されている。さらにADAMTS−1はVEGFに結合し、その受容体であるVEGFR2のリン酸化を阻害することが知られている(非特許文献2参照)。
これらの知見に基づいて、本発明者らは、ADAMTSが急性心筋梗塞に関与しているとの仮説を立て、ラットの心筋梗塞モデルにおいて、ADAMTS−1が心筋梗塞部および辺縁部の主に血管内皮細胞や心筋細胞において高発現していることを見出した(非特許文献3および4参照)。
Circ.J.2006 Apr;70(4):419−25. J.Biol.Chem.,1999 Aug 13;274(33):23349−23357. Connective Tissue,34,87(2002) J.Biochem.136,439−446(2004)
本発明の目的は、虚血性疾患に羅患した対象に対して施した再灌流療法の治療効果を、再灌流療法施術後速やかに判定可能な手段を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、ADAMTS−1が心筋梗塞患者の発症の初期において血液中に分泌され、かつ効果的な再灌流療法施術の後、速やかに血液中から消失することを検証した。その結果、ADAMTS−1が再灌流療法の治療効果判定における新規バイオマーカーとなりうることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
再灌流治療を施した対象由来の血液から分離した血漿または血清と、ADAMTS−1を認識する抗体とを接触させて形成した複合体を検出することにより急性虚血性疾患の再灌流治療効果を判定するキットであって、ADAMTS−1を認識する抗体を固相化したマイクロプレートまたはニトロセルロースシートと、固相化した前記ADAMTS−1を認識する抗体と接触した前記血漿または前記血清により形成した複合体を発色または着色させる標識物質とを備え、再灌流治療を施した直後の血液による複合体の発色または着色と、再灌流治療の一定時間経過後の血液による複合体の発色または着色を比較することにより治療効果を判定可能としたキット。
本発明のキットは、ADAMTSが急性虚血時にのみ一過的に血液中に分泌され、かつ再灌流治療によって速やかに血液中から消失する急性虚血のバイオマーカーであることの発見に基づくものである。本発明のキットを用いると、急性虚血性疾患に罹患した対象に対して施した再灌流治療が効果的に行われたか否かについて早期に判定することができる。またこのキットによる判定方法は偽陽性を示すことがないので、急性虚血期の段階で施した再灌流治療に続く次の治療方針を早期に定めることを可能にする強力な判定ツールとなり得る。
本発明のキットによれば、検出対象がADAMTSであるため、心筋梗塞のみならず、脳梗塞、肺梗塞等の特に緊急を要する疾患に対して施した再灌流療法の治療効果を、速やかに判定することができる。また脳梗塞などの血管造影法が適用できない急性虚血性疾患に羅患した対象へ施した再灌流治療についても、その治療の有効性を速やかに判定することができる点で有用である。
また通常、再灌流療法が効果的に行われたか否かについて判断する場合、カテーテル検査、心電図検査、血管造影検査、CT、MRIなどの技法が用いられるが、カテーテル検査は侵襲的であり、脳梗塞に対する血栓溶解治療においてはCTやMRIで治療効果を判定することができない。またこれらの検査には、特別な実験施設、大規模な装置や高価な試薬を必要とするため、コスト面で非常に高く、またその判定にも高度な医療的診断技術を必要とする。
一方で本発明のキットによれば、単に患者から血液を採取し、血液に対して抗原抗体反応を適用するだけで再灌流療法の成否を判定できるため、高価な装置や試薬などを用いることなく、誰でも極めて低コストかつ迅速に再灌流療法の治療効果を判定することができる。
低酸素状態における、各細胞のADAMTS−1 mRNA発現量を示す図である。縦軸は相対強度を示し、横軸は各細胞を低酸素状態においた時間を示す。 急性心筋梗塞および安定狭心症患者における血中ADAMTS−1濃度を比較した図である。縦軸は血中ADAMTS−1濃度(μg/mL)を示す。また四角は25−75%領域を示し、中央線は中央値、上下の線はそれぞれ上限値、下限値を示す。 吸光度とADAMTS−1濃度との関係を示す検量線である。 PTCA処置した各AMI患者および大動脈解離患者の血清中に存在するADAMTS−1量を経時的に比較した図である。縦軸は吸光度を示し、AMI患者における横軸はPTCA後の時間を、大動脈解離患者における横軸は各患者IDを示す。 PTCA処置した各AMI患者の血清中に存在するADAMTS−1量を経時的に比較した図である。縦軸は吸光度を示し、横軸はPTCA後の時間を示す。 トロポニンIとADAMTS−1、H−FABPとADAMTS−1およびトロポニンIとH−FABPそれぞれの血中濃度の相関関係を示す散布図である。縦軸、横軸は各バイオマーカーの濃度を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.再灌流治療効果を判別する方法
本発明の再灌流治療効果を判定する方法は、下記の工程:
(1)再灌流治療を施した対象由来の血液と、ADAMTSを認識する抗体とを接触させる工程;および
(2)上記工程(1)で形成された複合体を検出する工程
を含むことを特徴とする。
工程(1)
工程(1)は、急性虚血性疾患に羅患した対象であって、再灌流治療を施した対象由来の血液と、ADAMTSを認識する抗体とを接触させ、複合体を形成させる工程である。
本明細書中、「再灌流治療」とは、急性虚血性疾患をはじめとする疾患によって生じる、血管の閉塞、硬化、痙攣や、血液循環障害などによって途絶えた組織への血液供給を回復させるために施す治療であって、具体的には、組織プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)などを用いた血栓溶解療法、血栓吸引療法ならびにバルーンによる血管形成術(POBA)、およびステント留置などを用いるカテーテルインターベンション治療などのことをいう。血栓溶解療法など、再灌流療法にあたってカテーテルを使用しない場合、当該治療に必要な薬物等の投与方法は、局所投与であってもよいし、全身投与であってもよい。
なお本明細書中、「再灌流療法」とは、「再灌流治療」を施すための方法であって、具体的には上記治療方法のことをいう。本発明の方法は、上記のいずれの再灌流治療に対しても適用することが可能である。
本明細書中、「急性虚血性疾患」とは、血管の閉塞、硬化、痙攣や、血液循環障害などによって急激に組織への血液供給が途絶え、低酸素状態になることで発生する疾患をいう。「急性虚血性疾患」としては、具体的には、虚血性心疾患(不安定狭心症、心筋梗塞、急性冠症候群など)、虚血性脳疾患(脳梗塞、TIAなど)、虚血性肺疾患(肺梗塞など)、腎梗塞、急性腸間膜動脈閉塞症、急性動脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、虚血性腸疾患(虚血性大腸炎など)などが挙げられる。
本発明の急性虚血性疾患としては、虚血状態の迅速な診断および治療を行う観点から、再灌流療法が奏功する急性虚血性疾患であることが好ましい。ここで「再灌流療法が奏功する」とは、血栓などにより閉塞した血管を血栓溶解薬やカテーテル治療(血栓吸引療法およびバルーンによる血管形成術やステント留置を含む)といった血流を再回復させる手段によって血流が再開することをいう。
再灌流療法が奏功する急性虚血性疾患として具体的には、急性心筋梗塞、脳梗塞、急性肺梗塞、腎梗塞、急性腸間膜動脈閉塞症、急性動脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、虚血性腸疾患(虚血性大腸炎など)が挙げられる。
工程(1)における対象は、急性虚血性疾患などの疾患に罹患した対象であって、施された再灌流治療が有効であったか否かを判別しようとする対象、具体的には動物を意味する。該動物としては特に限定されず、血管を有する全ての動物が挙げられるが、なかでも、マウス、ラット、モルモットおよびウサギ等の実験動物、イヌおよびネコ等のペット、ウシ、ブタおよびニワトリ等の家畜、ならびにヒトが好ましく、特にヒトが好ましい。
本発明における「ADAMTS」とは、蛇毒メタロプロテアーゼおよびディスインテグリンの各ドメインを合わせもつ酵素(ADAM)であって、さらにトロンボスポンジンドメインを有することを特徴とする分泌型ADAMのことをいう。ADAMTSは、これまでの研究で19種類が同定されている。
本発明におけるADAMTSとしては特に限定されず、公知のADAMTSだけでなく将来発見されるADAMTSのいずれも対象とするが、なかでもADAMTS−1が好ましい。
ADAMTS、特にADAMTS−1は、急性虚血の際、血管内皮細胞によって発症後短時間(1時間〜3時間)で血液中に分泌され、かつ有効な再灌流治療によって速やか(3時間〜4時間)に血液から消失するため、対象が急性虚血性疾患に罹患しているか否かを速やかに判別し、また施した再灌流治療が有効であったか否かを判別するためのバイオマーカーとして適している。従って本発明の再灌流治療効果を判定する方法では、急性虚血性疾患に羅患し、それに対して再灌流治療を施している対象由来の「血液」を検出サンプルとして用いることを特徴とする。
工程(1)で使用する「再灌流治療を施した対象由来の血液」としては、いかなる組織由来の血液も想定することができる。このような組織としては、例えば、脳、心臓(循環器系器官)、肺(呼吸器系器官)、腸(消化器系器官)、肝臓、腎臓、脾臓等が挙げられ、その組織中に血管が存する限り特に限定されない。
血液は、上記組織中、またはその近傍の組織由来の血管から採取することが好ましいが、再灌流治療を施した組織以外の組織において通常の血液循環が成されている限り、対象内に存在するいずれの血管から血液を採取しても構わない。血液の採取方法としては、自体公知の方法が適用できる。
また採取した血液はそのまま本工程に用いてもよいが、自体公知の方法、例えば遠心分離、濾過などを利用して細胞成分(赤血球、白血球、血小板など)を分離した液体成分(血漿)として本工程に用いることが好ましい。また血液を凝固させて血小板や凝固因子を分離した液体成分(血清)として本工程に用いることも好ましい。本明細書において「血液」とは、上記操作で得られた血漿、血清なども含む概念である。
このようにして得られた対象由来の血液と、ADAMTSを認識する抗体とを接触させて、複合体を形成させる。
本明細書中、「ADAMTSを認識する抗体」としては、ADAMTSに結合する能力があればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。当該抗体としては、抗体分子のF(ab’)、Fab’、あるいはFab画分などのフラグメントも含む。これらの抗体としては、免疫原としてADAMTS、好ましくはADAMTS−1を用いて自体公知の方法により調製した抗体を用いることができるし、市販の抗体を用いることもできる。抗原として組換えADAMTS−1を用いる場合、組換えADAMTS−1は、例えば以下の方法で作製することができる。
ADAMTS−1をコードする遺伝子(GeneBank番号:NM_006988)を適切なベクターに組み込み、これを適切な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換の培養上清から目的とする組換えADAMTS−1を得ることができる。上記宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、植物又は動物細胞などを用いることができる。
また、これらの抗体は直接的または間接的に標識物質により標識されていてもよい。標識物質としては、蛍光物質(例、FITC、ローダミン)、放射性物質(例、14C、H)、酵素(例、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ)、着色粒子(例、金属コロイド粒子、着色ラテックス)が挙げられる。
このような抗体であれば、本工程において1種のみの抗体を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記「ADAMTSを認識する抗体」は、他に何も結合していない可溶性の状態で用いることも可能であるが、固相に結合していることが好ましい。かかる「固相」としては、プレート(例、マイクロウェルプレート)、チューブ、ビーズ(例、プラスチックビーズ、磁気ビーズ)、クロマトグラフィー用担体(例、Sepharose(商標))、メンブレン(例、ニトロセルロースメンブレン、PVDF膜)、ゲル(例、ポリアクリルアミドゲル)、金属膜(例、金膜)などが挙げられる。なかでも、プレート、ビーズ、メンブレンおよび金属膜が好ましく用いられ、取り扱いの簡便性からプレートが最も好ましく用いられる。上記結合としては、共有結合、イオン結合、物理的吸着などが挙げられ、特に限定されないが、共有結合および/または物理的吸着が十分な結合強度を得られるため好ましい。また固相への結合は、固相に直接結合してもよいし、自体公知の物質を利用して間接的に固相に結合していてもよい。例えば、金膜に抗体を結合させる場合、4,4’−ジチオジブチル酸(DDA)のチオール基と金との特異的結合を利用し、金表面に自己組織化単分子膜を形成させ、次いで固定化されたDDA末端のカルボキシル基に水溶性カルボジイミドとN−ヒドロキシコハク酸イミドを添加することにより形成した活性エステル基を抗体のアミノ基と結合させることにより、金膜に抗体を結合させることができる。
さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するために牛血清アルブミン(BSA)や牛ミルク蛋白等のリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗体によってコートされなかった固相表面部分を前記BSAや牛ミルク蛋白等でブロッキングすることが一般に行われる。
本工程における「ADAMTSを認識する抗体」と、再灌流治療を施した対象由来の血液中に含まれる「ADAMTS」との接触は、反応容器中において、当該血液と、ADAMTSを認識する抗体とを混合することでこれらが相互作用できる方法であれば、態様、順序、具体的方法などは特に限定されない。接触は、例えば「ADAMTSを認識する抗体」が固相化されたプレートに当該血液を添加することでなされる。
なお、かかる接触を保つ時間は、前記ADAMTSを認識する抗体と、再灌流治療を施した対象由来の血液中に含まれるADAMTSとが結合して複合体を形成するのに十分な時間であれば特に限定されないが、通常、数秒〜十数時間であり、再灌流治療が有効であるか否かを速やかに判定する観点から、好ましくは1分〜2時間であり、最も好ましくは2分〜30分である。また、接触を行なう温度条件としては、通常4℃〜50℃であり、4℃〜37℃が好ましく、15℃〜30℃程度の室温が最も好ましい。さらに、反応を行なうpH条件は、5.0〜9.0が好ましく、特に6.0〜8.0の中性域が好ましい。
工程(2)
工程(2)は、上記工程(1)で形成された複合体を検出することで、上記血液中にADAMTSが存在するか否かを判定する工程である。
上記検出は、複合体に含まれる「ADAMTS」または「ADAMTSを認識する抗体」を検出することによりなされる。
この検出には、酵素免疫測定法(EIA法)、イムノクロマト法、ラテックス凝集法、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、ルミネッセンス免疫測定法、表面プラズモン共鳴測定法(SPR法)などを利用することができる。これらの中でも、EIA法、イムノクロマト法、FIA法およびSPR法が操作の容易性および迅速性の観点からして好適である。
工程(2)の検出方法としてEIA法を選択した場合は、EIA法が、2種類の「ADAMTSを認識する抗体」を用いたサンドイッチ酵素結合免疫固相測定法(サンドイッチELISA法)であるのが好ましい。このようなサンドイッチELISA法は、2種類の抗体を用いることから抗原に対する特異性が優れている。
サンドイッチELISA法を実施するための2種類の「ADAMTSを認識する抗体」は、モノクローナル抗体同士の組合せ、ポリクローナル抗体同士の組合せ、またはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体の組合せのいずれであってもよい。
サンドイッチELISA法の一種としてアビジン−ビオチン反応を利用した方法が適用可能である。この方法では、例えば血漿または血清中のADAMTSを、固相化した任意の「ADAMTSを認識する抗体」でもって捕捉し、捕捉されたADAMTSとビオチンで標識した「ADAMTSを認識する抗体」との間で抗原抗体反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。次に酵素標識ストレプトアビジンを加えて、アビジン−ビオチン反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは5分〜1時間であり、より好ましくは15分〜30分である。次いでこの酵素を検出することで、ADAMTSを検出する。
上記したビオチン標識「ADAMTSを認識する抗体」は、ビオチンと、「ADAMTSを認識する抗体」とを自体公知の方法により結合させることにより製造することができる。例えば、市販のビオチン標識化キットを使用して、ビオチンと「ADAMTSを認識する抗体」とを結合させることができる。酵素標識ストレプトアビジンは、市販のものを好ましく使用することができる。
また、酵素標識抗体を利用したサンドイッチELISA法も適用可能である。この方法では、例えば血液中のADAMTSを、固相化した任意の「ADAMTSを認識する抗体」でもって捕捉し、捕捉されたADAMTSと酵素標識した「ADAMTSを認識する抗体」との間で抗原抗体反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。次いでこの酵素を検出することで、ADAMTSを検出する。
酵素標識抗体は、酵素と「ADAMTSを認識する抗体」とを自体公知の方法、例えば、グルタルアルデヒド法、マレイミド法などにより結合(標識)させることにより製造することができる。
さらに、汎用性の観点から2次抗体を利用したサンドイッチELISA法も適用可能である。この方法では、例えば血液中のADAMTSを、固相化した任意の「ADAMTSを認識する抗体」でもって捕捉し、捕捉されたADAMTSと、固相化した抗体とは異なる動物種由来の「ADAMTSを認識する抗体」(この段落中、1次抗体と記載する)との間で抗原抗体反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。例えば、固相化した「ADAMTSを認識する抗体」がウサギ由来であれば、1次抗体としてはウサギ以外の動物種由来、例えばマウス由来の抗体で反応を行う。次いで1次抗体と、酵素標識した「1次抗体のIgドメインを認識する抗体」(この段落中、2次抗体と記載する)との間で抗原抗体反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。最後にこの酵素を検出することで、ADAMTSを検出する。酵素標識2次抗体は、市販のものを好ましく用いることができる。
酵素標識ストレプトアビジンおよび酵素標識抗体における「酵素」としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼなどが例示される。
酵素の検出に用いられる基質剤としては、選択した標識酵素に応じて適当なものが選ばれる。例えば、酵素としてペルオキシダーゼを選択した場合においては、o−フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンジジン(TMB)などが使用され、アルカリホスファターゼを選択した場合においては、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)などが使用される。また、反応停止液、基質溶解液についても、選択した酵素に応じて、従来公知のものを特に制限なく適宜使用することができる。
サンドイッチELISA法を用いない場合でも、通常のELISA法を適用することで、検出が可能である。例えば工程(1)において対象由来の血液中のADAMTSを上述の方法と同様に固相に結合せしめ、次いで標識した「ADAMTSを認識する抗体」との間で抗原抗体反応を行わせて複合体を形成させる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。次いで標識に応じた手法を用い、ADAMTSを検出することができる。
工程(2)の検出方法としてイムノクロマト法を選択した場合、ニトロセルロースメンブレンなどの吸水性基材にライン状に固相化された「ADAMTSを認識する抗体」に対し、メンブレン下部より血液を展開することでADAMTSを捕捉させ、捕捉されたADAMTSと標識した「ADAMTSを認識する抗体」との間で抗原抗体反応を行わせる。かかる反応に要する時間は、迅速な測定が必要である観点から、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは2分〜30分である。標識に応じた手法を用い、ADAMTSを検出することができる。
イムノクロマト法を実施するための2種類の「ADAMTSを認識する抗体」も、モノクローナル抗体同士の組合せ、ポリクローナル抗体同士の組合せ、またはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体の組合せのいずれであってもよい。
工程(2)の検出方法としてFIA法を選択した場合、上記EIA法で用いた「ADAMTSを認識する抗体」に結合した酵素を蛍光物質と置換した抗体を用い、上記した方法と同様のサンドイッチELISAを行う。次いで、蛍光物質を市販の測定機器や、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡などを用いて検出することで、ADAMTSを検出する。
蛍光物質としては、APC、PE、Cy2、Cy3、Cy5、ECD、FITC、PerCP、Alexa(登録商標)Fluor、フルオレセイン、ローダミンなどの化学物質を好ましく利用することができる。当該化学物質は、自体公知の方法で抗体に標識することができる。
工程(2)の検出方法としてSPR法を選択した場合、あらかじめADAMTSを認識する抗体を固相化した金属膜(センサチップ)表面での、抗体と、金属膜表面にフローした血液中のADAMTSとの相互作用を、表面プラズモン共鳴の経時変化として検出する。SPR法を実施する場合は、センサチップとなる金属膜へ固相化する「ADAMTSを認識する抗体」は1種類でよく、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。また、SPRの検出に利用する測定機器としては、市販の測定機器を好ましく用いることができる。
一具体例として、EIA法を適用する場合には、再灌流療法を施した患者から採取した血液を室温で一定時間振盪した後、遠心分離して血漿を得る。次にこの血漿を、任意の「ADAMTSを認識する抗体」を固相化したマイクロプレートに分注し、室温で一定時間放置する。プレートを洗浄して未反応の抗原を除去した後、ビオチン化した上記抗体溶液をプレートに分注し、一定時間放置して複合体を形成する。更にプレートを洗浄して未反応の抗体を除去した後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン溶液をプレートに分注し、室温で一定時間反応させる。プレートを洗浄した後、TMBなどの発色基質溶液と反応させて複合体の検出を行う。すなわちTMB溶液の反応による発色が認められた場合は、その血液中にはADAMTSが存在していると判断することができる。
そして再灌流治療を施した直後の血液サンプルにおけるTMB溶液の反応による発色と再灌流治療の一定時間経過後の血液サンプルにおけるTMB溶液の反応による発色とを比較して、発色の減少が認められた場合、再灌流治療が有効であったと判断することができ、一方で発色の減少が認められなかった場合、再灌流治療が有効でなかったと判断することができる。
別の具体例としてイムノクロマト法を適用する場合には、上記血漿または生理食塩水などで希釈した血漿を試験片に浸して展開させる。試験片は、短冊形状の抗体固相化支持体の下端側に粒状標識物保持担体、及び、濾紙からなる液体試料吸収用担体が一端を介して積層され、一方、前記抗体固相化支持体の上端側に濾紙よりなる吸水性担体が一端を介して積層されてなるものである。上記抗体固相化支持体は、ニトロセルロースシート上にADAMTSと抗原抗体反応を行う「ADAMTSを認識する抗体」が固相化されているものである。固相化は、上記抗体溶液をニトロセルロースシート上に塗布し、乾燥することでなされる。固相化された抗体は、展開された血漿中のADAMTSを認識し、ADAMTSと粒状標識された上記抗体との複合体を捕捉することができる。従って、「ADAMTSを認識する抗体」が抗体固相化支持体上に線に固相化されていれば、そのラインが粒状標識により着色することとなり、当該血液にADAMTSが存在していると判断できる。
そして再灌流治療を施す前、または施した直後の血液サンプルを用いた場合に存在した当該ラインが、一定時間経過後の血液サンプルを用いた場合に消失した場合、再灌流治療が有効であったと判断することができ、一方でラインに変化が認められなかった場合、再灌流治療が有効でなかったと判断することができる。
本発明は、急性虚血状態で血液中に高濃度で存在するADAMTSが再灌流治療施術後速やかに消失する特質を利用して、再灌流治療施術による治療効果を判別する方法である。適切な再灌流治療施術が行われた場合、ADAMTSは施術後、例えば急性心筋梗塞(AMI)患者の場合は約3〜4時間で血清中濃度が低下する。したがって、再灌流治療施術前または施術直後に測定したADAMTS濃度と、一定時間経過後、例えば効果的な再灌流治療が行われた場合にADAMTSが血液中から消失する時間経過後に測定したADAMTS濃度とを比較することによって、再灌流治療効果を判別することができる。
効果的な再灌流治療が行われた場合にADAMTSが血液中から消失する時間については、当業者であれば従来のカテーテル検査や心電図検査などの方法で得られたデータと組み合わせて、疾患の種類や対象患者毎に適宜決定することが可能である。
本発明は、急性虚血性疾患の治療において、「急性虚血性疾患に羅患しているか否かを判別」することが可能であると共に、それに対して施した「再灌流治療の治療効果を判定」することもできるので、急性虚血性疾患に対する一連の医療サイクルのあらゆる局面において極めて有用な発明であるといえる。
2.再灌流治療効果判定用キット
本発明は、ADAMTSを認識する抗体を含む、再灌流治療効果判定用キットを提供する。本発明における「ADAMTSを認識する抗体」は、前記「1.再灌流治療効果を判定する方法」における「ADAMTSを認識する抗体」と同様の方法で調製することができる。
該キット中には、ADAMTSを認識する抗体以外に試薬等が含まれていてもよく、これらの試薬等は、予めADAMTSを認識する抗体と一緒になっていてもよいし、別々の容器に格納されていてもよい。試薬等としては、処理液や抗体を希釈するための緩衝液、2次抗体、標識物質(例、蛍光色素、酵素)、反応容器、陽性対照(例、組換えADAMTS)、陰性対照、固相、検査プロトコールを記載した指示書などが挙げられる。これらの要素は、必要に応じて予め混合しておくこともできる。該キットを使用することにより、患者に施した再灌流療法の治療効果の有効性の判断が、簡便、迅速かつ高精度となる。
本発明のキットにおいて、ADAMTSを認識する抗体は、好ましくはADAMTS−1を認識する抗体である。
以下、参考例および実施例を示してさらに具体的に本発明を説明する。以下は代表的な参考例および実施例を示すものでこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
[参考例1]低酸素状態の培養細胞におけるADAMTS−1 mRNAの検出
(1)細胞培養
ヒト冠動脈内皮細胞株(HCAEC)は、10%FCSを含むEBM−2培地(タカラバイオ社製)で、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、10%FCSを含むEBM−2培地(ケンブレックス社製)で、サル腎臓細胞株(COS7)は、10%FCSを含むDMEM培地(シグマ社製)で、心筋細胞株(H9C2)は、10%FCSを含むDMEM培地(シグマ社製)で、ブタ大動脈平滑筋細胞株(SMC)は、10%FCSを含むDMEM培地(シグマ社製)で培養した。
(2)低酸素培養とADAMTS−1 mRNAの抽出
3×10個の上記細胞を、サブコンフルエントな状態で炭酸ガス培養器の中で培養し、窒素ガスを充てんすることで低酸素状態(1%O)を作りだした。1時間、3時間、6時間および24時間ずつそれぞれ培養し、各細胞のRNAをAGPC法にて抽出した。
(3)ADAMTS−1 mRNA発現量の測定
ADAMTS−1のmRNA発現量は、LightCycler rapid thermal cycler system(Roche社製)を用いたリアルタイムPCR法で測定した。詳細には、mRNAをテンプレートにして、逆転写酵素(Reverse transcriptase,SS−IIインビトロジェン社)を用いてcDNAを合成した後に、ADAMTS−1特異的プライマーをデザインし、リアルタイムPCR反応を行った。内部標準としてαチューブリンを用いて、定量化した。
結果を図1に示す。ADAMTS−1は、低酸素状態の血管内皮細胞で発現が亢進した。特に、HUVECを用いた場合は急性期(1時間〜3時間)の低酸素状態において著しく発現が亢進することが分かった。一方、他の組織の細胞では、低酸素状態におけるADAMTS−1の発現量に著しい差異は生じなかった。
Upperプライマー:CACTCTGCGGAACTTTTGC(配列番号1)
Lowerプライマー:GCATCATCATGTGGCATGTTA(配列番号2)
[参考例2]ADAMTSがバイオマーカーとなりうる疾患
急性心筋梗塞患者、安定狭心症患者および健常者よりそれぞれ入院時に採血を行い、血清ADAMTS−1レベルをELISA法にて測定した。結果を図2に示す。
急性虚血性疾患の代表的な疾患である急性心筋梗塞患者ではADAMTS−1が多量に発現していたが、同じ虚血でも急性虚血性でない安定狭心症患者では、健常者と同レベルの発現量しか認められず、ADAMTS−1が急性虚血性疾患特異的な診断バイオマーカーであることが示された。
[実施例1]ADAMTS−1の検出
(1)抗原固相化プレートの作製
組換えADAMTS−1は、市販の組換えADAMTS−1を購入(Abnova社製)し使用した。96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)に、前記組換えADAMTS−1溶液(リン酸緩衝液中、pH7.4)を、濃度を変えて100μL/ウェルで加え、4℃で一晩静置してプレート表面に抗原を結合させた。0.01%Tween20含有リン酸緩衝液(PBST)でウェルを2回洗浄後、非特異的なプレートへの吸着や非特異的反応を抑制するために、2%BSA(シグマ社製)含有リン酸緩衝液を150μL/ウェルで加え、室温で1.0時間静置してプレートのブロッキングを行った。次いでPBSTでウェルを3回洗浄して、組換えADAMTS−1抗原固相化プレートを作製した。
(2)組換えADAMTS−1の検出および検量線の作成
(1)で作製したプレートに、マウス抗ADAMTS−1抗体(1.0μg/mL,Abnova社製)を100μL/ウェルで加え、室温で2時間静置して抗ADAMTS−1抗体と組換えADAMTS−1とが結合した複合体を形成させた。PBSTでウェルを3回洗浄後、POD標識した抗マウスIgG抗体(5000倍希釈,MBL社製)を100μL/ウェルで加え、室温で1.0時間静置した。PBSTでウェルを3回洗浄後、TMB溶液を100μL/ウェルで加え、室温で15分静置して残ったPODを発色させた。100μL/ウェルの1N塩酸を加えて反応を停止させ、450nmにおける吸光度を測定した。組換えADAMTS−1濃度に対するそれぞれの吸光度をプロットし、検量線を作成した。結果を図3に示す。
[実施例2]ヒト血清中におけるADAMTS−1の検出
組換えADAMTS−1溶液の代わりに、経皮的冠動脈形成術(PTCA)を施した急性心筋梗塞(AMI)患者(3名)および大動脈解離患者から採取した血清を検体として用い、実施例1と同様の操作を行って吸光度を測定した。PTCA施術時を0時間とし、施術後4時間、8時間、12時間、24時間、48時間の血清サンプルについても測定した。結果を図4に示す。さらに同様の測定を別のAMI患者(7名)についても行った。結果を図5に示す。
大動脈乖離患者におけるADAMTS−1濃度について大きな変化は認められなかったが、AMI患者ではPTCA後約4時間で著しい吸光度の低下を示した。
なお図4におけるAMI患者No.1は発症後120分で再開通に成功した症例で、障害心筋範囲の程度を示すといわれるピークCKは2889IU/Lであった。AMI患者No.2は再開通までの時間が135分であり、ピークCKは3461IU/Lと障害の程度は大きいと考えられたが、術後の経過が非常に良好で、現在の心機能もよく、現在に至るまで健在である。AMI患者No.3は血管造影時には既に自然再開通していた症例であり、ADAMTS−1レベルが低かったと考えられた。ピークCKは1508IU/Lであった。再開通したことは血管造影で確認した。
以上のことから、血液中のADAMTS−1濃度を指標に、患者に対して施した再灌流療法の効果を迅速に判断することができることが分かった。
[実施例3]他の虚血バイオマーカーとの相関
従来の虚血バイオマーカーであるトロポニンI(またはトロポニンT)やH−FABP(心臓由来脂肪酸結合蛋白質)は、心筋逸脱酵素であって虚血に伴う心筋の崩壊により血中に逸脱することが知られている。このような従来の虚血バイオマーカーとADAMTS−1がその挙動を共にするか否かを調べた。
組換えADAMTS−1およびマウス抗ADAMTS−1抗体を用いるかわりに精製トロポニンIまたは精製H−FABP、およびマウス抗トロポニンI抗体またはヤギ抗H−FABP抗体をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様の方法によりトロポニンIまたはH−FABP濃度と吸光度にかかる検量線を作成した。次いで実施例2と同様の方法により血中のトロポニンIおよびH−FABP濃度を測定し、各サンプルにおいて同時に測定したADAMTS−1濃度との関係を散布図上でプロットし、比較した。結果を図6に示す。
トロポニンとH−FABPについては、一方の血中濃度が上昇すれば、もう一方も上昇する関係にあり相関関係を示したが、ADAMTS−1とトロポニンI、およびADAMTS−1とH−HABPはそれぞれ血中濃度が相関しなかった。したがって、ADAMTSは従来の虚血バイオマーカーとは挙動を共にせず、作用機序も異なるユニークな新規虚血バイオマーカーであることが示された。この違いは、トロポニンIやH−FABPが心筋逸脱酵素であるのに対して、ADAMTSは血管内皮細胞由来の分泌蛋白質であることに由来すると考えられる。
本発明は、再灌流治療の成功により、数時間のうちにすみやかに正常化する特性を有するADAMTSを血中でモニタリングすることで、再灌流療法の成功を判定できる。したがって本発明の判別方法によると、簡易かつ迅速に再灌流療法の治療効果を判別することができる。また、本発明の再灌流治療効果判定用キットや再灌流治療効果検査薬を用いることにより、施した再灌流治療が効果的に行われたか否かを簡便、迅速かつ高精度に診断することができる。
本出願は、日本で出願された特願2008−289118(出願日:2008年11月11日)を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (1)

  1. DAMTS−1を認識する抗体を線状に固相化したニトロセルロースシートからなる短冊形状の抗体固相化支持体と、
    抗体固相化支持体の上端側に積層した吸水性担体と、
    抗体固相化支持体の下端側に積層した、固相化した前記ADAMTS−1を認識する抗体と接触した前記血漿により形成した複合体を着色させる粒状標識物保持体及び液状試料吸収用担体とを備え急性虚血性疾患の再灌流治療効果判定キットであって、
    再灌流治療を施した対象由来の血液から分離した血漿と、ADAMTS−1を認識する抗体とを接触させて形成した複合体を、粒状標識で着色することで検出し、再灌流治療を施した直後の血液による複合体の着されたラインが、再灌流治療の一定時間経過後の血液では消失することにより治療効果を判定可能としたキット。
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