JP5628082B2 - 多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックス - Google Patents

多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックス Download PDF

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Description

本発明は、造船などの大板継ぎに用いる多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関わり、特に3電極以上の多電極高速片面サブマージアーク溶接においても表ビード表面に鉄粒突起が発生せず、溶接欠陥の無い健全な溶接金属を形成させ、表ビードおよび裏ビードともに安定したビード形状・外観を得ることができ、さらに優れた機械性能の溶接金属が得られる多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関するものである。
サブマージアーク溶接は、高能率で安定した溶接作業性および溶接金属の機械性能が得
られることから、造船、鉄骨、造管、橋梁、車両など幅広い分野で適用されている。
近年、エネルギー産業の発展に伴い鋼材の高強度化および高靭性化、また構造物の大型化に伴う板厚の極厚化などが検討され、高強度または極厚の鋼材の適用比率が年々増加している。そこで、サブマージアーク溶接においては、溶接施工における生産性の向上や安全性、耐久性の確保のため、更なる品質向上が求められており、その中でも特に溶接の高能率化と溶接金属の高靭性化の要望が極めて大きい。
造船業界においては大型のバルクキャリア、タンカー、コンテナ運搬船等の建造数が年々増加傾向にあり、建造における生産性の向上や安全性、耐久性の確保のため、更なる溶接の高能率化と溶接部の高靭性化の要望が極めて大きい。この造船の建造工程の主軸である大板継は、図1に示すフラックス銅バッキング片面サブマージアーク溶接方法(以下、FCuB法という。)といわれる方法が多用されている。
図1に示すFCuB法は、裏当銅板1に裏フラックス2を約4〜7mm程度散布し、エアーホース3に空気を注入して、これを被溶接鋼板4の開先裏面に押し当て、2〜4電極から送られるワイヤ5を用いて表側より表フラックス6を散布して1層溶接し、表ビードと裏ビードを同時に形成するものである。この溶接方法は、開先裏面に裏フラックス2が密着するためバッキングの当りが良く、また裏フラックス2下の裏当銅板1で裏ビードの余盛高さを抑制するので、大電流の溶接条件で施工しても美麗かつ溶接欠陥の無い健全な裏ビードが得られる。このためFCuB法は薄板から厚板まで幅広く適用されている。
サブマージアーク溶接は、被覆アーク溶接やガスシールドアーク溶接に比べ、溶接入熱
量が多く、母材希釈率が大きいため、溶接作業性や溶接金属の性能は、フラックスとワイヤの成分組成でほぼ決定される。サブマージアーク溶接の中でも特に上記片面サブマージアーク溶接方法は、溶接入熱量が多く、母材希釈率が大きいことが特徴である。
この片面サブマージアーク溶接方法には、焼成型フラックスであるボンドフラックスが主に適用されている。ボンドフラックスは、各種原材料に水ガラス等を添加して造粒し、500℃程度で焼成したものであり、溶接金属の化学成分を自由に調整できること、また鉄粉を添加することができるため溶着効率を高められるという優れた特徴がある。
しかし、高速度の片面サブマージアーク溶接では、表ビード表面に鉄粒突起が発生し易く、またスラグがこびり付きやすい傾向がある。特にワイヤ電極数が3電極より4電極の方が顕著に発生する傾向があり、これは溶接速度に依存することが確認された。ワイヤ電極数を増やすと溶接速度を上げることが可能となり、その結果、4電極の方が速度は速くなるため、表ビード表面の鉄粒突起およびスラグこびり付きが発生し易くなる。
これらの点を考慮し、良好な溶接作業性および溶接金属機械性能が得られるサブマージ
アーク溶接用フラックスおよび片面溶接方法の開発が試みられている。例えば特開平5−337651号公報(特許文献1)には、4電極による高速片面サブマージアーク溶接方法に関する基礎的な技術の開示がある。これは高速度の片面サブマージアーク溶接において健全な欠陥の無い溶接金属を得るためにワイヤ径、溶接電流、電極間の距離、フラックスおよびワイヤ成分を限定し改善を図ったものである。
特許文献1記載の技術は、健全な欠陥の無い溶接金属を得ることは可能であるが、表ビード表面の鉄粒突起およびスラグこびり付きは改善できず、厚板の大入熱溶接になると溶接金属の引張強度が低下し、さらに靭性が低下するため、安定した溶接作業性と良好な溶接金属機械性能は得られない。
特開平6−277878号公報(特許文献2)には、3電極以上の電極を使用した高速片面サブマージアーク溶接用フラックスおよび溶接方法に関する技術の開示がある。これはフラックスの成分を限定し、さらにフラックスの粒度構成および嵩密度を限定して、健全な表ビードおよび裏ビードの改善を図ったものである。しかし粒度構成において粒径840μmを超える粒子が少ないので、フラックス全体の粒径が細かくなる。それにより溶接時のアーク状態が緻密に散布された細かいフラックスによってアークが広がり難くなりビード形状が凸になること、ガス抜けが悪くなりピットおよびポックマークなどの溶接欠
陥を発生するため、健全で安定した表ビードおよび裏ビードを得ることはできない。
また、特開平8−99178号公報(特許文献3)には、3電極以上の電極を使用し、ワイヤ径、溶接電流、電極間の距離、電極のトーチ角度を限定し、健全な裏ビードを得るための技術の開示がある。特許文献3記載の技術は、健全な裏ビードを得ることは可能であるが、表ビード表面の鉄粒突起およびスラグこびり付きは改善できず、健全な表ビードを得ることはできない。
特開2004−154841号公報(特許文献4)には、単電極による片面サブマージアーク溶接方法に関する技術の開示がある。本方法によれば表ビードおよび裏ビードともに健全で安定したビード形状および外観を得ることができるが、単電極溶接であるため溶接速度が遅く、溶接効率が低下し、著しく生産効率を下げることになる。
特開2006−272348号公報(特許文献5)には、多電極高速片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関する技術の開示がある。これは高速度の片面サブマージアーク溶接における表ビード表面の鉄粒突起およびアンダーカットの改善を図ったものである。
特許文献5記載の技術によれば、フラックス組成の成分を限定し、特に鉄粒突起発生の原因として考えられる鉄粉(Fe)を5質量%以下とした結果、鉄粒突起の発生は減少したようである。しかし、高速度の片面溶接においてフラックス中のFeは安定した裏ビード形状および溶込みを得るための必須成分であり、また溶着効率を向上させることができるため、添加量が5質量%以下では安定した裏ビード形状を得ることができず、また溶着効率も低下するため、著しく溶接作業性および生産効率を劣化させる。
また、特開2007−136516号公報(特許文献6)にも、多電極高速片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関する表ビード表面の鉄粒突起および溶接欠陥の改善を図った技術の開示がある。特許文献6記載の技術では特許文献5記載の技術と類似してフラックス組成の成分を限定し、特に鉄粒突起発生の原因として考えられる鉄粉(Fe)を5質量%以下、さらに適用継手板厚を16mm以下としているが、前述したように適用継手板厚が16mm以下でもフラックス中のFe添加量が5質量%以下では安定した裏ビード形状を得ることができず、また溶着効率も低下するため、著しく溶接作業性および
生産効率を劣化させる。
特開平5−337651号公報 特開平6−277878号公報 特開平8−99178号公報 特開2004−154841号公報 特開2006−272348号公報 特開2007−136516号公報
本発明は、3電極以上の多電極高速片面サブマージアーク溶接においても表ビード表面に鉄粒突起が発生せず、溶接欠陥の無い健全な溶接金属を形成させ、表ビードおよび裏ビードともに安定したビード形状・外観を得ることができ、さらに優れた機械性能の溶接金属が得られる多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、フラックスの化学組成および粒度構成、見掛密度などについて検討を行った。その結果、フラックスの化学組成を限定し、さらにフラックスの粒度構成および見掛密度を限定することにより、3電極以上の多電極高速片面サブマージアーク溶接においても表ビード表面に鉄粒突起が発生せず、溶接欠陥の無い健全な溶接金属を形成させ、表ビードおよび裏ビードともに安定したビード形状・外観を得ることができ、さらに優れた機械性能の溶接金属が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスにお
いて、質量%で、SiO2:10〜30%、Al23:4〜16%、MgO:8〜26%、MnO:0.5〜5.0%、CaO:2〜14%、CaF2:1.0〜8.0%、TiO2:3〜15%、Na2O:1.0〜5.0%、B23:0.1〜3.0%、Fe:15〜40%、Si:1.0〜5.0%、Mo:0.1〜3.0%を含有し、その他は脱酸剤、金属炭酸塩からのCO 2 2 OおよびLi 2 Oからなるアルカリ金属酸化物および不可避不純物の合計が3.8%以下であり、フラックスの粒度構成が質量%で、粒径850μm以上:20〜45%、粒径300〜850μm:40〜75%、粒径150〜300μm:3〜15%、粒径150μm以下:5%以下で、見掛密度が0.90〜1.30g/cm3であることを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスにある。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスによれば、3電極以上の
多電極高速片面サブマージアーク溶接においても表ビード表面に鉄粒突起が発生せず、溶接欠陥の無い健全な溶接金属を形成させ、表ビードおよび裏ビードともに安定したビード形状およびビード外観を得ることができ、さらに優れた機械性能の溶接金属を得ることができる。
本発明者らは、良好な溶接金属機械性能を維持し、表ビード表面に鉄粒突起が発生せず、溶接欠陥の無い優れた表ビードおよび裏ビード形状および外観を得るため、フラックスの化学組成、粒度構成および見掛密度などについて検討を行った。
造船建造の大板継に適用する多電極高速片面サブマージアーク溶接は、板厚が8mmから40mmまでと幅広く、鋼板が厚くなるほど大入熱の溶接となる。そのため、大入熱溶接においても優れた溶接金属機械性能を得るために、フラックス中に脱酸剤、合金剤等を添加し、溶接金属の酸素量を低く抑え、焼入れ性を高める必要がある。しかし、過剰に脱酸剤および合金剤を添加すると、溶接金属の焼入れ性が過剰となり強度が高くなって靭性が低下する。そこで、様々な板厚における溶接入熱量の変化に対応したフラックスを開発するため種々の脱酸剤および合金剤を検討した結果、SiおよびMoを適正量添加するこ
とによって、良好な溶接金属の引張強度および靭性が得られることを見出した。
次に、溶接作業性の改善では、現在、造船の大板継に適用する片面サブマージアーク溶接の最重要課題とされている表ビード表面の鉄粒突起改善である。表ビードに鉄粒突起が発生すると、造船の塗装工程において鉄粒突起部分に塗料が大量に付着することや、鉄粒突起の形状によっては剥がれ易いものもあるため、剥離した部分は塗装が無くなり錆びが進行し易く耐食性を著しく低下させる。よって表ビード表面の鉄粒突起をグラインダーおよびショットブラスト等で除去しているため、生産性の低下によるコストアップが問題とされている。
上記懸念事項を改善するため、フラックスの化学組成について検討を行った。鉄粒突起が発生する原因は、フラックス中に添加する鉄粉(Fe)が原因であり、溶接時の溶接金属およびスラグ凝固過程においてフラックス中に添加された鉄粉が半溶融状態の溶接金属表面に溶け落ちて、完全に溶け込まない状態の時に表面に残るものである。
そこで、まずフラックス中の鉄粉を除去した結果、表ビード表面の鉄粒突起は無くなっ
たが、裏ビード形状が不安定で溶込み不良、アンダーカット等の溶接欠陥が発生し、さらに鉄粉を除去したことにより溶着効率が低下するため、溶接速度低下に伴って、生産性が著しく低下した。以上のことから、高速度の片面サブマージアーク溶接では安定した裏ビード形状、溶込みと高い溶着効率を得るためには、フラックス中の鉄粉は必須成分であり、除去できないことが判明した。
そこで鉄粉添加型のフラックスを前提として更にフラックス化学組成の検討を行った結
果、SiO2、Al23、MgO、TiO2等のスラグ組成を最適化することによって大幅に鉄粒突起を減少できることを見出した。しかし、フラックス化学組成は溶接作業性や溶接金属機械性能に大きな影響を及ぼすため、良好な溶接作業性と溶接金属機械性能を維持し、鉄粒突起を完全に無くすことはフラックス化学組成の検討だけで改善することはできなかった。
本発明者らは、この鉄粒突起の更なる改善としてフラックス粒度に着目した。鉄粒突起はフラックス中に含まれる鉄粉が溶け落ちることによって発生するので、溶接時の早い段階でフラックス中の鉄粉が下の溶融金属に溶け落ちるようフラックスの粒度を調整した。その結果、最適な粒度構成とすることによって鉄粒突起の発生が無くなり良好な表ビード形状および外観が得られることを見出した。
以下に、本発明の多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスのフラックス成分組成、粒度構成、見掛密度の限定理由について説明する。なお、以下の%は、質量%を示す。
SiO2は、良好な溶接ビードを形成するための重要な成分であるが、過多になると溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。SiO2が10%未満ではビード趾端部のなじみが悪くなりスラグ剥離性が不良になり、また、特に高速度の片面サブマージアーク溶接においてはアンダーカットも生じる。一方、30%を超えると溶接金属の酸素量が増加して靭性が低下する。したがって、SiO2は10〜30%とする。
Al23は、高速度の片面サブマージアーク溶接で良好なスラグ剥離性およびビード外
観を得るためには極めて重要な成分である。また、アーク安定性を良好にする効果もある。Al23が4%未満ではその効果が得られない。一方、16%を超えると凸ビードとなりスラグ剥離性も不良になる。したがって、Al23は4〜16%とする。
MgOは、スラグの耐火性および塩基度を高くして靭性を向上させる効果がある。Mg
Oが8%未満ではフラックスの塩基度が低くなり、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。一方、26%を超えるとフラックスの軟化溶融点が高くなり、ビード表面に突起物の発生や波目が粗くなりスラグ剥離性およびビード外観が不良となる。したがって、MgOは8〜26%とする。
MnOは、スラグの粘性、流動性および融点の調整をするのに有効な成分である。Mn
Oが0.5%未満ではスラグの粘度が低下して流動性が悪くなり、特に高速度の片面サブマージアーク溶接においてはビード蛇行およびアンダーカットが生じる。一方、5.0%を超えるとスラグの粘度が高くなりすぎてスラグ巻き込み、焼き付きが発生してスラグ剥離性が不良になる。したがって、MnOは0.5〜5.0%とする。
CaOは、スラグの融点および流動性を調整するために重要な成分である。CaOが2
%未満ではビード趾端部のなじみが悪くビード外観が不良となり、高速度の片面サブマージアーク溶接ではアンダーカットも生じる。一方、14%を超えるとスラグ流動性が不良となりビード高さが不均一でスラグ剥離性も不良になる。したがって、CaOは2〜14%とする。
CaF2は、靭性改善に効果があるが、融点が低いので過多になるとビードの平滑性が
損なわれる。CaF2が1.0%未満では靭性改善の効果がなく、8.0%を超えるとビード外観が不良となる。したがって、CaF2は1.0〜8.0%とする。
TiO2は、ビード表面の平滑性を得るのに効果があり、かつ、靭性向上にも有効である。その含有量が3%未満ではビード表面の平滑性および靭性の向上の効果がなく、15%を超えるとビード趾端部の立ち上がり角度が大きくなりビード外観およびスラグ剥離性が不良になるので、その含有量を3〜15%とする。
Na2Oは、高速度の片面サブマージアーク溶接において安定したアーク状態を得るた
めには極めて重要な成分である。Na2Oが1.0%未満ではその効果が得られない。一方、5.0%を超えるとビード表面の光沢が失われ外観が不良になる。さらに、溶接ヒュームの発生量が著しく増加する。したがって、Na2Oは1.0〜5.0%とする。
23は、靭性の向上に効果がある。その含有量が0.1%未満では靭性向上の効果が
得られず、3.0%を超えると溶接金属が硬化しかえって靭性が低下するので、その含有量を0.1〜3.0%とする。
Feは、溶着効率の向上およびアークの集中性に効果がある。その含有量が15%未満では溶着効率が低下し、アークの集中性が劣るので裏ビードのビード形状が不安定になる。一方、40%を超えるとビード表面に鉄粒突起が発生してスラグ剥離性が不良になるので、その含有量を15〜40%とする。
Siは、脱酸元素であり溶接金属の酸素量を低減する。その含有量が1.0%未満では
脱酸効果が得られず靭性が低下する。5.0%を超えると溶接金属の硬さが過剰となって靭性が低下するので、その含有量を1.0〜5.0%とする。
Moは、溶接金属の焼入れ性増大元素として重要な成分である。その含有量が0.1%未満では溶接金属の強度が低くなり靭性向上にも効果がなく、3.0%を超えると溶接金属の焼入れ性が過大となり硬さが過剰となって靭性が低下するので、その含有量を0.1〜3.0%とする。
フラックスの粒度構成で粒径が850μm以上の粒子は、表ビードの鉄粒突起を減少す
る極めて重要な粒子である。850μm以上の粒子が20%未満では表ビードに鉄粒突起が発生し、ビード形状が凸になる。さらにガス抜けが悪くなりピットおよびポックマークなどの溶接欠陥も発生する。一方、45%を超えると表ビードの幅が広がりすぎて溶込みが浅くなり、裏ビード形状が不安定となる。したがって、粒径850μm以上の粒子は20〜45%とする。
フラックス粒度構成で粒径が300〜850μmの粒子も表ビードの鉄粒突起を減少す
る極めて重要な粒子である。300〜850μmの粒子が40%未満では表ビードに鉄粒突起が発生し、ビード形状が凸になる。さらにガス抜けが悪くなりピットおよびポックマークなどの溶接欠陥も発生する。一方、75%を超えると表ビードの幅が広がりすぎて溶込みが浅くなり裏ビード形状が不安定となる。したがって、粒径300〜850μmの粒子は40〜75%とする。
フラックス粒度構成で粒径が150〜300μmの粒子は、安定した表ビードおよび裏
ビード形状を形成するための重要な粒子である。150〜300μmの粒子が3%未満では細かい粒子が少なすぎてアークの集中性が悪くなり健全な溶込み形状を得られず裏ビードが不安定となる。一方、15%を超えると全体的にフラックス粒径が細かくなることにより表ビード幅が狭くなり、また、ガス抜けの劣化によってピットおよびポックマークなどの溶接欠陥が発生する。したがって、粒径150〜300μmの粒子は3〜15%とする。
フラックス粒度構成で粒径が150μm以下の粒子は、表ビード形状およびスラグ剥離
性を不良にする粒子である。150μm以下の粒子が5%を超えるとビード表面に鉄粒突起が発生してスラグがこびり付き易く剥離性が悪くなり、表ビード幅が狭くなる。さらにガス抜けの劣化によってピットおよびポックマークなどの溶接欠陥も発生する。したがって、粒径150μm以下の粒子は5%以下とする。
フラックスの見掛密度は、安定した表ビードおよび裏ビードを形成するための重要な因
子である。見掛密度が0.90g/cm3未満では溶接時のアーク吹上げが激しくなりアークが不安定となる。また、表ビードの幅が広がりすぎて溶込みが浅くなり裏ビード形状が不安定となる。一方、1.30g/cm3を超えるとアーク雰囲気が押し潰され、表ビード幅が狭く凸形状となりアンダーカットも生じる。したがって、フラックスの見掛密度は0.90〜1.30g/cm3とする。
その他は、Mn、TiおよびAlなどの脱酸剤、金属炭酸塩からのCO2 2 Oおよ
びLi 2 Oからなるアルカリ金属酸化物およびP、S等の不可避不純物の合計が3.8%以下であり、PおよびSは共に低融点の化合物を生成して靭性を低下させるのでできるだけ低いことが好ましい。また、本発明の多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスを用いた片面溶接は、安定したアーク、ワイヤ送給性、溶着効率向上を可能とした溶接をするために、組合せるワイヤ径は4.0〜6.4mmとし、3電極以上の多電極片面サブマージアーク溶接に適用する。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
表1に示す各種フラックス成分および粒度構成、見掛密度に調整したボンドフラックスと表2に示す化学組成の裏フラックス、表3に示す化学組成のワイヤを用いて、表4に示す化学組成の板厚20mmの鋼板を図2に示す開先角度50°、ルートフェイス3mmの開先形状に加工し、表5に示す3電極または4電極による溶接条件で、図1に示すFCuB片面サブマージアーク溶接試験を実施した。
なお、表1に示す各試作ボンドフラックスは水ガラスを固着材として造粒した後、40
0〜550℃で2時間焼成し、各種粒度構成および見掛密度に整粒した。また、表3に示すワイヤは原線を縮径、焼成、酸洗、メッキして素線とし、それらの素線を4.8mmおよび6.4mm径まで伸線して用いた。
Figure 0005628082
Figure 0005628082
Figure 0005628082
Figure 0005628082
Figure 0005628082
各試作ボンドフラックスの評価は、3電極または4電極による片面サブマージアーク溶接時のアーク安定性、溶接後の表ビード表面の鉄粒突起およびスラグこびり付きの有無、ビード形状・外観、スラグ剥離性、アンダーカットの有無およびX線透過試験による溶接欠陥の有無を調査し、さらに、溶接金属の引張強度、靭性および溶接金属酸素量を調査した。
溶接金属の機械性能評価は、溶接試験体の鋼板板厚の中央を中心にシャルピー衝撃試験
片(JIS Z2202 4号)および引張試験片(JIS Z 2201 A1号)を採取して、機械試験を実施した。靭性の評価は、試験温度0℃におけるシャルピー衝撃試験を行い、各々繰返し数3本の平均値で評価した。なお、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーは100J以上を良好とした。引張強度の評価は490MPa以上を良好とした。これらの調査結果を表6にまとめて示す。
Figure 0005628082
表1および表6中のフラックス記号F1〜F10が本発明例、フラックス記号F11〜
F22は比較例である。
本発明例であるフラックス記号F1〜F10は、いずれもフラックスの化学組成、粒度
構成および見掛密度が適正であるので3電極または4電極による片面サブマージアーク溶接ともに表ビード表面の鉄粒突起およびスラグこびり付きは無く溶接作業性が良好で、溶接部に欠陥が無く、溶接金属の機械性能も優れており、極めて満足な結果であった。
比較例中フラックス記号F11は、SiO2が低いのでビード外観およびスラグ剥離性
が不良でアンダーカットが発生した。また、Moが高いので溶接金属の引張強度が高く吸収エネルギーが低値であった。フラックス記号F12は、SiO2が多いので溶接金属の酸素量が多く吸収エネルギーが低値であった。また、MnOが少ないのでビードが蛇行してアンダーカットが生じた。さらに、Na2Oが多いのでビード表面の光沢がなく外観が不良で、溶接ヒュームの発生量も著しく多かった。
フラックス記号F13は、Al23が少ないのでスラグ剥離性およびビード外観が不良
であった。また、Feが少ないので溶着効率が悪く、アークの集中性が悪く裏ビードのビード形状が不安定であった。さらに、Moが少ないので溶接金属の引張強度が低く吸収エネルギーも低値であった。
フラックス記号F14は、Al23が多いのでビード形状およびスラグ剥離性が不良で
あった。また、Siが少ないので酸素量が多く吸収エネルギーが低値であった。さらに、フラックスの粒度構成で粒径150〜300μmの粒子が少ないのでアークの集中性が悪く健全な溶込み形状を得られず裏ビードが不安定であった。
フラックス記号F15は、MgOが少ないので溶接金属の酸素量が多く吸収エネルギー
が低値であった。また、TiO2が多いのでビード趾端部の立ち上がり角度が大きくなりビード外観およびスラグ剥離性が不良であった。さらに、フラックスの見掛密度が小さいので溶接時のアーク吹上げが激しくなりアークが不安定であった。
フラックス記号F16は、MgOが多いのでビード表面に突起物の発生や波目が粗くな
りスラグ剥離性およびビード外観が不良であった。また、Siが多いので溶接金属の引張強さが高くなり吸収エネルギーが低値であった。さらに、フラックスの粒度構成で粒径300〜850μmの粒子が多いので表ビードの幅が広がりすぎて溶込みが浅くなり裏ビード形状が不安定であった。
フラックス記号F17は、MnOが多いのでスラグ剥離性が不良で、スラグ巻き込み欠
陥が生じた。また、CaF2が多いのでビード形状が不良であった。さらに、B23が多いので溶接金属の引張強度が高く吸収エネルギーが低値であった。また、フラックスの粒度構成で粒径850μm以上の粒子が多いので表ビードの幅が広がりすぎて溶込みが浅くなり裏ビード形状が不安定であった。
フラックス記号F18は、CaOが少ないのでビード外観が不良でアンダーカットも生
じた。また、B23が少ないので溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。さらに、フラックスの粒度構成で粒径850μm以上の粒子が少ないので表ビードに鉄粒突起が発生し、ガス抜けが悪くなりピットおよびポックマークが発生した。
フラックス記号F19は、CaOが多いのでビード外観およびスラグ剥離性が不良であ
った。また、CaF2が少ないので溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。さらに、フラックスの粒度構成で粒径300〜850μmの粒子が少ないので表ビードに鉄粒突起が発生し、ガス抜けが悪くなりピットおよびポックマークが発生した。
フラックス記号F20は、TiO2が少ないのでビード表面の平滑性が悪く、溶接金属
の吸収エネルギーが低値であった。またNa2Oが少ないのでアーク状態が不安定でビード形状が不良であった。さらに、フラックスの粒度構成で粒径150〜300μmの粒子が多いので表ビード幅が狭く、ガス抜けが悪くピットおよびポックマークも発生した。
フラックス記号F21は、Feが多いのでビード表面に鉄粒突起が発生しスラグ剥離性
が不良であった。また、フラックスの見掛密度が大きいので表ビード幅が狭く凸形状となりアンダーカットも生じた。フラックス記号F22は、フラックスの粒度構成で粒径15
0μm以下の粒子が多いのでビード表面に鉄粒突起が発生しスラグがこびり付き剥離性
が不良で、表ビード幅が狭くなった。また、ガス抜けが悪くピットおよびポックマークも発生した。
本発明の実施例で用いたフラックス銅バッキング片面サブマージアーク溶接方法を示す断面図である。 本発明の実施例で用いた鋼板の開先形状を示す図である。
1 裏当銅板
2 裏フラックス
3 エアーホース
4 被溶接鋼板
5 ワイヤ
6 表フラックス


特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (1)

  1. 多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックスにおいて、質量%で、
    SiO2:10〜30%、
    Al23:4〜16%、
    MgO:8〜26%、
    MnO:0.5〜5.0%、
    CaO:2〜14%、
    CaF2:1.0〜8.0%、
    TiO2:3〜15%、
    Na2O:1.0〜5.0%、
    23:0.1〜3.0%、
    Fe:15〜40%、
    Si:1.0〜5.0%、
    Mo:0.1〜3.0%を含有し、
    その他は脱酸剤、金属炭酸塩からのCO 2 2 OおよびLi 2 Oからなるアルカリ金属酸化物および不可避不純物の合計が3.8%以下であり、フラックスの粒度構成が質量%で、粒径850μm以上:20〜45%、粒径300〜850μm:40〜75%、粒径150〜300μm:3〜15%、粒径150μm以下:5%以下で、見掛密度が0.90〜1.30g/cm3であることを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
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