JP5641533B2 - シリコンウェーハの熱処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法ともいう)により製造したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを熱処理するシリコンウェーハの熱処理方法に関する。
半導体デバイス形成用基板として用いられるシリコンウェーハ(以下、単にウェーハともいう)は、デバイス活性領域となるウェーハの表面近傍(以下、表層部という)において、COP(Crystal Originated Particle)やLSTD(Laser Scattering Tomography Defects)等のボイド欠陥が低密度であることが要求されている。また、当該表層部の下層に位置するシリコンウェーハのバルク部には、半導体デバイス形成工程でウェーハ内に拡散し、デバイス特性を劣化させる金属不純物をゲッタリングするBMD(Bulk Micro Defect)と呼ばれる酸素析出物を高密度に形成させることも必要である。
このようなシリコンウェーハを得るために、例えば、酸素濃度が6.5〜12×1017atoms/cm(ASTM F121−1979)の低酸素濃度シリコンウェーハを用いて、酸素を5%以上含むガス雰囲気中で1250℃〜1380℃の温度で1〜20時間熱処理を行い、その後、酸素、窒素、不活性ガス、または混合ガス雰囲気中で450℃〜800℃の温度で1〜48時間熱処理を行い、次いで酸素、窒素、不活性ガス、または混合ガス雰囲気中で800〜1100℃の温度で4〜48時間熱処理を行う方法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、近年において、デバイス活性領域が極めて低欠陥のシリコンウェーハを高生産性でかつ簡単に作製する技術として、シリコンウェーハに、急速加熱・急速冷却熱処理(RTP:Rapid Thermal Process、以下、単にRTPともいう)を施す技術が知られている。
その一例として、窒素100%または酸素100%あるいは酸素と窒素の混合雰囲気下、最大保持温度を1125℃以上シリコンの融点以下とし、保持時間を5秒間以上として熱処理を行った後、最大保持温度から8℃/秒以上の冷却速度で急速冷却する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
また、酸素濃度が11〜17×1017atoms/cm(ASTM F121−79)のシリコン単結晶より採取した基板用素材を用い、窒素を90%以上含有する雰囲気で1100〜1280℃の温度まで昇温して0〜600秒の加熱を施した後、酸素を10%以上含有する雰囲気に変更して100〜25℃/秒の冷却速度で降温する方法が知られている(例えば、特許文献3)。
特開2006−261632号公報 特開2000−31150号公報 特開2003−115491号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法を用いて製造されたシリコンウェーハは、熱処理時間が長時間となるため、酸素の外方拡散により、シリコンウェーハの表面の酸素濃度が大きく低下してしまうため、その後の半導体デバイス形成工程における熱処理において、シリコンウェーハにスリップ転位が発生しやすいという問題がある。
また、特許文献2に記載された方法は、1125℃以上シリコンの融点以下で、酸素を含有する雰囲気下でRTPを行うため、当該RTP後にシリコンウェーハの半導体デバイスが形成される表面の粗さが悪化しやすいという問題がある。また、窒素を含有する雰囲気下で熱処理を行う場合には、シリコンウェーハに窒化膜が形成されるため、その除去に新たにエッチング工程等を追加しなければならず、生産性が低下する問題がある。
更に、特許文献3に記載された方法は、1100〜1280℃で、酸素を10%以上含有する雰囲気に変更して急速冷却を行うため、特許文献2と同様に、当該RTP後にシリコンウェーハの半導体デバイスが形成される表面の粗さが悪化しやすいという問題がある。また、窒素を含有する雰囲気下で熱処理を行うため、ウェーハに窒化膜が形成される問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、シリコンウェーハの表面の酸素濃度の低下及びRTP後のシリコンウェーハの表面の粗さの悪化を抑制することができると共に、ウェーハの表層部におけるCOP等のボイド欠陥を大きく低減し、かつ、ウェーハのバルク部に酸素析出物を高密度に形成することができるシリコンウェーハの熱処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、チョクラルスキー法により製造したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを熱処理する方法であって、前記シリコンウェーハの半導体デバイスが形成される表面側に不活性ガス(窒素ガスを除く、希ガスをいう。以下、同様。)を、前記表面側に対向する裏面側に酸素ガスの分圧が20%以上100%以下である酸素含有ガスをそれぞれ供給し、1300℃以上1400℃以下の最高到達温度まで急速昇温し、前記最高到達温度にて1秒以上60秒以下保持した後、急速降温を行い、降温中、700℃以上900℃以下の温度で、前記不活性ガスを酸素含有ガスに切り替えて、前記シリコンウェーハの表面側に酸素含有ガスを供給し、前記切り替えた酸素含有ガス中の酸素を前記シリコンウェーハの表面側に内方拡散させることを特徴とする。
前記酸素含有ガスに切り替え後、700℃以上900℃以下の温度で保持することが好ましい。
前記酸素含有ガスは、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスであり前記シリコンウェーハの表面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧は5%以上100%以下であることが好ましい。
本発明によれば、シリコンウェーハの表面の酸素濃度の低下及びRTP後のシリコンウェーハの表面の粗さの悪化を抑制することができると共に、ウェーハの表層部におけるCOP等のボイド欠陥を大きく低減し、かつ、ウェーハのバルク部に酸素析出物を高密度に形成することができるシリコンウェーハの熱処理方法が提供される。
本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTP装置の概要を示す断面図である。 本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPにおける熱処理シーケンスの一例を示す概念図である。 本発明のシリコンウェーハの熱処理方法によって得られる発明の効果を説明するための概念図である。 本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPにおける熱処理シーケンスの他の一例を示す概念図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTP装置の概要を示す断面図である。
本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTP装置10は、図1に示すように、ウェーハWを収容して熱処理を施すための反応管20と、反応管20内に設けられ、ウェーハWを保持するウェーハ保持部30と、ウェーハWを加熱する加熱部40と、を備える。ウェーハWがウェーハ保持部30に保持された状態では、反応管20の内壁とウェーハWの半導体デバイスが形成される表面W1側とで囲まれた空間である第1空間20aと、反応管20の内壁と表面W1側に対向するウェーハWの裏面W2側とで囲まれた空間である第2空間20bとが形成される。
反応管20は、第1空間20a及び第2空間20b内に第1の雰囲気ガスF(実線矢印)を供給する第1の供給口22と、第2空間20b内に第2の雰囲気ガスF(点線矢印)を供給する第2の供給口24と、前記供給した第1の雰囲気ガスFを第1空間20aから排出する第1の排出口26と、前記供給した第1の雰囲気ガスF及び第2の雰囲気ガスFを第2空間20bから排出する第2の排出口28と、を備える。反応管20は、例えば、石英で構成されている。
ウェーハ保持部30は、ウェーハWの裏面W2の外周部をリング状に保持するサセプタ32と、サセプタ32を保持すると共に、サセプタ32をウェーハWの径方向に回転させる回転体34とを備える。サセプタ32及び回転体34は、例えば、SiCで構成されている。
加熱部40は、ウェーハ保持部30の上方の反応管20外に配置され、ウェーハWを表面W1側から加熱する。加熱部40は、例えば、複数のハロゲンランプ50で構成されている。
図1に示すRTP装置10を用いて、RTPを行う場合は、反応管20に設けられた図示しないウェーハ導入口より、ウェーハWを反応管20内に導入して、ウェーハWの裏面W2の外周部をウェーハ保持部30のサセプタ32上にリング状に保持し、雰囲気ガスを供給すると共に、ウェーハWを回転させながら、加熱部40によってウェーハWを加熱することで行う。
次に、本発明の実施形態に係わるシリコンウェーハの熱処理方法についてより具体的に説明する。
本実施形態に係わるシリコンウェーハの熱処理方法は、CZ法により製造したシリコン単結晶インゴットからスライスされた少なくとも半導体デバイスが形成される表面側が鏡面研磨されたシリコンウェーハに対してRTPを行う。
CZ法によるシリコン単結晶インゴットの製造は周知の方法で行う。
具体的には、シリコン単結晶インゴットは、石英ルツボに充填した多結晶シリコンを加熱してシリコン融液とし、シリコン融液の液面に種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら種結晶を引上げてネック部を形成した後、所望の直径まで拡径して直胴部を形成し、最後に、シリコン融液から切り離すことで製造することができる。
次に、こうして得られたシリコン単結晶インゴットを、周知の方法によりシリコンウェーハに加工する。
具体的には、シリコン単結晶インゴットを内周刃又はワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、鏡面研磨等を行う。
次に、こうして得られた少なくとも半導体デバイスが形成される表面側が鏡面研磨されたシリコンウェーハに対して、例えば、図1に示すようなRTP装置10を用いて、RTPを行う。
RTPでは、ウェーハWの半導体デバイスが形成される表面W1側に第1の雰囲気ガスFとして不活性ガスを、表面W1側に対向する裏面W2側に第2の雰囲気ガスFとして酸素含有ガスをそれぞれ供給し、1300℃以上1400℃以下の最高到達温度まで急速昇温し、前記最高到達温度にて保持した後、急速降温を行い、降温中、700℃以上900℃以下の温度で、前記不活性ガスを酸素含有ガスに切り替えて、ウェーハWの表面W1側に酸素含有ガスを供給し、前記切り替えた酸素含有ガス中の酸素をウェーハWの表面W1側に内方拡散させることにより行う。
図2は、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPにおける熱処理シーケンスの一例を示す概念図である。
図2を用いて、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPについて更に具体的に説明する。
温度T0(例えば、400℃以上600℃以下)で保持された図1に示すようなRTP装置10の反応管20内に少なくとも半導体デバイスが形成される表面W1側が鏡面研磨されたウェーハWを設置し、ウェーハWの表面W1側が接する第1空間20a内に不活性ガスを、表面W1側に対向する裏面W2側が接する第2空間20b内に酸素含有ガスをそれぞれ供給する。
次に、温度T0(℃)から最高到達温度である1300℃以上1400℃以下(温度T1(℃))まで、昇温速度ΔTu(℃/秒)で急速昇温し、温度T1(℃)にて所定時間t1(秒)一定に保持した後、温度T1(℃)から降温速度ΔTd(℃/秒)で急速降温を行い、降温中、700℃以上900℃以下の温度T2(℃)で、前記不活性ガスを酸素含有ガスに切り替えて、ウェーハWの表面W1側、すなわち、第1空間20a内に酸素含有ガスを供給し、当該雰囲気下で温度T0まで降温することで、前記切り替えた酸素含有ガス中の酸素をウェーハWの表面W1側に内方拡散させる。
なお、前述した温度T0、T1、T2は、図1に示すようなRTP装置10の反応管20内にウェーハWを設置した場合において、ウェーハ保持部30の下方に設置された図示しない放射温度計によって測定された温度(放射温度計がウェーハWの径方向に複数配置されている場合はその平均温度)である。
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、このようなRTPを行うため、シリコンウェーハの表面の酸素濃度の低下及びRTP後のシリコンウェーハの表面の粗さの悪化を抑制することができると共に、ウェーハの表層部におけるCOP等のボイド欠陥を大きく低減し、かつ、ウェーハのバルク部に酸素析出物を高密度に形成することができる。
図3は、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法によって得られる発明の効果のうち、シリコンウェーハの表面の酸素濃度の低下の抑制及びウェーハの表層部におけるCOP等のボイド欠陥の低減メカニズムを説明するための概念図である。
最初に、ウェーハWの表層部Dにボイド欠陥が複数存在するウェーハWの表面W1側に不活性ガス(図3ではアルゴン(Ar))を、裏面W2側に酸素含有ガス(図3では図示せず)をそれぞれ供給する(図3(a))。その後、最高到達温度1300℃以上1400℃以下まで急速昇温し、当該温度を保持する高温処理を行うと、ウェーハWの表層部DにInterstitial−Si(以下、「i−Si」という)が導入されると共に、ボイド欠陥の内壁に形成された内壁酸化膜に含まれる酸素がウェーハW内に溶解して、ウェーハW内に固溶酸素(Oi)が生成され、かつ、この酸素の溶解によって内壁酸化膜が除去されたボイド欠陥が形成され、このボイド欠陥に前記導入されたi−Siが埋まっていくが、表面W1側に供給された雰囲気ガスは、不活性ガスであるため、前記導入されるi−Siは量が少ない。従って、表層部Dのうち表面から約0.2μmまでの第1表層部Daに存在する内壁酸化膜が除去されたボイド欠陥のみにi−Siが埋まり、表層部Dのうち、第1表層部Daの下層に位置する表面から約0.2μm以降の第2表層部Dbまでi−Siが拡散しないため、第2表層部Dbに存在する内壁酸化膜が除去されたボイド欠陥にはi−Siが埋まらず、かつ、表面W1からは酸素が外方拡散される(図3(b))。そのため、第1表層部Daではボイド欠陥は消滅するが、第2表層部Dbではボイド欠陥が残存し、かつ、第1表層部Daでは酸素が外方拡散されるため、酸素濃度が低い状態となる(図3(c))。なお、裏面W2側には酸素含有ガスが供給されているため、ウェーハWの裏面W2には酸化膜が形成され、裏面W2側の表層部には、急激に酸素(O)及びi−Siが導入される(図示せず)。この導入されたi−SiがウェーハWの裏面W2側から表面W1側まで拡散していき、第2表層部Dbに残存する内壁酸化膜が除去されたボイド欠陥を埋めていく(図3(c))。その後、降温中に、表面W1側に供給する不活性ガスを酸素含有ガス(図3では酸素(O2))に切り替えると、ウェーハWの表面W1側に酸素が内方拡散される(図3(d))。従って、低下したウェーハWの表面W1の酸素濃度を高めることができるため、酸素濃度の低下が抑制され、かつ、ウェーハWの表層部Dにおけるボイド欠陥が大きく低減されたシリコンウェーハを得ることができる(図3(e))。
また、不活性ガスを酸素含有ガスに切り替える温度を、降温中、700℃以上900℃以下で行うため、RTP後のシリコンウェーハの表面の粗さの悪化を抑制することができる。更に、RTP中、ウェーハWの裏面W2には、酸素含有ガスを導入するため、裏面W2側に酸素が多く内方拡散されるため、ウェーハWのバルク部に酸素析出物を高密度に形成することができる。
前記シリコンウェーハの表面W1側に供給するガスが不活性ガス以外である場合には、様々な問題を有する。
例えば、前記ガスが酸素ガスである場合には、ウェーハWの表面W1に酸化膜が形成され、第1表層部Daの酸素濃度が高くなるため、第1表層部Daに存在するボイド欠陥の内壁酸化膜を除去することが難しくなり、第1表層部Daに導入されたi−Siがボイド欠陥に埋まることができなくなるため、RTP後、第1表層部Da内にボイド欠陥が残存してしまうため好ましくない。前記ガスが水素ガスである場合には、ウェーハWの裏面W2に供給する酸素含有ガスと混合する恐れがあり、爆発等の危険性があるため好ましくない。また、前記ガスが窒素ガスである場合には、ウェーハWの表面W1や裏面W2に窒化膜が形成されてしまうため好ましくない。更に、前記ガスがアンモニアガスである場合には、ウェーハWの表層部Dにおけるボイド欠陥を低減させる効果が少ないため好ましくない。
なお、本発明に示す不活性ガスは、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスが用いられ、窒素(N)ガスは除かれる。
前記不活性ガスは、アルゴンガスであることが好ましい。アルゴンガスを用いることにより、窒化膜等の他の膜の形成や化学的反応等が生じることがなく、RTPを行うことができる。
前記最高到達温度が1300℃未満である場合には、デバイス活性領域となるウェーハWの表層部Dにおいて、COP等のボイド欠陥を低減させる効果が少ないため好ましくない。前記最高到達温度が1400℃を超える場合には、RTP装置としての寿命が低下する場合があり好ましくない。
前記不活性ガスを酸素含有ガスに切り替える温度が900℃を超える場合には、ウェーハWの表面W1において、面粗れが発生するため好ましくない。前記温度が700℃未満である場合には、熱処理温度が低いため、切り替え後、供給した酸素含有ガス中の酸素がウェーハWの表面W1に十分に内方拡散されないため好ましくない。
前記RTPにおいて、前記高温熱処理中にウェーハWの裏面W2側に酸素含有ガスを供給しない場合には、ウェーハWの第2表層部Dbのボイド欠陥を消滅することが困難であり、また、ウェーハのバルク部に酸素析出物を高密度に形成することが難しくなるため好ましくない。
前記急速昇温における昇温速度ΔTuは10℃/秒以上150℃/秒以下であり、前記急速降温における降温速度ΔTdは10℃/秒以上100℃/秒以下であることが好ましい。
前記昇温速度ΔTuが10℃/秒未満である場合は、RTPにおける生産性が低下する場合がある。前記昇温速度が150℃/秒を超える場合には、急激な昇温によりウェーハに接触痕やスリップが発生する場合がある。
前記降温速度ΔTdが10℃/秒未満である場合は、RTPにおける生産性が低下する場合がある。前記降温速度が100℃/秒を超える場合には、降温速度が速すぎるため、急速降温中、酸素含有ガス中の酸素を十分にシリコンウェーハの表層部Dに内方拡散することができない場合がある。
前記最高到達温度(温度T1)における保持時間t1は、1秒以上60秒以下であることが好ましい。
前記保持時間t1が1秒未満である場合は、RTPの本来の目的であるボイド欠陥の消滅やBMD密度の向上等を達成することが難しい場合がある。一方、前記保持時間t1が60秒を超える場合は、生産性が低下する場合がある。
より好ましくは、保持時間t1は、1秒以上30秒以下である。
図4は、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPにおける熱処理シーケンスの他の一例を示す概念図である。
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、例えば、図4に示すように、前記酸素含有ガスに切り替え後、700℃以上900℃以下の温度(温度T2(℃))で所定時間t2(秒)保持した後に、当該雰囲気下で温度T0まで降温させることが好ましい。
このような熱処理シーケンスによりRTPを行うことで、前記不活性ガスから切り替えた酸素含有ガス中の酸素をウェーハWの表面W1側に十分に内方拡散させることができる。
前記温度T2の保持時間t2は、1秒以上15秒以下であることが好ましい。
前記保持時間t2が1秒未満である場合には、前記酸素をウェーハWの表面W1側に十分に内方拡散させることが難しい場合があり好ましくない。前記時間t2が15秒を超える場合には、生産性が低下する場合があり好ましくない。
なお、図4に示す熱処理シーケンスにてRTPを行う場合には、降温速度ΔTd1とΔTd2を同じ速度として良く、ΔTd1とΔTd2を異なる速度としてもよい。なお、図4に示す降温速度ΔTd1、ΔTd2は、図2に示す降温速度ΔTdと同様な範囲であることが好ましい。
前記酸素含有ガスは、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスであり、前記シリコンウェーハの裏面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧は20%以上100%以下であり、前記シリコンウェーハの表面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧は5%以上100%以下であることが好ましい。
前記シリコンウェーハの裏面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧が20%未満である場合には、図3(c)に示すような第2表層部Db内のボイド欠陥を消去させるi−Siを十分に導入することが難しい場合があるため好ましくない。また、前記シリコンウェーハの表面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧が5%未満である場合には、不活性ガスから酸素含有ガスに切り替え後において表層部Dに十分に酸素を内方拡散することが難しい場合があるため好ましくない。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
(試験1)
CZ法によりv/G(v:引上速度、G:単結晶内の引上軸方向の温度勾配)を制御して空孔型点欠陥が存在する領域を有するシリコン単結晶インゴットを製造し、該領域からスライスして得られた両面が鏡面研磨されたシリコンウェーハ(直径300mm、厚さ775μm、酸素濃度1.2〜1.3×1018atoms/cm)に対して、図1に示すようなRTP装置を用いて、RTPを行った。
RTPにおいては、図2に示すような熱処理シーケンスを用い、600℃で保持された反応管内に前記シリコンウェーハを投入し、第1空間20aへ不活性ガスとしてアルゴン100%ガスを供給し、第2空間20bに酸素ガスの分圧が20%であり、アルゴンガスの分圧が80%である酸素含有ガスを用いて、昇温速度を50℃/秒、最高到達温度を1300℃、当該最高到達温度を30秒間保持した後、降温速度を100℃/秒として、温度600℃まで急速降温を行い、途中、降温中にアルゴンガスから酸素ガスの分圧が5%であり、アルゴンガスの分圧が95%である酸素含有ガスに切り替え、かつ、その切り替える温度を変化させて、条件毎にRTP後の複数サンプルを作製した(実施例1〜3、比較例1〜4)。
また、前記酸素含有ガスへの切り替えを行わないで、その他は、実施例1と同様な条件で、RTP後のサンプルを作製した(比較例5)。
更に、第2空間20bに前記酸素含有ガスを供給しないで、その他は、実施例1と同様な条件で、RTP後のサンプルを作製した(比較例6)。
更に、第2空間20bに前記酸素含有ガスを供給しないで、かつ、前記酸素含有ガスへの切り替えを行わないで、その他は、実施例1と同様な条件で、RTP後のサンプルを作製した(比較例7)。
第1空間20aへアルゴン100%ガスではなく酸素100%ガスを供給し、その他は、実施例1と同様な条件で、RTP後のサンプルを作製した(比較例8)。
得られたRTP後のサンプルに対して、ウェーハの表面の酸素濃度を二次イオン質量分析(SIMS;Secondary
Ion−microprobe Mass Spectrometry)にて評価した。
また、半導体デバイスが形成されるウェーハ表面の表面粗さ(RMS)を、AFM(原子間力顕微鏡:Atomic Force Microscopy)を用い、測定範囲3μmにて評価した。
更に、前記RTPの処理前後のウェーハについて、各々ウェーハ表面から深さ5μm以内の表層部におけるLSTDを、LSTDスキャナ(株式会社レイテックス製 MO−601)にて測定し、RTP前後におけるLSTD密度の減少率を算出した。
また、ウェーハ表面から深さ5μm以降のバルク部における酸素析出物密度を、2段階熱処理ステップ(同一熱処理内で780℃×3時間熱処理した後、1000℃×16時間熱処理)を行った後、IRトモグラフィにて評価した。
表1に試験1における条件毎の各サンプルにおける評価結果をそれぞれ示す。
Figure 0005641533
表1に示すように、ウェーハの表面側にアルゴンガスを、裏面側に酸素含有ガスを供給し、かつ、降温中、アルゴンガスを酸素含有ガスに切り替える温度が、700℃以上900℃以下である場合(実施例1から3)は、比較例1〜3(切り替え温度が1000℃以上である場合)よりも表面粗さが向上し、比較例4(切り替え温度が600℃である場合)、比較例5(酸素含有雰囲気に切り替えない場合)よりも酸素濃度が向上することが認められる。また、比較例6(裏面側に酸素含有雰囲気を供給しない場合)よりもLSTD密度の減少率が高くなり、また、比較例7(酸素含有雰囲気に切り替えない、かつ、裏面側に酸素含有雰囲気を供給しない場合)よりも酸素濃度及びLSTD密度の減少率が高くなり、更に、比較例8(表面側に供給するガスが酸素含有雰囲気である場合)よりも表面粗さが向上し、LSTD密度の減少率が高くなることが認められる。また、酸素析出物密度においても、実施例1〜3は、1.0〜1.1×1010個/cmと、比較例6〜7よりも高密度に形成することができることが認められる。
(試験2)
図4に示すような熱処理シーケンスを用いて、図4における保持時間t2を15秒として、降温速度ΔTd1、Td2共に100℃/秒として、その他は、実施例1と同様な条件にてRTPを行い、RTP後のサンプルを作製した(実施例4)。
(試験3)
図4に示すような熱処理シーケンスを用いて、図4における保持時間t2を15秒として、降温速度ΔTd1、Td2共に100℃/秒として、その他は、実施例2と同様な条件にてRTPを行い、RTP後のサンプルを作製した(実施例5)。
(試験4)
図4に示すような熱処理シーケンスを用いて、図4における保持時間t2を15秒として、降温速度ΔTd1、Td2共に100℃/秒として、その他は、実施例3と同様な条件にてRTPを行い、RTP後のサンプルを作製した(実施例6)。
以上、試験2から4で得られたRTP後のサンプルに対して、試験1と同様な方法を用いて、ウェーハの表面の酸素濃度、半導体デバイスが形成されるウェーハ表面の表面粗さ、RTP前後におけるLSTD密度の減少率及びウェーハ表面から深さ5μm以降のバルク部における酸素析出物密度をそれぞれ評価した。
表2に試験2から4における条件毎の各サンプルにおける評価結果をそれぞれ示す。
Figure 0005641533
表2に示すように、実施例4〜6は、実施例1〜3と比べて、表面粗さ、LSTD密度の減少率が同等レベルであり、かつ、酸素濃度及び酸素析出物密度が大きく向上することが認められる。
10 RTP装置
20 反応管
30 ウェーハ保持部
40 加熱部

Claims (3)

  1. チョクラルスキー法により製造したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハを熱処理する方法であって、
    前記シリコンウェーハの半導体デバイスが形成される表面側にガスを、前記表面側に対向する裏面側に酸素ガスの分圧が20%以上100%以下である酸素含有ガスをそれぞれ供給し、1300℃以上1400℃以下の最高到達温度まで急速昇温し、前記最高到達温度にて1秒以上60秒以下保持した後、急速降温を行い、降温中、700℃以上900℃以下の温度で、前記ガスを酸素含有ガスに切り替えて、前記シリコンウェーハの表面側に酸素含有ガスを供給し、前記切り替えた酸素含有ガス中の酸素を前記シリコンウェーハの表面側に内方拡散させることを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。
  2. 前記酸素含有ガスに切り替え後、700℃以上900℃以下の温度で保持することを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェーハの熱処理方法。
  3. 前記酸素含有ガスは、酸素ガスとガスとの混合ガスであり前記シリコンウェーハの表面側に供給する酸素含有ガス中の酸素ガスの分圧は5%以上100%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの熱処理方法。
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