JP3818869B2 - 自動車用ドアのベルトライン構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体側部のドア開口に配設されたドア本体内にベルトラインに沿うようにベルトラインリインホースを配設してなる自動車用ドアのベルトライン構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車においては、正面衝突時の車両前方からの入力をエプロンリインホースからフロントピラーを介してフロントドアに伝達し、さらに車体後方に伝達することにより、車室への影響を回避する構造を採用している。この場合、ドア本体内のドアインナパネルにベルトラインに沿うようにベルトラインリインホースを接合して閉断面を形成し、該ベルトラインリインホースに上記フロントピラーからの入力を伝達するようにしている。
【0003】
ところで、上記フロントドアの車室側にはインナハンドルやカップホルダ等の機能部品が取付けられている。これらの機能部品を取付けるにあたっては、室内空間を確保するために車室側への出っ張りをできるだけ小さくする必要があり、しかも衝突時の入力によるベルトラインリインホースの断面崩れを回避する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記機能部品の取付け構造の如何によっては、車室側に出っ張ったり、ベルトラインリインホースの断面確保が困難となったりするおそれがあり、この点での対策が要請されている。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、機能部品を取付ける場合に、ベルトラインリインホースの断面崩れを確実に防止できるとともに、車室側への出っ張りを防止して室内空間を確保できる自動車用ドアのベルトライン構造を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車体側部に形成されたドア開口に該ドア開口を開閉するドア本体を配設し、該ドア本体内にベルトラインリインホースをベルトラインに沿って配設してなる自動車用ドアのベルトライン構造において、上記ベルトラインリインホースを1つの縦長の閉断面構造をなすとともに、車両前側部分が後側部分より上下方向に拡大したものとし、該ベルトラインリイホースの車両前後方向中間部に、上側及び下側に閉断面が残るよう直合せ部を形成し、車両前後方向に見たとき、上側閉断面は上記直合せ部より車外側に、下側閉断面は該直合せ部より車内側にそれぞれ偏位しており、上記ベルトラインリインホースの上側閉断面の上側かつ車室側に車両前後方向に延びるパイプ部材を結合し、上記直合せ部にインナハンドル,カップホルダ,ウインドレギュレータ装置のパワーユニット等の機能部品を取り付けたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記パイプ部材の前端は上記ドア本体の前端より車両後方に位置していることを特徴としている。
【0010】
【発明の作用効果】
請求項1の発明にかかるベルトライン構造によれば、ベルトラインリインホースを1つの縦長の閉断面構造を有するものとしたので、ドア本体の車両前後方向の荷重に対する剛性を高めることができ、衝突時の入力による断面崩れを防止でき、該入力を確実に車体後方に伝達することができる。
【0011】
また本発明では、上記ベルトラインリインホースの前側部分を上下に拡大するとともに、車両前後方向中間部に上側,下側閉断面が残るよう直合せ部を形成し、該直合せ部を機能部品の配設スペースとしたので、ベルトラインリインホースの必要剛性を確保しつつ、機能部品の配置スペースを確保することができ、機能部品の車室側への出っ張りを防止できる。
【0012】
また、上記直合せ部の上側閉断面を該直合せ部より車外側に、下側閉断面を車内側にそれぞれ偏位させたので、下側閉断面の上方の空きスペースを有効利用して室内側機能部品(例えばインナハンドル,カップホルダ等)を配設でき、また上側閉断面の下方の空きスペースを有効利用してドア側機能部品(例えばウインドレギュレータ等)を配設することができる。
【0013】
さらにまた、上記ベルトラインリインホースの上側閉断面の上側かつ車室側に車両前後方向に延びるパイプ部材を結合したので、車両前後方向の入力に対する直合せ部の耐力を高めることができ、該直合せ部における断面崩れを確実に防止できる。
【0014】
また上記パイプ部材を上側閉断面の車室側壁の内面に配置したので、ドア本体の空きスペースを有効利用して配置することができ、ドア幅が大きくなることはない。
【0015】
請求項2の発明では、上記パイプ部材の前端をドア本体の前端より後方に位置させたので、側面衝突時にパイプ部材の前端部が断点となって折れ曲がることとなり、所望位置に断点を設定することができる。例えば上記パイプ部材の前端を乗員より前方位置に設定することにより、側面衝突時の乗員への影響を防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態による自動車用ドアのベルトライン構造を説明するための図であり、図1はフロントドアが配設された自動車の車体の側面図、図2はフロントドアのドア本体の側面図、図3はドア本体のベルトラインリインホースの分解斜視図、図4はドア本体の断面図(図2のIV-IV 線断面図)、図5はドア本体の断面図(図2のV-V 線断面図)、図6はドア本体の断面図(図2のVI-VI 線断面図)である。
【0018】
図において、1は自動車の車体側部を示しており、これは左,右のサイドパネル2,2の上端間にルーフパネル3を配設するとともに、下端間にフロアパネル(不図示)を配設して車室を形成した概略構造のものである。
【0019】
上記サイドパネル2は、車両上下方向に延びるフロントピラー8の上端部に車体後方に延びるルーフサイドレール9の前端部を接続するとともに、下端部に同じく車体後方に延びるロッカパネル13の前端部を接続し、上記フロントピラー8の後方のロッカパネル13とルーフサイドレール9との間に車両上下方向に延びるセンタピラー14を接続し、これによりフロントドア開口2a,リヤドア開口2bを形成した構造となっている。
【0020】
上記フロントピラー8には車両前方に延びるエプロンリインホース7の後端部が接続されており、該エプロンリインホース7の車外側には前輪(不図示)の上方を覆うフェンダエプロン6が配設されている。また上記エプロンリインホース7の前端間には車幅方向に延びるラジエタサポート(不図示)が、また後端間にはカウルパネル(不図示)が接続されており、このカウルパネル,ラジエタサボート,及び左右のエプロンリインホース7により囲まれた空間内にエンジン(不図示)が搭載されている。
【0021】
上記フロントドア開口2aには該ドア開口2aを開閉するフロンドドア4が、上記リヤドア開口2bには該ドア開口2bを開閉するリヤドア5がそれぞれ配設されている。
【0022】
上記フロントドア4は、ドアアウタパネル10とドアインナパネル11との外縁部同士を最中状に結合してなるドア本体4aと窓枠状のウインドフレーム4bとを一体形成したプレスドア構造のものである。このドア本体4a内には上記ウインドフレーム4bのウインド開口4cを開閉するドアガラス12が昇降可能に配設されている。
【0023】
上記ドアインナパネル11の前端部には前壁部11aが車幅方向外側に屈曲形成されており、該前壁部11aには上下一対のヒンジ取付け座11b,11bが形成されている。この各ヒンジ取付け座11bに取付けられたヒンジ部材16,16を介して上記フロントドア4が回動可能に支持されている。
【0024】
上記ドアアウタパネル10の内面にはドアアウタリインホース15がベルトラインLに沿って配設されている。このドアアウタリインホース15はマスチック接着剤によりドアアウタパネル10に結合されており、これによりドアアウタパネル10のベルトラインL部の剛性を高めている。
【0025】
上記ドアインナパネル11にはベルトラインLに沿うようにベルトラインリインホース20が配設されている。このベルトラインリインホース20は、車幅方向の断面視でハット状のアウタリインホース(車外側壁)21とインナリインホース(車内側壁)22とを最中状をなすように前縁部21a,22a同士,上縁部21b,22b同士,下縁部21c,22c同士,及び後縁部21d,22d同士をスポット溶接により接合してなるものであり、これによりドア本体4aの前後方向全長に渡って延び、図中上下方向に長い縦長矩形状の閉断面Aが形成されている。
【0026】
また上記アウタリインホース21の前端部にはドアミラ取付け部21fが一体形成され、該ドアミラ取付け部21fはドアミラリインホース18を介在させて上記ドアインナパネル11のドアミラ取付け座11fに接合されている。
【0027】
上記ベルトラインリインホース20は、車体側方から見て、車両前側部分が後側部分より上下方向に大きくなるように下辺部が前下方になだらかに傾斜しており、該ベルトラインリインホース20の前端面は上記エプロンリインホース7の後端面に対向している。これにより衝突時の入力をエプロンリインホース7からベルトラインリインホース20に確実に伝達できるようになっている。
【0028】
上記ベルトラインリインホース20の上縁部21b,22bはドアインナパネル11のドアガラス開口縁部11cに接合されており、下縁部21c,22cはドアインナパネル11の内壁11dに接合されている。また上記ベルトラインリインホース20の前縁部21a,22aは上記ドアインナパネル11の上側のヒンジ取付け座11bに接合されており、後縁部21d,22dはドアインナパネル11の後壁部(不図示)に接合されている。
【0029】
このようにしてドア本体4aのベルトラインL部には、上記ベルトラインリインホース20のみで構成された閉断面Aと、該ベルトラインリインホース20とドアインナパネル11とによる閉断面Bとがドア本体4aのベルトラインL全長に渡って連続するように形成されている。これにより、上記ベルトラインL部におけるドア剛性を大幅に高めることができ、衝突時の断面崩れを防止でき、衝突時のドア変形を防止できる。
【0030】
上記ベルトラインリインホース20の上下寸法の大きい前側寄り部分、即ち、長手方向(車両前後方向)中間部には直合せ部20aが形成されている。この直合せ部20aはアウタリインホース21及びインナリインホース22の上下方向中央部のみを互いに当接するよう内方,外方に凹ますことにより形成されたもので、上側閉断面A1,下側閉断面A2を残した状態で上下方向中央部のみが接合されている。ここで上側,下側閉断面A1,A2は前,後の閉断面Aに連通しており、全体として1つの閉断面をなしている。このように、上下方向寸法の大きい前側寄り部分に直合せ部20aを形成したので、該直合せ部20aを形成したことによる剛性の低下を抑制している。
【0031】
また、車両前後方向に見たとき(図5参照)、上記直合せ部20aに対して上側閉断面A1は車外側に位置し、下側閉断面A2は車内側に位置するように車幅方向に偏位している。
【0032】
そして上記直合せ部20aの車室側は機能部品の配設スペースとされている。具体的にはインナハンドル25が取付けられており、該インナハンドル25の前方にはカップホルダ(不図示)が取付けられている。また上記直合せ部20aの車外側にはウインドレギュレータ装置のパワーユニット(不図示)が取付けられている。
【0033】
上記インナリインホース22の上側閉断面A1の上側かつ車室側には車両前後方向に延びるパイプ部材27が配設されている。このパイプ部材27はインナリインホース22の上縁部22bの屈曲部に全長に渡ってCO2 溶接により接合されている。
【0034】
また、車幅方向に見たとき、上記パイプ部材27の前端27aは、カップホルダの前側で、かつ着座状態の乗員(不図示)より前方の位置に設定されており、後端27bはシートバック(不図示)の位置に設定されている。
【0035】
このようにして上記直合せ部20aの上部には上側閉断面A1とパイプ部材27との2つの閉断面が形成され、また下部には下側閉断面A2とインナリインホース22及びドアインナパネル11の閉断面Bとの2つの閉断面が形成されており、これらは直合せ部20aの全長に渡って形成されている。よって直合せ部20a全体の剛性を高めることができ、直合せ部20aを形成したことによる断点をなくすことができる。
【0036】
次に本実施形態の作用効果を説明する。
【0037】
本実施形態のベルトライン構造によれば、ベルトラインリインホース20をこれのみで構成された縦長矩形状の閉断面Aを有するものとしたので、ドア本体4aのベルトラインL部における剛性を高めることができ、衝突時の入力による断面崩れを防止でき、該入力を効率良く車体後方に逃がすことができる。
【0038】
また上記ベルトラインリインホース20の上下寸法の大きい前側寄り部分にアウタリインホース21及びインナリインホース22を互いに当接するように凹ませて直合せ部20aを形成し、該直合せ部20aの車室側部分を機能部品の配設スペースとし、インナハンドル25及びカップホルダを配設したので、機能部品が車室内に出っ張るのを防止でき、室内空間を確保できる。また上記直合せ部20aの車外側部分をパワーユニットの配設スペースとしたので、該パワーユニットの配設スペースを確保でき、ドアガラス12と干渉することなくパワーユニットを配置することができる。
【0039】
さらに上側,下側閉断面A1,A2が残るように直合せ部20aを形成し、しかも両閉断面A1,A2を前,後の閉断面Aに連通させたので、上記直合せ部20aを形成しながら必要な剛性を確保することができ、直合せ部20aを形成したことによる断面崩れを防止できる。
【0040】
本実施形態では、上記直合せ部20aに対して上側閉断面A1を車外側に、下側閉断面A2を車内側にそれぞれ偏位させたので、空きスペースを有効利用して上述のインナハンドル25,パワーユニットの配置スペースを確保することができる。
【0041】
本実施形態では、上記インナリインホース22の上縁部22bの車室側にパイプ部材27を接合したので、直合せ部20aの剛性低下をパイプ部材27で補うことができ、該直合せ部20aを形成したことによる断面崩れを確実に防止できる。
【0042】
また上記パイプ部材27をインナリインホース22の上縁部22bの屈曲部に配置したので、ドア本体4aの空きスペースを有効利用して配置することができ、パイプ部材27の配設によりドア幅が大きくなることはない。
【0043】
さらに上記パイプ部材27の前端27aを着座状態の乗員の前方位置に設定するとともに、後端27bをシートバック位置に設定したので、側面衝突時にパイプ部材27の前端27a,後端27bが断点となって乗員から離れた位置で折れ曲がることとなり、乗員への影響を防止できる。
【0044】
なお、上記実施形態では、ベルトラインリインホース20をアウタリインホース21とインナリインホース22とを閉断面Aをなすようにスポット溶接により結合して形成した場合を説明したが、本発明のベルトラインリインホースはこれに限るものではない。例えば、丸パイプ材を金型に装着し、該金型に高圧流体を供給することにより縦長矩形状の角筒パイプを形成するようにした、いわゆるハイドロフォーミング法によりベルトラインリインホースを形成してもよく、この場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるベルトライン構造を説明するためのフロントドアが配設された自動車の車体の側面図である。
【図2】上記フロントドアのドア本体の側面図である。
【図3】上記ドア本体のベルトラインリインホースの分解斜視図である。
【図4】上記ドア本体の断面図(図2のIV-IV 線断面図)である。
【図5】上記ドア本体の断面図(図2のV-V 線断面図)である。
【図6】上記ドア本体の断面図(図2のVI-VI 線断面図)である。
【符号の説明】
2a フロントドア開口
4 フロントドア
4a ドア本体
20 ベルトラインリインホース
20a 直合せ部
21 アウタリインホース(車外側壁)
22 インナリインホース(車室側壁)
25 インナハンドル(機能部品)
27 パイプ部材
27a 前端
A 閉断面
A1 上側閉断面
A2 下側閉断面
L ベルトライン
Claims (2)
- 車体側部に形成されたドア開口に該ドア開口を開閉するドア本体を配設し、該ドア本体内にベルトラインリインホースをベルトラインに沿って配設してなる自動車用ドアのベルトライン構造において、上記ベルトラインリインホースを1つの縦長の閉断面構造をなすとともに、車両前側部分が後側部分より上下方向に拡大したものとし、該ベルトラインリイホースの車両前後方向中間部に、上側及び下側に閉断面が残るよう直合せ部を形成し、車両前後方向に見たとき、上側閉断面は上記直合せ部より車外側に、下側閉断面は該直合せ部より車内側にそれぞれ偏位しており、上記ベルトラインリインホースの上側閉断面の上側かつ車室側に車両前後方向に延びるパイプ部材を結合し、上記直合せ部にインナハンドル,カップホルダ,ウインドレギュレータ装置のパワーユニット等の機能部品を取り付けたことを特徴とする自動車用ドアのベルトライン構造。
- 請求項1において、上記パイプ部材の前端は上記ドア本体の前端より車両後方に位置していることを特徴とする自動車用ドアのベルトライン構造。
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