JP5628664B2 - 相同組換え方法およびクローニング方法並びにキット - Google Patents

相同組換え方法およびクローニング方法並びにキット Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2008年3月7日出願の日本特願2008−57995号の優先権を主張し、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、遺伝子の相同組換え方法および標的遺伝子のクローニング方法並びにこれらの方法に用いられるキットに関する。
DNAクローニングとは、目的遺伝子をプラスミド、ファージ、コスミドなどの自己複製能を持つベクターに結合し、大腸菌などの宿主に導入して増殖させることにより、同じ遺伝子集団を大量に作り出す技術を言う。大腸菌におけるクローニング及びサブクローニングは、重合酵素連鎖反応(PCR)の方法などにより増幅された目的遺伝子を、DNAリガーゼを用いて複製開始点と抗生剤の選択標識を持ったベクターに結合して大腸菌細胞の中に導入した後、抗生剤耐性を調べることでクローニングされた細胞を選り分ける方法で行われる。
かかる通常のクローニング技術は現代の生命工学の基礎をなしており、ヒトゲノムプロジェクトが完成された以降に飛躍的な発展を成し遂げている、遺伝子情報に基づく大量遺伝子のクローニング及び高速なタンパク質発現などに幅広く用いられている。しかしながら、既存の遺伝子の操作方法においては、挿入DNAとベクターを同じ認識部位の制限酵素で切断することや、制限酵素を選択するときにも挿入DNAやベクターの内部を切断しないものを選択すること、などが求められるといった制限がある。また、制限酵素及びリガーゼを処理する過程で高度の技術が必要となり、しかも、高価な酵素を使用することによるコスト高も無視できない。
1990年代以降、特定の塩基配列を認識してDNA断片間の組換えを促すという配列特異的な遺伝子組換え酵素を用いた遺伝子操作技術への関心が高まりつつある。特に、attL、attR、attB、attPなどの特異なDNA配列を認識する遺伝子インテグラーゼを用いて遺伝子をクローニングするゲートウェイ・システム(インビトロジェン(株)製)が開発されて、大量の遺伝子の素早いクローニング及びタンパク質の発現のために汎用されている。この方法は、通常の制限酵素−連結反応と同様に、細胞外の遺伝子操作により行われるが、attLまたはattRを持つ線状DNA断片を仲介するLRクロナーゼと、attPとattBとの間を認識するBPクロナーゼとを用いる新規なクローニング方法である。同方法では、まず通常の遺伝子操作により目的遺伝子を挿入ベクターにクローン化し、その挿入ベクターに存在するattL、attR、attB、attPなどの特異的組換え配列と、その配列を認識するクロナーゼという酵素を利用した相同組換え反応により、同様の特異的組換え配列を持つ様々な発現ベクターへの遺伝子の移動を可能とする。この手法は大量の遺伝子の素早いサブクローニング及び発現の検証に有効ではあるが、最初にまず目的とするDNA断片を通常のクローニング法によって挿入ベクターにクローン化する必要があり、特異的組換え配列をもたない任意のDNA断片のクローン化には適さない。
一方、大腸菌細胞では、二本鎖切断の修復に関与するタンパク質RecA,RecBCDが相同組換え反応を触媒する。本組換え反応には、数百個以上の塩基が同じ配列を示すDNA断片が存在する場合に相同組換えが起こる場合がある。しかしながら、相同DNAの長さが40−50個以下である場合は、大腸菌自体による遺伝子組換えが極めて起こり難く、ファージ由来の組換え酵素であるレッド(Redα/β)またはRecE/Tシステムを導入した場合に限って、相同遺伝子間の組換えを起こすことが可能となる。この短い相同領域を含むDNA断片を用いた遺伝子組換えは、微生物の遺伝体を操作する技術、または制限酵素/リガーゼに影響されない細胞内クローニングなどに用いられる(非特許文献1、特許文献1)
[非特許文献1]
Zhang et al., 1998, Nature Genetics, 20, 123-128, Zhang et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 1314-1317
[特許文献1]特表2002-503448号公報(対応するWO99/29837)
上記特許文献1および非特許文献1の全記載は、ここに特に開示として援用される。
線状化させたプラスミドベクターとPCR産物との間の相同組換え反応により細胞内クローニングを行う場合、先ず、挿入DNAの両端に長さが50塩基の配列相同領域を位置させ、ベクターにおいても、配列相同領域が両端に位置するように制限酵素による切断を行い、相同組換え酵素(リコンビナーゼ)を持つ大腸菌に導入する方法が用いられる。
挿入DNAは、例えば、PCR産物として調製されるが、PCRの際のプライマーの鋳型への結合の特異性が低い場合や鋳型にプライマー配列と類似した配列が複数存在する場合などでは、非特異的増幅反応の結果両端の配列相同領域に挟まれた領域が、クローニングの対象であるターゲット領域でない場合も生じ得る。
配列相同領域には挟まれた領域が、クローニングの対象であるターゲット領域でない場合も、プライマー中に存在する配列相同領域を用いて、目的とする遺伝子と同様にクローン化されてしまう。
そこで本発明の目的は、相同組換えを用いた遺伝子のクローニング方法に用いる相同組換え方法であって、目的とする遺伝子を選択的に相同組換えできる方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記目的とする遺伝子を選択的に相同組換えできる方法を用いて得られる組換えDNA分子を増幅することを含む標的遺伝子のクローニング方法を提供することにある。
通常の相同組換えは、線状化されたベクターの両端に存在する相同組換え領域と、増幅用プライマー配列に存在する相同領域は同一である。それに対して、本発明における線状化されたベクターが有する相同組換え領域は、増幅用プライマーの配列に加え、標的遺伝子のみに存在する増幅用プライマー配列の内側の配列をベクター側に付加することにより、増幅用プライマーを用いて得られた増幅産物の中から、標的DNA断片を選択的に相同組換えさせるという特徴を有する。
本発明は以下のとおりである。
[1]増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物と、
このPCR産物の増幅用プライマー配列P1およびP2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT2をVP2の末端側に有する線状化されたべクターを用い(但し、T1およびT2の少なくとも一方は、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する)
前記PCR産物を相同組換え反応に付して前記ベクターに挿入して、
目的とするPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換えDNA分子を得ることを含む、相同組換え方法。
[2]T1およびT2の両方が、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する、[1]に記載の方法。
[3]増幅用プライマー配列P1およびP2の一方または両方が、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する、[1]または[2]に記載の方法。
[4]PCR産物は、2回のPCRによって調製されたものであり、1回目のPCRでは、T1配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーを用いて実施され(ただし、P3配列は前記ベクターが有する相同組換え領域VT1、VP1、VT2、およびVP2とは相同性を有さない)、2回目のPCRでは、P1配列を含む増幅用プライマーとP2配列を含む増幅用プライマーを用いて実施されたものである、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]P1配列を含む増幅用プライマーの3'端側領域とT1配列を含む増幅用プライマーの5'端側領域とは、部分的に重複する配列を有し、P2配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーとは、部分的に重複する配列を有し、または有さない、[4]に記載の方法。
[6]増幅用プライマー配列P1およびP2は、独立に10塩基以上である[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]ベクターの相同組換え領域VP1+VT1およびVP2+VT2は、独立に11塩基以上である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]一方または両方の増幅用プライマー配列P1およびP2は、ヌクレアーゼ耐性オリゴプライマー由来である[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記標的遺伝子が抗体遺伝子またはT細胞受容体遺伝子であり、前記抗体遺伝子またはT細胞受容体遺伝子の定常領域由来の配列および可変領域由来の配列を含み、前記ベクターの相同組換え領域VP1+VT1およびVP2+VT2の一方は、抗体遺伝子またはT細胞受容体遺伝子の定常領域由来の配列である[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記ベクターの相同組換え領域VP1+VT1およびVP2+VT2の他方は、抗体遺伝子およびT細胞受容体遺伝子に由来しない塩基配列を有する、[9]に記載の方法。
[11]前記相同組換え反応が、レッド(Redα/β)またはRecE/Tシステムを用いて細胞内で行われる、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記相同組換え反応が、In-Fusion法で行われる[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の相同組換え方法により、目的とするPCR産物を特異的にベクターに挿入した組換えDNA分子を調製し、次いで得られた組換えDNA分子を持つ組換え体を増幅することを含む、標的遺伝子のクローニング方法。
[14]増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換えDNA分子を得ることを含む相同組換え方法に用いるための、線状化ベクターを含むキットであって、
前記線状化ベクターは、PCR産物の増幅用プライマー配列P1及びP2に相同的な塩基配列からなる相同領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT2をVP2の末端側に有する線状化ベクターである、前記キット。
[15]前記相同組換え方法が、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法である、[14]に記載のキット。
[16]前記組換えDNA分子が、該組換えDNA分子を持つ組換え体を増幅することを含む標的遺伝子のクローニング方法に用いられる、[14]または[15]に記載のキット。
本発明の方法(内部配列依存的相同組換え反応を利用する方法)によれば、標的DNA断片と非標的DNA断片が混在する場合であっても、標的DNA断片を精製する(非標的DNA断片を除去する)ことなしに、標的DNA断片を効率よくベクターへ導入でき、この標的DNA断片を導入したベクターを用いることで、標的DNA断片を効率よくクローニングすることができる。
本発明の方法(ヌクレアーゼ耐性オリゴプライマーを用いて増幅されたPCR産物と内部配列依存的相同組換え反応を利用する方法)によれば、標的DNA断片と非標的DNA断片が混在する場合であっても、標的DNA断片を精製する(非標的DNA断片を除去する)ことなしに、上記内部配列依存的相同組換え反応を利用する方法に比べて、さらに高い確率(選択性)で標的DNA断片をベクターへ挿入することができ、この標的DNA断片を導入したベクターを用いることで、標的DNA断片をさらに効率よくクローニングすることができる。
[相同組換え方法]
本発明の相同組換え方法は、
増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物と、
このPCR産物の増幅用プライマー配列P1およびP2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT2 をVP2の末端側に有する線状化されたべクターを用い(但し、T1およびT2の少なくとも一方は、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する)
前記PCR産物を相同組換え反応に付して前記ベクターに挿入して、
目的とするPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換えDNA分子を得ることを含む。
[通常の相同組換え方法、図1]
通常の相同組換え方法(ETリコンビネーション反応)は、図1に示すように、増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有するPCR産物[標的DNA断片(1)と非標的DNA断片(2)]と、このPCR産物の末端または末端付近に位置する、増幅用プライマー配列の一部または全部からなる相同組換え領域VP1およびVP2を有するベクター(II)とを用いて、前記PCR産物を相同組換えにより前記ベクターに挿入する。
この場合、DNA断片のプライマー配列P1およびP2と、線状化されたベクターのプライマー相同配列VP1およびVP2との間で組換えが起こる。このため、標的DNA断片(1)と非標的DNA断片(2)が混在した場合、DNA断片の長さに極端な違いがあるなどの特別な条件がない限り、両者は同じ確率でベクターへ組み込まれる。図1に示すように、標的DNA断片(1)と非標的DNA断片(2)とは、同じ確率でベクター(II)へ組み込まれる。
従って、通常の相同組換え方法の場合には、標的DNA断片(1)と非標的DNA断片(2)が混在する場合には、予め標的DNA断片(1)を精製して(非標的DNA断片(2)を除去して)から、相同組換え反応に付す。
[内部配列依存的相同組換え反応、図2]
それに対して、本発明では、線状化されたベクターの相同組換え領域は、増幅用プライマー配列(PCR産物の少なくとも一方の末端または末端付近に位置する) P1(およびP2)および標的DNA断片の増幅用プライマー配列の内側に存在する配列T1(およびT2)に相同的な塩基配列VP1+VT1(およびVP2+VT2)からなる。そして、PCR産物の一方の末端に位置する増幅用プライマー配列の内側の配列T1(およびT2)は、鋳型由来の配列とする。ベクターの相同組換え領域は、一部が増幅用プライマー配列P1(およびP2)に由来し、残りの一部は標的遺伝子の配列の一部T1(およびT2)に由来する。これにより、増幅用プライマー配列を両端に有するがその内側が標的遺伝子以外の配列を含むPCR産物については、増幅用プライマー配列部分は共通するが、標的遺伝子の配列部分については、相違することから、相同組換え領域として認識されず、相同組換えされない。そのため、目的とする標的遺伝子の配列を含むPCR産物を特異的にベクターへ相同組換えすることができる。本発明の方法は、内部配列依存的相同組換え反応方法と呼ぶこともできる。
図2に示すように、標的DNA断片(1)は、両方の末端に、一部が増幅用プライマー配列に由来し、残りの一部は標的遺伝子の配列の一部に由来する相同組換え領域P1+T1およびP2+T2を有する。線状化されたベクター(I)が有する相同組換え領域VP1+VT1およびVP2+VT2も、一部が増幅用プライマー配列に由来する配列に相当し、残りの一部は標的遺伝子の配列の一部に由来する配列に相当するものである。この場合(ETリコンビネーション反応を利用する内部配列依存的相同組換え反応)は、DNA断片のプライマーの相補鎖に由来する配列からの組換えと、ベクターの内部配列(標的遺伝子の配列の一部に由来する配列)からの組換えが起こる。内部配列を利用するベクターからの組換え反応は、内部配列を相同組換え領域に有する、標的DNA断片(1)の特異的組換えのみが生じ(ルートB)、内部配列T1およびT2を相同組換え領域に有さない、非標的DNA断片(2)の組換えは生じない(ルートD、内部配列との相同性無し)。しかし、DNA断片のプライマー配列P1およびP2の相補鎖からの組換えが起こった場合(ルートAとC)には、標的DNA断片(1)および非標的DNA断片(2)は共にベクターへ組み込まれる。その結果、標的DNA断片(1)および非標的DNA断片(2)が混在した場合、標的DNA断片(1)の場合は、ルートAとBがあるのに対して非標的DNA断片(2) の場合は、ルートCのみであり、前者が優位にベクターへ導入される。
但し、PCR産物の末端に位置する増幅用プライマー配列の内側の配列(内部配列)T1およびT2は、少なくとも一方が鋳型由来の配列、即ち、鋳型特有(固有)の配列であれば、上記標的DNA断片の相同組換えの選択性(特異性)向上効果は得られ、ベクターへの標的遺伝子の配列を含むPCR産物の相同組換えの特異性は大幅に向上する。残りの一方の内部配列は、鋳型特有(固有)の配列でなくてもよい。しかし、T1およびT2の、両方が鋳型特有(固有)の配列である方が、標的DNA断片の相同組換えの選択性向上効果は高く、その方が好ましい。
[S化-オリゴプライマーによる内部配列依存的相同組換え反応、図3]
通常のオリゴDNAをプライマーとして増幅したDNA断片を、線状化されたベクターと共に大腸菌へ導入しETリコンビネーション反応を行うと、当該DNA断片は菌体内で5'→3'エキソヌクレアーゼによる消化を受ける。その結果、DNA断片の3'端が突出した構造が形成される。本3'突出端はPCRに用いたプライマー配列に由来する。同様に、線状化されたベクターも5'→3'エキソヌクレアーゼによる消化を受け、その結果ベクターの3'端が突出した構造が形成される(図2の左から2番目の状態)。ベクターの3'突出端は内部配列に由来する。
線状化されたベクターの3'突出端がDNA断片の相同領域と組換え反応を行う場合(経路B及びD)は内部配列を利用するため、標的DNAのみがベクターへ組み込まれる(図2の経路B)。内部配列を有さない非標的DNAはこの経路では相同組換えが起こらずベクターに挿入されない(図2の経路D)。DNA断片の3'突出端がベクターと相同領域と組換え反応を行う場合(経路A及びC)はプライマー配列を利用するため、標的DNA断片(図2の経路A)だけでなく、非標的DNA断片(図2の経路C)もベクターに挿入される場合が有るのは、上述のとおりである。
DNAを構成するヌクレオチド分子は、リン酸を介したフォスフォジエステル結合で連結しており、細胞内のDNA分解酵素はフォスフォジエステル結合を切断する活性を有する。しかしフォスフォジエステルがS化(ホスホロチオエート化)されたDNAや2'4'−BNA化(Bridged Nucleic Acid化)されたDNAはDNA分解酵素に耐性を示す。本発明では、これらDNA分解酵素に耐性を示すオリゴプライマーをヌクレアーゼ耐性オリゴプライマーと呼ぶ。ヌクレアーゼ耐性オリゴプライマーの代表例は、S化(ホスホロチオエート化)オリゴプライマーであるが、ヌクレアーゼ耐性オリゴプライマーは、S化オリゴプライマーに限定される意図ではない。S化オリゴDNA(SP1、SP2)をプライマーとしてPCR反応により増幅されたS化DNA断片は、その5'側にS化された配列を有するため、特に5'→3'エキソヌクレアーゼによる消化を受けにくくなる。よって当該DNA断片をベクターと共に大腸菌へ導入しETリコンビネーション反応を行うと、S化DNA断片は5'側がS化されているため5'→3'エキソヌクレアーゼによる消化を受けない(図3の左から2番目の状態)。この結果プライマーの相補配列に由来する3'突出端を形成できず、S化DNA断片からベクターへ向けた相同組換えは起こらない(経路A,C、組換え生じず)。一方線状化されたベクターは5'→3'エキソヌクレアーゼによる消化を受けるため、ベクターの3'端が突出した構造が形成される。本3'突出端は内部配列に由来するため、本領域と相同性を有する標的S化DNA断片のみが相同組換え反応の基質となる(経路B)。
このように、DNA断片の5'側はS化-オリゴDNAに由来するため、5'→3'エキソヌクレアーゼ消化に耐性となる。このためDNA断片からベクター側への相同組換え反応が抑制される。一方線状化されたベクターの5'端は5'→3'エキソヌクレアーゼにより消化され、一本鎖となった3'端の内部配列が、標的DNA断片のみと相同組換え反応を行うことができる。この結果、たとえ標的DNAが非標的DNAの五分の一量であっても、標的DNA断片のみがベクターへ選択的に導入される。
S化-オリゴDNA(SP1、SP2)をプライマーとして得られたPCR産物を相同組換え用のDNA断片として用いることで、図3のBのみが相同組換え反応経路となる。これに対し通常のプライマーを用いて得られるPCR産物を相同組換え用のDNA断片として用いた場合は、図2のA、B、Cが相同組換え反応経路となる。このうち経路Cは非標的DNA断片が組み込まれる反応経路である。本反応に用いられるオリゴプライマーは5'側が少なくとも1塩基以上DNA分解酵素に耐性であれば、その種類は特に制限されない。5'側が32'4'−BNA化されたオリゴプライマーであることもできる。
[相同組換え反応]
本発明における相同組換え反応は、ETリコンビネーション法[レッド(Redα/β)またはRecE/Tシステム]である以外に、In-Fusion法であってもよい。
ETリコンビネーション法は、RecEまたはRedαによる5'→3'エキソヌクレアーゼ消化により形成された3'突出端を利用した、菌体内で行われる相同組換え反応である(非特許文献1、特許文献1に参照)。RecEまたはRedαのいずれを用いても本発明を実施することができる。相同組換え反応自体は、常法により実施できる。
In-Fusion法は、ワクシニアウイルスDNAポリメラーゼの3'→5'エキソヌクレアーゼ消化により形成された5'突出端を利用した、試験管内で行われる相同組換え反応である。本反応にはDNA断片端と直鎖状ベクター端との間に約15bp程度の相同領域が必要とされている。ワクシニアウイルスDNAポリメラーゼの3'→5'エキソヌクレアーゼ消化が内部配列を消化する段階にまで至ると、標的DNA断片がベクターに組み込まれる。
In-Fusion法の原理は、以下の論文で説明されており、実施に当たっては、タカラバイオ/Clontech社で販売されている相同組換え試薬をそのまま用いることができる。
Nucleic Acids Research, 2007, Vol. 35, No. 1 143-151
Michael et.al.
Duplex strand joining reactions catalyzed by vaccinia virus DNA polymerase
In-Fusion法を用いた、通常の相同組換え反応は、図4のB図として示される。ワクシニアウイルスDNAポリメラーゼが、DNA断片及びベクターの3'端を消化する。これにより、DNA断片と線状化されたベクター間に相補領域が出現する。本相補鎖領域が互いにアニーリングすることで、DNA断片のベクターへの挿入が行われる。
それに対して本発明の相同組換え反応は、図4のA図として示される。ワクシニアウイルスDNAポリメラーゼの3'→5'エキソヌクレアーゼ消化が内部配列を消化する段階にまで至ると、標的DNA断片(1)と線状化されたベクター(I)との間に相補鎖領域が出現する。その結果、組換え反応が起る。それに対して、非標的DNA断片(2)では、プライマー配列を介してベクターと相補鎖領域が形成されるが、非標的DNA断片(2)と相同性を有さないベクターの内部配列が存在するため組換え反応が起こらない。
[標的遺伝子]
本発明の方法で用いられる標的遺伝子は、特に制限されない。標的遺伝子は、例えば、抗体遺伝子であることができ、抗体遺伝子を含むPCR産物の一方の末端に位置する増幅用プライマー配列の内側の配列は、抗体遺伝子の定常領域由来の配列であることができる。標的遺伝子は、抗体遺伝子以外に、T細胞受容体遺伝子、スプライシングバリアント等のプライマー領域及びそれに隣接する内側の配列が一定であるが、内部に可変部位を持つDNAであることもできる。
PCR産物は、2回のPCRによって調製されたものであり、1回目のPCRでは、T1配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーを用いて実施され(ただし、P3配列は前記ベクターが有する相同組換え領域VT1、VP1、VT2、およびVP2とは相同性を有さない)、2回目のPCRでは、P1配列を含む増幅用プライマーとP2配列を含む増幅用プライマーを用いて実施されたものであることができる。各配列の位置関係を図5に示す。上記P3配列は相同組換えには直接関与せず、nested PCRを行う時の1回目に使用するプライマーとして用いられる。P1配列を含む増幅用プライマーの3'端側領域とT1配列を含む増幅用プライマーの5'端側領域とは、部分的に重複する配列を有し、P2配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーとは、部分的に重複する配列を有することも、有さないこともできる。
以下に、免疫グロブリン遺伝子定常領域を標的遺伝子配列とする場合を例に、図6に基づいて以下に説明する。図6に示すプライマーB(の一部)が、図2および5のプライマーT1に相当し、プライマーDとCが図2および5の配列P1とP2に相当する。プライマーAは、図6に示すプライマーP3に相当する。
(1)PCR産物
磁気ビーズを用いたcDNA合成法の図6(免疫グロブリン可変領域増幅法)を参照。
鋳型にポリdGを3'端に付加した免疫グロブリンcDNA(磁気ビーズ上に合成)、プライマーA(免疫グロブリン遺伝子定常領域)とB(ポリdGに結合するためのもの)を用いて、1回目のPCRを行う。
1回目のPCR終了後、これを例えば、100倍程度に希釈したものを、2回目のPCRの鋳型として用いる。使用するプライマーは、DとCである。Dは、3'側の配列が1回目のPCRで使用したプライマーBの5'側とオーバーラップするように設計し、この領域にDの3'端側領域を結合させる。プライマーCは定常領域に位置し、1回目のPCRで使用したプライマーAの内側に位置するように設計したプライマーである。ただし、プライマーCは、プライマーAと一部がオーバーラップする配列を有していてもよいが、プライマーAとオーバーラップしない配列を有することもできる。1回目のPCRで免疫グロブリンの定常領域を含むDNA断片が増幅されていれば、プライマーCとDを用いることで、さらに免疫グロブリンの定常領域を含むDNA断片を増幅することができる。5'RACE-PCR(rapid amplification of cDNAend)と呼ばれるPCR法の一つである。
プライマーD+B配列は、2回のPCR反応で、プライマーBとDにより合成された人工的な配列であって、鋳型の配列に特有(固有)の配列は有さない。この部位がベクターの相同組換え用配列の一つとなる。
2回目の遺伝子増幅反応では、プライマーDが特異的に、1回目のPCRで増幅されたDNA断片の3'端側領域に結合し(プライマーBの配列を有するため)、プライマーCが プライマーAのさらに内側の免疫グロブリン定常領域に結合する。その結果、特異的な増幅が行われる。この場合は必ず、PCR産物の片側にはD+Bの配列が存在することになる。しかし実際は、使用したプライマーがこれと類似した塩基配列を有する非標的DNAに結合した結果、非特異的なPCR産物が合成されてしまうこともある。例えば、プライマーDが非特異的に他のDNA断片に結合した場合には、合成されたDNA断片にはプライマーDの配列がその端末に存在するが、その内側にはプライマーBの配列は存在しない。このような配列を有するDNA断片は、プライマーD+B配列を有さないため、内部配列依存的相同組換えの対象とならない(図7、免疫グロブリン可変領域の相同組換えを用いたベクター導入法参照)。従ってプライマーBのプライマーDとオーバーラップしない配列は、図5にも示すように、内部配列として働き、標的DNA断片の相同組換えの選択性を向上させる。
また、もしプライマーCがこれと類似した塩基配列を有する非標的DNAに結合し、DNA増幅が行われた場合、このDNA断片には図7で示した+αに相当する定常領域の配列が存在しない。+αに相当する配列は標的DNAである免疫グロブリン鎖特有(固有)の配列である。従って、相同領域として+αを有さないDNA断片は、相同組換えの対象とならず、ベクターには挿入されることはない(図7、免疫グロブリン可変領域の相同組換えを用いたベクター導入法参照)。プライマーCが特異的に標的遺伝子である免疫グロブリン遺伝子の定常領域に結合しDNAが増幅されたときのみ、プライマーC+αの配列がDAN断片の端末に現れる。この配列がベクターとの相同組換えの対象となる(図7)。
本発明の方法は、非特異的に増幅されたPCR産物はベクターに導入されず、特異的に増幅されたPCR産物のみがベクターに自動的に導入される方法である。従来法では、目的とする特異的増幅産物をベクターに導入するためには、PCR反応後、ゲル電気泳動法又はスピンカラム法等を用いた特異的増幅産物の分離精製作業が必要である。また得られたプラスミドの遺伝子配列解析も行わなければならず、手間とコストがかかる。
上記のように、PCR産物は、2回のPCRによって調製されたものであり、1回目のPCRでは、T1とP3の配列を含む増幅用プライマーを用いて実施され、2回目のPCRでは、P1とP2の配列を含む増幅用プライマーを用いて実施されたものであることができる。P1の配列を含む増幅用プライマーとT1の配列を含む増幅用プライマーとは、5'RACE−PCRでは、部分的に重複する配列を有する。また、P2の配列を含む増幅用プライマーとP3の配列を含む増幅用プライマーについても、部分的に重複する配列を有することもできるが、有さないものであってもよい。
各増幅用プライマー配列は、PCRのプライミングの性能を考慮して、例えば、10塩基以上であることができ、好ましくは 、14〜35塩基の範囲である。
プライマー配列P1およびP2に由来する相同組換え領域は、例えば、10塩基以上であることができ、好ましくは 、14〜35塩基の範囲である。
相同組換え領域の一部の配列と相同的な塩基配列である増幅用プライマー配列の内側の内部配列T1およびT2は、1塩基以上の範囲であり、好ましくは5 〜1000塩基の範囲である。さらに、増幅用プライマー配列との合計P1+T1およびP2+T2は、それぞれ独立に11塩基以上の範囲であることができ、好ましくは25〜1000塩基の範囲である。
[クローニング方法]
本発明は、上記本発明の方法により、目的とするPCR産物を特異的にベクターに挿入した組換えDNA分子(組換えベクター)を増幅することを含む、標的遺伝子のクローニング方法を包含する。組換えDNA分子の増幅には常法を用いることができる。発現ベクターへ組み込み増幅された組換えDNA分子(組換えベクター)は、細胞などで発現させ、タンパク質を得、さらに、得られたタンパク質の機能解析に用いることができる。目的遺伝子が抗体遺伝子の場合、単離した抗体(タンパク質)が、目的の抗原に結合するか、調べることができる。
また、増幅された組換えDNA分子(組換えベクター)に含まれる標的遺伝子は、例えば、制限酵素処理によってベクターから切り出され、必要により精製される。標的遺伝子の分離及び精製は、常法により行うことができる。標的遺伝子の分離及び精製としては、例えば、ゲル抽出やカラム精製等を挙げることができる。分離及び精製された標的遺伝子は、例えば、塩基配列の決定、発現ベクターへ組み込み、標的遺伝子の機能解析などに利用することができる。
[キット]
本発明は、増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換えDNA分子を得ることを含む相同組換え方法に用いるための、線状化ベクターを含むキットにも関する。このキットに含まれる線状化ベクターは、PCR産物の増幅用プライマー配列P1及びP2に相同的な塩基配列からなる相同領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT2をVP2の末端側に有する線状化ベクターである。この線状化ベクターは、上記相同組換え方法で説明したものと同様である。
上記キットには、線状化ベクター以外に、例えば、キットの使用説明書および相同組換え反応に用いるための試薬等を含むこともできる。相同組換え反応に用いるための試薬等としては、例えば、レッド(Redα/β)またはRecE/Tシステム用の試薬等、In-Fusion法用の試薬等を挙げることができる。
本発明のキットを用いて実施できる相同組換え方法は、例えば、上記本発明の相同組換え方法であるが、それ以外の方法に用いることを制限する意図ではない。
さらに、本発明のキットを用いて得られた組換えDNA分子は、該組換えDNA分子を持つ組換え体を増幅することを含む標的遺伝子のクローニング方法に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
標的DNA断片と非標的DNA断片が混在した場合における、内部配列依存的相同組換え法の利点について、以下の実験1〜4で示す。
[実験材料の概略]
プライマー(a)及び(b)を用い、2種類のDNA断片(1)および(2)をPCR法により増幅した。
DNA断片(1)は相同組換えの標的DNAで、その端にはPCR用のプライマー(a)配列由来の配列が存在し、更にその内側(標的DNA側)にポリdG/dC配列由来の配列が存在する。もう一方の端には、プライマー(b)配列由来の配列が存在し、更に内側(標的DNA側)にはヒト免疫グロブリンガンマー(Igγ)鎖定常領域由来の配列が存在する(上記DNA断片I塩基配列参照)。
DNA断片(2)は、非標的DNAで、その端にPCR用のプライマー(a)配列由来の配列が存在し、もう一方の端には、プライマー(b)配列由来の配列が存在する(DNA断片II塩基配列参照)。
直鎖状ベクター(I)は相同組換え領域として、プライマー(a)由来配列及びその内側にポリdG/dC配列を有し、他端にはプライマー(b)由来配列及びその内側に免疫グロブリンガンマー(Igγ)鎖定常領域由来配列を有する(ベクターI配列参照)。
直鎖状ベクター(II)は相同組換え領域として、プライマー(a)由来配列並びにプライマー(b)由来配列のみを有する(ベクターII配列参照)。
プライマー(a):(pCMV EGFP N1 マルチクローニングサイト由来)
5'-CTTCGAATTCTGCAGTCGACGGTACCGCGGGCCCGGGA-3' (配列番号1)
プライマー(b): (ヒトIgγ鎖定常領域由来)
5'-AGCCGGGAAGGTGTGCACGCCGCTG-3 (配列番号2)
内部配列(ポリdG/dC)
5'-TCCCCCCCCCCCCC-3' (配列番号3)
3'-AGGGGGGGGGGGGG-5' (配列番号4)
内部配列(ヒトIgγ鎖定常領域由来)
5'-CGTGGAACTCAGGCGCCCTGAC-3' (配列番号5)
3'-GCACCTTGAGTCCGCGGGACTG-5' (配列番号6)
ベクター(II)相同組換え配列: プライマー配列(a)
5'-CTTCGAATTCTGCAGTCGACGGTACCGCGGGCCCGGGA-3' (配列番号11)
3'-GAAGCTTAAGACGTCAGCTGCCATGGCGCCCGGGCCCT-5' (配列番号12)
ベクター(II)相同組換え配列: プライマー配列(b)
5'-CAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCT -3' (配列番号13)
3'-GTCGCCGCACGTGTGGAAGGGCCGA -5 (配列番号14)
DNA断片(1)(図8、配列番号15)は、ヒト免疫グロブリンγ鎖の可変領域と一部の定常領域を有する683bpの標的DNA断片で、PCR増幅のためのプライマー(a)並びにプライマー(b)配列を有する。また内部配列特異的相同組換え反応に利用される配列として、プライマー(a)の内側にポリdG/dC配列、プライマー(b)配列の内側に免疫グロブリンガンマー鎖定常領域由来配列をそれぞれ有する。増幅に用いたプライマー(a)、(b)の位置を矢印で示した。
DNA断片(2) (図9、配列番号16)は628bpのGPF遺伝子に由来するDNA断片で、その両端にPCR増幅のために用いるプライマー(a)配列とプライマー(b)配列を有する。両プライマー配列の内側には内部配列特異的相同組換え反応に利用される配列は存在せず、GFP遺伝子由来の配列が存在する。
pCMV EGFPN1(Clontech社)のEco RIとNotIサイトに図8の配列を挿入しベクターI(図10、配列番号17)を作成した。本プラスミドはEco RIサイト下流に相同組換えのためのプライマー(a)配列並びに5'-RACE PCRを用いて増幅したヒト免疫グロブリンγ鎖DNA断片を特異的に組み込むための内部配列としてポリdC/dG配列を有する。ポリdC/dG配列の下流には、制限酵素切断で直鎖状にならなかったプラスミドが導入された大腸菌内をショ糖含有培地上で殺すためのネガティブセレクションマーカーであるSacB遺伝子(2kb)が、EcoRVサイト(配列番号17の62位と63位の間)に挿入さていれる。SacB遺伝子下流には、5'-RACE PCRを用いて増幅したヒト免疫グロブリンγ鎖DNA断片を特異的に組み込むためのもう一つの内部配列として、ヒト免疫グロブリンγ鎖定常領域の配列が存在する。その下流にはプライマー(b)配列が存在する。
本ベクターをEcoRVで切断後エタノール沈殿により直鎖状プラスミドDNAを回収し、最終濃度0.1μg/μlの濃度に調製した(図7)。
pCMV EGFPN1(Clontech社)のEco RIとNotIサイトに図9の配列を挿入しベクターII(図11、配列番号18)を作成した。本プラスミドはEco RIサイト下流に相同組換えのためのプライマー(a)配列を有する。プライマー(a)配列の下流には相同組換えを行わなかったプラスミドが導入された大腸菌内をショ糖含有培地上で殺すためのネガティブセレクションマーカーであるSacB遺伝子(2kb)がEcoRVサイト(配列番号18の51位と52位の間)に挿入される。SacB遺伝子下流には、相同組換えのためのプライマー(b)配列が存在する。
本ベクターをEcoRVで切断後エタノール沈殿により直鎖状プラスミドDNAを回収し、最終濃度0.1μg/μlの濃度に調製した。
(実験1)
通常のETリコンビネーション法を用いた相同組換え反応
[方法]
DNA断片1および2が挿入されたプラスミドを鋳型とし、プライマー(a)及び(b)を用いてPCR反応を行い、DNA断片1および2を増幅した。PCR反応は、50μlの反応系に、鋳型プラスミドDNA 2ng、各プライマー10pmol、dNTP 10nmolを加え、タカラバイオ社製PrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼを用い94℃30秒-68℃40秒の反応を30サイクル行った。増幅されたDNA断片をスピンカラム法により精製し、50ng/μlの濃度に調製した。
コンピテントセルはGeneBridges 社のRed/ET Recombination systemに従い調製した。DNA断片1、2及びベクター(II)を50ng:50ng:100ngの割合で混合した溶液3μlを、大腸菌に導入した。得られた薬剤耐性菌のコロニーから、プライマー(a)及び(b)を用いたコロニーPCR法を行い、ベクターに挿入されたDNA断片を増幅した。
コロニーPCR法は、大腸菌コロニーを50μlのPBS-0.1% TritonX溶液に懸濁させ、これを95℃で5分加熱し菌体からプラスミドDNAを溶出させた。PCR反応は、上記菌体加熱溶液1μlに、プライマー(a)及び(b)を10pmol、dNTP 10nmolを加え、50μlの反応系にてタカラバイオのPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼを用いたPCR反応(94℃30秒-68℃40秒の反応を30サイクル)を行った。反応液2μlを1%アガロースゲルにて電気泳動を行い、増幅されたDNA断片を分離した。
[結果]
コロニーPCR産物の電気泳動の結果(図12)、IgGに由来する683bpのDNA断片1が挿入されていたものは6個。GFPに由来する628bpのDNA断片2が挿入されていたものは5個、DNA断片1及び2が挿入されていないものが1個検出された。すなわち、通常のETリコンビネーション法では、標的DNA断片と非特異的DNA断片が混在した場合に、標的DNA断片のみを効率よくベクターへ導入することは困難であることが判明した。
(実験2)
内部配列依存的相同組換え反応を用いた標的DNAの選択的クローン化
[方法]
実験1で調製したDNA断片1、2及びベクター(I)を50ng:50ng:100ngの割合で混合した溶液3μlを、大腸菌に導入した。得られた薬剤耐性菌のコロニーから、ベクター(I)に導入されたDNAフラグメントを、実験1と同様の方法で増幅し、電気泳動法にて解析した。
[結果]
コロニーPCR産物の電気泳動の結果(図13)、IgGに由来するDNA断片1が挿入されていたものは8個。GFPに由来するDNA断片2が挿入されていたものは2個、DNA断片1及び2が挿入されていないものが2個検出された。以上の結果から、内部配列依存的相同組換え反応を行うことで、標的DNA断片と非標的DNA断片が混在した場合でも、標的DNA断片を効率よくベクターへ導入できることが明らかになった。
(実験3)
S化-オリゴプライマーを用いた内部配列依存的相同組換え法
プライマー(a)及び(b)の5'端3塩基をS化したオリゴプライマーを用いて実験1と同様の方法でS化DNA断片1、2を調製した。
本S化DNA断片1、2及びベクター(I)を50ng:50ng:100ngの割合で混合した溶液3μlを、大腸菌に導入した。薬剤耐性菌のコロニーから、プライマー(a)及び(b)を用いコロニーPCR法を行い、ベクターに挿入されたDNA断片を増幅した。その結果(図14)、IgGに由来するDNA断片1が挿入されたものは9個。GFPに由来するDNA断片2が挿入されたものは0個、DNA断片1及び2が挿入されていないものが2個検出された。
(実験4)
実験3で調製したS化DNA断片1、2及びベクター(I)を10ng:50ng:100ngの割合で混合した溶液3μlを大腸菌に導入し、同様の方法でベクターに挿入されたDNA断片を解析した。その結果(図15)、IgGに由来するDNA断片1が挿入されていたものは7個、GFPに由来するDNA断片2が挿入されていたものは1個、DNA断片1及び2が挿入されていないものが3個検出された。以上の結果より、S化-オリゴプライマーで増幅されたPCR産物と内部配列依存的相同組換え反応を用いることで、標的DNAを35倍の正確性でベクターへ挿入することが可能となった。
(実験5)
ETリコンビネーション法を用いた、ヒト末梢血Bリンパ球免疫グロブリンγ鎖可変領域DNA断片のベクターへの導入
ヒト末梢血Bリンパ球1個を、オリゴdT25が結合した磁気ビーズ(ダイナビーズ)3μgの入った細胞溶解液3μl(100mM Tris HCl (pH7.5), 500mM LiCl, 1%ドデシル硫酸Li (LiDS) 5mM dithiothreitol)に加え、細胞内のmRNAを磁気ビーズに結合させた。次に磁気ビーズを、3μlのmRNA洗浄用溶液A(10mM Tris HCl (pH7.5), 0.15M LiCl, 0.1% LiDS)、続いて3μlのmRNA洗浄用溶液B(75mM KCl, 3mM MgCl2, 0.1% TritonX, 0.5mM dNTP, 5mM DTT, 2 unit RNase inhibitor)にて1回洗浄した後、cDNA合成を行った。すなわち洗浄後の磁気ビーズにcDNA合成用溶液3μl(50mM Tris HCl (pH8.3), 75mM KCl, 3mM MgCl2, 0.1% Triton X-100, 0.5mM dNTP, 5mM DTT, 2 unit RNase inhibitor, 10 unit SuperScript III Reverse transcriptase (Invitrogen)を加え、50℃にて1時間反応させた。次に磁気ビーズを3'テーリング洗浄溶液3μl(50mMリン酸カリウム(pH7.0), 0.5mM dGTP, 0.1% Triton X-100, 4mM 塩化マグネシウム)にて洗浄し、新たに3'テーリング反応溶液3μl(50mMリン酸カリウム(pH7.0), 0.5mM dGTP, 0.1% Triton X-100, 4mM 塩化マグネシウム、 terminal deoxynucleotidyl transferase 10U )を加え、37℃にて30分間反応を行った。
磁気ビーズを3μlのTE溶液(10mM Tris HCl(pH7.5),1mM EDTA, 0.1% TritonX)にて洗浄後、5'-RACE PCR法を用いてヒト免疫グロブリンγ鎖遺伝子の増幅を行った。1回目のPCR反応は、磁気ビーズに25μlのPCR反応溶液(プライマー1及び2各10pmol、dNTP 10nmol、タカラバイオPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼ1U)を加え94℃30秒-68℃40秒の反応を35サイクル行った。プライマー1の配列は5'- CGGTACCGCGGGCCCGGGATCCCCCCCCCCCCCDN-3' (配列番号19)でTdTによりcDNAの3'端に付加されたポリdGにアニーリングする。プライマー2の配列は5'- ACGCTGCTGAGGGAGTAGAGTCCTGAG-3' (配列番号20)でヒト免疫グロブリンγ鎖遺伝子定常領域に由来する。反応後PCR溶液に水225μlを加え10倍希釈した溶液1μlを鋳型とし、プライマー(a) 5'- CTTCGAATTCTGCAGTCGACGGTACCGCGGGCCCGGGA-3' (配列番号1)及び(b)5'- AGCCGGGAAGGTGTGCACGCCGCTG-3' (配列番号2)を用い1回目のPCRと同様の条件で反応を行った。プライマー(a)は、1回目のPCRで増幅されたDNA断片のプライマー1配列と相補的な領域にアニーリングする。プライマー(b)はヒト免疫グロブリンγ鎖遺伝子定常領域に由来し、1回目のPCRに用いたプライマー2の上流に位置する。
以下にプライマーの位置関係を示した。
図16に示すように、得られたPCR反応液2μlをアガロースゲル電気泳動法により分離したところ、目的とする免疫グロブリンγ鎖に由来するDNA断片(約0.8kb)に加え、100-300bp付近にスメア状の非特異的増幅に由来するDNA断片が検出された。
本PCR反応液0.5μlとEcoRV切断により直鎖化したベクター(I) 100ngを混合した溶液2μlを用いて、ETリコンビネーション反応を行った。大腸菌を0.5%ショ糖を含有するカナマイシンアガープレート上で増殖させ、形成されたコロニー5個を2mlのLB培地で一晩培養し、菌体からプラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAをBamHI/NotIで切断後、アガロースゲル電気泳動法を用いて標的ヒト免疫グロブリンγ鎖可変領域DNA断片のベクターへの導入効率を調べた。その結果(図17)、解析した5個すべてのコロニーで標的DNA断片が正しくベクターに組み込まれていることが判明した。
(実験6)
In-Fusion法を用いた内部配列依存的相同組換え反応
実験1で調製したDNA断片1、2及びベクター(I)を50ng:50ng:100ngで混合した溶液10μlを、タカラバイオ/Clontech社のIn-Fusion II dry-down 試薬に加え、37℃で15分反応を行った。TE溶液で5倍に希釈した反応液2μlをケミカルコンピテントセルに導入し形質転換を行った。得られた薬剤耐性の大腸菌コロニーを用いて、実験1と同様の手法でコロニーPCRを行い、ベクターに挿入されたDNA断片を増幅した。その結果(図18-1)、IgGに由来するDNA断片1が挿入されたものは7個。GFPに由来するDNA断片2が挿入されたものは0個、DNA断片1及び2が挿入されていないものが4個検出された。以上の結果より内部配列依存的相同組換え法は、ETリコンビネーション法のみならずIn-Fusion法にも適用できる技術であることが判明した。
(実験7)
In-Fusion法を用いた、ヒト末梢血Bリンパ球免疫グロブリンγ鎖可変領域DNA断片のベクターへの導入
実験5で調製した標的ヒト免疫グロブリンγ鎖可変領域DNA断片、及びベクター(I)を50ng:100ngで混合した溶液10μlを、タカラバイオ/Clontech社のIn-Fusion II dry-down 試薬に加え、37℃で15分、その後50℃で15分反応を行った。TE溶液で5倍に希釈した反応液2μlをケミカルコンピテントセルに導入し形質転換を行った。得られた薬剤耐性の大腸菌コロニーから、実験5と同様の手法を用いてプラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAをBamHI/NotIで切断しアガロースゲル電気泳動法により標的ヒト免疫グロブリンγ鎖可変領域DNA断片のベクターへの導入効率を調べた。その結果(図18-2)、解析した12個すべてのコロニーにおいて標的である免疫グロブリン遺伝子断片が正しくベクターに組み込まれていることが判明した。以上の結果より本発明は、ETリコンビネーション法とは反応機構の異なる相同組換え法であるIn-Fusion法においても、目的とするPCR産物を特異的にベクターへ挿入することが可能であることが実証された。
実施例2
DNA 断片の調製
実験1で使用したDNA断片Iを鋳型とし、プライマー1(5'- CGGTACCGCGGGCCCGGGATCCCCCCCCCCCCCDN-3') (配列番号19)及び以下に示したプライマー(b)から(e)をそれぞれ用いPCR反応を行った。PCR反応条件は実験1に準じて行った。
以下に用いたプライマー配列とDNA断片1の位置関係を図19に示した。
プライマー(b) 5'-AGCCGGGAAGGTGTGCACGCCGCTG -3' (配列番号21)
プライマー(c) 5'-AGGTGTGCACGCCGCTGGTC-3' (配列番号22)
プライマー(d) 5'-CACGCCGCTGGTCAGGGCGCCTG-3' (配列番号23)
プライマー(e) 5'-CTGGTCAGGGCGCCTGAGTTCCA-3' (配列番号24)
PCR後のサンプルをスピンカラム法により精製した後、溶液1μlをアガロースゲル電気泳動で解析した。その結果予想されたサイズのDNA断片が確認された(図20)。実験1で調製したベクター(I)100ngと各DNA断片25ngを混合した溶液2μlを用いて、Red/ETリコンビネーション法を用いた相同組換え反応を行った。大腸菌を0.5%ショ糖を含有するカナマイシンアガープレート上で増殖させ、形成されたコロニー数を調べた。得られたコロニー数は、146個(DAN断片1-A)、125個(DAN断片1-B),144個(DAN断片1-C),80個(DAN断片1-D)であった。
形成されたコロニー5個を2mlのLB培地で一晩培養し、菌体からプラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAをBamHI/NotIで切断しアガロースゲル電気泳動法により各DNA断片のベクターへの導入効率を調べた(図21)。標的DNA断片を取り込んだプラスミドはBamHI/NotI切断により、全長ヒト免疫グロブリンγ鎖(約1.5kb)とベクター(約4kb)が検出される。
その結果(図21)、DAN断片1-(b)を用いた場合は100%、1-(c)B,1-(d)Cを用いた場合は80%、1-(e)を用いた場合は60%の割合で目的DNA断片がベクターに導入された。以上の結果から内部配列依存的相同組換えには、少なくとも片側2塩基以上の内部配列に加え増幅用プライマー配列との合計25塩基以上が必要であることが明らかになった。各DNA断片とベクターの相同組換え領域図を図22に示す。
本発明は、遺伝子工学の分野に有用である。
通常の相同組換え方法の反応機構(実験1)の説明図。 内部配列依存的相同組換え反応の反応機構(実験2)の説明図。 S化-オリゴプライマーによる内部配列依存的相同組換え反応の反応機構(実施例1の実験3)の説明図。 In-Fusion法を用いた、通常の相同組換え反応(A図)および本発明の相同組換え反応(B図)の反応機構 (実施例1の実験6)の説明図。 2回のPCRでPCR産物を調製する方法の説明図。 磁気ビーズを用いたcDNA合成法(免疫グロブリン可変領域増幅法)の説明図。 免疫グロブリン可変領域の相同組換えを用いたベクター導入法の説明図。 実施例1で使用したDNA断片(1)(配列番号15) の塩基配列。 実施例1で使用したDNA断片(2)(配列番号16) の塩基配列。 実施例1で使用したベクターI(配列番号17) の塩基配列。 実施例1で使用したベクターII(配列番号18) の塩基配列。 実施例1の実験1におけるコロニーPCR産物の電気泳動の結果。 実施例1の実験2におけるコロニーPCR産物の電気泳動の結果。 実施例1の実験3におけるコロニーPCR産物の電気泳動の結果。 実施例1の実験4におけるコロニーPCR産物の電気泳動の結果。 実施例1の実験5におけるPCR反応液のアガロースゲル電気泳動の結果。 実施例1の実験5におけるBamHI/NotIで切断したプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動の結果。標的DNA断片を取り込んだプラスミドはBamHI/NotI切断により、全長ヒト免疫グロブリンγ鎖(約1.5kb)とベクター(約4kb)が検出される。PCRで増幅されたヒト免疫グロブリンγ鎖可変領域が挿入されていない場合は、BamHI/NotI切断により、ヒト免疫グロブリンγ鎖定常領域(約0.8kb)とベクター(約4kb)が検出される。 実施例1の実験6におけるコロニーPCR産物の電気泳動の結果。 実施例1の実験7におけるアガロースゲル電気泳動の結果。 実施例2で用いたプライマー配列とDNA断片1の位置関係。 実施例2におけるPCR後のサンプル(スピンカラム法により精製)のアガロースゲル電気泳動の結果。 実施例2におけるBamHI/NotIで切断したプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動の結果。 実施例2における各DNA断片とベクターの相同組換え領域を示す図。

Claims (16)

  1. P1配列を含むPCR増幅用プライマーとP2配列を含むPCR増幅用プライマーを用いて標的遺伝子をPCRにより増幅して、増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物を得ること、及び前記PCR産物と、
    このPCR産物の増幅用プライマー配列P1およびP2に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VT2をVP2の末端側に有する線状化されたべクターを用い(但し、T1およびT2の少なくとも一方は、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する)
    前記PCR産物を相同組換え反応に付して前記ベクターに挿入して、
    目的とするPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換DNA分子を得ることを含む、相同組換え方法。
  2. T1およびT2の両方が、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 増幅用プライマー配列P1およびP2の一方または両方が、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. PCR産物は、2回のPCRによって調製されたものであり、1回目のPCRでは、T1配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーを用いて実施され(ただし、P3配列は前記ベクターが有する相同組換領域VT1、VP1、VT2、およびVP2とは相同性を有さない)、2回目のPCRでは、P1配列を含む増幅用プライマーとP2配列を含む増幅用プライマーを用いて実施されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. P1配列を含む増幅用プライマーとT1配列を含む増幅用プライマーとは、部分的に重複する配列を有し、P2配列を含む増幅用プライマーとP3配列を含む増幅用プライマーとは、部分的に重複する配列を有し、または有さない、請求項4に記載の方法。
  6. 増幅用プライマー配列P1およびP2は、独立に10塩基以上である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. ベクターの相同組換領域VP1+VT1およびVP2+VT2は、独立に11塩基以上である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 一方または両方の増幅用プライマー配列P1およびP2は、S-オリゴプライマーである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記標的遺伝子が抗体遺伝子であり、前記抗体遺伝子の定常領域由来の配列および可変領域由来の配列を含み、前記ベクターの相同組換領域VP1+VT1およびVP2+VT2の一方は、抗体遺伝子の定常領域由来の配列である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記ベクターの相同組換領域VP1+VT1およびVP2+VT2の他方は、抗体遺伝子に由来しない塩基配列を有する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記相同組換え反応が、レッド(Redα/β)またはRecE/Tシステムを用いて細胞内で行われる、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記相同組換え反応が、In-Fusion法で行われる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の相同組換え方法により、目的とするPCR産物を特異的にベクターに挿入した組換DNA分子を調製し、次いで得られた組換DNA分子を持つ組換え体を増幅することを含む、標的遺伝子のクローニング方法。
  14. PCR増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子の配列を含むPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換えDNA分子を得ることを含む相同組換え方法に用いるための、線状化ベクターを含むキットであって、
    前記線状化ベクターは、PCR産物の増幅用プライマー配列P1及びP2に相同的な塩基配列からなる相同領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換え領域VT2をVP2の末端側に有する線状化ベクターである、前記キット。
  15. 前記相同組換え方法が、請求項1〜12のいずれかに記載の方法である、請求項14に記載のキット。
  16. 前記組換えDNA分子が、該組換えDNA分子を持つ組換え体を増幅することを含む標的遺伝子のクローニング方法に用いられる、請求項14または15に記載のキット。
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