JP5624357B2 - 電子ガバナシステム及びその制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの吸気系に設置されたスロットルバルブを制御装置で開閉操作して目標エンジン回転数を維持する電子ガバナシステム及びその制御装置に関し、殊に、システムにおける故障の発生を検知する故障診断機能を備えた電子ガバナシステム及びその制御装置に関する。
近年、エンジン制御を高精度に行うために、スロットルバルブを運転者のアクセル操作で機械的に開閉動作させる代わりに電子制御装置で開閉操作してエンジン回転数を制御する電子ガバナシステムが普及しており、例えば特開平5−240073号公報に記載され、後述する本発明の電子ガバナシステム1Aとハード構成が共通し図1に示すような構成を有した電子ガバナシステム1Cが周知である。
この従来の電子ガバナシステム1Cでは、制御対象となるエンジン2は電子制御ユニット10Cにより様々な制御を受けるものとされ、エンジン2の吸気通路20に配設された電子制御スロットル(電子ガバナ)30に内蔵されたスロットルバルブ32の位置(開度)を調節することにより、吸入空気量を変化させてエンジン出力が制御されるようになっている。
この場合、エンジン回転数については、クランク軸側に設けたクランク角度センサ12による出力信号を電子制御ユニット10Cに取り込み(F)、その信号に基づいて、電子制御ユニット10Cが電子制御スロットル30内に設けたスロットルバルブ32用のスロットルアクチュエータ13操作することで制御されるようになっている。また、電子制御スロットル30にはスロットルバルブ32の位置情報が分かるようにスロットル位置センサ14が配設されており、これによる出力信号も電子制御ユニット10Cに取り込まれて、様々な負荷条件の下で実際のエンジン回転数が一定の目標回転数に収束するように制御を実行している。
図7は、その電子制御スロットル30を簡略化して空気吸入側より見た構成を示すものであり、空気通路となるボア31にはバタフライ型のスロットルバルブ32が配設され、これに接続されたスロットルシャフト33が90°の範囲で軸周りに回動することにより、ボア31内周面とスロットルバルブ32との間に形成される空隙を変化させて空気流量を調節するようになっている。また、スロットルシャフト33はギヤ37,38,39を介して回転駆動式のスロットルアクチュエータ13に接続されている。
スロットルアクチュエータ13には、DCブラシモータが使用されているのが通常であるが、上述した電子制御ユニット10Bが極性変化を伴うパルス幅変調信号(PWM励磁)で正方向/逆方向に任意の電流を流すことにより、スロットルバルブ32を開閉操作するようになっている。また、スロットルシャフト33端面に付設したターゲット34をエンコーダ35で検出することにより、スロットルバルブ32の位置情報が分かることから、この位置情報を基に任意のスロットル位置になるようにサーボ制御を実行するようになっている。尚、安全確保のため、リターンバネ36がスロットルシャフト33に設けられており、故障等によるスロットルアクチュエータ13不作動の際に、スロットルバルブ32を全閉方向に動作させる。
図8は、斯かるハードウエアを制御する電子制御ユニット10Cのソフトウエアによる制御ブロック図の一例を示している。P1,P2は、スロットルバルブ32及びエンジン
2のプラント(シミュレーションモデル)を示しており、実機で運転する場合にはこれが制御対象となって、これらの動作結果はセンサ出力により実際のスロットル位置(θe)、実際のエンジン回転数(Ne)として電子制御ユニット10Cに入力される。
これらの情報を基に、任意の目標エンジン回転数(Nd)通りに一定に制御する具体的な方法として、実際のエンジン回転数(Ne)との偏差(Nerr)を算出し、これに基づき回転数フィードバック制御のブロックC2で目標スロットル位置(θd)を算出するのが通常である。これから実際のスロットル位置(θe)との偏差(θerr)を算出し、これに基づきスロットル位置をフィードバック制御のブロックC1で演算を行って、スロットルアクチュエータ13の制御量(U)を算出する。そして、この制御量(U)に基づいてスロットルアクチュエータ13を駆動させることでスロットル位置(θe)が変化し、吸入空気量が変化してエンジン2に発生するトルクが増減する。
また、エンジン2には様々な外乱負荷トルク(Tad)が加わっているが、これとエンジン2に発生したトルクとのバランスにより、最終的にエンジン回転数(Ne)が決定される。そして、このエンジン回転数(Ne)情報が回転数制御用のブロックC2に入力され、斯かるフィードバック制御系によって目標エンジン回転数(Nd)に一定して収束するように制御を実行する。尚、各フィードバック制御演算処理については、各偏差をゼロに収束させるような演算が行われるが、これにはPID制御やスライディングモード制御などが用いられる。
しかし、斯かる従来の制御においては、各センサやスロットルアクチュエータ13等の故障は想定しておらず、各部位に故障が発生すると制御が不安定になってエンジンストールやエンジンの暴走等を引き起こすという問題があった。そこで、例えば特開2003−214234号公報に記載されている電子ガバナシステムの制御装置のように、目標スロットル開度と検知している実スロットル開度との偏差の絶対値が所定値以上である状態が所定時間以上続いた場合に、スロットル制御系の故障として判定することが行われるようになった。
ところが、このようにスロットル制御系の故障のみを検出しても、例えばエンジン故障の場合のように、システム中の他の部位に故障が生じた場合にはこれを検知することができず、システムにおける安全確保が不充分となってしまう。また、暴走を伴うような深刻な故障の場合には、少なくとも最悪の事態を回避するフェイルセーフ制御機能が自動的に発揮されることが望ましい。
特開平5−240073号公報 特開2003−214234号公報
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、電子ガバナシステムについて、故障の発生を的確に検知してシステムにおける安全性を充分に確保できるようにすることを課題とする。
そこで、本発明は、アクチュエータ駆動式のスロットルバルブ及びスロットル位置センサを有する電子制御スロットルと、エンジン回転数センサと、少なくとも前記スロットル位置センサによる出力信号及び前記エンジン回転数センサによる出力信号を検知しながらエンジン運転状態に応じ前記スロットルバルブを開閉操作して目標エンジン回転数を維持するとともにエンジン回転センサからの出力信号が所定の回転数を超えたときに燃料をカットしてエンジンの過回転の発生を防止する制御装置とを備えた電子ガバナシステムにおいて、前記制御装置は、検知しているスロットル位置データとスロットル制御目標値との偏差を常に監視し該偏差の絶対値が所定のしきい値を所定時間以上継続して超えた場合にスロットル制御系の故障が発生したと判定する第1の故障判定方法と、検知しているエンジン回転数が所定の回転数を超えて前記過回転の発生を防止する制御が所定の時間内に繰り返して行われた場合にシステムに深刻な故障が発生したと判定する第2の故障判定方法とを順次実施し、前記第1の故障判定方法で故障の判定をした場合には、前記制御装置が前記スロットルバルブのアクチュエータへの通電を停止させることによりスロットルシャフトに付設したリターンバネで前記スロットルバルブを閉方向に動かしてエンジン回転数を低下させ、更に、前記第2の故障判定方法で故障の判定をした場合には、前記制御装置が点火コイルへの通電の停止し、燃料噴射弁への通電の停止又は燃料供給の停止の少なくとも1つによりエンジンを緊急停止させることを特徴とする。
このように、電子ガバナシステムにおいて制御装置がスロットル位置データとスロットル制御目標値との偏差を監視しながらスロットル制御系の故障(不良)の発生を判定することに加え、エンジン回転数が安全性確保のための上限値等として予め定めた回転数を所定時間以上連続して超えた場合にシステム上の深刻な故障の発生を判定するようにして、故障内容に応じて必要とされる手順を実行するものとしたことにより、システムの安全性を充分に確保しやすいものとなる。
また、この電子ガバナシステムにおいて、その第1の故障判定方法で故障の判定をした場合の動作には、制御装置がスロットルバルブのアクチュエータへの通電を停止させることによりスロットルシャフトに付設したリターンバネでスロットルバルブを閉方向に動かしてエンジン回転数を低下させることが含まれる、ことを特徴としたものとすれば簡易な構成でエンジンの暴走を回避する安全機構(フェイルセーフ)を確実に構築することができる。
さらに、上述した電子ガバナシステムにおいて、その第2の故障判定方法で故障の判定をした場合の動作には、制御装置が点火コイルへの通電の停止、燃料噴射弁への通電の停止又は燃料供給の停止の少なくとも1つを実行させることによりエンジンを緊急停止させることにより、システムに深刻な故障が生じた場合でも、エンジン暴走等による深刻な事態を確実に回避することができる。
さらにまた、上述した電子ガバナシステムにおいて、システム中に故障通知手段を備えており、各故障の判定をした場合の動作には、制御装置が故障表示手段を介して運転者に故障の発生又は故障箇所の通知の少なくとも一方が含まれることにすれば、システムの故障発生時に運転者が的確な対応をとりやすいものとなり、この場合、その故障通知手段が故障表示灯であって制御装置が故障の判定内容別に異なる点灯状況となるように通電を制御することにより、簡易な構成で運転者が故障内容を容易に認識することができる。
加えて、電子制御スロットル用の制御プログラムが格納され、上述した電子ガバナシステム内に配設されて各制御内容を実行する、ことを特徴とする制御装置とすれば、これを通常の電子ガバナシステムに適用するだけで上述した機能を実現することができる。
スロットル位置とスロットル制御目標値の偏差からスロットル制御系の故障発生を判定することに加え、エンジン回転数が所定の回転数を超えて過回転の発生を防止する制御が所定の時間内に繰り返して行われた場合にシステム上の深刻な故障の発生を判定するものとした本発明によると、故障の発生を的確に検知してシステムにおける安全性を充分に確保することができるものである。
本発明及び従来例に共通した電子ガバナシステムのハード構成を示す配置図である。 図1の電子制御ユニットによる制御ブロック図である。 図2の電子制御ユニットによるフェイルセーフ制御部分の詳細を示す制御ブロック図である。 図1の電子制御ユニットによる制御結果の一例を示すグラフである。 図1の電子制御ユニットによる制御結果の一例を示すグラフである。 図1の電子制御ガバナシステムの応用例を示す配置図である。 従来例による制御ブロック図である。 従来例による動作の一例を示すグラフである。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態の電子ガバナシステム1Aのハード構成を示している。このシステムは、上述した従来のシステムと同じハード構成からなり、その電子制御スロットル30も図7に示した従来のものと構成が共通しているが、スロットルバルブ32の開閉操作を行う制御装置である電子制御ユニット10Aが実行するものである。
即ち、この電子制御ユニット10Aは、エンジン回転数を一定に維持する制御を実行している際に、検知しているスロットル位置データとスロットル制御目標値との偏差を常に監視し、その絶対値が所定のしきい値を所定時間以上継続して超えた場合にスロットル制御系の故障が発生したものと判定する第1段階の故障判定方法を実行し、検知しているエンジン回転数が所定の回転数を所定時間以上連続して超えた場合に、システムに深刻な故障が発生したものと判定する第2段階の故障判定方法を実行して、判定結果に応じた所定の動作を行うようになっている。
尚、この電子制御ユニット10Aは、通常のスロットル開閉操作を行う電子制御ユニットの記憶手段に、以下の電子ガバナシステムの制御方法を実行するためのプログラムを追加して記憶させてなるものであるが、その電子制御ユニット10Aは電子ガバナシステム1A専用のものとして設けることの他に、他のエンジン制御を実行する電子制御装置が機能的に兼ねるものであってもよい。
図2は、本実施の形態の電子ガバナシステム1Aの電子制御ユニット10Aによる制御ブロック図を示している。このシステムにおいては、従来例である図8のブロック図に対しスロットル位置制御のブロックC1の演算出力値Usに切替制御機能を追加してある。この切替制御は、フラグが0の場合はUcを選択してスロットルアクチュエータ13への制御入力(U)にする処理を行う。
このUcは0の固定値とされており、また、第1段階のフェイルセーフ制御フラグGSFS1は、フェイルセーフ制御判定を行うブロックGSFから出力されたフラグ情報であるが、このフェイルセーフ制御判定用のブロックGSFの詳細について、図3を用いながら以下に詳細に説明する。
この電子ガバナシステム1Aの第1段階の故障判定方法について説明すると、起動条件フラグ1(GJD1)が成立しているときにスロットル作動異常判定ブロックG−1が起動し、このブロックではスロットル位置偏差(θerr)の絶対値が所定のしきい値を超え、且つ、その状態が所定時間以上連続したとき、「スロットル機構に渋りや固着などが原因で作動不良が発生している」と推定判断し、フラグTHFAILを1にセットする処理を行う。
このフラグTHFAILが1のときは、第1段階のフェイルセーフ制御フラグGFS1を1にセットし、前述の図3で説明した方法にてスロットルアクチュエータ13の制御入力(U)を0にすることで駆動電源を遮断し、スロットルシャフト33に設けたリターン
バネによる閉弁方向のトルクのみが作用してスロットルバルブ32が全閉状態に戻る。
これにより、エンジン回転数が低下してエンジンの暴走を未然に防ぐ安全制御(以下「ガバナカット制御」という)を実行する。この第1段階のフェイルセーフ制御フラグGFS1は、フラグTHFAIL以外に、スロットル位置センサ14の故障フラグTPSFAIL、クランク角度センサ12の故障フラグCPSFAIL、後に説明するフラグOVERRUN、フラグESTの総ての情報の理論和G−5を行っており、スロットル位置制御に少しでもリスクのある状態では、一刻も早くガバナカット制御を実行することにより安全性をより高める理論構造である。
また、起動条件フラグ1(GJD1)は、エンジン停止状態やエンジン始動前後の電源電圧が不安定な状態にて0にセットされるが、それ以外のエンジン2の回転している状態のときには1にセットされている。これにより、誤診断要素を排除しつつ、スロットル作動の安定性を可能な限り常にモニタする。
次に、電子ガバナシステム1Aにおける第2段階の故障判定について説明すると、エンジン回転数(Ne)のモニタを常に行い、これがエンジン2の最高許容回転数を超えた場合にフラグOVERRUNを1にセットする処理G−3を行うようになっている。このフラグOVERRUNはエンジン2を過回転から保護するために実行され、前述の理論和G―5の処理によりガバナカット動作を行い、また、別の理論和G−6の処理を経由して、第2段階のフェイルセーフ制御のフラグGFS2を1にする処理を行う。
このフラグGFS2は、1のときに燃料噴射や点火出力をカットする動作を行うものとされ、これによりエンジン2の発生トルクを無くしてエンジン回転数を急激に低下させることができる。そして、エンジン回転数が予め定めた最高許容回転数以下になれば、フラグOVERRUNは0になるため、ガバナカット動作や燃料噴射カット・点火カット動作は中止され、通常の状態に戻る。
また、起動条件フラグ2(GJD2)が成立しているときに、このフラグOVERRUNを0から1にセットする状態が短い時間で頻発している状況に遭遇すると、フラグESTを1にセットする処理G−4を行う。このフラグESTが1にセットされている状態は「スロットルバルブ32の脱落やリターンバネ折損などが原因で電子ガバナシステム1Aに深刻な不具合が生じた」ことを意味し、前述したフラグOVERRUNと理論和G−6の処理を行い第2段階のフェイルセーフ制御フラグGFS2を1にセットする。
尚、この起動条件フラグ2(GJD2)はイグニッション・キーをONにしたときに0から1にセットし、イグニッション・キーをOFFにするまでフラグを0にリセットさせない。よって、前述した制御G−4により起動条件フラグ2(GJD2)が0にリセットされるまでフラグESTを0にリセットしない論理構造となっており、これによりフラグESTでいったん点火・燃料カットが機能すると、イグニッション・キーを入れ直すまでこの状態を維持する構成である。
これ以外の安全処置としては、エンジン回転数(Ne)が0のときにフラグGVSTOPを1にセットする処理G−2を設け、前述した理論和処理G−5を経由してガバナカット作動を行うことにより、システムの安全性をより高める理論構造としている。そして、各故障要因のフラグTHFAIL,TPSFAIL,CPSFAIL,EST情報を故障表示処理ブロックG−7に入力し、故障通知手段としての図示しない故障表示灯を故障内容に応じて異なる方式にて点灯させる等して運転者に故障情報を通知することにより、故障の状況把握及び故障箇所の特定を容易にしている。
図4は、電子制御ユニット1Aによる制御結果の一例を示すグラフであり、先ず、エンジン2が停止し、且つイグニッション・キーがONになっている状態(I)では、エンジ
ン回転数(Ne)が0[rpm]になっているため、ガバナ停止フラグGVSTOP=1により第1段階のフェイルセーフ制御フラグGFS1が1にセットされ、スロットルアクチュエータ13への制御入力が0で電源を遮断しており、不用意にスロットルバルブ32を動かさないようにして誤作動の防止及び安全確保を行っている。
次に、スタータ・モータを駆動させてエンジン始動動作を行う(II)と、エンジン回転数(Ne)が上昇してガバナ停止フラグGVSTOP=0になり、第1段階のフェイルセーフ制御フラグGFS1が0にリセットされ、正常な状態の電子ガバナシステムの制御として、目標エンジン回転数(Nd)に見合った目標スロットル位置(θd)を算出し、これに収束するように実際のスロットル位置(θe)を制御して、最終的にエンジン回転数(Nd)を収束させる通常制御になる。
その後、目標エンジン回転数(Nd)を変化させて加減速動作(III)を行っても、目
標エンジン回転数(Nd)に追従するようにスロットル位置(θe)を制御しているが、電子ガバナシステム1Aが正常であれば目標スロットル位置(θd)に対して実際のスロットル位置(θe)の偏差(θerr)は微小であり、予め故障判定のために設定した「しきい値」を超えない、もしくは超えたとしても直ぐに目標スロットル位置(θd)に収束するように制御しているため、「しきい値」超えている時間はそれほど長くはない状態が続く。
しかし、ここでスロットル機構に作動不良などの問題が生じて作動が悪くなった(IV)とすると、スロットル目標値(θd)に収束する動作が遅い、もしくは全く収束できなくなり、結果として偏差(θerr)が「しきい値」を超えてその状態が長時間継続することになる。
この状態が所定時間以上継続した(V)とき、電子ガバナシステム1Aの第1段階の故
障判定として「スロットル作動不良」として判定し、フラグTHFAILを1にセットして故障表示を行うとともに、システムの第1段階のフェイルセーフ制御フラグGFS1を1にセットし、スロットルアクチュエータ13への制御入力を0にして電源を遮断することで、リターンバネの戻し力のみでスロットルバルブ32を全閉位置に戻し、エンジン回転数を低下させてエンジン2の暴走及び不用意な吹け上がりを防止するものとして、システムの安全を確保している。
図5は電子ガバナシステム1Aによる第2段階の故障判定及びフェイルセーフ制御による制御結果を示すグラフである。正常な定常状態(I)から急激にエンジン目標回転数(
Nd)を上昇させて急加速状態(II)にしたとき、エンジン回転数(Ne)が目標エンジン回転数(Nd)よりオーバーシュートし、さらにあまりにも急激な加速の場合には、過回転フラグOVERRUNが1にセットされる。
この過回転フラグOVERRUNが1のときは、スロットル制御量(U)を0にしてスロットルアクチュエータ13の電源を遮断しリターンバネでスロットルバルブ32を全閉方向に戻し、且つ、点火及び燃料噴射をカットしてエンジン2の過回転を防止する制御を実行している。そして、エンジン回転数(Ne)が下がり、前述の「しきい値」以下になると過回転フラグOVERRUNが0にリセットされ、通常の制御状態に戻っている。このようにして、電子ガバナシステム1Aの電子制御ユニット10Aは、エンジン2の最高許容回転数を超えないように安全制御を常時実行する。
他にもこれと同様な動作例として、大きな負荷を印加(III)し、その後、この高負荷
の状態から急激に負荷を抜いた(IV)ときにもエンジン回転数(Ne)にオーバーシュートが発生することがあるが、このときも前述と同様に過回転フラグOVERRUNが働いて、ガバナカット制御及び点火・燃料カット制御を実行し、エンジン過回転の発生を防止している。
しかし、スロットルバルブ32に深刻な不具合が発生、特にスロットルシャフト33の固着やバルブ脱落、リターンバネの折損など、前述した第1段階の故障判定条件よりも深刻な故障モードが出現した場合は、過回転フラグOVERRUNが1,0を繰り返してエンジン回転数(Ne)が激しくハンチングする現象(V)が発生する。
このように短い時間で過回転フラグOVERRUNに1,0を繰り返す状態を経験すると、電子制御ユニット10Aは「システムに深刻な不具合が発生した」と判断し、エンジン緊急停止フラグESTを1にして、点火と燃料噴射を完全にカットしてエンジン2を緊急停止させ(VI)、故障情報を通知(表示)する。これにより、エンジン破壊に繋がるような深刻な故障を未然に防止できるとともに、運転者が故障情報をいち早く認識して適切且つ迅速な故障修理を行うことを可能なものとしている。
図6は、上述した電子ガバナシステム1Aの応用例としてのエンジン2の燃料供給手段に気化器8を用いた電子ガバナシステム1Bを示している。この気化器8は、通常の気化器に対しスロットルバルブ7にスロットルアクチュエータ13とスロットル位置センサ14を備えているとともに、燃料通路に燃料遮断を行うためのソレノイドバルブ8aを備えている点を特徴としている。
また、エンジン2の点火手段にマグネット式点火装置16を採用しており、これで生成された点火信号は点火コイル6を経由して点火プラグ60にて放電を行うものとされ、その点火信号を電子制御ユニット10Bに入力(K)し、その周期をマイクロコンピュータ103で読み取ることにより、エンジン回転数データとして活用しており、上述したシステムとほぼ同様の内容にて電子ガバナ制御処理を行い、スロットルアクチュエータ13を駆動制御する。
ここで、上述した「スロットル作動不良」に起因する第1段階の故障状態に遭遇したときは、上述と同様の方法で電子制御ユニット10Bからの出力(C)を0にすることにより、スロットルアクチュエータ13の駆動を停止させる。
また、上述した「システムに生じた深刻な不具合」に起因する第2段階の故障状態に遭遇したとき、マイクロコンピュータ103から燃料・点火カット信号(M)をONにし、この信号がONのときに点火信号の入力ポート(K)を切替装置102によってエンジン・グランドに地絡させることで点火プラグ60を点火させないものとし、且つ、気化器8における燃料遮断用のソレノイドバルブ8aを閉にして(ポート(P)を電源遮断)燃料カットを行うことにより、上述のシステムと同様にエンジン2を緊急停止することができる。
電子ガバナシステム1Bの構成及びその電子制御ユニット10Bによる制御内容を以上のような構成としたことにより、従来の電子ガバナシステム1Cと比べて低コストにてシステムにおける優れた制御及び確実なフェイルセーフ制御機構が構築されるものである。
以上、述べたように、スロットル位置制御の偏差量による情報を基に第1段階の故障判定を行うことに加え、エンジン過回転の発生状況から第2の故障判定を行って、前者の故障の場合にスロットルアクチュエータの駆動電源を遮断してエンジン回転数を低下させ、後者の故障の場合は点火装置や燃料噴射装置の電源を遮断してエンジンを緊急停止させる
ものとした本発明により、故障判定のための新たなセンサ類を追加することなく現状のセンサ情報のみでシステムの故障診断を可能として、充分に安全な電子ガバナシステムとして提供できるようになった。
1A,1B 電子ガバナシステム、2 エンジン、3A 電子制御スロットル、8 気化器、10A,10B 電子制御ユニット、12 クランク角度センサ、13 スロットルアクチュエータ、14 スロットル位置センサ、32 スロットルバルブ

Claims (4)

  1. アクチュエータ駆動式のスロットルバルブ及びスロットル位置センサを有する電子制御スロットルと、エンジン回転数センサと、少なくとも前記スロットル位置センサによる出力信号及び前記エンジン回転数センサによる出力信号を検知しながらエンジン運転状態に応じ前記スロットルバルブを開閉操作して目標エンジン回転数を維持するとともにエンジン回転センサからの出力信号が所定の回転数を超えたときに燃料をカットしてエンジンの過回転の発生を防止する制御装置とを備えた電子ガバナシステムにおいて、前記制御装置は、検知しているスロットル位置データとスロットル制御目標値との偏差を常に監視し該偏差の絶対値が所定のしきい値を所定時間以上継続して超えた場合にスロットル制御系の故障が発生したと判定する第1の故障判定方法と、検知しているエンジン回転数が所定の回転数を超えて前記過回転の発生を防止する制御が所定の時間内に繰り返して行われた場合にシステムに深刻な故障が発生したと判定する第2の故障判定方法とを順次実施し、前記第1の故障判定方法で故障の判定をした場合には、前記制御装置が前記スロットルバルブのアクチュエータへの通電を停止させることによりスロットルシャフトに付設したリターンバネで前記スロットルバルブを閉方向に動かしてエンジン回転数を低下させ、更に、前記第2の故障判定方法で故障の判定をした場合には、前記制御装置が点火コイルへの通電の停止し、燃料噴射弁への通電の停止又は燃料供給の停止の少なくとも1つによりエンジンを緊急停止させることを特徴とする電子ガバナシステム。
  2. システム中に故障通知手段を備えており、各故障の判定をした場合の動作には、前記制御装置が前記故障表示手段を介して運転者に故障の発生又は故障箇所の通知の少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項1に記載した電子ガバナシステム。
  3. 前記故障通知手段は、故障表示灯であって前記制御装置が故障の判定内容別に異なる点灯状況となるように通電を制御することを特徴とする請求項2に記載した電子ガバナシステム。
  4. 電子制御スロットル用の制御プログラムが格納され、請求項1,2または3に記載した電子ガバナシステム内に配設されて前記各制御内容を実行することを特徴とする制御装置。
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