JPH082513B2 - 大入熱サブマージアーク溶接用焼成型フラックス - Google Patents

大入熱サブマージアーク溶接用焼成型フラックス

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JPH082513B2
JPH082513B2 JP1160883A JP16088389A JPH082513B2 JP H082513 B2 JPH082513 B2 JP H082513B2 JP 1160883 A JP1160883 A JP 1160883A JP 16088389 A JP16088389 A JP 16088389A JP H082513 B2 JPH082513 B2 JP H082513B2
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修一 阪口
忠政 山口
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川崎製鉄株式会社
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【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、軟鋼あるいは引張強度が50kgf/mm2以上の
低合金高張力鋼の入熱量90kJ/cm以上の大入熱サブマー
ジアーク溶接に用いるフラックスに関し、特に良好な溶
接作業性のもとにビード外観に優れ、かつ欠陥のない溶
接ビードを容易に得ることのできるフラックスに関する
ものである。
<従来の技術> 近年、高層ビルに代表される鋼構造物の大型化及び需
要の増加による鋼構造建築物の増加、溶接技能者の不足
などからより高能率な溶接方法が要求されている。
従来、厚鋼板の高能率サブマージアーク溶接用フラッ
クスとしては、突き合わせ溶接や角継手溶接に鉄粉入り
フラックスを用いた両面一層溶接や片面一層溶接が適用
されている。
例えば特開昭53−108839号公報では、鉄粉を添加した
フラックスを用いて溶着量を増し、多電極大入熱溶接を
行うことにより、35mm以上の厚鋼板を1パス溶接する技
術が開示されている。しかしこのような鉄粉添加フラッ
クスでは、溶着量を増加させることによってより厚い鋼
板の1パス溶接が可能となるが、鉄粉添加によってアー
クが絞られビード幅が狭くなる。このためボックス柱角
継手にみられるようなレ型開先を用いた1パス溶接で
は、ワイヤのねらい位置や溶接電圧を厳密に管理しない
と融合不良を生じやすいため、溶接速度を上げて能率を
向上させることが難しい。またフラックスが必要以上に
重いためビード形状が凸型になりやすく、美麗な外観を
得ることができないなどの不都合があった。
また、特開昭62−259697号公報では、鉄粉を用いずMg
O,Al2O3,SiO2の組成比を特定して大入熱溶接性と高速溶
接性を向上させる技術が開示されている。しかしMgO,Al
2O3といった高融点酸化物の比率に対し、造滓剤として
ビード形状を整えるのに重要なSiO2の比率が過少である
ため、ビードが凸状になりやすく、開示された技術に係
る大入熱かつ高速度の溶接ではビード幅が出にくいなど
の問題があった。
このように従来開示されている大入熱溶接用フラック
スでは、スラグの耐火性を上げるために高融点酸化物の
比率を上げたものが殆どであり、フラックスの具備すべ
き重要な条件であるビード外観が犠牲にされてきた。
<発明が解決しようとする課題> 本発明は、一般鋼造物用の難鋼あるいは引張強度が50
kgf/mm2以上の低合金高張力鋼の大入熱サブマージアー
ク溶接において、高電流,高速度の能率の良い溶接条件
の下で、優れた溶接作業性があり、かつ溶接後に手入れ
が不要で美麗な外観を有する溶接ビードを容易に得るこ
とのできる焼成型フラックスを提供するためになされた
ものである。
<課題を解決するための手段> 本発明は、主成分として、SiO2:30〜45重量%(以
下%),MgO:25〜45%,CaO:5〜15%,Al2O3:2〜15%,Ti
O2:2〜10%,CaF2:1〜5%を含み、脱酸成分として、Mn,
Si,TiおよびAlのうちの1〜3種類の合計で3〜15%を
含み、ガス成分として、CO2:2〜10%を炭酸塩の形で含
み、残部は、微量元素および不純物からなる入熱量90kJ
/cm以上の大入熱サブマージアーク溶接用焼成型フラッ
クスで、かつ粒度が36メッシュ以下の含有率が20%以
下で、かつ14メッシュ以下で36メッシュ超の含有率が60
%以上の粒度分布を有する前項記載の入熱量90kJ/cm
以上の大入熱サブマージアーク溶接用焼成型フラックス
である。
<発明をなすに至った経過および作用> 大入熱溶接用フラックスとしては、溶接スラグの融点
の調整が容易で合金元素の添加ができる焼成型フラック
スが好適であるが、溶融型フラックスに比べてビード外
観や高速性の点で劣るといわれている。
すなわち溶融型フラックスは原料をアーク炉などで溶
融させた後凝固・粉砕したものであり、一般に融点が低
く、大入熱溶接への適用は難しいが、通常の溶接では美
麗な外観を得やすい。一方、焼成型フラックスは、金属
酸化物,弗化物あるいは炭酸塩などの混合結合体である
ため、フラックスの溶融・凝固が不均一になりやすく、
ビード外観や高速性の点で劣ると考えられる。
本発明者はこのような現状に鑑み、大電流・高速度の
高能率な条件を用いた大入熱溶接において、ビード外観
を向上させるため焼成型フラックスの特性を総合的に検
討した結果、ビード外観を良好に保つ上でSiO2が最も重
要な役割を果たしており、大入熱溶接性に関してはMgO
を特定量添加することで十分な作業性を保つことが可能
であり、さらに良好なビード外観を得るためには粒度分
布が重要であるということが判明した。本発明はこのよ
うな知見に基づくものである。
以下にこの発明につき組成・粒度の限定理由を述べ
る。
まず、本発明に係るフラックスは、ビード外観を良好
に保つ上でSiO2を30%以上含むことが肝要である。
SiO2は、造滓剤としてビード外観を良好に保つために
必要な成分であり、特にビード幅を広げ、ビード表面を
平滑に保つ効果があるが、30%未満ではビード形状は焼
成型特有の凸状ビードになりやすくビード幅も広がりに
くい。一方、45%を超えると大入熱溶接の際にスラグ量
が増加しすぎてかえってビード外観が乱れやすくなる。
MgOは、生成スラグの融点を上げ大入熱溶接時の作業
性を改善すると同時に、フラックスの塩基度を上げ溶接
金属中の酸素量を低減して靱性を確保するのに重要な成
分であるが、25%未満では十分な効果が得られず、45%
を超えて含有されるとビード形状が凸状になりやすくス
ラグの剥離性が劣化する。
CaOは、MgOと同様に生成スラグの耐火性を向上させ、
フラックスの塩基度を上げる成分として重要であるが、
5%未満ではこの効果に乏しく、15%を超えて含まれる
とスラグが硬くなって剥離性が悪くなる。
Al2O3は、粘性を低下させずに融点を上昇させるのに
有効な成分であるが、5%未満ではこれらの効果に乏し
く、一方15%を超えるとビード形状が凸状になる傾向が
ある。
TiO2は、スラグの剥離性を改善するだけでなく、アー
クを安定させ溶接金属の組織を微細化させて靱性を向上
させるのに有効な成分であるが、2%より少ないと靱性
を向上させる効果に乏しく、10%を超えて添加してもこ
の効果の増進はなく、かえってビード外観を害する。
CaF2は、アークの安定性の向上に効果があるが、1%
未満ではこの効果に乏しく、5%を超えるとスラグの流
動性が増してビード形状が乱れやすくなる。
これらのスラグ構成成分に加え、脱酸剤として単体金
属または合金をMn,Si,Ti,Alの1〜4種類の合計で3〜1
5%添加する必要がある。この添加量が3%未満では溶
接金属の靱性を確保することが難しいだけでなくポック
マークが発生しやすくなる。一方15%を超えると酸素量
が低くなりすぎてかえって靱性を劣化させる。
また、炭酸塩の形で含まれるCO2は溶接金属中の水素
量を低減させるために必要であるが、2%未満ではその
効果に乏しく、10%を超えるとガス発生量が増えすぎて
ポックマークの発生やビード形状が乱れやすくなる。
以上フラックスの特定成分に関して述べたが、これら
特定成分以外でも通常フラックスに用いられている成分
は添加してもさしつかえない。
このような成分としてはMnO,BaO,ZrO,B2O3,アルカリ
金属酸化物(K2O,Na2Oなど)があり、MnOは10%以下の
範囲で、アルカリ金属酸化物は合計で5%以下の範囲
で、その他の成分も各々5%以下の範囲で含有させるこ
とができる。
ところでこの発明では使用フラックスにつき、単に上
記した成分組成範囲を満足させるだけでも良好なビード
外観を得ることができるが、さらに粒度分析も36メッシ
ュより細いものが20%以下で、かつ14メッシュ以下で36
メッシュより粗いものを60%以上とすることにより、さ
らに良好な溶接作業性の下により大入熱で優良なビード
外観を得ることができるようになる。
粒度分布は、大入熱溶接の際のガス抜けを良好に保つ
ために重要な要素であり、特に良好なビード外観を得る
ためには間欠的なガスの流出を避ける必要がある。この
ためには粒径の揃った粒子が主体を占める構成とするこ
とが肝要であり、14メッシュ以下で36メッシュより粗い
粒子が60%に満たなかったり、36メッシュ以下の細い粒
子が20%を超えるとガス抜けが悪くなりビード外観が劣
化する。
以上に示したフラックス成分組成と粒度構成の特定に
よって、高電流を用いた大入熱サブマージアーク溶接に
おいてビード外観に優れ、かつ十分な靱性を有する溶接
金属を容易に欠陥なく得ることができる。
また、靱性がそれほど高くなくても良い場合には、Ti
O2を添加しなくてもさしつかえない。
<実施例> 本発明に係る実施例を以下に説明する。
供試材として第1表に示す組成である鋼板と、第2表
に示す組成および粒度分布であるフラックス、および第
3表に示す溶接ワイヤを用いて、入熱量91kJ/cm、305kJ
/cmの大入熱溶接によって第4表に示す溶接条件下に片
面1パス溶接を行った。なお、本溶接時の間先形状を第
1図に示す。
このときの溶接結果を第5表に示す。第2図にビード
形状の種類を示したが、(a)は優良な形状、(b)は
凸状で幅が狭く不良な形状、(c)はビード幅は狭いが
良好な形状である。
フラックス記号A〜Eは、この発明に係る実施例であ
り組成および粒度構成が適正範囲に入っているため優良
な形状の溶接ビードを欠陥なく得ることができた。フラ
ックス記号F〜Iは、フラックスの組成が適正範囲をは
ずれているためいずれも良好なビード外観が得られなか
った。フラックス記号J〜Lは、粒度構成が適正範囲を
はずれているためビード幅がやや狭いが組成が適正範囲
に入っているため比較的良好なビード外観が得られた。
また、フラックス記号Mでは、TiO2を含まないため靱
性がやや劣るが、良好なビード外観が得られた。
<発明の効果> 前述のように、本発明に係るフラックスを用いれば、
高電流を用いた能率のよい溶接条件の下で、外観の優れ
た溶接ビードを容易に欠陥なく得ることができ、ボック
ス柱の角継手のような溶接線の長いサブマージアーク溶
接に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】 第1図は、実施例における開先形状を示す断面図、第2
図は、ビード形状の種類を示した模式図である。 1……母材、2……開先部、 3……裏あて材、4……溶接金属、 a……開先角度、d……開先深さ、 f……ルート面。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−159298(JP,A) 特開 昭50−139043(JP,A) 特公 平1−56879(JP,B2) 特公 昭57−31516(JP,B2)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主成分として、 SiO2:30〜45重量%(以下%), MgO:25〜45%, CaO:5〜15%, Al2O3:2〜15%, TiO2:2〜10%, CaF2:1〜5%を含み、 脱酸成分として、 Mn,Si,TiおよびAlのうちの1〜4種類の合計で3〜15%
    を含み、 ガス成分として、 CO2:2〜10%を炭酸塩の形で含み、 残部は、微量元素および不純物からなる入熱量90kJ/cm
    以上の大入熱サブマージアーク溶接用焼成型フラック
    ス。
  2. 【請求項2】粒度が36メッシュ以下の含有率が20%以下
    で、かつ14メッシュ以下で36メッシュ超の含有率が60%
    以上の粒度分布を有する請求項1記載の入熱量90kJ/cm
    以上の大入熱サブマージアーク溶接焼成型フラックス。
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