JP2012002088A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの圧縮自着火燃焼制御中のノッキングを効果的に抑制する。
【解決手段】排気バルブ17と吸気バルブ16が両方とも閉弁した状態になるNVO(負のバルブオーバーラップ)期間中に筒内に燃料を噴射して圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を実行し、この圧縮自着火燃焼制御中にノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行する。その際、圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)が所定の閾値よりも小さい場合には、NVO期間中の燃料噴射量が少ないと判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、圧力上昇率が閾値以上の場合には、NVO期間中の燃料噴射量が多いと判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲(ノッキングがほとんど発生しない範囲)に制御する。
【選択図】図1
【解決手段】排気バルブ17と吸気バルブ16が両方とも閉弁した状態になるNVO(負のバルブオーバーラップ)期間中に筒内に燃料を噴射して圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を実行し、この圧縮自着火燃焼制御中にノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行する。その際、圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)が所定の閾値よりも小さい場合には、NVO期間中の燃料噴射量が少ないと判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、圧力上昇率が閾値以上の場合には、NVO期間中の燃料噴射量が多いと判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲(ノッキングがほとんど発生しない範囲)に制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の負のバルブオーバーラップ期間中に筒内に燃料を噴射して圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる機能を備えた内燃機関の制御装置に関する発明である。
内燃機関の低燃費化やNOx排出量低減等を目的として、例えば、特許文献1(特開2001−207888号公報)に記載されているように、内燃機関の排気行程後半に排気バルブと吸気バルブが両方とも閉弁した状態になる負のバルブオーバーラップ期間を設け、この負のバルブオーバーラップ期間中に筒内に燃料を噴射すると共に、吸気行程又は圧縮行程で2回目の燃料噴射を行って、圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を行うようにしたものがある。更に、この特許文献1では、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングを検出した場合に、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射時期を遅角してノッキングを抑制することが提案されている。
圧縮自着火燃焼制御では、負のバルブオーバーラップ期間中に筒内に燃料を噴射することで、燃料を自着火し易い状態に改質して、安定した圧縮自着火燃焼を実現するようにしているが、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射量が何らかの要因で変動すると、ノッキングが発生することがある。その際、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いと、急峻な燃焼となってノッキングが発生し易くなり、一方、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないと、緩慢な燃焼となって、その燃焼後期にノッキングが発生し易くなる。
しかし、上記特許文献1の技術では、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングを検出した場合に負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射時期を遅角するため、例えば、負のバルブオーバーラップ期間中の燃料噴射量が少なくて緩慢な燃焼となってノッキングが発生しているような状況では、燃料噴射時期の遅角により更に燃焼状態が悪化して、ノッキングの発生を長期化させたり、ノッキングの強度が増大する可能性があり、内燃機関の損傷を招いたり、運転者に不快感を与える可能性がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、圧縮自着火燃焼制御中のノッキングを効果的に抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の少なくとも排気行程後半に排気バルブと吸気バルブが両方とも閉弁した状態になる負のバルブオーバーラップ(以下「NVO」と表記する)期間中に筒内に燃料を噴射して圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を実行する燃焼制御手段を備えた内燃機関の制御装置において、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングの有無を判定するノック判定手段を備え、燃焼制御手段は、圧縮自着火燃焼制御中にノック判定手段によりノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行するようにしたものである。
この構成では、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングが検出されたときに、NVO期間中(負のバルブオーバーラップ期間中)の燃料噴射量を適正範囲(ノッキングがほとんど発生しない範囲)に補正するノック抑制制御を実行することで、圧縮自着火燃焼制御中のノッキングを効果的に抑制することができる。
例えば、図2及び図3に示すように、圧縮自着火燃焼制御中は、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いと、急峻な燃焼となって燃焼時の筒内圧力の上昇率が大きくなり、最大筒内圧付近でノッキングによる圧力振動が発生し易くなる。一方、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないと、緩慢な燃焼となって燃焼時の筒内圧力の上昇率が小さくなるが、燃焼後期にノッキングによる圧力振動が発生し易くなる(これは緩慢な初期燃焼により未燃状態で長時間存在した混合気の自着火による現象と考えられる)。
この際、NVO期間中の燃料噴射量によって燃焼状態が変化して燃焼時の筒内圧力の上昇率が変化するため、燃焼時の筒内圧力の上昇率は、燃焼状態やNVO期間中の燃料噴射量を判定するパラメータとなる。
そこで、請求項2のように、圧縮自着火燃焼制御中に燃焼時の筒内圧力の上昇率(以下「圧力上昇率」という)を算出する圧力上昇率算出手段を備え、ノック抑制制御の際に、圧力上昇率算出手段で算出した圧力上昇率が所定の閾値よりも小さい場合にNVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、圧力上昇率が閾値以上の場合にNVO期間中の燃料噴射量を減量補正するようにしても良い。
つまり、ノック抑制制御の際に、圧力上昇率が閾値よりも小さい場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないため、緩慢な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。一方、圧力上昇率が閾値以上の場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いため、急峻な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。このようにすれば、圧力上昇率に応じてNVO期間中の燃料噴射量を速やかに適正範囲に制御することができる。
また、請求項3のように、ノック抑制制御の際に、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正し、該減量補正を行ってもノッキングを抑制できない場合には、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正するようにしても良い。
つまり、ノック抑制制御の際に、まず、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多い(つまり急峻な燃焼となってノッキングが発生している)と仮定して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正する。この減量補正によりノッキングが抑制されれば、仮定が正しかった(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多かった)と判断して、そのままNVO期間中の燃料噴射量を減量補正した状態に維持することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正してもノッキングを抑制できない場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない)と判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。
或は、請求項4のように、ノック抑制制御の際に、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、該増量補正を行ってもノッキングを抑制できない場合には、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正するようにしても良い。
つまり、ノック抑制制御の際に、まず、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない(つまり緩慢な燃焼となってノッキングが発生している)と仮定して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正する。この増量補正によりノッキングが抑制されれば、仮定が正しかった(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少なかった)と判断して、そのままNVO期間中の燃料噴射量を増量補正した状態に維持することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正してもノッキングを抑制できない場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多い)と判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御することができる。
請求項3,4のいずれの場合も、圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)を求める必要が無いため、筒内圧力を検出するセンサを省略することができ、低コスト化の要求を満たすことができる。
また、請求項5のように、ノック抑制制御を実行してもノッキングを抑制できない場合には、圧縮自着火燃焼制御を停止して、点火プラグの火花放電により点火して混合気を燃焼させる火花点火燃焼制御に切り替えるようにしても良い。
つまり、ノック抑制制御を実行してもノッキングを抑制できない場合には、圧縮自着火燃焼制御のままではノッキングを抑制できないと判断して、圧縮自着火燃焼制御を停止して、火花点火燃焼制御に切り替えてノッキングを抑制する。このようにすれば、ノッキングを確実に回避することができる。
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システムの概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11には、吸気ポート12に向けて燃料を噴射する吸気ポート噴射用の燃料噴射弁13が各気筒毎に取り付けられていると共に、筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁14が各気筒毎に取り付けられている。更に、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ15が取り付けられている。
まず、図1に基づいてエンジン制御システムの概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11には、吸気ポート12に向けて燃料を噴射する吸気ポート噴射用の燃料噴射弁13が各気筒毎に取り付けられていると共に、筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用の燃料噴射弁14が各気筒毎に取り付けられている。更に、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ15が取り付けられている。
また、エンジン11には、吸気バルブ16のバルブタイミング(開閉タイミング)を変化させる吸気側可変バルブタイミング装置18と、排気バルブ17のバルブタイミングを変化させる排気側可変バルブタイミング装置19とが設けられている。
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ(図示せず)や、ノッキング振動を検出するノックセンサ20(振動加速度センサ)が取り付けられている。また、エンジン11のクランク軸21の外周側には、クランク軸21が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ22が取り付けられ、このクランク角センサ22の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
更に、エンジン11には、各気筒毎(又は特定の気筒のみ)に筒内圧力を検出する筒内圧力センサ23が設けられている。この筒内圧力センサ23は、点火プラグ15と一体化したタイプのものを用いても良いし、点火プラグ15とは別体のセンサ部を燃焼室内に臨ませるように取り付けるタイプのものを用いても良い。
これら各種センサの出力は、電子制御回路(以下「ECU」と表記する)24に入力される。このECU24は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU24は、エンジン運転状態に応じた要求燃料噴射量等に基づいて各燃料噴射弁13,14の噴射パルスを算出し、EDU25により各燃料噴射弁13,14の噴射パルスに基づいて各燃料噴射弁13,14に駆動電流を出力する。
また、ECU24は、後述する図4及び図5の燃焼制御ルーチンを実行することで、エンジン運転領域が所定の圧縮自着火燃焼領域のときには、圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を行い、エンジン運転領域が所定の火花点火燃焼領域のときには、点火プラグ15の火花放電により点火して混合気を燃焼させる火花点火燃焼制御を行う。
圧縮自着火燃焼制御では、まず、少なくとも排気行程後半(例えば排気行程後半から吸気行程前半)に排気バルブ17と吸気バルブ16が両方とも閉弁した状態になる負のバルブオーバーラップ(以下「NVO」と表記する)期間を設けるように吸気側及び排気側の可変バルブタイミング装置18,19を制御する。このNVO期間は、筒内に残留した高温の燃焼ガスが排気行程後半のピストン26の上昇により圧縮されるため、筒内が高温且つ高圧の状態となる。
そして、このNVO期間中に筒内噴射用の燃料噴射弁14により筒内に燃料を噴射する。NVO期間中に筒内に噴射された燃料は、筒内で高温且つ高圧に晒されることで、燃焼の予段階の反応を開始して自着火し易い状態に改質される。
この後、吸気行程で吸気ポート噴射用の燃料噴射弁13又は筒内噴射用の燃料噴射弁14により燃料を噴射する。或は、圧縮行程で筒内噴射用の燃料噴射弁14により燃料を噴射する。この吸気行程又は圧縮行程で噴射された燃料と、改質された燃料(NVO期間中に噴射された燃料)によって筒内に混合気が形成され、その後、圧縮行程の圧縮により筒内が高温になると、混合気中の改質された燃料が自着火し、それが火種の役割を果たして混合気を燃焼させることができるため、混合気の圧縮自着火燃焼が成立する。
尚、エンジン運転領域等によっては、NVO期間中の燃料噴射後の2回目の燃料噴射(吸気行程又は圧縮行程の燃料噴射)を省略して、NVO期間中の燃料噴射のみで圧縮自着火燃焼制御を行うようにしても良い。
上述したように、圧縮自着火燃焼制御では、NVO期間中に筒内に燃料を噴射することで、燃料を自着火し易い状態に改質して、安定した圧縮自着火燃焼を実現するようにしているが、NVO期間中の燃料噴射量が何らかの要因で変動すると、ノッキング(ノック)が発生することがある。
この対策として、ECU24は、圧縮自着火燃焼制御中にノックセンサ20(又は筒内圧力センサ23)の出力信号に基づいてノッキングの有無を判定し、ノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲(ノッキングがほとんど発生しない範囲)に制御するようにしている。
例えば、図2及び図3に示すように、圧縮自着火燃焼制御中は、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いと、急峻な燃焼となって燃焼時の筒内圧力の上昇率が大きくなり、最大筒内圧付近でノッキングによる圧力振動が発生し易くなる。一方、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないと、緩慢な燃焼となって燃焼時の筒内圧力の上昇率が小さくなるが、燃焼後期にノッキングによる圧力振動が発生し易くなる(これは緩慢な初期燃焼により未燃状態で長時間存在した混合気の自着火による現象と考えられる)。
この際、NVO期間中の燃料噴射量によって燃焼状態が変化して燃焼時の筒内圧力の上昇率が変化するため、燃焼時の筒内圧力の上昇率は、燃焼状態やNVO期間中の燃料噴射量を判定するパラメータとなる。
この点に着目して、本実施例1では、圧縮自着火燃焼制御中に筒内圧力センサ23の出力信号に基づいて燃焼時の筒内圧力の上昇率(以下「圧力上昇率」という)を算出し、ノック抑制制御の際に、圧力上昇率が所定の閾値よりも小さい場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないため、緩慢な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御する。一方、圧力上昇率が閾値以上の場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いため、急峻な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御する。
以下、本実施例1でECU24が実行する図4及び図5の燃焼制御ルーチンの処理内容を説明する。
図4及び図5に示す燃焼制御ルーチンは、ECU24の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう燃焼制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン回転速度、エンジン負荷(例えば吸入空気量や吸気管圧力)等を読み込んだ後、ステップ102に進み、現在のエンジン運転領域(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷等)が圧縮自着火燃焼領域であるか火花点火燃焼領域であるかを判定し、圧縮自着火燃焼領域の場合には、燃焼モードを圧縮自着火燃焼モードに設定し、火花点火燃焼領域の場合には、燃焼モードを火花点火燃焼モードに設定する。
図4及び図5に示す燃焼制御ルーチンは、ECU24の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう燃焼制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン回転速度、エンジン負荷(例えば吸入空気量や吸気管圧力)等を読み込んだ後、ステップ102に進み、現在のエンジン運転領域(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷等)が圧縮自着火燃焼領域であるか火花点火燃焼領域であるかを判定し、圧縮自着火燃焼領域の場合には、燃焼モードを圧縮自着火燃焼モードに設定し、火花点火燃焼領域の場合には、燃焼モードを火花点火燃焼モードに設定する。
この後、ステップ103に進み、現在の燃焼モードが圧縮自着火燃焼モードであるか否かを判定する。このステップ103で、圧縮自着火燃焼モードではない(つまり火花点火燃焼モードである)と判定された場合には、ステップ104に進み、現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷等)に応じた要求燃料噴射量をマップ又は数式等により算出した後、ステップ105に進み、吸気行程又は圧縮行程で燃料を噴射すると共に、点火プラグ15の火花放電により点火して混合気を燃焼させる火花点火燃焼制御を実行する。
一方、上記ステップ103で、圧縮自着火燃焼モードであると判定された場合には、ステップ106に進み、現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷等)に応じた要求燃料噴射量をマップ又は数式等により算出した後、ステップ107に進み、現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度とエンジン負荷等)に応じたNVO期間中の燃料噴射量をマップ又は数式等により算出する。要求燃料噴射量からNVO期間中の燃料噴射量を差し引いた値が吸気行程又は圧縮行程の燃料噴射量となる。
この後、ステップ108に進み、NVO期間を設けるように可変バルブタイミング装置18,19を制御し、NVO期間中に筒内に燃料を噴射すると共に、吸気行程又は圧縮行程で2回目の燃料噴射を行って、圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を実行する。
この後、図5のステップ109に進み、所定期間中(例えば数サイクル分)のノックセンサ20(又は筒内圧力センサ23)の出力信号に基づいてノッキングが発生しているか否か(ノッキングの有無)を全燃焼サイクルについて判定する。この場合、例えば、ノックセンサ20(又は筒内圧力センサ23)の出力信号に基づいて特定周波数帯の振動強度を計測し、その振動強度を所定の判定値と比較してノッキングの有無を判定する。尚、ノッキングの判定方法は適宜変更しても良い。
このステップ109で、ノッキングが発生していない(ノッキング無し)と判定された場合には、ステップ110以降のノック抑制制御に関する処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ109で、ノッキングが発生している(ノッキング有り)と判定された場合には、ステップ110以降のノック抑制制御に関する処理を次のようにして実行する。
まず、ステップ110で、筒内圧力センサ23の出力信号に基づいて圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)を全燃焼サイクルについて算出する。この場合、例えば、TDC(上死点)付近の所定クランク角範囲における単位クランク角当り(又は単位時間当り)の筒内圧力の上昇量を圧力上昇率として算出する。尚、圧力上昇率の算出方法は適宜変更しても良い。
この後、ステップ111に進み、圧力上昇率が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。ここで、閾値は、例えば、図2(b)に示すように、NVO期間中の燃料噴射量の適正範囲の上限値に相当する圧力上昇率と、NVO期間中の燃料噴射量の適正範囲の下限値に相当する圧力上昇率との間の範囲内に設定されている。この閾値は、予め試験データや設計データ等に基づいて設定され、ECU24のROMに記憶されている。尚、エンジン運転状態(例えば、エンジン回転速度、エンジン負荷、冷却水温)等に応じて閾値を変化させるようにしても良い。
このステップ111で、圧力上昇率が閾値よりも小さいと判定された場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないため、緩慢な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、ステップ112に進み、NVO期間中の燃料噴射量を所定量だけ増量補正する。
この後、ステップ113に進み、所定期間中(例えば数サイクル分)のノックセンサ20(又は筒内圧力センサ23)の出力信号に基づいてノッキングが発生しているか否かを判定し、まだノッキングが発生していると判定されれば、ステップ114に進み、筒内圧力センサ23の出力信号に基づいて圧力上昇率を算出した後、ステップ115に進み、前回よりも圧力上昇率が増加したか否かを判定し、圧力上昇率が増加したと判定されれば、上記ステップ112に戻り、NVO期間中の燃料噴射量を更に所定量だけ増量補正する処理を繰り返す。
その後、ステップ113で、ノッキングが発生していない(ノッキングが抑制された)と判定された場合には、増量補正によりNVO期間中の燃料噴射量が適正範囲に補正されたと判断して、本ルーチンを終了する。この場合、エンジン11が定常運転状態であれば、増量補正後のNVO期間中の燃料噴射量が維持される。
これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正したにも拘らず、上記ステップ113でノッキングが発生していると判定され、且つ、上記ステップ115で圧力上昇率が増加していないと判定された場合には、圧縮自着火燃焼制御のままではノッキングを抑制できないと判断して、ステップ120に進み、燃焼モードを強制的に火花点火燃焼モードに変更することで、圧縮自着火燃焼制御を停止して、火花点火燃焼制御に切り替えてノッキングを抑制する。
一方、上記ステップ111で、圧力上昇率が閾値以上であると判定された場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いため、急峻な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、ステップ116に進み、NVO期間中の燃料噴射量を所定量だけ減量補正する。
この後、ステップ117に進み、所定期間中(例えば数サイクル分)のノックセンサ20(又は筒内圧力センサ23)の出力信号に基づいてノッキングが発生しているか否かを判定し、まだノッキングが発生していると判定されれば、ステップ118に進み、筒内圧力センサ23の出力信号に基づいて圧力上昇率を算出した後、ステップ119に進み、前回よりも圧力上昇率が減少したか否かを判定し、圧力上昇率が減少したと判定されれば、上記ステップ116に戻り、NVO期間中の燃料噴射量を更に所定量だけ減量補正する処理を繰り返す。
その後、ステップ117で、ノッキングが発生していない(ノッキングが抑制された)と判定された場合には、減量補正によりNVO期間中の燃料噴射量が適正範囲に補正されたと判断して、本ルーチンを終了する。この場合、エンジン11が定常運転状態であれば、減量補正後のNVO期間中の燃料噴射量が維持される。
これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正したにも拘らず、上記ステップ117でノッキングが発生していると判定され、且つ、上記ステップ119で圧力上昇率が減少していないと判定された場合には、圧縮自着火燃焼制御のままではノッキングを抑制できないと判断して、ステップ120に進み、燃焼モードを強制的に火花点火燃焼モードに変更することで、圧縮自着火燃焼制御を停止して、火花点火燃焼制御に切り替えてノッキングを抑制する。
この場合、ステップ109,113,117の処理が特許請求の範囲でいうノック判定手段としての役割を果たし、ステップ110,114,118の処理が特許請求の範囲でいう圧力上昇率算出手段としての役割を果たす。
以上説明した本実施例1では、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行するようにしたので、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲(ノッキングがほとんど発生しない範囲)に制御することができ、圧縮自着火燃焼制御中のノッキングを効果的に抑制することができる。
しかも、本実施例1では、圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)が燃焼状態やNVO期間中の燃料噴射量を判定するパラメータとなることに着目して、ノック抑制制御の際に、圧力上昇率が閾値よりも小さい場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ないため、緩慢な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、圧力上昇率が閾値以上の場合には、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いため、急峻な燃焼となってノッキングが発生していると判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御するようにしたので、圧力上昇率に応じてNVO期間中の燃料噴射量を速やかに適正範囲に制御することができる。
また、本実施例1では、ノック抑制制御を実行してNVO期間中の燃料噴射量を補正したにも拘らず、ノッキングが発生している場合(ノッキングを抑制できない場合)には、圧縮自着火燃焼制御のままではノッキングを抑制できないと判断して、圧縮自着火燃焼制御を停止して、火花点火燃焼制御に切り替えてノッキングを抑制するようにしたので、ノッキングを確実に回避することができる。
尚、上記実施例1では、ノック抑制制御の際に、圧力上昇率(燃焼時の筒内圧力の上昇率)に応じてNVO期間中の燃料噴射量を補正するようにしたが、これに限定されず、例えば、燃焼時の筒内圧力の上昇量やピーク値等に応じてNVO期間中の燃料噴射量を補正するようにしても良い。
次に、図6及び図7を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
本実施例2では、前記実施例1で説明した図4及び図5の燃焼制御ルーチンのうちの図5の処理を図7の処理に置き換えたルーチンを実行することで、圧縮自着火燃焼制御中にノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するようにNVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行するが、その際、図6に示すように、まず、(1) NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多い(つまり急峻な燃焼となってノッキングが発生している)と仮定して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正する。この減量補正によりノッキングが抑制されれば、仮定が正しかった(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多かった)と判断して、そのままNVO期間中の燃料噴射量を減量補正した状態に維持することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御する。これに対して、(2) NVO期間中の燃料噴射量を減量補正してもノッキングを抑制できない場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない)と判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御する。
図7のルーチンでは、ステップ209で、ノッキングが発生しているか否かを判定し、ノッキングが発生している(ノッキング有り)と判定された場合には、ステップ210以降のノック抑制制御に関する処理を次のようにして実行する。
まず、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多い(つまり急峻な燃焼となってノッキングが発生している)と仮定して、ステップ210で、NVO期間中の燃料噴射量を所定量だけ減量補正する。
この後、ステップ211に進み、ノッキングが発生しているか否かを判定し、まだノッキングが発生していると判定されれば、ステップ212に進み、減量補正回数のカウント値を「1」だけカウントアップした後、ステップ213に進み、減量補正回数のカウント値が所定値を越えたか否かを判定し、減量補正回数のカウント値が所定値を越えていなければ、上記ステップ210に戻り、NVO期間中の燃料噴射量を更に所定量だけ減量補正する処理を繰り返す。
その後、ステップ211で、ノッキングが発生していない(ノッキングが抑制された)と判定された場合には、仮定が正しかった(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多かった)ため、減量補正によりNVO期間中の燃料噴射量が適正範囲に補正されたと判断して、本ルーチンを終了する。この場合、エンジン11が定常運転状態であれば、減量補正後のNVO期間中の燃料噴射量が維持される。
これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正したにも拘らず、上記ステップ211でノッキングが発生していると判定され、且つ、上記ステップ213で減量補正回数のカウント値が所定値を越えたと判定された場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない)と判断して、ステップ214に進み、NVO期間中の燃料噴射量(減量補正前の燃料噴射量)を所定量だけ増量補正する。
この後、ステップ215に進み、ノッキングが発生しているか否かを判定し、まだノッキングが発生していると判定されれば、ステップ216に進み、増量補正回数のカウント値を「1」だけカウントアップした後、ステップ217に進み、増量補正回数のカウント値が所定値を越えたか否かを判定し、増量補正回数のカウント値が所定値を越えていなければ、上記ステップ214に戻り、NVO期間中の燃料噴射量を更に所定量だけ増量補正する処理を繰り返す。
その後、ステップ215で、ノッキングが発生していない(ノッキングが抑制された)と判定された場合には、増量補正によりNVO期間中の燃料噴射量が適正範囲に補正されたと判断して、本ルーチンを終了する。この場合、エンジン11が定常運転状態であれば、増量補正後のNVO期間中の燃料噴射量が維持される。
これに対して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正したにも拘らず、上記ステップ215でノッキングが発生していると判定され、且つ、上記ステップ217で増量補正回数のカウント値が所定値を越えたと判定された場合には、圧縮自着火燃焼制御のままではノッキングを抑制できないと判断して、ステップ218に進み、燃焼モードを強制的に火花点火燃焼モードに変更することで、圧縮自着火燃焼制御を停止して、火花点火燃焼制御に切り替えてノッキングを抑制する。
以上説明した本実施例2では、ノック抑制制御の際に、まず、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多いと仮定して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正し、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正してもノッキングを抑制できない場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない)と判断して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御するようにしたので、圧力上昇率を求める必要が無く、筒内圧力センサ23を省略することができ、低コスト化の要求を満たすことができる。
尚、上記実施例2では、ノック抑制制御の際に、最初にNVO期間中の燃料噴射量を減量補正するようにしたが、これに限定されず、まず、NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも少ない(つまり緩慢な燃焼となってノッキングが発生している)と仮定して、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、NVO期間中の燃料噴射量を増量補正してもノッキングを抑制できない場合には、仮定が間違っている(NVO期間中の燃料噴射量が適正範囲よりも多い)と判断して、NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することで、NVO期間中の燃料噴射量を適正範囲に制御するようにしても良い。
また、上記各実施例1,2では、吸気側と排気側の両方の可変バルブタイミング装置によりNVO期間を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、吸気側と排気側のうちの一方の可変バルブタイミング装置によりNVO期間を設けるようにしたり、或は、吸気側と排気側の両方又は一方の可変バルブリフト装置によりNVO期間を設けるようにしても良い。
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンに限定されず、筒内噴射用の燃料噴射弁のみを備えた筒内噴射式エンジンにも適用して実施できる。
11…エンジン(内燃機関)、13,14…燃料噴射弁、15…点火プラグ、16…吸気バルブ、17…排気バルブ、18,19…可変バルブタイミング装置、20…ノックセンサ、22…クランク角センサ、23…筒内圧力センサ、24…ECU(燃焼制御手段,ノック判定手段,圧力上昇率算出手段)
Claims (5)
- 内燃機関の少なくとも排気行程後半に排気バルブと吸気バルブが両方とも閉弁した状態になる負のバルブオーバーラップ(以下「NVO」と表記する)期間中に筒内に燃料を噴射して圧縮行程の圧縮により混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼制御を実行する燃焼制御手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記圧縮自着火燃焼制御中にノッキングの有無を判定するノック判定手段を備え、
前記燃焼制御手段は、前記圧縮自着火燃焼制御中に前記ノック判定手段によりノッキングが検出されたときに、ノッキングを抑制するように前記NVO期間中の燃料噴射量を補正するノック抑制制御を実行することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記圧縮自着火燃焼制御中に燃焼時の筒内圧力の上昇率(以下「圧力上昇率」という)を算出する圧力上昇率算出手段を備え、
前記燃焼制御手段は、前記ノック抑制制御の際に、前記圧力上昇率算出手段で算出した圧力上昇率が所定の閾値よりも小さい場合に前記NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、前記圧力上昇率が前記閾値以上の場合に前記NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記燃焼制御手段は、前記ノック抑制制御の際に、前記NVO期間中の燃料噴射量を減量補正し、該減量補正を行ってもノッキングを抑制できない場合には、前記NVO期間中の燃料噴射量を増量補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼制御手段は、前記ノック抑制制御の際に、前記NVO期間中の燃料噴射量を増量補正し、該増量補正を行ってもノッキングを抑制できない場合には、前記NVO期間中の燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼制御手段は、前記ノック抑制制御を実行してもノッキングを抑制できない場合には、前記圧縮自着火燃焼制御を停止して、点火プラグの火花放電により点火して混合気を燃焼させる火花点火燃焼制御に切り替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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