JP2672243B2 - 片面サブマージアーク溶接用フラックス及びそれを使用した溶接方法 - Google Patents

片面サブマージアーク溶接用フラックス及びそれを使用した溶接方法

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JP2672243B2 JP5070025A JP7002593A JP2672243B2 JP 2672243 B2 JP2672243 B2 JP 2672243B2 JP 5070025 A JP5070025 A JP 5070025A JP 7002593 A JP7002593 A JP 7002593A JP 2672243 B2 JP2672243 B2 JP 2672243B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は3本又はそれ以上の電極
を使用して行う片面サブマージアーク溶接技術に関し、
特に溶接速度が100〜200cm/分の高速で行う高能率な片
面サブマージアーク溶接用として好適のフラックス及び
それを使用した溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】両面溶接においては、溶接速度が100cm
/分以上の多電極溶接法が多数提案されており、施工実
績の報告も多い。通常の両面1層の多電極溶接では溶け
込み深さも、板厚の約半分程度を確保すれば良く、比較
的容易に高速溶接が可能である。
【0003】片面サブマージアーク溶接においても、施
工条件の改善により高速溶接を行う技術が提案されてい
る(特開平3−238174号、特開平3−26889
6号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、片面溶接にお
ける溶接速度の高速化は極めて困難である。片面溶接に
おいては、表側から溶接して裏ビードまで同時に形成す
る必要があることから、溶け込み形状が縦長に(深く)
なることと、溶接速度が高速になると溶融プールも溶接
線方向に長くなり、また冷却速度が速くなるために溶融
金属の凝固速度も速くなるという難点がある。このた
め、特に表ビードの幅が広がらず、形状が不安定にな
り、またアンダーカットが発生しやすくなるという問題
点があった。この欠点は、従来の提案されている技術の
ように、単に施工条件の改善のみでは、十分に解決でき
ていない。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、高速片面サブマージアーク溶接の従来の問
題点を解消し、特に健全な表ビード及び裏ビードを得る
ことができる片面サブマージアーク溶接用フラックス及
びそれを使用した片面サブマージアーク溶接方法を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る片面サブマ
ージアーク溶接用フラックスは、重量%で、SiO2;1
0〜20%、CaO;5〜15%、MgO;20〜30%、TiO
2;8〜18%、F;2〜8%及び鉄粉;10〜30%を含有し、
重量%で粒径が840μmを超える粒子が20%未満、297乃
至840μmの粒子が60%以上、297μm未満の粒子が20%
未満であり、見掛密度が1.05乃至1.30g/cm3であること
を特徴とする。
【0007】本発明に係る片面サブマージアーク溶接方
法は、重量%で、SiO2;10〜20%、CaO;5〜15
%、MgO;20〜30%、TiO2;8〜18%、F;2〜8%
及び鉄粉;10〜30%を含有し、重量%で粒径が840μm
を超える粒子が20%未満、297乃至840μmの粒子が60%
以上、297μm未満の粒子が20%未満であり、見掛密度が
1.05乃至1.30g/cm3のボンドフラックスを使用し、3電
極又はそれ以上の電極を使用して1.0乃至2.0m/分の速
度で溶接を行うことを特徴とする。
【0008】なお、Al23:3〜13%、CO2:2〜8
%、Na2O:1〜5%、Fe−Si:2〜10%、Fe−M
n:2〜10%、Si−Mn:2〜10%、Fe−Mo:2〜1
0%、Fe−Ti:2〜10%及びB23:2〜10%からな
る群から選択された少なくとも1種を含有していてもよ
い。
【0009】
【作用】本願発明者等は、多電極を用いて高速片面サブ
マージアーク溶接において、特に表ビード裏ビードの健
全性を確保すべく種々実験研究を繰り返した結果、1.00
〜2.00m/分の高速で片面サブマージアーク溶接を行
い、健全な表ビード及び裏ビードを確保するためには、
施工条件(ワイヤ径、ワイヤ傾斜角度、結線、電極数又
は電極間距離、電流、電圧等)の選定も重要であるが、
それ以上に表側溶接に使用するフラックスの特性が極め
て重要な因子であることが判明した。
【0010】即ち、高速片面サブマージアーク溶接で
は、従来のフラックスを用いると、形状及び外観が良
く、十分且つ安定したビード幅を確保できず、またアン
ダーカットがない表ビードを確保することができない。
また、片面溶接では表側のフラックスが溶けてスラグと
なり裏ビード側にまわったりする。特に、高速溶接の場
合、表フラックスの組成及びスラグ量が裏ビードの安定
性に影響を及ぼす。本願発明は、これらの問題をフラッ
クスの特性を改善することで解決したものである。その
結果、本願請求項1に記載の条件で高速溶接した場合
は、健全な表ビード及び裏ビードを確保できることがわ
かった。
【0011】次に、上述のフラックスの組成限定理由及
び溶接条件の限定理由について説明する。なお、以下、
組成を表す%は重量%である。
【0012】フラックス組成 SiO2 SiO2はガラス化成分であり、20%を超えると溶融ス
ラグ全体の粘性が増加し、スラグの流動性が悪くなるた
めに、高速片面サブマージアーク溶接の場合、表ビード
幅が広がらず、且つ不安定になり、アンダーカットが発
生しやすくなる。また、10%未満では溶融スラグの凝固
温度が高くなり過ぎ、良好な表ビード形状を確保できな
くなる。このため、SiO2含有量は10乃至20%にす
る。
【0013】CaO,MgO CaO及びMgOはいずれも溶融スラグの粘度を低下さ
せ、スラグの流動性を高めて表ビード幅を広げる効果を
有する。CaOは15%を超えると、溶融スラグの凝固温
度が高くなり過ぎ、表ビード形状が損なわれる。また、
CaOが5%未満では溶融スラグの流動性を高める効果
が得られず、表ビード幅が不足し、アンダーカットが発
生しやすい。このため、CaOは5乃至15%にする。
【0014】MgOは高融点の成分であることから、そ
の含有量が30%を超えると、フラックス全体の溶融性が
損なわれ、特に、小入熱になる薄板の高速片面サブマー
ジアーク溶接を行う場合に安定したビードを確保できな
くなる。また、MgOの含有量が20%以下では溶融スラ
グの流動性を高める効果が得られず、表ビード幅が不足
し、アンダーカットが発生しやすくなる。このため、M
gO含有量は20乃至30%にする。
【0015】TiO2 TiO2は、特に高速溶接を行ったときのスラグ剥離性
の改善に有効な成分であるが、18%を超えるとビード波
が粗くなるという短所があり、また、8%以下では、ス
ラグ剥離性の改善効果は得られない。このため、TiO
2の含有量は8乃至18%にする。
【0016】 Fは通常CaF2、NaF等のフッ化物として添加する
が、いずれもフラックス全体の溶融性を良くする成分で
あって、特に高速片面サブマージアーク溶接のように、
短時間にフラックスを溶かし、スラグを生成しなければ
ならない溶接方法においては、不可欠な成分である。し
かし、F含有量が8%を超えると、スラグ生成量が過剰
となり、表ビード形状が不安定になると共に、裏側に溶
融スラグがまわりやすくなるため、裏ビードが不安定に
なる。一方、F含有量が2%未満ではフラックスの溶融
性改善効果が得られない。このため、フッ化物はF換算
で2乃至8%にする。
【0017】鉄粉 鉄粉は一度に多量の溶着金属を必要とする片面サブマー
ジアークの場合は、従来の溶接速度の場合においても必
要な添加成分であったが、特に高速片面サブマージアー
ク溶接を行うフラックスの場合は、鉄粉は溶着金属量を
補う目的からも重要な役割をもつ。このため、10%以上
の鉄粉を含有する。鉄粉含有量が10%未満では密着金属
量を補う効果が得られなくなることと、フラックスの見
掛密度が小さくなることから、溶接作業性(吹き上げ)
が劣化する。しかし、30%を超える鉄粉を含有させる
と、高速溶接では冷却が速く、溶融金属の凝固が速いこ
とから、ビード表面に鉄粒が付着しやすくなることと、
フラックスの見掛密度が高くなり、ビード幅が確保でき
なくなることから、上限は30%におさえることが必要で
ある。このため、鉄粉は10乃至30%にする。より好まし
くは、鉄粉含有量は25%以下に抑えることが望ましい。
【0018】その他の成分 その他の成分としては、作業性の点で、Al23:3〜1
3%、CO2:2〜8%、Na2O:1〜5%を含有しても良
い。また、溶接金属の目標とする機械的性質に応じて、
Fe−Si,Fe−Mn,Si−Mn,Fe−Mo,F
e−Ti,B23等の合金を1種又は2種以上、全フラ
ックスに対して2〜10%添加することもできる。
【0019】見掛密度 高速片面サブマージアーク溶接ではフラックスの見掛密
度が表ビード幅の広がり及び形状の安定性に大きな影響
を及ぼす。フラックスの見掛密度が1.30g/cm3を超える
と、溶融スラグの流動性が阻害され、表ビード幅が広が
りにくくなると共に、ビード形状が不安定になり、アン
ダーカットも発生しやすくなる。また、1.05g/cm3未満
ではガスによる溶融スラグの吹き上げが多くなる。特に
先行電極による溶融スラグの吹き上げスラグが非定常に
形成されるために、後行電極によって再溶融するときに
アークが不安定となって表ビード形状が劣化する。
【0020】フラックス粒度 フラックスの粒度は高速片面サブマージアーク溶接の場
合、溶融プールの移動速度が速いために、短時間の間に
均一に且つ適正量のフラックスが溶けなければならな
い。従って、粗い粒子が多すぎると均一溶融性が損なわ
れるので、粒径が840μmを超える粒子は全フラックス
に対して20%未満にする必要がある。一方、細かい粒子
が多すぎると、溶融金属及びフラックスから発生するガ
スのガス抜けが悪くなって、表ビード表面にポックマー
ク等のガス欠陥が発生し易くなるので、粒径が297μm
未満の粒子は20%未満にする必要がある。そして、これ
らの中間の粒子である粒径が297乃至840μmの粒子は、
60%以上にする。中間粒子である297〜840μmの粒子
は、ガス抜けが良く、均一溶融性の点からも好ましい粒
子径である。特に、高速片面サブマージアーク溶接で
は、この粒子がフラックス全体の60%以下になると、
表ビードの形状及び外観の安定性が保てなくなる。
【0021】電極数 1.00〜2.00m/分の高速で健全な表ビード、裏ビード及
び溶け込み形状を確保するためには、3電極以上が必要
である。高速溶接の場合、先ず第1電極では鋼板裏面側
まで溶かし、穴をあける程度の役割が限界であり、第1
電極のみでは安定した裏ビードを形成することができな
い。そこで、第2電極で互いに掘り下げると同時に溶着
金属を補って安定した裏ビードを形成することとなる。
従って、安定した裏ビードを形成ために最低2電極が必
要であり、表ビードと健全溶け込み形状を確保するのは
後続電極の第3電極及びそれ以降の電極の役割となる。
各電極のワイヤ径及び溶接条件などは、板厚及び目標溶
接速度を適宜選択すれば良いが、第1電極としてワイヤ
径が4.0〜4.8mmのものを用い、1200〜1550Aの電流を流
し、第2電極としてワイヤ径が4.8〜6.4mmのものを用
い、第1電極の電流をI1、第2電極に流す電流をI2
したとき、I2/I1=0.60〜1.00の範囲に設定し、ま
た、第1電極と第2電極との極間距離を15〜70mm、第2
電極と第3電極との極間距離を140〜250mmとして溶接を
行うと、一層良好な表ビード、裏ビード及び健全な溶け
込み形状が得られる。
【0022】その他 本発明は片面サブマージアーク溶接方法であるが、裏当
方法については、フラックスを裏当材とするフラックス
バッキング法、及びフラックスと銅を裏当材とするフラ
ックス銅バッキング法等、いずれの方法も適用できる。
また、裏当フラックスについても、従来のフラックスが
そのまま適用でき特に限定されるものではない。
【0023】
【実施例】次に、本発明の実施例についてその比較例と
比較して説明する。下記表1に示す銅板及び表2に示す
ワイヤを使用し、下記表3に示す溶接条件により片面サ
ブマージアーク溶接した。そして、フラックス組成を下
記表4に、フラックス粒度等の各種特性を下記表5に、
溶接試験結果を下記表6に夫々示す。また、この片面サ
ブマージアーク溶接は、銅板の上に裏当フラックスを5
〜6mmの一定の厚さに散布し、銅板裏当材に押し当てて
溶接するフラックス銅裏当法で実施したが、銅板を使用
せずに裏当フラックスを固化させながら行うフラックス
裏当法においても、本実施例とほぼ同様な結果が得られ
た。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】この表6から明らかなように、テスト番号
4,7,15の場合は、見掛け密度が大きいために、ビ
ード表面に小さな鉄粉粒が若干付着した。テスト番号
7,8,11〜14,15の場合は、組成が本発明の範
囲から外れるために、ビード幅が不足すると共に、ビー
ドが不安定である。テスト番号16は見掛け密度が小さ
いと共に鉄粉含有量が少ないために、ビードの余盛が不
足した。これに対し、本願発明の範囲にはいる条件で溶
接した場合には、ビード幅の広がり、安定性、形状、外
観のいずれも極めて良好であった。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
フラックスの組成等の条件を適切に設定したので、1.0
乃至2.0m/分の高速度で片面サブマージアーク溶接をし
ても、健全な表ビード及び裏ビードを得ることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−9795(JP,A) 特開 平5−57448(JP,A) 特開 昭59−137194(JP,A) 特公 平1−31996(JP,B2) 特公 昭45−31370(JP,B1) 特公 昭57−31516(JP,B2)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、SiO2;10〜20%、C
    aO;5〜15%、MgO;20〜30%、TiO2
    8〜18%、F;2〜8%及び鉄粉;10〜30%を含
    有し、重量%で粒径が840μmを超える粒子が20%
    未満、297乃至840μmの粒子が60%以上、29
    7μm未満の粒子が20%未満であり、見掛密度が1.
    05乃至1.30g/cm3であることを特徴とする片
    面サブマージアーク溶接用フラックス。
  2. 【請求項2】 重量%で、SiO2;10〜20%、C
    aO;5〜15%、MgO;20〜30%、TiO2
    8〜18%、F;2〜8%及び鉄粉;10〜30%を含
    し、残部が不可避的不純物であるフラックスであっ
    て、重量%で粒径が840μmを超える粒子が20%未
    満、297乃至840μmの粒子が60%以上、297
    μm未満の粒子が20%未満であり、見掛密度が1.0
    5乃至1.30g/cm3であることを特徴とする片面
    サブマージアーク溶接用フラックス。
  3. 【請求項3】 重量%で、SiO2;10〜20%、C
    aO;5〜15%、MgO;20〜30%、TiO2
    8〜18%、F;2〜8%及び鉄粉;10〜30%を含
    有し、更にAl23;3〜13%、CO2;2〜8%、
    Na2O;1〜5%、Fe−Si;2〜10%、Fe−
    Mn;2〜10%、Si−Mn;2〜10%、Fe−M
    o;2〜10%、Fe−Ti;2〜10%及びB23
    2〜10%からなる群から選択された少なくとも1種を
    含有し、残部が不可避的不純物であるフラックスであっ
    て、重量%で粒径が840μmを超える粒子が20%未
    満、297乃至840μmの粒子が60%以上、297
    μm未満の粒子が20%未満であり、見掛密度が1.0
    5乃至1.30g/cm3であることを特徴とする片面
    サブマージアーク溶接用フラックス。
  4. 【請求項4】 重量%で、SiO2;10〜20%、C
    aO;5〜15%、MgO;20〜30%、TiO2
    8〜18%、F;2〜8%及び鉄粉;10〜30%を含
    有し、重量%で粒径が840μmを超える粒子が20%
    未満、297乃至840μmの粒子が60%以上、29
    7μm未満の粒子が20%未満であり、見掛密度が1.
    05乃至1.30g/cm3のボンドフラックスを使用
    し、3電極又はそれ以上の電極を使用して1.0乃至
    2.0m/分の速度で溶接を行うことを特徴とする片面
    サブマージアーク溶接方法。
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