JP5650420B2 - 信号処理装置、レーダ装置、信号処理方法、および信号処理プログラム - Google Patents

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この発明は、入力された信号に各種演算処理を行う信号処理装置に関する。
従来、レーダや音響機器においては、エコー信号をコヒーレント積分し、SN比を改善することが行われている(特許文献1を参照)。
特開2002−131421号公報
しかし、コヒーレント積分は、送信位置から等距離となるエコー信号を方位方向に平均化する処理であるため、図1(A)および同図(B)に示すように、エコー信号に突発的に高レベルとなる干渉成分(他船から送信された電磁波等)が含まれていると、この干渉成分がコヒーレント積分によって方位方向に引き延ばされてしまう。そのため、同図(B)に示すように、方位方向にある程度の広がりを持った画像として表示されてしまい、見難いレーダ画像になってしまう。また、場合によっては物標が存在するように見えてしまうおそれもあった。
そこで、この発明は、コヒーレント積分を行う場合において、干渉成分による影響を軽減した信号処理装置を提供することを目的とする。
本発明の信号処理装置は、方位毎のエコー信号を受信し、各方位のスイープデータを形成するスイープデータ形成手段と、前記スイープデータの振幅を検出する振幅検出手段と、互いに異なる方位に対するスイープデータの振幅に基づいて閾値を決める閾値決定手段と、各方位のスイープデータのうち、振幅が前記閾値以上となるデータをより小さい値に置換する置換手段と、前記置換手段によって置換されたデータを含むスイープデータを方位方向に積分する積分処理部と、を備えたことを特徴とする。
このように、方位方向の複数のスイープデータに基づいて閾値を決め、閾値以上となる突発的な高レベル信号を干渉成分であると判断し、より小さい値(例えばゼロ)に置換することで、データとして無視される態様としているため、コヒーレント積分によって方位方向に引き延ばされることがなくなる。干渉成分は、方位方向に連続することが少ないため、方位方向の複数のスイープデータに基づいて閾値を決めることにより、干渉成分だけを好適に除去することができる。一方で、物標からのエコー信号は、コヒーレント積分の対象となる方位方向の複数データおいて大きな振幅値の差がない(全て高レベルの信号となる)。したがって、閾値自体が大きくなるため、ゼロ置換されることはない。なお、物標のエッジ部分については、方位方向に徐々に振幅値が大きくなっていくため、閾値を超えるデータが一部存在する可能性もあるが、物標は方位方向にある程度の幅を有し、方位方向に大きい振幅値を示すデータが連続するため、コヒーレント積分によってレベルが抑制されることはほとんどない。
また、コヒーレント積分の対象となる全データのうち、振幅値が小さい側の複数(半数)データの振幅値の平均値から閾値を決定すれば、干渉成分が方位方向に複数点存在した場合であっても、これらの干渉成分のデータが閾値の算出に影響することがないため、高精度に干渉成分だけを除去することができる。
さらに、上記平均値に所定の係数(例えば2程度)を乗算して閾値を決定しておけば、平均値よりはるかに高レベルとなる干渉成分だけを的確に除去することができる。
この発明によれば、コヒーレント積分を行う場合において、干渉成分による影響を軽減することができる。
エコー信号に干渉成分が含まれている場合において、コヒーレント積分前後のエコー画像を比較した図である。 本発明の信号処理装置を含むレーダ装置の構成を示すブロック図である。 干渉除去処理部14および積分処理部15の詳細な構成を示すブロック図である。 コヒーレント積分の対象となるスイープデータに干渉成分が含まれている場合の各種処理による振幅値を示す図である。 コヒーレント積分の対象となるスイープデータが物標のエコー信号である場合の各種処理による振幅値を示す図である。 本実施形態における干渉除去処理を行う場合において、コヒーレント積分前後のエコー画像を比較した図である。
図2は、信号処理装置を内蔵したレーダ装置の構成を示すブロック図である。レーダ装置は、例えば船舶に設置され、自船の周囲に電磁波を送信し、エコー信号を受信して他船等の物標を探知する装置である。
同図において、レーダ装置は、アンテナ11、受信部12、スイープメモリ13、干渉除去処理部14、積分処理部15、座標変換部16、画像メモリ17、および表示器18を備えている。
アンテナ11は、自船の周囲の所定方位毎にパルス状に電磁波を送信し、エコー信号を受信する。受信部12は、アンテナ11で受信したエコー信号をデジタル変換し、スイープデータとしてスイープメモリ13に出力する。スイープデータは、電磁波の送信方位毎に、自船からの距離に対応付けられたデータとして記憶される。すなわち、受信部12は、受信したエコー信号を余弦成分(実数成分)Iと90度位相がずれた正弦成分(虚数成分)Qとからなる複素信号(位相の情報を含んだデータ)としてスイープデータを形成する。スイープメモリ13には、このスイープデータが全方位分(1スキャン分)、記憶される。
干渉除去処理部14は、スイープメモリ13に記憶されているスイープデータを読み出して干渉除去処理を行い、干渉除去処理後のスイープデータを積分処理部15に出力する。干渉除去処理については後に詳しく述べる。
積分処理部15は、干渉除去処理部14から出力された干渉除去処理後のスイープデータにコヒーレント積分を行う。コヒーレント積分は、各方位のスイープデータについて、自船からの距離が等しい複数方位分のデータ列(コヒーレントとみなせるデータ列)の積分を行う処理である。コヒーレント積分は、単純な加算処理(単なる積分)であってもよいし、FFT(高速フーリエ変換)やDFT(離散フーリエ変換)等のデジタルフィルタ処理であってもよい。
このコヒーレント積分は、各スイープデータの各離散値の全てについて行うとともに、全方位のスイープデータに対して行う。物標からのエコー信号は、相対速度がゼロの物標の場合、スイープ間で同位相となり、コヒーレント積分によってレベルが増大する。相対速度を持った物標の場合、スイープ間で一定量の位相変化となり、FFTやDFT等のデジタルフィルタ処理によってレベルが増大するが、ノイズ成分はスイープ毎で位相がランダムに変化するため、コヒーレント積分によってレベルが抑制される。したがって、コヒーレント積分を行うことによってSN比を改善することができる。ただし、コヒーレント積分の対象となるスイープデータに干渉成分のような突発的に高レベルの信号が含まれていた場合、この高レベルの信号が方位方向に平均化されてしまう。本実施形態のレーダ装置は、上記干渉除去処理部14によってこの突発的な高レベルの信号である干渉成分を除去するものである。
座標変換部16は、コヒーレント積分後のスイープデータを入力し、自船の位置を原点とした直交座標系に変換して、各スイープデータの値に応じた階調の画像輝度値を算出し、画像メモリ17に出力する。この直交座標系の各座標の画像輝度値が画像データとして画像メモリ17に記憶される。この画像メモリ17に記憶されている画像データがレーダ画像として表示器18に画面表示される。
以下、干渉除去処理部14および積分処理部15の処理について詳細に説明する。図3は、干渉除去処理部14および積分処理部15の詳細な構成を示すブロック図である。
干渉除去処理部14は、ゼロ置換処理部151、DET152、ソート処理部153、および閾値検出部154を、1つまたは数個備えている。ゼロ置換処理部151、DET152、ソート処理部153、および閾値検出部154は、それぞれ距離方向に順次処理を行う。同図の例では、説明の便宜上、ゼロ置換処理部151、DET152、ソート処理部153、および閾値検出部154を、それぞれ距離方向のデータ数分備えているものとして説明する。また、積分処理部15は、当該距離方向のデータ数分だけコヒーレント積分処理部161を備えており、それぞれゼロ置換処理部151から出力されたスイープデータ(複素信号)についてコヒーレント積分を行う。
ゼロ置換処理部151およびDET152には、自船から等距離の複数方位分(コヒーレントと見なせる時間内のデータ数分)のスイープデータが入力される。コヒーレントとみなせるデータ数は、所定時間内に送信する電磁波パルスの数(PRF)、アンテナの回転数、あるいはハードウェア規模等によって適宜設定すればよいが、例えば8〜32点程度のデータ数とする。
DET152は、入力した各スイープデータについて、振幅値A=√(I+Q)を検出する。検出した振幅値は、ゼロ置換処理部151およびソート処理部153に入力される。
ソート処理部153は、入力した各スイープデータの振幅値に応じて、振幅値の小さい順にデータ列を並び替える処理を行う。閾値検出部154は、ソート処理部153によって並び替えられたデータ列の中から、相対的に振幅値の小さい順に複数点のデータを選択する。選択数は、例えば、全データ数の半分程度とするが、少なくとも1つであればよく、半分より少なくしてもよいし、多くしてもよい。そして、閾値検出部154は、選択したデータの平均値を算出し、この平均値に所定の係数α(例えば2、4,6等の任意の値)を掛けた値を閾値として算出する。算出した閾値は、ゼロ置換処理部151に入力される。
ゼロ置換処理部151は、閾値検出部154から入力された閾値と、各スイープデータの振幅値とを比較する。ゼロ置換処理部151は、閾値以上の振幅値を示すスイープデータが存在した場合、当該スイープデータ(スイープメモリ13から入力した複素信号)を0に置換し、コヒーレント積分処理部161に出力する。閾値未満の振幅値を示すスイープデータについては、スイープメモリ13から入力した複素信号をそのままコヒーレント積分処理部161に出力する。なお、0置換ではなく、より小さい値に置換する態様であってもよい。この場合もコヒーレント積分による方位方向の引き延ばしを低減することができる。
図4を参照して、上記各種処理について説明する。図4は、コヒーレント積分の対象となるスイープデータに干渉成分が含まれている場合の例を示す図である。同図においては、コヒーレント積分を行うデータ数を8点とし、上述の係数αを2とする例を示している。
同図(A)は、DET152が検出した各スイープデータの振幅値を示す図であり、横軸を方位方向として縦軸にスイープデータの各振幅値を示したものである。同図(A)に示すように、スイープデータに干渉成分が含まれている場合、突発的に大きな振幅値を示すスイープデータが存在することになる。干渉成分ではないデータ(物標のエコーあるいはノイズ)については振幅値に大きな差はない。
したがって、干渉成分が含まれている場合、同図(B)に示すように、ソート処理部153が振幅値の小さい順にデータ列を並び替え、同図(C)に示すように、閾値検出部154が振幅値の小さい順に複数点のデータを選択して平均値を算出し、係数αを掛けた閾値を算出した場合、当該閾値より大きい値が存在することになる。そのため、同図(D)に示すように、ゼロ置換処理部151において、突発的に振幅値の大きいデータが0に置換される。
干渉成分であると判断したデータを0に置換することで、当該干渉成分(高レベルのデータ)がコヒーレント積分によって方位方向に平均化されて引き延ばされることがなくなる。そのため、従来の様に方位方向に広がりを持ったエコー画像が表示される可能性が低くなり、物標が存在するように見えることがなくなる。
なお、仮に、干渉成分であると判断したデータを他の適当な値に置き換えてしまうと、そのデータの位相も変化してしまうため、コヒーレント積分(FFT)の計算に影響を与えるが、本実施形態では、干渉成分であると判断したデータをゼロに置換することで、干渉の影響により入力されるはずのエコーデータが元々失われていることになる(データとして無視される態様としている)ため、データの置換を行ったとしてもコヒーレント積分の計算に影響を与えることがない。
また、本実施形態では、コヒーレント積分の対象となる全データのうち、振幅値が小さい側の複数(半数)データの振幅値の平均値から閾値を決定するため、例えば干渉成分のデータが1点だけでなく、方位方向に複数点存在した場合であっても、これらの干渉成分のデータが閾値の算出に影響することがないため、高精度に干渉成分だけを除去することができる。
また、上記のような干渉除去処理を行ったとしても、物標からエコー信号に影響を及ぼすことはない。図5は、スイープデータが物標からのエコー信号である場合の各種処理を示す図である。同図(A)に示すように、物標からのエコー信号は、コヒーレント積分の対象となる全データおいて大きな振幅値の差がない(全て高レベルの信号となる)。したがって、同図(B)に示すように、振幅値の小さい順に複数点のデータを選択し、平均値を算出すると、平均値自体が大きくなる。そのため、同図(C)に示すように、平均値と最も振幅値の大きいデータとの差は小さくなる。さらに、閾値は、平均値に所定の係数αを掛けた値であるため、最も振幅値の大きいデータよりもはるかに大きくなり、ゼロ置換されることはない。なお、物標のエッジ部分については、方位方向に徐々に振幅値が大きくなっていくため、閾値を超えるデータが一部存在する可能性もあるが、物標は方位方向にある程度の幅を有し、方位方向に大きい振幅値を示すデータが連続するため、コヒーレント積分によってレベルが抑制されることはほとんどない。
図6は、上述の様な干渉除去処理を行う場合において、コヒーレント積分前後のレーダ画像を比較した図である。同図(A)はコヒーレント積分前のレーダ画像を示した図であり、同図(B)は本実施形態のコヒーレント積分後のレーダ画像を示す図である。同図(A)および同図(B)に示すように、コヒーレント積分によりSN比が改善され、物標は強調されて表示されるようになるとともに、干渉成分も除去されるため、レーダ画像として見難くなることもなく、物標と見違えるおそれもない。
なお、上記実施形態においては、スイープデータをそのままコヒーレント積分している例を示したが、距離方向にパルス圧縮を行うレーダ装置の場合においても有効である。仮に、パルス圧縮の対象となるスイープデータに干渉成分が含まれ、そのままパルス圧縮を行ったとしても、上述の様に方位方向による閾値判定によって当該データが0置換され、コヒーレント積分によって物標のエコーデータだけが強調されるためである。
また、本実施形態においては、レーダ装置について説明したが、位相の情報を得ることができるものであればどの様な装置にも適用することが可能である(例えばスキャニングソナーに用いることも可能である)。
11…アンテナ
12…受信部
13…スイープメモリ
14…干渉除去処理部
15…積分処理部
16…座標変換部
17…画像メモリ
18…表示器
151…ゼロ置換処理部
152…DET
153…ソート処理部
154…閾値検出部
161…コヒーレント積分処理部

Claims (8)

  1. 方位毎のエコー信号を受信し、各方位のスイープデータを形成するスイープデータ形成手段と、
    前記スイープデータの振幅を検出する振幅検出手段と、
    互いに異なる方位に対するスイープデータの振幅に基づいて閾値を決める閾値決定手段と、
    各方位のスイープデータのうち、振幅が前記閾値以上となるデータをより小さい値に置換する置換手段と、
    前記置換手段によって置換されたデータを含むスイープデータを方位方向に積分する積分処理部と、
    を備え、
    前記閾値決定手段は、互いに異なる方位に対するスイープデータのうち、相対的に振幅が小さい順に複数のスイープデータを選定し、該選定スイープデータに基づいて前記閾値を決めることを特徴とする信号処理装置。
  2. 請求項1に記載の信号処理装置であって、
    前記置換手段は、前記データをゼロ置換することを特徴とする信号処理装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の信号処理装置において、
    前記閾値決定手段は、前記選定スイープデータの平均値に所定の係数を乗算することにより前記閾値を算定することを特徴とする信号処理装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理装置において、
    前記積分は、フーリエ変換あることを特徴とする信号処理装置。
  5. 前記スイープデータは、複素信号であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の信号処理装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の信号処理装置と、
    電磁波を方位毎に送信したエコー信号を受信して前記スイープデータ形成手段に入力する電磁波送受信部と、
    前記積分処理部が積分処理した後のスイープデータに基づいて画像を表示する表示手段と、を備えたレーダ装置。
  7. 方位毎のエコー信号を受信し、各方位のスイープデータを形成するスイープデータ形成手順と、
    前記スイープデータの振幅を検出する振幅検出手順と、
    互いに異なる方位に対するスイープデータの振幅に基づいて閾値を決める閾値決定手順と、
    各方位のスイープデータのうち、振幅が前記閾値以上となるデータをより小さい値に置換する置換手順と、
    前記置換手順によって置換されたデータを含むスイープデータを方位方向に積分する積分処理手順と、
    を実行し、
    前記閾値決定手順は、互いに異なる方位に対するスイープデータのうち、相対的に振幅が小さい順に複数のスイープデータを選定し、該選定スイープデータに基づいて前記閾値を決めることを特徴とする信号処理方法。
  8. 方位毎のエコー信号を受信し、各方位のスイープデータを形成するスイープデータ形成手順と、
    前記スイープデータの振幅を検出する振幅検出手順と、
    互いに異なる方位に対するスイープデータの振幅に基づいて閾値を決める閾値決定手順と、
    各方位のスイープデータのうち、振幅が前記閾値以上となるデータをより小さい値に置換する置換手順と、
    前記置換手順によって置換されたデータを含むスイープデータを方位方向に積分する積分処理手順と、
    をコンピュータに実行させ、
    前記閾値決定手順は、互いに異なる方位に対するスイープデータのうち、相対的に振幅が小さい順に複数のスイープデータを選定し、該選定スイープデータに基づいて前記閾値を決めることを特徴とする信号処理プログラム。
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