JP5627660B2 - 圧縮自己着火内燃機関の制御装置 - Google Patents

圧縮自己着火内燃機関の制御装置 Download PDF

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Description

この発明は、通常の火花放電による点火を行うとともに、少なくとも一部の燃焼運転条件においては、火花放電を必要せずに、燃焼室内に形成された燃料と空気との混合気をピストンによる圧縮作用によって自己着火させる圧縮自己着火内燃機関の制御装置に関するものである。
圧縮自己着火内燃機関においては、通常のガソリン燃焼の内燃機関における点火用の火花放電を必要とせずに、燃焼室内に形成される燃料と空気との混合気がピストンにより圧縮されることによって、自己着火温度に達して燃焼室内空間の複数箇所で同時多発的に燃焼が開始される。
ガソリンの自己着火温度は、混合気の圧力または燃料濃度などの条件によって異なるものの、約300℃前後である。一般的に、圧縮自己着火内燃機関においては、混合気温度を自己着火温度まで高めるために、従来の火花点火内燃機関よりも圧縮比が高く設定されている。また、高温の燃焼ガスの一部を燃焼室内に残留させるために、吸気弁および排気弁の開閉タイミングまたはリフト量の変更制御も行われる。
圧縮自己着火内燃機関においては、燃焼室内に残留させる燃焼ガス量を多くすると、自己着火する時期が進角して、燃焼開始後の燃焼速度が上昇する。このとき、燃焼速度が過剰に上昇すると、燃焼室内の圧力変化に振動が加わることによってノッキングと近似した現象(以下、便宜的に「ノッキング」という)が発生し、ピストンなど内燃機関本体に物理的な損傷を与えるとともに、騒音および振動の発生などの不都合を招く。逆に、燃焼室内に残留させる燃焼ガス量を少なくすると、自己着火する時期が遅角して、やがては失火に至ることになる。
よって、混合気温度は、適正な時期に自己着火が生じる適正な温度になるように制御する必要がある。
たとえば、高温の燃焼ガスの燃焼室内への残留量は、前述のように、吸気弁および排気弁の開閉タイミングまたはバルブリフト量を制御することにより、比較的容易に変更することができるが、この場合、複数存在する各気筒別に微調整することはできず、比較的大まかな制御のみとなる。
そこで、従来から、燃焼ガスを残留させたうえで、少なくとも燃料噴射の一部を圧縮行程の後半に行うことにより、混合気温度に変化を与え、自己着火時期を適正に制御する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術によれば、各気筒別に自己着火時期を適正に制御することができる。
具体的には、前サイクルの高温の燃焼ガスの一部を排気せずに、燃焼室内に残留させた燃焼ガスの温度の違いを、燃焼予反応の状態または筒内圧力上昇の程度から検出し、検出情報から自己着火時期を予測して、予測時期と目標自己着火時期との差異に基づいて燃料噴射時期を制御することにより、圧縮自己着火燃焼の安定性を向上させている。
上記特許文献1には、たとえば、吸気行程で噴射した燃料の予反応による筒内圧力変化の出現パターンから予測した自己着火時期が、目標自己着火時期よりも進角している場合には、圧縮上死点付近での燃料噴射時期を遅角させ、逆に、予測した自己着火時期が、目標自己着火時期よりも遅角している場合には、燃料噴射時期を進角させる技術が示されている。
すなわち、予反応が進角する燃焼運転条件においては、燃焼室内に残留させた燃焼ガス温度が高くなることから、自己着火時期が進角するとともに燃焼速度が高くなるものと予想し、圧縮上死点付近での燃料噴射時期を遅角化補正して、自己着火時期に近づけるようにする。この結果、噴射した燃料の気化熱による混合気冷却効果を強めることにより、自己着火時期の遅角化と燃焼速度の抑制とを実現している。
逆に、予反応が遅角する燃焼運転条件においては、燃焼室内に残留させた燃焼ガス温度が低くなることから、自己着火時期が遅角するとともに燃焼速度が低くなるものと予想し、圧縮上死点付近での燃料噴射時期を進角化補正して、自己着火時期から遠ざけるようにする。この結果、噴射した燃料の気化熱による混合気冷却効果を弱めることにより、自己着火時期の進角化と燃焼速度の向上とを実現している。
なお、上記特許文献1には、圧縮上死点付近のみで燃料噴射を行う制御も記載されており、この場合は、予反応に関する情報が得られないので、圧縮行程での筒内圧力の上昇の程度から、燃焼室内に残留させた燃焼ガスを含む空気の温度を予測して、自己着火時期が目標自己着火時期となるように圧縮上死点付近での燃料噴射時期を制御している。
特許文献1に示された技術によれば、使用する燃料の自己着火特性および燃焼特性が一定である場合には、十分安定した制御状態が得られる。しかし、圧縮自己着火内燃機関を自動車の駆動装置として用いる場合の燃料は、市販のガソリンが一般的であり、市販ガソリンは、成分組成がある程度管理されているものの、多種類の炭化水素系物質の混合物であることから、季節、原油採取地域または製油所などの違いによって、成分組成にも違いが生じる。また、市販ガソリンは、揮発特性が異なる成分の混合物であることから、経時的な成分組成の変化も生じる。
特許文献1に記載の技術において、燃料噴射時期制御の根拠となるのは、燃焼室内に残留させた燃焼ガスの温度に支配される自己着火時期の推定値である。
しかし、燃料の成分組成によって変化する自己着火温度および燃焼速度特性を考慮せずに、燃焼ガス温度から推測した自己着火時期のみに基づいて燃料噴射時期を制御すると、標準的な燃料よりも自己着火温度が低く燃焼速度が高い傾向の燃料では、自己着火時期が進角化してノッキングが発生し、逆に、標準的な燃料よりも自己着火温度が高い傾向の燃料では、燃料の遅角噴射により必要以上に混合気温度が低下することによって、失火を発生させる可能性がある。
図8は一般的な圧縮自己着火燃焼の燃焼時期と軸出力との関係を示す説明図であり、燃料噴射量が異なる複数の特性線を示している。
図8において、横軸は燃焼時期(遅角、進角)に対応し、縦軸は軸出力(大小)に対応している。図8においては、複数の特性線に関連させて、ノッキング領域および失火領域(ハッチング部)とともに、ノッキング領域と失火領域とのほぼ中間に位置する目標自己着火時期(破線)が示されている。なお、1つの特性線での燃料噴射量は一定である。
図8から明らかなように、同じ燃料噴射量であれば、軸出力が最大となる燃焼時期に制御することが燃費の点で有利であることから、目標自己着火時期(破線)で示す特性に燃焼時期を制御すればよいことが分かる。
図8内の目標自己着火時期は、特許文献1に示された目標自己着火時期に相当する。
また、図8から明らかなように、軸出力が比較的小さい条件下においては、軸出力の変化が小さい燃焼時期が幅を持っていることから、ノッキング領域と失火領域との差が大きくなり、燃料の成分組成の違いから多少の燃焼時期の変化が生じても、ノッキング領域および失火領域のいずれにも触れず、安定した圧縮自己着火燃焼が得られる。
逆に、軸出力が大きい条件下においては、ノッキング領域(ノッキングが発生する燃焼時期)と、失火領域(失火が発生する燃焼時期)との差が少なくなるので、燃料の成分組成の違いによって燃焼時期が変化した場合に、ノッキングまたは失火が発生しやすくなる。
図9は2回目の燃料噴射時期と軸出力との関係でのノッキングと失火との特性を示す説明図であり、特許文献1に示されているような圧縮上死点付近での特性を示している。
図9において、横軸は圧縮上死点付近での燃料噴射時期(遅角、進角)に対応し、縦軸は軸出力(大小)に対応している。
図9から明らかなように、ノッキングが生じやすい成分組成の燃料の場合には、ノッキング領域の境界が遅角側(矢印および細線参照)に変化するので、圧縮上死点付近の燃料噴射時期が遅角側に制限される。
また、失火が生じやすい成分組成の燃料の場合には、失火領域の境界が進角側(矢印および破線参照)に変化するので、圧縮上死点付近の燃料噴射時期が進角側に制限される。
特に、軸出力が大きい条件下においては、燃料の成分組成によって、圧縮上死点付近の燃料噴射時期をかなり限定する必要がある。
よって、予反応特性または筒内圧力上昇特性から推定される燃焼ガス温度に連動した自己着火時期のみに基づいて燃料噴射を制御すると、燃料の成分組成が変化した場合に、ノッキング領域または失火領域に達してノッキングまたは失火を招くことになる。
特許第3760710号公報
従来の圧縮自己着火内燃機関の制御装置は、使用する燃料の成分組成によって、圧縮上死点付近の燃料噴射時期を著しく限定する必要があるので、燃料の成分組成が変化した場合に、ノッキングまたは失火を招きやすいという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ノッキングまたは失火をともなう圧縮自己着火燃焼を防止するために、圧縮行程での燃料噴射を追加した制御装置において、燃料性状(燃料の成分組成)の違いによって発生するノッキングおよび失火を防止して、安定した制御状態を実現可能な圧縮自己着火内燃機関の制御装置を得ることを目的とする。
この発明に係る圧縮自己着火内燃機関の制御装置は、内燃機関の燃焼室に向けて高圧の燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁を駆動制御して1回の燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う燃料噴射制御装置と、前記燃焼室の内部での燃焼状態を検出するための燃焼状態検出部を有する演算処理回路と、を備え、前記燃料噴射弁から前記燃焼室への燃料噴射の一部を前記内燃機関の圧縮行程で行うように構成された圧縮自己着火内燃機関の制御装置であって、前記燃焼状態検出部は、筒内圧力センサおよびイオン電流検出回路の少なくとも一方からなるセンサ手段と、前記センサ手段からの検出信号に含まれる特定周波数成分の信号強度からノッキングの発生有無を判定するノッキング検出部と、前記検出信号の出力レベルが1回の燃焼サイクル中で最大となるクランク角度の複数回の連続サイクルにおける変動幅から失火を予測する失火予測部と、を含み、前記演算処理回路は、前記内燃機関の回転速度および燃焼負荷に基づいて現在の燃焼運転条件を決定するとともに、前記ノッキング検出部がノッキングの発生を検出した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を遅角補正し、遅角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射進角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射進角限界値よりも進角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、前記失火予測部が失火を予測した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を進角補正し、進角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射遅角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射遅角限界値よりも遅角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、前記燃料噴射進角限界値と前記燃料噴射遅角限界値とのクランク角度差または時間差が所定の許容値以下の場合には、当該時点の燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する
この発明によれば、内燃機関の実際の燃焼状態から燃料噴射時期の進角限界値および遅角限界値を更新設定し、また、双方の限界値の差が小さい場合には圧縮自己着火燃焼制御を禁止することにより、燃料の成分組成の違いによって発生するノッキングおよび失火を防止して、安定した制御状態を得ることができる。
この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関の制御装置を概略的に示すブロック構成図である。 圧縮行程の進行にともなう燃焼室内の混合気の温度分布の変化を示す説明図である。 圧縮自己着火内燃機関における筒内圧力およびイオン電流の出力パターンを示す説明図である。 この発明の実施の形態1による燃料噴射時期の進角補正および遅角補正の制御処理を示すフローチャートである。 筒内圧力またはイオン電流の検出値のサイクル変動例を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による燃料補給時の制御動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態3による燃料補給時の制御動作を示すフローチャートである。 一般的な圧縮自己着火燃焼の燃焼時期と軸出力との関係を示す説明図である。 2回目の燃料噴射時期と軸出力との関係でのノッキングと失火との特性を示す説明図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関の制御装置を概略的に示すブロック構成図である。
なお、一般に、車両駆動用の内燃機関は複数個の燃焼室を有しているが、ここでは、説明を簡素化するために、複数個のうちの1つの燃焼室のみの構成を示している。
図1において、圧縮自己着火内燃機関を構成するエンジンは、出力軸となるクランク軸1と、クランク軸1に連結されたコネクティングロッド2と、コネクティングロッド2に連結されたピストン3と、ピストン3を上下移動自在に収納するシリンダ4と、シリンダ4内に形成された燃焼室5と、燃焼室5と吸気管7との間に介在された吸気弁6と、燃焼室5に配置された燃料噴射弁8と、燃料タンク(図示せず)内に充填された燃料を燃料噴射弁8に供給する燃料供給管9と、燃焼室5と排気管との間に介在された排気弁12と、クランク軸1と連動するタイミングベルト13と、燃焼室5に配置されたイオン電流検出用の電極20と、を備えている。
また、上記エンジンを制御する圧縮自己着火内燃機関の制御装置は、マイクロコンピュータからなるエンジン制御装置10と、燃料噴射弁8を駆動制御する燃料噴射制御装置11と、タイミングベルト13と連動して吸気弁6を駆動する吸気弁駆動機構14と、タイミングベルト13と連動して排気弁12を駆動する排気弁駆動機構15と、吸気弁駆動機構14を駆動制御する吸気弁駆動制御装置16と、排気弁駆動機構15を駆動制御する排気弁駆動制御装置17と、シリンダ4に設けられた筒内圧力センサ18と、筒内圧力センサ18からの圧力信号を処理する圧力信号処理回路19と、電極20を介してイオン電流を検出するイオン電流検出回路21と、クランク軸1に対向配置されてクランク軸1の軸回転位置および軸回転速度(以下、単に「回転速度Ne」という)を検出する回転センサ22と、を備えている。
エンジン制御装置10は、圧縮自己着火内燃機関の制御装置の主要部を構成する演算処理回路30と、演算処理回路30に属するデータベース40と、回転速度Neなどからエンジンの燃焼運転条件を判定する燃焼運転条件判定部50と、を備えている。
演算処理回路30は、燃料噴射制御値Tfを算出する燃料噴射制御値算出部31と、予反応時期Ctを推定する予反応時期推定部32と、エンジンの燃焼状態を検出する燃焼状態検出部33と、を備えている。
演算処理回路30内の燃焼状態検出部33は、センサ手段として、筒内圧力センサ18、圧力信号処理回路19、電極20およびイオン電流検出回路21を含むものとする。
なお、電極20は、火花点火燃焼時に用いられる点火プラグで代用することができる。また、ここでは、燃焼状態検出部33のセンサ手段として、筒内圧力センサ18およびイオン電流検出回路21の両方を用いたが、いずれか一方のみを用いてもよい。
燃焼状態検出部33は、エンジンにおけるノッキングの有無を判定するノッキング検出部34と、エンジンにおける失火の有無を予測する失火予測部35と、を備えている。
失火予測部35は、燃焼時期のサイクル変動(クランク角度のサイクル変動幅)を検出する燃焼時期サイクル変動検出部36を備えている。
データベース40は、演算処理回路30と協働しており、燃料噴射進角限界値Lf(燃料噴射時期の進角限界値)と、燃料噴射遅角限界値Lr(燃料噴射時期の遅角限界値)と、標準的な燃料噴射時期Tbと、目標予反応時期Ctsと、を格納している。
なお、後述するように、ノッキング検出部34は、ノッキング発生時の燃料噴射進角限界値Lfの更新設定に寄与し、燃焼時期サイクル変動検出部36は、失火発生時の燃料噴射遅角限界値Lrの更新設定に寄与している。
ノッキング検出部34は、燃焼進角限界検出手段として機能し、筒内圧力信号などのセンサ検出信号に含まれる高周波成分強度からノッキングの有無を判定する。
燃焼時期サイクル変動検出部36は、燃焼遅角限界検出手段として機能し、センサ検出信号の最大値から求めた燃焼時期の燃焼サイクルごとの変動量(≧許容値)により失火を判定する。
なお、ここでは図示を省略するが、エンジン周辺には他の各種センサも設けられており、エンジン制御装置10は、筒内圧力センサ18、イオン電流検出回路21および回転センサ22からの検出情報に加えて各種センサからの検出情報が入力されており、エンジン制御に関連する各種アクチュエータを駆動するための制御量演算手段を備えている。
次に、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。
周知のように、基本的動作は、「吸気」、「圧縮」、「膨張(燃焼)」、「排気」の4行程内燃機関の動作からなる。
このとき、燃焼室5の容積は、クランク軸1の回転およびコネクティングロッド2の作用により、ピストン3がシリンダ4に沿って往復移動することによって変化する。
まず、吸気弁6は、ピストン3がシリンダ4内に最も押し込まれた状態付近から徐々に開き始め、続いて、ピストン3がシリンダ4内で引き抜かれることにより、吸気管7を介して燃焼室5に空気が吸入される(吸気行程)。
圧縮自己着火内燃機関の場合には、吸気行程中に、燃料噴射弁8から高圧の燃料が燃焼室5に噴射供給される。
燃料は、燃料供給管9を介して燃料噴射弁8に供給されるとともに、燃料昇圧ポンプ(図示せず)により200気圧程度に加圧される。
このとき、エンジン制御装置10において、演算処理回路30内の燃料噴射制御値算出部31は、燃料噴射制御値Tfとして噴射量および噴射時期を算出する。
燃料噴射制御装置11は、燃料噴射制御値算出部31で決定された噴射量および噴射時期の情報を受け取って、燃料噴射弁8に駆動エネルギーを供給することにより、燃料噴射弁8から燃焼室5への燃料の噴射供給を制御する。
続いて、吸気弁6は、ピストン3がシリンダ4から引き抜かれる途中から徐々に閉じ始め、ピストン3が再びシリンダ4内に押し込まれ始めた付近で完全に閉じる。
この結果、燃焼室5内に供給された空気および燃料は、ピストン3の移動にともない、混合状態を継続しながら圧縮される(圧縮行程)。
その後、通常の内燃機関では、ピストン3が最も押し込まれる圧縮上死点の少し前のタイミングで、点火プラグの火花点火によって混合気の燃焼を開始させるが、圧縮自己着火内燃機関(図1)の場合は、断熱圧縮された混合気の温度が上昇して自己着火するまで、ピストン3により強く圧縮することによって燃焼を開始させる。
次に、燃焼が開始されると、燃焼室5内の圧力が急上昇してピストン3を押し戻す力が作用することにより、コネクティングロッド2を介してクランク軸1に回転力を生じさせる(膨張行程)。
その後、ピストン3が最も押し戻される付近から排気弁12が徐々に開き始め、燃焼ガス(燃焼後の排ガス)が燃焼室5内から排気される(排気行程)。
上記のように、圧縮自己着火内燃機関においては、混合気を断熱圧縮によって高温化するので、通常の火花点火を行う内燃機関と比べて高圧縮比に制御することになる。
このとき、圧縮時の混合気の温度を適正な目標到達温度に制御するために、吸気弁6および排気弁12の開弁時期または開弁期間を変更する制御が行われる。
吸気弁6および排気弁12は、タイミングベルト13を介して、クランク軸1の回転速度の2分の1の速度で回転動作する吸気弁駆動機構14および排気弁駆動機構15により駆動されるが、吸気弁駆動機構14および排気弁駆動機構15には、吸気弁6および排気弁12の各々の開弁時期または開弁期間を変更する機構が組み込まれている。
したがって、吸気弁駆動機構14および排気弁駆動機構15は、エンジン制御装置10からの演算処理情報が入力される吸気弁駆動制御装置16および排気弁駆動制御装置17の制御下で、吸気弁6および排気弁12の開弁時期または開弁期間を適正に変更することができる。
たとえば、エンジン制御装置10からの演算処理情報にしたがい、排気弁駆動制御装置17が排気弁駆動機構15の動作を変更して、排気弁12の閉じる時期を進角させると、燃焼室5内に残留する高温の燃焼ガスの量が多くなり、次の圧縮行程での空気および燃料と残留した燃焼ガスの混合物の到達温度が高くなる。
このように、吸気弁6および排気弁12の動作の変更制御を行うことにより、混合気の到達温度を変更することができる。
こうして、高温の混合気が得られるが、内燃機関は常に冷却されているので、圧縮期間中に、高温混合気の一部が冷却されてしまう。
具体的には、内燃機関の燃焼室5を形成するシリンダ4の壁面(燃焼室側壁)およびピストン3が常に冷却されているので、燃焼室側壁またはピストン3の近くに存在する混合気は、常に熱を奪われている。
燃焼室側壁またはピストン3に熱を奪われて低温化した混合気は、燃焼室5内の混合気の流れによって、燃焼室側壁またはピストン3の近傍から離れるので、燃焼室側壁またはピストン3の近傍には、新たな未冷却の混合気が流れてくるが、新たな混合気も冷却されて燃焼室側壁またはピストン3から離れる。
また、燃焼室側壁またはピストン3の近傍で冷却される混合気が常に存在するとともに、燃焼室側壁またはピストン3の近傍を離れた混合気(冷却された混合気)は、周囲の未冷却の混合気を冷却することにより周辺の混合気と同じ温度になる。
上記挙動を繰り返すことにより、燃焼室側壁やピストン3に熱を直接奪われないはずの燃焼室5の中心付近の混合気も含めて、燃焼室内のすべての混合気の温度は、やがてほぼ等しくなる。
このとき、内燃機関が比較的低い回転速度で運転されている場合など、燃焼室側壁またはピストン3で冷却された混合気による冷却作用が、燃焼室5の中心付近に到達するまでの時間的余裕が十分にある条件下においては、冷却作用が燃焼室5の中心付近の混合気にも十分に及ぶので、混合気の温度は燃焼室5の全体で均質化されやすい。
一方、内燃機関が比較的高い回転速度で運転されている場合など、燃焼室側壁またはピストン3で冷却された混合気による冷却作用が、燃焼室5の中心付近に到達するまでの時間的余裕が十分でない条件下においては、冷却作用が燃焼室5の中心付近の混合気に十分には及ばないので、燃焼室5の中心付近での混合気の温度が、その周辺の混合気の温度に比べて高温化しやすい。
たとえ内燃機関が比較的低い回転速度で運転されていても、燃焼負荷が高い場合であって、より多くの空気を圧縮する場合には、断熱圧縮作用で混合気の温度が上昇する速度が速くなるので、冷却作用が燃焼室5の中心付近の混合気に十分には及ばず、燃焼室5の中心付近の混合気の温度が、その周辺の混合気の温度と比べて高温化しやすい。
次に、図2を参照しながら、燃焼室5の中心付近の混合気の温度が高くなる過程について説明する。
図2は圧縮行程の進行にともなう燃焼室5内の混合気の温度分布の変化を示す説明図であり、図2(a)は吸気行程の終了時期の状態、図2(b)は圧縮行程の初期の状態、図2(c)は圧縮行程の進行期の状態、をそれぞれ示している。
図2(a)〜図2(c)において、上段側には吸気行程終了時期、圧縮初期および圧縮進行期での燃焼室内の混合気分布イメージが示され、下段側には燃焼室5の径方向の温度分布イメージが示されている。
また、図2(b)、図2(c)において、燃焼室5内の複数の矢印は熱の移動方向を示し、破線領域は、高温化した混合気を示している。
まず、図2(a)の吸気行程終了時期においては、温度が一様な新気(空気)および混合気が燃焼室5内に吸入されるので、燃焼室5内の空気および混合気の温度は、均一となっている。
次に、図2(b)の圧縮初期において、ピストン3による圧縮が開始されると、断熱圧縮作用によって燃焼室5内の混合気温度は一様に上昇する。また、これと同時に、混合気と燃焼室側壁およびピストン3との間の熱の移動が活発になる。
なお、吸気行程終了時期では混合気の温度が一様であったことから、燃焼室5の中心部での混合気間の熱の移動は活発化が遅れ(細線矢印参照)、燃焼室側壁およびピストン3の付近の混合気の温度が低下して温度差が生じ始めてから、徐々に活発化する。
このときの混合気間の熱の移動の活発化の遅れに起因して、燃焼室5の中心付近の混合気の温度は、その周辺の混合気の温度よりも高くなる。
続いて、図2(c)の圧縮進行期において、さらにピストン3による圧縮が進むと、燃焼室5の中心付近の混合気と周辺の混合気との温度差がより顕著になり、圧縮行程の比較的早い時期に、中心付近の混合気のみが自己着火温度(1点鎖線参照)に達して、混合気の燃焼が開始する。
図2(c)のように、燃焼室5の中心付近の混合気のみが、早い時期に高温化することにより、局所的に燃焼速度が上昇するので、ノッキングにともなう騒音が発生する可能性がある。
そこで、局所的に高温化状態にある燃焼室5の中心部分の混合気を効果的に冷却するために、燃料噴射することが有効である。
すなわち、比較的少量の燃料を、高温化している燃焼室5の中心部分に向けて噴射することにより、燃料の気化熱を利用して混合気を局所的に冷却することができる。
冷却用の燃料噴射は、噴射時期によって効果が異なり、たとえば進角側で噴射すると、一旦冷却された混合気が残りの圧縮行程で再度高温化するので、全体的に温度差が少ない高温の混合気になり、燃焼速度が上昇する。一方、遅角側で噴射すると、燃焼室5の中心以外の混合気が自己着火温度に達して燃焼が開始されても、中心付近の混合気温度が低温であることから、燃焼速度が抑えられることになる。
ただし、過度に進角側で噴射すると、燃焼速度の上昇によってノッキングを招くことになり、逆に、過度に遅角側で噴射すると、燃焼室5の中心部での混合気の温度低下によって失火を招くことになる。よって、実際に燃焼状態を検出した結果に基づいて、適正な時期に燃料を噴射する制御が必要となる。
そこで、燃焼状態を検出するために、燃焼によって変化する筒内圧力を検出する筒内圧力センサ18が燃焼室5に設置されており、圧力信号処理回路19は、筒内圧力信号に対しフィルタ回路などを通すことにより、ノッキングに対応した高周波成分強度を検出し、エンジン制御装置10に入力する。
これにより、エンジン制御装置10内の演算処理回路30(失火予測部35)は、圧力最大時期のサイクルごとの変動量を検出して失火を検出する。
なお、筒内圧力センサ18の検出情報に基づく燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrの具体的な抽出処理については、後述する。
また、燃焼状態の検出手段としては、筒内圧力センサ18を用いた直接的手段の他に、安価で容易な他の検出手段として、電極20およびイオン電流検出回路21を用いることもできる。
図3は圧縮自己着火内燃機関における筒内圧力(実線)およびイオン電流(1点鎖線)の出力パターンを示す説明図であり、横軸はクランク角度に対応し、縦軸は各々の検出強度に対応している。
イオン電流値は、燃焼室5内の燃焼反応過程で生成される燃焼中間生成物(正または負の電荷を帯びている)を、電極20およびイオン電流検出回路21を介して捕集することにより得られる。
図3から明らかなように、イオン電流値は、筒内圧力値と同様に、燃焼が活発となって燃焼室5の圧力が最大となる時期(圧縮上死点の直後)とほぼ同期して最大値となる。
よって、演算処理回路30内の燃焼状態検出部33において、イオン電流値が最大となる時期を検出することにより、燃焼が最も活発になる時期を検出することができる。
なお、燃焼が最も活発になる時期は、自己着火時期とも連動するので、言い換えると、イオン電流値が最大となる時期を検出することにより、自己着火時期を検出することができる。
すなわち、図1において、燃焼室5には、燃焼反応過程で発生するイオンを捕集するために、シリンダ4とは絶縁関係となるように電極20が挿入されており、イオン電流検出回路21は、イオン電流値を検出して演算処理回路30に入力する。
イオン電流値が最大となる時期(燃焼が最も活発となる時期)は、イオン電流検出回路21からのイオン電流値情報を受け取ったエンジン制御装置10内の燃焼状態検出部33(燃焼時期推定部)において検出される。
なお、ノッキングが発生すると、燃焼室5に空間的な密度分布の変動が生じて、イオン電流値にも筒内圧力値と同様の高周波成分が重畳されるので、ノッキング検出部34において、フィルタ回路などを介して高周波成分強度を計測することにより、ノッキングを検出することができる。
次に、図4を参照しながら、この発明の実施の形態1による制御動作について詳細に説明する。
図4はこの発明の実施の形態1による燃料噴射時期の進角補正および遅角補正の制御処理を示すフローチャートであり、演算処理回路30の処理手順を示している。
図4において、まず、圧縮自己着火燃焼制御が開始された場合、または、圧縮自己着火燃焼制御が継続されている場合には、回転センサ22の出力から現在の回転速度Neを検出する(ステップS101)。
また、エンジン制御装置10内の燃料噴射制御値算出部31によって決定された燃料噴射制御値Tfを抽出するか、または、燃料噴射制御値Tfにより決定する燃料噴射量Gfを算出する(ステップS102)。
このとき、燃料噴射制御値Tf(または、燃料噴射量Gf)から現在の燃焼負荷が推定可能なので、回転速度Neと燃焼負荷との組合せから、現在の燃焼運転条件を決定することができる。
続いて、燃焼運転条件判定部50は、回転速度Neおよび燃焼負荷から決定された現在の燃焼運転条件が、圧縮自己着火燃焼制御を許可する燃焼運転条件であるか否かを判定し(ステップS103)、許可する燃焼運転条件ではない(すなわち、NO)と判定されれば、図4の処理ルーチンを終了して、通常の火花点火燃焼制御への切替処理(図示せず)に移行する。
一方、ステップS103において、圧縮自己着火燃焼制御が許可される燃焼運転条件である(すなわち、YES)と判定されれば、圧縮上死点付近での燃料噴射に関する各種パラメータの抽出処理(後述するステップS104)に移行する。
なお、ステップS103の燃焼運転条件判定処理は、たとえば、回転速度Neと、燃焼負荷に比例する燃料噴射制御値Tf(または、燃料噴射量Gf)との組合せで決定する燃焼運転条件ごとに、あらかじめ圧縮自己着火燃焼制御の可否(「1」または「0」)をセットしたデータベースを参照することにより行われる。
すなわち、現在の燃焼運転条件に割り当てたメモリの1ビット情報が「1」であれば、圧縮自己着火燃焼制御を「許可」するものと判定し、1ビット情報が「0」であれば、圧縮自己着火燃焼制御が「不許可」であるものと判定する。
ステップS103において圧縮自己着火燃焼制御が許可された場合には、現時点の燃焼運転条件下の圧縮上死点付近での燃料噴射の、燃料噴射進角限界値Lfと、燃料噴射遅角限界値Lrと、燃料噴射時期Tbと、目標予反応時期Ctsとを、マップデータなどから抽出する(ステップS104)。
なお、マップデータは、後述するように、燃料の成分組成により変化するノッキングまたは失火の発生状況に応じて、ノッキングおよび失火が発生しないように適宜修正されるが、基本となるマップデータは、内燃機関の型式ごとに、あらかじめ設定されているものとする。
また、ノッキングまたは失火の発生は、燃料噴射制御以外にも、燃焼室5の形状や冷却特性の影響を強く受けるので、標準的な成分組成の燃料を用いた該当する型式の内燃機関の試運転において、燃焼運転条件ごとに燃料噴射時期を変更させ、実際にノッキングまたは失火が発生する燃料噴射時期を抽出することにより、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrのそれぞれをマップデータとして準備する。
同様に、現時点の燃焼運転条件下での燃料噴射時期Tbおよび目標予反応時期Ctsをマップデータなどから抽出するが、燃料噴射時期Tbは、目標自己着火時期(図8内の破線参照)が得られる燃料噴射時期であり、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrと同様に、標準的な成分組成の燃料を用いた該当する型式の内燃機関の試運転において、燃焼運転条件ごとにあらかじめ抽出される。
一方、目標予反応時期Ctsは、各燃焼運転条件下で燃料噴射時期Tbを抽出した際の予反応時期であり、燃料噴射時期Tbとは別のマップデータとして、あらかじめ抽出しておくものとする。
次に、ステップS104に続いて、吸気行程の比較的早い時期に1回目の燃料噴射を行い、予反応時期推定部32により予反応時期Ctを抽出する(ステップS105)。
このとき、予反応時期推定部32は、予反応期間において筒内圧力値が最大となるクランク角度を、予反応時期Ctとして検出する。なお、予反応による筒内圧力の変化が検出可能な範囲であれば、燃料噴射量Gfについては特に限定しない。
続いて、予反応時期Ctと目標予反応時期Ctsとの差分の絶対値が、あらかじめ設定された許容値以上であるか否かを判定し(ステップS106)、|Ct−Cts|≧許容値(すなわち、YES)と判定されれば、以下の式(1)のように、圧縮上死点付近での燃料噴射時期Tbを補正する(ステップS107)。
Tb=Tb−α(Ct−Cts) ・・・(1)
ただし、式(1)において、左辺のTbは補正後の燃料噴射時期であり、右辺のTbは補正前の標準的な燃料噴射時期である。また、αはあらかじめ設定された補正量調整係数である。
一方、ステップS106において、|Ct−Cts|<許容値(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS107は実行されないので、燃料噴射時期Tbは補正されず、補正前の燃料噴射時期Tbがそのまま制御値として用いられる。
次に、燃料噴射時期Tbが燃料噴射進角限界値Lfよりも進角しているか否かを判定し(ステップS108)、燃料噴射時期Tbが燃料噴射進角限界値Lfよりも進角している(すなわち、YES)と判定されれば、燃料噴射時期Tbとして燃料噴射進角限界値Lfを設定し、燃料噴射時期Tbを更新する(ステップS109)。
一方、ステップS108において、燃料噴射時期Tbが燃料噴射進角限界値Lfよりも進角してない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS109は実行されず、燃料噴射時期Tbは更新されない。
なお、ステップS108、S109は、ノッキングの発生を防止するための制御処理である。
次に、燃料噴射時期Tbが燃料噴射遅角限界値Lrよりも遅角しているか否かを判定し(ステップS110)、燃料噴射時期Tbが燃料噴射遅角限界値Lrよりも遅角している(すなわち、YES)と判定されれば、燃料噴射時期Tbとして燃料噴射遅角限界値Lrを設定し、燃料噴射時期Tbを更新する(ステップS111)。
一方、ステップS110において、燃料噴射時期Tbが燃料噴射遅角限界値Lrよりも遅角していない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS111は実行されず、燃料噴射時期Tbは更新されない。
なお、ステップS110、S111は、失火の発生を防止するための制御処理である。
以下のステップS112〜S117は、ノッキングの発生状況に応じた燃料噴射進角限界値Lfの変更処理と、燃焼不安定状況に応じた燃料噴射遅角限界値Lrおよび圧縮自己着火燃焼制御許可範囲の変更処理である。
ステップS111に続いて、まず、エンジン制御装置10内において、ノッキング検出部34がノッキングの発生を検出したか否かを判定し(ステップS112)、ノッキングを検出した(すなわち、YES)と判定されれば、燃料噴射時期Tbを一定量だけ遅角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射進角限界値Lfとして、燃料噴射進角限界値Lfを更新設定する(ステップS113)。
一方、ステップS112において、ノッキング検出部34がノッキングを検出していない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS113は実行されないので、燃料噴射時期Tbは遅角補正されず、燃料噴射進角限界値Lfも更新されない。
なお、エンジン制御装置10内のノッキング検出部34は、ステップS112のノッキング判定処理において、筒内圧力センサ18から得られる固有周波数の圧力信号強度が一定値以上の場合に、ノッキング発生状態であると判定することができる。
または、電極20に高電位を印加することにより取得されるイオン電流に含まれる固有周波数の電流強度を、イオン電流検出回路21を介して検出してもよく、筒内圧力信号に基づく処理と同様にノッキングの有無を判定することができる。
ノッキングに対応した固有周波数は、燃焼室5の直径およびピストン3の形状などに応じて一義的に決定するので、圧力信号処理回路19内にあらかじめ所定周波数のバンドパスフィルタ回路を設けることにより、容易に固有周波数の信号強度を検出し、その検出強度に基づくノッキングの有無を判定することができる。
さらに、ステップS113での燃料噴射時期Tbの遅角補正に用いられる一定量とは、たとえばクランク角度で2度程度である。
次に、ステップS113に続いて、エンジン制御装置10内の燃焼時期サイクル変動検出部36が許容値以上の変動を検出したか否かを判定し(ステップS114)、許容値以上の変動を検出した(すなわち、YES)と判定されれば、燃料噴射時期Tbを一定量だけ進角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射遅角限界値Lrとして、燃料噴射遅角限界値Lrを更新設定する(ステップS115)。
一方、ステップS114において、燃焼時期サイクル変動検出部36が許容値以上の変動を検出していない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS115は実行されないので、燃料噴射時期Tbは進角補正されず、燃料噴射遅角限界値Lrも更新されない。
なお、ステップS115における進角補正の一定量とは、たとえばクランク角度で2度程度である。
なお、ステップS114における燃焼時期サイクル変動検出処理は、失火発生条件に近い燃焼運転条件においては、筒内圧力またはイオン電流の検出値のサイクルごとの最大位置の変動値Vtが許容値以上に大きくなることに着目したものである。
図5は筒内圧力またはイオン電流の検出値のサイクル変動例を示す説明図であり、横軸はクランク角度に対応し、縦軸は検出強度に対応している。
図5においては、4回の連続サイクルでの筒内圧力またはイオン電流の検出強度の最大位置のサイクル変動値Vt(最進角値と最遅角値との差分)が示されている。
図5内のサイクル変動値Vtが許容値以上を示す場合に、失火発生条件を満たしたことを判定することになる。
すなわち、燃焼時期サイクル変動検出部36は、回転速度Neおよび燃焼負荷がほぼ一定の条件下で、連続する数サイクル〜数10サイクルの各々で検出された筒内圧力値またはイオン電流値が最大となるクランク角度の最進角値と最遅角値との差分を、サイクル変動値Vtとして抽出し、サイクル変動値Vtが所定の許容値以上である場合に、失火限界を超えているものと判定する。
以上の処理ルーチン(ステップS101〜S105)により、燃料性状によらずノッキングおよび失火を確実に防止することができる。
ただし、ステップS113で補正された燃料噴射進角限界値Lfと、ステップS115で補正された燃料噴射遅角限界値Lrとが、近接したクランク角度である場合、または燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとの時間差が小さい場合には、実際の燃料噴射時期が、制御上の変動によって燃料噴射進角限界値Lfまたは燃料噴射遅角限界値Lrを越えて、燃焼状態が不安定化する可能性がある。
そこで、圧縮自己着火燃焼を安定させるための制御処理として、さらに、以下のステップS116、S117が実行される。
まず、ステップS115に続いて、燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとのクランク角度差または時間差を求めて、クランク角度差または時間差が許容値以下であるか否かを判定する(ステップS116)。
ステップS116において、クランク角度差または時間差が許容値を超えている(すなわち、NO)と判定されれば、直ちにステップ101に戻り、上記処理ステップS101〜S116を繰り返し実行する。
一方、ステップS116において、クランク角度差または時間差が許容値以下である(すなわち、YES)と判定されれば、現在の回転速度Neおよび燃焼負荷に基づき決定する燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する設定を行い(ステップS117)、ステップS101に戻る。
ステップS117の禁止設定により、燃料噴射時期の不安定化を回避した安定的な圧縮自己着火燃焼が得られる。
なお、ステップS116の判定基準となる許容値は、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrの最小の変更幅に応じて異なることから、一義的には決定できないが、たとえば、クランク角度で5度程度、時間差で0.5msec程度に設定され得る。
また、ステップS117においては、現在の燃焼運転条件のみの圧縮自己着火燃焼制御の禁止を設定したが、現在よりも高い回転速度および燃焼負荷の燃焼運転条件に対する圧縮自己着火燃焼の禁止を設定してもよい。
一般に、圧縮自己着火燃焼においては、回転速度Neが高いほど、また、燃焼負荷が高いほど、燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとが近接する傾向にある。
なぜなら、主に回転速度Neまたは燃焼負荷が高いほど混合気が高温化しやすく、ノッキングをともなう燃焼が発生しやすいので、これを回避するために燃料噴射進角限界値Lfがより遅角化補正されるからである。
よって、ステップS117において、現在よりも高い回転速度かつ高い燃焼負荷となるすべての燃焼運転条件に対して、圧縮自己着火燃焼の禁止を設定してもよい。
これにより、燃費または乗り心地の悪化要因となる、運転状態の変化に起因した圧縮自己着火燃焼制御と火花点火燃焼制御との頻繁な切替えを回避することができる。
以上の一連の制御処理を行うことにより、燃料性状の違いによらず、ノッキングや失火を確実に防止することができるとともに、圧縮自己着火燃焼制御と火花点火燃焼制御との頻繁な切替えによる燃費低下を防止することができる。
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図4)に係る圧縮自己着火内燃機関の制御装置は、内燃機関の燃焼室5に向けて高圧の燃料を噴射する燃料噴射弁8と、燃料噴射弁8を駆動制御して1回の燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う燃料噴射制御装置11と、燃焼室5の内部での燃焼状態を検出するための燃焼状態検出部33を有する演算処理回路30とを備え、燃料噴射弁8から燃焼室5への燃料噴射の一部を内燃機関の圧縮行程で行うように構成されている。
燃焼状態検出部33は、筒内圧力センサ18およびイオン電流検出回路21の少なくとも一方からなるセンサ手段と、センサ手段からの検出信号に含まれる特定周波数成分の信号強度からノッキングの発生有無を判定するノッキング検出部34と、検出信号の出力レベルが1回の燃焼サイクル中で最大となるクランク角度の複数回の連続サイクルにおける変動幅から失火を予測する失火予測部35と、を備えている。
演算処理回路30は、ノッキング検出部34がノッキングの発生を検出した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を遅角補正し、遅角補正した燃料噴射時期を燃料噴射進角限界値Lfとして更新設定するとともに、以降は燃料噴射進角限界値Lfよりも進角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止する。
また、演算処理回路30は、失火予測部35が失火を予測した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を進角補正し、進角補正した燃料噴射時期を燃料噴射遅角限界値Lrとして更新設定するとともに、以降は燃料噴射遅角限界値Lrよりも遅角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止する。
さらに、演算処理回路30は、燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとのクランク角度差または時間差が所定の許容値以下の場合には、当該時点の燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する。
または、演算処理回路30は、燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとのクランク角度差または時間差が所定の許容値以下の場合には、当該時点の燃焼運転条件よりも高い回転速度および燃焼負荷となる燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する。
すなわち、燃料噴射進角限界値Lfよりも進角条件での燃料の噴射制御を禁止し、燃焼運転条件ごとに燃料噴射遅角限界値Lrよりも遅角条件での燃料の噴射制御を禁止するとともに、燃料噴射進角限界値Lfと燃料噴射遅角限界値Lrとの差が小さい場合には、当該時点の燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御または燃焼運転条件よりも高い燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する。
これにより、燃料の成分組成の違いによって発生するノッキングや失火を防止して、安定した制御状態を得ることができる。
また、燃費または乗り心地の悪化要因となる、運転状態の変化に起因した圧縮自己着火燃焼制御と火花点火燃焼制御との頻繁な切替えを回避することができる。
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図4)では、圧縮自己着火燃焼制御の禁止解除条件について考慮しなかったが、図6に示すように、燃料タンクへの燃料補給から一定時間経過後に、各限界値Lf、Lrを初期化するとともに圧縮自己着火燃焼制御の禁止を解除することにより、圧縮自己着火燃焼制御が可能な領域を拡大してもよい。
前述の通り、圧縮自己着火内燃機関を自動車の駆動装置として用いる場合の燃料は、一般的に市販ガソリンであり、市販ガソリンは成分組成がある程度管理されているものの、多種類の炭化水素系物質の混合物であることから、季節、原油採取地域および製油所などの違いによって、成分組成の違いが存在する。したがって、このような燃料性状の違いに起因して、ノッキングをともなう燃焼を発生させる混合気の温度条件、および、失火を発生させる条件が異なってくる。
前述の実施の形態1による制御(図4内のステップS116、S117)では、ノッキングまたは失火が発生しやすい燃料が使用された場合に、圧縮自己着火燃焼制御を禁止する燃焼運転条件が拡大されるので、ノッキングおよび失火が発生し難い燃料に切替えられた場合に、本来であれば圧縮自己着火燃焼が可能な運転範囲であっても、制御禁止状態が継続されて実質的に燃費を低下させてしまう可能性がある。
そこで、図6のように、燃料噴射遅角限界値Lrおよび燃料噴射進角限界値Lfの設定値および圧縮自己着火燃焼制御の禁止設定を初期化する処理ルーチンを加えることが望ましい。
以下、図1とともに、図6を参照しながら、この発明の実施の形態2による制御動作について説明する。図6はこの発明の実施の形態2による燃料補給時の制御動作を示すフローチャートであり、前述(図4)の処理と平行に実行される処理ルーチンである。
図6において、まず、燃料補給の有無を検出することにより、燃料タンク内に燃料が補給されたか否かを判定し(ステップS201)、燃料補給が行われていない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS201に戻って燃料が補給されるまで待機する。
なお、燃料補給の検出方法としては種々考えられるが、たとえば燃料タンク内に設けられたフロート式液面検出手段を用いて液面上昇を検出する方法がある。
一方、ステップS201において、燃料が補給された(すなわち、YES)と判定されれば、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrの設定値および圧縮自己着火燃焼制御の禁止設定の初期化する処理へと向かうが、燃料タンクに燃料が補給された直後から燃焼室5内に供給される燃料の状態が変化すわけではないので、一定時間の処理待ちが必要となる。
そこで、燃料補給後に残留燃料と補給燃料とが十分に混合して状態変化した燃料が、燃料供給管9を通過して実際に燃料噴射弁8および燃焼室5内に供給されるまでの一定時間を推定演算し(ステップS202)、燃料補給後に一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS203)。
ステップS203において、一定時間が経過していない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップS203に戻って一定時間の経過を待機する。
一方、ステップS203において、一定時間が経過した(すなわち、YES)と判定されれば、その時点で、圧縮自己着火燃焼制御の禁止設定を初期化するとともに(ステップS204)、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrの設定値を初期化して(ステップS205)、ステップS201に戻る。
このとき、ステップS205における燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrの各初期化値としては、圧縮自己着火燃焼制御が禁止され難いように、ノッキングおよび失火が最も発生し難い燃料を想定した所定値を用いる。
なお、ステップS202においては、以下の条件を考慮して一定時間の推定演算が行われる。
まず、燃料補給開始時点では、燃料タンク内および燃料供給管9内に燃料補給前の燃料が残留しているので、燃料タンク内で燃料補給前後の燃料が十分混合する時間と、十分混合した燃料が燃料供給管9内を完全に満たすまでの時間を求める必要がある。
ここで、燃料タンク内の燃料の混合時間としては、残留燃料量と補給燃料量との割合に比例した時間を、マップ値としてあらかじめ設定しておく。
たとえば、残留燃料量に対して5倍以上の量の新規燃料を補給した場合には、燃料補給にともなう燃料タンク内の強い攪拌が得られるので、燃料補給後の車両の走行や燃料循環の有無によらず、補給直後に混合完了と判定することができる。
一方、新規燃料の補給量が少なく、たとえば残留燃料量に対して1〜2倍程度の場合には、補給後の車両走行による振動や燃料循環によって混合させる必要があるので、十分に長い時間経過を考慮する必要がある。
また、燃料タンク内の燃料が十分混合したと推定される時間の経過後に、混合燃料が燃料供給管9内を完全に満たすまでの時間は、燃料供給管9の容積および循環流量と、燃料噴射弁8から燃焼室5内への燃料噴射量との関係から、推定演算により設定することができる。
以上のように、この発明の実施の形態2(図1、図6)による演算処理回路30は、燃料噴射弁8に燃料を供給する燃料タンクへの燃料補給を検出した時点から一定時間の燃焼運転後に、内燃機関の回転速度Neおよび燃焼負荷の組み合わせで区別される燃焼運転条件ごとに、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrを初期値に戻すとともに、圧縮自己着火燃焼制御の禁止を解除する。
このように、図6の制御処理を加えることにより、燃料補給の結果として、補給前よりも振動をともなう燃焼および失火が発生し難い燃料に変更された場合に、圧縮自己着火燃焼を可能とする燃焼運転条件が拡大されるので、広い燃焼運転条件範囲で高い熱効率が得られる圧縮自己着火燃焼が可能となり、燃費が向上する効果を得ることができる。
すなわち、給油などで燃料の成分組成が変化した場合に、新規燃料に即した圧縮自己着火燃焼制御が可能となり、圧縮自己着火燃焼の適用範囲を新規燃料に対して最大限に拡大することができるので、高い燃費を維持することができる。
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図6)では、燃料タンクへの燃料補給から一定時間経過後に各限界値Lf、Lrを初期化(ステップS205)したが、図6内のステップS205に代えて、一定時間経過後の所定期間においては、前述(図6)の処理ルーチン内の一部を変更した図7の処理ルーチンを実行することにより、燃料補給による燃料性状変化時に高い燃費を得るように構成してもよい。
前述の実施の形態2(図6)の場合、ステップS205において、燃料噴射進角限界値Lfおよび燃料噴射遅角限界値Lrを、補給燃料の性状とは無関係に、ノッキングおよび失火が最も発生しない想定下で設定した値に初期化しているので、前回燃料と比べて性状変化が少ない場合に、ノッキングまたは失火を発生させてしまう可能性があるが、この発明の実施の形態3によれば、上記不具合を回避することができる。
図7はこの発明の実施の形態3による燃料補給時の制御動作を示すフローチャートである。なお、図7の処理ルーチンは、図6からステップS205を削除した処理ルーチンの実行後に所定期間にわたって実行される。
以下、図1とともに、図7を参照しながら、この発明の実施の形態3による動作について説明する。
図7においては、前述(図4参照)と同様の処理については、前述と同一符号が付されており、図6内のステップS205に置き換わる処理(ステップS313、S315)が追加された点が図4と異なる。
この場合、図6内のステップS201〜S204において、燃料タンクに補給された燃料が十分に混合されて燃料供給管9内に完全に満たされたものと推定された後(一定時間経過後)からの所定期間中は、図4の処理ルーチンに代えて、図7の処理ルーチンが実行され、さらに所定期間の経過後は、図4の処理ルーチンに復帰する。
燃料タンクへの補給燃料が十分に混合されて燃料供給管9内を完全に満たした後の所定期間中において、エンジン制御装置10内の演算処理回路30は、まず、前述のステップS101〜S111を実行し、続くステップS113において、ノッキング検出部34がノッキング発生を検出した(すなわち、YES)と判定されれば、前述と同様に、燃料噴射時期Tbを一定量遅角補正して、遅角補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射進角限界値Lfとして更新設定する(ステップS113)。
一方、ステップS112において、ノッキングが検出されない(すなわち、NO)と判定されれば、燃料噴射時期Tbを一定量進角補正して、進角補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射進角限界値Lfとして更新設定する(ステップS313)。
なお、ステップS313における進角補正用の一定量も、たとえばクランク角度で2度程度である。
次に、ステップS114において、燃焼時期サイクル変動検出部36が許容値以上の変動を検出した(すなわち、YES)と判定されれば、前述と同様に、燃料噴射時期Tbを一定量進角補正して進角補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射遅角限界値Lrとして更新設定し(ステップS115)、前述のステップS116に進む。
一方、ステップS114において、許容値以上の変動が検出されない(すなわち、NO)と判定されれば、燃料噴射時期Tbを一定量遅角補正して、遅角補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射遅角限界値Lrとして更新設定し(ステップS315)、前述と同様のステップS116に進む。
なお、ステップS315における遅角補正用の一定量も、たとえばクランク角度で2度程度である。
これにより、ノッキングおよび失火が発生し難い燃料に変更された場合に、燃料噴射進角限界値Lfが段階的に進角側に更新され、燃料噴射遅角限界値Lrが遅角側に段階的に更新される。
以上のように、この発明の実施の形態3(図1、図7)による演算処理回路30は、燃料噴射弁8に燃料を供給する燃料タンクへの燃料補給を検出した時点から一定時間の燃焼運転後からの所定期間中は、ノッキング検出部34がノッキングの発生を検出しなかった場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期Tbを進角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期を燃料噴射進角限界値として更新設定し、失火予測部35が失火を予測しなかった場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期Tbを遅角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期Tbを燃料噴射遅角限界値Lrとして更新設定する。
これにより、燃料補給前と比べて燃料補給後の燃料が、ノッキングおよび失火を発生しやすい場合であっても、逆にノッキングおよび失火を発生し難い場合であっても、安定した燃焼制御状態を維持することができる。
また、所定期間の経過後は、図4の処理ルーチンに復帰するので、各限界値Lf、Lrの更新頻度を抑制して制御を安定化することができる。
1 クランク軸、2 コネクティングロッド、3 ピストン、4 シリンダ、5 燃焼室、6 吸気弁、7 吸気管、8 燃料噴射弁、9 燃料供給管、10 エンジン制御装置、11 燃料噴射制御装置、12 排気弁、13 タイミングベルト、14 吸気弁駆動機構、15 排気弁駆動機構、16 吸気弁駆動制御装置、17 排気弁駆動制御装置、18 筒内圧力センサ、19 圧力信号処理回路、20 電極、21 イオン電流検出回路、22 回転センサ、30 演算処理回路、31 燃料噴射制御値算出部、32 予反応時期推定部、33 燃焼状態検出部、34 ノッキング検出部、35 失火予測部、36 燃焼時期サイクル変動検出部、40 データベース、50 燃焼運転条件判定部、Ct 予反応時期、Cts 目標予反応時期、Lf 燃料噴射進角限界値、Lr 燃料噴射遅角限界値、Tb 燃料噴射時期、Tf 燃料噴射制御値。

Claims (4)

  1. 内燃機関の燃焼室に向けて高圧の燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁を駆動制御して1回の燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う燃料噴射制御装置と、
    前記燃焼室の内部での燃焼状態を検出するための燃焼状態検出部を有する演算処理回路と、を備え、
    前記燃料噴射弁から前記燃焼室への燃料噴射の一部を前記内燃機関の圧縮行程で行うように構成された圧縮自己着火内燃機関の制御装置であって、
    前記燃焼状態検出部は、
    筒内圧力センサおよびイオン電流検出回路の少なくとも一方からなるセンサ手段と、
    前記センサ手段からの検出信号に含まれる特定周波数成分の信号強度からノッキングの発生有無を判定するノッキング検出部と、
    前記検出信号の出力レベルが1回の燃焼サイクル中で最大となるクランク角度の複数回の連続サイクルにおける変動幅から失火を予測する失火予測部と、を含み、
    前記演算処理回路は、
    前記内燃機関の回転速度および燃焼負荷に基づいて現在の燃焼運転条件を決定するとともに、
    前記ノッキング検出部がノッキングの発生を検出した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を遅角補正し、遅角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射進角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射進角限界値よりも進角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、
    前記失火予測部が失火を予測した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を進角補正し、進角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射遅角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射遅角限界値よりも遅角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、
    前記燃料噴射進角限界値と前記燃料噴射遅角限界値とのクランク角度差または時間差が所定の許容値以下の場合には、当該時点の燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する、
    圧縮自己着火内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の燃焼室に向けて高圧の燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁を駆動制御して1回の燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う燃料噴射制御装置と、
    前記燃焼室の内部での燃焼状態を検出するための燃焼状態検出部を有する演算処理回路と、を備え、
    前記燃料噴射弁から前記燃焼室への燃料噴射の一部を前記内燃機関の圧縮行程で行うように構成された圧縮自己着火内燃機関の制御装置であって、
    前記燃焼状態検出部は、
    筒内圧力センサおよびイオン電流検出回路の少なくとも一方からなるセンサ手段と、
    前記センサ手段からの検出信号に含まれる特定周波数成分の信号強度からノッキングの発生有無を判定するノッキング検出部と、
    前記検出信号の出力レベルが1回の燃焼サイクル中で最大となるクランク角度の複数回の連続サイクルにおける変動幅から失火を予測する失火予測部と、を含み、
    前記演算処理回路は、
    前記内燃機関の回転速度および燃焼負荷に基づいて現在の燃焼運転条件を決定するとともに、
    前記ノッキング検出部がノッキングの発生を検出した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を遅角補正し、遅角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射進角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射進角限界値よりも進角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、
    前記失火予測部が失火を予測した場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を進角補正し、進角補正した燃料噴射時期を当該燃焼運転条件での燃料噴射遅角限界値として更新設定するとともに、それ以降は当該燃焼運転条件での燃焼運転において前記燃料噴射遅角限界値よりも遅角側での当該サイクルの最終の燃料噴射を禁止し、
    前記燃料噴射進角限界値と前記燃料噴射遅角限界値とのクランク角度差または時間差が所定の許容値以下の場合には、当該時点の燃焼運転条件よりも高い回転速度および燃焼負荷となる燃焼運転条件での圧縮自己着火燃焼制御を禁止する、
    圧縮自己着火内燃機関の制御装置。
  3. 前記演算処理回路は、
    前記燃料噴射弁に燃料を供給する燃料タンクへの燃料補給を検出した時点から一定時間の燃焼運転後に、前記内燃機関の回転速度および燃焼負荷の組み合わせで区別される燃焼運転条件ごとに、前記燃料噴射進角限界値および前記燃料噴射遅角限界値を初期値に戻すとともに、圧縮自己着火燃焼制御の禁止を解除する請求項または請求項に記載の圧縮自己着火内燃機関の制御装置。
  4. 前記演算処理回路は、
    前記燃料噴射弁に燃料を供給する燃料タンクへの燃料補給を検出した時点から一定時間の燃焼運転後からの所定期間中は、
    前記ノッキング検出部がノッキングの発生を検出しなかった場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を進角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期を前記燃料噴射進角限界値として更新設定し、
    前記失火予測部が失火を予測しなかった場合には、当該時点の燃焼運転条件での最終の燃料噴射時期を遅角補正するとともに、補正後の燃料噴射時期を前記燃料噴射遅角限界値として更新設定する請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の圧縮自己着火内燃機関の制御装置。
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