しかし、従来のエアバッグ装置では、エアバッグのインナバッグが、アウタバッグ側へ流出させる膨張用ガスの向きを調整できるものの、膨張途中でのアウタバッグにおける収納部位の周縁側の部位が収納部位の周縁から浮き上がることを抑えて、アウタバッグを膨張させる点に、改善の余地があった。
ちなみに、アウタバッグが収納部位の周縁から浮き上がり易ければ、膨張途中のアウタバッグは、収納部位の周縁から浮き上がったり収納部位の周縁に当たることを繰り返す揺動運動を招き易く、そして、浮き上がった状態で乗員を受け止めても、収納部位の周縁に支持されず、クッション作用を奏する反力を迅速に確保し難くなってしまう。あるいは、アウタバッグの揺動中における厚さを厚くするような移動中に乗員に当たれば、アウタバッグが乗員を必要以上に押してしまう。
本発明は、上記の課題を解決するもので、膨張途中のアウタバッグにおける収納部位の周縁側の部位が収納部位の周縁から浮き上がることを抑制して、アウタバッグを膨張させることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
本発明に係るエアバッグ装置は、膨張用ガスの流入時、折り畳まれて収納された収納部位から突出して膨張を完了させるエアバッグを備えて構成され、
エアバッグが、膨張用ガスの流入用開口の周縁を収納部位に取り付ける構成とするとともに、エアバッグの外周壁を構成するアウタバッグと、流入用開口を覆うようにアウタバッグ内に配置されるインナバッグと、を備えて構成され、
インナバッグが、流入用開口を経て流入する膨張用ガスをアウタバッグ側に流出させる流出口を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
インナバッグが、膨張用ガスを流入させた際に、収納部位から突出しかつ流入用開口の軸方向と略直交する方向に延びて膨らむ袋状の腕部を備えて構成され、
腕部が、エアバッグ装置の作動時におけるインナバッグが膨張完了形状を維持している間、流入用開口から離れた先端側の部位によって、アウタバッグの流入用開口の周縁における収納部位から離脱した周縁離脱部位を収納部位の周縁側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持可能とするように、構成されていることを特徴とする。
本発明に係るエアバッグ装置では、作動時、膨張用ガスが流入用開口を経てエアバッグに流入すると、インナバッグが、アウタバッグより先に膨張を完了させる。また、アウタバッグも、膨張するインナバッグ自体に押されたり、あるいは、インナバッグの流出口からの膨張用ガスにより膨張し、そして、インナバッグとともに、収納部位から突出する。
このアウタバッグの膨張時には、先に膨張を完了させたインナバッグが、流入用開口から離れた先端側の部位によって、エアバッグ装置の作動時におけるインナバッグの膨張完了形状を維持している間、アウタバッグの流入用開口の周縁における収納部位から離脱した周縁離脱部位を収納部位の周縁側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持する。
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、アウタバッグは、膨張初期から膨張完了時までの間、周縁離脱部位が収納部位の周縁から浮き上がることを抑制されて、膨張し、膨張途中の揺動運動が抑制される。その結果、膨張途中に乗員を受け止めることとなっても、アウタバッグは、素早く収納部位の周縁に支持されて反力を確保できて、クッション作用を生じさせて迅速に乗員を受け止めることができる。勿論、アウタバッグの揺動運動が抑制されることから、アウタバッグは、その膨張途中に必要以上に乗員側に突出せず、膨張途中に乗員を受け止めることとなっても、乗員を安定して的確に受け止めることができる。
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、インナバッグの流出口は、インナバッグの膨張完了を促進できるように、腕部に配設させることが望ましい。ちなみに、流出口を、インナバッグの流入用開口の近傍に、例えば、流入用開口と対向するように、配置させては、インナバッグの膨張時、流出口からの膨張用ガスが流れ易く、インナバッグの膨張完了を遅らせてしまい、アウタバッグの周縁離脱部位を押える時期を遅らせる虞れが生ずるからである。
この場合、インナバッグの流出口は、インナバッグの膨張完了時の状態で、流出させる膨張用ガスの方向を、インナバッグの先端側の部位における収納部位の周縁側への押え方向と略直交する方向から押え方向と逆方向となるまでの角度範囲内とするように、腕部の移動を防止可能として、配設することが望ましい。
このような構成では、膨張完了時のインナバッグの流出口から膨張用ガスが流出する際、膨張用ガスの流出する反力がインナバッグに生じても、その反力の作用方向が、先端部(インナバッグの先端側の部位)の収納部位の周縁側への押え方向と略直交する方向から押え方向と逆方向となるまでの角度範囲内であることから、腕部の先端部における収納部位の周縁側への押圧状態を阻害せずに、膨張用ガスはアウタバッグ側へ流出される。なお、流出口は、膨張用ガスの流出時において、安定した押え状態を確保できるように腕部の移動を防止可能に、膨張用ガスの流出方向を、先端部の収納部位の周縁側への押え方向と逆方向とする場合には、収納部位の周縁と対向する位置に、一つ、あるいは、複数、配置させることができ、流出方向を、先端部の収納部位の周縁側への押え方向と略直交する方向に接近させている場合には、膨張用ガスの流出する反力のバランスを考慮して、腕部の軸周り方向で、対称的な位置に複数配置させればよい。
また、インナバッグの腕部は、少なくとも腕部の先端側を除いて、アウタバッグの内周面から離隔可能に配設されることが望ましい。腕部が、アウタバッグの周縁離脱部位を押える先端側を除いて、アウタバッグの内周面から離隔可能に配設されていれば、インナバッグにおける流入用開口周縁と先端側との間の部位をアウタバッグの内周面に拘束されずにずれ移動することができて、インナバッグが、アウタバッグの周縁離脱部位を押さえ易い形状として、円滑に膨張を完了させることができるからである。
この場合、インナバッグの腕部は、アウタバッグの内周面に拘束されずに自由に膨張可能に、全体をアウタバッグから離隔可能に構成してもよいが、先端側をアウタバッグの周縁離脱部位に結合させれば、インナバッグの先端側がアウタバッグの周縁離脱部位から位置ずれせず、折り畳み時のアウタバッグに対するインナバッグの配置位置を安定させることができて、エアバッグの折り畳み作業を円滑に行うことができる。
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、インナバッグは、周縁を固定した流入用開口から膨張用ガスを流入させてインナバッグ単体で膨張を完了させた際、流入用開口の開口面より、アウタバッグの周縁離脱部位を押える方向に沿って下がった位置に、腕部における先端部を配置させるように構成することが望ましい。
このような構成であれば、膨張完了時のインナバッグの腕部が、押圧力を大きく確保できて、アウタバッグの周縁離脱部位を、収納部位の周縁側に強く押さえることができ、一層、アウタバッグの周縁離脱部位が、収納部位の周縁から浮き上がることを安定して抑制される。
この場合、インナバッグは、膨張完了時、腕部を、流入用開口の部位で膨らむ中央部から、流入用開口の直径方向に沿って、先細りに先端側に延びるように配置させた二本から構成し、
周縁を固定した流入用開口から膨張用ガスを流入させてインナバッグ単体で膨張を完了させた状態において、
インナバッグの各腕部の先端部の周壁を膨らませ可能に、流出口を、インナバッグの各腕部の先端部より、流入用開口側の位置に配置させ、かつ、
二つの腕部の延びている方向と直交方向から見た状態で、流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ稜線を凸形状とするとともに、流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、流入用開口側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長より、長くするように構成して、形成することができる。
このような構成では、インナバッグが、流出口を先端部の近傍に配置させていないことから、インナバッグの膨張完了時、二つの腕部が、それぞれ、先細りとした形状の先端部まで円滑に膨らむ。そして、インナバッグは、単体での膨張完了時における二つの腕部の延びている方向と直交方向から見た状態で、流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ稜線を凸形状とするとともに、流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、流入用開口側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長より、長くするように、構成されている。そのため、インナバッグの膨張完了時における各腕部の延びる方向に沿った周壁の外側へ膨らもうとする力に関し、流入用開口と対向する側の各腕部の先端部間を結ぶ凸形状の稜線となった部位の膜長が、流入用開口側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長より、長くする分、流入用開口と対向する側の周壁の押し広げ力が流入用開口側の周壁の押し広げ力より勝って、インナバッグの二つの腕部が、インナバッグにおける流入用開口の配置された中央部から曲がるように、各先端部を、流入用開口の開口面よりアウタバッグの周縁離脱部位を押える方向に沿って下がった位置に、配置させる。特に、エアバッグの膨張時には、インナバッグの中央部における流入用開口の周縁が取付固定されて膨らまず、流入用開口側の周壁の押し広げ力を確保できる面積(内圧を受ける面積)が実質的にさらに狭まることから、一層、流入用開口と対向する側の周壁の押し広げ力が流入用開口側の周壁の押し広げ力より勝ることとなる。そしてさらに、インナバッグの中央部における流入用開口の周縁が取付固定されてその縁部分から曲がり易いこととあいまって、インナバッグの二つの腕部は、各先端部を、流入用開口の開口面よりアウタバッグの周縁離脱部位を押える方向に沿って下がった位置に配置させ易い。そのため、このような構成のインナバッグでは、膨張完了形状を維持している間、二つの腕部の先端部が容易に安定した強い押圧力を発揮できて、アウタバッグの周縁離脱部位が収納部位の周縁から浮き上がることを、的確に抑制できる。
なお、インナバッグは、可撓性を有したシート材を立体的に結合させて、形成してもよいが、製造の容易さから、可撓性を有した一枚のシート材を二つ折りして、平面での結合作業を可能に、重ねて平らにした外周縁相互を結合させることにより形成する構成としてもよい。
平面的な結合作業によりインナバッグを形成する場合のシート材は、インナバッグの形成時の二つ折りの折目を、インナバッグの膨張完了時における流入用開口側での二つの腕部の先端部間を結ぶ位置に配置させ、かつ、外周縁相互の結合縁を、インナバッグの膨張完了時における流入用開口に対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ部位として、構成するとともに、
平らに展開した形状を、中央部を形成する中央部用部位から各腕部を形成する腕部用部位の先端に向かって、二つ折りの折目と直交する方向の幅寸法を狭める形状として、形成する。
このような構成では、平らに展開したシート材を所定の折目で二つ折りして重ねた外周縁相互を結合させるような平面的な結合作業によってインナバッグを製造しても、容易に、流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ稜線を凸形状にできるとともに、各腕部を先端側にかけて先細り形状にでき、かつ、インナバッグにおける流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、流入用開口側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長より、長くすることができる。その結果、アウタパネルの揺動を抑制できるインナバッグを、簡便に製造することができる。
そして、シート材を結合する際に、二つ折りしたシート材の外周縁相互を縫合して結合する場合には、結合縁の縫代をインナバッグの内周面側に配置させることが望ましい。このような構成では、インナバッグの内周面側に配置された縫代が、高温・高圧の膨張用ガスから縫合糸を覆うことができて、膨張時におけるインナバッグの縫合糸や結合縁(縫合縁)の破損を防止できる。
また、シート材を二つ折りして重ねた外周縁相互を結合してインナバッグを形成する場合には、結合縁を、腕部の先端部側から中央部側にかけて、直線状として構成し、そして、インナバッグは、エアバッグの折り畳み時、二つの腕部を流入用開口の直径方向に伸ばして、結合縁を、流入用開口の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口側に載せつつ、インナバッグを、結合縁と直交方向に広げつつ平らに展開させるとともに、中央部における流入用開口と対向して流入用開口から離れる対向頂部を、流入用開口の直径方向に配置させた結合縁に対して直交方向に沿う谷折りの折目を付けて、インナバッグ上に重ねるように折り畳んで、アウタバッグ内に収納することが望ましい。
このような構成では、エアバッグの折り畳み時におけるインナバッグが、アウタバッグ内で、結合縁を中心線とした両側で、線対称として、平らに展開されており、エアバッグを折り畳む際、谷折りの折目部位によって結合縁がその直交方向へずれることなく、インナバッグをアウタバッグ内での流入用開口の周囲で、対称的にバランスよく配置させることができる。その結果、エアバッグの膨張時におけるインナバッグが、アウタバッグ側への膨張用ガスの流出やアウタバッグの周縁離脱部位の押えを、バランスよく行なえる。さらに、インナバッグが、結合縁を、腕部の先端部側から中央部側にかけて、直線状として構成しているため、結合縁を、流入用開口の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口側に載せつつ、インナバッグを、結合縁と直交方向に広げて平らに展開させる際に、対向頂部付近を弛ませることなく、平らに展開させ易く、さらに、対向頂部を、谷折りの折目を付けて、容易にインナバッグ上に折り畳むことができる。すなわち、上記の構成では、インナバッグ自体を平らに展開させて、アウタバッグ内にバランスよく配置させる作業も、容易に行なうことができることとなる。
そしてこの場合、エアバッグの折り畳みは、次の第1,2折畳工程を経て折り畳むことが望ましい。第1折畳工程は、上記のようにインナバッグをアウタバッグ内に収納した状態で、エアバッグを流入用開口を中心として、平らに展開させた後、インナバッグの結合縁に対して直交するエアバッグの両縁を、それぞれ、流入用開口に接近させて、結合縁と直交するエアバッグの幅寸法を狭める折り畳みである。第2折畳工程は、第1折畳工程を経た後、第1折畳工程前のインナバッグの結合縁に沿った方向のエアバッグの両縁を、それぞれ、流入用開口に接近させて、結合縁に沿った方向のエアバッグの幅寸法を狭める折り畳みである。そして、第1折畳工程におけるインナバッグの結合縁に対して直交する両側の折り畳みが、結合縁を中心として、対称形(線対称形)とする。また、インナバッグに設ける流出口は、インナバッグをアウタバッグ内に平らに収納した状態における直線状の結合縁を中心として、二つの腕部に、それぞれ、対称形(線対称形)として、配設させる。
このようなエアバッグの折り畳みであれば、エアバッグの膨張時、折畳工程と略逆の工程で、折りを解消して、エアバッグは展開膨張する。すなわち、エアバッグの展開膨張時、まず、インナバッグが、二本の腕部を伸ばす状態で、膨張を完了させて、第2折畳工程の折りが解消される。そして、第1折畳工程の折りを解消することとなる。その際、第1折畳工程の折り畳みが、インナバッグの結合縁を中心として、両側が対称形に折り畳まれている。また、アウタバッグへ膨張用ガスを流出させるインナバッグの流出口が、直線状の結合縁を中心として、二つの腕部に、それぞれ、対称形として、配設されている。そのため、結合縁の直交方向のアウタバッグの両側が、インナバッグの流出口から膨張用ガスを流入させて均等に折りを解消して、展開膨張する。したがって、上記のようなアウタバッグ内へのインナバッグ自体や流出口の配置と、エアバッグの折り畳みと、の組合せによって、エアバッグの展開膨張時、流入用開口の直径方向の両側に、エアバッグを均等に展開膨張させることができる。すなわち、このような構成では、エアバッグの膨張完了直前におけるエアバッグの外周縁を大きく展開させつつ厚く膨張させる際、エアバッグの流入用開口を中心とした線対称の両縁側(インナバッグの結合縁の直交方向のエアバッグの両縁側)が、片寄ることなく、均等に展開膨張し、膨張するエアバッグが、所定のエリアで、安定して、移動してくる人(運転者を含めた乗員)を受け止めることができる。
そしてこの場合、第1折畳工程において流入用開口に接近させるエアバッグの両縁は、膨張完了時における車両の左右方向に沿った左右両縁とすることが望ましい。すなわち、このような構成では、エアバッグの膨張完了直前におけるエアバッグの外周縁を大きく展開させつつ厚く膨張させる際、エアバッグの左右両縁側が、左右の一方側に片寄らずに、左右均等に展開膨張する。そのため、エアバッグが、予め、左右方向の保護エリアを余裕を持って設定しておけば、受け止める人が左右にずれても、その人を安定して保護できる。
ちなみに、上記と相違して、インナバッグをアウタバッグ内に配置させる際、二つの腕部を流入用開口の直径方向に伸ばして、単に、結合縁を、流入用開口の直径方向に配置させつつ、結合縁と直交方向に広げるように、インナバッグを平らに展開させる場合には、エアバッグの折り畳み作業中に、結合縁が、その直交方向にずれ易く、バランスよく、アウタバッグ内に配置させ難い。また、二つの腕部を流入用開口の直径方向に伸ばした状態で、流入用開口側を平らに延ばしつつ、二つの腕部の先端部相互を結ぶ谷折りの折目を付けて、結合縁を直線状にインナバッグ上に重ねるように折り畳む場合には、膨張用ガスの流入状態が、二つの腕部の先端部相互を結ぶ谷折りの折目部位を間とした両側相互で、バランスが崩れ、アウタバッグがバランスよく膨張できない。さらに、二つの腕部を流入用開口の直径方向に伸ばして、結合縁を、流入用開口の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口側に載せつつ、インナバッグを、結合縁と直交方向に広げて平らに展開させるとともに、対向頂部を、流入用開口の直径方向に配置させた結合縁に対して直交方向に沿う谷折りの折目を付けて、インナバッグ上に重ねるように折り畳む際、結合縁が、直線状でなく、例えば、流入用開口から膨らむような曲線状であれば、対向頂部を、谷折りの折目を付けて折り畳む際、その付近に弛みが生ずることとなって、この場合にも、エアバッグの折り畳み中に結合縁がずれる事態を招き、インナバッグを安定した折り畳み形状でアウタバッグ内に配置できない。そのため、既述したように、シート材を二つ折りして重ねた外周縁相互を結合してインナバッグを形成する場合には、結合縁を、腕部の先端部側から中央部側にかけて、直線状として構成することが望ましい。
さらに、シート材を二つ折りし、その外周縁相互を結合させてインナバッグを製造する場合には、シート材を縫合して形成するとともに、シート材を二つ折りして外周縁相互を縫合して結合させた結合縁と、高さ調整縫合部と、を設けて構成することが望ましい。この高さ調整縫合部は、シート材を二つ折りして外周縁相互を縫合して結合縁を形成した後、流入用開口の直径方向に沿い、かつ、結合縁と直交する方向に沿う谷折りの折目を付けて、流入用開口側で、二つの腕部を重ねるとともに、中央部における流入用開口と対向して流入用開口から離れる対向頂部側を、谷折りの折目の両端から連なる山折りの折目を両縁側に付けて、平らに展開させた状態とし、対向頂部の部位に、対向頂部の頂点から谷折りの折目側にずれ、かつ、谷折りの折目と平行とした直線状の縫合ラインを、設けることにより形成する。この高さ調整縫合部は、インナバッグにおける流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、対向頂部の頂点からのずれ距離に応じて、調整することができ、インナバッグの膨張完了時、腕部の先端部がアウタバッグの周縁離脱部位を押圧する押圧力の増減を、調整することができる。すなわち、高さ調整縫合部が、対向頂部の頂点からのずれ距離を大きくして、配置されれば、インナバッグにおける流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、短くすることから、インナバッグ単体での膨張完了時における二つの腕部の先端部は、反りを小さくするように、流入用開口の開口面からのアウタバッグの周縁離脱部位を押える方向に沿って離れる方向の距離を小さくする。その結果、インナバッグの膨張完了時、二つの腕部の先端部がアウタバッグの周縁離脱部位を押圧する押圧力は、小さくなる。逆に、高さ調整縫合部が、対向頂部の頂点からのずれ距離を小さくして、配置されれば、インナバッグにおける流入用開口と対向する側での二つの腕部の先端部間を結ぶ膜長を、長くすることから、インナバッグ単体での膨張完了時における二つの腕部の先端部は、反りを大きくするように、流入用開口の開口面からのアウタバッグの周縁離脱部位を押える方向に沿って離れる方向の距離を大きくする。その結果、インナバッグの膨張完了時、二つの腕部の先端部がアウタバッグの周縁離脱部位を押圧する押圧力は、大きくなる。そして、このような高さ調整縫合部を設けるインナバッグでは、同じシート材を使用しても、高さ調整縫合部の対向頂部の頂点からのずれ距離を調整して、容易に、反った際の押圧力を調整することができる。
そして、エアバッグ装置としては、操舵時に把持するリング部と、リング部の中央に配置されるボス部と、リング部とボス部とを連結するスポーク部と、を備えて構成されるステアリングホイールのボス部の上部を、折り畳まれたエアバッグの収納部位とするステアリングホイール用として構成することができ、この場合には、インナバッグは、エアバッグ装置の作動時におけるインナバッグの膨張完了時、腕部の先端部を、収納部位の周縁におけるリング部の上面側に乗り上げる位置まで配設させるように、構成することが望ましい。
このような構成であれば、アウタバッグをリング部から浮き上がらせずに膨張させることができて、膨張途中のアウタバッグが前方移動する運転者を受け止めても、アウタバッグが、リング部に支持されて、クッション作用を発生させる反力を確保できるため、運転者を安定して的確に受け止めることができる。
この場合、リング部の上面側に乗り上げる位置まで配設させる腕部は、流入用開口から前後方向両側に延びるように、配設することが望ましい。
このような構成では、インナバッグの膨張初期において、収納部位から突出した後、インナバッグは、前後の腕部を素早く延ばして、運転者側に厚く突出することなく、リング部の上面に沿った前後方向に展開する。その後、インナバッグが膨張を完了させれば、インナバッグの流出口からの膨張用ガスにより、アウタバッグは、リング部から浮き上がらずに膨張できて、極力、運転者側へ厚く突出することを抑えて、リング部の上面に沿って左右に広く展開可能となる。この時、リング部の後部に位置するアウタバッグの後下部は、インナバッグの膨張初期に、リング部の後部を覆った状態となっており、その後、厚さを徐々に厚くすることとなる。すなわち、アウタバッグは、膨張初期に、運転者がリング部に接近していても、運転者の腹部とリング部の後部との間に、薄い状態の後下部を配置させて、厚さを増すように膨張できるため、ステアリングホイールに接近している運転者の腹部を、リング部の後部から、円滑に保護することができる。
また、エアバッグ装置としては、折り畳んで収納されたエアバッグの収納部位をインストルメントパネルの部位に配設させる助手席用として構成し、インナバッグは、エアバッグ装置の作動時におけるインナバッグの膨張完了時、腕部の先端部を、収納部位の周縁におけるインストルメントパネルの表面側に乗り上げる位置まで配設させるように、構成してもよい。
このような構成であれば、アウタバッグを収納部位の周縁のインストルメントパネルの表面側から浮き上がらせずに膨張させることができ、膨張途中のアウタバッグとして、部分的に乗員側へ突出する部位を低減させて、広く広げた状態で乗員側へ膨張させることができ、アウタバッグが、膨張途中で接近していた乗員と当たることとなっても、極力、広い面でソフトに受け止めることができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1,2に示すように、ステアリングホイールWに搭載されるものであり、ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置M1と、を備えて構成されている。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。この第1実施形態のエアバッグ装置M1では、収納されたエアバッグ10が、膨張途中において、極力、収納部位の周縁の部位となるリング部Rの上面PRから離れずに、膨張できるように構成されている(図9参照)。
なお、本明細書の第1実施形態では、特に断らない限り、上下方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向が対応し、前後方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した前後方向が対応し、左右方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した左右方向が対応するものである。
ステアリングホイール本体1は、図2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属製の芯金2を備えて構成されている。芯金2のリング部Rの部位と各スポーク部Sのリング部R側の部位とには、合成樹脂製の被覆層5が被覆されている。芯金2のボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3が配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー7が配設されている。
エアバッグ装置M1は、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター43、折り畳んだエアバッグ10の上方を覆うエアバッグカバー49、エアバッグ10とインフレーター43とを収納保持するとともにエアバッグカバー49を保持するケース45、及び、インフレーター43とともにエアバッグ10をケース45に取り付けるためのリテーナ41、を備えて構成されている。
リテーナ41は、図2〜4に示すように、インフレーター43の円柱状の本体部43aを下方から挿入可能な四角環状として、図7,8に示すように、四隅に下方へ突出するボルト41aを備えて構成されている。リテーナ41は、ボルト41aを突出させた状態でエアバッグ10内に収納されて、ケース45への取付時、各ボルト41aを、ケース45の底壁部46の貫通孔46b(図1参照)とインフレーター43のフランジ部43cとに貫通させて、各ボルト41aに図示しないナットを締結させることにより、エアバッグ10とインフレーター43とをケース45の底壁部46に取付固定している。
インフレーター43は、図2〜4に示すように、上部に複数のガス吐出口43bを備えた円柱状の本体部43aと、本体部43aの外周面から突出するフランジ部43cと、を備えて構成されている。フランジ部43cには、リテーナ41の各ボルト41aを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
ケース45は、図1,2に示すように、長方形板状の底壁部46と、底壁部46の外周縁から上下に延びる側壁部47と、を備えた板金製とし、ステアリングホイールWのボス部Bの上部に配置されて、折り畳まれたエアバッグ10を収納する収納部位を構成している。底壁部46には、インフレーター43の本体部43aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔46aが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ41の各ボルト41aを貫通させる4つの貫通孔46bが形成されている。側壁部47の上端には、外方へ延びる取付片47aが形成され、取付片47aには、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられ、図示しない取付基板を利用して、ケース45がステアリングホイールWの芯金2に取付固定され、エアバッグ装置M1が、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、ケース45の側壁部47には、リベット48等を利用してエアバッグカバー49の側壁部51が取り付けられている。
エアバッグカバー49は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ10の上方を覆う天井壁部50と、天井壁部50の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部51と、を備えて構成されている。天井壁部50には、膨張するエアバッグ10に押されて前後両側に開く2枚の扉部50aが形成されている。
エアバッグ10は、図1,2の二点鎖線に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形として、側方から見て略楕円形とするように構成されて、図2〜4に示すように、下部側に、膨張用ガスを流入させるように円形に開口する流入用開口11が配設されている。流入用開口11の周縁には、エアバッグ10をケース45の底壁部46に取り付けるためのリテーナ41の各ボルト41aを貫通させる取付孔13が、形成されている(図5参照)。そのため、エアバッグ10では、流入用開口11の周縁が、エアバッグ10の収納部位としてのケース45の底壁部46に取付固定される取付部位12としている。なお、流入用開口11、各取付孔13、及び、取付部位12は、後述するアウタバッグ15、インナバッグ20、及び、テザー用布33の重なる各部位に、それぞれ、配設されることとなる。また、重なり状態は、エアバッグ10の外周側から内周側にかけて、アウタバッグ15、テザー用布33、インナバッグ20としている。
そして、実施形態のエアバッグ10は、ポリエステルやポリアミド等の可撓性を有した織布から形成され、図3〜5に示すように、エアバッグ10の外周壁を構成するアウタバッグ15と、流入用開口11を覆うようにアウタバッグ15内に配置されるインナバッグ20と、を備えて構成されている。インナバッグ20は、流入用開口11を経て流入してきた膨張用ガスG(図2参照)をアウタバッグ15へ流出して、アウタバッグ15を膨張させるように、複数(実施形態では4個)の流出口27を備えている。
アウタバッグ15は、図5に示すように、平らに展開した際に円形状となる2枚の車体側壁部16と運転者側壁部17とから構成され、外周縁相互を縫合させて結合させることにより、楕円球状の袋状に膨張するように構成されている。車体側壁部16は、アウタバッグ15の膨張完了時、リング部R側に位置することなり、運転者側壁部17は、アウタバッグ15の膨張完了時、運転者側に位置することとなる。車体側壁部16の中央には、流入用開口11が開口しており、その周縁には、取付孔13が形成されている。
また、流入用開口11の周縁の取付部位12には、アウタバッグ15の膨張完了時、運転者側壁部17の中央17a付近における取付部位12からの離隔距離を規制する2つのテザー32が配設されている。各テザー32は、テザー用布33,34の各帯部33b,34b相互を連結することにより、形成されている。テザー用布33は、車体側壁部16の流入用開口11の周縁に縫合等によって結合される円環状の本体部33aと、本体部33aの左右両縁から延びる帯部33bと、を備えて構成されている。テザー用布34は、運転者側壁部17の中央17aに縫合等により結合される円形状の本体部34aと、本体部34aの左右両縁から延びる帯部34bと、を備えて構成されている。テザー用布33の本体部33aは、取付部位12の補強布としての役目も果たしている。
そして、アウタバッグ15は、テザー32,32によって、取付部位12からの運転者側壁部17の中央17a付近までの離隔距離が規制されて、リング部Rの上面側を覆って、リング部Rの直径寸法より大きな外径寸法の円板状に膨張することとなる(図2の二点鎖線、図9のC参照)。
インナバッグ20は、膨張時の形状として、図5,7,8に示すように、流入用開口11とその周縁に配置される4つの取付孔13とを有した中央部21と、中央部21から流入用開口11の直径方向に沿って前後両側に延びる腕部23(23F,23B)と、を備えて構成されている。インナバッグ20は、中央部21の流入用開口11の周縁が、アウタバッグ15とともに、リテーナ41に共締めされるように押えられてケース45の底壁部46に取付固定される取付部位12となるが、各腕部23は、実施形態の場合、全体がアウタバッグ15における取付部位12を除く内周面15aから離隔可能に配設されることとなる。また、各腕部23は、中央部21の近傍の元部24から先端部26の先端の頂部26aにかけて、先細りの筒形状となるように、構成されている。
インナバッグ20の流出口27は、流入用開口11からの膨張用ガスGの流入時、インナバッグ20の中央部21から各腕部23の先端部26の頂部26aまでの周壁の全域を膨らませ可能に、各腕部23の先端部26より、流入用開口11側の位置に配置されるとともに、開口面積が大きくなりすぎないように、設定されている。なお、実施形態の場合には、各流出口27は、各腕部23における元部24と先端部26との間の中間部25の前後方向に沿った側面に、円形に開口して形成されており、各腕部23で2個ずつ、合計4個配設されている。さらに、各腕部23に設けられる二つずつの流出口27は、各腕部23がリング部Rの上面PRから離れないように、腕部23の軸心Cを中心として、上面PRから約30度上向きに軸方向GDを配置させ、その軸方向GDに沿って膨張用ガスGを流出させるように構成されている(図8の括弧書き参照)。
また、インナバッグ20は、各ボルト41aを取付孔13から突出させた状態でインナバッグ20内にリテーナ41を入れて、中央部21における流入用開口11の周縁の取付部位12を固定した状態とし、そして、インナバッグ20単体を膨らませた状態では、図7,8に示すように、二つの腕部23F,23Bの延びている前後方向と直交する左右方向から見た状態で、流入用開口11の開口面OPより、膨張用ガスGの流入方向DFと逆方向DBに下がった位置に、換言すれば、アウタバッグ15の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位16aをケース45の周縁側に押える押圧力PWの作用方向に沿って(図9参照)、開口面OPより下がった位置に、前後の各腕部23における先端部26の頂部26aが配置されるように、構成されている。
さらに、実施形態のインナバッグ20では、膨張完了時、流入用開口11と対向する側の上側周壁29での二つの腕部23F,23Bの先端部26間を結ぶ稜線29aを凸形状とするとともに、上側周壁29の二つの腕部23F,23Bの先端部26間を結ぶ膜長(上側膜長)LUを、流入用開口11側の下側周壁30での二つの腕部23F,23Bの先端部26間を結ぶ膜長(下側膜長)LDより、長くするように、構成している。上側周壁29は、腕部23Fの頂部26aから、腕部23Fの上面23a、中央部21の上面21a、腕部23Bの上面23aを経て、腕部23Bの頂部26aまでの部位である。下側周壁30は、腕部23Fの頂部26aから、腕部23Fの下面23b、中央部21の下面21b(この部位は、リテーナ41によって固定される取付部位12となる)、腕部23Bの下面23bを経て、腕部23Bの頂部26aまでの部位である。
このインナバッグ20は、平らに展開した状態で、図6のAに示す楕円板状としたシート材36を二つ折りして、図6のBに示すように、重ねた外周縁36a相互を縫合等により結合させて形成されている。なお、このシート材36、既述のテザー用布33,34、及び、アウタバッグ15を構成する車体側壁部16や運転者側壁部17は、ポリエステルやポリアミド等の可撓性を有した織布から形成されている。そして、シート材36は、耐熱性を向上せるために、インナバッグ20の内周面側となる側に、シリコンゴム等からなるコーティング層が形成されている。
シート材36は、平らに展開した形状として、流入用開口11と取付孔13とを配設させた中央部用部位37と、中央部用部位37から流入用開口11の直径方向に沿って両側に延びる二つの腕部用部位38,38とを備えて構成されている。シート材36を二つ折りして重ねた外周縁36a相互を結合させる際の折目FVは、シート材36を平らにした楕円形状の長軸に沿った位置に配置されることとなる。そして、インナバッグ20は、中央部21から腕部23F,23Bの先端部26にかけて、先細りの筒形状として構成されていることから、平らに展開したシート材36は、中央部用部位37から腕部用部位38,38の先端38aに向かって、二つ折りの折目FVと直交する方向の幅寸法BLを狭める形状として、形成されている。
そして、インナバッグ20は、流入用開口11と取付孔13とを配設させたシート材36を折目FVで二つ折りして、重ねた外周縁相互を縫合して結合すれば、形成することができる。なお、重ねて外周縁相互を結合するシート材36の外周縁36aは、インナバッグ20の膨張完了時における流入用開口11に対向する上側周壁29側の稜線29aの部位となる。また、折目FVの部位36bは、インナバッグ20の膨張完了時における流入用開口11側の下側周壁30の部位となる。
また、製造したインナバッグ20は、図9のBや図11に示すように、エアバッグ装置M1の作動時における膨張完了時、腕部23F,23Bの先端部26を、折り畳まれたエアバッグ10の収納部位であるボス部Bの上部(ケース45)の周縁に乗り上げる位置まで、実施形態の場合、リング部Rの上面PR側に乗り上げる位置まで配設させるように、腕部23F,23Bの先端部26間の長さ寸法、すなわち、シート材36の折目FVとなる部位36bの長さ寸法LLが、設定されている。
なお、アウタバッグ15は、予め、テザー用布33の本体部33aを車体側壁部16に固定させるとともに、テザー用布34の本体部34aを運転者側壁部17に固定させて、外周面側となる面相互を接触させて車体側壁部16と運転者側壁部17とを重ね、外周縁相互を結合させた後、結合代(縫代)が外周面側に露出しないように、流入用開口11を利用して、裏返し、テザー用布33,34の対応する帯部33b、34b相互を結合させれば、アウタバッグ15を製造することができる。
エアバッグ装置M1を組み立てて車両に搭載する場合には、各ボルト41aを取付孔13から突出させるようにインナバッグ20内にリテーナ41を入れ、そのインナバッグ20をアウタバッグ15内に入れるとともに、アウタバッグ15の各取付孔13からボルト41aを突出させ、エアバッグ10を組み立てる。ついで、エアバッグ10を折り畳んで、折り崩れしないように、エアバッグ10を所定の折り崩れ防止材によって包む。ついで、各ボルト41aを貫通孔46bから突出させるように、ケース45内の底壁部46上にエアバッグ10を収納し、さらに、インフレーター43の本体部43aを下方から底壁部46の挿通孔46aに挿入させて、フランジ部43cに各ボルト41aを貫通させて、各ボルト41aに図示しないナットを締結すれば、収納部位としてのケース45に、エアバッグ10とインフレーター43とを収納し、かつ、リテーナ41を利用して、エアバッグ10とインフレーター43とを取り付けることができる。さらに、ケース45にエアバッグカバー49を被せて、リベット48等を利用して側壁部47,51相互を連結して、ケース45にエアバッグカバー49を取り付け、さらに、ケース45の取付片47aに、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ装置M1を組み立てることができる。そして、エアバッグ装置M1の車両への搭載は、予め、ステアリングシャフトSSに締結したステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、エアバッグ装置M1を取り付ければ、エアバッグ装置M1を車両に搭載することができる。
このステアリングホイールW用のエアバッグ装置M1では、作動時、図2に示すように、膨張用ガスGが流入用開口11を経てエアバッグ10に流入すると、エアバッグ10が膨張し、エアバッグカバー49の扉部50a,50aを押し開いて、エアバッグ10が、図2の二点鎖線に示すように、収納部位としてのケース45から突出して、リング部Rの上面PR側を覆うように、膨張を完了させる。その際、エアバッグ10の膨張初期では、図9のA,Bと図10,11に示すように、インナバッグ20が、アウタバッグ15より先に膨張を完了させる。また、アウタバッグ15も、膨張するインナバッグ20自体に押されたり、あるいは、インナバッグ20の流出口27からの膨張用ガスGにより膨張し、そして、インナバッグ20とともに、ケース45から突出する。
このアウタバッグ15の膨張時には、先に膨張を完了させたインナバッグ20が、流入用開口11から離れた各腕部23F,23Bの先端部26によって、エアバッグ装置M1の作動時におけるインナバッグ20の膨張完了形状を維持している間、車体側壁部16の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位16aをケース45の周縁側となるリング部Rの上面PR側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持することとなる。なお、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ10の膨張完了後、すなわち、アウタバッグ15が、インナバッグ20の流出口27から供給される膨張用ガスGによって、膨張を完了した後、インフレーター43からの膨張用ガスGの供給が停止すれば、図9のB,Cに示すように、インナバッグ20は、膨張完了形状からしぼみ、押圧力PWを発揮できない状態となる。
したがって、第1実施形態のステアリングホイールW用のエアバッグ装置M1では、アウタバッグ15は、図9のBに示すように、膨張初期から膨張完了後の膨張用ガスGの供給停止までの間、ケース4の周縁側の周縁離脱部位16aがリング部Rの上面PRから浮き上がることを抑制されて、膨張し、膨張途中の揺動運動(アウタバッグ15がリング部Rから離れたり再びリング部Rに当たる揺動運動)が抑制される。その結果、膨張途中に乗員(運転者)を受け止めることとなっても、アウタバッグ15は、素早くリング部Rの上面PRに支持されて反力を確保できて、クッション作用を生じさせて迅速に運転者を受け止めることができる。勿論、アウタバッグ15の揺動運動が抑制されることから、アウタバッグ15は、その膨張途中に必要以上に運転者側に突出せず、膨張途中に前方移動する運転者を受け止めることとなっても、運転者を安定して保護可能に受け止めることができる。
さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、インナバッグ20が、図7,8に示すように、リテーナ41を利用して取付部位12を固定した状態で単体で膨張を完了させた際、流入用開口11の開口面OPより、アウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押える押圧力PWの作用方向に沿って下がった位置に、各腕部23F,23Bにおける先端部26を配置させるように構成されている。
そのため、膨張完了時のインナバッグ20の各腕部23F,23Bが、アウタバッグ15の車体側壁部16の周縁離脱部位16aを、リング部Rの上面PR側に押圧する押圧力PWを大きく確保できて、一層、アウタバッグ15におけるケース45の周縁側の部位となる車体側壁部16の全体が、リング部Rの上面PRから浮き上がることを安定して抑制される。特に、実施形態の場合には、車両搭載時、リング部Rの上面PRが、開口面OPより高い位置に配置されており、一層、大きな押圧力PWを確保できる。
さらに、実施形態のインナバッグ20では、膨張完了時、腕部23F,23Bを、流入用開口11の部位で膨らむ中央部21から、流入用開口11の直径方向に沿って、先細りに先端側に延びるように配置させた二本から構成している。また、周縁を固定した流入用開口11から膨張用ガスGを流入させてインナバッグ20単体で膨張を完了させた状態において、図7,8に示すように、インナバッグ20の各腕部23F,23Bの先端部26の周壁を頂部26aまで膨らませ可能に、流出口27を、インナバッグ20の各腕部23F,23Bの先端部26より、流入用開口11側の位置に配置させ、かつ、二つの腕部23F,23Bの延びている方向と直交方向から見た状態で、流入用開口11と対向する側の上側周壁29の稜線29aを凸形状とするとともに、上側周壁29での腕部23F,23Bの先端部26間の上側膜長LUを、流入用開口11側の下側周壁30での腕部23F,23Bの先端部26間の下側膜長LDより、長くするように構成して、形成している。
このような構成では、インナバッグ20が、流出口27を先端部26の近傍に配置させていないことから、インナバッグ20の膨張完了時、二つの腕部23F,23Bが、それぞれ、先細りとした形状の先端部26まで円滑に膨らむ。そして、インナバッグ20は、単体での膨張完了時における二つの腕部23F,23Bの延びている方向と直交方向から見た状態で、上側周壁29の稜線29aを凸形状とするとともに、上側周壁29の上側膜長LUを、下側周壁30の下側膜長LDより、長くするように、構成されている。そのため、インナバッグ20の膨張完了時における各腕部23F,23Bの延びる方向に沿った上側周壁29と下側周壁30の外側へ膨らもうとする力に関し、上側周壁29の上側膜長LUが、下側周壁30の下側膜長LDより、長くする分、図7に示すように、上側周壁29の押し広げ力PUが下側周壁30の押し広げ力PDより勝って、インナバッグ20の二つの腕部23F,23Bが、インナバッグ20における流入用開口11の配置された中央部21から曲がるように、各先端部26を、流入用開口11の開口面OPより、アウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押える押圧力PWの作用方向に沿って下がった位置に、配置させることとなる。特に、エアバッグ10の膨張時には、インナバッグ20の中央部21における流入用開口11の周縁が、略正方形のエリアとした取付部位12として、リテーナ41によってケース45の底壁部46に取付固定されて、膨らまず、下側周壁30の押し広げ力PDを確保できる面積(内圧を受ける面積)が実質的にさらに狭まることから、一層、上側周壁29の押し広げ力PUが下側周壁30の押し広げ力PDより勝ることとなる。そしてさらに、インナバッグ20の中央部21における流入用開口11の周縁がリテーナ41によって平面状に取付固定されて、その縁部分から曲がり易いこととあいまって、インナバッグ20の二つの腕部23F,23Bは、各先端部26を、流入用開口11の開口面OPより押圧力PWの作用方向に沿って下がる位置側に配置させ易い。そのため、このような構成のインナバッグ20では、膨張完了形状を維持している間、二つの腕部23F,23Bの先端部26が容易に安定した強い押圧力PWを発揮できて、アウタバッグ15におけるケース45の周縁側の車体側壁部16がリング部Rの上面PRから浮き上がることを、的確に抑制できる。
さらに、このような強い押圧力PWを確保できるインナバッグ20が、実施形態の場合には、単に、中央部21を形成する中央部用部位37から各腕部23F,23Bを形成する腕部用部位38,38の先端38aに向かって、二つ折りの折目FVと直交する方向の幅寸法BLを狭める形状のシート材36を、折目FVで二つ折りして、重ねた外周縁36a相互を結合させる平面的な結合作業によって、製造しており、簡便に製造することができる。
なお、比較例のシート材として、図12〜14に示すように、中央部21を形成する中央部用部位37から各腕部23F,23Bを形成する腕部用部位38,38の先端38aに向かって、二つ折りの折目FVと直交する方向の幅寸法BLを同じ寸法とするシート材36Aを使用した場合には、押圧力を発揮するインナバッグを製造できない。すなわち、シート材36Aを折目FVで二つ折りして外周縁36a相互を結合しても、前後両端を開口させて流入した膨張用ガスを両端の開口から流出させるような略円筒状の整流布40となり、このような整流布40では、リテーナ41を取り付けて流入用開口11を固定して流入用開口11から膨張用ガスGを流入させて膨張させても、図13,14に示すように、流入用開口11と対向する側の上側周壁29の稜線29aを凸形状に形成し難く、また、各腕部23F,23Bを先端部26にかけて先細り形状にできない。そして、整流布40の上側周壁29の上側膜長LUを下側周壁30の下側膜長LDより長くすることもできず(LU=LDとなる)、押圧力PWを発生できない。
また、インナバッグとしては、アウタバッグ15へ膨張用ガスを供給するための流出口27より、開口面積が小さく、各腕部23における押圧力を発揮する先端部26の先端まで、周壁が張力を発揮して膨らむように膨張できれば、図15〜17に示すインナバッグ20Bのように、頂部26aを開口させてもよい。このインナバッグ20Bは、中央部21を形成する中央部用部位37から各腕部23F,23Bを形成する腕部用部位38,38の先端38aに向かって、二つ折りの折目FVと直交する方向の幅寸法BLを狭めるような形状のシート材36Bを、折目FVで折り、先端38a付近を結合(縫合)せずに、重ねた外周縁36a相互を結合させて形成している。このように形成したインナバッグ20Bでは、リテーナ41を取り付けて流入用開口11を固定して流入用開口11から膨張用ガスGを流入させて膨張させれば、図16,17に示すように、腕部23F,23Bの頂部26a付近までインナバッグ20Bが円滑に膨らみ、流入用開口11と対向する側の上側周壁29の稜線29aを凸形状に形成でき、また、各腕部23F,23Bを先端部26にかけて先細り形状にできる。さらに、インナバッグ20Bの上側周壁29の上側膜長LUを下側周壁30の下側膜長LDより長くすることもできることから、押圧力PWを確保できる。
また、シート材の外形形状としては、図18,19に示すシート材36Cのように、中央部21を形成する中央部用部位37から各腕部23F,23Bを形成する腕部用部位38,38の先端38aに向かって、二つ折りの折目FVと直交する方向の幅寸法BLを狭めるような菱形としてもよく、このシート材36Cから形成されたインナバッグ20Cでも、膨張完了時には、各腕部23F,23Bの各先端部26が流入用開口11の開口面OPより下方に位置するため、強い押圧力PWを確保できる。
なお、インナバッグとしては、腕部が、流入用開口から離れた先端側の部位によって、エアバッグ装置の作動時におけるインナバッグが膨張完了形状を維持している間、アウタバッグの流入用開口の周縁における収納部位から離脱した周縁離脱部位を収納部位の周縁側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持可能にできれば、可撓性を有したシート材を立体的に結合させて、形成してもよい。例えば、図20に示すように、ポリエステル等の織布からなる可撓性を有したシート材36Dを所定形状に裁断し、そして、周縁相互を立体的に結合させて、形成してもよい。このシート材36Dで形成したインナバッグ20Dでも、膨張完了時、腕部23F,23Bを、流入用開口11の部位で膨らむ中央部21から、流入用開口11の直径方向に沿って、先細りに先端側に延びるように配置させた二本から構成している。また、周縁を固定した流入用開口11から膨張用ガスを流入させてインナバッグ20D単体で膨張を完了させた状態において、インナバッグ20Dの各腕部23F,23Bの先端部26の周壁を膨らませ可能に、流出口27を、インナバッグ20Dの各腕部23F,23Bの先端部26より、流入用開口11側の位置に配置させ、かつ、二つの腕部23F,23Bの延びている方向と直交方向から見た状態で、流入用開口11と対向する上側周壁29の稜線29aを凸形状とするとともに、上側周壁29の上側膜長LUを、流入用開口11側の下側周壁30の下側膜長LDより、長くするように構成されており、的確に、各腕部23F,23Bの先端部26が下方への的確な押圧力PWを確保できる。
また、第1実施形態の場合、インナバッグ20の流出口27が、インナバッグ20の膨張完了時の状態で、流出させる膨張用ガスGの方向を、図8の括弧書きに示すように、腕部23の軸心Cを中心として、上面PRから約30度上向きに軸方向GDを配置させ、その軸方向GDに沿って膨張用ガスGを流出させるように構成されている。そのため、流出口27から流出する膨張用ガスGは、腕部23F,23Bの先端部26におけるリング部Rの上面PR側への押圧状態を阻害せずに、アウタバッグ15側へ流出される。
なお、流出口27は、流出させる膨張用ガスGの流出方向(流出口27の軸方向)GDを、先端部26のリング部Rの上面PR側への押え方向と略直交する方向DHから押え方向と逆方向DVとなるまでの角度範囲θ内とするように、腕部23の移動を防止可能として、配設することが望ましい(図8の括弧書き参照)。そして、流出口27は、膨張用ガスGの流出時において、安定した押え状態を確保できるように腕部23の移動を防止可能に、例えば、膨張用ガスGの流出方向(軸方向)GDを、先端部26の収納部位の周縁側への押え方向と逆方向DVとする場合には、収納部位の周縁であるリング部Rの上面PRと対向する位置に、一つ、あるいは、複数、配置させることができ、例えば、流出方向(軸方向)GDを、先端部26の押え方向と略直交する方向DHに接近させている場合には、膨張用ガスGの流出する反力のバランスを考慮して、腕部23の軸周り方向で、対称的な位置に複数配置させればよい。第1実施形態では、各腕部23の軸回り方向で、対称的な位置の2箇所に流出口27を配設させており、流出口27からの膨張用ガスGの流出時において、各腕部23F,23Bの先端部26が、安定した押え状態を確保できる。
また、インナバッグが膨張を迅速に完了できて、腕部の先端側がアウタバッグの周縁離脱部位を押さえることができれば、流出口は、腕部に斜め下向きに配置させたり、あるいは、中央部に設けてもよい。
さらに、第1実施形態のエアバッグ10では、作動時、図9のA,図10に示すように、インナバッグ20の膨張初期において、収納部位としてのボス部Bの上部に配置されたケース45から突出した後、各腕部23F,23Bを素早く延ばして、運転者側に厚く突出することなく、リング部Rの上面PRに沿った前後方向に展開する。その後、図9のB,図11に示すように、インナバッグ20が膨張を完了させれば、腕部23F,23Bの各流出口27から左右両側に膨張用ガスGがアウタバッグ15側に供給され、運転者側へ厚く突出することを抑えて、リング部Rの上面PRに沿って左右に広く展開する。この時、リング部Rの後部RBに位置するアウタバッグ15の後下部15bは、後部RBを覆った状態で、厚さを徐々に厚くすることとなる。すなわち、アウタバッグ15は、膨張初期に、運転者がリング部Rに接近していても、運転者の腹部とリング部Rの後部RBとの間に、薄い状態の後下部15bを配置させて、その後、厚さを増すように膨張できるため、ステアリングホイールWに接近している運転者の腹部を、リング部Rの後部RBから、円滑に保護することができる。
なお、この点を考慮しなければ、インナバッグ20の二つの腕部23は、中央部21から左右方向の両側に延びるように配設させてもよい。
また、第1実施形態では、ステアリングホイールW用のエアバッグ装置M1を説明したが、図22〜24に示す第2実施形態の助手席用のエアバッグ装置M2に本発明を適用してもよい。このエアバッグ装置M2は、折り畳んで収納されたエアバッグ70の収納部位(ケース45)を、インストルメントパネル(以下、インパネとする)60の部位に配設させる助手席用として構成し、インナバッグ20Eは、エアバッグ装置M2の作動時におけるインナバッグ20Eの膨張完了時、各腕部23F,23Bの先端部26を、収納部位の周縁となるインパネ60の表面側部位61に乗り上げる位置まで配設させるように、構成されている。なお、実施形態の場合、表面側部位61は、エアバッグカバー49の開いた扉部50aの裏面や、扉部50aの開いた開口の周縁となるインパネ60の部位となる。
さらに、エアバッグ70は、アウタバッグ75を構成する車体側壁部76と乗員側壁部77とが長方形板状として構成されている点が、エアバッグ10と大きく相違している。さらに、ケース45は、ホーンスイッチ機構を連結させずに、ボディ側に連結保持されている。さらにまた、エアバッグカバー49は、インパネ60と一体的に形成されている。そして、エアバッグ装置M2のエアバッグ装置M1との相違点は、エアバッグ70の容積が助手席用として、大きくなったことに比例して、各部が大型化しただけであり、第1実施形態と同様な部材や各部には、同一の符号を付してある。また、エアバッグ装置M2の車両への搭載は、リテーナ41を利用して、折り畳んだエアバッグ70とインフレーター43とをケース45に収納保持させ、車両に搭載済みのインパネ60側のエアバッグカバー49の側壁部51とケース45の側壁部47とを連結させて、ケース45の底壁部46に設けられた図示しない取付ブラケットをボディ側に取り付ければ、エアバッグ装置M2を車両に搭載することができる。
そして、助手席用のエアバッグ装置M2では、作動時、図22に示すように、膨張用ガスGが流入用開口11を経てエアバッグ70に流入すると、エアバッグ70が膨張し、エアバッグカバー49の扉部50a,50aを押し開いて、エアバッグ70が、図22の二点鎖線に示すように、収納部位としてのケース45から突出して、インパネ60のケース45の周縁となる表面側部位61を覆うように、膨張を完了させる。その際、エアバッグ70の膨張初期では、図24のA,Bに示すように、アウタバッグ75の内周面75aから離隔可能なインナバッグ20Eが、アウタバッグ75より先に膨張を完了させる。また、アウタバッグ75も、膨張するインナバッグ20E自体に押されたり、あるいは、インナバッグ20Eの流出口27からの膨張用ガスGにより膨張し、そして、インナバッグ20Eとともに、ケース45から突出する。
このアウタバッグ75の膨張時には、先に膨張を完了させたインナバッグ20Eが、流入用開口11から離れた各腕部23F,23Bの先端部26によって、エアバッグ装置M2の作動時におけるインナバッグ20Eの膨張完了形状を維持している間、車体側壁部76の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位76aをケース45の周縁側となる表面側部位61に押さえ、かつ、押さえ状態を維持することとなる。勿論、この第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、エアバッグ70の膨張完了後、すなわち、アウタバッグ75の膨張完了後、膨張用ガスGの供給が停止されれば、図24のB,Cに示すように、インナバッグ20Eは、膨張完了形状からしぼみ、押圧力PWを発揮できない状態となる。
したがって、第2実施形態の助手席用のエアバッグ装置M2でも、エアバッグ70の膨張初期から膨張完了後の膨張用ガスGの供給停止までの間、アウタバッグ75をインパネ60の表面側部位61から浮き上がらせずに膨張させることができ、膨張途中のアウタバッグ75として、部分的に乗員側へ突出する部位を低減させて、広く広げた状態で乗員側へ膨張させることができ、アウタバッグ75が、膨張途中で接近していた乗員と当たることとなっても、極力、広い面でソフトに受け止めることができる。
なお、第2実施形態では、インナバッグ20Eの腕部23F、23Bを、中央部21から前後方向両側に延びるように配設させたが、中央部21から左右両側に延びるように、腕部23を配設させてもよい。
また、第1,2実施形態では、インナバッグ20,20Eの腕部23F、23Bが、アウタバッグ15,75の内周面15a、75aに拘束されずに自由に膨張可能に、全体をアウタバッグ15,75から離隔可能に構成している。そのため、腕部23F,23Bが、アウタバッグ15,75の内周面15a,75aに拘束されずにずれ移動することができて、インナバッグ20,20Eが、アウタバッグ15,75の周縁離脱部位16a,76aを押さえ易い形状として、円滑に膨張を完了させることができる。
この場合、図25〜27に示す第3実施形態のエアバッグ装置M3のエアバッグ10Fにおけるインナバッグ20Fのように、少なくとも先端部26側だけをアウタバッグ15の周縁離脱部位16aに、縫合等により結合させても良い。この第3実施形態では、第1実施形態のインナバッグ20の長さ寸法を長くし、平らに展開させて車体側壁部16上に載せれば、直径寸法と等しくなるように、インナバッグ20Fの長さ寸法を設定して、各先端部26,26の各頂部26aを、車体側壁部16と運転者側壁部17との外周縁16b,17b相互の結合時、共縫いして、アウタバッグ15に結合させている。この点が相違するだけで、他の部位、部材は、第1実施形態と同様であり、同一の部位、部材には、第1実施形態と同一の符号を付して、説明を省略する。
この第3実施形態でも、作動時、膨張用ガスGが流入用開口11を経てエアバッグ10Fに流入すれば、図27に示すように、エアバッグ10Fが、エアバッグカバー49の扉部50a,50aを押し開いて、収納部位としてのケース45から突出して、リング部Rの上面PR側を覆うように、膨張を完了させる。その際、エアバッグ10Fの膨張初期では、図27のA,Bに示すように、インナバッグ20が、アウタバッグ15より先に膨張を完了させ、そして、アウタバッグ15が膨張し始める。このアウタバッグ15の膨張時には、先に膨張を完了させたインナバッグ20Fが、流入用開口11から離れた各腕部23F,23Bの先端部26によって、エアバッグ装置M3の作動時におけるインナバッグ20Fの膨張完了形状を維持している間、車体側壁部16の流入用開口11の周縁におけるケース45から離脱した周縁離脱部位16aをケース45の周縁側となるリング部Rの上面PR側に押さえ、かつ、押さえ状態を維持することとなる。この時、頂部26aを除いて、腕部23F,23Bが、アウタバッグ15,75の内周面15a,75aに拘束されずにずれ移動することができることから、インナバッグ20Fは、アウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押さえ易い形状に、円滑に膨張を完了させることができる。
なお、この第3実施形態のエアバッグ装置M3でも、エアバッグ10Fの膨張完了後、すなわち、アウタバッグ15が、インナバッグ20Fの流出口27から供給される膨張用ガスGによって、膨張を完了した後、インフレーター43からの膨張用ガスGの供給が停止すれば、図27のB,Cに示すように、インナバッグ20Fは、膨張完了形状からしぼむ。
この第3実施形態のステアリングホイールW用のエアバッグ装置M3でも、第1実施形態と同様に、図27のBに示すように、アウタバッグ15の膨張初期から膨張完了後の膨張用ガスGの供給停止までの間、ケース4の周縁側の周縁離脱部位16aがリング部Rの上面PRから浮き上がることを抑制されて、アウタバッグ15は、膨張途中の揺動運動を抑制されて膨張することから、膨張途中に運転者を受け止めることとなっても、クッション作用を生じさせて迅速に運転者を受け止めることができる。
そしてこの第3実施形態では、インナバッグ20Fの頂部26aがアウタバッグ15に結合されて、インナバッグ20Fの先端部26側がアウタバッグ15の周縁離脱部位16aから位置ずれしないことから、折り畳み時のアウタバッグ15に対するインナバッグ20Fの配置位置を安定させることができて、エアバッグ10Fの折り畳み作業を円滑に行うことができる。
また、図28〜31に示す第4実施形態のエアバッグ装置M4に使用するエアバッグ10Gのインナバッグ20Gのように、シート材36Gからの形成時に、インナバッグ20Gにおける流入用開口11と対向する側での二つの腕部23F,23Bの先端部26,26間を結ぶ上側膜長LUを、長さ調整してもよい。この第4実施形態では、流入用開口11と対向して流入用開口11から離れる対向頂部22の頂点22aからのずれ距離OLに応じて、高さ調整縫合部28の配置位置を調整し(図28のB,C参照)、その調整により、上側膜長LUの長さ調整を行っている。そして、上側膜長LUの長さ調整により、インナバッグ20Gの膨張完了時、腕部23F,23Bの先端部26,26がアウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押圧する押圧力PWの増減を、調整している(図31参照)。なお、このインナバッグ20Gは、図18に示すシート材36Cと同様な菱形状のシート材36Gを使用している。
そして、第4実施形態では、シート材36Gを結合する際に、図28のA,Bに示すように、二つ折りしたシート材36Gの重ねた外周縁36a相互を、縫合して結合して、結合縁(縫合縁)39を設けて、インナバッグ20Gを形成している。さらに、図28のB,Cに示すように、流入用開口11の直径方向に沿い、かつ、結合縁39と直交する方向に沿う谷折りの折目VF1を付けて、流入用開口11側で、二つの腕部23F,23Bを重ねるように折り畳む。この時、中央部21における流入用開口11と対向して流入用開口11から離れる対向頂部22側を、谷折りの折目VF1の両端から連なる山折りの折目MF1,MF2を両縁側に付けて、インナバッグ20Gを平らに展開させた状態に折り畳む。ついで、対向頂部22の部位に、対向頂部22の頂点22aから谷折りの折目VF1側にずれ、かつ、谷折りの折目VF1と平行とした直線状の縫合ラインを設けて、重ねた部位相互を縫い合わせてなる高さ調整縫合部28を形成する。そして、図28のC,Dに示すように、流入用開口11を利用して、結合縁(縫合縁)39の縫代39aが、インナバッグ20Gの内周面側に配置されるように、インナバッグ20Gを裏返す。さらに、図29のAに示すように、アウタバッグ15内にインナバッグ20Gを収納する。この時、インナバッグ20Gは、インナバッグ20Gの流入用開口11の周縁をアウタバッグ15の流入用開口11の周縁に重ねて、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばす。そして、図28のDに示すように、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口11側に載せるようにして、インナバッグ20Gを、結合縁39と直交方向に広げて平らに展開させる。そしてさらに、図28のEに示すように、対向頂部22を、流入用開口11の直径方向に配置させた結合縁39に対して直交方向に沿う谷折りの折目VF2を付けて、インナバッグ20G上に重ねるように折り畳む。このような折り畳み状態で、インナバッグ20Gをアウタバッグ15内に収納しておく。
なお、インナバッグ20Gに設けた流出口27は、インナバッグ20Gをアウタバッグ15内に平らに収納した状態において、直線状の結合縁39を中心線ICとして、二つの腕部23F、23Bの位置で、それぞれ、対称形(線対称形)として、配設されている。ちなみに、実施形態の場合、インナバッグ20Gには、4個の同一形状の円形に開口した流出口27が配設され、これらの流出口27が、各腕部23F,23Bにおいて、結合縁39を中心線ICとして、線対称に配置されている(図28のE,29のA参照)。
また、インナバッグ20Gのアウタバッグ15内への収納時には、予め、リテーナ41をインナバッグ20Gに収納して、各取付孔13からボルト41aをインナバッグ20G外へ突出させた状態として行い、アウタバッグ15の各取付孔13からもボルト41aを突出させることとなる(図30,31参照)。
そして、エアバッグ10Gは、図29のA,B,Cに示すように、折り畳む。第4実施形態の場合には、次のような第1,2折畳工程を経て折り畳んでいる。
第1折畳工程では、まず、図29のAに示すように、対向頂部22を折目VF2を付けてインナバッグ20G上に重ねるように折り畳んだ状態で、インナバッグ20Gをアウタバッグ15内に収納しておく。また、アウタバッグ15の運転者側壁部17を車体側壁部16の上方側に重ねて平らにし、エアバッグ10Gを流入用開口11を中心として、平らに展開させておく。そして、図29のA,Bに示すように、インナバッグ20の結合縁39に対して直交するエアバッグ10Gの両縁10c,10dを、それぞれ、流入用開口11に接近させて、結合縁39と直交するエアバッグ10Gの幅寸法を狭めるように折り畳む。第4実施形態の場合には、結合縁39を、流入用開口11の前後方向に沿う中心線ICに沿って、配置させている。そのため、第1折畳工程では、エアバッグ10Gの左縁10cと右縁10dと(換言すれば、アウタバッグ15の左縁15gと右縁15hと)を流入用開口11に接近させるように、折り畳んでいる。さらに、第4実施形態の場合には、蛇腹折りして、左右の折畳部位10e,10fを形成し、これらの左右の折畳部位10e,10fを運転者側壁部17上に載せている。そして特に、中心線ICの両側の折畳部位10e,10fは、中心線ICを中心として、線対称形に折り畳むことが重要である。勿論、アウタバッグ15自体も、第1折畳工程前において、中心線ICを中心として、左右相互を半円形状とした線対称形として平らに展開させており、折畳部位10e,10fの折り畳み完了形状を、容易に、対称形とすることができる。
第2折畳工程では、第1折畳工程を経た後、第1折畳工程前のインナバッグ20Gの結合縁39に沿った方向のエアバッグ10Gの両縁を、それぞれ、流入用開口11に接近させて、結合縁39に沿った方向のエアバッグ10Gの幅寸法を狭めるように折り畳む。第4実施形態の場合、エアバッグ10Gの前縁10aと後縁10bと(換言すれば、アウタバッグ15の前縁15dと後縁15bと)を、流入用開口11に接近させるように、折り畳んでいる。さらに、第4実施形態の場合には、第2折畳工程でも、前後で線対称形に折り畳んでいる。具体的には、流入用開口11から前縁10aや後縁10bまでの中間部位を巻いて、前縁10aと後縁10bとを対向させるように、流入用開口11の上方に配置させている。そして、第2折畳工程を経て、エアバッグ10Gの折り畳みを完了させれば、第1実施形態と同様に、折り畳んだエアバッグ10Gを、ステアリングホイールに搭載する。
このエアバッグ装置M4では、作動時におけるエアバッグ10Gの膨張時、図30,31の二点鎖線に示す状態でインナバッグ20Gが膨張し、その後、実線に示すようにしぼむ。そのインナバッグ20Gの膨張時、高さ調整縫合部28が、対向頂部22の頂点22aからのずれ距離OLを大きくして、配置されれば、インナバッグ20Gにおける流入用開口11と対向する側での二つの腕部23F,23Bの先端部26,26間を結ぶ上側膜長LUを、短くすることから、インナバッグ20G単体での膨張完了時における二つの腕部23F,23Bの先端部26,26は、反りを小さくするように、流入用開口11の開口面OPからのアウタバッグの周縁離脱部位16aを押える方向に沿って離れる方向の距離を小さくする。その結果、インナバッグ20Gの膨張完了時、二つの腕部23F,23Bの先端部26がアウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押圧する押圧力PWは、小さくなる(図31の二点鎖線参照)。逆に、高さ調整縫合部28が、対向頂部22の頂点22aからのずれ距離OLを小さくして、配置されれば、インナバッグ20Gにおける流入用開口11と対向する側での二つの腕部23F,23Bの先端部26,26間を結ぶ上側膜長LUを、長くすることから、インナバッグ20G単体での膨張完了時における二つの腕部23F,23Bの先端部26は、反りを大きくするように、流入用開口11の開口面OPからのアウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押える方向に沿って離れる方向の距離を大きくする。その結果、インナバッグ20Gの膨張完了時、二つの腕部23F,23Bの先端部26がアウタバッグ15の周縁離脱部位16aを押圧する押圧力PWは、大きくなる(図31の一点鎖線参照)。
したがって、このようなエアバッグ装置M4のインナバッグ20Gでは、同じシート材36Gを使用しても、高さ調整縫合部28の対向頂部22の頂点22aからのずれ距離OLを調整して、容易に、反った際の押圧力PWを調整することができる。
また、この第4実施形態では、結合縁(縫合縁)39の縫代39aをインナバッグ20Gの内周面側に配置させている。そのため、エアバッグ10Gの膨張時、インナバッグ20Gの内周面側に配置された縫代39aが、高温・高圧の膨張用ガスから縫合糸14を覆うことができて、膨張時におけるインナバッグ20Gの縫合糸14や結合縁(縫合縁)39の破損を防止することができる。
さらに、この第4実施形態のインナバッグ20Gでは、結合縁39が、腕部23F,23Bの先端部26側から中央部21側にかけて、直線状として構成されている(図28のA,B参照)。そして、インナバッグ20Gが、エアバッグ10Gの折り畳み時、アウタバッグ15内において、インナバッグ20Gの流入用開口11の周縁をアウタバッグ15の流入用開口11の周縁に重ね、かつ、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばして、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口11側に載せつつ、インナバッグ20Gを、結合縁39と直交方向に広げて平らに展開させるとともに、対向頂部22を、流入用開口11の直径方向に配置させた結合縁39に対して直交方向に沿う谷折りの折目VF2を付けて、インナバッグ20G上に重ねるように折り畳んで、アウタバッグ15内に収納されている(図28のE、図29のA参照)。
そのため、このような構成では、エアバッグ10Gの折り畳み時におけるインナバッグ20Gが、アウタバッグ15内で、結合縁39を中心線ICとした両側で、線対称として、平らに展開されており、エアバッグ10Gを折り畳む際、谷折りの折目VF2の部位によって結合縁39がその直交方向へずれることなく、インナバッグ20Gをアウタバッグ15内で流入用開口11の周囲で、対称的にバランスよく配置させることができる。その結果、エアバッグ10Gの膨張時におけるインナバッグ20Gは、アウタバッグ15側への膨張用ガスGの流出やアウタバッグ15の周縁離脱部位16aの押えを、バランスよく行なえる。さらに、インナバッグ20Gが、結合縁39を、腕部23F,23Bの先端部26側から中央部21側にかけて、直線状として構成しているため、インナバッグ20Gの流入用開口11の周縁をアウタバッグ15の流入用開口11の周縁に重ねて、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口11側に載せつつ、インナバッグ20Gを、結合縁39と直交方向に広げて平らに展開させる際に、対向頂部22付近を弛ませることなく、平らに展開させ易く(図28のD,E参照)、さらに、対向頂部22を、谷折りの折目VF2を付けて、容易にインナバッグ20G上に折り畳むことができる。すなわち、第4実施形態のインナバッグ20Gでは、インナバッグ20G自体を平らに展開させて、アウタバッグ15内にバランスよく配置させる作業も、容易に行なうことができることとなる。
ちなみに、インナバッグ20Gをアウタバッグ15内に配置させる際、図32に示すように、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばして、単に、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させつつ、結合縁39と直交方向に広げるように、インナバッグ20Gを平らに展開させる場合には、エアバッグの折り畳み作業中に、結合縁39が、その周囲の弛み(皺)X1によって、結合縁39の直交方向にずれ易く、バランスよく、アウタバッグ内に配置させ難い。また、図33に示すように、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばした状態で、流入用開口11側を平らに延ばしつつ、二つの腕部23F,23Bの先端部26,26相互を結ぶ谷折りの折目VF3を付けて、結合縁39を直線状にインナバッグ20G上に重ねるように折り畳む場合には、膨張用ガスの流入状態が、二つの腕部23F,23Bの先端部相互を結ぶ谷折りの折目VF3部位を間とした両側相互で、バランスが崩れ、アウタバッグがバランスよく膨張できない。
さらに、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばして、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口11側に載せつつ、インナバッグ20Gを、結合縁39と直交方向に広げて平らに展開させるとともに、対向頂部22を、流入用開口11の直径方向に配置させた結合縁39に対して直交方向に沿う谷折りの折目VF2を付けて、インナバッグ20G上に重ねるように折り畳む際、結合縁39が、直線状でなく、例えば、図6のBに示すシート材36のような流入用開口11から膨らむような曲線状であれば、図34のCの括弧書きのように、対向頂部22を、谷折りの折目VF2を付けて折り畳む際、その付近に弛みX2が生ずることとなって、この場合にも、エアバッグの折り畳み中に結合縁39がずれる事態を招き、インナバッグ20を安定した折り畳み形状でアウタバッグ内に配置できない。そのため、第4実施形態のように、シート材36Gを二つ折りして重ねた外周縁36a相互を結合してインナバッグ20Gを形成する場合には、結合縁39を、腕部23F,23Bの先端部26側から中央部21側にかけて、直線状として構成することが望ましい。
そして特に、第4実施形態では、図29のA,B,Cに示すように、エアバッグ10Gを所定の第1,2折畳工程で折り畳んで、第1折畳工程では、結合縁39を中心線ICとして、線対称形に折り畳んで折畳部位10e,10fを形成している。このようなエアバッグ10Gの折り畳みであれば、エアバッグ10Gの膨張時、折畳工程と略逆の工程で、折りを解消して、エアバッグ10Gは展開膨張する。すなわち、エアバッグ10Gの展開膨張時、まず、インナバッグ20Gが、二本の腕部23F,23Bを伸ばす状態で、膨張を完了させて、第2折畳工程の折りが解消される。そして、第1折畳工程の折りを解消することとなる。その際、第1折畳工程の折り畳みが、インナバッグ20Gの結合縁39を中心線ICとして、両側の折畳部位10e,10fが線対称形に折り畳まれている。また、アウタバッグ15へ膨張用ガスを流出させるインナバッグ20Gの流出口27が、直線状の結合縁39を中心線ICとして、二つの腕部23F、23Bに、それぞれ、線対称形として、配設されている。そのため、結合縁39の直交方向のアウタバッグ15の左右両縁15g,15h側が、均等に折りを解消して、展開膨張する。したがって、上記のようなアウタバッグ15内へのインナバッグ20G自体や流出口27の配置と、エアバッグ15の折り畳みと、の組合せによって、エアバッグ10Gの展開膨張時、流入用開口11の直径方向の両側に(実施形態の場合、左右両側に)、エアバッグ10Gを均等に展開膨張させることができる。すなわち、第4実施形態では、エアバッグ10Gの膨張完了直前におけるエアバッグ10Gの外周縁を大きく展開させつつ厚く膨張させる際、エアバッグ10Gの流入用開口11を中心とした線対称の両縁10c,10d側(インナバッグ20Gの結合縁39の直交方向のエアバッグ10Gの両縁10c,10d側)が、片寄ることなく、均等に展開膨張し、膨張するエアバッグ10Gが、所定のエリアで、安定して、移動してくる運転者を受け止めることができる。
特に、第4実施形態の場合、第1折畳工程において流入用開口11に接近させるエアバッグ10Gの両縁は、膨張完了時における車両の左右方向に沿った左右両縁10c,10dとしている。そのため、エアバッグ10Gの膨張完了直前におけるエアバッグ10Gの外周縁を大きく展開させつつ厚く膨張させる際、エアバッグ10Gの左右両縁10c、10d側が、左右の一方側に片寄らずに、左右均等に展開膨張する。そのため、エアバッグ10Gが、予め、左右方向の保護エリアを余裕を持って設定しておけば、受け止める運転者が左右にずれても、その運転者を安定して保護できる。
なお、第4実施形態では、第1折畳工程での折り畳みについて、結合縁39の直交方向の両縁10c,10d側を、蛇腹折りした場合を示した。しかし、両縁10c,10d側の折畳部位10e,10fが、結合縁39を中心線ICとして、相互に対称形であれば、縁10c,10d側から巻くロール折りや、図29のBの括弧内に図示したロール折りと蛇腹折りとを混合した変則ロール折り等の種々の折り畳み方を採用することができる。
さらに、第2折畳工程においても、図29のCの括弧内に示すように、変則ロール折り等の種々の折り畳み方を採用することができる。
また、第4実施形態では、シート材36Gを二つ折りして重ねた外周縁36a相互を結合した後、図28のC,Dに示すように、裏返したり、高さ調整縫合部28を設けた場合を示したが、図34のA〜Cに示すように、裏返したり、高さ調整縫合部を設けたりせずに、二つの腕部23F,23Bを流入用開口11の直径方向に伸ばして、結合縁39を、流入用開口11の直径方向に配置させ、かつ、流入用開口11側に載せつつ、インナバッグ20Gを、結合縁39と直交方向に広げて平らに展開させるとともに、対向頂部22を、流入用開口11の直径方向に配置させた結合縁39に対して直交方向に沿う谷折りの折目VF2を付けて、インナバッグ20G上に重ねて、アウタバッグ内に収納してもよい。
さらに、第4実施形態のインナバッグ20Gやエアバッグ10Gの折り畳み方は、ステアリングホイール用のエアバッグ装置M4に利用する他、第2実施形態の助手席用のエアバッグ装置M2や、インナバッグ20Fの先端部26の頂部26aをアウタバッグ15に結合させる第3実施形態に応用してもよい。