JP5634040B2 - 複合品、射出成形用金型及び複合品の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、この種の樹脂成形技術としては、図10に示すように、成形品の表面のすべてを金属体2で構成してあり、その裏面側に、例えば、射出成形等によって樹脂部3を一体に成形して構成してあるものがあった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
具体例としては、図10に示すように、金属体2を、樹脂成形型KのキャビティVにセットした状態で、金属体2の裏面側に、樹脂成形型Kのゲート4から樹脂Jを注入して、金属体2の裏面に樹脂Jを密着させて一体化が図られていた。
従って、金属体2と、その裏面側の樹脂部3とは、互いの接当面間にはたらく接着力の作用によって一体化が図られている。
その一例を示せば、複雑な模様や形状でも簡単に形成できる樹脂成形の特徴を利用して、細かな細工を施す必要がある部分に樹脂部を採用し、その他の部分において金属体の質感を有効に利用するような使い分けを自由に選択できるようになる。従って、高級感の溢れた製品や、デザイン性に富んだ製品を、簡単且つ経済的に提供できるようになる。
また、樹脂部が露出する開口部の周縁部に前記アンカー部を設けてあるから、金属体と樹脂部との結合力をより高められるようになる。即ち、金属体と樹脂部との接触面での接着力に加えて、樹脂部と、その中に埋設されているアンカー部との機械的な結合力が作用し、より一体性の高い樹脂成形品を提供できる。
また、例えば、当該樹脂成形品を携帯電話のケーシング等に使用するような場合には、金属体によって電波遮蔽の障害が懸念されるが、前記開口部に電波遮蔽の障害とならない樹脂部を設けてあることで、この問題を解消することができる。
本発明の第2の特徴構成によれば、前記樹脂部の内、前記開口部の外周側に位置する外周樹脂部は、前記開口部に位置する開口樹脂部より、開口面に直交する方向の厚さが厚くなるように設定してあるから、樹脂注入前の段階では、キャビティ内の前記外周樹脂部の空間の方が、開口樹脂部の空間より広い流路断面が確保される。従って、キャビティに注入された樹脂は、外周樹脂部の空間に優先的に行き渡り、その後に開口樹脂部の空間に充填される。その際、図6に示すように、外周樹脂部3Baに対応する空間に行き渡った樹脂Jの圧力作用で、金属体2を成形型Kに押し付けることができ、後から開口樹脂部3Bbに対応する空間に廻った樹脂Jが、金属体2と成形型Kとの合わせ目に滲入するのを防止できる。
よって、成形品の金属体と樹脂部との境目にバリが出来にくく、バリ取り等の後処理加工を省略でき、形成効率よく、美しい状態の成形品を提供できる。
本発明の第4の特徴構成によれば、固定型のゲートが、金属体の開口部以外の部分に対向する位置に配置されているから、ゲートから溶融樹脂は、開口部以外の部分に向けて射出される。従って、溶融樹脂の熱と衝撃とが、開口部に位置する加飾シートを直撃することを防止でき、インキ流れや、加飾シートの溶融といった射出による加飾の不具合を未然に防止することができ、予定したとおりの印刷を樹脂部の表面に正確に行える。
その結果、金属体の一部を樹脂とし、その樹脂を加飾した複合品を効率よく製造することができる。
因みに、前記加飾シートとは、例えば、基体シートと転写層とを備えた転写シートや、ラミネートによって形成されたインサートシート等を含むものである。
本発明の第5の特徴構成によれば、外周キャビティは、型締め方向の厚さが開口キャビティより厚くなるように設定されているから、キャビティに注入された樹脂は、外周キャビティに優先的に行き渡り、その後に開口キャビティに充填される。その際、図6に示すように、外周キャビティに行き渡った樹脂Jの圧力作用で、金属体2を加飾シート側に押し付けることができ、後から開口キャビティに廻った樹脂Jが、金属体2と加飾シートとの合わせ目に滲入するのを防止できる。
よって、成形品の金属体と樹脂部との境目にバリが出来にくく、バリ取り等の後処理加工を省略でき、形成効率よく、美しい状態の複合品を提供できる。
また、キャビティへの溶融樹脂の射出について、金属体の開口部以外の部分に向かって行うことで、射出した溶融樹脂の熱と衝撃とが、開口部に位置する加飾シートを直撃することを防止できる。従って、インキ流れや、加飾シートの溶融といった射出による加飾の不具合が発生することを未然に防止でき、予定したとおりの加飾を樹脂部の表面に正確に行える。
当該樹脂成形品1は、表面を露出させる金属体2と、前記金属体2の一部に設けられた開口部2aに露出する状態に前記金属体2と一体成形された樹脂部3とを設けて構成されている。
金属体2の外縁部は、当該実施形態においては、裏面側に傾斜させて折り曲げてあるものを一例として挙げている。
一方、開口部2aの縁部も、全周にわたって裏面側に切り起こしてある(図1(b)参照)。この切り起こし部分が、前記樹脂部3の中に埋設されることでアンカー部2bとなり、金属体2と樹脂部3との一体性を高めている。尚、切り起こしからなるアンカー部2bに、貫通穴を形成しておけば、樹脂成形型K内での樹脂Jの廻りを促進できることに加えて、金属体2と樹脂部3との一体性をより向上させることができる。
また、開口部2aの縁部を切り起こしてアンカー部2bを形成してあることで、アンカー部2bによって金属体2(特に開口部周辺)の断面二次モーメントの増加を図れるから、樹脂成形品1の補強効果がある。
前記樹脂部3は、図2、図3に示すように、前記金属体2の裏面側の一部に形成されている。具体的には、図4、図5に示すように、樹脂成形型Kのゲート4に対応した部分の導入樹脂部3Aと、導入樹脂部3Aの隣接位置で前記開口部2aに位置する露出樹脂部3Bとを備えて構成されている。
また、前記露出樹脂部3Bの露出表面には、射出成形時に転写によって文字やデザインマークや色彩等の加飾が施されている。
前記樹脂成形型Kとしては、固定型K1と、固定型K1に対して近接離間自在に形成された可動型K2とを用いる。
前記固定型K1と可動型K2とは、密接させることで、両型の間にキャビティVを形成できるように構成してあり、キャビティVに金属体2を位置させた状態で加熱された樹脂Jを充填して硬化させることで所定形状の樹脂成形品1を形成できる。
因みに、樹脂成形型Kには、図には示さないが、適温を維持するための維持手段が設けられてあり、キャビティV内に注入された樹脂Jが、好ましい状態で行き渡り且つ硬化できるように温度環境を維持できるように構成されている。
前記固定型K1は、樹脂成形品1の裏面側の成形型となり、前記可動型K2は、樹脂成形品1の露出表面側の成形型となる。
前記ゲート4は、前記導入樹脂部3Aを形成するための凹部空間に面して設けられている。
また、その凹部空間には、型と金属体2との間に、前記露出樹脂部3Bの露出表面に印刷するための加飾シートSが、図外の送り機構によって適時、送り込まれるように構成してある。
この加飾シートSは、基体シートS1とその一面の前記露出樹脂部3Bに対向する位置に設けられた転写層S2とを備えて構成されている。この転写層S2がキャビティVに射出された溶融樹脂と一体となることで、例えば、文字やデザインマーク、色彩等が露出樹脂部3Bの表面に加飾される。
[1]可動型K2の凹部空間に加飾シートSを、固定型K1に金属体2をセットする。
[2]可動型K2を固定型K1側に移動させて密接させた状態でゲート4からキャビティVに樹脂Jを注入する。樹脂Jは、導入樹脂部3Aから露出樹脂部3Bに行き渡り、アンカー部2bを包み込む状態でキャビティVを埋め尽くす。
[3]樹脂Jの硬化に伴って可動型K2を引退させると共に、固定型K1の抜き出し手段(不図示)を使用して樹脂成形品1の脱型を図る。成形された樹脂成形品1は、露出樹脂部3Bの露出表面に印刷が施されていると共に、金属体2と樹脂部3とが強固に一体化されている。
また、金属体2と樹脂部3との結合力をより高められるようになり、より一体性の高い樹脂成形品1を提供できる。
また、開口部に樹脂部3を配置してあるから、金属による電波遮蔽の障害を解消することができ、一例として携帯電話等の電子部品にも当該樹脂成形品1を使用できるようになり、用途の拡大を図ることができるようになった。
また、注入時の樹脂Jの熱と衝撃とによる印刷品質の低下を防止でき、予定したとおりの印刷を、露出樹脂部の表面に正確に行えるようになる。
以下に他の実施の形態を説明する。
また、前記開口部2aは、その形状や配置を変更することも可能である。例えば、図6に示すように、開口部2aが平面視において金属体2の一辺に接する状態に配置されたものであってもよい。
また、前記アンカー部2bは、先の実施形態で説明したように金属体2の一部を単に切り起こして形成したものに限らず、例えば、樹脂部に光透過性の材料を使用するような場合には、図7に示すように、アンカー部2bが樹脂部の表面側から見え難いように、90度以上に屈曲するように切り起こしてもよい。
また、アンカー部2bは、切り起こしに限らず、例えば、別部材のスタッドを取り付けて使用するものであってもよい。
また、金属体2の樹脂部3との接触部分に、予め、双方の接着性の向上を図れる接着層を設けてあってもよい。
〈2〉 前記樹脂部3は、先の実施形態で説明した形状に限るものではなく、例えば、図8に示すように、金属体の開口部から樹脂部3の一部が表面側に突出する状態に形成してあってもよい。この場合、樹脂部3による立体感が得られ易く、例えば、ロゴマーク等を樹脂部の突出部によって形成すれば、複合品としてのデザイン性を、更に向上させることができる。図8中のAは、樹脂部3の突出寸法を表し、Bは、金属体2の裏面側での樹脂部3の厚み寸法を表し、Cは、樹脂部3の突出部の幅寸法を表し、Dは、金属体2の裏面側での樹脂部3の幅寸法を表している。これらの数値に関しては、A<B、C<Dという設定が一般的である。また、図8に示す複合品の射出成形においては、金属体2の裏面に溶融樹脂の圧力を先行して作用させて、金属体2を可動型側に押圧しておくことで、開口部の周囲のシール効果が上がり、樹脂部3の突出部周囲のバリ発生を未然に防ぐことができる。
また、樹脂部3は、図9に示すように、前記露出樹脂部3Bの内、前記開口部2aの外周側に位置する外周樹脂部3Baは、前記開口部2aに位置する開口樹脂部3Bbより厚肉に形成してあってもよい。
この構成を採用すれば、樹脂注入前の段階では、キャビティV内の外周樹脂部3Baに対応する空間の方が、開口樹脂部3Bbに対応する空間より広い流路断面が確保されるから、キャビティVに注入された樹脂Jは、外周樹脂部空間に優先的に行き渡る。その樹脂Jの圧力で金属体2を成形型Kに押し付けることができ、後から開口樹脂部3Bbに対応する空間に廻った樹脂Jが、金属体2と成形型Kとの合わせ目に滲入するのを防止できる。よって、成形品の金属体2と樹脂部3との境目にバリが出来にくく、バリ取り等の後処理加工を省略でき、形成効率よく、美しい状態の成形品を提供できる。
また、樹脂部3を、光透過性の材料で構成する場合においては、裏面側にLEDや液晶表示部を位置させて、樹脂部を通して、それらの光を表面側に透過させることもできる。
更には、透明樹脂部に、成形と同時に加飾する等の方法によって、箔を加飾してあれば、その加飾層の色調と、光源からの光の色調との組合せによって、透明樹脂部を透過した透過光の色調を、任意なものに変更することができ、より意匠性を向上させることができる。
2a 開口部
2b アンカー部
3 樹脂部
3Ba 外周樹脂部
3Bb 開口樹脂部
4 ゲート
K1 固定型
K2 可動型
S 加飾シート
V キャビティ
Claims (5)
- 開口部を有する金属体と、
前記開口部を充填するように、前記金属体の裏面の一部に射出成形により一体的に成形された樹脂部とを備え、
前記金属体は、前記樹脂部に埋設されるように、前記開口部の周縁から一体的に立ち上がるアンカー部を含み、
前記樹脂部は、前記開口部に位置する開口樹脂部と、前記開口部の外周側に位置する外周樹脂部とを含み、前記外周樹脂部は、開口面に直交する方向の厚さが前記開口樹脂部より厚くなるように設定された、複合品。 - 前記樹脂部は、前記開口部から露出した面が加飾シートにより射出成形と同時に加飾された、請求項1記載の複合品。
- 金属体の開口部に樹脂部が成形され、その樹脂部の表面が成形と同時に加飾シートにより加飾された複合品の製造に用いることができる射出成形用金型であって、
前記加飾シートが配置される可動型と、
前記金属体が配置され、前記加飾シートが配置された前記可動型との型締めにより前記樹脂部に対応したキャビティが形成される固定型とを備え、
前記固定型は、前記キャビティに溶融樹脂を射出するゲートが、前記金属体の前記開口部以外の部分に対向する位置に配置された、射出成形用金型。 - 前記キャビティは、前記開口部の外周側に位置する外周キャビティと、前記開口部に位置する開口キャビティとを含み、
前記外周キャビティは、型締め方向の厚さが前記開口キャビティより厚くなるように設定された、請求項3記載の射出成形用金型。 - 金属体の開口部に樹脂部が一体的に成形され、その樹脂部の表面が成形と同時に加飾シートにより加飾された複合品の製造方法であって、
型締めにより前記樹脂部に対応したキャビティが形成される可動型と固定型とを有する射出成形用金型が用いられ、
可動型に前記加飾シートを配置し、固定型に前記金属体を配置する工程と、
型締めして前記キャビティを形成する工程と、
前記金属体の前記開口部以外の部分に向かって前記キャビティに溶融樹脂を射出して、前記樹脂部を前記金属体に一体的に成形すると同時に、前記樹脂部の表面に前記加飾シートを密着させる工程と、
前記樹脂部を冷却して固化させる工程とを備えた、複合品の製造方法。
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