JP5645416B2 - 自動車の前部車体構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両衝突時の入力をアッパメンバからフロントピラーを介してドアベルトラインリインホースに伝達するようにした自動車の前部車体構造に関する。
この種の前部車体では、車両衝突時のフロントピラーの断面崩れを防止する観点から、フロントピラー内にバルクヘッドを、アッパメンバとドアベルトラインリインホースとの間に位置し、かつフロントピラー内を略閉塞するよう配置する場合がある。
この場合、フロントピラー内にはラジオアンテナ等のガイドチューブが配索されていることから、該ガイドチューブを通すための切欠き部を前記バルクヘッドに形成するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
また、この特許文献1では、オフセット衝突時の入力がアッパメンバの車内側に集中し易いことを考慮して切欠き部を車両前外側コーナー部に形成している。
特開2005−271761号公報
ところで、前記従来構造では、アッパメンバの車内側を伝わる入力については、バルクヘッドを介してドアベルトラインリインホースに効率よく伝達できるものの、アッパメンバの車外側を伝わる入力についてはバルクヘッドの切欠き部で途切れてしまうことから、ドアベルトラインリインホースに効率よく伝達することができないという懸念があり、この点でのさらなる改善が要請されている。
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、車両衝突時の入力の伝達効率をより一層高めることができる自動車の前部車体構造を提供することを課題としている。
請求項1の発明は、車両上下方向に延びるフロントピラーに車両前後方向に延びるアッパメンバの後端部を結合するとともに、前記フロントピラーの後方にドアベルトラインリインホースを車両前後方向に見たとき前記アッパメンバに対向するように配置し、前記フロントピラー内にバルクヘッドを前記アッパメンバとドアベルトラインリインホースとの間に位置するよう配置し、車両衝突時の入力を前記アッパメンバからフロントピラー,バルクヘッドを介して前記ドアベルトラインリインホースに伝達するようにした自動車の前部車体構造であって、
前記バルクヘッドは、前記フロントピラー内を略閉塞するよう形成された少なくとも1つの横辺部を有し、該横辺部の前側かつ外側のコーナ部には、前記フロントピラー内に車載部品を通すための切欠き部が形成され、さらに前記横辺部の前記切欠き部より車両内側の部位には、車両前後方向に延びる段差部が形成され、
前記アッパメンバには、上下方向に延びる縦壁部と該縦壁部の、上,下縁に車両外側に向けて屈曲形成された上,下フランジ部と、後縁に車両内側に向けて屈曲形成された後フランジ部とを有する縦断面コ字形状のリインホースが配置固定され、
該リインホースは、前記縦壁部と下フランジ部とでなす稜線の前端部が前記アッパメンバの外側稜線に近接し、車両前後方向に見たとき後端部が前記バルクヘッドの段差部に対向するように斜め内側に傾斜させて配置されており、
前記バルクヘッドは、車両前後方向に見たとき前記少なくとも1つの横辺部が前記アッパメンバの上壁部及びドアベルトラインリインホースの上壁部と対向するように配置されていることを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、前記バルクヘッドは、上,下一対の横辺部と該横辺部同士を連結する縦辺部とを有し、車両前後方向に見たとき、前記下側の横辺部が前記アッパメンバの上壁部と前記ドアベルトラインリインホースの上壁部とに対向し、前記上側の横辺部が前記リインホースに対向するように配置され、該リインホースは、これの下側のフランジ部が前記アッパメンバの上壁面に結合され、上側のフランジ部がカウル部材のフードヒンジ取付け座に結合されていることを特徴としている。
請求項1の発明に係る前部車体構造によれば、バルクヘッドの横辺部の切欠き部より車両内側部分に、車両前後方向に見たときドアベルトラインリインホースに対向する段差部を形成し、アッパメンバに断面コ字状のリインホースを設け、該リインホースの縦壁部とフランジ部とでなす稜線の前端部をアッパメンバの車両外側稜線に近接させて配置し、後端部をバルクヘッドの段差部に対向するように配置した。そのため、車両衝突時にアッパメンバの車外側に伝わる入力の一部は、アッパメンバからリインホースを経てバルクヘッドに伝達され、該バルクヘッドの段差部を介してドアベルトラインリインホースに伝達されることとなる。これにより、前記入力をバルクヘッドの切欠き部で途切れることなく、ドアベルトラインリインホースに効率良く伝達することができ、車両衝突時の入力の伝達効率をより一層高めることができる。
また前記リインホースの形状等を工夫することにより、アッパメンバとフロントピラー,バルクヘッドとの当たり方を自由に設定することが可能となり、これによりアッパメンバの形状等を簡素化できる。例えば、アッパメンバの成形方法を、絞り成形からコストの低い曲げ成形に変更することが可能となる。
請求項2の発明では、バルクヘッドの下側の横辺部がアッパメンバの上壁部とドアベルトラインリインホースの上壁部とに対向し、上側の横辺部がリインホースに対向するように配置したので、入力の一部をリインホースからフロントピラーの上部側を伝ってルーフ部材側に分散させることができ、ドアベルトラインリインホースへの負担を軽減できる。
また前記リインホースの下フランジ部をアッパメンバの上壁面に結合し、上フランジ部をカウル部材のフードヒンジ取付け座に結合したので、フードヒンジの取付け剛性を高めることができ、カウル部材の剛性を緩和できる。その結果、カウル部材の板厚等を小さくすることが可能となり、車体重量,材料コストを低減できる。
本発明の実施例1による自動車の前部車体の室内側から見た側面図である。 前記前部車体の分解斜視図である。 前記前部車体の平面図である。 前記前部車体の断面正面図(図2のIV-IV線断面図)である。
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図4は、本発明の実施例1による自動車の前部車体構造を説明するための図である。なお、本実施例の説明のなかで前後,左右という場合は、車体に搭載されたシートに着座した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
図において、1は自動車の前部車体を示している。この前部車体1は、車両上下方向に延びる左,右のフロントピラー2,2と、該左,右のフロントピラー2から車両前方に延びるアッパメンバ3,3と、該左,右のアッパメンバ3の間に配設され、前部車体1をエンジン室Aと車室Bとに画成するカウルパネル7と、該カウルパネル7の前側の左,右のアッパメンバ3の上方に配設され、前記エンジン室Aを開閉するフード8とを有する。
前記左,右のフロントピラー2の上端部にはルーフ部材4が結合され、下端部にはフロア部材5が結合されている。このフロントピラー2,ルーフ部材4,フロア部材5及びセンタピラー9によりフロントドア開口1aが形成されている。
このフロンドドア開口1aにはフロントドア6が配設されており、該フロントドドア6は、ドアヒンジ(不図示)を介して前記フロントピラー2に開閉可能に支持されている(図3参照)。
前記カウルパネル7は、フロントガラス(不図示)の下縁部を支持する上向きハット状のカウルアッパ7aと、該カウルアッパ7aの後縁部に結合され、前記フード8を支持するカウルロア7bと、該カウルロア7b及びカウルパネル7aの左,右端部に結合されたカウルサイド7c,7cとを有する。
前記カウルアッパ7aとカウルサイド7cとの左,右の結合部にはフードヒンジ取付け座7d,7dが形成されており、該左,右の取付け座7dにはフードヒンジ11,11が取り付けられている(図4参照)。
このフードヒンジ11は、前記取付け座7dにボルト締め固定された固定ヒンジ11aと、前記フード8にボルト締め固定されたヒンジアーム11cとをヒンジピン11bにより回動可能に連結した構造を有する。なお、図4は、フード8の全開位置を示している。
前記左,右のフロントピラー2は、アウタピラー2aとインナピラー2bとの間に該アウタピラー2aに沿うように形成されたピラーリインホース2cを配置し、これらを略角筒状の閉断面をなすように溶接により結合した構造を有する。
前記フロントドア6は、ドアアウタ6aとドアインナ6bとを結合してなるドア本体6c内にドアベルトラインリインホース10を配置した構造を有する。
前記ドアベルトラインリインホース10は、車両前後方向に見たとき、前記アッパメンバ3にフロントピラー2を介在させて対向するように配置されている。また車両側方から見ると、前記アッパメンバ3及びドアベルトラインリインホース10は、略同じ高さに位置し、かつ前後方向に略直線状なすように配置されている。
前記ドアベルトラインリインホース10は、上壁部10aと下壁部10bとの外縁同士を外縦壁10cで結合し、前記上壁部10a及び下壁部10bの内縁に上,下フランジ部10d,10dを屈曲形成した構造を有する。前記ドアベルトラインリインホース10は、これの上,下フランジ部10dを前記ドアインナ6bに結合することにより、該ドアインナ6bとで車両前後方向に延びる筒状の閉断面を形成している。
前記左,右のアッパメンバ3は、上壁部3aと下壁部3bとの外縁同士を外側壁部3cで結合し、前記上壁部3a及び下壁部3bの内縁に上,下フランジ部3d,3dを屈曲形成した構造を有する。この上フランジ部3dは前記カウルサイド7cの下部に結合され、下フランジ部3dは前記カウルロア7bが結合されたロアメンバ13に結合されている(図4参照)。
前記アッパメンバ3の外側壁部3cの後縁には後方に突出する後フランジ部3eが形成され、該後フランジ部3eは前記フロントピラー2のアウタピラー2aの外側面に溶接により結合されている。
前記左,右のフロントピラー2内にはバルクヘッド12が配設されている。このバルクヘッド12は、前記アッパメンバ3とドアベルトラインリインホース10との間に位置し、かつ車両前後方向に見たとき、アッパメンバ3及びドアベルトラインリインホース10に対向するように配置されている。
これにより、車両衝突時の入力Fは、前記アッパメンバ3からフロントピラー2,バルクヘッド12を介してドアベルトラインリインホース10に伝達され、該ドアベルトラインリインホース10からセンタピラー9を介して車体の後部に伝達される。
前記バルクヘッド12は、平面視で前記フロントピラー2内を略閉塞するように形成された上,下一対の上,下横辺部12a,12bと、該上,下横辺部12a,12bの外縁同士を結合する縦辺部12cと、前記上,下横辺部12a,12bの内縁に屈曲形成された上,下屈曲部12d,12eとを有する。
この上,下屈曲部12d,12eは、インナピラー2bに結合されており、縦辺部12cは、アウタピラー2aにピラーリインホース2cとともに結合されている。
前記バルクヘッド12の上,下横辺部12a,12bの車両前外側コーナー部には、切欠き部12f,12fが形成されている。この切欠き部12fにはアンテナ(不図示)に接続されたガイドチューブ(車載部品)14が挿通されている。
前記バルクヘッド12の上,下横辺部12a,12bの切欠き部12fより車両内側部位には、車両前後方向に延びる階段状の段差部12g,12gが形成されている。なお、この段差部12gは、階段状のものに限られるものではなく、例えば凹溝状のビードにより形成してもよい。
前記左,右のアッパメンバ3,3の上面には、リインホース17,17が配設されている。このリインホース17は、上下方向に延びる縦壁部17aと、該縦壁部17aの上,下縁に外側に屈曲形成された上,下フランジ部17b,17cと、前記縦壁部17aの後縁に内側に屈曲形成されたフランジ部17dとを有する。このフランジ部17dは、車両前後方向に見たときフロントピラー2,バルクヘッド12に対向しており、該後フランジ部17dと縦壁部17aとの間には補強ビード17eが形成されている。
前記バルクヘッド12は、車両前後方向に見たとき、下横辺部12bが前記アッパメンバ3の上壁部3aと、ドアベルトラインリインホース10の上壁部10aとに対向し、上横辺部12aが前記リインホース17のフランジ部17dに対向する位置に配置されている。
前記リインホース17は、これの下フランジ部17cが前記アッパメンバ3の上壁部3aの上面に溶接により結合され、上フランジ部17bが前記カウルサイド7cのフードヒンジ取付け座7dの外縁部に溶接により結合されている。このリインホース17,カウルサイド7c,アッパメンバ3とで閉断面18が形成されている(図4参照)。
前記リインホース17は、これの縦壁部17aと下フランジ部17cとでなす稜線aの前端部a′がアッパメンバ3の車外側稜線bの近傍に位置し、後端部a′′が前記バルクヘッド12の段差部12gに対向するように配置されている。
車両衝突時の入力Fは、アッパメンバ3の車外側稜線bを伝ってリインホース17に伝達され、該リインホース17の稜線aを伝ってバルクヘッド12の段差部12gを介してドアベルトラインリインホース10に伝達される(図3の矢印参照)。またリインホース17に伝達された入力Fの一部は、バルクヘッド12からフロントピラー2の上部を通ってルーフ部材4に伝達される。
本実施例によれば、バルクヘッド12の上,下横辺部12a,12bの切欠き部12fを除く内側部分にドアベルトラインリインホース10に対向する段差部12gを形成し、アッパメンバ3にリインホース17を設け、該リインホース17の縦壁部17aと下フランジ部17cとでなす稜線aの前端部a′をアッパメンバ3の車外側稜線bに近接させて配置し、後端部a′′をバルクヘッド12の段差部12gに対向するように配置したので、車両衝突時にアッパメンバ3の車外側に伝わる入力Fの一部は、アッパメンバ3からリインホース17を経てバルクヘッド12に伝達され、該バルクヘッド12の段差部12gを介してドアベルトラインリインホース10に伝達されることとなる。これにより、前記入力Fをバルクヘッド12の切欠き部12fで途切れることなく、ドアベルトラインリインホース10に効率良く伝達することができ、車両衝突時の入力の伝達効率をより一層高めることができる。
また本実施例では、前記リインホース17の形状等を工夫することにより、アッパメンバ3とフロントピラー2,バルクヘッド12との当たり方を自由に設定することが可能であり、これによりアッパメンバ3の形状等を簡素化できる。具体的には、アッパメンバ3を、従来の絞り形状からコストの低い曲げ形状に成形方法を変更することが可能となる。
本実施例では、車両前後方向に見たとき、前記バルクヘッド12の下横辺部12bが、アッパメンバ3の上壁部3aとドアベルトラインリインホース10の上壁部10aとに対向し、上横辺部12aがリインホース17のフランジ部17dに対向するように配置したので、入力Fの一部をリインホース17からフロントピラー2の上部側を伝ってルーフ部材4に分散させることができ、ドアベルトラインリインホース10への入力負担を軽減できる。これによりドアベルトラインリインホース10の薄板化が可能となる。

また前記リインホース17の下フランジ部17cをアッパメンバ3の上壁部3aの上面に結合し、上フランジ部17bをカウルサイド7cのフードヒンジ取付け座7dに結合し、これにより閉断面18を形成したので、フードヒンジ11の取付け剛性を高めることができ、ひいてはカウルサイド7cの板厚等を小さくすることが可能となり、車体重量,材料コストを低減できる。
1 前部車体
2 フロントピラー
3 アッパメンバ
7c カウルサイド(カウル部材)
7d フードヒンジ取付け座
10 ドアベルトラインリインホース
12 バルクヘッド
12a,12b 横辺部
12c 縦辺部
12f 切欠き部
12g 段差部
14 ガイドチューブ(車載部品)
17 リインホース
17a 縦壁部
17b,17c フランジ部
a リインホースの稜線
a′ 前端部
a′′ 後端部
b アッパメンバの車両外側稜線

Claims (2)

  1. 車両上下方向に延びるフロントピラーに車両前後方向に延びるアッパメンバの後端部を結合するとともに、前記フロントピラーの後方にドアベルトラインリインホースを車両前後方向に見たとき前記アッパメンバに対向するように配置し、前記フロントピラー内にバルクヘッドを前記アッパメンバとドアベルトラインリインホースとの間に位置するよう配置し、車両衝突時の入力を前記アッパメンバからフロントピラー,バルクヘッドを介して前記ドアベルトラインリインホースに伝達するようにした自動車の前部車体構造であって、
    前記バルクヘッドは、前記フロントピラー内を略閉塞するよう形成された少なくとも1つの横辺部を有し、該横辺部の前側かつ外側のコーナ部には、前記フロントピラー内に車載部品を通すための切欠き部が形成され、さらに前記横辺部の前記切欠き部より車両内側の部位には、車両前後方向に延びる段差部が形成され、
    前記アッパメンバには、上下方向に延びる縦壁部と該縦壁部の、上,下縁に車両外側に向けて屈曲形成された上,下フランジ部と、後縁に車両内側に向けて屈曲形成された後フランジ部とを有する縦断面コ字形状のリインホースが配置固定され、
    該リインホースは、前記縦壁部と下フランジ部とでなす稜線の前端部が前記アッパメンバの外側稜線に近接し、車両前後方向に見たとき後端部が前記バルクヘッドの段差部に対向するように斜め内側に傾斜させて配置されており、
    前記バルクヘッドは、車両前後方向に見たとき前記少なくとも1つの横辺部が前記アッパメンバの上壁部及び前記ドアベルトラインリインホースの上壁部と対向するように配置されている
    ことを特徴とする自動車の前部車体構造。
  2. 請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、
    前記バルクヘッドは、上,下一対の横辺部と該横辺部同士を連結する縦辺部とを有し、車両前後方向に見たとき、前記下側の横辺部が前記アッパメンバの上壁部と前記ドアベルトラインリインホースの上壁部とに対向し、前記上側の横辺部が前記リインホースに対向するように配置され、
    該リインホースは、これの下側のフランジ部が前記アッパメンバの上壁面に結合され、上側のフランジ部がカウル部材のフードヒンジ取付け座に結合されている
    ことを特徴とする自動車の前部車体構造。
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